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元スレ提督「墓場島鎮守府?」
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* 休養室 *
吹雪「……」(←ベッドに寝かされている)
提督(吹雪の額のタオルを取り換えつつ)「吹雪が暴走した理由には心当たりがある」
古鷹「と、いいますと……」
提督「吹雪は捨て艦だ。轟沈してこの島の海岸に流れ着いた」
朝雲「轟沈経験艦、ですか」
提督「そういう奴ばっかなんだ、この島は」
提督「で、吹雪は前の鎮守府の司令官に、自分の成長を認めてもらいたくて頑張ってる」
提督「誰かに認められたい、求められたい、頼られたい。そういう欲求が吹雪を暴走させたんじゃねえのかね」
朝雲「……」
古鷹「……私も、そうだったんでしょうか」
提督「朝雲の話を聞く限りだが、お前は見返りを求めてねえ感じがするな」
提督「お前は単純に人がいいだけだ。自分が人の役に立てばいい。それで満足するタイプなんだろうな」
朝雲「……確かに、そんなきらいはありますね」
提督「ただ、それが本当にその人に求められているものかどうかを考えずに行動してる。その独り善がりの結果がこうなんだろ」
古鷹「本当にすみませんでした……」
提督「自分がされて嫌なことはすんな、って話だ。それさえわかりゃ、この件で俺から言うことは何もねえ」
提督「……あと、これはお節介で一応言っておくけどな。古鷹お前、もう少し自分が女だって自覚を持て」
古鷹「は、はい? それはどういう……」
提督「俺の背中流そうとしてたとき、裸だったろ……」アタマガリガリ
古鷹「?」クビカシゲ
提督「おい朝雲。古鷹って前からこうだったのか? どういう思考回路してんだこいつ」アタマカカエ
朝雲「こ、ここまで酷いとは思ってなかったわ」アタマカカエ
提督「まさか、前の鎮守府でもこんなんやってたわけじゃねえだろうな」
古鷹「いえ、それはL少佐に頑なに固辞されました。憲兵さんに見つかるとまずいから、って」
提督「あー、そーいやそーだったなー憲兵いねーんだもんなーここ(棒」
朝雲「ちょっ!? 憲兵不在って、それどういうこと!?」
提督「その説明は後でな。で、憲兵がいなかったら真っ裸でL少佐の背中流してたのか?」
古鷹「はい!」ニコー
提督「襲われたりとか、そういう想定はしてねえのかよ」
古鷹「大丈夫です、提督になる人に、そんな悪い人や自分の欲望に負ける人はいらっしゃいませんから!」
提督「おい朝雲。こいつは穢れを知らない天使か? それとも悟りを開いた坊主か? 善人過ぎるにもほどがあるだろ」ズツウ
朝雲「……私もここまで箱入りで従順な重巡だったなんて思いもしなかったわ」ズツウ
古鷹「重巡洋艦のいいところ、たくさん知ってもらえると嬉しいです!」
提督「うるせえよ!!」
吹雪「ぷ……くすくす……」
提督「! 目が覚めたのか? 吹雪」
吹雪「ふふっ……すみません、司令官」ムクッ
提督「悪かったな。お前の様子があんまりひどいもんで、手加減しなかった」
吹雪「いえ、私も調子に乗りすぎましたし……すみませんでした」
古鷹「ふ、吹雪……さん」タジッ
吹雪「あ、だ、大丈夫ですよ古鷹さん。必要以上にお世話されることの大変さを、古鷹さんに知ってもらいたくてやった演技ですから」
提督「終盤は演技じゃなくなりつつあったけどな」
吹雪「あはは……も、もう大丈夫です。目が覚めましたから」
古鷹「そ、そう、良かった……」ホッ
吹雪「でも、男性の前で裸になるのは本当に控えたほうがいいですよ? 夫婦とか、恋人同士の間柄ならわかりますけど」
古鷹「……」
朝雲「まあ、それが普通よね。男性はどうだかしらないけど」
提督「男だって着替えを見られるのは抵抗あるぞ。俺だって着替える時はドアを閉めるし、物陰に隠れる」
古鷹「……ふ……」
吹雪「?」
朝雲「古鷹さん?」
古鷹「……夫婦、ですか……!?////」カオマッカ
吹雪「……」
朝雲「……」
提督「……」
古鷹「……そっ、それか、こい、びと……!?////」ユゲボシューーー
提督「おい、こいつどんだけ煩悩と縁遠い生活してたんだ。純情とかウブとかいうレベルじゃねえぞ」グッタリ
朝雲「私だってこんなに極端な人だったなんて思いたくなかったわ」グッタリ
古鷹「あ、あの、提督さん!!」セイザ
提督「……あ?」
古鷹「ふ、ふ、不束者ですが! よ、よ、よろしくお願いしますっっ!!」ミツユビソロエテ
吹雪「」
朝雲「」
提督「……おい誰かなんとかしろよ面倒くせえったらねえぞくそがああああ!!!」ウガーー
吹雪「司令官!?」
朝雲「古鷹さん落ち着いて!? いろいろ手順を吹っ飛ばし過ぎよ!?」
古鷹「で、で、でも、もう提督に裸見せちゃったしーー!?」オロオロオロオロ
如月「司令官!? 私を差し置いて古鷹さんとなにがあったのーー!?」バーン!
潮「き、如月ちゃん、落ち着いてーー!?」オロオロオロオロ
朝潮「ふ、吹雪さん、この状況は一体……」
吹雪「あははは……説明するの、すっごい面倒くさい」ゲンナリ
朧(吹雪が司令官に似てきた!?)
神通「本当、言い方がそっくりでしたね」
朧「!?」ギョッ
* 10日後 鎮守府埠頭 *
L少佐→L中尉「提督准尉! 本当に、本当に申し訳ありませんでした!!」ドゲザ
提督「……」
古鷹「L少佐!? その頭はどうしたんですか!?」
朝雲「綺麗さっぱり丸刈りにしちゃって……」
L中尉「ああ、古鷹! いまの僕は少佐ではなく中尉だよ。聞いての通り、降格処分を受けたんだ」
L中尉「君たちには本当に迷惑をかけた。本当にすまなかった!!」ドゲザ
提督「で、こっちの荷物はどうしたんだ」
L中尉「以前僕がこの鎮守府から借りた資材の返却分だよ。迷惑をかけた分、そのお礼の分も含めて返させてもらいたい」
提督「そりゃあありがたいが……処分受けたんだろ? あんたこれでやっていけるのか?」
L中尉「だからこそだ。これは僕の気持ち、そしてけじめだ。ぜひ受け取って欲しい」
朝雲「……変われば変わるもんなのね」
古鷹「素晴らしい心がけです! L少佐……いえ、L中尉! 古鷹は、これからの中尉のご活躍、期待しています!」
L中尉「あ、ありがとう古鷹……! これからは心を入れ替えて、頑張るよ!!」
??「L提督? 荷下ろしが終わりましたよ」
L中尉「ああ! おお、そうだ。紹介するよ、僕の新しい秘書艦だ。香取!」
香取「練習巡洋艦、香取です。どうぞお見知りおきを」
提督「どうも。提督准尉だ」
香取「……」ジッ
提督「……」
香取「……」
提督「……」
香取「……」ピク
提督「……」ピク
香取「……」
提督「……」
香取「……なるほど。あなたは大丈夫そうですね」ニコ
提督「そりゃどうも」
香取「さ、L提督、参りましょう? 准尉のご都合もありますし、そろそろ戻らないと」
L中尉「おお!? もうそんな時間か! 名残惜しいが仕方ない。では、これで失礼する!」ケイレイビシーッ
香取「では、皆様ごきげんよう」ニコッ
提督「はいよ」ケイレイ
古鷹「は、はいっ!」ケイレイ
朝雲「お、お疲れ様です!」ケイレイ
船 < ブオーン ザザァァァ
提督「……破れ鍋に綴蓋、ってとこかねえ」
朝雲「ところで司令官、さっき、香取さんと睨み合ってましたけど……何があったんですか?」
提督「あいつ、俺のことを値踏みしてやがった」
提督「あいつの視線、見てたか? 俺の頭からつま先まで一通り眺めて、鞭で引っ叩く素振りまで見せて俺を試してた」
古鷹「そんな……」
提督「まあ、L中尉の秘書艦だから俺は知ったこっちゃねえがな。お似合いなんじゃねえの?」
提督「で、どうする? お前ら、向こうに戻るか?」
古鷹「……いえ、私はここで頑張らせてもらいたいです」
古鷹「戻ったら戻ったで、また甘やかしてしまいそうなので」アハハ
朝雲「私もここに残るわ。古鷹さんがまたやりすぎないか心配だし」
提督「お前ら軽く言うけどな、ここの生活は大変だぞ。わかってるか?」
古鷹「はい、少しでも良いところになるように頑張りますから!」
朝雲「私も付き合ってあげる! だから覚えておいてよ!」
如月「ねえ、司令官? 少しだけ、あっちの鎮守府に帰ってもらった方が良かったのに、って思ってたでしょ?」
提督「ああ、否定しねえよ……面倒臭いのはお前だけで十分だ」
大和にけんもほろろな扱いされる少佐はいつになったら見れるんだろう
保守。
こちらはなかなか筆が進まず放置状態で申し訳ありません。
書きたいネタもたくさんありますし、
少しずつ書き進めてますので、暫しお待ちを。
こちらはなかなか筆が進まず放置状態で申し訳ありません。
書きたいネタもたくさんありますし、
少しずつ書き進めてますので、暫しお待ちを。
* 数年前 とある辺境の鎮守府 *
「吾輩が利根である! 吾輩が来たからには、もう索敵の心配はないぞ!」
「……」
「ぬ? ど、どうした?」
「あ、いや、なんでもない。重巡洋艦、利根だね。よろしく頼むよ」
「うむ!」
* *
「吾輩が第一艦隊の旗艦じゃと?」
「ああ。この艦隊の旗艦、そして俺の秘書艦を務めて欲しい」
「うむ……そうか。ならばこの利根! その名に恥じぬ働きを見せようではないか!」
* *
「提督よ、この艦隊も立派になったな!」
「ああ。それにしても、どうしてこう……運が悪いと言うか、何というか、なあ」
「う……む、確かに……どうすれば筑摩に出会えるんじゃろうなあ……」
「海域を回っても、建造を試みても、違う子ばっかり出てくるし」
「……ちくま……」ホロ
「……」ギュ
「な、なんじゃ!?」
「すまない、利根。俺の鎮守府に来たばかりに、寂しい思いをさせてしまって……」
「……ふふ、恥ずかしいところを見せてしまったな。大丈夫じゃ、吾輩には提督が居る」
「利根……」
「こんなことではいかんな。筑摩が来るまでに、もっと立派なお姉さんにならねば!」
「……そうだな。だが、たまには……いや、たまにじゃなくていいから、俺を頼ってくれていいんだぞ?」
「むう……提督にはずっと頼りっぱなしじゃからな。たまには頼れるお姉さんなところも見てもらいたいんじゃが?」
「はは、たまには甘えさせてもらうよ。だから一緒に頑張ろう」
「うむ!」
* * *
* *
*
* 現在 鎮守府埠頭 *
(士官が押す車椅子に乗せられて運ばれる利根)
利根「……」
士官「あなたが提督准尉ですね」
提督「……ええ」
士官「私はM提督鎮守府より参りました、彼女が利根です」
利根「……」
提督「伺っています。朝潮、部屋に案内しろ」
朝潮「はい、了解しました! どうぞ、こちらです!」ビシッ
士官「ありがとうございます……では」ペコリ
提督「……」
??「ひどい顔じゃと言いたそうじゃな」
提督「……まあ、な」
??「ああなってしまった原因は吾輩の司令官にあたるM准将……」
??「あやつのしたことを見抜けなかった吾輩にも……」
提督「よせ。俺があんたの懺悔を聞いてもどうにもならねえ」
??「……」
提督「で、あんたは何者だ?」
??「む、自己紹介がまだであったな。吾輩は……」
??→利根改二「吾輩は利根。航空巡洋艦、利根である」
提督「航空巡洋艦?」
利根改二「うむ。吾輩たち利根型重巡洋艦は、二次改装によって水上機を運用可能な航空巡洋艦になるのじゃ」
提督「ふぅん……しかし、何かの冗談かと思ったぜ。今しがた車椅子で運ばれた女がいきなり血色いい顔で現れたんだからな」
利根改二「血色が良い、か」
提督「……不服そうだな?」
利根改二「今の吾輩の健康が、他者の犠牲の上に成り立っていたことを知れば当然じゃ」
提督「? 生き物なんてみんなそんなもんだろ?」
利根改二「……広義で言えば、そうじゃな」
提督「……」
* 執務室 *
利根改二「まずはお礼を言わせてもらいたい。彼女をここに置いてくださること、深く深く感謝する」ペコリ
提督「今後どうなるかは保証しかねるがな。で、何があった」
利根改二「うむ……どう、説明すれば良いものか……誤解される言い方ではあるが、こう表現するべきじゃろうな」
利根改二「彼女は、吾輩の鎮守府の指揮官、M准将に……虐待、されておった」
提督「虐待ねえ」
利根改二「正味、虐待と言うべきか何と言うべきか……吾輩も正直、どう言えばいいかわからぬ」
提督「お前は虐待されてねえのか」
利根改二「うむ……むしろ逆じゃ。これを見よ」スッ
提督「指輪? 薬指っつうことは……お前、既婚者か?」
利根改二「これはケッコンカッコカリの指輪じゃ」
提督「かっこかり……なんだそりゃ」
利根改二「艦娘のリミッター解除装置とも言われておる。練度が最大に達した艦娘が、更に成長できるようにする指輪じゃ」
提督「……なんでそんな思わせ振りな名前がついてんだ。悪趣味だな」
利根改二「どうしてこんな名前がついたのかは、吾輩も与り知らぬがおおよその見当は付く」
利根改二「愛情が人を強くするという意味か、愛がない相手を強化して寝首をかかれないようにするためか……」
利根改二「そうでなくとも、男女が長く一緒にいれば、そういう意識もすることもある。事実、吾輩もそうであった」
提督「お前が指輪をしているってことは、お前はそのM准将に可愛がられてた、ってことか?」
利根改二「うむ。吾輩はM准将の秘書艦を長きに渡って務めておった……」
* 数か月前 M提督鎮守府 建造ドック *
利根「吾輩が利根である! 吾輩が来たからには、もう索敵の心配はないぞ!」
M准将「ありゃ」
利根「ぬ?」
利根改二「むう……」
利根「お、おお!? なんじゃ、既に吾輩がおるのか!?」
M准将「利根型は利根型なんだけど、久々に利根ちゃんが来たか……」
利根改二「おぬしの籤運も偏っておるな……」
利根「……もしや、吾輩は2人目なのか?」
M准将「うーん、利根なら10人目くらいじゃないかな?」
利根「なんと!?」
M准将「いや、嫌だってわけじゃないんだ。俺は利根のことは大好きだし」
利根改二「こ、これ、M提督よ!」カァ
M准将「なに照れてんだよ、今更じゃないか」
利根「いきなりのろけを見せられるとは……吾輩の席はすでに埋まっておるということじゃな」ハァ
M准将「いやいや、そういうのも可哀想だし、ちゃんとフォローするつもりだから」
利根「ふぉろー?」
利根「……まさか、めかけにでもするつもりか!?」
M准将「人聞きの悪いことを言わないでくれよ……なあ利根?」
利根改二「そこで吾輩に振るM提督も意地が悪いのう……」
* 現在 執務室 *
利根改二「吾輩の鎮守府は、ちと入り組んだ場所にある、古い城砦を改装して作られた鎮守府でな」
利根改二「ここ同様に戦線からやや離れていること、大きな湾に面していることもあって、演習場としてよく使われておる」
利根改二「M准将は以前から艦娘育成がうまいと評判で、鎮守府に着任して以降は、新米艦娘の基礎訓練を任されておった」
利根改二「ゆえに、吾輩の鎮守府で育った艦娘が、演習相手の鎮守府へスカウトされて異動することも珍しくない」
利根改二「逆に余所の鎮守府の艦娘が、1週間から1か月程度の期間で、吾輩の鎮守府に滞在して訓練することも多いんじゃ」
提督「訓練場みたいな鎮守府だな……変わってんな」
利根改二「うむ。それゆえ、主力部隊以外は、結構な頻度で余所の鎮守府に艦娘を送り出していたのが、吾輩の鎮守府なのじゃ」
利根改二「本当なら、彼女……あの利根も、ほかの艦娘と同じように、余所へ異動するはずだったんじゃが……」
* 過去 M提督鎮守府 *
M准将「そういうわけで、ここに着任する艦娘の多くは、簡単に訓練をしてから別の鎮守府に異動することになる」
利根「なるほど……それなら吾輩も腐らずにすむというわけか」
M准将「そういうことだ。深海棲艦の脅威はそこかしこにある、即戦力が欲しい鎮守府もまたあちこちにあるからね」
利根「吾輩はそちらへ行くことになるんじゃな」
M准将「ああ」コク
利根改二「提督よ、話の途中じゃが、そろそろ演習相手の来る時間じゃぞ」
M准将「ん、そうか? 悪いが利根、今回はお前に仕切ってもらっていいか」
利根改二「うむ、任せよ!」
M准将「こっちの利根は俺と一緒に来てくれ。異動手続きの準備がしたい」
利根「うむ。あいわかった」
M准将「……うーん、こう言ってはなんだが……やっぱり紛らわしいな」フフッ
利根「……確かにの」クスッ
利根改二「もはや、何度このやり取りをしたか覚えておらんぞ」クスッ
* 通路 *
利根「それにしても……なんともいえぬ趣がある鎮守府じゃな……」
M准将「ここはかつて城砦として運用されていたんだ。見てくれは石壁だが中身はハイテクだぞ。でなければ深海棲艦に対抗できないからな」
利根「ふむ……しかし、ハイテクとはまた古めかしい呼び方じゃな?」
M准将「おぬしに言われるとは心外じゃな? おぬしの口調も相当なものではないか」
利根「むっ! 吾輩の口調を真似するでないぞ!」
M准将「ははは、悪いね。何分、彼女とは長い付き合いでね、口調も伝染ってしまうもんなんだ」
利根「むう……」
M准将「だから気を悪くするな。俺は君も嫌いじゃないんだぞ? ははは」
利根「じょ、冗談も程々にせんか。おぬしには彼女がおろう、浮気なぞするもんではない」
M准将「もとは同一人物なのに、浮気になるのかな。まあ、なるんだろうけどね」ハハハ
M准将「……ああ、ごめん利根、ちょっと待ってくれ」
利根「む?」
M准将「そこの壁にくぼみがあるだろ? そこ、ちょっと見てくれるか?」
利根「? これか? ……なんなんじゃこれは?」
M准将「……」カチッ
(准将が近くの壁を軽く押すと、カモフラージュされた蓋が開いてスイッチが現れる)
M准将「……」ピッピッピッ
利根「……ここだけ石を削り取ったような穴というか……なんのために開けた穴なんじゃ?」
M准将「そこを少し押してみてくれ」
利根「?」グッ
壁 < ズッ
利根「!?」
壁 < グルンッ!
利根「おわあ!?」ガクッ
(壁全体が回転扉のように回転し、バランスを崩した利根を壁の内側の滑り台へ誘い込む)
利根「な、なん」
壁 < バタンッ
シーン
M准将「……」ニヤリ
* ??? *
シュオオオオオオオ…
(急角度の滑り台を落ちるように滑っていく利根)
利根「な、な、なんじゃあああ!?」
ボフッ
利根「うわっぷ……!?」
利根「な、なんじゃ、クッションか? くう、真っ暗で何も見えんぞ……」
シュウウウウウ
利根「こ、今度はなんじゃ! この匂い……くんくん……ガ、ガスか!?」
利根「う、い、いかん……ね、眠気が……」
利根「なんと、いう、こと……」ガクッ
* * *
* *
*
利根「……」
利根「……」
利根「……う……」
利根「……ぐ、ぐう……ま、まだ頭がくらくらするな……」
利根「……吾輩はどうなったんじゃ……?」
ジャラッ
利根「……鎖? なんじゃ、首と手足に鉄のわっかが……?」
壁 < ガゴンッ
利根「!?」
M准将「目が覚めたかな」コツコツ
利根「お、おぬしはM提督! これはいったいどういうことじゃ!」
M准将「……」
利根「吾輩を鎖で繋いでどうする気じゃと問うておる!」
M准将「……」
利根「この部屋はなんじゃ!? まるで……」
M准将「……」
利根「まるで……」
M准将「……」ニコ
利根「……」
M准将「……まるで?」ニコニコ
利根「……牢屋……では、ないか……」
M准将「ふふ……」ニヤリ
利根「……いや、それよりも……」
利根「あれは、なんじゃ……!?」プルプル
M准将「……」チラッ
利根「M提督よ……答えよ」
利根「あれはいったい、なんじゃ!?」
利根「あの……巨大な丸鋸や……ものものしい、装置……は……」プルプル
M准将「……」
M准将「……ふふ」
利根「!?」ビクッ
M准将「ふふふ……はははは」
利根「!?!?」
M准将「ああ、すまない。利根が考えた通りのものだよ。あれの使い道は、そういうことだ」
利根「……」ガタガタ
M准将「怖いのか?」
利根「……お、おぬしは……」ガタガタ
M准将「ふふ……ふふふ」
M准将「利根は、かわいいいなあ……はははは」
利根「!?」
利根(なぜじゃ……なぜこの男は……こんな状況で、こんな笑顔を見せているんじゃ……!?)ゾクッ
M准将「まあまあ、そこまで怯えなくても大丈夫だよ」
利根「……怯えるな、じゃと?」
M准将「うん」ニコニコ
利根「この状況で、おぬしを怪訝に思わないほうがどうかしておる……!」
M准将「まあ、そうだろうな。仕方ない」
利根「何故おぬしは、そんなふうに笑っていられるんじゃ!?」
M准将「……」ニコニコ
利根「い、いったい……いったいなんなのじゃ、おぬしは……!」
利根「先程からのおぬしの言動……理解できぬ」
M准将「……悪いけど、俺は君に理解を求めてはいないよ。どうせ誰にも理解してもらえない」
利根「!?」
M准将「だからこうして、誰にも内緒で君を閉じ込めた」
M准将「この地下室は特別に作ったものだ。かつて地下牢として使われていたものを改装してね」
M准将「ここへ閉じ込めるためのからくりを作るのが一番大変だった」
利根「……」
M准将「何を言っているかわからないだろうが、わからなくていい」
ピーピー
M准将「ん、悪いな、用ができた」
M准将「断っておくが、ここから逃げようとは思わないことだ。お前が一刻も長く生きていたいのなら、な」
利根「……っ!!」
M准将「じゃ、また後でな」
壁に擬装された扉< ゴゥンッ ガシャンッ
利根「……ど、どういうことじゃ……」
利根「いや、それどころではない。早く逃げねば……」ジャラッ
利根「こんな鎖、引き千切ってくれる! ふんっ!!」
利根「……っく! ふぬぅぅぅぅ!!」
利根「んっぎ……うおおおおお!!」
利根「……ぜぇ、ぜぇ……これは、無理じゃな……」
利根「ならば根っこを壊せば……」グイ
鎖 <バチッ
利根「ん?」
鎖 <バリバリバリバリ!
利根「あぎゃああああ!?」バリバリバリバリ
利根「……」シュウウウ…
* * *
M准将「鎖を引っ張りすぎると電流が流れる仕組みになっている。暴れんほうが身のためだぞ」
利根「……そういうことは、もっと早く言え」ギリッ
M准将「……んん、なかなか反抗的な目だな」ニヤリ
利根「……」
利根(わからん。この男の吾輩を見る目は、まるで吾輩が反抗するさまを楽しんでおるようだぞ?)
利根「お前の目的はなんじゃ」
M准将「……」
利根「お前の秘書艦は吾輩と同じ利根であろう。そのお前がなぜ吾輩にこんな仕打ちをする」
M准将「理由が知りたいのか」
利根「理由も知らずこんなところへ幽閉されるよりはましじゃ」
M准将「絶望するぞ。それでもいいんだな?」
利根「安い脅しを……! くどいぞ!」
M准将「……ふふっ」
利根「何が可笑しい!」
M准将「ああ、利根の激怒した顔はなかなか見られなかったからな。俺に憎悪をぶつけてくることもない……!」
利根「お前は何を言っておる……!?」
M准将「なんということはない。俺は、利根のいろんな顔を見たいだけだ」
利根「……」
利根「……」
利根「……は?」
M准将「今の秘書艦である利根に出会ったのは数年前。彼女との出会いは衝撃的だった」
M准将「一目で恋に落ちたよ。俺にとって、彼女のすべてが魅力的だった」
M准将「一緒にいて、励まし合った。泣き言をいって慰められたりもした。些細なことでケンカしたこともあった」
M准将「利根と仲良くなるにつれ、彼女とは笑顔で接する時間が増えた。それはいいことだ」
M准将「だが、俺は物足りなかった。怒ったときの顔や、嘆き悲しんだ時の顔……そんな顔を見ることがなくなってきた」
利根「……そ、そんなもの、少ないほうが良いに決まっておろう!」
M准将「俺は物足りなかった」ジロリ
利根「っ!」ゾクッ
M准将「……それをさておいても、2人目の利根が俺の前に現れた時は驚いた」
M准将「最愛の利根が隣にいる。そうではない、別の利根がまた別にいる」
M准将「……ふと思いついてしまったんだ。『別の利根』なら問題ないんじゃないか、って」
利根「……い、いかん。いかんぞ……」
M准将「わかっている。わかってはいる。だが、我慢できなくてね……」スクッ
M准将「お前がここで目を覚ました時、この装置のことを訊いてきたよな?」ニコ
利根「よせ。やめるんじゃ……」ガタガタ
M准将「この装置を使った結末が、このカーテンの向こう側にある。俺が『お前たち』をどうしたのか」グッ
利根「やめよ……やめてくれ!!」
M准将「見ろ」シャァァァッ
室内灯< パッ
利根「……ひ……!?」
(カーテンを開けると、ガラス張りになった奥の部屋の様子を室内灯が照らしている)
利根「……ひ……あ……!」ガタガタガタ
M准将「……ふふ」
利根「……っ!! ……っっ……!!!」ガクガク
M准将「ふふふ、はははは……!」
利根「なん……なんと、いうことを……!」
M准将「……いいぞ。いい顔だ……いい表情だ」
M准将「俺は、その恐怖におののいた利根の顔が見たかったんだ」
M准将「だが悲しいかな、俺は彼女たちに美しさを感じるが……怖いという感情は全く沸かない」
M准将「お前とは、抱く感情が違うんだ……残念ながらな」
利根「お、お前は……そ、そんなことのために『吾輩たち』を、こんな目に遭わせたというのか……!?」カチカチカチ
M准将「最初は、お前たちが怒ったり、泣いたりする顔が見たくて、痛めつけたり詰(なじ)ったりしていた」
M准将「人間というのは欲深いもので、それだけではだんだん飽きてくる」
M准将「そのうち、今度は中身はどうなっているか興味が湧いてきた。どうだ、利根? お前の体の仕組みを見た気分は」
M准将「人間の体だって、縦に割った姿はなかなか見ることができないんだぞ?」
利根「……」ガチガチガチ
M准将「こっちも見ろ。こうしてバラバラにしてみると、それぞれの部位の魅力がよくわかる」
利根「……わかる……ものか……わかるものかあああ!!」
M准将「……そうか。まあ、お前の感想はこの際関係ない」
M准将「ここに飾った利根たちは、特別な処置をして形が変わらないようにしている」
M准将「せっかくここに来てくれたんだ。俺が死ぬまで、ずっと面倒を見てやらないとな」ニコッ
利根「……お……」
利根「お前、は……正気では、ない……!」
利根「……お前は、狂っておる……!! 狂っておるぞ……!!」
M准将「知っているとも」
利根「!?」
M准将「狂っていることくらいわかっている。そんなことは重々理解している」
利根「……ならば……」
M准将「やめろと言いたいんだろう? 無理な話だ」
利根「な……!」
M准将「俺は生きている利根も、こんな姿の利根も、全部好きなんだ」
M准将「あの利根が、海で見せている雄姿。攻撃を受けて傷ついた姿。そのすべてが愛おしい」
利根「……違う……それは違うぞ」フルフル
利根「お前のそれは……愛などではない……!」
M准将「そう思うよな。俺はそうじゃない。だから俺は最初からお前に理解を求めてはいない」
利根「……お前は……」
M准将「時間だ。そろそろ利根が戻ってくる」
M准将「次に会うときは、もっといろいろな表情を見せてくれ。楽しみにしているぞ」ニコ
壁に擬装された扉< バゥンッ
利根「……」
利根「……なんと、なんということじゃ……」ポロッ
利根「……ちくま……ちくまぁぁ……!!」ポロポロポロ
* 数週間後 *
利根「……もう、耐えられぬ」
利根「来る日も来る日も、あの男の所業に怯えなければならぬ……」
利根「否……吾輩はここに閉じ込められて、何日経ったのかすらわからぬ……」
利根「……吾輩は……これからどうなるのじゃ……」
利根「……おぬしたちと一緒に、ここに飾られることになるのか……」
利根「……ははは……」
利根「そうじゃな……そうやも知れぬ。すべて諦めれば、これ以上涙することもない」
利根「しかし、いいのか……? せめて一矢報いねば、おぬしたちとて無念であろう?」
利根「……吾輩が傷付く方が堪えられぬ、とな。そのような姿になってまで、他人を思い遣るとは……」
利根「そうじゃったな。吾輩はおぬしたちじゃった」
利根「最早海に出ることも、ここから出ることも叶わぬ……」
利根「ならば何も、考える必要はない、か……そう、だな。うむ……」
利根「……」
利根「心残りは……筑摩に出会えんかったこと、じゃな……」
利根「おぬしたちもそうであろう……?」
利根「じゃが、それでいい……このような場所に筑摩を呼ぶことは許せぬ……」
利根「……」
利根「筑摩の名も、今が呼びおさめじゃな……筑摩……」
利根「……」
* * *
M准将「利根? ご飯を食べていないのか?」
利根「……」
M准将「それじゃいかんぞ、ほら、食べなさい」
利根「……」
M准将「ほら、口を開けて。飲み込むんだ」グイ
利根「……」ダラー
M准将「……利根!」
利根「……」
M准将「仕方ないな」スマホトリダシ ピッピッ
利根「……」
鎖の電流<バリバリバリバリッ!
利根「……!」ガクガクッ
鎖の電流<フッ
利根「……」シュウウ…
M准将「……利根。……利根!」
M准将「もう壊れてしまったのか。もう少し大事にしたかったんだが……」
利根「……」
M准将「いや、反応がないわけではないからな。利根が意識している様子を見る手立てはあるはず……」
M准将「仕方ない。あれを準備するか」
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