元スレ女旅人「なにやら視線を感じる」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
151 = 103 :
旦
ポケットに入っていた紙には、初めて見る字で「日暮時に同じ場所で」と書いてあった。
よく考えれば、このズボンを買ったのはこの町に来てからだ。 ママのはずがない。
ということは、ポケットに物を忍び込ませるチャンスがあるのは彼女だけということになる。
彼女の直筆。 家宝にしよう。
これを読んだ瞬間、俺は言い表せないほどのわくわくと不安に駆られた。
俺が彼女と親密な関係になることを諦めた矢先の事である。 いったい何が始まるんです?
もしかして俺、殺されるのではないか?
様々な期待と不安を抱きながら、とりあえず遅刻してはいけないと思い
日が暮れる前の、日時計で言うところの2時間前に店に到着した。
店は開いておらず、店の前で1時間待たされた。
152 = 103 :
席について考えた。
彼女が俺を殺そうとここに呼び出しても不思議ではない。
恨まないとは言ったが、実際殺されそうになった+部下の無念を晴らす=殺戮という方程式しか見えない。
ただ。 万が一、万が一だ。
万が一ということは、万が9999は殺されるということですね、俺が。 だって論理的にそうなるじゃないですか。
残りの1で彼女が俺と話したいと思って呼び出したとしたら、俺はなにか気の利いたことが言えるだろうか。
世の女性にモテる男いわゆるリア充は、どのようにして女性を口説いているのだろうか。
女性とお付き合いした経験の無い自分には分からない。
とにかく、質問攻めにしてみよう。 時間はある、先に考えておけ。
ご趣味は。 好きな色は。 好きな食べ物は。 好きなリンゴ料理は。
何故俺をまた誘ったか。 何故昨日、祝勝会があったにもかかわらずここに居たのか。
騎士になる前はどんな生活をしていたか。 何故騎士になったのか。
ああ、昨日の酒代についてのお礼もしなければ――
153 = 136 :
ほす
155 = 139 :
そろそろ眠い
紫煙
156 :
これは久々の良スレ
保守
157 :
期待してる
158 :
非常におもしろい
保守
159 = 158 :
ほ
160 = 103 :
いろいろと考えたが、彼女の顔を見た瞬間頭が真っ白になった。
それに、どうやら俺とお喋りをしに来たわけではないらしい。
彼女「付いて来い」
俺の顔を見るなりそう言って、店を出てしまった。
急いで飲んでいた分の代金をテーブルに置き、彼女を追って店を出た。
追って見る、彼女の背中。 ずっと見慣れたものであったが、近くで見るのは新鮮だ。
歩くたびに髪が一本一本揺れているのが分かる。 その髪の残り香も――Excellent.
161 = 103 :
彼女「この辺でいいだろう」
彼女に連れられた先は、町から少し離れた場所にある小高い丘だった。
人気は全く無い。 とても静かな場所だ。
俺「えっと……何する? んですか?」
彼女は「うむ」と頷き、そしてこちらに振り返った。
ふわっとなびく髪から現れた彼女の冷たい目は、真っ直ぐ俺を捉えていた。
彼女「お前に決闘を申し込む」
162 = 103 :
俺「は、え? ま、待ってくれ、なんでそんな急に」
彼女「前は途中で邪魔が入った。 だから今、決着をつけようと言うのだ」
抜いた剣の切っ先はぶれることなくこちらを向いている。 彼女は本気のようだ。
しかし俺は、彼女とは、戦いたくはない。 どうする。 ここから逃げるか。
じり、と一歩下がる。
彼女「貴様はまた逃げるのか」
俺「え、あ……」
彼女「ならば剣を抜け!」
163 = 103 :
彼女は戦士の誇りを重んじている。 特に、決闘においては。
戦場で彼女が俺に決闘を挑んだ理由は、俺の態度が気に入らなかったから。
部下との決闘で、俺が手を抜いて生かしたこと、それが――
彼女「貴様は昨日、謝りたいと、詫びたいと言った。 その気持ちが本当なのなら」
俺「!……」
確かに、そうだ。
俺は恩人に対する無礼を詫びなければならない。 償わなければならない。
剣を抜く。
次は、手を抜くことは許されない。
164 = 103 :
旦
剣を抜いた瞬間、表情が変わった。 まるで別人のようだ。
いつも泳いでいた目は、今は真っ直ぐこちらを見据えている。
静かで、それでいて全くの迷いの無い目――
こいつはおそらく、前の決闘で、私との戦いでも手を抜こうとしていた。
あの時剣が折れていなければ、私も腕を落とされていただろう。
もし本気になったのなら、きっと多くは受けきれない。
勝負は、最初の一手に賭ける。
焼けるように赤い太陽の光が横から差す。
風の音だけがさらさらと流れ、草木を優しく揺らした。
太陽は徐々に傾きを増し、影を伸ばしていく。
そして地平線に沈んだ時、夜を告げる鐘が鳴り響き――
同時に地面を蹴った。
165 = 103 :
旦
結果から言うと、勝負は一瞬でついた。 俺が勝った。
鐘がなった瞬間、彼女も同時に動き出した。
俺は上段から振り下ろす。 彼女はそれを読み、打ち落とし、そのまま一撃を食らわそうとした。
しかし俺の、力に任せた剣はそうはさせず、彼女の剣を叩き折り、
そして彼女の首元――ギリギリのところで、止まった。
俺「首取った」
しばらくの間の後剣を下ろし「ぶはぁ」と今まで溜めていた息全てを吐き出した。
一撃に集中しすぎた、鼻血が出そうだ。
166 = 103 :
彼女の目は見開かれたまま動かない。
ぺたんと地面に座り、震える手から、折れた剣が零れ落ちた。
やりすぎてしまったかもしれない。
心配して顔を覗き込むと、彼女は可笑しそうにくつくつと笑い始めた。
彼女「くっく……はは、ははは! なんだ、お前、本当に強いんだな」
俺「いやぁ、それほどでも」
彼女「謙遜するな。 それとも今のも本気ではなかったか?」
俺「そんなことは。 全力で、負かしてやろうと」
彼女「ならばよし」
167 = 103 :
彼女は膝を抱えてちょこんと座った。 なんて可愛らしいんだ。
そして地面をぽんぽんと叩き、横に座るように促した。
いいいいのか? いいのか!? かかかっかか彼女の横に座っちゃっていいのか!?
いや彼女がそう言っているんだ、お言葉に甘えて座るべきだろう! そうだろう!
この巡ってきた奇跡ともいえるチャンスをみすみす逃してなるものか!
ただし息子よ、出来るだけ冷静であれ。 興奮しては、また彼女を失望させてしまう。
大きく深呼吸し、緊張しながら、彼女の横に、座った。
彼女「……なんで正座なんだ」
俺「いややっぱり貴女や彼に申し訳ないと」
彼女「だから、もういい」
169 = 103 :
正座を崩し、胡座をかく。 草木がさらさらと揺れる。
彼女はそれを毟り、そして手を放して宙に舞わせた。
彼女「解せんな。 お前ほどの実力があれば騎士団に入ることも容易いだろうに」
俺「まぁ、契約の延長じゃなく、正式に入団の勧誘も何度かはあったけど……」
彼女「ならば何故。 傭兵で埋もれるには勿体無い。 金にも困るだろう」
俺「そうなんだけどなぁ。 ……騎士様の前で言うもんじゃないけど、面倒臭そうだし」
彼女「面倒、か。 ……そうか。 そうだな」
妙に納得したようにうんうんと頷く。
「本当に、面倒だ」と呟き、そしてまた草を毟って放すを繰り返した。
170 = 103 :
そのままぼーっと何も話さないまま時間が過ぎた。
彼女は膝を抱える腕に顎をのせ、飽いた左腕では未だに草を毟り続ける。
俺はそんな彼女の様子を見て、可愛いなぁとずっと思っていた。
空には星が目立ち始めた。 彼女は「さて」と立ち上がる。
彼女「そろそろ、戻るか」
なんでも最近夜になると狼が現れ、商人が襲われる被害が続出しているらしい。
彼女は町に向かって歩き始めた。 俺も立ち上がり、尻についた草や土をぱっぱと掃う。
171 = 103 :
夜の街は仕事終わりの男たちで賑わう。
そんな中を彼女と並んで歩いているのだ。 これは大きな進歩と言えよう。
俺「えっと、宿、この辺なんだけど」
ここで彼女が「酒を飲みに行かないか」と言ってくれる事を期待していたが、
興味無さ気に「そうか」と言われるだけだった。 そうだった、期待してはいけないんだった。
小さくなっていく彼女の背中を見て、ある事を言い忘れていたのを思い出した。
俺「昨日、奢ってくれてありがとう」
彼女は立ち止まってこっちを見た。
そしてしばらく考えた後、小さな声で、だが確実に、こう言った。
彼女「また、奢ってやる」
かくして、俺は彼女の「飲み友達」の称号を得たのである。
172 :
私怨
173 :
紫煙
174 = 133 :
再開してた
支援
176 = 103 :
旦
ボサボサの頭をした男と決闘をした夜以来、そいつとはよく共に酒を飲む仲になった。
頻度は週に一度程度。 あらかじめ都合の良い日を伝え、その日に会う、という感じである。
もちろん急に仕事が入る場合もあり、そのときは素直に「すまんかった」と言う他無い。
酒は基本的に、私がキープしている樽から注いで飲んでいるが、ある日あいつはビールを頼んだ。
私にはビールを飲んだ経験が無く一口だけ貰ったことがあるのだが、どうも口には合わなかった。
酒を飲んでいる間、あいつは私に、自身の経験を色々と話して聞かせた。
女に振られて家出したこと、初めて傭兵として戦った時のこと、
戦から逃げるつもりがいつの間にかしんがりになっていたこと、
クマに襲われ食料全てを奪われたこと、それが原因で死に掛けたこと――
177 = 103 :
そのような話の流れで「貴女はどこの生まれなのか」と訊かれたことがある。
相手はただの傭兵であるし、別に隠す必要性も見られなかったので正直に言った。
私「どこで生まれたのかは知らん。 物心ついたときには奴隷として売られていたからな」
ボサボサ頭「え、うそ、奴隷? 意外だなぁ」
私「だからろくな教育も受けなかった。 まだ、字を書くのは慣れない」
これは言うべきことじゃなかった。
前にポケットに忍ばせたメモに書いた字を、酷く馬鹿にされたような気がした。
尤もこいつに悪気は無かったようなのだが。
また、お互いに全く話さないという日もあった。 ただ共に酒を飲む、というだけの。
いやむしろ日数的にはそっちの方が多かったように思う。
こいつも無言の間を無理やり埋めようとするタイプの人間ではないらしい。
178 = 103 :
旦
あれ以来彼女とは週に一度、多くて二度ぐらいの頻度で共に酒を飲むようになった。
もちろん彼女は騎士で忙しくて当然だから来れない日もあったが、それでも俺は嬉しかった。
常ではないが定期的に、彼女を間近で見ることができるのだから当然である。
本当に、彼女の守護神だとかサポーターだとか言っていた日が懐かしく思える。
彼女は傭兵である俺に気を使ってか、彼女の酒を振舞ってくれていた。
しかし流石に毎回は悪いと思い、ある日自分の金でビールを頼んだら、
飲んだことが無いらしい彼女が興味を示し、なんと、俺のジョッキで、一口、飲んだのである。
不味そうに顔を顰めたがそんなことはどうでもいい。 彼女に「これって間接キスだよな?」って言ったら
……どうなるの?
とりあえず、その日彼女が帰った後、そのジョッキを買い取った。
これも家宝にします。 ありがたや。
179 = 103 :
店員の姉ちゃんに「お二方はお付き合いになられてるのですか?」と訊かれたときは心臓が出かけた。
そうであれば心底嬉しいのだが彼女に失礼があってはいけないと、断固否定させてもらった。
彼女自身も「そんなわけあるか」と全く動揺せずに吐き捨てたし、俺に気など無いのだろう。
そうに決まっている、うん。 ……うん……。
彼女は「会話に間があるとどうしても埋めたくなる派」の人間ではなく、無言の時間も愛した。
何を喋ればいいのか解らない俺にとってそれ以上のことはないが、流石に毎回はどうだろうと思い
たまに、俺の経験してきた事を話した。 もちろん彼女の後を付いて歩いたことは話さないが。
多分、俺の話をちゃんと聞いてくれていたと思う。 「難儀だったな」と言ってくれたり、笑ってくれたりした。
尤もそれは鼻笑いや嘲笑いばかりであったが、たまに見せる笑顔が、たまらなく可愛かった。
180 = 103 :
一度だけ、彼女の話を聞いた。
驚いたことに彼女は正規軍騎士で貴族という身分でありながら、出身は逃亡奴隷だったのである。
だから字を書くことが出来るようになったのは最近の事なのだそうだ。
書類などの文章は側近に任せ、サインだけは自分で書くという。
俺「へぇ、でも前貰ったメモ見る限り上手だと思う、可愛かったよ丁寧で」
ポケットに入れられたメモには、アルファベット一字一字丁寧に行書体で書かれていた。
俺は素直に褒めたつもり、だったが――飛んできたのは右ストレートであった。
彼女「う、うるさい! 自分の名前ぐらいは、筆記体で書けるっ」
初めて、顔を赤くした彼女を見た。 ムキになるその姿たるやまことに可愛らしく――
俺はその日息子との拮抗に負け、数年ぶりに床オナをした。
自身の不甲斐なさと後悔で枕を濡らした。
181 = 103 :
しかし、幸せの日もそう長くは続かなかった。 俺の財布が悲鳴をあげたのである。
基本、飲む酒は彼女が買い溜めたものであるから酒場ではあまり金を使わないが、
長きに渡る宿代とママに返すための積立金、そして路銀のことを考えると
これ以上遊んでは暮らせないのである。
その旨彼女に伝えると、「そうか」と素っ気なく言われただけだった。
彼女の俺に対する思いを知った気がする。 なるほど、やはり俺は所詮その程度か。
……ア、アタイ、寂しくなんか、ないんだから、ね……!
とにかく、一ヶ月もの間居座ったこの町を誰の見送りもないままで旅立った。
182 = 103 :
旦
ボサボサの頭をした男はまた稼ぐために町を出て行った。
あいつは傭兵であるし当然の事だと思い、出て行くことを告げられた時も大して反応しなかった。
私には引き止める理由はないし、宿代をだしてやる義理もないのである。
あいつが居なくとも私の生活が変わるわけではない。
面倒な仕事を坦々とこなし、時間があればいつもの酒場のいつもの場所で酒を飲む。
どこかで大きな戦でもない限り、その繰り返しである。
183 = 103 :
この日の夜も晩餐会があった。
息苦しくなるような衣装を身に纏い、息苦しくなるような場所で、抜け出したい衝動に駆られる。
主催者――国王陛下の乾杯の音戸の後、配られたワインを飲むフリをする。
私が兵団の隊長となり、爵位と騎士の号を得る際の祝勝会で、同じように渡された酒を
毒見として飲ませた使いが目の前で痙攣を起こして死んで以来、こういう場所では飲まないことにしている。
女でありながら騎士という身分を認めたがらない老害大臣達の白い目、
わらわらと集まり婚約とダンスを求め、断る毎に聞こえる貴族御曹司の陰口、
それに嫉妬した、着飾ることしか脳の無い貴族令嬢の嫌味――
いつまで経っても慣れることができない。
本当に、面倒で、つまらない。
184 :
投下間隔早すぎね?
185 = 103 :
私にとって、この狭い路地にある酒場は唯一心の休まる場所だった。
この、少し汚くて、泥臭い雰囲気のこの場所が、自分を懐かしい思いにさせた。
そんな場所にあの男を誘うようになった理由は、自分でもよく解らない。
ただの気まぐれだったのか。
――いや。
あいつには、気を使わないで済む。 傭兵だから――だろうか。
よくは解らないが、あいつの話を聞けば、あいつが居れば、
私の中の言い表せないような怒りなどのもやもやが和らぐような、そんな気がした。
そんなことを考えてしまうのは、慣れないビールを飲んでいるからだろうか。
目の前の席には今、誰も居ない。
186 = 173 :
しえん
187 :
くそ!くそ!くそ!
188 = 103 :
旦
九月、リンゴが旬を迎え美味しい季節です。
この町を経って五ヶ月、よう生き残ったなぁと自分でも感心する。
とりあえず前と同じ宿に部屋を確保する。
店主曰く、この五ヵ月の間にライバル店が出没したこと以外
この国や町、及び軍に大きな変化は特には見られなかったとの事。
よし、ならば彼女に会いに行かなければ! というか会わないと死ぬ!!
定期的に彼女に会って話すという事が当然になっていたお陰で、
この町を発ってから「彼女に会いたいバイタリティゲージ」は一週間で頂点に達してしまい、
頭がどうにかなってしまいそうだった。 今正気なのは彼女の使ったジョッキがあるからに他ならない。
歩くときも食べるときも寝るときも彼女を思い浮かべ、
そればかりか仕事場でも彼女を思い浮かべたもんだから危うく命を落としかけた。
そんなこんなで危ない橋を何度か渡り、今回は金銭的危機には陥らないほどの金を稼いできた。
189 :
なんかキュンキュンして来る
190 :
楽しんでる支援
191 :
全然追いつける様子がないが、先回りして支援
192 = 103 :
足早に例の酒場へと向かった。
今日彼女が来るとは限らないが、可能性が無いわけではないのだ。
いつもの席に座り彼女が来るのを待った。 久々に会うからかは解らないが、
初めて彼女とここで待ち合わせた時のように、ドキがムネムネして破裂しそうだった。
店のドアが開く度に彼女ではないかと振り向く。
しかしそこにあるのはオヤジの姿ばかりで、今日はもう来ないかもなと諦め最後の酒を注文した。
その時、カランと来客を告げるベルが鳴った。
足音が聞こえる。 この足音には確か聞き覚えがある。
それは何歩か歩くとぴたりと止まった。
数秒静止した後、また動き出し、歩く度にそのテンポは速くなった。
そしてまた、真後ろで止まった。
振り返ると、恋焦がれた愛しい女性が、目の前に居た。
193 = 138 :
がちぼっきさるよけ
195 = 103 :
彼女「お前、いつ帰ってきた」
俺「今さっき」
彼女「……くたばったと思っていた」
俺「御覧の通り、脚もついてますぜ」
彼女「……そうか」
196 = 103 :
正直、彼女が俺のことを覚えているとは思わなかった。 彼女にとって俺など、
飲み仲間にしたってモブキャラであるから、五ヵ月も出番が無ければ記憶から失せてしまうと思っていた。
彼女はいつも通り、俺の向かいに座った。
その顔は相変わらず美しく、可愛らしかった。 髪はまた短く切ったようだ。
彼女「……右目」
俺「え、あぁ、矢がズチュッと」
彼女「痛くないのか」
俺「もう結構前の事だから」
彼女はまた「そうか」と言って、鼻から大きく息を漏らした。
もしかして、心配してくれたのだろうか。 だとしたら大変喜ばしいことである。
197 :
しええええええええん
199 = 103 :
旦
店に入った瞬間、鼓動がドクンと鳴ったのが分かった。
いつもの席に、見覚えのある頭。
――まさか。
足を早め、その後ろにつくと、そいつは振り返った。
相変わらず髪をボサつかせた男は、相変わらずの笑顔だった。
私「お前、いつ帰ってきた」
ボサボサ頭「今さっき」
200 = 103 :
右目は矢で射られたらしい。
騎士団という集団の中で隻眼だというのであれば仲間内で補うことはできるが、
あいつのような個人の傭兵の場合助けてくれる者などいないだろう。
これはかなりのハンデになってしまっているのではないか。
しかし元気そうで何よりであった。 思わず深い安堵の息が漏れる。
……私は安心しているのか、この男が帰ってきて。 何故だ? ……分からない。
とりあえず、ビールを二つ注文した。
すると男は驚いたような顔を見せ、ビール苦手じゃなかったかと訊いた。
私「最近、美味いと思い始めた」
嘘である。
みんなの評価 : ★★★×4
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