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    元スレ朋也「軽音部? うんたん?」

    SS覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×5
    タグ : - 魔王 + - CLANNAD + - けいおん! + - クラナド + - ドラクエ + - 朋也 + - 朋也「けいおん?うんたん + - 涼宮ハルヒの憂鬱 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    251 = 43 :

    「じゃあ、休み時間にラブトークしてるっていうのは…」

    朋也「するわけない…」

    「そうですか…」

    安堵した表情で、胸をなでおろすような仕草。

    「じゃあ、律先輩のいつもの冗談だったんだ…」

    朋也「なに言ったか知らないけど、九割嘘だ」

    「え? じゃあ、残りの一割…あれは本当だったんですか…」

    朋也「なんだよ、それ」

    少し気になった。
    だが、残り一割なら、そうたいしたことはなさそうだ。
    もしかしたら、事実かもしれない。
    よく話しているとか、そんな程度のこと。

    「焼きそばパンを両端から食べあって真ん中でキスするっていう…」

    めちゃヤバイのが残っていた!

    朋也「それより軽いの否定してんのに、ありえないだろ…」

    「ですよね…ちょっとテンパッちゃってました」

    だろうな…。

    252 = 1 :

    朋也「あー…まぁ、誤解も解けたし、もういいよな。それじゃ」

    言って、もと来た道を引き返し始める俺。

    「あ、まってください!」

    後ろから声。
    振り返る。

    朋也「なんだよ」

    「あの…失礼なことしたお詫びに、なにかしたいんですけど…」

    「私にできることならします。なんでもいってください」

    朋也「なんでも?」

    「はい。できる範囲でですけど…」

    朋也(そうだな…)

    朋也「じゃ、昼おごってくれ。飯まだなんだ」

    「それくらいなら、まかせてください」

    もともとハンバーガーを食べるつもりだったのだ。
    それくらいなら、そう負担にもならないだろう。

    ―――――――――――――――――――――

    253 = 43 :

    店に入る。昼時は少し過ぎたとはいえ、人が多い。
    とりあえず並んで順番を待つ。

    ―――――――――――――――――――――

    店員「いらっしゃいませ~」

    朋也「あ」
     「あ」

    店員「あら…」

    その店員も、一瞬接客を忘れて素の反応が出てしまっていた。
    俺たちも、向こうも、相手のことを知っていたからだ。
    つまりは知り合いだ。

    「店内でお召し上がりになりますか?」

    琴吹だった。
    もう店員としての顔を取り戻している。

    朋也「ええと、そうだな…」

    「私も頼むんで、店内でお願いします」

    横から、そう俺に伝えてくる。

    朋也「ああ、じゃ、店内で」

    「かしこまりました。ご注文をどうぞ」

    254 = 1 :

    朋也「チーズバーガー3つと、水」

    「はい」

    ピッピッ、とレジに打ち込んでいく。

    「お会計は、おふたりご一緒でよろしいでしょうか」

    「あ、はい」

    「かしこまりました。では、ご注文をどうぞ」

    「えっと…このネコマタタビセットをひとつ」

    「はい」

    同じように、またレジに入力する。
    会計が出ると、中野が支払いを済ませた。

    「では、この番号札でお待ちください」

    札を受け取り、空席を探しに出た。

    ―――――――――――――――――――――

    朋也「琴吹ってお嬢様なんだろ」

    「そう聞いてます」

    朋也「なんでバイトなんてしてるんだろうな」

    255 = 43 :

    「それは…多分あこがれがあったんだと思います」

    朋也「あこがれ?」

    「はい。なんていうか、庶民的なことに」

    朋也「ふぅん…」

    「インスタントコーヒーとか、カップラーメンにも感動してました」

    朋也「へぇ…」

    反動というやつだろうか。俺にはよくわからなかった。
    いや…まてよ…庶民的なことに心動かされるということは…
    春原とは相性がいいかもしれない。
    あいつは典型的な庶民だからな…。
    俺も人のことはいえないが。

    「あの…チーズバーガー3つで本当によかったんですか?」

    「飲み物も水ですし…」

    朋也「ああ、俺小食だから」

    いくらおごりといっても、腹いっぱいになる量を頼めるほど図太くなれない。
    あとで適当な定食屋にでも寄ればいい。

    「そうですか。うらやましいです」

    朋也「おまえが頼んでたネコマタタビセットって、なに」

    256 = 1 :

    なんとなく気になっていたので、訊いてみる。

    「あれはですね、マタタビ味のするハンバーガーとジュース、ポテトがついてきます」

    朋也(マタタビ味…)

    どんな味がするんだろう…。

    「そして、なんと、電動ねこじゃらしもついてくるんです」

    つまり、よくある玩具がついてくるセットのようなものなのか。

    朋也「ふぅん。それで、バーガーの肉は猫なのか」

    「そんなわけないじゃないですか。怖すぎますよ」

    きわめて冷静に返されてしまった。
    冗談で言ったのに、俺がバカに見えて、ちょっと恥ずかしくなってしまう。

    「お待たせしました」

    そこへ、注文の品を持った琴吹が現れた。

    朋也「あれ、おまえレジじゃなかったのか」

    「ちょっとわがまま言ってかわってもらったの」

    朋也「なんで」

    「私が持ってきたかったから」

    257 = 43 :

    その理由を訊いたつもりなのだが…。

    「どうぞ、梓ちゃん」

    「ありがとうございます」

    「岡崎くんも」

    朋也「ああ、サンキュ」

    盆を受け取る。

    「ところで…」

    俺の耳にそっと顔を寄せる。

    「唯ちゃんはいいの?」

    ばっと勢いよく振り返り、顔を見合わせる。

    朋也「おまえまで、俺と平沢がそんなだと思ってんのか」

    「あれ、ちがった?」

    朋也「違うに決まってるだろ」

    「そうなの? なぁんだ…」

    にこやかに微笑む。
    悪びれた様子はまったくない。

    258 = 1 :

    無垢な子供のようだった。
    これでは強く言うこともできなくなる。

    朋也(はぁ…なんつーか、人徳ってやつなのかな)

    冷静になったところで、思い出したように気づく。
    琴吹と顔を間近に突き合わせてしまっていることに。
    そういえば、さっきから、ふわりといい匂いが鼻腔をかすめていた。
    俺は思わず視線を外してしまう。
    琴吹は、ふふと笑い、俺から離れた。
    そして、ごゆっくり、と店員然としたセリフを言い残し、カウンターへ戻っていった。

    朋也(なんだかなぁ…)

    俺より余裕があって、負けた気分になる。
    お嬢様なのに、もう大人の風格を身につけているというか…。

    「なに話してたんですか」

    朋也「いや、ささくれの処理の仕方についてだよ」

    「はぁ…そんなのひそひそやらなくてもいいと思いますけど」

    朋也「ちょっとエグイ部分もあったから、店員のモラル的にまずかったんだよ」

    「そうですか…よくわかりませんけど」

    ―――――――――――――――――――――

    食事を終え、店を出る。

    259 :

    男の前だと微妙にキャラが変わる唯が、なんかリアルだな。

    261 = 43 :

    朋也「昼飯、ありがとな」

    「いえ、そんな」

    朋也「そんじゃ」

    「はい」

    ―――――――――――――――――――――

    朋也(ここでいいか)

    中野と別れてからしばらく飯屋を探し回っていたのだが…
    ショーウインドウのモデルメニューに惹かれ、ようやっと店を決めた。
    中に入る。

    ―――――――――――――――――――――

    ガー

    腹を満たし、自動ドアをくぐって店を後にする。

    朋也(けっこううまかったな…)

    朋也(…ん?)

    道に沿うようにして広がる花壇の淵、そのコンクリート部分。
    そこに腰掛け、一匹の猫と戯れる女の子がいた。
    手には、うぃんうぃん動くねこじゃらし。

    262 = 1 :

    「…あれ」

    こっちを見て、そう口が動いた気がした。
    次に、俺の後ろにある飯屋に目をやった。
    そして、立ち上がると、こちらに近づいてくる。
    猫はちょこんとその場に座り続けていた。

    「あの…岡崎先輩、今ここから出てきませんでしたか?」

    俺がさっきまでいた店を指さす。

    朋也「ん、まぁ…」

    「やっぱり、あれだけじゃ足りなかったんですね」

    「私に遠慮してくれてたんですか」

    朋也「いや、急に小腹がすいたんだよ」

    「そんなレベルのお店じゃないと思うんですけど」

    ショーウィンドウを見ながらいう。
    デザート類はあったが、それ以外はしっかりしたものばかりだった。

    「お詫びできたことになってないです…」

    朋也「いや、十分だって」

    「でも…」

    263 = 43 :

    食い下がってくる。

    朋也(どうするかな…)

    朋也「…じゃあさ、あれでいいよ」

    俺は猫を指さした。

    「え?」

    猫のいる方に歩き出し、その隣に座る。
    顎下をなでると、にゃ~、と鳴き、体をすり寄せてきた。
    遅れて中野もついてくる。

    「あの…」

    朋也「こいつとじゃれるのでチャラな」

    「でも、私の猫ってわけじゃないですし」

    言ながら、俺とその間に猫を挟むような位置に座る。

    朋也「じゃ、その猫じゃらし貸してくれ」

    「あ、はい、どうぞ」

    受け取る。
    みてみると、弱、中、強と強さ調節があった。
    強にしてみる。

    264 = 1 :

    うぃんっうぃんっ!

    激しく左右に振れだした。
    ………。
    駆動音といい、挙動といい…ひわいなアレを連想してしまう…。

    朋也(いかんいかん…)

    気を取り直し、猫の前に持っていく。
    猫もその早い動きに対して、高速で対応していた。
    バシバシバシ、と猫パンチが繰り出される。
    その様子がおもしろかわいかった。
    一通り遊ぶと、俺は満足してスイッチをオフにした。

    朋也「ほら」

    「あ、はい」

    猫じゃらしを返す。
    その折、猫の頭をなでた。
    しっぽをぴんと立て、体をよせてくる。

    「なつかれてますね」

    朋也「こいつが人に慣れてるんだろ」

    野生という感じはあまりしない。
    人から食べ物でもよくもらっているんだろうか。
    媚びれば、餌にありつけるという計算があるのかもしれない。

    265 = 43 :

    朋也「そういえば、俺たち、反対方向に別れたよな」

    朋也「なんでここにいるんだ」

    「それは…」

    恥ずかしそうに目をそらせた。

    「…この子をみつけて、追いかけてたからです」

    朋也「逃げられたのか」

    「はい…」

    朋也「おまえ、マタタビなんとかっての食ってたし、寄ってきそうなもんだけどな」

    「逆に避けられました…それで、ここでやっと止まってくれたんです」

    朋也「気まぐれだよな、猫って」

    「ほんと、そうですよ」

    優しい笑みを浮かべ、猫をなでた。
    すると、甘えたように中野のひざの上で寝転び始めた。

    「かわいいなぁ…」

    中野がなでるたび、ごろごろと鳴いて、心地よさそうだった。

    朋也(いくか…)

    266 = 1 :

    立ち上がる。

    朋也「それじゃな」

    今日二回目の別れ。

    「あ、あの、お詫びの件は…」

    朋也「だから、猫じゃらしでチャラだって」

    そう告げて、反論される前に歩き出す。
    ひざの上には猫がいる。それをどけてまで追ってはこないだろう。
    これから俺が向かう先は、当然坂下にある学生寮。
    もういい加減春原の奴も起きている頃だろう。
    まだ寝ているようなら、俺のいたずらの餌食になるだけだが。
    その時はなにをしてやろうか…などと、そんなことを考えながら足を運んだ。

    ―――――――――――――――――――――

    267 = 46 :

    面白い

    268 = 43 :

    4/12 月

    朋也(……朝か)

    カーテンの向こう側から朝日が透過して届いてくる。
    その光が目に痛い。頭も擦り切れたように思考の巡りが悪い。
    先日は起きる時間が遅れていたので、うまく寝つくことができなかったのだ。
    俺は今の今まで、小刻みに浅い眠りと覚醒を繰り返していた。

    朋也(今日はもうだめだ…サボろう…)

    混濁する意識の中、そう思った。
    まぶたを下ろす。
    ………。
    そういえば…

    朋也(今日も待ってんのかな、あいつ…)

    あの日、待つことにした、とそう言っていた。
    俺が今日サボれば、あいつも欠席になってしまうんだろうか。
    まさか、そこまでしないだろうとは思うが…。
    きっと、適当なところで切り上げるだろう。

    朋也(関係ないか、俺には…)

    頭の中から振り払うように、寝返りをうつ。

    朋也(だいたい、俺が風邪引いて休むことになった時はどうするつもりだったんだよ…)

    朋也(………)

    269 = 1 :

    朋也(……ああ、くそっ)

    考え出してしまうと、気になってしょうがなかった。
    俺は布団から出た。
    学校へいく準備をするために。

    ―――――――――――――――――――――

    「おはようっ」

    やっぱり、いた。

    朋也「…おはよ」

    「今日は早いんだねっ。これならまだ間に合うよっ」

    朋也「ああ、そう…」

    「なんか、すごく眠そうだね。やっぱり、体が慣れてない?」

    朋也「ああ…」

    「これから徐々になれていこう。ね?」

    朋也「ああ…」

    270 = 43 :

    「じゃ、いこっ」

    朋也「ああ…」

    ―――――――――――――――――――――

    「岡崎くんさ、今日早かったのって、もしかして…私のため?」

    朋也「ああ…」

    「そ、そうなんだ…うれしいよ。やっぱり、岡崎くんはいい人だったよっ」

    朋也「ああ…」

    「岡崎くん?」

    朋也「ああ…」

    「さっきからリアクションが全部 ああ… なのはなんで?」

    271 = 1 :

    朋也「ああ…?」

    「微妙な変化つけないでよ…もう、真剣に聞いてなかったんだね…」

    ざわ…
         ざわ…

    朋也「ああっ…!」

    ざわ…
        ざわ…

    「某賭博黙示録みたいになってるよっ…!」

    ―――――――――――――――――――――

    学校の近くまでやってくる。
    うちの生徒もまだ多く登校していた。
    こんな風景を見るのはいつぶりだろうか。
    もう、長く見ていなかった。

    朋也(にしても…)

    こんな中をふたり、こいつと一緒に歩くのか…。
    周りからはどう見られてしまうんだろう。
    みんな、そんなの気にも留めないのかもしれないけど…
    万が一、軽音部の連中のように、勘違いする奴らが出てきたらたまらない。

    朋也「おまえ先にいけ」

    272 = 43 :

    立ち止まり、そう告げた。

    「え? なんで? ここまで来たんだから最後まで一緒にいこうよ」

    朋也「いいから」

    「ぶぅ、なんなの、もう…」

    不服そうだったが、しぶしぶ先を行ってくれた。
    俺も少し時間を置いて歩き出した。

    ―――――――――――――――――――――

    教室に着き、自分の席に座る。

    「なんであそこから別行動だったの?」

    座るやいなや、すぐに訊いてきた。

    朋也「おまえ、恥ずかしくないのか。俺と一緒に登校なんかして」

    「恥ずかしい? なんで? おとといだって一緒だったじゃん」

    朋也「いや、だから、それが原因で俺たちが、その…」

    「うん?」

    きょとん、としている。
    そういうことに無頓着なんだろうか、こいつは。

    273 = 1 :

    朋也「…付き合ってるみたいに言われるのがだよ」

    「あ、そ、それは…えっと…」

    「私は別に……あ、いや…岡崎くんに迷惑だよ…ね…?」

    朋也「まぁ、な…」

    というか、おまえはいいのか…。

    「あはは……だよね…気づかなかったよ、ごめんね…」

    朋也「ああ、まぁ…」

    「………」

    少し驚く。あの平沢が目に見えて落ち込んでいた。
    今までなら、そっけなくしても、ややあってからすぐ持ち直していたのに。
    少し打ち解けてきたと思ったところで拒絶されたものだから、傷も深いんだろうか。
    …でも、これでよかったのかもしれない。
    これで朝、俺を待つなんて、そんな不毛なことをしなくなってくれれば。
    それがお互いのためにもいいはずだ。

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    4時間目の授業が終わり、昼休みになった。

    274 = 43 :

    朋也(はぁ…きっつ…)

    朝から授業を受けて蓄積した疲労が堪える。
    休憩時間も、全て机に突っ伏し、回復に当てて過ごしていたにも関わらずだ。
    そもそも、俺が朝からいたことなんて、ほんとうに数えるくらいしかないのだ。
    出欠を取ったとき、さわ子さんも俺がいることにたいそう驚いていた。
    替え玉じゃないかと疑っていたくらいだ。
    そんな、代返ならまだしも、替え玉出席なんて聞いたこともないのに。
    それくらいイレギュラーな事態だったのだ。

    朋也(飯、いくか…)

    ふと、隣が気になった。
    思えば、ずっと静かだったような気がする。
    いつもなら、軽音部の誰かがやってきてふざけあっていたのに。
    少し心に余裕ができた今、ようやくそのことに違和感を覚えた。
    窺うようにして、隣を横目で見てみる。

    「…ん? なに」

    朋也「いや…別に」

    「…そ」

    朋也「………」

    まだ、引きずっているのだろうか。
    あの、たった一回の拒絶で、ここまで落ちてしまうものなのか。
    …いや
    回数の問題でもないか…

    275 = 1 :

    春原「岡崎、昼いこうぜ」

    そこへ、春原がやってくる。

    朋也「ああ…」

    席を立ち、教室を出た。

    ―――――――――――――――――――――

    春原「なんか、おまえ、元気ないね」

    朋也「いつものことだろ。俺が元気振り撒いてる時なんかあったか」

    春原「まぁ、そうだけどさ…今日は一段とね」

    朋也「眠いんだよ」

    春原「ふぅん…」

    結局、いつかはこうなっていたはずだ。
    いくら平沢が歩み寄ってきてくれても、俺自身がこんな奴なのだ。
    無神経に振舞って、人の好意を無下にして…
    そういうことを簡単にやってしまう人間だ。
    だから、再三警告していたのに。
    ロクでもない不良生徒だって。

    ―――――――――――――――――――――

    ああ…それでも…

    276 :

    追いついて更新するたびに増えてる

    終わりまで追いつけないかと思った支援

    277 = 43 :

    ずっと関わり続けようとしてきたのが、あいつだったんだ。
    そんなやつ、あいつしかいなかったんだ。
    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    春原より先に食べ終わり、一人で学食を出た。
    昼休みは中盤にさしかかったころだった。
    教室へ戻っても、まだ軽音部の連中が固まって食後の談笑でもしているはずだ。
    そんな中へひとり入っていく気にはなれない。
    どこかで時間を潰して、予鈴が鳴る頃を見計らって帰った方がいいだろう。
    俺は窓によっていき、外を見た。
    食堂から続く一階の廊下。俺のいるこの場所からは中庭が見渡せた。
    そこに、見覚えのある後姿を見つける。

    朋也(なにやってんだ、あいつ…)

    横顔が見えたとき、同時に一筋の涙がこぼれて見えた気がした。
    ここからじゃ、正確にはわからなかったが、確かにそう見えた。
    顔を袖で拭う動作。
    こっちの、校舎の方に振り向く。
    向こうも俺に気がついた。
    目が合う。
    一瞬、躊躇した後…
    笑顔を作っていた。
    また、涙が頬を伝い、それがしずくとなって地面に落ちた。
    今度は間違いなく、それが見て取れた。
    ………。
    俺は駆け出していた。
    中庭に直接出ることができる、渡り廊下へ向けて。

    278 = 1 :

    ―――――――――――――――――――――

    上履きのまま、夢中で外へ出てきた。
    そして、辿り着く。今はもう、石段のふちに腰掛けているその女の子。
    俺も隣に座り、少し息を整える。

    朋也「…こんなとこでなにやってんだよ」

    もっと言いたいことはあったのに、こんなセリフしか出てこない。

    「…岡崎くんこそ、くつに履き替えもしないで、どうしたの」

    朋也「急いでたんだよ」

    「どうして」

    朋也「おまえが泣いてたから」

    「…私が泣いてたら、急いでくれるの?」

    朋也「ああ」

    「どうして」

    朋也「そりゃ…」

    どうしてだろう…。
    自分でもよくわからない。

    279 = 43 :

    朋也「…泣いてるからだよ」

    「…ぷっ…あはは。見たまんますぎるよ」

    朋也「ああ…だな」

    作ったものじゃない、素の笑顔。
    ここまで出てきたその行為が報われたような気分になる。

    「私、泣いてないよ」

    朋也「あん?」

    「あくびだよ、あ・く・び」

    朋也「…マジ?」

    「マジ」

    なんてくだならいオチなんだろう…。
    じゃあ、なんだ、俺が単に空回りしていただけなのか…。

    「でも、うれしかったよ。そんなふうに思って、駆けつけてくれて」

    朋也「そっかよ…」

    「また泣いたら、今みたいに来てくれる?」

    朋也「ああ、すぐ行く。借りてた1泊2日のレンタルDVD返したら、駆けつける」

    280 = 1 :

    「それ、私がついでみたいになってるんだけど?」

    朋也「しょうがないだろ。もう三日も延滞してるんだから」

    「そんな事情知らないっ。最初からその日数で借りなよっ」

    朋也「ちょっと見栄張ったんだよ。二日あれば俺には十分だ、ってさ」

    「意味わかんないよ、もう…」

    困ったように笑う。
    けど、その表情にはもうかげりがなかった。

    朋也「それで、ひとりでなにしてたんだよ。こんなとこでさ」

    「ひなたぼっこだよ。いい天気だし、気持ちいいかなって」

    朋也「ほかの奴らは」

    「誘ったんだけどね~。断れちゃった」

    朋也「そっか」

    「みんなわかってないよ、光合成のよさを」

    朋也「植物か、おまえは」

    「む、哺乳類でもできるんだよ。みてて」

    はぁ~…と気合のようなものをためていく。

    281 = 43 :

    「ソーラー…ビーーームッ!」

    ズビシッ、と俺に人差し指を突き刺した。

    朋也「ビームって…ただの打撃だろ…肉弾攻撃だ」

    「えへへ」

    笑ってうやむやにしようとしていた。

    朋也「がんばって光合成でもしといてくれ」

    立ち上がり、校舎に引き返す。

    「あ、私もいくっ」

    声がして、後ろから元気な足音が近づいてきていた。

    ―――――――――――――――――――――

    「よ」

    帰ってきた俺を見て、部長が声をかけてくる。
    今日は俺の席ではなく、空いた平沢の席に腰掛けている。

    朋也「…ああ、よぉ」

    平沢が抜けたことにより散会になったとばかり思っていたのだが…
    まだ三人とも残っていた。
    とりあえず自分の席につく。

    282 = 1 :

    「なぁ…」

    と、また部長。

    朋也「なんだ」

    「あんた、唯のことでなんか知らない?」

    それは、今朝からの平沢の様子を気にして訊いてきているんだろう。
    容易に想像がついた。

    「あいつ、朝ちょっかい出しにいった時から元気なかったしさ…」

    俺が机に突っ伏している間、やっぱり今日も平沢のもとに訪れていたのだ、部長は。
    その時異変に気づいたと、そういうことだろう。

    「どうしたのか訊いても、曖昧にこたえるし…」

    「そんで、唯から聞いたんだけど、あんたたち、今朝も一緒に途中まで登校してきたんだろ」

    「だから、あんたならなんか知ってるんじゃないかと思ってさ」

    他のふたりも、俺をじっとみてくる。
    なんと言っていいのだろうか。
    俺が原因だなんていったら、自惚れにもほどがある気もするし…。
    今までの流れを言葉で説明すると、途端に安っぽくなるし…。

    「やっほ、帰ったよ」

    そこへ、ちょうど平沢が戻ってきた。

    283 :

    支援
    なんという投下速度

    284 :

    そういえば前に岡崎と憂ちゃんがくっつくSSあったな

    285 = 43 :

    下駄箱で上履きに履き替えるため、途中で別れていたのだ。
    だから、この時間差が生まれたのだ。

    「あ、おう…」

    「おかえり、唯ちゃん」

    「おかえり」

    「ただいまぁ」

    言いながら、自然に部長の上から座った。

    「ちょ、唯、重いっ」

    「あれ、悦んでクッションになってくれるんじゃないの」

    「んな性癖ないわっ。どかんかいっ」

    「ちぇ、思わせぶりなんだから…」

    部長から身をどける。

    「なに見てそう思ったんだよ…ったく」

    立ちあがり、平沢に席を譲った。

    「唯…その、もういいのか?」

    「ん? なにが?」

    286 = 1 :

    「いや…ちょっとテンション低かったじゃないか」

    「ああ、もう大丈夫! 陽の光浴びて満タンに充電してきたからっ」

    「そっか…」

    部長、琴吹と顔を見合わせる。
    そして、みな一様に顔をほころばせた。

    「ま、元気になったんなら、それでいいけど」

    「そうね」

    「ああ」

    「えへへ」

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    放課後。
    さわ子さんによると、今日普通に登校してきた俺は、奉仕活動を免除されるということだった。
    なので、春原だけが捕まっていってしまった。
    唐突に暇になる。
    あんな奴でさえ、いれば暇つぶしにはなっていた。
    やることもない俺は、すぐに学校を出た。

    287 = 70 :

    むっちゃ相性いいな

    288 = 43 :

    ―――――――――――――――――――――

    着替えを済ませ、折り返し家を出る。

    ―――――――――――――――――――――

    いつものように、春原の部屋でくつろぐ。
    今はこの部屋本来の主人も戻っておらず、俺が暫定主人だった。
    無意味に高いところに立ってみる。

    朋也(………)

    朋也(アホくさ…)

    むなしくなって速攻やめた。

    ―――――――――――――――――――――

    がちゃり

    春原「…あれ、来てたの」

    朋也「ああ、おかえり」

    春原「つーか、人の部屋に勝手にあがりこ…うわっ」

    上着を脱ぎ、コタツまで来たところで驚きの声を上げる。

    春原「なにしてくれてんだよっ」

    289 = 1 :

    朋也「なにが」

    漫画を読みながら、おざなりに返す。

    春原「これだよっ! このフィギュアっ!」

    朋也「おまえの大事な萌え萌え二次元美少女がどうしたって?」

    春原「ちがうわっ! 僕のでもないし、そんな感じのでもないっ!」

    朋也「じゃ、なんだよ」

    春原「よくわかんないけど、電灯の紐で首くくられてるだろっ!」

    朋也「いいインテリアじゃん」

    春原「縁起悪いよっ!」

    必死に紐を解く春原。

    春原「なんなんだよ、これ。どうせおまえが持って来たんだろ」

    朋也「ああ、なんか飲み物買ったらついてきた」

    春原「やっぱりかよ…いらないなら、捨てるぞ」

    朋也「いいよ」

    ゴミ箱までとことこ歩いていき、捨てていた。
    戻ってきて、コタツに入る。

    290 = 43 :

    時を同じくして、俺は飲みほしたペットボトルをゴミ箱に向かって投げた。

    ぽろっ

    朋也「春原、リバウンドっ」

    春原「自分で行けよっ! つーか、今ゴミ箱までいったんだから、そん時言えよっ!」

    朋也「ちっ、注文多いな…めんどくせぇやつ」

    春原「まんまおまえのことですよねぇっ!」

    俺はコタツから出て、こぼれ球を拾ってゴールに押し込んだ。
    また戻ってきて、コタツの中に入る。
    そして、スナック菓子を食べながら漫画を再開した。

    春原「ったく、しおらしかったと思ったら、もう調子戻しやがって…」

    春原「…ん? おまえ、そのコミック…」

    朋也「これがどうかしたか」

    表紙を見せる。

    春原「やっぱ、最新刊じゃないかよっ! べとべとした手でさわんなっ」

    朋也「ああ、悪い」

    ちゅぱちゅぱと指をなめとった。

    291 = 1 :

    春原「そんな方法できれいにしても納得できねぇよっ!」

    春原「台所で手洗ってこいっ!」

    朋也「遠いからいやだ」

    春原「すっげぇむかつくよ、こいつっ!」

    朋也「ま、いいじゃん。また新しいの買えばさ」

    春原「おまえが自腹で自分の買えよっ!」

    春原「くっそぉ、やりたい放題やりやがって…」

    朋也「これにこりたら、早く帰ってこいよ」

    春原「あんたが大人しくしてればすむでしょっ!」

    ―――――――――――――――――――――

    292 = 43 :

    4/13 火

    朋也「…おはよ」

    「おはよう」

    昨日と同じ場所で落ち合い、学校へ向かう。

    「今日も眠い?」

    朋也「…ああ、かなりな」

    だが、昨日よりかは幾分マシだった。
    普通に受け答えする気にはなる。

    「そっかぁ、じゃあ、まだ無理かな…」

    朋也「なにが」

    「もうちょっと早く来れば、私の妹とも一緒にいけるよ」

    朋也「そっか…」

    そういえば、妹がどうとか、いつか言っていた気がする。

    「私の妹、気にならない?」

    朋也「いや、取り立てては」

    「ぶぅ、もっと興味持ってよぉ…じゃなきゃ、つまんないよぉ」

    293 = 1 :

    朋也「ああ、気になるよ、むしろ、すげぇ眠いよ…」

    「すごい適当に言ってるよね、いろいろと…」

    ―――――――――――――――――――――

    あの時別れた場所までやってくる。

    「…えっと、ここからは、別々なんだよね」

    立ち止まり、前を向いたままそう言った。

    「じゃ…先に行くね」

    一歩を踏み出す。
    少しさびしそうな横顔。
    ………。
    そもそも…
    俺にはそんなことを気にする見栄や立場なんてなかったんじゃないのか。
    ただの不良生徒だ。周りの評判なんて、今更何の意味もない。

    「…あ」

    俺は黙って平沢の横に追いついた。

    朋也「なに止まってんだよ。いくぞ」

    「…うんっ」

    ―――――――――――――――――――――

    294 = 78 :

    けいおんキャラの性格が少し違うのと
    澪が影すぎるのが気になる

    295 = 43 :

    「桜、もうほとんど散っちゃったね」

    朋也「ああ」

    もう、二割くらいしか残っていなかった。
    2、3日もすれば完全に散ってしまうだろう。

    ―――――――――――――――――――――

    教室のドア、そこに手をかけ、止まる。
    ここで一緒に入ってしまえば、また揶揄されてしまうんだろうか。

    「ん? どうしたの」

    だが、今俺が躊躇すれば、またこいつは落ち込んでしまうんじゃないのか。
    俺の考えすぎか…。

    朋也「…いや、なんでもない」

    俺は戸を開け中に入った。
    もう、ほとんど開き直りに近かった。

    ―――――――――――――――――――――

    「はよ~、唯」

    「おはよう、唯ちゃん」

    「おはよう」

    296 = 1 :

    「おはよ~」

    俺たちが席につき、間もなくすると軽音部の連中がやってきた。
    俺は眠さもあり、昨日同様、机に突っ伏していた。

    「今日もラブラブしやがって、むかつくんだよぅ~」

    「だから、違うってぇ…家が近いから、それでだって言ったじゃん」

    「ああん? そんなことくらいで一緒に登校してたら人類みな兄弟だっつーの」

    「意味がわからん…」

    会話が聞えてくる。
    案じていた通り、部長がその話題に触れてきた。
    俺も反論してやりたいが、いかんせん気力が湧かない。
    だから、じっと休むことに集中した。

    「こいつも寝たフリして、全部聞えてんだろ~?」

    「黙秘のつもりか~? デコピンで起こしてやろう」

    「やめときなよ」

    「そうだよ。かなり眠いって言ってたし、そっとしといてあげよ?」

    「それだよ。こいつが早起きしてんだよなぁ。それって唯と登校するためだろ?」

    「だったらさ、やっぱ、こいつも唯に気があるんじゃね?」

    297 :

    脳内で唯が渚に変換されてしまう

    298 = 43 :

    「そ、それは…いや、ちがくて、えっと…」

    「そうだよ、親切だよっ! 親切心っ!」

    「親切?」

    「うん。私が待ってるって言ったから、遅刻しないように来てくれてるんだよ」

    「へぇ…」

    「いい人よね、岡崎くんって」

    「だよね~」

    「なぁんか、腑に落ちねぇなぁ…」

    キーンコーンカーンコーン…

    「あ、鐘鳴った」

    「戻ろうか」

    「うん」

    そこで会話は聞こえなくなった。
    3人とも言葉通り戻っていったようだ。
    直にさわ子さんがやってくるだろう。俺も起きなくては…。
    話が気になって、あまり回復できなかったが…。

    ―――――――――――――――――――――

    299 = 1 :

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    つん つん

    頬に感触。

    「起きて~、岡崎くん」

    続いて、すぐそばで声がした。
    目を開ける。

    「おはよ~」

    …近い。すごく。
    ちょっと前に顔を出せば唇が触れそうな距離。
    俺は多少動揺しつつも、身を起こして顔を離した。

    「もう授業終わったよ」

    朋也「あ、ああ…」

    4時間目…そう、俺は途中で眠ってしまったんだ。
    担当の教師が、寝ようが内職しようが、なにも言わない奴だったから、気が緩んで。
    教師としてはグレーゾーンな奴なんだろうけど、生徒にとってはありがたい存在だった。

    「よく寝てたね」

    朋也「ああ、まぁな」

    300 = 43 :

    朋也「ん…」

    伸びをして体をほぐす。

    「寝顔かわいいんだね」

    突っ伏していたはずだが…無意識に頭の位置を心地いいほうに変えていってしまったのだろう。
    それで、こいつに寝顔をさらしてしまっていたのだ。

    朋也「勝手にみるな」

    「え~、無理だよ。どうしてもみちゃう」

    朋也「授業に集中しろ」

    「それ、岡崎くんが言っても全く説得力ないよ…」

    春原「岡崎~。飯」

    そこへ、春原がだるそうにやってくる。

    朋也「動詞を言え、動詞を」

    春原「あん? んなもん、僕たちの仲なら、なくても通じるだろ?」

    朋也「わかんねぇよ。飯みたいになりたい、かと思ったぞ」

    春原「なんでそんなもんになりたがってんだよっ、食われてるだろっ!」

    朋也「いや、残飯だから大丈夫だろ」


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