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元スレ提督「墓場島鎮守府?」
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暁「暁は……暁の、司令官、は……」
ズキズキズキッ
暁「く、くぅぅ!! 頭が……!」
初春「あ、暁!? どうしたんじゃ!」
暁「……Iてい、と……く……」フラッ
バシャアン
初春「暁! 暁っ! しっかりするんじゃ!!」
初春「くっ、暁……おぬしを沈ませはせぬぞ!」ガシッ
初春「なんとしても、陸に……!!」
* * *
* *
*
* それからしばらくして、本営の待合場 *
川内(……結局、私は暁も、提督も助けられなかった)
川内(大好きな夜なのに、少しも私の思い通りにできなかった)
川内(私は、まだまだ未熟だ……!)
若葉「……」ジーッ
川内「……ん? きみ、私に何か用?」
若葉「駆逐艦、若葉だ。I提督鎮守府の川内さん、だな?」
川内「ああ、きみが新しい鎮守府の! 川内よ、よろしくね」
若葉「よろしくお願いする」コク
川内「うん、それじゃ行こっか」
若葉「……」ジッ
川内「? どうしたの?」
若葉「川内さんと言えば夜戦に強いと聞いている」
川内「ん、ああ……まあ、そうだね。」
若葉「? 歯切れが悪いな……とにかく、その強さについてご教授願いたい」
川内「……強くなりたいんだ?」
若葉「無論だ」コク
川内「……丁度良かった。私も、このままじゃだめだと思っててさ……!」ゴゴゴゴ
若葉「!」ゾクッ
川内「特訓したいんだ。鎮守府に着いたら、付き合ってくれる……?」ニッ
若葉「……是非」ニヤ
* 同じく本営の一室 *
X提督「君が響だね。君を引き取ることになった、X提督だ。よろしく」ニコ
響「……」
X提督「……」
祥鳳「……」
X提督「……ねえ、祥鳳さん。僕、なんだか警戒されてるようなんだけど」
祥鳳「……あの、響さん?」
響「……司令官は」
X提督「ん?」
響「……司令官は、女性なのかい?」ジリッ
X提督「」
祥鳳「ぷっ……ち、違いますよ? れっきとした男性です」
X提督「」ズーン
響「す、すまない司令官。前の鎮守府のことを思い出してしまって」
X提督「い、いや、いいよ。大丈夫」ナミダメ
祥鳳(そういえば、響さんの前の鎮守府は、女性提督と空母の秘書艦でしたね……)
祥鳳(私たちの組み合わせと似てると言えば似ていますから、やはりショックだったんですね)
響「……その、司令官。お願いがあるんだ」
X提督「な、なにかな」
響「私は、強くなりたい。私は、前の鎮守府を守れなかった……だから、力が欲しい」
X提督「……君は、二次改装を控えていたそうだね」
響「……」コク
X提督「……行方知れずになった姉妹艦と、一緒に改装を受ける予定だった……」
X提督「彼女を、探すつもりかい?」
響「それは……わからない」
X提督「それじゃあ、もう少し生きててみようか」
響「……」
X提督「生きていれば、手掛かりくらいは、どこかで手に入るんじゃないかな」
響「……」
X提督「改装の準備もしよう。僕の出来る範囲でだけど、手伝うよ。君の、やりたいことを」
響「……」コク
* 現在 長門の部屋 *
長門「そうして、この島に流れ着いたというのか……」
初春「今思えば、わらわもまっこと運が良かったのう……二人揃って無事に流れ着くなど、相当なことじゃ」
長門「暁は、I提督鎮守府の一員だったのか?」
初春「うむ。かつてI提督鎮守府におった者に話を聞けば、鎮守府は壊滅。I提督は死亡、秘書艦の翔鶴は轟沈したそうな」
初春「鎮守府の艦娘と職員の退避のため囮として出撃した川内、響が大破。こちらはのちに戻ってきて、救助されたそうじゃ」
初春「そして、単身突撃した暁が行方不明……というのが、その鎮守府の最後の記録じゃ」
初春「何故に暁が単騎で出たのかはわからぬ。おそらくは報告以上の惨事がその鎮守府では起こっておったんじゃろう」
初春「暁がI提督の名を口にして気を失い、次に目が覚めた時には何もかも覚えておらぬのも、その影響であろうな」
初春「ゆえに、I提督鎮守府におった者たちには、暁が生きていることも伝えてはおらん」
初春「そなたも暁に昔のことを訊くのは控えた方が良いぞ。提督も判断を同じくしておるでの」
長門「……わかった。ところで、初春もなぜそんな目にあっていたんだ」
初春「わらわかえ? 捨て艦じゃ」
長門「……」
初春「ふふ、かような顔をするでない。捨てる神あれば拾う神あり、縁は異なもの味なもの、と言うではないか」
長門「そうか……すまない、つらい話をさせた。ありがとう」
* 執務室 *
初春「提督よ。件の話、長門に伝えておいたぞ?」
提督「おう、ありがとよ」
初春「しかし……本当に良いのかの? 暁に、当時のことを教えなくても」
提督「お前から報告聞いたとき、俺も軽くひいたからな。記憶まっさらの赤ん坊に劇薬飲ませるような真似はちょっとなぁ……」
提督「ま、ただでさえ年中艦娘の遺体が流れ着いてくる島だ。首のねえやつだって別段珍しくもねえし、ショックであっさり思い出すかもしれねえ」
提督「それ以外にもきっかけなんてそこらじゅうに転がってるかもな。ただ、俺たちが暁にそれを話すには早えって思ってるだけだ」
初春「うむ、あいわかった。それと……一昨日までの報告でも、I提督の亡骸は未だ見つかっておらぬそうじゃ。翔鶴の首も……」
初春「それゆえ、あの海域で亡霊が出るという噂が出ておる。生首を抱えた濡れ女が、水面の上から近隣の鎮守府を見ているという……な」
提督「けっ、寝ぼけたこと言いやがって……!」ギリッ
提督「だったらお祓いでもなんでもいいから弔ってやれよっつーんだよ、くそが」
提督「だいたいそういうこと言い出してんのは、I提督の鎮守府見捨てて後ろめたさ感じてる奴らだろ?」
提督「それを野次馬が面白がって尾びれ背びれつけて囃し立てやがって……!」
提督「必要以上にゲンを担ぐほど信心深いくせに、面白くもねえ噂話が大好きな俗物連中こそ全員祟られちまえってんだよ、くそがっ!」
初春「貴様が言うと妙な説得力があるのう……」
提督「そもそも話盛ってんじゃねえのか? 女の腕力で艦娘の首をどうにかできるわけねえだろ」
初春「む、むう」
提督「いや、あり得なくはねえのか……暁が記憶を失ってるってのが事実なら。初春の聞いた話が本当なら、あり得るのか……」
初春「……」
提督「……」
初春「……」
提督「……はぁ」
初春「なんじゃ、今の溜息は」
提督「別に深い意味はねえよ。なんでこう面倒くせえ話ばかりこっちに転がってくるんだ? ってな」
初春「……それは貴様が望んでここにおるからじゃろうて」
提督「だからって、こんなにたくさん背負いこむつもりはなかったぞ」
初春「ならばもう救おうとしなければ良かろう? 不幸な艦娘を全員背負いこむこともあるまいよ」
提督「……そうだな、諦めるか」
初春「それが良い、貴様にできることは限られておる。無理はせんほうが……」
提督「あ? 無理しなきゃ無理だろ?」
初春「? 貴様は何を言っておるんじゃ」
提督「だから、見捨てて楽しようってのを諦めるんじゃねーか。俺はそういう人間と一緒にされる方が嫌だね」
提督「とりあえず今まで通り、助かりたいなら手は尽くしてやるさ。そのあとは保証できねえが……」
提督「ったく、我ながら面倒臭え偽善者してやがる、くそが」アタマガリガリ
初春「……」アキレ
提督「なんだよ」
初春「……まっこと、馬鹿じゃのう、貴様は」ハァ
提督「あ?」
初春「……まあ、嫌いではないぞ。貴様のような馬鹿は」
提督「へいへい」
初春「……ときに提督よ」
提督「ん」
初春「あの長門はやけにわらわを警戒しておるようじゃが?」
提督「警戒……ねえ」
初春「わらわが話を始めるときも、えらく気を張っておったようじゃしの」
提督「……聞くか?」スクッ
カチッカチッ
館内放送『あーあー、戦艦長門。執務室まで来られたし』
初春「……」
提督「デリケートな話題なんでな」カチカチ ←館内放送OFF
初春「よもやお主の口からそんな言葉を聞くとはのう……」
* * *
長門「なるほど。次は私の番か」
初春「一応、如月経由で潮からの話は聞いたがの。おぬしの余所余所しい態度は、それでは説明がつかんのでな」
長門「……なかなか鋭いな。あまり、駆逐艦の耳には入れたくないのだが……」
提督「やめとくか? 断ってもいいぞ」
長門「……いや、話そう。ただ、できれば、潮には黙っていてほしい」
初春「……」
提督「俺はわかった。初春は」
初春「正味なんともいえぬが……委細承知した」コク
長門「ありがとう……」
初春「潮からの話では、深刻なストーカー被害を受けたという話じゃったな。それを長門に相談し、長門が潮を逃がしたと」
初春「具体的にどんな被害を受けたかはよく聞いておらぬが……提督は聞いたのかの?」
提督「俺だけ詳細を長門同伴で、一応な。ま、聞かねえほうがいいぜ、胸糞悪い餓鬼の話だ」
初春「……」
長門「これからの話は提督にも話していない、私自身の話だ。ざっくりと話させてもらう」
提督「お前にも思うところがあったのか?」
長門「ああ。私の場合は、かつての鎮守府の提督……E提督が、あまりに怖くて、気持ち悪くて逃げてきたんだ」
初春「む? 被害を受けたのは潮だけではなかったと?」
長門「いや、その認識で間違っていない。正確には、鎮守府の殆どの駆逐艦たちが被害を受け、一番の犠牲になっていたのが潮だ」
初春「……なぬ? 殆どの駆逐艦!? 潮だけではないと?」
提督「聞いてないのか? そいつ、ロリコンで変態なんだとよ」
初春「……」ヒキッ
提督「で、長門もそうなんだと」
初春「……は?」ヒキキッ
長門「まあ、平たく言えばな」
初春「み、身も蓋もないのう……ちいとは否定せんのか」
長門「否定も何も、事実だからな。私も小さい子は好きなんだ。駆逐艦とのふれあいは私にとって癒しだ」
長門「たくさんの駆逐艦と一緒に遊びたい。抱きかかえて散歩したい。一緒にお昼寝してその寝顔を眺めていたい」
長門「私は、駆逐艦の無邪気な笑顔をずっと眺めていたいんだ……!」
長門「この図体でこんなことをのたまう私の言動が気持ち悪くて痛々しいことは、重々自覚している……」ズーン
初春「う、うむぅ……その程度ならばと変態ともロリコンとも呼ばんのではないのかのぉ……」
提督「過度に自制心が働いてるだけに思える。自虐も入ってるな、こりゃ」
初春「……むう」
長門「ともあれだ。結果的に、私がE提督に何かをされていたということはない」
長門「しかし、E提督の潮を見る目は、あまりに気持ち悪くて嫌な気分になるんだ……」アオザメ
提督「……なるほどな。近親憎悪か同族嫌悪の類か」
長門「程度は違えど、私も駆逐艦が好きだ」
長門「もし、私があの男と同じ目で駆逐艦を見て、同じ顔で駆逐艦と接しているのでは、と思うと、耐えられなくなるんだ」
初春(長門の言う『程度』には、水たまりとチャレンジャー海溝くらいの差があるように思えるのじゃが……)
長門「負い目を感じるから、奴と同じ場所にいたくなかった……これが理由の一つだ」
長門「そしてもう一つ。私は、潮をスケープゴートにしていたんだ」
提督「!」
初春「待て、そやつはロリコンではなかったのか?」
長門「……確かに、最初は私にそういう素振りはなかった」
長門「私も、潮が奴の毒牙にかかるのを見ていられなくて、潮を時々用もないのに呼び出したりしていたんだ」
長門「それからしばらくして……時折、な。あいつが潮を見るような目で、私を見ているときがあるんだ」
長門「……私は、それだけで耐えられなかった」ブルッ
長門「それと同時に、潮が、あの目にずっと見つめられていたと思うと……罪悪感と無力さに押し潰されそうだった」
長門「彼女はずっと奴のセクハラと戦ってきた……私はそれを、外から眺めていただけに過ぎない」
長門「私は、潮を逃がすことを口実に、逃げたのだ。潮以外の、駆逐艦たちを見捨てて」
提督「……」
初春「……」
長門「……こんな私に、駆逐艦を可愛がる資格はない……!」グスッ
初春「……」
提督「それで、初春と話をするときも必要以上に気を張っていた、ってか」
初春「これは重症じゃの……」
提督「……」
初春「のう、提督よ? この長門は信頼できると思うのじゃが」
提督「その言い方だと、信頼できねえ奴もいるのか?」
初春「うむ、わらわがいた鎮守府の長門は駆逐艦たちにしょっちゅう手を出しては折檻を食らっておった」
提督「なんだそりゃ……」ヒキッ
初春「……ま、まあ、たまにはおるのじゃ。変わった艦娘も」
提督「一気に不安になったな……で、この長門がまともかどうか、どうやって証明するんだよ」
初春「そうじゃのう……では長門よ、ちぃとここに座ってくれぬか」ソファポンポン
長門「あ、ああ……」ストン
初春「うむ。では失礼して……」チョコン
長門「!?」
長門(は、初春が私の膝の上に!?)
初春「遠征帰りで疲れておっての。しばしわらわの昼寝に付き合うてくれるか」ポスン
長門「あ、ああ……」ドキドキ
初春「そのように硬くならんでも良い。楽にしてもらわんと、わらわも落ち着かぬ」メヲトジ
長門「わ、わかった……」
提督「……んじゃ、俺は執務に戻る。長門は初春と一緒に、そのまま適当にくつろいでな」
長門「い、いいのか?」
提督「おう」
長門「……」
提督「……」カリカリカリ
長門「……」
長門(初春型、か。E提督の鎮守府では見かけなかったな)
長門(あの男は異様なまでに艦娘を選り好みする男だった。なにを基準にしているのか、聊か把握できなかったが……)
長門(気に入れば執拗に追いかけ回し、気に入らなければ即解体。あの男の私情がすべての、いびつな鎮守府だった)
初春「……」スヤ…
長門(……それに引き替え、ここはどうだ)
長門(在籍する艦娘全員が皆理由ありで、悲嘆にくれたことのある者たちばかり)
長門(そして、まるでやる気を感じられないこの男。編成も指揮も艦娘任せ、艦隊運営に差支えなければ、なんでも許す放任主義者)
長門(深海勢力を歯牙にもかけず、責任感もまったく見当たらない。形だけの、外界から切り離された孤島の鎮守府)
長門「……」ナデ
長門(……だが、不本意にもそんな場所に救われている自分がいる)
長門(潮も少しずつ笑うようになった)
長門(心残りはあれど、しがらみのないこの場所は、自分をゆっくり考え直すには丁度良い……)
初春「ん……」ゴロ
長門(比叡も、暁も……初春も、きっとそうなのだろうな)ナデ
長門(穏やかな顔をして寝ている。安心しているんだろうか)フフッ
長門(……)
長門(……今くらいは、このささやかな幸せを、噛みしめても……)
初春「なんじゃ、難しい顔をしておるのう」パチ
長門「!?」
初春「のう、提督よ? 貴様はどう思う?」
提督「まあいいんじゃねえか、少し遠慮しすぎてるきらいもあるが」
長門「お、おい、まさか私を謀って狸寝入りしていたのか!?」
初春「休みたかったのは事実じゃぞ。確かに、おぬしがわらわに何をするのか興味もあったのじゃが」
提督「あ? むしろ最初からそのつもりじゃなかったのか? 話の流れを考えりゃそう思わねえほうがおかしいだろ」
長門「」シロメ
初春(気付いておらなんだか……思いのほかどんくさいのう)
初春「まあ、それはともかくじゃ。わらわはもう少しこのままでいても良いかの?」
長門「んな!? も、もう終わりではないのか!?」
初春「わらわは初春型の長姉で、口調も気質も駆逐艦らしくなかろう? 誰ぞに甘えると言う発想も今まではなくてのう」
初春「ゆえに、誰かに寄り添ってもらったのは初めてじゃ。それがこれほど心地よいとは思わなんだ……」スリ
初春「もう少し、独り占めしたいんじゃが……どうかの?」ウワメヅカイ
長門「」キュン
提督(なんだこの茶番)
初春「というわけで提督よ。もうしばらく長門と一緒にいたいんじゃが、良いかの?」
提督「いいけどしばらくだぞ。俺は仕事に戻る」
初春「うむ、では許可も得られたことじゃし、もうしばらく休ませてもらおうかのう」スリスリ
長門「い、いや待て初春、こ、こういうのはもう少しお互いを知りあってからだな……」タジッ
提督(乙女か)カリカリ
初春「何を言うておる。添い寝くらい別に構わんじゃろうて……ほいっと」トンッ
長門「おわっ!? な、何をする!」オシタオサレ
初春「ふむ、一緒に眠ろうと思っただけじゃが……なんぞ気になることでも?」ニヤリ
長門「私の上に跨って何をするつもりだ!?」ワタワタ
初春「何を……って、何をするつもりだと思うておる?」
長門「何って……なんだ、その……」ポ
提督(乙女か)カリカリ
初春「……ほう。何というとナニか。ナニされたいと申すか」ニヤァ
長門「ひっ!?」ビクッ
初春「ではお望み通り……」スッ
長門「!」ビクッ
初春「……」
長門「……」プルプル
初春「……」
長門「……?」チラッ
初春「……」クワッ!
長門「……」ビクビクビクッ!
提督(小動物か)カリカリ
初春「これ」デコピン
長門「はうっ」ベシッ
初春「貴様それでも長門か。ビッグセブンではないのか」
長門「そ、そうは言ってもだな! いきなり跨がられて驚かない奴なんかいないだろう!?」
初春「提督もしょっちゅう如月やら電やら抱き着かれて寝ておる。気にすることはない」
長門「それは気にしなきゃ駄目じゃないのか!?」ガバッ
初春「そうかのう?」
長門「……提督。今の話はどういうことだ」ジロリ
提督「あー、朝、目が覚めたら隣に誰かしらが寝てることは結構あるな」ソロバンパチパチ
提督「どうも寝苦しいと思ったら如月が上に乗っかってたり、電が脚にしがみついたりしてんだよ」
提督「だもんで夜、寝る前に俺の部屋に鍵をかけてるんだが、ただの一度も役に立った試しがねえ。どう思う」カリカリカリ
長門「!?」
島の妖精たち(実は、わたしたちが資材やらなにやら引き換えに鍵を外してるんだけど)
島の妖精たち(ばれてないみたいだねえ)
長門「け、憲兵はどうした」
提督「いねえよ」
長門「それでいいのか!?」
提督「陸軍の連中ですら、この島に滞留したくねえっつうんだからしょうがねえだろ。俺だけだぞ? この島に滞留してる人間は」
初春「あー、長門よ? そんなことより早く添い寝させてもらえんかのう?」
長門「」
初春「んふふふ、良いではないか良いではないか」オシタオシ
長門「あ、あわわわ、私は……」ドキドキ
提督「おし、終わりだ。悪いな初春、休憩は終わりだ」バサットントン
初春「なんじゃと?」
長門「!」
提督「でだ、ちょっと電を呼びに行ってくれ」
初春「ぐぬぬ……提督はいけずじゃのう……承知した、暫し待っておれ」ガチャ
トテトテトテ…
長門「……」ホッ
提督「なあ長門。さっき、俺も初春に言われたんだがな」
長門「な、なんだ!?」
提督「お前、いろいろ背負いこみすぎだ。無理すんな」
長門「……な、なにを言う」
提督「どうせ前の鎮守府に残した連中のことを心配してたんだろ」
長門「……」
提督「全部なんとかしようと思うなら、自分がどうなってもいい、って思わねえと難しいもんだ」
提督「だが、それがお前にはできなかった。なぜなら、お前も被害者だからだ」
提督「助けに行きたい。だが、今行ってどうなるか。行ったあとにどうなるか? だいたい予想はつくよな?」
長門「……」ギリッ
提督「難しい顔すんなって。だから俺は最初から諦めろって言ってんだよ。じゃなきゃ、もちっと頭を使え。使えるものは上司でもだ」
長門「ならば貴様は……」
提督「俺は俺の出来る範囲でお前らの希望に応えてるだけだよ。無理なもんは無理で諦めてる」
長門「……」
提督「それ以上のことをしなくちゃ行けないときは、俺が命を捨てるときだ。だが、もうそれも安易に出来なくなった」
提督「長門。お前、この鎮守府を運営していく力はあるか? あるんなら、俺が代わりに命を捨てようじゃねえか」
長門「……い、いや、それは……」
提督「躊躇するだろ? だったらやめとけ」
提督「いい手がありゃあそれに乗るが、決定的に好転するなにかがねえとな……」
コンコン
電「電なのです」
提督「ん、入れ」
初春「提督よ、呼んできたぞ?」ガチャ
電「失礼します……はわわ!? な、長門さん!?」
長門「!」
提督「とりあえずなあ、お前は余所を心配するより、この鎮守府の駆逐艦の悩みを解決してやったらどうだ?」
長門「……む……!」
初春「? どういうことじゃ?」
提督「長門は遠慮しすぎなんだよ。この前から電に素っ気ない態度取ってるのも、ふれあいが度が過ぎないようにって考えてるんだろ」
初春「この前とな?」
電「暁ちゃんが比叡さんにおかゆを食べてもらったときのことなのです」
電「嬉しくて長門さんに抱きついたんですが、それ以来どうも避けられてる気がして……司令官さんに相談してたのです」
提督「ただの照れ隠しだとよ。安心しろ電」
電「そ、そうなのですか長門さん!?」
長門(て、提督!?)チラッ
提督「……」ニタァァァ
長門「」
初春(おぉ……下っ衆い笑顔じゃの……)ヒキッ
長門「……こほん……ま、まあ、その、なんだ。別に電が嫌いというわけではない」
電「!」パァ
長門「少々、気恥ずかしかっただけだ。悪く思わないでくれ」
電「ほ、本当なのですか?」
提督「口だけじゃ証明できねえだろ。態度で示せ、態度で。ほれ、抱きかかえてやれよ」
長門「!? わ、わかった……い、いいのか電?」
電「はいなのです!!」ニコー
長門「では……」ヒョイ
電「わっ!? 高いのです!」キャッキャ
初春「……」ジー
長門「……わかった、初春もだな」ヒョイ
初春「お!?」
電「片腕で抱き上げたのです! 力持ちなのです!」
長門「ま、まあな。戦艦だからこのくらい当然だ」マッカ
初春「ふむ……この眺めも悪くないのう」スリスリ
電「長門さんに嫌われてなくてよかったのです……」スリスリ
長門「あ、ああ……」テレテレ
提督「……」ニヤニヤ
長門「! て、提督! 私は……」
提督「ま、話はこんなもんだな。長門、時間を取らせてすまなかった。戻っていいぞ」
長門「へ?」
提督「俺は執務があるから。大丈夫だ、二人抱えててもこのドアは通れる」ガチャー
長門「……」
提督「早く行け」ニヤァァァ
長門「くっ……覚えておけよ」スタスタスタ
パタム
< アー、ナガトサンニダッコサレテルー
< ワタシモオネガイシマス!
< ワラワハマダオリトウナイノジャー!
< ナガトサンワタシモ…!
< ウシオォ!?
提督「……くっくっくっくっ」
提督「はー、笑った笑った……さて、仕事すっか」
というわけで、長門編はここまで。
次を誰にしようか悩み中なので、少し間が開きます。
はっちゃんか、古鷹か、利根か……仕上がり次第書いてみます。
次を誰にしようか悩み中なので、少し間が開きます。
はっちゃんか、古鷹か、利根か……仕上がり次第書いてみます。
ちょっとだけ個人的まとめ
如月:新兵器の実験台にされていたところを脱走し大破、島に漂着
不知火:如月捜索に駆り出される
朧、吹雪:捨て艦で轟沈後、島に流れ着く(二人とも別の鎮守府出身)
由良、電:大破進軍で轟沈し、島に流れ着く
神通:当時の司令官を謀殺されて復讐を試みるが危険視される
大淀:日々の解体任務に疑問を覚えて仕事が手につかなくなる
敷波:由良と電の捜索を命じられそのままMIA
明石:提督に帳簿の不正を強いられてそのまま首犯扱いで雷撃処分
朝潮、霞:提督の不正の内部告発を計画するも逆に犯人扱いされ雷撃処分
暁:信頼していた提督の変貌に恐怖して奔走、記憶を失う
初春:捨て艦で轟沈後、暁に拾われる
潮、長門:ストーカー上司に耐え切れなくなり家出、長門はその護衛
比叡:料理上手なのに飯を「まずい」と言われ続けてノイローゼに
以下これから
古鷹:
??:
利根:
??:
伊8:
というわけで古鷹さんから参ります。
* 埠頭 *
古鷹「古鷹と言います。重巡洋艦のいいところ、たくさん知ってもらえると嬉しいです!」
提督「……重巡洋艦?」
吹雪「はい。よく重巡と略されて呼ばれてます」
提督「神通とか由良とかとは別なのか」
朧「別ですね。この鎮守府にいる人たちだと、そのお二方も大淀さんも軽巡洋艦に分類されます」
提督「どう違うんだ?」
吹雪「対潜攻撃ができない代わりに、装甲と火力が高いというのが主な特徴です!」
提督「……重巡洋艦、うちにはいねえよな?」
朧「いませんね」
L少佐「だのになんで、あんたんところに長門がいるんだよぉぉ!!」
古鷹「L少佐、落ち着いてください!」
吹雪「司令官、こちらの方は?」
提督「知らん」
L少佐「おいぃ!? 准尉、さっき連絡しただろう!」
提督「初対面という意味で知らないっつったんだが」
L少佐「……ったく、まあいい。僕はL少佐、ついさっき敵艦隊を追い払ってきたところさ」フッ
L少佐「まあ僕たちにかかれば敵艦隊の邀撃なんて赤子の手をひねるより他愛ないことなんだが……」
L少佐「窮鼠猫を噛むと言ったところかな? 運悪く想定以上の敵艦隊と会敵してしまってね」
L少佐「その分資材を余計に消費してしまったんで、この鎮守府の資材の融通を指示したんだよ」
吹雪「指示?」
L少佐「当然だろう? 彼は准尉で、僕は少佐だ。僕はこれから本営へ帰還して観艦式に参加するんだよ」フッ
L少佐「敵艦隊の殲滅を手土産に、僕たちがそのまま観艦式の主役として颯爽と凱旋する……美しいだろう?」
L少佐「そのために、減ってしまった資材を補充しなければならないんだ。上司に仕えるのは部下の喜び。わかるね?」
吹雪「いつ上司になったんですかね」ボソ
提督「それと、ハナから他人に物を頼む態度じゃねえんだよなあ……気に入らねえ」ボソ
朧「諺多用するくせに、実るほど首を垂れる稲穂かな、って言葉を知らない人ですね」ボソ
古鷹「すみません、甚だご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」ペコペコ
L少佐「そうだとも。頭を下げろというのなら、いくらでもこの古鷹が頭を下げようじゃないか」
吹雪「……」ピキッ
提督「おい、吹雪の顔が面白いことになってんぞ」
朧「そりゃ他人にぺこぺこさせて自分は踏ん反り返ってたら吹雪だって気に入りませんよ」
L少佐「資材がないなら良い考えがある。長門が居るから資材が足りなくなるんだろう?」
提督「は?」
L少佐「おたくの長門はうちがもらってやろうじゃないか。君は資材の消費を抑えることが出来て万々歳だろう!」
提督「朧、塩持ってこい、塩」
朧「すぐ準備します」
吹雪「塩なんて上等なものじゃなくて、海水でいいんじゃないですか」
提督「……! おい、吹雪が成長したぞ。朧、赤飯の準備しろ」
朧「すぐ準備します」
吹雪「二人とも私をなんだと思ってるんですか!!」
L少佐「やれやれ、洒落が通じない連中だな」フゥ
古鷹「すみませんすみません、L少佐は悪気はないんです」ペコペコペコ
提督「悪気がねえ方が最悪だよ。吹雪、海水じゃなくて氷水の方がいいんじゃねえか」ボソ
吹雪「古鷹さんが代わりにかぶるって言い出しそうですけどね」
提督「じゃあ塩はやめて砂糖にしとくか。こいつが乗ってきた船の燃料タンクに角砂糖五、六個ぶち込んでやれ」
朧「司令官、それはさすがに止めておきましょう」
* *
提督「とにかくな、あんたがなんて言おうと、無い袖は振れねえってんだよ」
L少佐「いやいや、それなら装備なり艦娘なりを解体すれば良いじゃないか」
提督「は?」
L少佐「それにだ、この島の南側を見たが、たくさんの単装砲が丘の上に並んでいたね」
L少佐「あれを溶かせば資材なんてすぐ取り戻せるだろう?」ニコー
提督「……」
吹雪「」ドンビキ
朧「」ドンビキ
古鷹「ど、どうしたんですか二人とも!?」
吹雪「いえ、その……L少佐さん、怖いもの知らずというか、地雷原突っ走ってるっていうか」
朧「さっきから司令官の逆鱗をべたべた触りまくってますよ……」
古鷹「えええ!? ど、どうお詫びすれば……」オロオロ
吹雪「この場合、古鷹さんが頭を下げても逆効果だと思います」
朧「司令官、キレたりしないでしょうね……相手は一応少佐なんだから、我慢しないと……」
吹雪「我慢とか無理でしょ……」
朧「うん、アタシもそう思う……」
L少佐「そういうわけだし、どうだろう? 僕の役に立つのは君にとっても良いことだと思うよ?」
提督「……」
朧(司令官、平然としてる……)
吹雪(真顔なのが逆に怖い……)
提督「……そこまで仰るなら、その資材とやらに案内しましょうか」
L少佐「おお、そうかい! さすが、物分かりがいいね!」
吹雪「ど、どうする気なんだろう……」
朧「ついていこう」
古鷹「私も行きます!」
というわけで今回はここまで。
今回の古鷹さん編は割とライトなドタバタ劇になりそうです。
はっちゃんはまあまあで、
利根さんは……くっそ重いのでご注意を。
今回の古鷹さん編は割とライトなドタバタ劇になりそうです。
はっちゃんはまあまあで、
利根さんは……くっそ重いのでご注意を。
古鷹エルありがとうございますありがとうございます
ここまでそれなりに重いのも居たし更に重いのが想像も付かんが…
ち、ちくま~!なんとかしてくれー><
ここまでそれなりに重いのも居たし更に重いのが想像も付かんが…
ち、ちくま~!なんとかしてくれー><
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