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元スレ提督「墓場島鎮守府?」
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初春「ものぐさな初雪には、自給自足が常のこの鎮守府の暮らしは聊か厳しくはないか、ちと心配じゃ」
朧「だからって、アタシは戻った方がいいなんて思わないけど」スッ
明石「!」
朧「もともとあの人は初雪を探しに来たのに、あれから初雪を探すような素振りも言及する様子も見せてない」
朧「そんな相手のところに『戻ったほうがいい』って言える?」
初春「うむ、わらわもそこが気に掛かる。当の指揮官が初雪を気に留めておらんのではのう」
初雪「……私は、別にかまわないけど」
明石「うーん……それじゃ、提督のことはどう思います?」
初雪「……気持ちよかった」ポ
明石「えっ!? なんですかそれ、どういうことですかっ」ズイッ
初春(瞳が必要以上に輝いておるのう)タラリ
初雪「耳かきが気持ちよかった」
明石「なんだ、そういう意味ですか」チェッ
初春「なんだではないぞ。まったく……」
初雪「でも、准尉はちゃんと私の顔を見てくれたし。N中佐より、嫌いじゃない」
明石「……そういうことなら、話は早いんじゃない? ねえ?」
初春「うむ。尊重されるべきは初雪じゃからな」
朧「……」
* 夕方 執務室 *
N中佐「……」カタカタ
長門「失礼する……なんだ、休んでいなかったのか」
N中佐「いろいろと調べたいことがあってな」
長門「そのトランクの機械は通信機か」
N中佐「ああ。場所が場所だからな、衛星通信が可能な機械を持ち込んだんだ」
N中佐「電源だけはここから拝借しなきゃいけないが、その分はしっかり働かせてもらう」
N中佐「で、長門は何の用だ」
長門「休んだと聞いた貴様が寝室にいなかったのでな、様子を見に来た。何を調べている」
N中佐「この島の成り立ちについてだ。お前からも事前調査の不足を指摘されたからな」
N中佐「しかしいくら調べてみても、この島に鎮守府が建てられた経緯や、近海で起きた戦闘やらの情報がなさすぎる」
N中佐「本営のデータベースにアクセスしても、記録がほとんど残っていない……おかしいぞ、これは」
長門「……」
N中佐「長門は、この鎮守府の過去について何か知っていることは?」
長門「提督がこの鎮守府に着任した前後までなら聞きかじっているが、それ以前のこととなると私は知らないな」
N中佐「そうか……」
N中佐「ところで長門。お前も轟沈を経験したのか」
長門「いいや。私は逃げてきた」
N中佐「逃げた!?」
長門「ああ。私は、ある鎮守府から逃げてきた。ある艦娘とともにな」
N中佐「お前ともあろう者が、臆病風に吹かれたと言うのか!? なぜだ!」
長門「どうしようもない理由だ」
N中佐「理由にならんぞ! 敵前逃亡など!」
長門「敵から逃げた覚えはない」
N中佐「どういう意味だ」
長門「……いいだろう、覚悟を決めよう。耳を貸せ、絶対に他言するな。約束できるか」
N中佐「む……わかった。約束する」
長門「よし……すう、はあ……」
N中佐「深呼吸するほどのことなのか?」
長門「本来ならば誰にも話したくはないのだ……恥ずかしいからな」スッ
N中佐「恥ずかしい?」
長門「では、想像してみろ……貴様がもし艦娘だったら」ヒソッ
長門「自分の小水を直接飲ませろ、と言った男の下で働けるか?」
N中佐「!?!?!?」
長門「それが私たちがその鎮守府から逃げた理由だ。この話は、提督にしか話していない」
N中佐「……嘘だろう?」タラリ
長門「どうせ嘘をつくならもっとましな嘘をつく。なんでこんな恥ずかしい話を作って聞かせなければならないんだ」
N中佐「しかし、そんな変態行為に走る人間自体、例外もいいところじゃないか……」
長門「どうして貴様はそうやって否定から入る? 私は恥を承知で勇気を出してこの話をしたんだぞ、疑うのか!」
N中佐「し、信じられないものは信じられん!」
長門「だが事実だ! 貴様、私たちのことは最初から信じる気がないのか!」
N中佐「……そ、そんなことはない!」
長門「ならばなぜ、貴様と一緒に見回りに行った敷波の表情が晴れないんだ!?」
N中佐「それは話が別だ!」
長門「……昼間もそうだ。貴様は大淀に、艦娘を切り裂いて飾った狂人の話をしていたそうだな?」
長門「あれも例外中の例外的事例だとは思う。だが、貴様の不用意な発言で、彼女が傷付く前に言っておく!」
長門「この鎮守府の利根が、その被害者だ」
N中佐「馬鹿な……話が出来過ぎている!」
長門「貴様は今までこの鎮守府の何を見てきた? ここが、貴様の鎮守府とは全く違うことくらい、理解できているはずだ!」
長門「この島は、提督准尉が来るまで無人だったそうだ。その頃からすでに、砂浜には無数の艦娘の遺体が漂着していた」
長門「そんな状況では着任したい人間もいないだろう。私は、海軍の記録が残っていないのはそのせいだと考えている」
N中佐「……」
長門「この島に提督が来たことで、大破して漂着した艦娘の何人かが助かるようになり、鎮守府に着任したと考えれば……」
長門「この鎮守府の艦娘の多くが、何かしらつらい過去を持っていたとしても、なんら不思議ではない」
長門「それでも貴様は、我々の過去など信じる気はないのだろうがな……!」
N中佐「そ、そんなことは……」
長門「まあいい。それで、貴様はまだ調べ物を続けるのか?」
長門「そうでなければ早めに切り上げて部屋に戻るといい。時化の夜は発電機を動かさない方が良いからな」
扉<パタム
N中佐「……」
というわけでここまで。
ずっと前から設定していた、潮の受けていた被害を、
どのタイミングで明かそうか悩んでおりました。
それを踏まえて本編の268を読むと、
「ああ、こいつ変態だ」と思うこと請け合いです。
ずっと前から設定していた、潮の受けていた被害を、
どのタイミングで明かそうか悩んでおりました。
それを踏まえて本編の268を読むと、
「ああ、こいつ変態だ」と思うこと請け合いです。
* 少し時を遡り、昼前 *
* N中佐鎮守府 応接室の外 *
卯月「みんなが出てきたぴょん!」
大和「提督! お話はどうなりましたか!?」
提督「とりあえずだが島に戻るぞ。お前も一緒だ、準備しろ」
大和「はいっ!」
卯月「准尉、島へ帰るぴょん?」
弥生「せっかく来たのに……残念」
望月「全然休めてないじゃん。もうちょっとゆっくりしていきゃいいのに」
提督「もともと顔の怪我が治るまでって予定だったからな。島の連中をほったらかしにするわけにもいかねえし」
提督「まあ、暇なら遊びに来い。うちの連中も喜ぶかもしれねえ」
少佐鎮守府の士官(以下「士官O」)「提督准尉。お久しぶりです」
提督「んん……!? あんた、如月の捜索の時に島に来てた、少佐の部下か!?」
士官O「はい。覚えていただいていたみたいで恐縮です」ニコ
提督「あのあと大丈夫だったのか?」
士官O「なんとか、ですね。私は准尉のようにうまく立ち回る自信がなくて、しばらく目立たないように隠れてました」ハハッ
提督「あんたがここに来たってことは、今回もあんたが船を用意したのか?」
士官O「はい。準備はできていますよ、あとは天候だけです」
提督「そうか……ところで、今回の件、どこまで知ってる?」ヒソッ
士官O「あまり大きな声では言えませんが……このツールの調査を担当したのは私です」ヒソッ
提督「なに?」
士官O「少し前、少佐宛に余所の鎮守府から、艦娘が指揮官以外の言うことを聞かなくなった、という話が来たんです」
士官O「当初は少佐の全く気が乗らなかったものですから、私に調査しろと丸投げしてきまして。その結果、今回のツールに行きつきました」
提督「あんたもそんなもの押し付けられて、災難だな……」
士官O「ええ、まあ。でもそのおかげで、来月の頭に別の鎮守府に異動して、少尉として艦隊の指揮を執ることが決まりましたので、善し悪しかと」
提督「!」
士官O「実は、少佐が鎮守府を離れている間、少佐の地位回復のためという建前で、混乱に陥った余所の鎮守府の対応をフォローをしていたんです」
士官O「それこそ少佐の名前を使って、欠員が出た鎮守府に補充するための人材を確保したり、問題があった鎮守府の解決に乗り出したり……」
士官O「M准将のところにいた同期の士官に、提督准尉のことを紹介したのも私です」
提督「はあ!? あんたがやったのか!?」
士官O「はい。まあ、少佐が不在なことをいいことに結構好き勝手しましたね。うちの鎮守府の利益にならないことばかり」
提督「……あんた、意外と図太いな」
士官O「あなたの影響ですよ」ニコ
士官O「そういうことばかり積み重ねていたら、個人的にそれなりの評価を戴きまして」
士官O「少佐には余計なことをするなと言われましたが、赤城さんから鎮守府の評価も上がっていると報告を戴き、見逃してもらえました」
士官O「今回のツールの調査を押し付けられたのも、そういう実績があっての話なんです」
提督「へえ……それにしてもだ、大鳳はあのツールに少佐が憤慨していたとか言ってたが、本当なのか?」
士官O「憤慨していたかどうかはちょっと。ですが、私が調査結果を報告したときには、予想外に食いついてきましたね」
提督「どういうことだ?」
士官O「私がツールの調査を終えて仕組みを報告したところ、少佐はすぐその危険性に目をつけ、私に再調査を求めました」
士官O「少佐はツールの欠陥を大袈裟に非難し、そのうえで我こそは海軍と艦娘を救った男だとアピールを図ったんです」
提督「……くそだな」
士官O「准尉も御存知だと思いますが、深海棲艦の兵器化の研究をしていたZ提督が逮捕された事件……」
士官O「研究が頓挫したことで、研究の協力者やスポンサーが離れ、代わりに鎮守府を監視する本営の人間が増えました」
士官O「更には、少佐鎮守府の職員十数名も資材の不正流出の件で捕まったこともあって、少佐は名誉挽回に躍起になっているんですよ」
提督「けっ、あれの手柄じゃねえだろうによ」
士官O「それと、もしこのツールが海軍のスタンダードになれば、その開発者は本営に招かれ厚遇を受けられます」
士官O「調べていくうちに、かつての研究の協力者が今回のツール開発に携わったこともわかりまして」
提督「逆恨みも入ってるってか」
士官O「今となってはそれが最大の理由になってますね。自分を見限った研究者が成功するのを許せなかったんでしょう」
提督「やれやれ……くそな部分は全然変わってねえんだな」
士官O「今回の調査は赤城さんにもご協力戴いたんですが、その中で鎮守府の聞きたくもない裏事情も耳に入ってきまして」
士官O「少佐から距離を置きたいと思っていた矢先、少佐も私のことがお気に召さなかったようで……」
士官O「図らずも利害一致したものですから、私が栄転という形で鎮守府を出る運びになったんです」
提督「なるほど、ていのいい厄介払いか。だがまあそのほうが安心だな」
士官O「ええ。今後は私の先輩の同期にあたるW大尉のもとに身を寄せる気でいます」
士官O「ただ……あの鎮守府の艦娘たちのことだけが心残りですね」
士官O「それに、あなたを差し置いて私が少尉になると言うのも、申し訳がないと言いますか……」
提督「気にすんなよ。うちは海軍の戦力になってねえし、事情もわかってんだろ?」
士官O「ええ、不知火から、如月も元気だと聞いています。他にも助かっている艦娘がいるそうで……本当に良かった」ニコ
提督「そうだな。あの二人だけだったのが……」
提督「……」
提督「……ん?」
提督「……いや、まさか……」
士官O「提督准尉?」
提督「まずいこと思い出したぞ。完っ全に忘れてた……くっそ、俺の記憶違いだといいんだが」
士官O「なにか、あったんですか」
提督「悪い、すぐに船を出してくれ」
提督「うちの艦娘が、N中佐を殺しちまうかもしれねえ」
更新お疲れ様です
修羅場が修羅場しないで提督の取り合いになるというほのぼの落ち
なわけない、にしてもここの提督は艦娘の事をきちんと考えてるつんでれやなぁと
修羅場が修羅場しないで提督の取り合いになるというほのぼの落ち
なわけない、にしてもここの提督は艦娘の事をきちんと考えてるつんでれやなぁと
* 夜 墓場島鎮守府 執務室 *
ザァァァ…
N中佐「……雨脚が強くなってきたか」
N中佐「……」カタカタ
N中佐「妙だな……俺の鎮守府の艦娘の情報が更新されてない」
N中佐「あいつら、ちゃんと演習なり遠征なりやっているのか?」カタカタ
N中佐「それとも、俺の鎮守府のツールまで壊れたのか?」
カッ
N中佐「! ……雷か……調べ物もこの辺にしたほうが良さそうだな」パタン
扉<コンコン
朧「朧です」
N中佐「ん……入れ」
朧「失礼します」チャッ
ゴロゴロゴロ…
N中佐「雷が鳴っているからもう寝ろと言う話か? ちょうど仕事も止めたし、そういう話なら問題はない」
N中佐「しかし思うんだが、避雷に備えて自家発電機の稼働を控えようと言うのは、聊か的外れな対応じゃないか?」
朧「……」
N中佐「疑問を持たないか? それでこの鎮守府はよく攻め込まれないでいられるな、と」
N中佐「たとえ夜間でも警戒を怠るべきではないというのに、ろくに見回りもさせていないとは……」
朧「夜中に明かりをともせば的になるだけだ、というのが提督の見解です」
N中佐「そうは言っても無防備がすぎる」
朧「提督は夜間完全消灯します。島に着任してから3か月間そうやって過ごしてきましたが、実害はありませんでした」
N中佐「そうじゃない! 本営に連絡して、警戒態勢を整えさせるのが先だろう!」
N中佐「島にいられるのが提督准尉だけだとしても、この鎮守府を機能させたいのなら設備を拡充させるべきだ!」
朧「……」
N中佐「発想が無茶苦茶だ。提督准尉のやることなすこと、すべてが破天荒すぎる」
N中佐「そんな提督の下で働いていては、お前たちの命がいくつあっても足りないんじゃないのか?」
朧「……」ジロリ
N中佐「なんだ、その目は」
朧「……N中佐は……」
N中佐「ん?」
朧「どうしてこの島の鎮守府で指揮を執ろうと思ったんですか?」
N中佐「ん……それは……」
朧「……」
N中佐「それは、お前たちの戦い方が未熟だと思ったからだ」
N中佐「この島の事情を知らなかったとはいえ、それを踏まえてもこの鎮守府の戦果はあまりに低すぎる」
N中佐「准尉には追々教育するとして、現場であるお前たちの意識を変えなければならないと思っている」
朧「……」
N中佐「我々は大本営の指示のもと、一致団結して深海棲艦に立ち向かわなければいかん。そのためには……」
朧「演習などによる練度の向上」
N中佐「!」
朧「遠征などによる備蓄の充実、建造や開発による戦力の増強、そして、周辺海域への定期的な出撃による深海勢力の駆逐」
N中佐「!!」
朧「日頃はそれらの任務に従事し、大本営から一定期間ごとに告知される強大な深海勢力への一斉攻撃に備えるべし」
N中佐「……そうだ。その通りだ、素晴らしい!」
N中佐「この鎮守府には変わり者しかいないのかと諦めかけていたが、お前のような艦娘もいたんだな!」
N中佐「お前のような理解者がいるのなら心強い! ……そうか! こんな時間に来たのも、俺にそのことを伝えたかったからか!」
N中佐「そうとわかれば、朧には明日から秘書艦を頼みたい! 俺と一緒にこの腑抜けた鎮守府を立て直そう!」
朧「……」ツイッ スタスタ…
N中佐「お、おい、どこへ行く?」
キャビネット<ギィッ
朧「……」スッ
朧「N中佐。これを、見てください」サッ
N中佐「? 何のバインダーだ? これは」
朧「……」
N中佐「このリストは……」ペラッ
朧「……」
N中佐「これは……本営の管理するすべての鎮守府の轟沈艦の記録か……! この鎮守府がこんな資料を取り扱っているとは」ペラッ
朧「……」
N中佐「朧……この、リストについているバツ印はどういう意味だ」
朧「……」
N中佐「ん……マル印がついているところもあるな。これは……」
朧「バツ印のついている艦娘は、この島に埋葬された艦娘です」
N中佐「……ということは、この島に流れ着いてきた艦娘か」
N中佐「これほど多くの艦娘が……で、マル印はなんだ?」
朧「……」
N中佐「マル印は少ないな……比叡……暁、初春……」ペラッ
N中佐「……」ペラッ
N中佐「……」ペラッ
朧「……」
N中佐「……朧。このマル印は……」
カッ
朧「……」
N中佐「……」
ゴロゴロゴロ…
朧「……わかりませんか」
朧「それとも、わかっていて訊いているんですか」
N中佐「……」ペラ…
朧「……」
N中佐「……」
朧「わからないというのなら、最後のページを見てください」
朧「そのバインダーの、一番古いリストを見てください」
N中佐「……」ペラ…
朧「そこでマル印をつけられた艦娘の名前は、なんて書いてありますか」
N中佐「……」
朧「その艦娘の所属は、なんて書いてありますか」
N中佐「……!」
朧「声に出して、読んでください」
N中佐「……」
朧「……読んでください」
N中佐「……っ!!」ビクッ
朧「……」
N中佐「……お、お前は、気付いていたのか」
朧「……」
N中佐「なぜ、言わなかった」
朧「……」
N中佐「なぜなんだ、おぼ……」
朧「……」ジャキッ
N中佐「ひっ!」ガタッ
朧「……」
扉<チャッ
初春「なんとまあ……滑稽じゃのう」スッ
N中佐「は、初春か! た、助けてく」
初春「その前に、おぬしは朧の問いに答えよ。そのリストでマル印をつけられた艦娘はどうなったのじゃ?」
N中佐「……! ま、まさかお前も……!」
初春「気付いたようじゃな? 申してみよ」
N中佐「この島に漂着した轟沈艦……! その中で准尉の配下になった艦娘……それが、このマル印の艦娘か……!」
初春「うむ、ご名答。して、その中には朧の名前もあったじゃろう? 所属はなんと書いてあった?」
N中佐「……」
初春「答えよ!!」
N中佐「……N提督鎮守府……俺の、鎮守府だ……!」
朧「……」
初春「因果なものよの。江戸の敵を長崎で、とは、よく言ったものじゃ」
N中佐「……俺が、敵だと……敵なものか!」
初春「寝ぼけたことを抜かすでない。主砲を向けた相手が敵でなければなんと心得る」
初春「そもそも、朧がおぬしの鎮守府にいたことを言わなかったのも、おぬしが思い出す猶予を与えていたにすぎぬ」
初春「今し方の問答も、おぬしが朧のことをどう考えていたか、腹を探っておったのじゃ」
初春「戦争に勝つために犠牲になったことを『忘れられた』とあっては、朧も成仏できまいて。のう?」
朧「……」
N中佐「ま、待ってくれ! もう一度、チャンスをくれないか!!」
初春「チャンスとな?」
N中佐「俺にはやらなければいけないことがある! 今こんなところで死ぬわけにはいかないんだ!」
朧「……」
初春「チャンスなら、すでにくれておったわ」
N中佐「なに?」
初春「入ってくるが良い」
扉<チャッ
初雪「……」スッ
N中佐「……お前は……!」
初春「さて、少しは思い出したか?」
N中佐「……」
初春「おぬしは本来、何のためにこの島に来たのじゃ?」
初春「よもや、ほかの誰かにかまけて忘れてしまったわけではあるまいな?」
N中佐「……」
初雪「……」
朧「……」
更新乙です
中佐は生きてても牢屋行きだろうしなぁ……
死んでも自業自得の様な?
中佐は生きてても牢屋行きだろうしなぁ……
死んでも自業自得の様な?
初春「朧は期待しておったのじゃ。おぬしが、いつ初雪のことを聞いて来るかを」
初春「そして初雪に、どのような言葉で詫びを入れるのかを」
初春「しかし、この期に及んでだんまりを決め込むとはのう。期待外れも甚だしい」
N中佐「……そ、それは初春には関係のないことだ! 下がっていろ!」
初春「そうはいかぬ。わらわは結末を見届けたいのじゃ、朧と同じく捨て艦にされた艦娘としてな」
初春「それにな、キスカからの撤退戦で沈んだ駆逐艦朧の最期を看取ったのは、他でもないこの駆逐艦初春じゃ」
初春「その朧が、必死の覚悟で仇を討つと言うのならば、わらわが朧に加勢せぬ理由はない……!」
N中佐「……く……!」
初雪「!」
N中佐「……くそ……くそお!」
N中佐「なんでだ! 俺は……俺は今まで必死にやってきたのに! この仕打ちはなんだ!?」
N中佐「俺は! 深海勢力から海を取り戻すために戦ってきた! 戦果を挙げてきた!」
N中佐「お前らも海軍ならその役目を果たすのが本懐だろう!」
初春「そのためになら艦娘も使い捨てにすると?」
N中佐「そうせざるを得ない時もある! 事実、捨て艦戦法で勝利をあげられた戦いもあったんだ!」
初春「この期に及んで開き直るか。なにを都合の良いことを……!」
初雪「……そうしないと、耐えられないんだと思う」
朧「!」
初雪「N中佐……本当は、わかってる」
初雪「自分のやってることが、間違いだって。認めたくないから、私たちのことはなかったことにしようとしてる」
初春「間違いだらけじゃの……この男は!」
N中佐「なにを……間違いなものか!! 何が間違いなんだ! 俺の行動は、全ては海を守るための、国を守るための行為だ!!」
初春「守るため、じゃと?」
初雪「……」
朧「……」
N中佐「奴らに海を奪われればどうなるか、人間は嫌と言うほど思い知らされたはずだ! 悠長なことをしていられないはずだ!」
N中佐「だというのに、当の海軍は内々で足の引っ張り合い……陸の連中も同じだ! 同じ人間同士で蹴落とし合いも茶飯事だ!」
N中佐「今、俺たちに必要なのは圧倒的な力だ! 抵抗する全てを抑え込み、一丸となって敵を殲滅する力だ!!」
N中佐「そのために、たとえ後ろ指を指されても、今の戦況を切り開く方法を取る! そうしなければ、人間はこの戦争に勝てないんだ!」
N中佐「捨て艦戦法をとったのも、深海棲艦の勢力拡大をどうしても防ぎたかったからだ」
N中佐「今回の艦娘制御ツールを採用したのも、一日も早い深海棲艦の撃滅を進めるため……!」
N中佐「どんな手を使おうと、俺はあいつらを、深海の奴らを! この海から駆逐する! そう、誓ったんだ!」
初雪「……」
朧「……」
初春「おぬしは……そうまでして深海棲艦を討ちたいのか」
N中佐「俺の故郷は小さな漁村だ。俺の父も漁で生計を立てていた」
N中佐「父の跡を継いで漁師を目指していた俺に、両親は大学を出るよう進言してくれて、今、俺はその海を守る仕事に就くことができた」
N中佐「その漁村の住人は今、深海棲艦の脅威によって疎開を余儀なくされている」
N中佐「このまま深海棲艦を海から掃討することができなければ、父の仕事がなくなってしまう。俺の故郷が消えてしまう……!」
N中佐「そんなことは絶対にさせない!! 俺を育ててくれた両親のためにも……お世話になった故郷の人たちのためにも!」
N中佐「俺たちは海軍だ! 海の平和を取り戻すのが最優先事項だ!」
N中佐「お前たち艦娘も、もともとは軍艦だったんだろう! ならばこの国の、人間のために命をかけることも当たり前だろう!!」
N中佐「そうでないのなら! お前らはいったい何のためにいる!?」
扉<バンッ
全員「「!!」」
提督「ったく、うるせえな……廊下まで響く大声出しやがって、くそが」ビッショリ
朧「て、提督!?」
N中佐「提督だと!?」
提督「おうよ。雨ん中走ってきたもんで、ご覧の通り濡れ鼠だ」
初春「顔の傷はどうしたんじゃ!?」
提督「治った」
初春朧「「治った!?」」
提督「初雪もいるのか。丁度いい、お前にも話がある」
初雪「……!」
提督「が、先にカタをつけなきゃいけねえのは、N中佐。あんたのほうだ」
N中佐「俺だと!?」
提督「ああ」チラッ
タタタタッ
妙高「准尉!」
鳳翔「准尉、大丈夫ですか……っ!!」
N中佐「妙高……鳳翔……!」
妙高「初雪さん、無事だったんですね……!」
初雪「妙高、さん……!」ダキヨセラレ
妙高「良かった……」ギュッ
鳳翔「朧さんも、よく無事で……!」
朧「……来ないでください!」ウツムキ
鳳翔「!」
朧「アタシは、沈んだんです。もう、あなたのところへは……弓道場へは、行けないんです」
朧「あいつの、せいで……アタシは!」キッ
N中佐「!」ビクッ
提督「悪いな朧、ちょっとだけこいつを借りる。後で撃たせてやるから待ってろ」
朧「!」
N中佐「准尉!? 貴様、何を……」
トタトタトタッ
吹雪「司令官! 大鳳さん連れてきました!」
大鳳「提督准尉!」
提督「おう、ご苦労さん。悪かったな、急で」
吹雪「もう、びっくりしましたよ!? いきなり『誰かいるか!』って司令官の声が聞こえたんですから!」
電「本当なのです。びしょびしょの司令官さんが、傘と雨具を6人分、埠頭の船へ持って行けって……」
如月「いきなりだったから、私たちもちょっぴり濡れちゃったわ」
提督「そうか。じゃあシャワー浴びてこい」
由良「提督さんこそシャワーを浴びてきてください! 上着も脱がないと風邪をひきます!」タオルテワタシ
提督「大丈夫だよ。俺は馬鹿だから風邪なんかひかねえよ」タオルウケトリ
初雪「そういう問題じゃないと思う……」タラリ
吹雪「とりあえず、どういうことなのか教えていただきたいんですが……」
提督「朧はN中佐の元部下だ」
全員「!!」
N中佐「……」メソラシ
提督「で、この鳳翔は、着任したばかりの朧が弓道場に来た時に知り合って、それを機に弓を教えようとしてたそうだ」
鳳翔「……かつての駆逐艦の朧さんは、五航戦の護衛任務に着任していました」
鳳翔「私が弓を引く姿を熱心に見ていましたので、彼女たちのことをおぼろげながら思い出していたのではないか、と思ったんです」
提督「朧が捨て艦にされて轟沈したのは、それから間もなくだった」
朧「……」ウツムキ
提督「だから朧は、砂浜で倒れていたときに『まだ』って言っていたわけだ」
提督「まだ、弓を習い終えていない。鳳翔からの手ほどきを終えていない、と」
提督「そんな朧を犠牲にして勝利を得たN中佐が、今度は初雪を見捨てた。うちの大和に懸想して、な」
初雪「……」
提督「こんなイヤホンまで用意して……とんだくそ野郎だ」
N中佐「……っ!」
提督「でだ。あっちの鎮守府であんたの昔話を聞かせてもらった。どうしてこのツールを使うに至ったかの話もな」
提督「あとはあんたの口から直接訊くだけだ。本営で、この大鳳へ詳しく話をしてくれよ」
N中佐「本営で、だと? どういうことだ……!」
大鳳「本営は、このツールが危険であるという認識に達しました。運用は許可できません」
大鳳「このツールの仕組みについて、あなたがどのくらい把握しているか、お話を伺いたく……」
大鳳「本営まで出頭命令が出ております。N中佐、私とご同行願います」
N中佐「待て、その間の俺の鎮守府はどうなるんだ……」
大鳳「あなたの代わりの指揮官が配属されます。同時に、あなたからは鎮守府の指揮権が剥奪されます」
N中佐「……何かの間違いだろう!? 俺は、海の平和のために……国民のために必死にやってきたんだぞ!?」
N中佐「提督准尉もわかるだろう! 大事な人を守りたいという気持ちが!」
提督「ふん、お前の大事な人なんか知ったことかよ」
N中佐「な!?」
提督「大事な人たちを守りたい? それを言うなら、俺にとって大事なのは、この鎮守府に流れ着いたこいつらだ。この鎮守府にいる艦娘たちだ!」
朧「……てい、とく……」
如月「司令官……!」
吹雪「司令官!!」
提督「大和だってなあ、この鎮守府で暮らしてる妖精たちが、この鎮守府のために建造した唯一の艦娘だ」
提督「大和が妖精たちのために戦う義理はあっても、あんたのために大和を送り出すなんて考えはどこから出てくるんだ!?」
提督「そんなに連れて行きたいんなら、俺を殺して連れて行けよ。捨て艦だってやったんだ、簡単だろ?」
ゾワッ
N中佐「!?」
鳳翔(足が、すくんで……!)
妙高(な、なんですか、この怖気は……!)
大鳳(なんて重苦しい……!)
朧「……提督」
提督「ん?」
朧「朧、提督のそういう冗談を言うところ、キライです」ジロリ
提督「……」
如月「そうね~。司令官のそういうところ、感心できないわぁ」ジロリ
吹雪「本当にそういうことになったら、どうするつもりなんですか」ジロリ
提督「……わかったわかった、お前ら本当に冗談が通じねえな」ハァ
フッ
妙高(重圧が解けた……!)フラッ
提督「ったくよお、ただの煽り文句をマジにとるなよ……面倒くせえ」アタマガリガリ
電「今の発言、神通さんが聞いたら絶対激怒したと思うのです」ボソ
神通「ええ。ですから今後は控えてくださいね」ニッコリ
電「!?」ギョッ
提督「……お前も来たのかよ」アタマカカエ
神通「はい、ただならぬ気配を感じたものですから。それで……」
提督「今回は神通の手を借りなくても平気だ。それに話もまだ終わってねえ」
神通「と、仰いますと」
提督「本営に大急ぎで確認したぜ。N中佐、あんた、初雪を轟沈扱いにしたんだってな?」
初雪「!!」
N中佐「……」
提督「随分と捜索の打ち切り判断が早くねえか? 多分、大和の入手に注力したかったんだろ?」
初春「ということは、初雪は……」
提督「初雪に話したかったのはこのことさ。書類の上であろうと轟沈扱いにされちまったら、うちで引き取るか解体かって話になる」
初雪「……そう……」ハァ
神通「敷波さんと同じケースですね」チラッ
N中佐「!」メソラシ
提督「でだ、初雪。お前、これからどうする?」
初雪「……准尉」クルリ
提督「ん?」
初雪「その……これから、よろしく、お願いします」ペコリ
提督「おう。明日の朝一で手続きしとく」
N中佐「……!」
提督「ふん、初雪にふられて一丁前にショック受けてやがる。コミュニケーションを全部イヤホンから済ませてたくせに」
N中佐「」グサッ
初春「顔を見合わせたのも片手で足りる程度と聞いておる。顔を見に来ない相手に気を使う必要などあるまいにのう?」
如月「待って、初雪ちゃんが司令官になびいたことがショックなの? もしかして、あれで可愛がってたつもりでいたのかしら」
由良「っていうか、そもそも初雪ちゃんはN中佐が自分から手放したわけでしょ? ショック受けること自体おかしくない?」
電「N中佐さんは司令官さんから大和さんを奪おうとしていたのです。因果応報なのですから、同情の余地はないのです」
N中佐「」グサグサグサグサッ
鳳翔(N中佐、滅多打ちにされてますね……)
妙高(身から出た錆とはいえ、ご愁傷様です)
吹雪「あ、あの、みなさんそのくらいにしておきませんか」
鳳翔(ああ、さすが吹雪さん、この場を丸く収めようと……)ホッ
吹雪「あの人を泣かすのは朧ちゃんの役目ですから、寸止めでお願いします」
妙高(ただの死刑宣告だった!?)ガビーン
提督「ん、それもそうだな……朧。こいつを使え」ポイッ
朧「……これは」キャッチ
吹雪「輪ゴム、ですか?」
提督「ああ、ちょっと大きめのな。使い方は鳳翔に教えてもらったろ? そいつで撃て」ニヤリ
朧「……!」
如月「撃て、って……?」
朧「……」スッ
鳳翔「……!」
朧「……」グイッ ギリギリギリッ
電「輪ゴムでN中佐さんを狙ってるのです……」
由良「まるで弓をひくみたいに……!」
朧「……っ!」シュパッ
輪ゴム<ピュンッ
N中佐「いてっ!」ベチッ
朧「……」
鳳翔「……朧さん。覚えて、いたんですね」
朧「……」ポロポロ
鳳翔「私が教えた、弓の動作を……射法八節を、ちゃんと覚えていてくれたんですね」ダキヨセ
朧「う、うう……!」ポロポロポロ
鳳翔「……」ギュウ ナデナデ
提督「さてと、あとはN中佐を本営へ連れてっておしまいだな。うちの艦隊の指揮権、返してもらうぜ」
N中佐「……提督准尉」
提督「ん?」
N中佐「俺は……間違っていたのか?」
N中佐「強い艦隊を作って戦果を挙げれば、俺たちの正義が証明されると思っていたのに……」
提督「知るか。俺は、あんたが俺の部下に手を出そうとしたことにムカついてんだ」
提督「自分が間違ってねえ自信があるなら、本営の連中に訴えろよ。あんたの境遇や思想に共感した奴がいたら、協力してくれるかもな」
初春「それはどうかのう? ツールを使って艦娘の情を無視した輩が、大事なものを守りたいから手を貸せと情に訴えてきたのじゃぞ?」
初春「わらわはまったくもって気に入らぬ。斯様な御都合主義者の二枚舌に耳を貸したいとは思わんな」ジロリ
提督「俺だって気に入らねえよ。結局は俺と同じで自分の身内が一番大事だって考えてるくせに……」
提督「わざわざ『国民のため』なんて枕詞添えて、さも大層なことやってる風な偉ぶった言い方しやがって。むかつくぜ」
提督「そもそも手段を選ばない道を選んだ時点で、人から恨まれる覚悟をしてねえのがおかしいんだ」
提督「それで誰かに好かれると思ったか? 何考えてんのかわかんねえよ、くそが」
N中佐「……っ」
提督「でだ、妙高、大鳳、ちょっと聞け」
妙高「は、はい? なんでしょう」
提督「本営がツールの運用を禁止した理由は、少佐の言うように艦娘を使ってのクーデターを危惧してのことだと思う。だとすれば……」
提督「N中佐がこのツールを、深海棲艦の撃滅のための手段にしか使う意図がなかったことを訴えれば、多少は大目に見てもらえるはずだ」
妙高「え!?」
N中佐「!?」
大鳳「た、確かにそうかもしれませんが……」
提督「というか、そこに付け込むしかねえな。N中佐が海軍には絶対刃向わないことをアピールするくらいしか、罰を軽くする方法が思いつかねえ」
妙高「罪を軽く……しようというのですか!?」
提督「おうよ。とりあえずだ、このツールを使うにあたってどんな人間に関わったかを、N中佐には全部正直に喋らせろ」
提督「わからないならわからないと言えばいい。言いよどんだり押し黙ったりするほうが、よっぽど心証が悪くなる」
提督「どうせ本営もいろいろ調べてるはずだ、N中佐の言うことに齟齬がなけりゃそれでいい」
提督「N中佐がこの仕事を続けたいっつうんなら、本営に使いたい、価値があると思わせなきゃならねえ」
N中佐「……」
妙高「……価値、ですか」
提督「そうだ、価値だ。使えねえ奴が馘になるのはどこも同じだろ?」
初春「のう提督よ、おぬし先程から何を言っておる?」
初春「N中佐にはわらわたちも随分引っ掻き回された……その返しにしては、手ぬるいどころか塩を送っているようにしか見えんぞ?」
妙高「ええ……私もそう思います。提督准尉の先程の言動からは真逆のお話です、どうしてそのようなことを?」
提督「あ? 向こうの鎮守府にいた卯月に『鎮守府のみんなとN中佐を助けたい』って言われたんだ、だったら助言するしかねえだろ」
N中佐「……!」
提督「じゃなきゃ俺だって朧に撃てって言ってたぜ。まあ、後々面倒だからこっちのが良かったけどよ」
鳳翔「……面倒、ですか」タラリ
提督「だいたいなあ、ハナっから手前が何をしたいか、艦娘に腹ん中を正直にぶちまけてりゃ良かったんだよ」
提督「やる気ある奴はついて行こうと思うし、間違ってることをしようものなら止めてくれる奴だって現れるだろ」
N中佐「……」ウツムキ
提督「ま、世の中にゃ『罪を憎んで人を憎まず』なーんて都合の良い言葉もある」
提督「本営で説明するときに、大鳳あたりが横からそう言えば、ちったあ効果あるかもな?」
提督「あとは、このツールを開発した連中が、N中佐の境遇を知ってて利用しようとした、とか言う話があるなら擁護も楽なんだが……期待はできねえか」
大鳳「……何と言いますか……」
妙高「……よくそこまで思いつきますね……」
初春「提督がN中佐に指揮を任せようとしたのは何故じゃ?」
提督「ええっとなあ……残念ながら断る理由が思いつかなかった、ってのがひとつめ」
初春「ふむ……」
提督「N中佐の鎮守府に行って、いくつか弱みを掴んで強請ってやろうと思ったのがふたつめ」
妙高鳳翔「「はい!?」」シロメ
提督「N中佐が最初からツール頼みの無能なら、妖精に頼んでイヤホン壊してしまえば勝手に自滅すると思ったのがみっつめ」
N中佐「!?」シロメ
提督「自分のやり方が正しいと思い込んでるワンマン指揮官だ、せいぜい苦労しやがれって思ってたぜ。くっくっく」
全員「「……」」
吹雪「あの、司令官……もう少しオブラートに包んだ言い方をしたほうがいいと思います」
電「司令官さんは悪い意味で正直すぎるのです」ハァ
提督「まああとは、この島に流れ着いてくる艦娘たちがいる現実を見せつけたかった、ってところだな」
提督「馬鹿の一つ覚えみたいに戦果戦果うるさくてしょうがねえ。世の中には価値観が違う人間もいることを理解してもらわねーとな」
神通「海軍の中では、提督の思想こそ異端だと思いますけど……」
提督「ま、いいや。これ以上の問答は本営に任せるか。いい加減面倒くさくなったし」
初春「……そういうことにしておこうかの」
妙高「……何につけても『面倒くさい』がついて回るんですね」ハァ
吹雪「口癖みたいになっちゃってますから」タハハー
タタタタッ
大和「提督、すみません遅くなりました!」ビッショリ
不知火「……もうお話は終わったのでしょうか」ビッショリ
提督「なんだお前ら、合羽はどうした?」
士官O「着ていたんですが、ご覧の有様でして」ビッショリ
如月「! あなたは……!」
士官O「お久しぶりです。お元気そうでなにより」ニコ
提督「そんなに船の接岸に手間取ったのか?」
士官O「ええ、大雨のせいで視界が悪くて。誘導してもらったんですが、距離感をつかむのに苦労しました」
提督「なるほど、大和と不知火はそれを手伝っててずぶ濡れになったってわけか」
不知火「はい。今頃になって雨が収まりかけているのが癪ですが、仕方ありません」
提督「とりあえずお前らは風呂に行って体を温めてこい。如月、こっちの士官には俺の部屋のシャワーを使わせてやってくれ」
士官O「提督准尉のほうが先では?」
提督「こういうのは客が先だ。如月、頼むぜ」
如月「はい、了解しました。こちらへどうぞ」ニコッ
士官O「すみません、失礼します」
不知火「大和さん、私たちも行きましょう」
提督「あ……ちょっと待て。鳳翔、妙高、ついでに朧も、一緒に行ってさっぱりしてこい」
妙高「よ、よろしいんですか?」
提督「おう。大鳳はどうする」
大鳳「私は、N中佐を見張る必要がありますので、どうぞお構いなく」
提督「そうか。じゃあ後でな」
鳳翔「では提督准尉、お言葉に甘えます。妙高さん、朧さん、行きましょう」
妙高「はい」
朧「……」コク
提督「それじゃ、吹雪と神通は鳳翔たちが泊まる部屋の準備を頼む。由良と初春は士官たちに夜食の準備を」
提督「電はそれまでに大鳳に茶を出してやってくれ。俺は外に行って雨具を片付け……」
ガシッ
提督「ん?」
神通「外は危ないですから、外出しようとしないでください。私がやります」
由良「それと風邪をひく前に、早く上着を脱いでください。洗濯しますから」
提督「……お、おう……」
電「見張り番なら、交代でやったほうがいいのです」
初春「ふむ、まずは起きている手すきの者を呼び出そう。明日に差支えぬよう役割分担せねばな」
吹雪「ベッドメークは古鷹さんにも協力してもらいます! まだ起きてたはずですから!」
由良「提督さんは酒保へ行って、明石ちゃんから士官さんの替えの下着とタオルを貰ってきてください」
神通「如月さんに全部押し付けてはいけませんよ?」
提督「……」
鳳翔「頼もしい子たちですね」ニコ
提督「……まあ、な」
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