あぁ､そこの君 そう今これを見ている君だ
私は先行予約の父だ 直接会うのは初めてだね
突然だがこの｢先行予約シール｣を受け取ってくれるか? …違う違う､掘るとかそういう意味じゃない
君達のお陰で家族はたくさんの思い出が出来た 少し私の活躍が少ない気もするが…
そして､わかっているとは思うが私たちはそろそろお別れの時間なんだ
また会えるかはわからないが､少なくとも私は
君達が私達と出会い 見守ってくれたことを心から感謝する

だから… これは
君達が私達家族との出会いを忘れない事を予約するシールなんだ ほんの片隅でも残してくれれば私達は幸せ者だ

…受け取ってくれるか?

妹は俺の妹支援

「じゃ、さよなら。お父さん、お母さん、男、妹。元気でね」
――やだ。行っちゃやだ。行かないで、おねぇちゃん。
「じゃあ俺もそろそろ行くわ。アイツを待たせると悪いしな」
――おにぃちゃん？何でおにぃちゃんまで出て行くの？
「女と同棲するんだ。で、18になったら結婚。もうこの家には戻ってこない」
――何言ってるの？意味が分からないよ。
「この際だから言うけどね、妹ちゃん。私達離婚する事になったの」
――冗談は止めてお母さん。そんなの全然面白くないよ。
「お父さんとお母さんは別居する。お前も、今日からは一人で暮らすんだ」
――やだ。やだ。そんなのやだ。
「これからは家族バラバラなのね」
「それも良いだろ」
「それじゃあね、妹ちゃん。身体に気をつけてね」
「達者でな」
――やめて、こんなの嫌。嘘だ。待って！行かないで！
――おねぇちゃん！おにぃちゃん！おかあさん！おとうさん！
――私を一人にしないで！！！


「……ッ！！！」
飛び起きた妹の目尻には、うっすらと涙が浮かんでいた。
真っ暗な部屋にようやく目が慣れていく事によって、
そこが自分の部屋だと気付くまで、動悸が治まらなかった。
夢で良かった。喉の奥、胸の奥、心の奥から出る深い安堵の溜息をつく。
膝を折って額を乗せ、布団をギュッと握り締める。
妹の手にじんわりと汗が滲んだ。自然と嗚咽が漏れる。
隣の姉の部屋に聞こえないようにするのに随分苦労した。

>>751
もちろんさ！

>>751　断る理由がありません

>>751もちろんさ！

姉だの妹だの気にしないで、最後は支援しちゃうぜﾔｯﾎｰｩ

翌朝。腫れた目を洗い流してしまおうと洗面所に行くと、男が居た。
「おう、おはようさん」
その姿を見た途端、妹の脳裏に昨夜の悪夢が蘇って来る。
胸に急激にどす黒い靄が掛かり、溜まらず洗面所を飛び出した。
「あっ、おい！？」
自分の部屋まで駆け戻り、机の引き出しを開け、
ありったけの『先行予約』シールを腕一杯に抱える。
それを持って男の下へ急ぎ、大量のシールを彼に貼り付けた。
「な・何だよ？ちょっと待て妹、貼り過…やめ、やめろって！」
この人は私が『予約』するんだ。この先もずっと、ずっと、ずっと！
「何してんの～、妹。朝っぱらからお盛んねえ」
「姉さん！助けてくれよ！今日のコイツ尋常じゃねえって！」
振り返るとニヤケ顔の姉が居た。弾かれたように抱きつく。
そして男にしたのと同じように、彼女にもシールを貼り捲った。
「わぷっ！ちょっと、やめ、やめなさいって！」
やめられるものか。鬼気迫る表情で妹は一心不乱に貼り続ける。
「お母さん！助けてー！妹がっ、妹がー！」
堪りかねた姉が母に助けを求める。
そうだ、まだ捕まえておかなきゃいけない人が居たと気付く。
母がこちらに来るよりも早く、妹は走り出していた。
果たして、母は台所に居た。慌てふためいた顔をしている。
「なに、どうしたの？妹ちゃん？さっき洗面所の方か…きゃー！」
母の台詞は言い終わらないうちに彼女自身の悲鳴によって掻き消された。
シールを貼りながら妹は考えていた。
父が居ない。もう仕事に出掛けてしまったのだろう。
今日学校が終わったら、大量にまたシールを作らなければ。
そしてあの人にも貼るんだ…と。

sienn

>>751
姉妹からなら貰ってやろう

















ありがたく頂戴いたす

>>758
なんというシール地獄ｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ

>>751
なぜか俺泣きそうなんだぜ

ハッと目が覚め、慌てて時計を確認する。
――しまった。もうお昼…。
いつもはうっとおしいこの目覚まし時計が鳴らなかったのが恨めしい。
昨日は父の帰宅を待っているうちに睡魔に負けてしまった。
でも大丈夫。今日は日曜日。父は家に居る。
万端準備を整えていざ、最後の獲物を狩るべく部屋を出る妹。
階下に下りていくと、父と母の話し声が聞こえてきた。
――良かった。やっぱりちゃんと居る。
安堵し、居間へ続く廊下へ降りた所で、ハタとその足が止まった。
「………が、単…赴任……って？」
息を呑む。母の声だ。彼女は今、何と言ったのだろう。…単身、赴任？
「そ…じゃ…子供達…どうな………かしら？」
「置いて…くつもり……だろ………が…賢明………」
よく聞こえない。もっと近付かなければ。
だが妹の足は、彼女の意思と反してガクガクと振るえ、言う事を聞かない。
居なくなる。父が。まさかあの夢が、現実の物に？
このままじゃいずれ、母も、姉も、男もきっと…。
「はースッキリ。…ん？妹、そんな所で何突っ立ってんだよ」
ちょうどトイレから出てきた男が呼び掛けて来た。ゆっくりとそちらを振り向く。
「…え？お前何で泣いて…」
「……っ！！！」
男の脇をすり抜け、玄関から飛び出す。後ろで何か叫んでいるが、聞こえない。
休日だと言うのに曇天の嫌な空の下を、妹は走り出していた。

3日間楽しませてもらったな

くっそうｗｗｗねれないじゃねえかなんて事をしてくれるｗｗｗ

>>762一緒に泣こうぜ

曇り空からやがて雨が降り出し、傘を持っていない妹はずぶ濡れになった。
でもこれで良い、と彼女は思った。
これなら自分が泣いている事を通行人に悟られないから。
家を飛び出してどれくらい時間が経っただろうか。数分か、数十分か、数時間か。
当て所なく街中を徘徊していい加減足が棒になってきた妹は、路傍にへたり込む。
「…妹ちゃん？」
ふいに名前を呼ばれ、驚いて顔を上げると、そこには見慣れた顔があった。
「何してるのこんな所で？それにずぶ濡れじゃない」
女が傘をさして立っている。手には買い物袋。
「…女、さ…！」
思わず飛びついていた。身も心も冷え切ったその身体に、彼女の体温は心地よい。
「ちょ、ちょっとどうしたの？…とにかくこれじゃ風邪引くわ。ついてきて」


「はい着いたわよ。狭いけど我慢してね」
女に連れてこられたのは古いアパート。ここで彼女は一人暮らしをしているらしい。
「…お邪魔…します…」
外観にも驚いたが中も相当な物だ。
妹は一人暮らしをした事がないので分からないが、それでもかなりのボロと言える。
畳敷きの四畳一間。トイレはあるが、風呂がない。
「簡易シャワーが外にあるのよ。とりあえずそれ浴びよっか。はいこれ」
100円玉を何個か手渡された。
「…？」
「そのシャワー、3分で100円なのよ」
正直眩暈がした妹だった。

しええええええん！！！！！！！

支援

その日は女の部屋に泊めてもらい、翌日は学校を休んだ。
姉と男に合わせる顔がないから…との言に、女は苦笑いで頷いてくれた。
それでも家への連絡だけは、何度嫌だと言っても譲ってくれなかった。
――今日、迎えに来るかな。おねぇちゃんかおにぃちゃん、どっちかな。
そんな事を考えながら布団に包まっていると、いつしか二度寝してしまっていた。

バタバタと激しい足音が響き、カチャカチャと鍵穴が鳴る音で妹は目を覚ました。
――ああ、迎えが来た。結局逃げ出しても一日で連れ戻されちゃ意味無いよね…。
そんな事を思いながら顔が見えないように布団を深く被る。
しかし乱雑に扉を開けて入ってきた主は、姉でも男でもなく女だった。
女は開口一番、焦った様子で声を張り上げた。
「妹ちゃん、大変！あなたのお母さんが、倒れて！今、阿部病院に！」
「！！！！！」
光の速さで跳ね起きて、転びそうになりながら駆け出す。
「あっ！妹ちゃ…！！！」
自らの持てる渾身の力を振り絞って、妹は病院に向けて疾走した。


――おかあさん！おかあさん！
――行かないで！死なないで！居なくならないで！
――私の所為？私が、悪い子だから！？
――神様、お願い！これからは良い子になります！
――だからお母さんを奪わないで！私から、大事な人を奪わないで！！

「おかあさんッ！！！」
病室に駆け込んだ妹の目に飛び込んできたのは、驚く母と姉と男の顔。
「妹ちゃん！良かった無事で！」
「もう！あなた、心配かけて！」
「女の家に泊まったんだってな。全く何考えてんだよ！」
三者三様の言葉を浴びせかけられる。
真っ先に確認した母の姿は、若干顔色が悪くは見えるものの、
普段とそれほど変わらないようで妹は安堵する。
「なあに、ただの心労さ。心配する事はないぜ、お嬢ちゃん」
ネームプレートに「阿部」と書かれた医師が話しかけてくる。
「じゃ、母さん。俺は行くけど、暫くは安静にね」
「有難うございました院長先生」
阿部医師…いや、院長が退室する。途端に姉がプリプリと怒り出した。
「おかあさんに謝りなさい妹！」
「母さんはお前が突然家出して心配で心配で、そのストレスから倒れたんだよ」
「もう良いのよ、二人とも。それよりちょっと席を外してくれるかしら」
母が柔和な笑顔で、だが真剣な眼差しで告げた。
「妹ちゃんに話があるのよ」

阿部病院のせいで泣くに泣けねえｗｗｗｗｗｗｗｗｗ

矢裸内科ｗｗｗｗｗｗｗｗ

阿部さん先生になったのかよｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ

さあ、あと10分だ

ここで規制になったら泣くに泣けねえぜｗｗｗｗｗｗｗｗ

「…そう、そういう事だったの」
妹は母と二人きりになり、洗いざらい話した。
ここ数日の奇行の原因を。姉が、父が、居なくなる恐怖を。
そしていつか、男や母まで居なくなってしまうのではないかと怖くなった事を。
「あなたは、親しい人が傍から居なくなるのを誰よりも恐れている」
窓の外を見ながら、ぽつぽつと母が話し始めた。

「お父さんに…あなたの実のお父さんに一番懐いていたのはあなただった」
――そうだったっけ…。
「その人が死んで、あなたは初めて失う辛さを知ったのね」
――うん、とても悲しかったよ…。
「もうこんな辛さを味わいたくない。そう思っていた」
――誰も私の傍から居なくなって欲しくない…。
「そしてあなたは知った。『先行予約』というものを」
――予約すれば、ずっと私のもの…。
「でも聞いて。『予約』は予約でしかない。絶対に手に入るとは限らない」
――え？
「大事なのは『それを手に入れたい』という気持ち」
――気持ち…。
「妹ちゃんが強く願い、それが手に入るよう精一杯努力すれば、きっと叶えられる」
――そう、かな…？本当に…？
「『先行予約』は…自分自身への、『誓い』よ」
――……。

支援じゃああああ

>>774
誰がうま（ｒｙ

な、泣いてないよ・・・・・・・・・・・ｳｯ

姉④

なんという終りが惜しまれる新ジャンル

あと5分？

「その通りだとも娘よ！」
突如扉を蹴飛ばして、父が乱入して来た。母と妹、二人して目を丸くする。
「お父さん、いつ来たの？」
「お前達が話し始めた頃合だ！それから娘よ、お前は大きな勘違いをしている！」
「ああ、そうそう。それを言い忘れてたわね」
何の事だろう。キョトンとした顔で、父と母を見る妹。
「父さんが単身赴任するなど事実無根！ぶっちゃけありえな～い！」
「そうなのよ。あれはお父さんの部下の人の話なのよ」
…まさかである。こんなオチとは。身体が脱力してヘナヘナと崩れ落ちた。
「全く、まぎらわしいにも程があるぜ」
「男によく似た暴走っぷりよね」
男と姉も父の後ろからひょっこり顔を出す。
「よし、皆揃ったな。並べ並べ」
父が男と姉を急かして母の傍に立たせる。
何が始まるんだろうか？不思議そうに見つめる妹に、父が口を開いた。
「この『先行予約』は現品限り、先着一名様限定！」
次に男が叫ぶ。
「商品の内容は、我々四人がずっと固い絆で結ばれた妹の家族であるという事！」
姉が続く。
「傍に居ても、離れていても。あなたがこの『予約』をキャンセルするまでは」
最後に、母が言う。
「予約者の条件は、私達の可愛い妹ちゃん。…さあ、どうします？予約しますか？」

小さな声で、だがハッキリと、妹は答えた。
「…予約、します」


おわり

>>784
ID最初にOがあったら男になれたのにな！またな！

残り三分ちょい

>>787
よくがんばった、感動した

>>787超乙！！！！！

いいぞおおおおおおおおおおおおおおおおお


ﾉｼ

書き手、絵師、保守、支援した人達乙

残り時間でよくがんばった！！感動した！！

三日間ほとんどROM専だったが……

感動をありがとう

てめえら全員乙！

神達ほんとに楽しい時間をありがとう！！
なっ泣いてなんかいないんだからっ＞＜

>>787
なんという素敵な終わり方
みんなありがとう!

>>787
感動した！！トリを飾るのにふさわしいぜ、まったく！