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    元スレ朋也「軽音部? うんたん?」

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    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×5
    タグ : - 魔王 + - CLANNAD + - けいおん! + - クラナド + - ドラクエ + - 朋也 + - 朋也「けいおん?うんたん + - 涼宮ハルヒの憂鬱 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    401 = 43 :

    「岡崎くんも、いい?」

    朋也「ああ」

    「じゃ、私みんなにも頼んでくるよ」

    言って、席を立つ。

    「あ、そうだ。今日も一緒にお昼どう?」

    春原「どうする? おまえ、学食でいいの?」

    朋也「俺は、別に」

    春原「あそ。じゃ、僕も、学食でいいや」

    朋也「つーことだ」

    「じゃ、またあとで、学食で会おうねっ」

    朋也「ああ」

    平沢は仲間を呼び集めるため、俺たちは席を取るために動き出した。

    ―――――――――――――――――――――

    朋也「おまえ、明日ほんとにくんのか」

    春原「ああ、いくね。それで、ムギちゃんに僕のスーパープレイをみせるんだ」

    402 = 1 :

    春原「それでもう、あの子は僕にメロメロさ」

    朋也「やっぱ、そういう魂胆か」

    春原「まぁね。それよか、おまえこそ、よく行く気になったね」

    春原「そういうの、好きな方じゃないだろ。なんで?」

    朋也「別に…なんとなくだよ」

    春原「ふぅん。僕はてっきり、平沢と居たいからだと思ったんだけど」

    朋也「はぁ? なんでそうなるんだよ」

    春原「だって、おまえら一緒に登校したりしてるんだろ」

    どこで知ったんだろう。
    こいつには言っていなかったはずなのに。

    春原「それに、いつも仲よさそうにしてるじゃん」

    春原「でも、付き合ってるってわけじゃなさそうだし…」

    春原「両思いなのに、どっちも好きだって伝えてない感じにみえるね」

    昨日同じようなことを言われたばかりだ。
    傍目には、そういうふうに見えてしまうんだろうか…。

    春原「ま、おまえ、そういうとこ、奥手そうだからなぁ」

    403 = 43 :

    朋也「勝手にひとりで盛り上がるな。まったくそんなんじゃねぇんだよ」

    春原「そう怒るなって。明日は頑張ってかっこいいとこみせとけよ」

    春原「おまえ、運動神経いいんだしさ」

    春原「まぁ、でも、本職である僕の前では、引き立て役みたいになっちゃうだろうけどね」

    朋也「そうだな。おまえの音色にはかなわないな」

    春原「音色? うん、まぁ、僕のプレイはそういう比喩表現がよく似合うけどさ…」

    朋也「うるさすぎて、指示が聞えないもんな」

    春原「って、それ、絶対ブブゼラのこと言ってるだろっ!」

    朋也「え? おまえ、本職はブブゼラ職人だろ?」

    春原「フォワードだよっ!」

    朋也「おいおい、素人がピッチに立つなよ」

    春原「だから、ブブゼラ職人じゃねぇってのっ!」

    ―――――――――――――――――――――

    「いやぁ、ほんと、めでたいな」

    「改めておめでとう、和」

    404 = 1 :

    「おめでとう」

    「おめでと~」

    「ありがとう」

    今朝のSHRで、先日の選挙結果が発表されていたのだが…
    真鍋は見事、というか、順当に当選していた。
    副会長はあの坂上だった。
    他の役員は、興味がないのですぐに忘れてしまったが。

    「これから忙しくなるわ」

    「大変な時は言ってくれ。力になるから」

    「ありがとね、澪」

    「うん」

    「おい、春原。あんたのおごりで、特上スシの食券買って来いよ」

    春原「ワリカンだろっ!」

    そもそもそんなメニューは無い。

    「そんなのもあるの?」

    朋也「いや、あるわけない」

    「なぁんだ。あるなら、私が出してもよかったのに」

    405 = 43 :

    軽く言ってのけるところがすごい。

    「セコいな、春原」

    春原「るせぇよ、かっぱ巻きみたいな顔しやがって」

    「なっ、あんたなんか頭に玉子のせてんじゃねぇかよっ」

    春原「あんだと!?」

    「なんだよ!?」

    「はい、そこまで!」
    「お昼時にね、判定? だめよ、KOじゃなきゃっ」

    割って入ろうとした平沢を、横から琴吹が腕を取って制止させた。

    「む、ムギちゃん?」

    「嘘、ごめんなさい。冗談よ」

    ぱっと手を離す。

    「五味を止められるのはレフリーだけぇ~♪」

    朋也(PRIDE…)

    琴吹は謎のマイクパフォーマンスを挟みはしたが、仲裁する側に回っていた。
    平沢も困惑状態から復帰すると、一緒に止めに入っていた。

    406 = 1 :

    ―――――――――――――――――――――

    妙な間はあったが、平沢と琴吹に制され、争いは一応の収まりを見せた。
    両者ともそっぽを向いている。
    まるで子供の喧嘩のようだった。

    「毎回毎回…よく飽きないな…」

    「ふん…」

    「明日を機に仲良くなればいいんじゃない」

    「そうだね。りっちゃんと春原くんは同じチームがいいかも」

    「えぇ、やだよっ」

    春原「つーか、こいつもくんの?」

    「うん。みんな来てくれるって」

    「わりぃか、こら」

    春原「ふん、まぁ、明日は僕のすごさをその身をもって思い知るがいいさ」

    「あん? おまえなんか、りっちゃんシュートの餌食にしてくれるわっ」

    春原「なんだそりゃ。陽平オフサイドトラップにかかって、泣きわめけ」

    「なにぃ? りっちゃんサポーターたちが暴動起こしてもいいのか?」

    407 = 43 :

    春原「んなもんは陽平ボールボーイで鎮圧できるね」

    「むりむり。りっちゃんラインズマンがすでに動きを抑えてるから」

    春原「卑怯だぞ! 陽平訴訟を起こしてやるからな!」

    「あほか。こっちにはりっちゃん弁護士がついてるんだぞ」

    「あきらめて、『敗訴』って字を和紙に達筆な字で書いとけ」

    「それで、その紙を掲げて泣きながらこっちに走ってこいよ、はっははぁ!」

    「もはや、サッカー全然関係ないな…」

    ―――――――――――――――――――――

    食事を済ませ、連中と別れる。
    春原は今日もまた奉仕活動に駆り出されていってしまった。
    月曜日の時同様、俺はひとりになってしまい、暇な時間が訪れる。
    差し当たっては、学校を出ることにした。

    ―――――――――――――――――――――

    家に帰りつき、着替えを済ませて寮に向かう。

    ―――――――――――――――――――――

    道すがら、スーパーに菓子類を買いに寄った。
    資金源は、芳野祐介を手伝った時のバイト代だ。
    もう先週のことだったが、無駄遣いもしなかったので、まだ全然余裕があるのだ。

    408 = 1 :

    ―――――――――――――――――――――

    買い物を終え、店から出る。
    レジ袋の中には、スナック菓子、アメ、ソフトキャンディーなどが入っている。
    その中でも一番の目玉は、「コアラのデスマーチ」という、新発売のチョコレートだ。
    パッケージには、重労働に従事させられるコアラのキャラクター達が描かれている。
    当たりつきで、ひとつだけ過労死したコアラが居るらしい。
    製造会社の取締役も、よくこんなものにゴーサインを出したものだ。
    なにかの悪い冗談にしか見えない。

    「あれ…岡崎さんじゃないですか」

    突っ立っていると、横から声をかけられた。

    「こんにちは」

    朋也「ああ…妹の…」

    見れば、向こうも俺と同じで私服だった。
    プライベート同士だ。

    「憂です。もう忘れられちゃってましたか?」

    朋也「いや…覚えてるよ」

    朋也「憂…ちゃん」

    呼び捨てするのもどうかと思い、ちゃんをつけてみたが…
    どうも、呼びづらい。
    かといって、平沢だと、姉と同じで区別がつかず、座りが悪いような…。

    409 = 43 :

    「岡崎さんもお買い物ですよね」

    朋也「ああ、そうだよ」

    「なにを買ったんです?」

    俺が手に持つレジ袋に興味を示してきた。

    朋也「菓子だよ」

    「あ、いいですね、お菓子。私も、余裕があれば買いたかったなぁ」

    その、余裕とは、金の問題じゃなく、持てる量のことを言っているんだろう。
    この子は、買い物バッグを両手で持っていたのだ。
    そしてそのバッグの口からは、野菜やらビンやらが顔を覗かせている。
    もう容量に空きがない、といった感じで膨らんでいた。

    「これですか? 夕飯の材料と、お醤油ですよ」

    「お醤油がもう切れそうだったから、買いに来てたんです」

    「そのついでに、夕飯の材料も買っておこうかと思いまして」

    朋也「ふぅん、そっか…」

    しかし、重そうだ。

    朋也「自転車で来てたりするのか」

    「いえ、カゴに入りきらないだろうと思って、歩きですよ」

    410 = 1 :

    ということは、これを持ったまま、家まで歩いていくことになるのか。
    それは、少しキツそうだ。

    朋也「それ、俺が持とうか?」

    「え?」

    朋也「いや、家までな」

    「いいんですか? 岡崎さん、これからなにか予定ありませんか?」

    朋也「ないよ。暇だから、手伝ってもいいかなって思ったんだよ」

    「でも、悪いですよ、さすがに…」

    朋也「いいから、貸してみ」

    「あ…」

    少し強引に奪い取った。
    ずしり、と重みが伝わってくる。

    朋也「憂ちゃんは、こっちを持ってくれ」

    俺の菓子が入ったレジ袋を渡す。

    「あ、はい…」

    できてしまった流れに戸惑いながらも、受け取った。

    411 = 43 :

    朋也「じゃ、いこうか」

    「は、はい」

    ―――――――――――――――――――――

    ふたり、肩を並べて歩く。
    俺はほとんど自宅へ引き返しているようなものだった。
    平沢の家とはだいたい同じ方角にあるからだ。

    「重くないですか?」

    朋也「ああ、このくらい、平気だよ」

    「すごいですね。私、休みながら行こうと思ってたのに」

    朋也「まぁ、女の子は、それくらいが可愛くて、丁度いいんじゃないか」

    「そうですか?」

    朋也「ああ」

    「私は、軽々と片手で持ってる岡崎さんは、男らしくていいと思いますよ」

    朋也「そりゃ、どうも」

    「どういたしまして」

    にこっと笑顔になる。やっぱり、その笑顔も平沢によく似ていた。
    さすが姉妹だ。髪を下ろせば、見分けがつかなくなるんじゃないだろうか。

    412 = 1 :

    朋也「そういえば、平沢の弁当とか、憂ちゃんが作ってるんだってな」

    「そうですね、私です」

    朋也「これだって、おつかいとかじゃなくて、自分で作るために買ったんだろ」

    バッグを手前に掲げてみせる。

    「はい、そうです」

    朋也「えらいよな」

    「そんなことないですよ」

    朋也「いや、親も、めちゃくちゃ助かってると思うぞ。なかなかいないよ、そんな奴」

    「いえ、うちのお父さんとお母さんは、昔から家を空けてることが多いんですよ」

    「今だって、どっちもお仕事で海外に行ってて、いないんです」

    「だから、家事は自然とできるようになったんです」

    「っていうか、しなきゃいけなかったから、って感じなんですけどね」

    朋也「ふぅん…」

    そうだったのか…。
    なら、平沢も家事が器用にこなせたりするんだろうか。
    でも、前に、弁当を妹に作ってやれ、と言われ、無理だと即答していたことがあるし…。
    あいつは、掃除や洗濯を主にやっているのかも。

    413 = 43 :

    朋也「ま、それでもえらいことには変わりないよ」

    朋也「だからさ、ご褒美っていうと、ちょっとアレかもだけど…」

    朋也「俺の菓子、好きなのひとつ食っていいぞ」

    「いいんですか?」

    朋也「ああ」

    「ありがとうございますっ」

    「どれにしようかな…」

    袋の中を覗く。
    そして、おもむろに一つ取り出した。

    「…コアラのデスマーチ?」

    よりにもよって、それか。

    朋也「なんか、新発売らしいぞ」

    「絵が怖いです。名前もだけど…」

    朋也「コアラがムチでしばかれてるだろ。そこは、コアラがコアラに管理される施設なんだ」

    朋也「上級コアラと下級コアラがいて、その支配構造がうまく機能しているらしい」

    「やってることが全然かわいくないです…」

    414 :

    やっと追いついた・・・

    415 = 1 :

    朋也「ま、食ってみろよ。味とストーリ-は関係ないだろうからさ」

    「はい…」

    開封し、中から一個取り出した。

    「わぁっ、岡崎さん、この子、し、死んでますっ」

    朋也「それ、当たりだ」

    なんて強運な子なんだろう。
    一発目から引き当てていた。

    「当たりって…」

    朋也「その死体食って、供養してやってくれ」

    「うぅ…死体なんて言わないでくださぁい…」

    目を潤ませながら半分かじる。

    「あ…イチゴ味だ…おいしい」

    朋也「臓器と血みたいなのが出てきてないか、その死体」

    「イチゴですよぉ…生々しく言わないでくださいよぉ…」

    ―――――――――――――――――――――

    「ありがとうございました」

    416 = 43 :

    朋也「ああ」

    平沢家の手前まで無事荷物を運び終え、そこで手渡した。
    ここで俺の役目も終わりだった。

    「それから…すみませんでした」

    朋也「いや、いいって」

    「でも…結局、私が全部食べちゃって…」

    ここまで来る間、憂ちゃんは俺の菓子を完食してしまっていた。
    それも、俺が譲ったからなのだが。
    喜んでくれるのがうれしくて、次々にあげていってしまったのだ。

    「あの、よければ、ホットケーキ作りますけど…食べていきませんか?」

    朋也(ホットケーキか…)

    普段甘いものが苦手な俺だが、時に、体が糖分を欲することがある。
    それが、まさに今日だった。
    だからこそ、スーパーで駄菓子なんかを買っていたのだ。
    どうせなら、そんな既製品を買い直すよりも、手作りの方が味があっていいかもしれない。
    加え、両親は現時点で不在だとの言質が取れていたため、俺の気も楽だった。
    家に上がらせてもうらうにしても、とくに抵抗はない。
    ただ、女の子とふたりきり、という状況が少し気になりはしたが。

    朋也「いいのか?」

    「はいっ、もちろん」

    417 = 1 :

    朋也「じゃあ…頼むよ」

    「任せてくださいっ、がんばって作りますからっ」

    意気込みを感じられる姿勢でそう言ってくれた。

    「さ、どうぞ、あがってください」

    憂ちゃんに通され、平沢家の敷居をまたぐ。

    ―――――――――――――――――――――

    「じゃ、出来上がるまで、ここでくつろいでてくださいね」

    俺をリビングに残し、荷物を持って台所に向かっていった。
    とりあえずソファーに腰掛ける。
    …尻に違和感。
    なにか下敷きにしたらしい。
    体を浮かせ、取り出してみると、クッションだった。
    ぼむ、と隣に置く。

    朋也(ん…?)

    再びクッションを手に取る。

    朋也(やっぱり…)

    平沢の匂いがした。
    いつもこれを使っているんだろうか。

    418 = 43 :

    朋也(………)

    顔を埋めてみる。

    朋也(ああ…いい…)

    朋也(あいつ、いい匂いするもんな…)

    朋也(………)

    朋也(って、変態か、俺はっ!)

    我に返り、すぐさま顔を離した。
    背後が気になり、振り返る。
    憂ちゃんは、俺に背を向け、なにやら冷蔵庫から取り出していた。
    見られてはいなかったようで、ほっとする。

    朋也(しかし、妙な安心感がある空間だよな、ここ…)

    ごみごみとした春原の部屋とは大違いだ。
    まぁ、そのせいで、無用心にもこんな暴挙に出てしまったのだが。

    朋也(にしても…なにしてようかな…)

    携帯があれば、こういう時、楽しく暇も潰せるんだろうな…。
    生憎と俺はそんなものは持ち合わせていなかったが。
    今時の高校生にしては、かなり珍しい部類だろう。
    うちの経済状況では持つこと自体厳しいから、それも仕方ないのだが。
    持ってさえいれば、春原にオレオレ詐欺でも仕掛けて遊べるのに…。
    例えば…

    419 = 1 :

    ―――――――――――――――――――――
    ―――――――――――――――――――――

    プルルル

    がちゃ

    春原「はい。誰」

    『俺だよ、オ・レ』

    春原「あん? 誰? 岡崎?」

    『だから、オレだって言ってんだろっ! 何度も言わせんなっ! 殺すぞっ!』

    『あ、後さ…う○こ』

    ブツっ

    ツー ツー ツー

    春原「なにがしたかったんだよっ!?」

    ―――――――――――――――――――――
    ―――――――――――――――――――――

    朋也(なんてな…)

    いや…それはただのいたずら電話か…。
    難しいものだ、詐欺は。

    420 = 43 :

    朋也(妄想はもういいや…)

    朋也「憂ちゃーん、テレビつけていいかー」

    リビングの向こう、台所にいる憂ちゃんに聞えるよう、少し声を張った。

    「あ、どうぞ~」

    許可が下りた。
    テーブルの上にあったリモコンを拾い、チャンネルを回す。
    土曜の午後なんて、ロクな番組がやっていない。
    救いがあるとすれば、あの長寿昼バラエティ番組だけだったが、すでに終わっている時間だ。
    しかたなく、釣り番組にする。
    俺は、呆けたようにぼーっと眺めていた。

    ―――――――――――――――――――――

    「できましたよ~」

    おいしそうな香りを伴って、憂ちゃんがホットケーキを持ってきてくれた。

    「はい、どうぞ」

    皿に盛ってくれる。

    「シロップはお好みでどうぞ」

    ホットケーキの横に、使い捨ての簡易容器が添えられてあった。

    朋也「サンキュ」

    421 = 1 :

    フォークで生地を刺し、口に運ぶ。
    もぐもぐ…

    朋也「うめぇ…」

    「ほんとですか? お口に合ってよかったです」

    嬉しそうな顔。
    俺はさらに食を進めた。
    が、憂ちゃんは一向に手をつけない。

    朋也「食べないのか」

    「私はお菓子をたくさん食べましたから…」

    「これ以上甘いもの食べると太っちゃいますよ」

    やっぱり、女の子だとそういうところを気にするものなのか。
    男の俺にはよくわからなかった。

    「だから、岡崎さんが食べてくれるとうれしいです」

    朋也「じゃあ、遠慮なく」

    再び手をつけ始める。
    本当においしくて、いくらでも食べられそうだった。

    ―――――――――――――――――――――

    朋也「…ふぅ。ごちそうさま」

    422 = 43 :

    「おそまつさまでした」

    すべてて食べきり、皿の上にはなにも残っていなかった。
    片づけを始める憂ちゃん。

    朋也「俺も食器洗うの手伝おうか」

    帰る前にそれくらいしていってもいいだろう。

    「いえ、いいんです。岡崎さんはお客さんですから」

    「それより、岡崎さん…」

    ハンカチを取り出す。

    「口の周り、ちょっとついてますよ。じっとしててくださいね」

    朋也「ん…」

    ふき取られていく。

    「はい、綺麗になりました」

    朋也「言ってくれれば、自分の手で拭ったのに」

    「あ、ごめんなさい…お姉ちゃんにもいつもしてあげてるんで、つい」

    朋也「いつも?」

    「はい」

    423 = 1 :

    あいつは…そんなことまでしてもらっているのか。
    もしかして、妹に全局面で世話してもらってるんじゃないかと、そんな気さえしてきた。

    朋也「…仲いいんだな」

    「とってもいいですっ」

    強く言う。主張したかったんだろう。
    憂ちゃんは満足した顔で食器をひとつにまとめると、台所へ持っていった。

    朋也(にしても…よくできた子だよな)

    台所に立ち、洗い物をする憂ちゃんを見て思う。

    朋也(ああ…憂ちゃんが俺の妹だったらな…)

    ―――――――――――――――――――――
    ―――――――――――――――――――――

    「お兄ちゃん、起きて。朝だよ」

    朋也「…うぅん…あと半年…夏頃には起きる…」

    「セミの冬眠じゃないんだから。起きなさい」

    勢いよく布団が剥がされる。

    「おはよう、お兄ちゃん」

    朋也「………」

    424 = 43 :

    「もう、うつ伏せになってベッドにしがみつかないでよ…」

    朋也「眠いんだ」

    「顔洗ってきたら?」

    朋也「めんどくさい」

    「じゃあ、どうやったら目が覚めてくれるの…」

    朋也「いつものやつ、してくれ」

    「え? いつものって?」

    朋也「目覚めのちゅー」

    「だ、だめだよ、そんなの…私たち兄妹なんだよ…?」

    「それに、いつもって…そんなこと一度も…」

    朋也「いいじゃないか。おまえが可愛いから、したいんだよ」

    朋也「だめか…?」

    「う…じゃ、じゃあ、絶対それで起きてね…?」

    「ん…」

    ほっぺたにくる。
    俺は顔を動かして、唇に照準を合わせた。

    425 = 1 :

    やわらかい感触が重なり合う。

    「んんっ!?」

    ばっと身を離す。

    「な、なんで口に…」

    朋也「とうっ」

    ベッドから跳ね起きる俺。

    朋也「憂っ! 憂っ!」

    「あ、いやぁ、やめて、お兄ちゃん、だめだよぉ…」

    「あっ…」

    ―――――――――――――――――――――
    ―――――――――――――――――――――

    朋也(………)

    朋也(いい…すごく…いい!)

    俺は台所にいる憂ちゃんの背を目指して歩み寄っていった。

    朋也「憂ちゃん…」

    背後から声をかける。

    426 = 43 :

    「はい…?」

    手を止めて振り返ってくれる。

    朋也「俺の妹になってくれ」

    「えぇ!? そ、それは…」

    朋也「だめか?」

    「いろいろと無理がありますよぉ」

    自分でもそう思う。
    だが、情熱を抑え切れなかった。

    「それに、私にはお姉ちゃんがいますし」

    朋也「…そうか」

    「そ、そんなに落ち込まないでくださいよぉ」

    「私、岡崎さんにそう言ってもらえて、うれしかったですから」

    朋也「じゃあ、せめて、俺のことを兄だと思って、お兄ちゃんって呼んでみてくれ…」

    「それで、元気になってくれますか?」

    朋也「ああ」

    「わかりました、それじゃあ…」

    427 = 1 :

    すっと深呼吸する。

    「お兄ちゃんっ」

    まぶしい笑顔。首をかしげるというオプションつきだった。

    朋也「…はは、憂はかわいいな。よしお小遣いをやろう」

    財布から万札を抜き取る。

    「わわっ、いいですよ、そんなっ。しまってくださいっ」

    朋也「なに言ってるんだよ。俺たち、仲良し兄妹じゃないか」

    「それは台本の上でのことですよっ、目を覚ましてくださぁいっ」

    朋也「ハッ!…ああ、いや、悪い…本当の俺と、役の境目がわからなくなってたよ」

    「もう…変な人ですね、岡崎さんって」

    言って、笑う。俺も気分がいい。
    素直に笑ってくれる年下の女の子というのは、新鮮だった。

    朋也「なぁ、憂ちゃん。この後、予定あるか」

    「え? そうですね…」

    小首をかしげて考え込む。

    「う~ん…夕飯の材料はもう買っちゃったし…とくにないですね」

    428 = 43 :

    朋也「じゃあ、お兄ちゃ…いや、俺とどこか出かけないか」

    今から寮に向かっても、春原が戻っている保証はない。
    あの部屋でひとり過ごすくらいなら、そっちの方がよかった。

    「いいんですか? 私となんかで」

    朋也「憂ちゃんだから誘ってるんだよ」

    「ありがとうございますっ。私も、岡崎さんに誘ってもらえてうれしいです」

    朋也「それは、一緒に遊びに出てくれるって、そう取っていいのか」

    「はい、もちろんです」

    朋也「そっか。じゃあ、その洗い物が終わったら、出るか」

    「はいっ」

    ―――――――――――――――――――――

    食器の洗浄も済ませ、家を出た。
    目的地はまだ決めていない。

    朋也「どこにいく? 憂ちゃんの好きなところでいいぞ」

    「いいんですか?」

    朋也「ああ」

    429 = 1 :

    「それじゃあ、私、前から行ってみたい所があったんですけど…」

    朋也「どこだ」

    「商店街に新しくできた、ぬいぐるみとか、可愛い小物とかを売っているお店です」

    「今、うちの学校の女の子の間で人気なんですよ」

    朋也「ふぅん、そんなとこがあるのか」

    「はい。だから、そこに付き合って欲しいです」

    朋也「ああ、いいよ」

    「ありがとうございますっ」

    ―――――――――――――――――――――

    商店街までやってくる。
    件の店はまだ真新しく、外観や内装が小綺麗だった。
    ファンシーな看板を掲げ、手前には手書きの宣伝ボードが立てかけられてある。
    店内には、所狭しと商品群が並べられていた。
    客層は、この有りようからしてやはりというべきか、女性客ばかりだった。

    「わぁ、ここですここですっ」

    つくやいなや、目を輝かせてはしゃぎ出す憂ちゃん。

    「いきましょ、岡崎さんっ」

    430 = 43 :

    朋也「あ、ああ…」

    この中に男の俺が入っていくことに多少気後れしつつも、憂ちゃんに従った。

    ―――――――――――――――――――――

    「うわぁ、かわいいっ」

    憂ちゃんが立ち止まったのは、小さめのぬいぐるみが並べられたブロックだった。
    デフォルメされ、丸みを帯びた動物キャラの頭部が手のひらサイズで商品化されている。
    俺もひとつ適当なものを手に取ってみた。
    ぐにゃり、と柔らかい感触がした。低反発素材でも使っているんだろうか。

    「う~ん、でも、やっぱりないなぁ…」

    朋也「なんか探してるのか」

    「はい…」

    持っていたぬいぐるみを棚に戻し、俺に向き直る。

    「岡崎さん、だんご大家族って覚えてます?」

    朋也「ああ、けっこう鮮明に」

    それは、最近思い出す機会があったからなのだが。

    「ほんとですか? よかったです、覚えててくれて」

    「あれ、かわいいですよねっ」

    431 = 1 :

    朋也「ん、まぁ、多分な」

    一応同意の姿勢だけは見せておく。

    「でも、もうかなり前にブームが終わっちゃったじゃないですか」

    「それで、世間からも忘れられちゃってて…」

    「それでも、私もお姉ちゃんも、いまだに好きなんですよ、だんご大家族」

    「だから、この小さな手のひらシリーズにないかなぁって、思ったんですけどね」

    需要が無くなったことを知っていてなお探すんだから、想いもそれだけ深いんだろう。

    朋也「じゃあ、こういうのはどうだ」

    俺はうさぎの頭を棚から拾い上げた。

    朋也「ほら、これの耳ちぎって、凹凸無くしてさ」

    朋也「シルエットだけなら、だんごに見えなくもないだろ」

    「そ、そんな残酷なことしてまで欲しくないですよぉ」

    朋也「そうか? じゃあ、これを三つくらい買って、串で刺して繋げるのはどうだ」

    「さっきのと接戦になるくらい残酷ですっ」

    朋也「なら、これを…」

    432 = 43 :

    「も、もういいですっ、気持ちだけ受け取っておきます…」

    朋也「これを、憂ちゃんの鼻の穴に詰めてみよう、って言おうとしたんだけど…」

    朋也「その気持ち、受け取ってくれるのか?」

    「…岡崎さん、もしかして、からかってます?」

    朋也「バレたか」

    「…意地悪ですっ」

    ぷい、とそっぽを向かれてしまった。
    やりすぎてしまったようだ。

    ―――――――――――――――――――――

    その後、なんとか機嫌を取ることに成功し、また一緒に見て回った。
    憂ちゃんが興味を示したコーナーに留まり、しばらく見たのち、移る。
    そんなことを繰り返していた。

    ―――――――――――――――――――――

    朋也(やべ…)

    巡って回る内、俺の目に見かけたことのある顔が留まった。
    同じクラスの女たちだった。何人かで固まって、楽しげに店内を闊歩している。
    そういえば、憂ちゃんが言っていた。
    この店は今、うちの学校の女に人気があると。
    なら、こういうブッキングをすることだって、十分ありえたのに…うかつだった。

    433 = 1 :

    俺がこんな店に出入りしているなんて思われたら、たまったもんじゃない。
    その情報が春原の耳に入った日には…想像もしたくない。
    俺は壁にぴったりと張りついてやりすごすことにした。

    「岡崎さん、なにをやってるんですか?」

    背中から憂ちゃんの声。

    朋也「いや…知ってる顔がいたから、ちょっとな…」

    「ああ…恥ずかしいんですね」

    朋也「まぁ…そういうことだ」

    「じゃあ…これを被って変装してください」

    俺になにか手渡してくる。

    朋也「お、サンキュ」

    後ろ手に受け取って、それを目深に被った。

    朋也(これでなんとかなるかな…)

    声さえ聞かれなければ、制服を着ているわけでもなし、他人の空似で受け流してくれるかもしれない。
    そうなってくれることを願いながら、俺は向き合っていた壁から離れた。

    「よく似合ってますよ」

    振り向きざまに第一声。

    435 = 43 :

    朋也「そうか?」

    しかし、俺はなにを被ったんだろう。
    なにも考えず、機械的に被ってしまったからな…。

    「ご自分でも、鏡で確認してみたらどうですか?」

    俺の目線より少し下、そこに小さな鏡が置かれていた。
    覗いてみる。

    朋也「…これ」

    ネコミミ付きフードだった。

    「あはは、かわいいです、岡崎さん」

    朋也「…おまえな」

    「さっきのお仕返しです。罰として、ここにいる間ずっと被っててくださぁい」

    朋也「…はぁ」

    これじゃ、顔は隠せても余計目立つことになってしまう…。

    朋也「ほかにマシなの、なんかないのか」

    「ありますよぉ。イヌミミがいいですか? それとも、ウサミミがいいですか?」

    朋也「そんなのしかないのかよ…」

    436 = 1 :

    「ふふ、ここはそういうお店ですよ?」

    そうだったな…。
    仕方なく、俺は憂ちゃんの罰ゲームに従った。

    ―――――――――――――――――――――

    「あ、これ、かわいいなぁ…買っちゃおうかなぁ…」

    やってきたのは、携帯ストラップの陳列棚。
    俺とは縁のない場所だ。

    「う~ん、でも、こっちも捨てがたいし…」

    「岡崎さん、これとこれ、どっちがいいと思いますか?」

    両手にそれぞれ別の商品を持って、俺に意見を求めてくる。

    朋也「う~ん…俺はこれがいいかな」

    そのどちらも選ばずに、俺は新たに棚から取り出した。

    朋也「この、『ごはんつぶ型ストラップ』って、なんかよくないか」

    「えぇ? なんですか、それ?」

    朋也「なんか、携帯にご飯粒がついているように演出できるらしいぞ」

    「いやですよぉ、そんなの…常に、さっきご飯食べてきたよって感じじゃないですか…」

    437 = 43 :

    朋也「いやか?」

    「はい」

    なかなかおもしろいと思ったのだが…。
    しぶしぶ元の場所に納める。

    「これかこれ、どっちかで言ってください」

    再び俺の前に掲げてくる。

    朋也「う~ん…じゃあ、そっちの、クマの方で」

    「クマさんですか? じゃあ、こっち買っちゃおうかな…」

    朋也「待て。買うなら、払いは俺がする」

    「え? 悪いですよ、そんな…」

    朋也「いや、ここで好感度を挽回しておきたいんだ。序盤で失敗しちまったからな」

    「そんなこと気にしてたんですか…」

    朋也「ああ。だから、俺にまかせろ」

    「ふふ、じゃあ…お言葉に甘えて」

    朋也「よし」

    ―――――――――――――――――――――

    438 = 1 :

    ストラップをレジに通し、店を出た。
    ついでに、ネコミミフードも買っていった。
    長いこと被っていて、買わずに出るのもためらわれたからだ。

    「いいんですか? こっちも、もらっちゃって…」

    朋也「ああ、いいよ。俺が持ってても仕方ないしな」

    俺はストラップと一緒に、フードも譲っていたのだ。

    「でも、これ、けっこう高かったですよね…?」

    朋也「ああ、大丈夫。まだ余裕あるから」

    「岡崎さん、アルバイトでもしてるんですか?」

    朋也「まぁ、前はしてたけど、今はやってないな」

    朋也「でも、この前単発で、でかいの一個やったっていうか…あぶく銭みたいなもんだから、気にすんなよ」

    ぽむ、と頭に手を置く。

    「あ…はいっ」

    にっこりと微笑んでくれる。

    「ありがとう、お兄ちゃんっ」

    朋也(う…)

    439 = 43 :

    胸が高鳴る。破壊力抜群だった。

    朋也「…うん」

    「あはは、…うん、って。岡崎さん顔真っ赤です」

    朋也「…憂ちゃんがいきなり妹になるからだ」

    「ごめんなさぁい」

    いたずらっぽく言う。

    朋也(さて…)

    店の中に居る時はわからなかったが、外はもう陽が落ち始め、ほんのりと暗くなっていた。
    それだけ時間を忘れて見回っていたのだ。
    おそるべし、ファンシーショップ…。
    まぁ、入店したのが三時半あたりだったので、実際それほどでもないのかもしれないが。

    朋也「もう、帰らなきゃだよな、憂ちゃんは」

    「はい、そうですね。帰ってお夕飯作らないと…」

    朋也「なら、送ってくよ。もういい時間だしな」

    「ほんとですか? ありがとうございますっ」

    ―――――――――――――――――――――

    平沢家。その門前まで帰り着く。

    440 = 1 :

    朋也「じゃあな」

    「はいっ。今日はありがとうございました」

    別れの挨拶も済ませ、立ち去ろうと踵を返す。

    「あれ? 岡崎くんだ」

    朋也「よお」

    そこへ、ちょうど平沢が帰宅してきた。

    「どうしたの? うちになにか用?」

    「私を送ってきてくれたんだよ、お姉ちゃん」

    「送ったって? 憂を? 代引きで?」

    「Amaz○n.comじゃないんだから…」

    「あのね、岡崎さんと一緒に出かけてて、それで、もう暗いからって送ってきてくれたの」

    「えぇ!? 岡崎くんと遊んでたの?」

    「ちょっと付き合ってもらってたんだ。ほら、あの商店街に新しくできたお店あるでしょ?」

    「あそこに、ついてきてもらってたの」

    「えぇっ!? っていうか、なんでもうそこまで仲良くなってるの?」

    441 = 43 :

    「そうだよぉ。『ああ』とか、『好きにしろよ…』とかしか言わないし…」

    俺を真似た部分だけ声色を変えて言った。

    「最近になって、ようやくちょっと心開いてくれたかなぁって感じだよ」

    「なのに、憂とは初日から遊びに行くまでになってるし…これは差別だよっ」

    「悪意を感じるよっ」

    「お姉ちゃん…あんまりお兄ちゃんを責めないであげて」

    朋也(ぐぁ…)

    「…お兄ちゃん?」

    平沢が訝しげな顔になる。

    朋也「今はやめてくれっ」

    「ふたりっきりの時だけしかそう呼んじゃだめなの? お兄ちゃん?」

    朋也「だぁーっ! だから、やめてくれぇ、憂ちゃんっ!」

    「…ふたりっきりの時? 憂…ちゃん?」

    442 = 1 :

    「私と初めて会ったときは、すっごく冷たかったのにぃ…」

    朋也「そうだっけ」

    「そうだよぉ。『ああ』とか、『好きにしろよ…』とかしか言わないし…」

    俺を真似た部分だけ声色を変えて言った。

    「最近になって、ようやくちょっと心開いてくれたかなぁって感じだよ」

    「なのに、憂とは初日から遊びに行くまでになってるし…これは差別だよっ」

    「悪意を感じるよっ」

    「お姉ちゃん…あんまりお兄ちゃんを責めないであげて」

    朋也(ぐぁ…)

    「…お兄ちゃん?」

    平沢が訝しげな顔になる。

    朋也「今はやめてくれっ」

    「ふたりっきりの時だけしかそう呼んじゃだめなの? お兄ちゃん?」

    朋也「だぁーっ! だから、やめてくれぇ、憂ちゃんっ!」

    「…ふたりっきりの時? 憂…ちゃん?」

    443 = 76 :

    今更だけど凄い投下だな
    支援

    444 = 43 :

    「………」

    じと~っとした目を向けられる。

    「…中で詳しく聞こうか」

    こぶしを作り、親指で自宅を指さす。
    その顔は、あくまで笑顔だったが…それが逆に怖い。

    ―――――――――――――――――――――

    「ふぅん、岡崎くんってそんな趣味だったんだ?」

    テーブルにつき、説教される子供のように俺は正座していた。

    「そんなこと、言ってくれれば私がしてあげたのに…」

    朋也「いや、おまえ、タメじゃん。リアルじゃないっていうか…」

    「失礼なっ! 私、妹系ってよく言われるのにっ」

    朋也「じゃ、一回やってみてくれよ」

    「いいよ? じゃ、いきます…」

    こほん、と咳払い。

    「お兄ちゃんっ」

    満面の笑顔。

    445 = 1 :

    両手を開き、俺の前に突き出している。

    朋也「なんか、違うんだよな…」

    「むぅ、なにが違うのっ」

    朋也「いや、そのポーズとかさ…なんだよ」

    「庇護欲を煽るポーズだよ」

    朋也「そういう計算が目に付くんだよなぁ…それに、全体の総量として妹力が足りない感じだ」

    朋也「まぁ、おまえは、どこまでいっても姉だな」

    「それはその通りだけど…なんか悔しい…」

    朋也「まぁ、そういうわけだからさ。俺、帰るな」

    赤裸々に語ってしまった恥ずかしさもあり、早くこの場を去りたかった。

    「まぁ、待ちなよ。せっかくだから、一緒に夕飯してこうよ」

    朋也「いや…」

    「う~い~、岡崎くんのぶんも夕飯作ってくれるよね~?」

    被せるようにして、台所で作業する憂ちゃんへ声をかけた。

    「岡崎さんがそれでいいなら、作るよ~」

    446 = 43 :

    向こうからは好意的な返答が届く。

    「だってさ。どうする? おにいちゃん」

    朋也「だから、それはもうやめろっての…」

    朋也(でも、どうするかな…)

    いや…もう答えは出ている。
    コンビニ弁当なんかより、憂ちゃんの手料理の方がいいに決まってる。

    朋也「俺の分も頼んでいいか、憂ちゃん」

    あまりまごつくことなく、俺は注文を入れていた。

    「は~い、まかせてくださぁい」

    二つ返事で引き受けてくれる。

    「うん、素直でよろしい」

    朋也「そりゃ、どうも」

    「ところでさ、なんで憂にはちゃんづけなの?」

    朋也「年下だし、苗字だと、おまえと被るからな」

    「えぇ、そんな理由? なら、私も唯ちゃんって呼んでよっ」

    朋也「アホか」

    447 = 1 :

    「私も朋ちゃんって呼ぶからさっ。そうしよ?」

    朋也「ありえないからな…」

    「ちぇ、けち~…いいもん、別に。私にはギー太がいるから」

    言って、横に置いてあったケースからギターを取り出した。

    「だんごっ、だんごっ」

    ギターを弾きながら歌いだす。
    それは、俺も聞いたことのある、だんご大家族のテーマソング。
    だが、オリジナルとは違い、曲調が激しかった。

    「だんごっ、大家族ぅ、あういぇいっ!」

    ロック風にアレンジしていた。

    「岡崎くんも、サビはハモってよぅ、あういぇいっ!」

    サビなんて知らない。
    とりあえず、適当にだんごだんご言って合わせておいた。

    ―――――――――――――――――――――

    「お待ちどうさま~」

    憂ちゃんがお盆に料理を乗せて運んできてくれる。
    まずは前菜のようだった。

    448 = 81 :

    話しがごちゃ混ぜでわからん

    449 = 1 :

    「わぁ、肉じゃがだぁ」

    「はいお姉ちゃん」

    平沢に手渡す。

    「ありがと~」

    「岡崎さんも」

    朋也「ああ、サンキュ」

    俺も受け取った。
    最後に自分の座る位置に置くと、また台所へ戻っていった。

    朋也「おまえは料理したりしないのか」

    「ん? しないけど」

    朋也「じゃあ、おまえ、家事は掃除とかやってるのか」

    「それも、憂だよ?」

    朋也「なら、おまえはなにをやってるんだよ」

    「私はね、生きてるんだよ」

    朋也「あん?」

    そりゃ、死んでるようにはみえないが。

    450 = 43 :

    投下ミスとかしてない俺?つなぎ目が不自然だったり話が飛んでるとこあったらおせーてね


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