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    元スレ朋也「軽音部? うんたん?」

    SS覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×5
    タグ : - 魔王 + - CLANNAD + - けいおん! + - クラナド + - ドラクエ + - 朋也 + - 朋也「けいおん?うんたん + - 涼宮ハルヒの憂鬱 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 = 43 :

    「ま、これ着てれば顔割れないし、恥ずかしくないからいいんじゃないか?」

    「そうだけど…はぁ…あんまり気が進まないな…」

    「私も…なんとなく嫌です…」

    「やってればそのうち楽しくなるよ、たぶん」

    「たぶんて…」

    「はぁ…」

    「私ニワトリー」

    「じゃ私豚ー」

    「私、犬~」

    部長を皮切りに、しぶっている部員も含め、皆選び始めた。

    朋也「おまえ、どうする」

    春原「あん? 適当でいいでしょ。余ったやつでいいよ」

    朋也「そうか」

    ―――――――――――――――――――――

    春原「………」

    53 = 43 :

    全員の着替えが終わる。
    …約一名、春原を除いて。

    「あれ? 一着たりなかったね」

    「どうするかなぁ、こいつは」

    「う~ん…」

    朋也「おまえ、全裸でいけ」

    「ぶっ」

    「ぜ…ぜん…」

    「それ、すごいインパクトだよっ」

    春原「死ぬわっ! 社会的にっ!」

    朋也「じゃあその上からロングコート一枚着込んでいいから」

    春原「典型的な変質者だろっ! 実質大差ねぇよっ!」

    「わははは!」

    「あの…春原先輩は染髪してますし、そのままでも十分インパクトあると思いますけど…」

    「それもそうだねっ」

    春原「なら、僕はこのままいくからなっ」

    54 = 43 :

    「待って、こんなものがあったんだけど…」

    その子が持ってきたのは、カエルの頭だった。

    「ムギちゃん、それって…」

    「うん、唯ちゃんが部室に置いてたカエルの置物」

    「あれ、頭部が脱着可能で、中が空洞になってたの」

    「ふ~ん、じゃあ春原、あんたこれつけてけよ」

    「はい、どうぞ」

    春原「カエルかよ……まぁ、いいけどさ」

    受け取り、装着する。

    春原「あれ? これ、前が見えないんだけど」

    「あ、そっか、目の部分、穴開けなきゃ…」

    「唯ちゃん…」

    「う~ん、しょうがないな…あけちゃおうか」

    「うし。じゃ、あんた、動くなよ」

    春原「わ、馬鹿、脱いでからあけろよ!」

    55 :

    がんばるな

    56 = 43 :

    「ははは、冗談だよ。そうビビんなって」

    いや…でも、もしかしてあいつなら…

    ―――――――――――――――――――――
    ―――――――――――――――――――――

    「あ、ちょっと動かないでね。外すと後味悪いから」

    春原「な、なにを…」

    「ショラァッ!」

    ゴッ ゴッ

    春原「ひぃっ」

    春原「あれ…前が見える…」

    二つの衝撃音と、春原の悲鳴の後、カエルの目の部分に穴が開いていた。

    「ひぇ~、相変わらずすごいな、ムギの“無極”」

    「うん。“無極”からの左上段順突き、右中段掌底で穴を開けた…」

    「普段ならあそこから“煉獄”につなげてるけど、今回は穴を開けるだけが目的…」

    「命拾いしたね、春原くんは…」

    ―――――――――――――――――――――

    57 = 43 :

    ―――――――――――――――――――――

    ということに…

    春原「おい、岡崎。なにぼけっとしてんだよ。もう出るみたいだぞ」

    朋也「あ、ああ」

    どうやらもう穴あけが終わっていたらしい。
    アホな妄想もほどほどにしなければ…。

    朋也(にしても、男の部員がいないよな…一応訊いておくか)

    朋也「なぁ、平沢」

    「ん? なに?」

    朋也「ここって女ばっかりだけど、男の部員は募集してないのか」

    「ん~、それはねぇ…私は別にいいんだけど…」

    ちらり、と横に立つ馬の着ぐるみに顔を向ける。

    「な、わ、私だって別に…でも、女の子同士のほうがいろいろとやりやすいっていうかだな…」

    「えっと…そ、そうだ、梓はどうなんだ? 来年はもう梓しか残らないんだし…」

    「どっちがやりやすいとか、あるか?」

    猫の着ぐるみに問いかける。

    58 = 43 :

    「私ですか? 私も別に…」

    「で、でも放課後ティータイムで活動してきたわけだし…」

    「やっぱり女の子のほうがいいかもな、うん」

    「こいつがこんな感じで恥ずかしがりだからさ、まぁ、できれば女で頼むわ」

    言って、ニワトリの着ぐるみが片手を上げた。

    朋也「ああ、わかった」

    ―――――――――――――――――――――

    春原「ふぁ~、かったるぅ」

    春原は地面に座り込み、ビラを数枚重ね、うちわのようにして扇いでいた。

    朋也「おい、おまえもそれ配れよ」

    俺と春原は、軽音部の連中とは別の場所で勧誘活動をしていた。
    あいつらは正門へ続く大通り、そして俺たちは玄関で張っている。

    春原「こんなもん配ったって効果ねぇよ」

    朋也「じゃ、どうすんだよ」

    春原「気弱そうな奴を脅せばいいんだって」

    春原「お、ちょうどいいところにカモ発見」

    59 = 43 :

    春原「おい、おまえ」

    高圧的な態度で進路を塞ぐようにして、通りかかった男子生徒のもとへにじり寄って行った。
    あの時の話を聞いていなかったのか、条件を完全に無視していた。

    子生徒「は、はい…?」

    春原「軽音部…入るよな?」

    子生徒「え、いや…僕ラグビー部にもう…」

    春原「ああ? おまえみたいなのがラグビー?」

    春原「ははっ、やめとけよ。死んじまうぜ? それに、あいつら馬鹿ばっかだから…」

    子生徒「誰が馬鹿だって?」

    春原「ひぃっ」

    春原の背後に現れたのは、同じ寮に住んでいるラグビー部の三年。

    ラグビー部員「その声、春原だろ。なにウチの部から引き抜こうとしてんだよ」

    春原「い、いや、ちがいま…」

    ラグビー部員「カエルの被り物なんかしやがって…バレバレなんだよっ。こっちこい!」

    春原「ひ…ひぃぃぃぃぃいい」

    そのままずるずるとどこかへ引きずられていってしまう。

    60 = 55 :

    文章自体はいいと思うんだが正直>>1で失敗してると思う
    VIPでいきなり地の文がズラズラならんでると読む気なくす
    まず朋也と唯の会話から入ったほうがよかったんじゃないか?
    続ける限りは読むけどさ

    61 :

    クラナドとけいおんかぁ
    パッとしないなw

    62 = 55 :

    まあけいおん厨と鍵厨はなんか違うなという気はする

    63 = 43 :

    どこまでもお約束な男だった。

    ―――――――――――――――――――――

    もういい時間になったので、とりあえず部室に戻ってくる。

    「ぁ、わわ…」

    「わぁっ! 春原くん、なんでそんなボコボコになっちゃたの?」

    春原の装備していたカエルは、ところどころひびが入り、返り血さえ浴びていた。

    春原「…大物を勧誘してただけだよ」

    「なにを勧誘したらそうなるんだっつーの…」

    ―――――――――――――――――――――

    着ぐるみを脱ぎ、身軽になる。
    今は全員でテーブルを囲み、ひと息入れていた。
    そのテーブルなのだが、ひとつひとつ机を繋げて作られたものらしかった。
    そこで急遽、俺と春原の分も継ぎ足してくれていたのだ。

    「で? そっちはどんな感じだった?」

    朋也「ビラは何枚か渡せたけど、けっこう逃げられもしたな」

    「そっか、こっちとあんま変わんないな」

    「なんで逃げられちゃうんだろ?」

    64 :

    前にも似たようなのあったよね
    しえ

    65 = 43 :

    春原「着てるもんが不気味なんだろ」

    「あんたがいうな。血なんかつけて軽くホラー入ってたくせに」

    春原「ふん…」

    「直接勧誘活動していいのは今日までだから、あとはもう明後日にかけるしかないな」

    「あさって? なんで?」

    「春休み中に予定表もらっただろ? みてないのか?」

    「う、うん。ごめん、みてない」

    「はぁ…まったく…」

    やれやれ、とため息をひとつ。

    「ほら、この時期はさ、放課後、文化部に講堂で発表する時間が与えられるだろ」

    「それで、軽音部は4/4木曜日の放課後からってことになってるんだよ」

    「まぁ、規模の小さい創立者祭みたいなものだな。去年もやっただろ?」

    「ああ、新勧ライブだね」

    「そうそう」

    「梓ちゃんはあの時のライブで入部を決めてくれたのよね」

    66 :

    けいおんとクラナドか。大支援。

    クラナドの女キャラも出してくれると嬉しいぜ。

    智代とか、生徒会にいないのか?

    67 = 43 :

    「そうですね。最初はジャズ研と迷ってましたけど、あのライブが決め手になりました」

    「やっぱり、重要だよな、新勧ライブは」

    「だな。そんじゃ、気合入れてがんばりますか、明後日は」

    部長が言うと、皆こくりと頷いていた。

    春原「なんか結論出たみたいだし、僕たち、もう帰るぞ」

    春原「いこうぜ、岡崎」

    朋也「ん…ああ」

    春原に言われ、席を立つ。

    「あ、まって」

    春原「あん? なに、まだなんかあんの?」

    「ケーキと紅茶あるんだけど、食べていかない?」

    春原「マジで?」

    「うん、ぜひどうぞ」

    春原「へへ、けっこう気が利くじゃん」

    68 :

    >>66
    和どうすんだよ

    69 = 52 :

    >>66
    いや、いらない邪魔になる
    これでバランス良い

    71 = 66 :

    >>68
    和の後輩として。

    72 = 43 :

    上機嫌で座り直す春原。

    「わぁ、待ってましたっ」

    「って、ムギ、こいつらにもやんの?」

    「うん、せっかく手伝ってくれたから…」

    「くぁ~、ええ子やで…感謝しろよ、てめぇら」

    春原「ああ、ムギちゃんにはするよ」

    「ムギちゃんって…いきなり馴れ馴れしいな、あんた…」

    「? 岡崎くんは、いらない?」

    座ろうとしない俺を見て、その子…確か、琴吹…が問いかけてくる。

    朋也「俺、甘いの苦手だからさ。帰るよ」

    「だったら、おせんべいもあるけど」

    朋也(せんべいか…)

    それなら…ご相伴に預かっておいてもいいかもしれない。

    春原「ただでもらえるんだぜ? 食っとけば?」

    朋也「ああ…そうだな」

    73 :

    超いい
    支援

    74 :

    これは久しぶりの良SS

    まぁそんなに絡まないなら出してもいいんじゃないから >クラナド女キャラ
    って確かに今のバランスはいいよね

    75 = 43 :

    「じゃ、みんな待っててね。今持ってくるから」

    ―――――――――――――――――――――

    春原「お、ウマイ」

    一口分にしたケーキの一片を口に放ると、すぐにそう感想を漏らしていた。
    よっぽどうまかったんだろう。

    「ほんと? よかったぁ」

    「岡崎くんはどう? おせんべい」

    朋也「ああ、うまいよ」

    せんべいの方も、醤油がよく染みていて、ぱりっとした歯ごたえもあり、いい味を出していた。

    「あはっ、よかった。持ってきた甲斐があったな」

    「ムギちゃんの持ってくるおやつって、いつもクオリティ高いよね」

    「だよな。これのために軽音部があるといっても過言じゃないな」

    「おもいっきり過言だからな…」

    春原「え、おまえらいつもこんなの食ってんの?」

    「うん。でね、食器類も、そこの冷蔵庫も全部ムギちゃんちのなんだよ。すごいでしょ」

    そう、この部室には食器棚と冷蔵庫が設置されていた。

    76 :

    登場人物は多くない方が特定の組み合わせでの
    やりとりが増えるから、今ぐらいのバランスの方が良いなあ

    支援

    77 = 43 :

    学校の備品で、物置代わりにされているのかと思っていたが…私物だったようだ。

    朋也「教師に何か言われたりしないのか」

    部室での飲食を含め、ここまでやれば、普通はお咎めがあるように思うのだが…どうなんだろう。

    「ああ、それは大丈夫。顧問がさわちゃんだからな」

    「あんた、さわちゃんの素顔、知ってる?」

    朋也「ああ、まぁ」

    「そか。なら想像つくだろ。あの人もここで飲み食いしてるんだよ」

    朋也「そうなのか…」

    朋也(つーか、あの人、軽音部の顧問だったのか…それで…)

    なぜ軽音部の手伝いだったのか、ようやく合点がいった。
    人手不足なだけではなかったのだ。そういうコネクションがあったからこそだった。

    春原「なんかここ、住もうと思えば住めそうだよね」

    朋也「おまえの部屋より人の住まい然としてるしな」

    春原「どういう意味だよっ」

    朋也「ほら、お前の部屋ってなんていうか、閉塞感あるじゃん。窓に格子とかついてるし」

    春原「それ、まんま牢獄ですよねぇっ!」

    78 :

    まさに俺得SSスレだ

    79 :

    CLANNADが一番好きな俺得スレ
    面白いわ、頑張れ

    80 = 43 :

    「わははは!」

    ―――――――――――――――――――――

    春原の部屋、いつものように寝転がって雑誌を読む。

    春原「あーあ、軽音部の手伝いって、いつまで続くんだろうね…」

    朋也「さぁな。でも部員集めは今日までだったみたいだし…」

    朋也「明後日なんかあるとかいってたから、それまでじゃねぇの」

    春原「それもそうだね」

    春原「でも、ケーキうまかったなぁ。あれが毎回出るなら、手伝うのも悪くないね」

    俺はせんべいとお茶だったが、確かにうまかった。

    朋也「だな」

    春原「明日はなにが出てくるんだろうね。お嬢様とかいってたし、キャビアとかかな」

    朋也「さすがにそれはねぇよ。金粉をまぶしたサキイカとかだろ」

    春原「そっちのがありえねぇよっ」

    春原「ま、なんにせよ、行けばわかるか、ふふん」

    朋也(こいつは…嫌がってたんじゃないのかよ)

    81 :

    昔CLANNADとけいおん!を混ぜたSSスレがあって、それはそれは立派な保守スレで終わりましたよ

    82 :

    もし力量に自信があるのなら古河一家だけで良いから追加してホスィ

    特にあっきーは

    83 = 70 :

    >>66
    けいおんの画風に智代は美少女すぎて違和感w

    84 = 43 :

    4/7 水

    「おはよう、岡崎くん」

    朋也「…はよ」

    「わ、今日は返事してくれるんだねっ」

    朋也「無視したことなんかあったか」

    鞄を下ろし、席に着く。
    ついで、思い返してみる。
    一応、態度は悪くとも反応はしていたはずだ。

    「きのうは挨拶かえしてくれなかったよ?」

    朋也(ああ…)

    そういえば、そうだったような気がする。
    あれはただ注目の的になったせいでたじろいでしまい、そんな余裕がなかっただけなのだが…。

    朋也「悪かったな」

    いちいち釈明するのも煩わしかったので、謝って話を終わらせることにした。

    「いいよ。これからずっと返事してくれればね」

    これからも挨拶され続けるのか、俺は。
    別に、そこまで親しくなろうとしなくてもいいのに。

    86 = 73 :

    >>81 よかったら詳細を教えてくれないだろうか

    87 = 43 :

    朋也「できるだけな」

    だから、イエスともノーともとれるよう、そう答えておいた。

    「うむ、よろしい」

    腕を組み、こくこくと頷く。

    「あ、それと、岡崎くん。やっぱり、遅刻はだめだよ?」

    朋也「いいんだよ、俺は。不良だって知ってるだろ」

    「う~ん、でも、そうは見えないんだけどなぁ…」

    「だって岡崎くん、優しいよね。ちょっと乱暴なところもあったけど…」

    もうこれは、あの時のことを言っていると思って間違いないんだろう。
    平沢が体をぶつけられ、プリントをばら撒いてしまった時のことだ。
    ならやっぱり、昨日もそうだったのだ。
    大勢の前で、俺がいい人であるなんてことを保障していた。
    …そんなわけないのに。

    朋也「その乱暴なところが不良だっていうんだよ」

    「でも、あれはその…私のためにっていうか…」

    朋也「馬鹿。勘違いするな。あいつらが気に入らなかっただけだ」

    朋也「おまえのためじゃない」

    88 = 43 :

    「でも、止めたらちゃんと聞いてくれたし…そのあと一緒にプリント拾ってくれたよ?」

    朋也「そのくらいで優しいなんて言ってたら、悪人なんてこの世にいないぞ」

    「そんなぁ…私には十分いい人に思えるけどなぁ…」

    朋也「思い違いだ」

    「そんなことない」

    朋也「なんでそう言い切れるんだよ…」

    「う~ん…なんでかな」

    首をかしげる。

    「でも、そう思うんだよね」

    朋也「そう思って、いつか痛い目見ても知らねぇからな」

    「大丈夫。そんな目にはあわないよ」

    また言い切っていた。
    「私は、岡崎くんがいい人だって信じてるから」

    結局、この結論に戻ってきていた。いい加減、面倒になってくる。

    朋也「…好きにしろよ」

    89 :

    いくらなんでも外野が口出し杉だ
    このSSを支援しつつ見守ろうぜ

    90 = 43 :

    どうせ、俺がどういう奴かわかれば、すぐ離れていくだろう。
    こいつが好意的に接してくるのも、それまでだ。

    「うん、好き放題するよっ」

    朋也(はぁ…)

    また、妙な奴と関わってしまったものだと…
    窓の外、晴れ渡った空を見ながら思った。

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    「ん~、やっとお昼だ」

    隣で平沢が伸びをして、解放感に浸っていた。

    「ねぇ、岡崎くんも一緒に食べない?」

    ひょい、と手前に弁当箱を掲げた。

    朋也「いや、俺、学食だから」

    「学食かぁ、私いったことないなぁ…おいしいの?」

    朋也「別に。普通だよ」

    91 = 43 :

    「そっかぁ…あ、引き止めちゃってごめんね。いってらっしゃい」

    朋也「ああ、それじゃ」

    見送られて席を立ち、いまだ机に突っ伏している金髪を起こしに向かった。

    ―――――――――――――――――――――

    春原「おまえね…もっと普通に起こせよ…」

    朋也「なにがそんなに不満なんだよ」

    春原「不満しかないわっ! 起きたら黒板けしの粉の霧に包まれてたんだぞっ!」

    春原「なにが、ミノフスキー粒子散布だよっ! ちょっと気管に入っただろっ!」

    朋也「それくらい許せよ。ちょっとした余興だろ」

    春原「昼飯前の余興で変なもん口に含ませないでくれますかねぇっ!」

    ―――――――――――――――――――――

    春原「そういやさ…」

    春原が水を飲みほし、口を開いた。

    春原「軽音部の手伝いが終わったら、次はなにさせられるんだろうね」

    春原「まさか、これだけで終わりなんてことはないだろうしさ」

    92 = 43 :

    朋也「さぁな。草むしりでもさせられるんじゃねぇの」

    言って、カレーを口に運ぶ。

    春原「うげ、めんどくさ。雑用系は勘弁して欲しいよなぁ…」

    春原「とくにトイレ掃除とかはね。この前なんか、見ちゃったんだよね、僕」

    春原「便器にさ、すっげぇでかいウン…」

    ぴっ、と春原の目にカレーの飛まつを飛ばす。

    春原「ぎゃあああああああああぁぁあぁ辛口ぃぃぃいいっ!!!」

    地面に倒れこみ、もんどりうつ春原。

    朋也「カレー食ってるときにそんな話題は避けろ、アホ」

    春原「うぐぐ…そんなの、口で言ってくれよ…」

    這い上がるようにして、なんとか体勢を元に戻す。

    春原「いつつ…ふぃ~…うわ、なんか福神漬け出てきた…」

    おしぼりで目を冷ましつつ、拭き取り始める。

    春原「ところでさ、軽音部って、よく見たらかわいいこばっかだったよね。部長は除くけど」

    春原「おまえもそう思わない? 部長は除くけど」

    93 = 43 :

    朋也「そうか? つーかおまえ、あの部長敵視してんのな」

    春原「まぁね。なんか気に食わないんだよね、生意気だし、下品だし」

    明らかに同属嫌悪というやつだった。

    朋也(つーか、おまえがそれを言うのか…)

    部長が気の毒でならなかった。

    ―――――――――――――――――――――

    「おかえり~」

    学食から戻ってくると、軽音部の連中が平沢の周りに集まっていた。
    相変わらず部長は俺の席に陣取っている。
    各自弁当箱を机の上に置いているところを見るに、食事が終わってそのまま雑談でもしていたんだろう。

    「おかえりって…夫婦のやり取りかよ。それも、こんな昼下がりに…」

    「意味深だなぁ、おい」

    「まぁ、りっちゃんたら、深読みして…ふふ」

    「う~、違うよぉ。っていうか、昼下がりなことがなにか関係あるの?」

    「ふ…そう、それはずばり、昼下がりの情事…」

    「昼下がりの…情…うぅ…」

    94 = 1 :

    「りっちゃんなに言ってんの」

    朋也「なんでもいいけど、部長、どいてくれ」

    「こりゃ失敬」

    俺は席に着き、部長は平沢の後ろに回った。

    「はっ、まずい、りっちゃんに背後取られたっ!」

    「ま、間に合わない…アレを…くらうっ…あのハンマーフックをっ…」

    「もうお前ができることは病院のベッドの上で砕けたあごを治療することだけだっ」

    スローモーションで平沢の顔面にこぶしをくりだす。

    「お…おおっ…!!!?」

    ぐにゃり、と緩やかにめり込んでいった。

    「唯ちゃんは殴られる直前に後ろに跳んでる…まだ戦えるよっ」

    「ムギ…おまえまでこんな茶番に合わせなくていいからな…」

    子生徒「あの…すんません。いいですか」

    「え? あ…」

    いつの間にか一人の男子生徒が所在無さげに立ちつくしていた。
    その席本来の主だった。

    96 = 43 :

    「こ、こっちこそ、すみません…」

    慌しく立ち上がり、席を譲る。

    「あ~あ、いつまでも人の席でだべってるからそういうことになるんだよ」

    「和を見習えよな~。ちょっと話した後すぐ席に戻って次の授業の準備してんだぜ?」

    「う、うるさいな、おまえが言うな」

    「でも、そろそろ戻ったほうがよさそうなのは確かだな。私はもう戻るよ」

    「じゃ、私も」

    「待てっ! 部長である私が一番戻るんだよぅっ」

    「一番戻るって…意味がわからん…」

    「あはは」

    かしましくそれぞれの席へと散って行った。

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    配布係の仕事のため、平沢と共に職員室までやってくる。
    俺はここで、さわ子さんにひとつ訊いておきたいことがあった。

    97 :

    席とられてるとちょっと困るよな

    98 = 1 :

    朋也「平沢、先いっててくれ」

    「え? なんで? 一緒にいこうよ」

    朋也「野暮用があるんだよ。すぐ追いつくから、行け」

    「ちぇ、わかったよ…」

    平沢を先に帰し、さわ子さんのもとへ向かう。

    さわ子「あら? なにか用? 岡崎くん」

    朋也「あのさ、軽音部の手伝いのことなんだけど、明日まででいいんだよな?」

    さわ子「う~ん、そうね、明日だものね、軽音部の新勧ライブ」

    さわ子「うん、いいわよ」

    朋也「それで俺たちの遅刻、欠席のペナルティはチャラ、ってことには…」

    さわ子「そこまで甘くないわよ」

    予想はしていたが、やっぱりまだなにかしら続くようだった。

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    99 = 1 :

    放課後。

    「岡崎くんたち、今日も来てくれるの?」

    朋也「手伝いを命じられてるからな」

    「そんなこと関係なく来てくれていいのに」

    朋也「迷惑だろ」

    「そんなことないよ。なんか男の子いるのって、新鮮でいいもん」

    朋也「じゃ、男の部員が入ってくること祈っとけ」

    「でも、どこの馬の骨かわからない人より、岡崎くんたちのほうがいいよっ」

    それはせっかくの新入部員に対して失礼なんじゃないのか…。

    「おぅ、唯、いこうぜ~」

    軽音部の連中が固まってやってくる。

    「うん、待って~」

    平沢もそこに加わり、廊下へ出ていった。

    春原「いこうぜ、岡崎」

    入れ替わるようにして春原が現れる。

    100 = 1 :

    朋也「ああ」

    ―――――――――――――――――――――

    「うん?」

    廊下、軽音部員たちの後ろを歩いていると、部長が振り返った。

    「あんたら、なんでついてきてんの?」

    春原「今日もいやいや手伝ってやるっつーんだよ。それ以外の理由があるかっての」

    「いや、今日はいらねぇよ。練習するだけだし。明日の設備搬入の時にこいよな」

    春原「あん? せっかくここまでついて来てやったんだから、茶ぐらい出せよ」

    「頼んでねぇし、ありがたくもねぇ! 帰れ帰れ、しっしっ!」

    「まぁまぁ、お茶なら私が出すから」

    「ムぅギぃ~…」

    春原「お、さすがムギちゃん、話がわかるねぇ」

    「なにがムギちゃんだよ、ほんっと馴れ馴れしいな…」

    春原「ふん、僕とムギちゃんの仲だから、愛称で呼び合っても不思議じゃないんだよ」

    「きのう会ったばっかだろ…」


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