元スレ杏子「くうかい?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
201 = 183 :
遅いよ
202 = 122 :
"時間停止"が発動するまでのタイムラグに、
杏子はシャルロッテの上空で、長柄を振りかざしていた。
一閃。
これまでの突きが神速なら、
あの円弧が描かれた速度を、なんと形容すればいいのだろう。
発生した真空の刃はシャルロッテの巨体を、
まるで溶けたバターに入れられたナイフのように、あっさりと両断した。
ほむらはシャルロッテの断末魔ごと凍結された世界で、
結界の中央、マミに砕かれなかったほうの椅子に座る存在に目を向けた。
この結界には二重の罠がある。
ひとつは、シャルロッテの第一形態が、魔法少女の油断を誘う仮の姿であること。
そしてもうひとつは、シャルロッテの第二形態を倒したところで、
その力の源を絶たない限り、何度でも復活を遂げること。
ほむらは静かにベレッタを構え、繰り返しトリガーを引いた。
薬室の一発、弾倉の十五発、都合十六発の9mmパラベラム弾が発射され、中空で静止する。
203 :
タイトルに対して内容がガチすぎる
205 = 154 :
地の文もう少し削っていいからキャラをしゃべらせてくれよ
206 = 122 :
"時間停止"を解除した瞬間、
自動拳銃は散弾銃として機能し、対象はボロ切れと化した。
これまでに何度、この魔女を殺してきたことだろう。
これまでに何度、この魔女の元の少女に黙祷を捧げてきたことだろう。
「なーんか、妙な魔女だったな」
杏子は砂糖とクリームに塗れた黒い結晶を拾い上げると、
ああ、と小さく息を吐いた。
「やっと分かった」
「何が分かったの?」
「や、ずっと気になってたんだ。この世界に足りないものが何なのか。
……チーズだよ。この世界には、どこにもチーズが見当たらないんだ」
207 = 159 :
さすがあんこちゃん鋭いな
208 = 191 :
なんでチーズがないとおかしいって思ったんだろ
209 = 122 :
早めの昼飯と朝風呂
残ってますように
210 = 127 :
ほす
211 = 159 :
ほしゅはまかせろ
212 :
作者、むかしポケモンのSS書いてたりしたか?文体が似てる気がする
213 = 132 :
いや地の文は大事だと思う
214 = 159 :
このssはぺろぺろしたい
215 = 169 :
おお残ってる
216 = 122 :
◇◆◇◆
闇夜の帳に覆われた道に、五人と一匹分の足音が響く。
暁美ほむらを先頭にして、一行はほむらの自宅へと向かっていた。
「悪いね、ほむら。お言葉に甘えさせてもらってさ」
「いくらなんでも買いすぎよ。あなた、それ全部食べられるんでしょうね?」
「当然。こんな量じゃ、間食にもなりゃしないっての」
「信じられない胃袋ね」
「それ、誉め言葉か?」
「……もちろん違うわ」
さやかは先を歩く赤毛の少女――確か佐倉杏子とかいった――を眺める。
パンパンに膨れたコンビニの買い物袋を振り回し、見るからに上機嫌の彼女は、
なぜだろう……初めて会った気がしなかった。
胸のモヤモヤから気をそらしたくて、さやかは隣の親友に声をかける。
「何企んでるんだろうね、転校生のやつ」
「さやかちゃん、そんな言い方ってないよ。
ほむらちゃんとあの子は、マミさんを助けてくれたんだよ?」
「それは分かってるんだけどさあ……」
217 = 127 :
さやかちゃんさやさや
218 = 183 :
いつもなら地の文が多いのは読まないけどこの人のは読みやすいわ
219 = 122 :
まどかは純粋すぎる、とさやかは思う。
あるいは優しすぎる、とも。
全幅の信頼を寄せるのは、相手のことを、よく知ってからにするべきだ。
その点あの転校生は、肝心なことは何も教えようとしない。
まどかは『助けてくれた』と言っているけど、本当のところはどうだか。
魔女を倒してグリーフシードを手に入れるついでだったんじゃないの、と勘ぐってしまうさやかだった。
「あんたらも食うかい?」
「わっ」
目の前に突然、棒状の何かが突き出される。
「おいおい、そんなに驚くこたあないだろ。
ただの『うんまい棒』だよ。まさか知らないとは言わないよね?」
「そ、そりゃあ知ってるけど」
小さな頃に食べた覚えがある。
「あたしも食い意地張ってると思われるのはイヤだからさ……やるよ」
「要らない」
「つれねーこと言うなよ」
明太子味だ、美味いぞー、としつこく勧めてくる杏子。
頭痛がする。初対面のくせに、馴れ馴れしくしないでよ。
「要らないって言ってるじゃんっ!」
221 :
222 = 120 :
さやかちゃん素っ気ないなー
そういうところも可愛いんだけど
223 :
>>221
わけがわからないよ…
224 = 122 :
「あっ……」
宙を舞ううんまい棒。
くしゃっと音を立ててアスファルトに落ちたそれを、杏子はそっと拾いあげる。
中身はきっと、粉々になっていることだろう。
杏子はおもむろにさやかに近づくと、ぐいと胸ぐらを掴み上げ、
「……っ」
すぐにその手を離した。
一瞬合った杏子の目は、何かに堪えるように眇められていた。
「無理に押しつけて悪かったな」
「あ、あたしの方こそ、ごめん……」
「まだ食える。味は一緒さ」
杏子はくるりと背を向け、転校生と一緒に歩き出す。
「さやかちゃん、いったいどうしたの?」
「美樹さん、大丈夫?」
まどかやマミさんに、合わせる顔がない。
どうしてあんなことをしちゃったんだろう……。
それにあの目。
あいつも何か、あたしに思うところがあるのだろうか。
225 :
あんこちゃんまじいけめん
226 = 122 :
「マミさんは、あの……佐倉杏子とは知り合いなんですか?」
「そうね、今では命の恩人だけど……」
マミさんは冗談めかして微笑み、
「……昔はちょっと……ううん、かなりの問題児だったわね。
そこら辺は、彼女と契約したキュウべえに訊くのが手っ取り早いんじゃないかしら」
水を向けられたキュウべえは、可愛らしく耳を揺らして答えた。
「魔法少女になりたての頃は、精力的に魔女を探して倒していたみたいだよ。
でもある時を境に、彼女の中で、手段と目的が逆になってしまった」
「どういうこと?」
「手段とは魔法、目的とは魔女を倒すことだ。
それが逆転したということはつまり、
彼女は魔法を使うために、魔女を倒すようになってしまった」
227 = 122 :
>>226
彼女は魔法を使うために、魔女を倒すようになってしまった」 ×
魔法を使うために、魔女を倒すようになってしまったということさ」 ○
魔法は、使い方によっては犯罪にも利用できる。
たとえば極端な話、杏子が気に入らない一般人に対して、
ソウルジェムから実体化した槍で怪我をさせたとしても、凶器は永遠に見つからないままだ。
「見つけた魔女を、あえて見逃すこともあった。
その魔女に人を襲わせて、グリーフシードを孕ませるためにね」
「………許せない」
さやかは杏子の背中を睨み付けた。
あいつは、あたしの憧れるマミさんとは、対極に位置する魔法少女だ。
怒れるさやかの肩に、マミが優しく手を乗せる。
「わたしも美樹さんと同じことを思ったわ。
だからわたしの活動範囲に、あの子が入り込んできたときに、少し懲らしめてあげたの」
「あいつは今も、そんなやり方を続けてるんですか?」
「さあ、それは本人に訊いてみなければ分からないわ。
わたし自身、彼女と会うのは、その時以来だから……でも……」
語尾を曖昧にして、マミは杏子の背中を見つめた。
ちょうど、粉状のうんまい棒を、口の中に流し込んでいるところだった。
228 :
さやかちゃんは安定してうぜえな
229 = 120 :
粉々うんまい棒食べる杏子ちゃんかわいい
230 = 154 :
紫煙
232 :
安定のさやかだな
233 = 122 :
◇◆◇◆
清冽な白の空間に、原色のスツールがいくつも並んでいる。
俯瞰して見れば、それは時計を表しているようだった。
壁にはコルクボードに貼られたメモ書きのように、魔女と思しき絵が何枚も乱雑に飾られている。
天井に設えられた巨大な振り子時計は、ゆったりと時を刻んでいた。
ここは暁美ほむらの私室。
「暁美さん、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないかしら」
手近なスツールに腰を下ろし、マミは問いかけた。
「鹿目さんを魔法少女にさせたくない理由と、
暁美さんと佐倉さんが組んでいる理由について」
234 = 159 :
んふんふwwwwwwwwwwww
235 :
なんだこれ面白い
236 = 120 :
ほむホームはアニメ準拠か
あれは謎空間すぎる
237 :
個人的に畳verのほうが好き
238 = 141 :
>>236
スタイリッシュと言ってあげなさい
239 = 122 :
「今から約二週間後に、ワルプルギスの夜が来ることを、あなたは知っているかしら?」
「質問に質問で返すのは反則じゃない?
……知っているわ。キュウべえから聞いたもの」
まどかが口を挟んだ。
「あの、ワルプルギスの夜って?」
「魔女の中でも、特に強力な魔女をそう呼んでいるの。
その力は結界の外にも影響を及ぼして、
一般人には地震や、洪水といったような、天災として認知されるわ」
ほむらの説明に、まどかとさやかの顔が蒼白になる。
『わたしがいるんだから大丈夫よ。この街はわたしが守るわ』
そうやって胸を叩けたら、どんなにいいだろう、とマミは思った。
シャルロッテの鋭利な歯が、彼女の脳裏にフラッシュバックする。
わたしはただの魔女相手に遅れをとった。
ワルプルギスの夜をやっつけられると嘯いたところで、もはや誰も信じてくれないだろう。
240 = 120 :
マミさんもかわいいなあ、支えてあげたい
241 = 122 :
それが悲しくて、悔しかった。
でも、落ちこんではいられない。
たとえ勝ち目がなくても、人に害なす魔女を倒すのが、魔法少女の役割。
マミが密かに意を決したとき、杏子が言った。
「あたしたちは、そのワルプルギスの夜を倒すために組んでるのさ」
「あ、あんたが?」
「何だよ。なんか文句あるのかい、美樹さやか?」
うんまい棒の一件が糸を引いているのか、
微妙な空気が二人の間に漂う。
「文句っていうか……なんていうか……信じられないだけ。
あんたは、魔女を倒すために魔法少女をやってるんじゃなくて、
魔法を好き勝手に使うために魔法少女をやってるんだよね?」
杏子は唇についた葛餡をぺろりと舐め取り、
「誰に聞いたのかは知らないが、……その通りさ。
あたしは自分のためだけに魔法を使う。
そこにいる巴マミとは違う種類の魔法少女だよ」
242 :
書きためして一気に投下しろよ
保守はしとくから
243 :
文句いうない
面白いよ支援
244 = 122 :
「じゃあ、なおのこと不思議ね。
ワルプルギスの夜との戦いは、ハイリスクローリターン。
あなたの考え方からすれば、とても挑むに値しない魔女じゃない?」
マミは尋ねながら、佐倉杏子が改心していることを期待していた。
が、杏子は右手をひらひらと振って、
「理由ならちゃんとある。
ひとつは、ワルプルギスの夜を放置すれば、
大災害で普通の魔女の餌場、延いては魔法少女の狩り場まで無くなっちまうからだよ。
そしてもうひとつは、」
チラ、と黒髪の魔法少女に視線を投げて、
「ほむらに、ワルプルギスの夜を倒したあとは、今のポジションを譲ると言われたからさ。
なあ巴マミ、あんたは暗黙の内に、ほむらが同じ縄張りで狩りをすることを認めてるんだろ?
なら、そこにあたしが入れ替わっても問題ないよな?」
245 = 120 :
ワルプルは強いクセにGS落とさない糞ボスだからなー
246 = 122 :
「そう。そういうことだったのね」
失望を禁じ得ない。
「勝手にしなさい」
という言葉の他に、マミは投げかけるべき言葉を持たなかった。
もしもその時、マミが杏子を真正面に座っていたら、
杏子のの三日月型の口以外の表情を、見て取ることができただろう。
「ワルプルギスの夜を倒したあと、暁美さんはどうするつもりなの?」
「この街を去るわ」
「ほむらちゃん……?」
誰よりも小さなまどかの声は、その実、誰よりもよく通った。
「街を去るって、わたしたちの前からいなくなっちゃうってこと?」
247 = 159 :
ほ
248 = 122 :
「ええ」と頷くほむら。
「そんな……どうして?
まだこっちに来たばっかりなのに……せっかく、ほむらちゃんと、」
遮るようにほむらは言った。
「お父さんの仕事の都合よ。
転校は昔から何度も経験してきたわ。"知り合い"とのお別れもね」
友達ではなく、知り合い。
まどかはその言葉が聞こえなかったかのように、ほむらの嘘を糾弾する。
「何度も転校してきたなんて、そんなわけないよ。
だってほむらちゃんは、生まれつき心臓が弱くて、」
「……ッ。いったい何を言っているの?
わたしの心臓はどこも悪くない。
体育の時間、あなたはわたしが運動しているところを見ていたでしょう?」
「……う、うん」
250 = 122 :
「とにかく、この街を去ることは、既に決まっていることなの。
そのことで、あなたにとやかく言われる筋合いはないわ……」
涙を堪えるように、俯くまどか。
二人の遣り取りを見ながら、マミは思う。
ねえ暁美さん、あなたの拒絶するような物言いは、あなたなりの演技なのよね?
だってあなた、鹿目さんを見るときだけは、目の奧の光が和らいでいるもの。
「話を元に戻しましょう」
とほむらはマミに向き直って言った。
「わたしは、あなたに協力を申し入れに来た」
「それはつまり、暁美さん、杏子さん、わたしの三人で、
対ワルプルギスの夜の共同戦線を張る、ということかしら?」
みんなの評価 : ★★★×4
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