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元スレ提督「墓場島鎮守府?」
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霞「落ち込んでいるのは如月だって同じなのよ! 如月に何か言ったらどうなのよ!」
提督「……」ジッ
霞「な、なによ」
提督「俺に慰めるなんて無理だ。無責任な嘘はつきたかねえ」クルッ
霞「……っ!!」
暁「司令官……!?」
霞「甘ったれてんじゃないわよ!!」ドガッ!
暁「霞っ!?」
提督「!!」グラッ
ドボーン
暁「司令官っ!」
タタタタッ
利根「お、おぬしたち、なにをしておる!」
明石「今、提督がいなかった!?」
暁「し、司令官が! 霞にお尻を蹴られて海に落とされたの!」
利根「なんじゃと!?」
明石「霞ちゃん!?」
朝潮「霞、あなたはなにをしてるんですか!?」
霞「わ、悪かったわよ……!」
明石「ううん、グッジョブ!」サムズアップ!
霞「!?」
暁「えええ!?」
朝潮「明石さんっ!?」
明石「だって提督はあまりに乙女心を理解してくれてないじゃない!?」
朝雲「そ、それはそうかもだけど……」
霞「そ、そうよ! じゃなかったら、あんな風に如月の気持ちを無下にできるわけないわ!」
暁「で、でも!!」
暁「あの時の司令官、すごくつらそうな顔をしてたわ。如月ちゃんのお願いを、断る前も、断った後も」
暁「たぶん、なんだけど……司令官は、誰かを贔屓したくなかったんじゃないかしら」
明石「贔屓?」
暁「暁は、背も低いし、みんなに比べたら子供だって思うときがたくさんあるわ」
暁「でも司令官は、比叡さんや長門さんと話すときと同じように、暁とお話してくれるもの……」
霞「……それ、人によって態度を変えるのが面倒なだけなんじゃないの?」
暁「!?」ガーン
明石「……まあ、ある意味、贔屓していない、って話にはなるわね。ったくもう、本当に強情なんだから……!」
朝潮「強情とは、どういう意味ですか?」
明石「如月ちゃんにしても、大和さんにしても、あんなに好意を寄せてるのに、一向にその気持ちを受け取ろうとしないのよ」
明石「そのくせ私たちのお願いとかは、文句を言いながらも聞いてくれるし、心配もしてくれるし……全っ然、素直じゃないじゃない?」
暁「それって、どういうこと?」
朝雲「なんていうか、私たちと接するときに、どこまで踏み込むかってラインを引いてるように思えるわ……」
利根「……」ガシャッ
朝潮「? 利根さん」
零式水上偵察機<ブルーン!
明石「ど、どうしたんですか!? 敵襲!?」
利根「……提督が、海中から浮かんでこぬ」
暁「え」
利根「目視で見つからんから、水上機を飛ばしたのじゃ」
朝潮「ええ!?」
利根「もしやあの男、泳げないのではあるまいな?」タラリ
朝雲「ちょっと……」
利根「最悪、沖に流されたりでもしたら……」
霞「……!!」クラッ
明石「霞ちゃん!?」ガシッ
朝雲「明石さんソナーない!?」
暁「暁がわかるわ! 持ってくる!!」ダッ
朝潮「すぐ捜索しましょう!」
スーッ
利根「!」
ザバーッ!
伊8「ふう」
利根「い、伊8か!? 丁度良い、提督を見なかったか!?」
伊8「えーと……さっき流されてたんだけど」グイッ
気を失った提督「」ザバァ
暁&朝潮「司令官!!」
利根「でかしたぞ!!」
明石「よ、良かったあぁ……!」ヘナヘナ ペタン
伊8「な、何があったの?」
朝雲「後で話すから、早く司令官を引き上げましょ!」
利根「うむ! 蘇生措置を急ぐぞ!」
* 工廠 *
工廠の隅で体育座りしている大和「……」ドヨーン
大和の隣で体育座りしている如月「……」ドヨーン
如月の隣で体育座りしている霞「……」ズーン
初雪「また増えてる……」
明石「霞ちゃんが気に病むことはないって言ったんだけど……」
利根「まさか提督がカナヅチじゃったとはのう……」
初雪「え。泳げないの……?」
朝雲「だとしても仕方ないと思うわ。だって提督、民間からのスカウトでしょ?」
朝雲「私が前に所属してた鎮守府のL大尉も、民間からの引き抜きだもん。それまでは海に何らゆかりもなかったって言ってたし」
朝雲「L大尉も泳ぐのが苦手で、沈まないようにするのが精一杯だったわ。提督もそうなのかも」
利根「うむ……そういえば、提督がなぜ海軍に入ってここに着任したのか、吾輩は知らなんだ」
利根「誰ぞ、そのあたりの事情を知っておる者はおらんか?」
朝潮「そういえば、私たちは司令官の昔のことをしりませんでしたね……」
明石「私たちより前にこの鎮守府に着任した子なら知ってそうだけど……」
島妖精A「……その辺の理由なら、わたしたちでも説明できるが?」ヒョコ
朝潮「ぜ、是非教えていただけませんか!」
島妖精A「ああ、わかる範囲でだが」
島妖精B「ちょっとAちゃん!?」ヒョコッ
島妖精C「そんな勝手なことしていいの!?」ヒョコッ
島妖精A「いいんじゃないか? 別に」シレッ
島妖精たち「……」
* *
島妖精A「まず、提督が海軍にスカウトされたのは、わたしたち妖精と話ができるからだ。これは知っている人が多いと思う」
島妖精A「その後、中将から准尉の階級を与えられ、中佐を補佐せよと命を受けたんだが……」
島妖精A「中佐の悪だくみを知っている妖精との接触を恐れた中佐が、提督をこの島に隔離したんだ」
初雪「なにそれ……」
朝潮「先日来ていたあの中佐が、そもそもの元凶だったんですか……!!」ギリッ
島妖精A「ああ。それからこれは提督にも話していないんだが、中佐がこの島に誰かを捨てて行ったのは、提督が初めてじゃない」
朝雲「え?」
島妖精A「中佐は、この鎮守府の修繕という名目で、何度かこの島を訪れているが、そのたびに数人置き去りにしている」
島妖精A「おそらく、中佐は自分にとっての邪魔者を封じ込める場所として、この島を使っていたんだろう」
島妖精A「実際、提督が来る前にこの島に置いて行かれた人間たちは、仲間割れやらなにやら起こして、みんな死んだからな」
明石「通信機はなかったんですか!?」
島妖精A「この島の設備は、提督准尉が着任するまで放置されていたんだ。その当時は食料も通信機も、発電機すらもない状態だった」
島妖精A「提督准尉の着任時だけは、奴の部下が最低限の設備を修理していった。提督が中将に目をかけてもらったからだろうな」
朝潮「それで、妖精さんと話ができる司令官が、協力して鎮守府を立て直したんですね!」
島妖精A「いいや。わたしたちは、その時は全然協力する気はなかった」
朝潮「はい?」
島妖精B「だってねえ……あのころは酷かったんだよ?」
島妖精C「そうそう。その前まで来てた人間たちの仲違いが、ほんっとに見てられなくてねえ……」
島妖精B「いくらわたしたちの姿が見えないからって、あそこまで遠慮なく仲間割れしてるとこを見せられるとねえ?」
島妖精C「わたしたちのほうが人間に絶望しちゃってたもんね」
島妖精A「だからわたしたちも、提督が島に来たときは、早く出て行けと思っていたし、実際にそう提督にも告げた」
利根「それがどうして協力的になったんじゃ」
島妖精A「提督が、砂浜に打ち上げられていた艦娘を弔いたいと言い出したからだ」
艦娘たち「!」
島妖精B「人間が求める海の平和のために沈んだんなら、同じ人間の提督が弔わなきゃいけない……ってさ」
島妖精C「わたしたち、もともとはその轟沈したみんなに乗ってた装備妖精なんだけど」
島妖精C「そんな風に言ってくれた人は提督が初めてだったからね。一週間かけてみんなを埋葬してくれたんだよ」
島妖精A「それから3か月後くらいだったか? 如月が流れ着いてきたのは」
朝雲「3か月……って、それまで何をしてたの? 艦娘はいなかったの!?」
島妖精A「ああ、いなかった」
島妖精B「提督は無人の鎮守府で、畑を作ったり、漂着した艦娘を埋葬したりの生活をしてたんだよね」
島妖精C「それから修理ドックや建造ドックも壊れたままだったから、その修理のために鉄くずも集めてもらってたんだ」
明石「鉄くず……!」
島妖精A「結局、修理する分の鉄が集まるより前にドックを修理できたから、建造用の鋼材になったんだが」
島妖精A「それに加えて、轟沈した艦娘の残った燃料や弾薬をこつこつとかき集めて、わたしたちが大型建造を実行したんだ」
利根「それで建造されたのが大和というわけか……」
朝雲「なんで大和さんが司令官を好きなのか、わかる気がするわ」
明石「むしろそれが原因でしょうね……ここまで聞いて、やっと腑に落ちましたよ」
島妖精A「ああ。だが、提督が大和の求愛を断る理由はいまいち見当がつかないな」
朝潮「……それよりも、司令官がそんな壮絶な過去をお持ちだとは知りませんでした」
初雪「うん……正直、重すぎ」
島妖精C「如月が流れ着いてきた時も、いろんな意味で酷かったよ」
島妖精C「なんたって、如月にもいきなり『生きたいか、死にたいか』なんて聞くくらいだもん」
明石「無神経なところも昔からですか!」
利根「本人に生きる意志があるかどうかを尊重するところも変わっておらんのじゃな」
朝雲「その質問から、どうやって如月が司令官にぞっこんになったのか、すごい気になるんだけど」タラリ
不知火「それは、司令が刺し違える覚悟で中佐相手に立ち回って、如月を助けたからです」ヌイッ
朝潮「ひゃっ!? し、不知火さんっ!?」ビクッ
利根「お、驚かせるでない!」ドキドキ
不知火「それは失礼いたしました」
明石「そ、その話って本当なの!?」
不知火「はい。不知火もそのおかげで中将の配下になれましたので」
朝雲「世の中どう転ぶかわかんないわね……」
不知火「ところで、お話し中申し訳ないのですが、どなたか司令がどちらにおられるか御存知ありませんか」
明石「提督なら医務室でお休み中だけど」
不知火「医務室……ですか?」
大淀「なにかあったんですか?」ヒョコ
明石「あれ、大淀も来てたの?」
大淀「ええ、新しく配属される方が見えたので、提督にご挨拶をと……」
??「Hey, 大淀! テートクは具合が悪いんデスカー?」
明石「……」
朝潮「……この独特のイントネーションは、もしや」
??「良い機会デース、先にここにいるみなさんにご挨拶しまショウ!」
大淀「そう……ですね。それじゃ、ご紹介しますね」
??→金剛「英国で生まれた、帰国子女の金剛デース! ヨッロシクお願いシッマーーース!」
利根「ほう、戦艦の金剛か! うむ、よろしく頼むぞ!」
朝雲「ねえ、これってタイミング的に最悪じゃないの?」ヒソッ
利根「? 何故じゃ?」
朝雲「だって、金剛さんって言ったら、どこの鎮守府でも司令官に猛アタックしてるって噂の艦娘よ?」
金剛「イエース! テートクのハートを掴むのは私デース!」Thumbs up !
利根「」
朝雲「そうなるわよね……」アタマカカエ
金剛「大淀、さっそく医務室に行きまショーウ! 私がテートクを元気付けてあげマース!」
大淀「それじゃ、私たちは医務室へ行ってきますね。行きましょう不知火さん」
不知火「はい」
スタスタスタ…
利根「今回ばかりは聊か間が悪いと言わざるを得んのう……」タラリ
朝潮「……あの、こういうのを修羅場の予感、と言うんでしょうか」オロオロ
明石「その提督にノックアウト済みが二人ほどいますからね……」チラッ
初雪「……!」ゾクッ
大和「……提督のはーとを……?」ユラッ
如月「……掴むのは私……?」ユラッ
島妖精たち「「あ」」
大和「そんなこと……」ムクリ
如月「させるものですか……!」ムクリ
大和&如月「「ふふ、ふふふふふ……!」」ギラリ
朝雲「逃げて! 金剛さん逃げてえええ!!」ヒィィィ!
* 一方その頃 医務室 *
ベッドに横たわっている提督「……ん……!」
暁「! 司令官!」
吹雪「司令官! 目を覚ましましたか!?」
提督「……ん。ああ……」
潮「良かった……!」
暁「司令官、ごめんなさい……」
提督「? ……なんで、お前が謝るんだ」ムクッ
暁「だって、あの時司令官を助けてあげられなかったし、霞も止められなかったし……」
提督「……それはお前のせいじゃねえよ」
暁「あ、それと、司令官は伊8さんが助けてくれたの」
提督「……そうか。あとで礼を言っておく」
吹雪「……」
暁「……」
潮「……あの、なにか、あったんですか?」
提督「……まあ、な」ゴロン
吹雪「いったい、なにがあったんですか?」
暁「私たちで良ければ、力になるわ!」
提督「……そうだな」
提督「もし、俺が明日この島を出て行く、っつったら、お前らどうする」
潮「ええ!?」
吹雪「!?」
暁「そんな……っ!」
提督「……そういう顔すんな。まだ出て行く気はねえよ」
吹雪「まだってどういう意味ですか!」
暁「司令官!?」
潮「……」
提督「そういう顔すんなっつったろ……お前らもそうなのかよ」ハァ
吹雪「も?」
提督「……ああ」
潮「もしかして、大和さんや如月ちゃんがショックを受けてたのは……」
暁「二人にも、そういうことを言ったの!?」
提督「そうじゃねえよ。俺を含めて人間なんて、ろくなもんじゃあねえ。だから、俺なんかと一緒になるとか言うな、って言ったんだ」
吹雪「ちょっ、司令官、なんてことを! あの二人の気持ちを知ってて言ったんですか!?」
潮「あ、あんまりです……!!」
暁「それはさすがに言い過ぎよ……!」
提督「……じゃあ、なんて言えばいいんだよ。その場しのぎの嘘なんかついてもしょうがねえじゃねえか」
吹雪「それ、どういう意味ですか」
提督「俺は誰とも結婚する気はねえって意味だ」
吹雪「そっちじゃありませんよ! 島を出て行くつもりかどうかを聞いてるんです!」
提督「……そうだな。人間どもがこの島に手を出さなくなったら、俺は消える。俺も含めて人間は島にいないほうがいい」
吹雪「はあ!? 勝手に結論作って話を進めないでもらえませんか!? 司令官は私たちにとって大事な人なんですよ!?」
提督「そんなもん今だけだ。この島の生活を脅かす、くそどもを追っ払うことがなくなれば……」
吹雪「それだけじゃあ、島を出て行くなんて絶対無理ですね! 仮にそういうことがなくなっても、司令官は私たちに必要な人ですから!」
提督「……何を根拠に。だいたいお前、元いた鎮守府の司令官を見返すんだろう?」
提督「話が通って、そっちに戻ることになったらその話は当てはまらなくなるだろうが」
吹雪「それこそいつになるかわかんないじゃないですか! そんなに私を島から追い出したいんですか!?」
提督「そいつは俺が決めることじゃねえだろ。お前の好きにすりゃあいい」
吹雪「そーゆーことを言ってるんじゃないんです!! そもそも今はそんな話をしてません!!」
提督「そういう話だろ。俺は好きにする、お前も好きにする。それでいい」ネガエリ
吹雪「こっち向いてください! 司令官!!」
提督「……」
吹雪「司令官!!!」
提督「……うるせえ」
吹雪「っ!!」ブワッ
暁「司令官!?」
潮「……っ!」
吹雪「なっ……何がうるさいんですか! そんな苦しそうな顔して! そんな、助けて欲しそうな顔をしてるくせに!」ポロポロ
吹雪「私たちを見捨てられないような優しい人のくせに、どうして今更そんなことを言うんですか!!」
吹雪「そんなに私たちに嫌われたいんなら、最初から私たちのことなんか放っておいたら良かったじゃないですか!!」
提督「……」
吹雪「司令官、昔言いましたよね! 私たちが戦うのは他人のためじゃなく、自分たちのためだって!」
吹雪「私たちに夢を見させておいて、なんであなただけ勝手にいなくなろうとするんですか! 自分たちのためじゃなかったんですか!?」
吹雪「司令官がいなくなるのが筋書き通りだって言うんなら、私はそんな未来なんかいらない! 来なくていい!!」
提督「……」
吹雪「はーっ、はーっ……ぐすっ」
吹雪「……なんとか言ったらどうなんですか。少しは反論してくださいよ。どうしてだんまりなんですか……!」ボロボロボロ
提督「……」
吹雪「司令官……!!」ググッ
吹雪「もう……もういいです! もう!! バカ! 司令官のバカっ! 司令官なんか、大っ嫌い!!」
ダッ
潮「ふ、吹雪ちゃん!?」タッ
暁「……」
提督「……」
暁「……ねえ。司令官、追わなくていいの?」
提督「……ああ」
暁「そう……」
提督「……」
暁「今日の司令官はどうかしてるわ。最低よ」
タッ
提督「……」
提督「……どうしろってんだよ」
提督「……しょうがねえだろ、くそ……っ」
「ふーん。しょうがないんだ」
提督「!」ガバッ
伊8「はっちゃん、聞いちゃった。うふふふ」
提督「……」
伊8「ねえ、提督。少し、お話したいなあ。いいでしょ……?」
溺れた人への蘇生措置と言えば古来より
マウスtoマウスですが、ふふ、誰が奪ったのかな(医療用マウスシートなんて夢の無い事は言わんといてー)
更新乙です
マウスtoマウスですが、ふふ、誰が奪ったのかな(医療用マウスシートなんて夢の無い事は言わんといてー)
更新乙です
* 北の岩場 *
提督「……」テクテク
伊8「……」テクテク
提督「どこに連れて行く気だ」
伊8「……」
提督「……」
伊8「ねえ、提督? できれば、はっちゃん、って呼んで欲しいなあ」
提督「……はっちゃん、ねえ」
伊8「うん」
提督「……」テクテク
伊8「……」テクテク
提督「……おい、はっ」
伊8「もうすぐ、着きますよ」
提督「!」
伊8「ほら……あれ」
提督「……煙?」
伊8「ううん、湯気」
提督「まさか……温泉か?」
(石を組んで作られた露天風呂)
伊8「うん」
提督「この島にこんな場所が……もしかしてお前が作ったのか?」
伊8「そう。この岩場の北側に海底火山があって、その湧水が見つかったから。それを利用して、石も組んで……」
提督「重労働だったろ。誰か手を貸してもらったりしなかったのか」
伊8「ううん? はっちゃん、一人で作っちゃった」
提督「マジか……」
伊8「ちょっとずつ作ったから、そんなに疲れなかったし。もともと、ある程度は自然にできてたから」
提督「……俺をこんなところに呼び出して、どうするんだ?」
伊8「提督。このお風呂に、入って欲しいな」
提督「……は?」
伊8「だめ?」
提督「……さすがに気分じゃねえよ」
伊8「だめ。入って」
提督「……」
伊8「入らないと、怒っちゃうんだから」
提督「……なんだんだよ、いったい」ハァ
* *
提督(タオル一枚)「俺だけ入るのか?」
伊8(岩陰で待機中)「ええ、どうぞ」
提督「……」
チャプ…
伊8「御湯加減はどうですか?」
提督「……ああ、丁度いい」
伊8「そうなの? 少しぬるめにしたんだけど……」
提督「熱い風呂は嫌いなんだ。俺はぬるいほうがいい」
伊8「ふぅん……」
提督「……風呂なんて久し振りだ。ずっとシャワーで済ませてきたからな」
伊8「そう。じゃあ、ゆっくり温まってくといいよ?」
提督「……」チャプン
提督「……」ボー
提督(……どうしてこうなったんだ? なんで俺は風呂に入ってる)
提督(いや、それよりもだ。昨夜の大和も、さっきの如月も、あそこまで泣かすつもりはなかったのに)
提督(霞も、吹雪も、すげえ剣幕だったよな……)
提督(……)
提督「駄目だな。どうしたらいいかわかんねえ」
提督(あの時素直に溺れてりゃあ、楽だったかもなあ……)ブクブク
伊8「どうしたの?」ヌッ
提督「うお!? な、なんでも……って、お前っ!?」
伊8(タオル一枚)「? はっちゃんがどうかした?」
提督「どうか、って、お前服はどうした!!」ウシロムキ
伊8「お風呂に入るのに、どうして服を着てなきゃいけないの?」
提督「そ……そりゃあ、そうだが」
伊8「お隣、失礼しますね?」チャプン
提督「……俺は先に上がるぞ」グッ
伊8「はっちゃん、提督の服、隠しちゃった」
提督「……」
伊8「提督とは、ゆ~っくり、お話したいなあ……ふふふっ」
提督(嵌められた……)
伊8「そんなに怖い顔しないで。提督、はっちゃんに何をしたか覚えてるでしょ?」
提督「……」
伊8「ほら、こっち向いてください……?」
提督(そういう意味か……観念するしかねえな)チャプ
伊8「……提督、元気ないのね?」
提督「お前もさっき見てたろ。吹雪泣かせて、元気出せってほうが無理がある」
伊8「ふうん」ズイッ
(提督の正面に迫った伊8が、提督の首に両手を伸ばして)
伊8「今はそういうの、忘れてくれる?」ギュ…
提督「!!」
伊8「うふふふ……」
伊8「提督、言ってましたよね。この島が平和になったら、姿を消すつもりだって」
提督「お前……」
伊8「言ったでしょ? はっちゃん、聞いちゃったって。不知火との会話も、ぜぇんぶ、聞いちゃったの」
伊8「そんなことはさせません。勝手にどっか行くなんて、そんなこと、許してあげません……!」ギュウッ
提督「ぐ……!」
伊8「抵抗しちゃダメ。提督は、はっちゃんの言うこときくの……!」
提督「……わかったよ。好きにしろ」メヲトジ
伊8「うふふふ……動かないでね」
提督「……」
提督「……」
提督「……」
提督(……なんだ? どうして伊8は何もしてこない?)
提督(嬲るつもりか? 殺すんなら一思いにやって欲しいもんだがな)
フニ
提督(……?)チラッ
提督に抱き着いてる伊8「……」
提督「!?!?」
提督(なんだ!? なんで俺は伊8に抱き着かれてるんだ!?)
提督「お、おい」
伊8「……」ギュウ
提督(しがみついてきた……もう何が起こってるのか訳が分かんねえ)ドキドキ
伊8「……」
提督「……」ドキドキ
伊8「……」
提督「……」
伊8「……」
* そのまま8分経過 *
提督(やべえ……そろそろ頭かぼーっとしてきた)
提督(……い、いつまでこうしてりゃいいんだ……?)
提督「お、おい……」
伊8「……の」
提督「……の?」
伊8「のぼせちゃったかも……」カオマッカ
提督「おいぃ!?」ザバァ
* 湯船から出ました *
提督「湯冷めすんぞ。ほれ、バスタオル巻いとけ」パサ
伊8「ダ、ダンケシェーン」マキマキ
提督「……で、お前は何がしたかったんだよ」アグラスワリ
伊8「……」チラッ
提督「……?」
伊8「あの、はっちゃん、オリョールにはもう行きたくなくて。自由に、なりたかったの」ストン
提督(……なんでこいつ俺の膝の上に座ってんだ?)
伊8「だから、提督がはっちゃんの言うことをきくようにしてしまえば、って思って」ペター
提督(なんでこいつくっついてきてんだ……)
伊8「それで、提督の弱点を探してて……」
提督「……弱点、ねえ」
伊8「提督は、後腐れなく島を出て行きたいから、誰とも深く関わろうとしてないってわかったから」
伊8「提督と、特別な関係になっちゃえば、言うこときいてくれると思って……」ポ
提督「……」
伊8「……」
提督「別にそんなことしなくても、普通に話せばよかったじゃねえか」
伊8「……そ、そうかもだけど、心配だったんです!」ワタワタ
提督「俺はてっきり、ル級にお前を撃たせた仕返しに、この場で始末してくれんのかと期待してたんだがな」
伊8「そ、そんなことしません!」
提督「しないのか?」
伊8「だ、だって、明石からビンタされてた時なんか……すっごい痛そうだったし」
提督「あー……まあ、な」
伊8「それに、痛いのより、気持ちいいことのほうが……言うこと聞いてもらえそうだし」カァァ
提督「だから俺にくっついて、色仕掛けで落とそうと?」
伊8「どっちかっていうと、既成事実を作っちゃおうって……」
提督「余計駄目じゃねえか!」
伊8「で、でも、嫌よ嫌よも好きのうち、って言わない?」
提督「……言わねえよ。それにそれ、男が女に言うセリフじゃなかったか?」
伊8「そうなの!?」
提督「いや、俺もわかんねえけどよ……そもそもそれって押し付けじゃねえか。嫌だから嫌だって言うんだろ普通は」
伊8「あうう……て、提督は、はっちゃんは嫌?」
提督「そういう嫌な言い方すんな……そもそもこんなくっついた状態で、嫌だっつっても説得力ねえだろ」
伊8「そう……良かった」ホッ
提督「けどなあ、首を絞めたのはなんでだ?」
伊8「んと……ヤンデレっぽいかと思って」
提督「なんだそのヤンデレって」
伊8「知らないの!?」
提督「知らねえよ……つか、どこから持ってきたんだよそんな単語」
伊8「え、えっと……この前、明石が持ってきた、アレなマンガに載ってた」
提督「……」アタマカカエ
伊8「だ、大丈夫……? おっぱい揉む?」
提督「大丈夫じゃねえよ! それはお前の頭が大丈夫じゃねえ!! なんで揉ますんだ!?」カァァ
伊8「や、やっぱり嫌なの……?」ウルッ
提督「軽くトラウマになってるだけだ。一歩間違えたら、湯船にゲロ吐いてたかもしれねえんだからな……」
伊8「え」
提督「昔、見ちまったんだよ。バイト先の倉庫ん中でジジババが下半身マッパでヤってたとこ」
伊8「うわぁ……」
提督「しかも店長の嫁さんと店員だったからな……色キチの考えてることなんか理解したくねえ」
提督「この前見ちまったマンガが似たような状況だったもんで、思い出して胃のもの戻したばかりだ」
伊8「提督、そういうの駄目なの?」
提督「よろしくはねえな。だから、お前らに対してもそういうことはしたくねえ」
伊8「ふぅん……だから、提督の魚雷は、元気なかったんだ」
提督「あ?」
伊8「うん。じゃあ、提督? はっちゃん、責任取ってあげる」
提督「は?」
伊8「提督が、ちゃんと女の子と向き合えるように、はっちゃんが、いろいろ教えてあげます!」
提督「お前は何を言ってるんだ」
伊8「はっちゃんは大まじめです!」フンス!
提督「別にそこまでしなくてもいい……」
伊8「そ、そんなこと言うと、みんなに、私たちが抱き合ってたこと、ばらしちゃいますよ!?」
提督「……ここへ来て俺を強請ろうってか」
伊8「だ、だって、いなくなったら困ります……また、同じことになったら、嫌だから……」ウツムキ
提督「……」
伊8「……だめ?」
提督「はぁ……わかったよ、しゃあねえな」
伊8「!」パァァ
提督「こうなったら、この島が俺の手を離れても、なんら問題ないようにするしかねえんだな?」
伊8「それは……戦争を終わらせるのと同じか、それよりも難しいと思うけど?」
提督「それはそうと、お前いつまでくっついてんだ」
伊8「ぬるま湯もいいけど、人肌もあったかいなあと思って」ポ
伊8「ほら、はっちゃんずっと海の中にいるから、あたたかいところは好きなんです」
伊8「たまにこうやって、膝の上に乗せてもらえると嬉しいかもしれません」
提督「……ほどほどにな」
* 夕暮れ時 北の岩場から鎮守府への帰路 *
提督「……なあ。お前、なんで温泉なんか作ったんだ?」
伊8「単純にはっちゃんが入りたかっただけ。冷たい海の底を航行するから、体が冷えちゃうの」
提督「大変だったろ?」
伊8「うん。手ごろな石を並べて、廃材のパイプとか持ってきて、隙間を砂やモルタルで塞いで……」
伊8「でも、ああいうのを作ること自体初めてだから、結構楽しめました」ニコー
提督「共同の風呂は嫌だったのか?」
伊8「ちょっとお湯が熱かったし、人の出入りもあるから、ゆっくり入っていられなくて」
伊8「お風呂も大きすぎて、落ち着かなかったの」
提督「なるほど。3人も入れそうなスペースがありゃ、一人で入るぶんには十分だもんな」
伊8「提督が良かったら、あのお風呂使ってもいいよ?」
伊8「はっちゃん、背中流してあげる」
提督「……まあ、そのうちな」
伊8「? まだ何か考えてるの?」
提督「ああ。吹雪に謝らなきゃならねえ。酷いこと言っちまったからな」
というわけで今回はここまで。
次の投下時に次スレをたてようと思います。
次の投下時に次スレをたてようと思います。
更新乙でございます
次レスも待ってる!提督はそういえば性的不能な設定だったのな……
色々人生損してる気がするぞなもし…
次レスも待ってる!提督はそういえば性的不能な設定だったのな……
色々人生損してる気がするぞなもし…
こちらが次スレになります。
【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529758293/
こちらでもよろしくお願いいたします。
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