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    元スレ朋也「軽音部? うんたん?」

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    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×5
    タグ : - 魔王 + - CLANNAD + - けいおん! + - クラナド + - ドラクエ + - 朋也 + - 朋也「けいおん?うんたん + - 涼宮ハルヒの憂鬱 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    451 :

    やっとおいついた
    支援だ

    452 :

    まだ291だが
    こりゃだーまえがリハビリで書いてんじゃねーの

    453 = 1 :

    今のとこOK? 大丈夫かな…? 

    454 = 52 :

    おもろいっす!

    455 = 43 :

    「だからね、私は生きてるから…いいんだよ…」

    つまり、なにもしてないということか…。

    朋也「神秘的に言うな。憂ちゃんに全部やらせてるだけだろ」

    「ぶぅ、だって憂がやったほうが全部上手くいくんだもん」

    「私が掃除しても、逆に、変な取れないシミとかついちゃうし…」

    「料理だって、やってたら、電子レンジの中でアルミホイルが放電したりするんだよ?」

    それは料理の腕とはあまり関係ない。常識の問題だった。

    朋也「ほんと、おまえ、憂ちゃんいてよかったな」

    朋也「親御さん、家空けてること多いって聞いたけど、おまえ一人じゃ即死してたよ」

    「そんな早く死なないよっ! 丸二日は持つもんっ!」

    延命するにしても、そう長くは持たないようだった。

    「はい、これで最後だよ~」

    今度は焼き魚と、人数分のコップ、そして麦茶を持ってきてくれた。
    先程と同様、俺たちに配膳してくれる。最後に自らのぶんを揃え、食卓が整った。

    「じゃ、食べようか」

    ぱんっ、と手を合わせる。

    456 = 1 :

    憂ちゃんもそれに倣った。

    「いただきます」
    「いただきます」

    綺麗に声が重なる。

    朋也「…いただきます」

    俺も若干遅れて同じセリフを言った。
    こんなこと、かしこまってやるのはいつぶりだろう。
    少なくとも、うちではやったことがない。
    小学校の給食の時間以来かもしれない。

    「ん~、おいしい~」

    「ほんと? ありがと、お姉ちゃん」

    「憂の料理はいつもおいしいよぉ。お弁当もね」

    「えへへ」

    仲良く会話する姉妹。
    本来ならここに両親が居て、一緒に食事をして…
    それで、その日学校であったことなんかを話すんだろうか。
    そういった光景があるのが、普通の家族なんだろうか。
    俺にはわからなかった。
    ただ…
    無粋な俺なんかが、土足で踏み込んでいい場所じゃないことは漠然とわかる。

    457 = 43 :

    「どうしたの? 岡崎くん。ぼーっとしちゃって」

    朋也「いや…なんでもないよ」

    言って、肉じゃがを口に放り込む。

    朋也「うん…うまいな」

    「ありがとうございますっ」

    「私も料理勉強しようかなぁ…」

    「お姉ちゃんならすぐできるようになるよ」

    「ほんと? じゃあ、今度教えてよ」

    「うん、いいよ。お姉ちゃんの今度は、今まで一度も来たことないけどね」

    「あはは~、そうだっけ」

    「ふふっ、うん、そうだよ」

    ふたりとも同じように、えへへ、と笑いあう。
    俺は箸を動かしながら、その様子をぼんやりと傍観していた。

    ―――――――――――――――――――――

    「だいぶ遅くなっちゃったね」

    平沢が玄関の先まで見送りに来てくれる。

    458 :

    まだ最初の方しか読んでないけどクラナドの再現度がヤバい。>>1は何者なの?

    459 = 1 :

    憂ちゃんは中で後片付け中だ。

    朋也「そうだな。長居しちまった」

    あの場は本当に居心地がよく、離れることがひどくためらわれた。
    それは、なんでだろう。
    あの感覚はなんだったんだろう。

    「どうせなら、泊まってく?」

    朋也「馬鹿。んなことできるかよ」

    「なんで? 明日は休みだし、みんなでサッカーする日だよ?」

    「ちょうどいいじゃん」

    朋也「そういうことじゃなくて…」

    男を泊める、というその意味に、なにか感じるところはないのだろうか。
    それとも、俺がそんな風に見られていないだけなのか。

    朋也「とにかく、もう、帰るよ」

    「ちぇ、つまんないなぁ…」

    朋也「じゃあな」

    「うん、また明日ねっ」

    ―――――――――――――――――――――

    460 = 43 :

    平沢家で過ごしていた今さっきまでの時間。
    それが別世界の出来事に思われるような、あまりに違いすぎる空気。
    気分が重くなる。
    ただ、静かに眠りたい。

    朋也(それだけなのにな…)

    ―――――――――――――――――――――

    居間。
    その片隅で、親父は背を丸めて、座り込んでいた。
    同時に激しい憤りに苛まされる。

    朋也「なぁ、親父。寝るなら、横になったほうがいい」

    やり場の無い怒りを抑えて、そう静かに言った。

    親父「………」

    返事は無い。
    眠っているのか、ただ聞く耳を持たないだけか…。
    その違いは俺にもよくわからなくなっていた。

    朋也「なぁ、父さん」

    呼び方を変えてみた。

    親父「………」

    ゆっくりと頭を上げて、薄く目を開けた。

    461 = 1 :

    そして、俺のほうを見る。
    その目に俺の顔はどう映っているのだろうか…。
    ちゃんと息子としての顔で…

    親父「これは…これは…」

    親父「また朋也くんに迷惑をかけてしまったかな…」

    目の前の景色が一瞬真っ赤になった。

    朋也「………」

    そして俺はいつものように、その場を後にする。

    ―――――――――――――――――――――

    背中からは、すがるような声が自分の名を呼び続けていた。
    …くん付けで。

    ―――――――――――――――――――――

    こんなところにきて、俺はどうしようというのだろう…
    どうしたくて、ここまで歩いてきたのだろう…
    懐かしい感じがした。
    ずっと昔、知った優しさ。
    そんなもの…俺は知らないはずなのに。
    それでも、懐かしいと感じていた。
    今さっきまで、すぐそばでそれをみていた。
    温かさに触れて…俺は子供に戻って…
    それをもどかしいばかりに、感じていたんだ。

    462 = 43 :

    ………。

    「だんごっ…だんごっ…」

    近くの公園から声がした。
    それは、今となってはもう耳に馴染んでいた声音。
    平沢だった。
    あんなところでなにをしているんだろう。
    俺はその場に呆然と立ちつくし、動くことができなかった。
    そうしている内、平沢が俺のいる歩道に目を向けた。
    こっちに気づいたようで、小走りで寄ってくる。

    「あ、やっぱり岡崎くんだ。どうしたの? うちに忘れ物?」

    朋也「いや、別に…」

    「じゃあ…深夜徘徊?」

    内緒話でもするように、ひそっと俺にささやいてくる。

    朋也「馬鹿…そんなわけあるか」

    もう俺は冷静だった。

    朋也「ただ、帰るには時間が早すぎたからさ…」

    「えー? もうお風呂あがって、バラエティ番組みててもおかしくない頃だよ?」

    朋也「俺にとっては早いんだよ。いつも夜遊びしてるような、不良だからな」

    463 = 1 :

    「またそんなこと言ってぇ…」

    朋也「おまえのほうこそ、こんなとこでなにやってたんだよ」

    「ん? 私はね、歌の練習だよ」

    朋也「こんな時間に、しかも外でか」

    「うん」

    朋也「それ、近所迷惑じゃないのか」

    校則さえまともに守れない俺が言うのも違う気がしたが。

    「大丈夫だよ。ご近所さんはみんな甘んじて受け入れてくれてるから」

    朋也「そら、懐の深い人たちだな」

    「私が小さかった頃から知ってるからかなぁ…みんな優しいんだよ」

    「とくに、渚ちゃんとか、早苗さんとか、アッキーとか…古河の家の人たちはね」

    そんな名前を出されても、俺にはピンと来ない。

    朋也「そっか…」

    朋也「なら、がんばって練習してくれ」

    言って、歩き出す。

    464 = 43 :

    「あ、岡崎くんっ」

    朋也「なんだよ」

    立ち止まる。

    「これからまだどこかにいくの?」

    朋也「ああ、そうだよ」

    「あした、体大丈夫?」

    朋也「まぁ、多分な」

    「っていうか、平日とかも、それで辛くないの?」

    「いつも、すごく眠そうだし…」

    「やっぱり、夜遊びはやめといたほうがいいんじゃないかな」

    朋也「いいだろ、別に。不良なんだから」

    「それ、本当にそうなのかな。今でも信じられないよ」

    「岡崎くん、全然不良の人っぽくないし…」

    朋也「中にはそういう不良もいるんだ」

    「前に、お父さんと喧嘩してるって言ってたよね?」

    465 = 1 :

    「それで、喧嘩が原因で、肩も怪我しちゃったって…」

    「それと関係ないかな?」

    「お父さんと顔を合わせないように、深夜になるまで外を出歩いて…」

    「それで、遅刻が多くなって、みんなから不良って噂されるようになって…」

    「違う?」

    なんて鋭いのだろう。
    あるいは、安易に想像がつくほど、俺は身の上を話してしまっていたのか。

    朋也「違うよ」

    俺は肯定しなかった。こいつの前では、悩みの無い不良でいたかった。

    「本当に、違う?」

    朋也「まだお互いのことよく知らないってのに…よくそんな想像ができるもんだな」

    「できるよ。そうさせるのは…岡崎くん自身だから」

    「きっと、なにか理由があるんだって、そう…」

    「そう思ったんだよ」

    朋也「もし、そうだとしたら…」

    朋也「おまえはどうするつもりなんだ」

    466 = 43 :

    訊いてみた。

    「岡崎くんは、私が遅刻しないように、いつも頑張って早くきてくれるから…」

    「私も、それに応えてあげたい」

    「できるなら、力になってあげたいよ」

    朋也「親父に立ち向かえるように、か…?」

    「それはダメだよ。立ち向かったりしたら…分かり合わないと」

    朋也「どうやって」

    「それは…」

    「すごく時間のかかることだよ」

    朋也「だろうな。長い時間がいるんだろうな」

    朋也「俺たちは、子供だから」

    俺は遠くを見た。屋根の上に月明かりを受けて鈍く光る夜の雲があった。

    「もしよければ…うちにくる?」

    平沢がそう切り出していた。
    それは、短い時間で一生懸命考えた末の提案なんだろう。

    「少し距離を置いて、お互いのこと、考えるといいよ」

    467 = 1 :

    「ふたりは家族なんだから…だから、距離を置けば、絶対にさびしくなるはずだよ」

    「そうすれば、相手を好きだったこと思い出して…」

    「次会った時には、ゆっくり話し合うことができると思う」

    「それに、ちゃんと夜になったら寝られて、朝も辛くなくなるよ」

    「一石二鳥だね」

    「どうかな、岡崎くん」

    「岡崎くんは、そうしたい?」

    朋也「ああ、そうだな…」

    朋也「そうできたら、いいな」

    「じゃ、そうしよう」

    事も無げに言う。

    朋也「馬鹿…」

    朋也「おまえは人を簡単に信用しすぎだ」

    近づいていって、頭に手を乗せる。

    「ん…」

    468 = 43 :

    くしゃくしゃと少し乱暴に撫でた。

    朋也「じゃあな。また明日」

    「あ…うん」

    背中を向けて歩き出す。
    俺は支えられた。あいつによって。
    いや、支えられた、というのは違うような気がする。
    あいつはただ、そばにいただけだったから。
    でも、それだけで、俺は自分を取り戻すことができた。
    同じようなことが前にもあった気がする。
    不思議な奴だと…そう、胸の内で感じていた。

    ―――――――――――――――――――――

    469 = 1 :

    4/18 日

    目が覚めたのは、昼に程近いが、一応午前中だった。
    久しぶりにゆっくり寝られたので、気分がいい。
    布団からも未練なく抜け出せた。
    その勢いに乗り、スムーズに洗顔と着替えも済ませた。
    そして、その他諸々の用意が出来ると、すぐに家を出た。

    ―――――――――――――――――――――

    適当なファミレスで食事を済ませ、退店する。
    腕時計を見ると、待ち合わせの時間まであと30分だった。
    ここからなら、歩いても十分間に合うだけの猶予がある。
    それがわかると、俺は学校へと足を向け、悠長に歩き出した。
    少し進んだところで、前方よりバスが走り去っていった。
    今降りてきたであろう乗客の集団も、ばらけ始めている。
    その中に、周囲とは異質な雰囲気が漂う女の子の姿を見つけた。

    朋也(お…琴吹だ)

    動きやすそうな服装で、バスケットと水筒を手に持っていた。
    歩きながら見ていると、どうやら俺と同じ方向に進んでいるようだった。
    あいつも、これから集合場所に向かうところなのだろう。
    ………。

    朋也(まぁ、後ろつけてくのもなんだしな…)

    俺は小走りで琴吹のもとへ駆け寄っていった。

    朋也「よ、琴吹」

    470 = 43 :

    追いつき、横から声をかける。

    「あら、岡崎くん。こんにちは」

    朋也「ああ、こんちは」

    「岡崎くんも、これから学校?」

    朋也「ああ、そうだよ。おまえもだよな?」

    「うん、そうよ」

    朋也「じゃ、そんな遠くないし、一緒にいかないか」

    「あ、いいねっ、それ。手をつないだりして、仲良くいきましょ?」

    朋也「いや、手って…」

    少しドモり気味になってしまう。

    「ふふ、冗談、冗談」

    くすくすと笑う。

    朋也(はぁ…なに焦ってんだ俺…)

    こいつを前にすると、どうも調子が狂ってしまう。

    471 = 1 :

    ―――――――――――――――――――――

    朋也「そういえばさ、おまえ、先週日曜バイトしてたよな」

    朋也「それも、このくらいの時間帯にさ。今日もあったんじゃないのか」

    「うん、そうなんだけどね。シフト代わってもらったの」

    朋也「昨日の今日でよく都合がついたな」

    「うん、まぁ、ちょっと無理いってお願いしたんだけどね」

    朋也「無理にか。なんでまた」

    「私も、みんなと遊びたかったから」

    シンプルな理由。
    動機としてはいびつな部類なんだろうけど、こいつが言うとまっすぐに見えた。

    「もう三年生だし、こういう機会もどんどん減っていくと思うの」

    「だから、思いっきり遊べる時間を大切にしたくて」

    朋也「そっか…」

    そう、今年はもう受験の年だ。
    気合の入った奴なんかは、今の時期から休み時間にも単語カードをめくっている。
    部活をしている奴だって、引退すれば即受験モードに入るだろう。
    こいつら軽音部も、どこかで区切りがつけばそうなるはずだ。
    大会のようなものがあるのかは知らないが、どんなに長くても秋ぐらいまでだろう。

    472 = 43 :

    それを考えると、本当に、今だけなのだ。
    まぁ、それも、俺や春原にとってはなんの関係もない話だが。
    きっと俺たちは最後までだらしなく過ごしていくことになるんだろうから。

    朋也「でも、それならバイトなんかやめて時間作ればいいんじゃないのか」

    「う~ん、でも、せっかく慣れてきたから、もう少し続けたくて…」

    「それに、少しでもお金は自分で稼いだものを使いたいから」

    朋也「おまえ、小遣いとかもらってないのか」

    「アルバイトを始めてからはもらってないかなぁ」

    朋也「へぇ…なんか、生活力あるな、おまえ」

    「そう? ありがとう」

    本当に、見上げたお嬢様だった。
    そのバイタリティはどこからくるんだろう。

    朋也(庶民の俺も見習うべきなんだろうな、きっと)

    ―――――――――――――――――――――

    「あ、岡崎くん、ムギちゃんっ」

    「お、来たか」

    「お待たせ~」

    473 = 1 :

    校門の前、雑談でもしていたんだろうか、輪になって固まっていた。
    メンバーは、軽音部の連中に加え、憂ちゃんと、真鍋がいた。
    春原はまだ来ていないようだ。

    「こんにちは、紬さん、岡崎さん」

    「こんにちは、憂ちゃん」

    朋也「よう」

    「岡崎、あんた憂ちゃんともよろしくやってるんだってな」

    朋也「よろしくって…なにがだよ」

    「とぼけんなって。一緒に買い物出かけたんだろ、きのう」

    また、知られたくない奴の耳に入ってしまったものだ…。
    きっと、談笑中にでも先日のことが話の種となってしまったんだろう。
    さっきから中野に冷たい視線を向けられているのも、それが理由に違いない。

    「やるねぇ、姉妹同時攻略か?」

    朋也「おまえ、ほんとそういう話にするの好きな」

    「んん? 実際そうなんじゃないんですかぁ?」

    朋也「違うっての…つーか、もういいだろ、このやり取り」

    「あんたがイベント起こすから悪いんだろぉ、このフラグ系男子め」

    474 = 43 :

    そんなジャンルはない。

    「ねぇ、りっちゃん。攻略って、なに? 弱点でも突いて一気にたたみかけるの?」

    「そんな、敵のHPを削る有効な攻撃のことじゃないって」

    「いいか? ここでいう攻略というのはだな、ずばり…」

    ぐっと腕に力を入れる。

    「ヒロインをいかに自分のものにするか、ということだ!」

    「ヒロイン?」

    「ああ。この場合ヒロインはおまえと憂ちゃんってことになるな」

    「ふむふむ。それで?」

    「おまえの好感度は十分だと踏んだ岡崎は、次のヒロイン、憂ちゃんに移行したんだ」

    「それで、一緒に買い物に行き、フラグを立てた」

    「ゆくゆくは憂ちゃんの好感度もMAXにして、自分に惚れさせる」

    「そして、おまえと憂ちゃんを同時に手に入れて、ハーレムエンド、ってとこかな」

    言いたい放題言われていた。

    「おお、すごいねっ!…って、えぇ!?」

    475 = 1 :

    「岡崎くん、今のマジなの!?」

    朋也「だから、違うっつの…」

    「だよね、岡崎くんはそんな人じゃないよね」

    「ずいぶん信頼されてんなぁ。じゃ、憂ちゃんはどうなの」

    「私ですか?」

    「うん。岡崎が彼氏って、どう?」

    「そうですね…そうだったら、楽しいと思います」

    「おお!? 脈アリだ?」

    「………」

    中野の視線が鋭さを増す。
    憂ちゃんにそう言ってもらえるのは素直に嬉しいが、この局面では複雑だ…。

    「でも、岡崎さんは、お兄ちゃんですから」

    朋也(ぐぁ…ここにきて…)

    「…お兄ちゃん?」

    「はいっ。ね、お兄ちゃん?」

    朋也「あ…いや…」

    476 = 43 :

    「…お兄ちゃん、私のこと嫌い?」

    朋也「いや…好きだよ…」

    ああ…俺はなにを言ってるんだ…

    「ありがとう、お兄ちゃんっ」

    場が凍りついているのがはっきりとわかる…
    終わりだ…俺はもう…

    DEAD END

    朋也(んなアホな…)

    「…まぁ、なんだ…そういう趣味か」

    朋也「い、いや、待て、説明させてくれっ」

    「言い訳があるんなら、聞いてやるよ。最後にな」

    朋也(最後ってなんだよ、くそっ…)

    朋也「あー、えっと、そうだな…」

    必死に頭の中で言葉を紡ぎだす。

    朋也「俺、ひとりっこでさ、だから、そういう兄妹とかに憧れがあったっていうか…」

    俺はしどろもどろになりながらもなんとか弁明した。

    477 = 1 :


    「ふーん、それで憂ちゃんに頼んだってことね」

    朋也「ああ、そうだよ」

    「ごめんなさい、少し悪乗りしちゃいました」

    朋也「もうお兄ちゃんは今後禁止だ」

    「はぁい」

    「ま、それでもかなり引くけどな」

    朋也「ぐ…」

    「でも、岡崎くんがお兄ちゃんってよくない?」

    「いや、全然」

    「えー、そうかなぁ。私はいいと思うんだけどなぁ…」

    「ね、お兄ちゃんっ」

    腕に絡んでくる。

    朋也「あ、おい…」

    「あ、お姉ちゃんずるいっ」

    もう片方も取られてしまう。

    478 = 43 :

    朋也「おい、憂ちゃ…」

    「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」

    突然奇声を発し、肩を怒らせずんずんとこちらに近づいてくる。

    「えいっ!」

    「うわぁっ」

    「きゃっ」

    無理やり平沢姉妹を俺から引き離し、距離をとった。

    「唯先輩、あんな人に近づいちゃだめですっ!」

    「え、でも…」

    「だめったらだめなんです! あの人は…変態です!」

    「そ、そんなこと…」

    「あります! だから、だめです!」

    「あ、あう…」

    「憂も!」

    「梓ちゃん、こわいよぉ…」

    479 = 1 :

    「いいから、返事は!?」

    「う、は、はい…」

    俺は呆然と、その力強く説き伏せられている様子を遠くから眺めていた。

    「はっは、変態だってよっ」

    朋也「………」

    「ま、元気出せって、ははっ」

    笑いながら、ぱんっと肩を叩き、中野たちがいるところまで歩いていった。

    朋也「……はぁ」

    思いのほかヘコむ。

    「あの…」

    朋也「…なんだよ」

    「梓が失礼なこと言って、すいません」

    朋也「ああ…まぁ、しょうがねぇよ、言われても」

    「そんな…梓はただ嫉妬してるだけっていうか…そんな感じなんだと思います」

    朋也「嫉妬?」

    480 = 43 :

    「はい。梓は、唯にかなり可愛がられてましたから…」

    「それで、岡崎くんに唯を取られちゃうんじゃないかって、多分そう思ったんだと…」

    「確かに、それはあるかもしれないわね」

    朋也「はぁ…」

    「だから、あの…元気出してくださいね」

    よほど落ち込んでいるように見えたのか、そう励ましてくれた。

    朋也「ああ、サンキュな。ちょっと救われた」

    少し大げさに立ち直った風を装う。
    一応、俺なりに礼儀をわきまえたつもりだ。

    「あ、そ、それはよかったです…」

    恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。
    割と顔を合わせているのに、まだ慣れないんだろうか。
    それとも、俺が苦手なのか…。

    「それにしても、あんなに取り乱す梓ちゃん、初めて見たわぁ…あんな梓ちゃんも、可愛くていいかも」

    「それに、岡崎くんにじゃれついてる時の唯ちゃんも、憂ちゃんも可愛いし…」

    「岡崎くんにはもっと頑張ってもらわなきゃねっ」

    くすくす笑いながら、おどけたように言う。

    481 = 1 :

    朋也(なにをだよ…)

    つんつん、と背中をつつかれる。

    朋也「あん?」

    「で、どっちが本命なの? 唯? 憂?」

    真鍋がひそひそと語りかけてきた。

    「あなたに唯を推した身としては、まず二股なんて許さないから」

    朋也「どっちでもねぇっての。つか、もうそういうのは勘弁してくれ」

    「そうしてほしいなら、さっさと結論を出しなさい」

    朋也「結論って、おまえ…」

    一度、深く息を吐く。

    朋也「そもそも、そんなんじゃねぇからこそ、やめてほしいんだけどな」

    「あなたがそうでも、唯のほうは違うわよ」

    朋也「いや、あいつもそんな気はないって言ってたぞ」

    「あの子自身、まだはっきりとは気づいてないだけよ」

    朋也「なんでおまえがそんなことわかるんだよ」

    482 = 43 :

    「幼馴染ですもの。唯のことはそれなりに観察してきたつもりよ」

    朋也「だとしても、おまえ自身恋愛したことないんだろ?」

    朋也「だったら、実体験に基づいてないぶん、説得力に欠けるよな」

    朋也「そんなの、おまえらしくないんじゃないのか」

    「それは…そうだけど…」

    朋也「仮に…仮にだぞ? 平沢がもしそうだったとしてもだ」

    朋也「俺が誰かに促されて、あいつの気持ちが未整理のまま結論出されたりするのは嫌なんじゃないのか」

    「………」

    しばし、沈黙する。

    「…そうね。私が間違ってたわ」

    すっと身を離した。

    「煙に巻かれたようで、少しシャクだけどね」

    朋也「そう言うなよ」

    「でも、やっぱりあなたはなかなか見所があるわ。どう? 例の話、考え直してみない?」

    朋也「いや、ありがたいけど、その気はない」

    483 = 1 :

    「そう。ま、一度断られてるしね。いいんだけど」

    そう言うと、俺から離れていった。
    向こうからは、部長たちが何事か騒ぎながら戻ってきている。
    また、騒がしくなりそうだった。

    ―――――――――――――――――――――

    春原「あれ、もうみんな来てんのか」

    春原が腹をぽりぽり掻きながら、ちんたら坂を上ってきた。

    「あれ、じゃねぇっつーの! もう20分遅刻だぞっ!」

    春原「わり、出掛けにちょっと10秒ストップに手出したら、長引いちゃった」

    「そんなもん暇なときにでもやれよなっ!」

    春原「ま、いいじゃん。さっさといこうぜ」

    「ったく、こいつは…」

    春原「って、その子、誰よ?」

    「あ、初めまして。私、平沢憂と言います。二年生です」

    春原「平沢? もしかして、妹?」

    「はい、そうです」

    484 = 43 :

    「いぇい、姉妹でぇす」

    春原「ふーん、あっそ。似てるね、顔とか」

    「ありがとうございますっ」

    似ている、はこの子にとって褒め言葉だったようだ。

    春原「ま、いいや。行くぞ、おまえら」

    「遅れてきた奴がえばんなってーの…」

    ―――――――――――――――――――――

    グラウンドまでやってくる。
    今日は運動部の姿もなく、広い場内は閑散としていた。
    おそらくは、他校で練習試合でもあって、出払っているのだろう。
    俺もまだバスケをやっていた時分、休みの日は大抵そうだった。
    なければ、普通に練習があったのだが。
    なんにせよ、サッカー部がいなくてよかった。
    …というか、いたらどうするつもりだったんだろうか。
    平沢がサッカー部の動向を知っていたとは思えない。
    となると…やっぱり、そこまで考えていなかったんだろうな…。

    朋也(それよりも…)

    朋也「今更だけど、勝手に使っていいのか、このコート」

    「え? だめかな?」

    485 = 1 :

    「別にいいんじゃね? うちらだってこの学校の生徒だし」

    朋也「いや、サッカー部の連中が気を悪くするんじゃないのかって話だよ」

    春原「まぁ、大丈夫でしょ」

    春原が答えた。

    春原「今いないってことは、今日は朝練だけだったか、よそで試合があったんだろうからね」

    春原「これから鉢合わせすることもないだろうし…あとでトンボだけ掛けとけばいいよ」

    ソースがこいつというのは普段なら心許ないが、一応元サッカー部だ。
    今回に限ってはそれなりに信憑性があった。

    「やけに自信たっぷりだな…なんか根拠でもあんの?」

    朋也「こいつ、元サッカー部だからな」

    「え、マジで?」

    春原「ああ、まぁね」

    「それできのう、実力がどうのとか言ってやがったのか…」

    春原「ま、んなこといいからさ、とっとと始めようぜ」

    朋也「そうだな。じゃあ、おまえ、番号入ったビブス着て、枠の中に立ってくれ」

    朋也「俺たち、かわるがわるシュートで狙うから」

    486 = 43 :

    春原「ってそれ、的が僕のみのストラックアウトですよねぇっ!?」

    「わははは! そっちのがおもしろそうだな!」

    春原「僕はまったくおもしろくねぇよ!」

    春原「最初はチーム分けだろ、チーム分けっ」

    朋也「じゃ、春原対アンチ春原チームでいいか」

    春原「僕を集団で攻撃するっていう構図から離れてくれませんかねぇっ!」

    朋也「でも、俺たち奇数だしな。綺麗に分けられないし」

    春原「だからって、僕一人っていうのは理不尽すぎるだろっ」

    朋也「じゃあ、おまえ、右半身と左半身で真っ二つに別れてくれよ。それで丸く収まる」

    春原「僕単体を無理やり偶数にするなっ!」

    春原「って、もうボケはいいんだよっ」

    春原「平沢、どうすんだ」

    「う~ん、そうだねぇ…まず、春原くんと岡崎くんは別チームにしなきゃね」

    春原「あん? なんで」

    「男の子だからね。分けておきたいから」

    487 = 1 :

    春原「ああ、なるほどね。いいよ」

    「後は私たちで別れるよ」

    春原「わかった」

    「じゃ、みんな、ウラかオモテしよう!」

    「久しぶりだなぁ、そんなことすんの」

    「律、なんでチョキを出そうとしてるんだ。じゃんけんじゃないんだぞ」

    「お約束お約束」

    皆平沢のもとに集合し、円を作っていた。

    春原「へっ、チーム春原対チーム岡崎の頂上決戦だな、おい」

    朋也「今までトーナメント勝ちあがってきたみたく言うな」

    春原「ドーハの悲劇が起こらなきゃいいけどねぇ、ふふん」

    こいつは、絶対ドーハの悲劇が言いたかっただけだ。

    ―――――――――――――――――――――

    チーム分けが終わり、メンバーが決まった。
    Aチームは、俺、憂ちゃん、真鍋、秋山、部長。
    Bチームは、春原、琴吹、中野、平沢。
    こっちの方が人数は多いが、春原は元サッカー部だ。

    488 = 43 :

    人材の差で、そこまでのハンデにはならないだろう。
    両陣営に別れ、ボールを中央にセットする。
    ちなみに、持ってきたボールは部長の弟のものだそうだ。
    それはともかくとして、先攻は春原チーム。

    春原「よし、キックオフだっ」

    横にいた中野からパスを受け、春原がドリブルで切り込んでくる。

    「おっと、通すかよっ」

    それに部長が対応した。

    春原「はっ、デコのくせにスタメン起用か。世も末だなっ」

    「なにぃっ! 本田意識して金髪にしたようなバカのくせにっ」

    「実力が違いすぎて違和感あるんだよ、アホっ!」

    春原「隙アリっ! とうぅっ」

    「わ、やべっ」

    股の間にボールを通され、突破される。
    屈辱的な抜かれ方だ。

    春原「ははは、甘いんだよっ」

    朋也「おまえがな」

    489 = 1 :

    春原「ゲッ、岡崎っ」

    通された先、俺が待ち構えていた。
    ボールを奪い、カウンターを仕掛ける。
    しかし初心者の俺では春原のようにボールコントロールが上手くいかない。
    走ってはいるが、スピードが出せないのだ。
    後ろからは春原が追ってくる。
    前からは中野。
    俺は周囲を見てパスを出せるか確認した。
    秋山が右サイドに上がっている。しかもフリーだ。
    好機と見て、パスを送ろうとした時…

    「ていっ!」

    ずさぁあっ!

    朋也「うぉっ」

    ボールではなく、直接俺の脚めがけてスライディングが飛んできた。
    間一髪かわす。

    「チッ」

    朋也(舌打ちって、おまえ…)

    春原「よくやった、二年!」

    春原がボールを拾う。

    「今度は絶対通さねぇーっ」

    490 :

    スパイだ祖りてぃあ

    491 = 43 :

    春原「平沢、押し込めっ」

    前線にいる平沢にパスを送った。

    「あ、ずりぃぞっ! 勝負しろよ!」

    春原「ははは、また今度な」

    「くそぅ、勝ち逃げしやがって…」

    朋也「真鍋、頼んだぞっ」

    真鍋は攻め込んできていた平沢をマークしていた。
    ボールを受けた平沢と一対一の状況になっている。

    「和ちゃん、幼馴染だからって手加減しないよっ」

    「その必要はないわ。あんた、運動神経ゼロじゃない」

    「ムカっ! メガネっ娘に言われたくないよっ」

    「なら、私を抜いてゴールを決めてみなさい」

    「言われなくてもっ」

    平沢が走り出す。
    …ボールをその場に置いたまま。

    「せめて、ボールを蹴るくらいはしなさいよ…」

    492 = 1 :

    ぼん、と蹴ってクリアする。

    「ああ!? 和ちゃんの鉄壁メガネディフェンスにやられた!」

    「なにもしてないけどね…」

    春原「なぁにやってんだよ、平沢っ」

    「ごめぇん、和ちゃんの動きが速すぎて見えなかったよぉっ」

    その珍回答に、ずるぅ、とこける春原。

    春原「…わけわかんねぇ奴だな…」

    朋也「秋山、いけっ、ドフリーだぞっ」

    さっきクリアされたボールは、秋山の手に渡っていた。
    ゴールを遮るものは、キーパー以外なにもない。
    ドリブルで進んでいく。

    「ムギ、私は本気でいくからな」

    「くす…どうぞ」

    「はぁっ」

    どかっ

    「みえたっ」

    493 = 43 :

    ばしぃっ!

    飛び込みキャッチでボールを抱え込む。

    「うわ、すごいな、ムギ…」

    「って、ムギ…?」

    琴吹はボールを抱え込み、そのまま足で締め上げていた。

    「あ、つい癖で…」

    ボールを持ち、立ち上がる。

    「掴んだら逆十字で折って、そのまま三角締めに移行するよう言われてるから…」

    つまり、ボールに関節技を掛けていたのか…。
    つーか、そんな球体に間接なんかない。

    「なんかわかんないけど、とりあえずすごいな…」

    「ありがと。そぉれっ」

    蹴りではなく、投げでボールをフィールドに戻した。
    それなのに、なかなかの飛距離があった。
    女にしては、かなりの強肩だ。

    「すご…」

    放物線を描き、やがて地面に着地する。

    494 = 1 :

    2,3バウンドした後、ころころと転がった。
    それを拾ったのは春原だ。
    またドリブルで切り込んでくる。

    「させるかっ」

    春原「またおまえか。おまえじゃ僕を止められねぇよ」

    「ふん、ほざけよ…」

    じりじりと膠着状態が続く。

    春原「ほっ」

    「あ、ちくしょっ」

    春原は一度パスを出すフェイントを入れ、スピードで抜き去った。
    俺がフォローに回る。
    すると、フリーになった中野にパスが回った。
    今度はこちらに失点の危機が訪れた。

    「憂、岡崎先輩側に回るなんて、許さないからっ」

    「そんなぁ、運だから仕方ないのにぃ…」

    「御託はいいのっ! やってやるですっ」

    「――――√v―^―v―っ!!」

    憂ちゃんが機敏に動き出す。

    495 = 43 :

    どかっ!

    「ここだよっ」

    バシィ!

    その移動した先、どんぴしゃでボールが飛んでいった。

    「な、なんで…私が打つ前に…」

    「うーん、先読みって奴かな?」

    ニュータ○プか。

    「く…憂…やっぱりあなどれない…」

    「憂ちゃーん、パスパース!」

    「はぁーい。いきますよぉ、律さん」

    ボールが高く蹴られた。
    グラウンドには、俺たちの声がこだましている。
    まるで、はしゃぎまわる子供のようだった。
    空を見上げる。
    天気もよく、すみずみまで晴れ渡っている。
    そんな中、たまにはこうやって健康的に汗を流すのも、悪くないものだ。

    ―――――――――――――――――――――

    「ふぃ~、ちかれたぁ~…」

    496 = 1 :

    「お疲れ様。はい、アイスティー」

    紙コップを渡す。

    「お、テンキュー」

    ひとしきり遊んだ後、ピクニックシートを敷いて休憩を入れていた。
    琴吹が用意してくれたケーキや紅茶、各自持ち寄った菓子類を囲んで座っている。

    「ぷはぁ、うめぇーっ」

    「確かに、運動の後の一杯は格別だよな」

    「運動か…じゃ、今日はカロリーとか気にせず食べられるな、澪」

    「別に、いつもそんな神経質になってるわけじゃ…」

    「嘘つけ、いつも写メで自慢のセルライト送ってくるじゃん」

    「そんなことしたことないだろっ」

    ぽかっ

    「あてっ」

    春原「ははっ、殴られてるよ、こいつ」

    「ツッコミだっつーのっ」

    朋也「おまえはいつもラグビー部に死ぬ寸前までガチで殴られてるけどな」

    497 = 43 :

    春原「言うなよっ!」

    「わはは、だっせーっ!」

    春原「黙れっ、負けチームっ」

    「ああ? まだ試合は終わってないだろ。つーか、たった一点リードしてるだけじゃん」

    「このハーフタイムが終わったら一気に逆転してやるよ」

    春原「ふん、せいぜい無駄な足掻きをすればいいさ」

    「けっ、威張ってられるのも今のうちだぜ」

    春原「はーっはっはっは!」
     「はーっはっはっは!」

    悪者のように高笑いする二人。

    「なんか、生き生きしてるよね、春原くん」

    隣にいた平沢が俺にそっと話しかけてくる。

    朋也「かもな。あいつがあんなノリノリになってる時なんて、あんまないからな」

    悪ふざけしている時ぐらいにしか見せない顔だった。

    「じゃあ、やってよかったのかなぁ、サッカー」

    朋也「ああ、多分な」

    498 = 1 :

    言って、頭に手を乗せようとすると…

    「ていっ」

    ばしっ

    朋也「って…」

    中野に払われてしまった。

    「唯先輩、このクッキーおいしいですよ。あ~んしてください。私が食べさせてあげます」

    「わぁ、ありがとうあずにゃんっ」

    「あ~ん」

    寄り添って、口にクッキーを運ぶ中野。

    「むぐむぐ…おいひぃ~」

    「ですよね」

    にやり、と俺を見てほくそ笑んでいた。

    朋也(なんなんだよ、こいつは…)

    ―――――――――――――――――――――

    「うし、そんじゃ、そろそろ再開するか」

    499 = 43 :

    菓子類も一通り食べつくし、しばらくだらけていると、部長がそう声を上げた。

    春原「後半戦の開始だね」

    「開始五分で逆転してやるよ」

    春原「はっ、軽く追加点取ってやるよ」

    「自分のゴールにハットトリックしてろ、オウンゴーラー春原め」

    春原「おまえこそ、レフリーに後ろからスライディングかまして一発退場してろ」

    ぎゃあぎゃあ言い合いながら立ち上がり、グラウンドへ向かって行った。
    残された俺たちも、やや遅れてそれに続く。
    すると…

    男>1「あれ? なにこいつら」

    男>2「あ、軽音部の子じゃね?」

    男>3「うぉ、マジだ」

    男>4「つか、春原もいるんだけど」

    男>5「岡崎もいるぞ」

    男>6「なに、あの組み合わせ」

    向こうから私服の男たちが6人、ぞろぞろとやってきた。

    500 = 1 :

    春原「ちっ…」

    俺は春原のそばまで小走りで寄っていった。

    朋也「おい、春原、あいつら…」

    春原「…ああ、サッカー部の連中だよ」

    朋也「練習しにきた…ってわけじゃないよな」

    春原「だろうね。向こうも僕らと同じで遊びに来たんだろ」

    なら、試合があったわけじゃなく、朝練が終わって解散していただけだったのか…。

    サッカー部員「おい、春原。ここでなにしてんだよ」

    話していると、ひとりの男が若干敵意を含んだ言い方でそう訊いてきた。

    春原「別に、遊んでるだけだっつの」

    サッカー部員「そっちの軽音部の子たちはなんなんだよ」

    春原「こいつらも、同じだよ」

    サッカー部員「は? おまえ、軽音部の子たちと遊んでんの?」

    サッカー部員「うわ、ありえねー」

    サッカー部員「こんな奴がよく取り合ってもらえたな」


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