私的良スレ書庫
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元スレにこ「きっと青春が聞こえる」
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ことり「私を見込んで誘ってくれた向こうの人」
ことり「私のためにコネクションをつないでくれたお母さん」
ことり「私を応援してくれてるたくさんの人」
ことり「それに――私の背中を押してくれてる、大切な友達」
ことり「もう、裏切れないの」
ことり「もう、私だけで決められる話じゃないの」
ことり「だから、だから――」
花陽「ことり先輩」
必死になる私を、まるで気にすることもなく。
花陽ちゃんは、繰り返す。
花陽「先輩は。行きたいんですか?」
ことり「――わかってよ!」
花陽ちゃんがしつこいからなのか。
それとも、私のもろくてやわらかいところを何度もついばまれたからなのか。
つい、おっきな声をだしてしまう。
ことり「言えないよ、今さら!」
ことり「海未ちゃんも苦しんでるの、わかってるから! 悩んでるのわかってるから!」
ことり「これ以上苦しめたくないの!」
ことり「私のせいで! これ以上、これ以上――」
頭の中がぐちゃぐちゃになって。形にならない言葉をひたすらにぶつける。
怖がらせちゃったかな。
嫌な思いさせちゃったかな。
そう思い、ふと見た花陽ちゃんの表情は。
花陽「――――」
とても強くて、とても熱かった。
【Side:海未】
海未「のろい?」
凛「うん。のろい」
あっけらかんと返す目の前の少女は。
しかし瞳の奥に、深く暗いなにかを宿していました。
凛「ねえ、海未先輩」
海未「……なんでしょう」
凛「がまん、しちゃだめだにゃ」
海未「我慢? 私が?」
凛「言いたいことは言わなきゃダメだし、気持ちは隠しちゃダメ」
凛「それはいつか、きっと大きなのろいになるから」
海未「……先ほどから、何の話をしているのですか。のろいだのなんだの」
いえ、わかってはいるのです。
意味は理解できなくとも、彼女がなにか大切なものを伝えようとしているのは。
海未「そもそもあなたには関係のない話です。部活だって生徒会長の出した条件が済めばやめます」
海未「ここから先は、あなたに口を出される筋合いはありません」
ぴしゃりと言い放った私に。
それでもこの後輩は。
海未「――なにがおかしいのですか!」
くすくすと、笑うのです。
凛「ううん、ごめんなさい。あんまりにもそっくりだったから」
海未「またその話ですか!」
要領を得ない彼女に、ついに堪忍袋の緒が切れました。
海未「いいかげんにしてください! さっきからあなたは何が言いたいのですか!」
海未「我慢などしていないし、隠してなどいません!」
海未「ことりに行ってもらいたい気持ちに偽りはありません!」
海未「全て、全ては、ことりのために――!」
凛「海未先輩」
海未「なんですか!」
凛「嘘つくの――へただね」
かぁ、っと。
全身の血液が沸騰したかのような怒りが、私を支配しました。
海未「あなたに――なにがわかるのですか!」
凛「わかるよ」
たぎる血に、冷や水を浴びせるかのように。
彼女の言葉は、真剣なまなざしは、鋭い矢となり私を射抜きました。
凛「わかるよ。凛も同じだったから」
凛「それしかないって決めつけて」
凛「それが正しいって決めつけて」
凛「それ以上考えるのをやめて」
凛「きつくきつく、自分をしばって」
凛「いつか、自分の本当の気持ちもわからなくなっちゃうの」
凛「凛も、同じだったから」
海未「あの、」
凛「海未先輩」
海未「なん、ですか」
凛「後悔――するよ?」
海未「――――」
彼女の強い言葉に、感情に、ついには返す言葉を見失います。
【Side:ことり】
花陽「……大切なら」
ことり「花陽、ちゃん?」
花陽「大切なら! それじゃダメなんです!」
ことり「っ」
強い感情の奔流が、私に流れ込んでくる。
花陽「大切なら! 友達なら! ちゃんと言ってあげなきゃダメなんです!」
花陽「そうじゃないよって! 素直になっていいんだよって!」
花陽「ほんとの気持ち、言ってあげなきゃ!」
花陽「相手を傷つけるのを怖がって――」
花陽「自分が傷つくのを怖がって知らんぷりするんじゃ、ダメなんです!」
ことり「あ――」
花陽「じゃないと……本当に後悔しちゃいます……」
それはひょっとしたら、花陽ちゃん自身が味わった気持ちなのかもしれない。
それぐらいに、必死さの詰まった言葉だった。
ことり「……わかんないよ」
ことり「もう、どうすればいいのか、わかんない」
ことり「どうすれば、誰も傷つかずに済むの……?」
だから私も、必死に言葉を紡ぐ。
出口のない寒い冬空の迷路を、手探りで歩くように。
答えを探すように。
花陽「簡単です――」
そんな私に、花陽ちゃんは。
春のようにあったかい笑顔で、言った。
【Side:海未】
海未「……どうすれば」
凛「え?」
海未「どうすれば、よいのですか」
心の中で、大きくそびえたっていた壁が。
私を強がらせていた、大きな壁が。
崩れていく音が、聞こえました。
凛「簡単だよ――」
そんな私に、目の前の後輩は。
凛は。
揺らめく純白の花のように優しく、言いました。
花陽「――素直に、伝えてあげればいいんです」
凛「――素直に、伝えてあげればいいんだにゃ」
――――
――――――
――――――――
【Side:穂乃果】
海未ちゃんと、ことりちゃんは。
真っ白い花のように優しく。
春の日差しのように暖かく。
私に、伝える。
海未「後輩たちに諭されてから、私たちは二人で話し合いました」
ことり「お互いにどうしたいのか。本当は、どうしたかったのか」
海未「そしてわかったんです。自分たちがこだわっていたことが、どれだけ大切で、だけど、どれだけちっぽけだったのか」
ことり「それでね、決めたの。穂乃果ちゃんとも、ちゃんと話し合おうって。穂乃果ちゃんの本当の気持ち、聞いてあげようって」
海未「穂乃果――」
ことり「穂乃果ちゃん――」
海未「ことりにどうしてほしいですか?」
ことり「私にどうしてほしい?」
もう、いいのかな。
穂乃果「海未ちゃん」
海未「はい」
言っても、いいのかな。
穂乃果「ことりちゃん」
ことり「うん」
言えなかった大切な一言。
言っても――いいよね。
穂乃果「離れ離れなんて……ひっく……やだよぉ……」
穂乃果「一緒が、いいよぉ……ひぐっ」
海未「ごめん、なさい……つらい思い、させてしまいましたね……」
ことり「ごめんね……ごめんね……」
なにも難しいことなんて、なかったのかもしれない。
ただ、ほんのちょっとだけすれ違って。絡まっちゃって。
お互いに、素直な気持ちが見えなくなって。
ほどいてみたら、見えた答えは。
すっごく、シンプルだった。
ことり「今日、帰ったらお母さんに伝えるね。留学のお話はお断りします、って」
三人で一通り泣いて。
これからのことを決めよう、ってなった。
海未「……大丈夫、なのですか?」
ことり「うん。相手の方にはがっかりさせちゃうかもだけど」
ことり「だけど――これが私の気持ち、だから」
海未「――そう、ですか」
ことり「それよりも……アイドル研究部、どうしよっか」
海未「そうですね……来週の撮影までは続けるべきでしょうが、それから先は、」
穂乃果「続けよう」
ことり「え?」
海未「穂乃果?」
あはは。二人ともびっくりしてる。
そうだよね。だって私が、一番続けたくないって思ってた人だもんね。
穂乃果「続けよう、アイドル研究部」
穂乃果「他の人たちに迷惑かけちゃうっていうのも、もちろんあるけど」
穂乃果「私自身、続けたいんだ」
穂乃果「私たち三人がつながれた、つながり続けられた、大切なきっかけだから」
穂乃果「すっごく――大切な場所になったから」
ことり「穂乃果ちゃん……」
海未「そう、ですね」
海未「アイドル活動、よいではないですか。私たちが『三人で』必死になれる場所があっても、いいと思います」
海未「どうですか? ことり」
ことり「……うん」
ことり「私も賛成!」
――ああ、なんだかとっても久しぶり。
三人が、ひとつになれた気がした。
* * * * *
にこ「…………」
屋上への扉が、重い。
いや、物理的にっていうのもあるんだけど、もっと精神的な部分で。
昨日絵里が宣告したリミットは一週間。あと一週間で、六人を仕上げなければならない。
――正直、無理って思う。
一年生はともかくとして、二年生三人はきつい。
技術的にも、モチベ的にも。
一週間は――短すぎるでしょ。
そんな気持ちが重さを増させる扉を、やっとのことで開いて。
私の目に飛び込んできた光景は。
穂乃果「あっ、にこ先輩きた!」
凛「にこ先輩おっそいにゃー!」
海未「こらこら凛、私たちの気が急いただけでしょう」
ことり「にこ先輩が来た時間はいつも通りだよ?」
花陽「そんなことより、早く練習始めませんか? あんまり時間、ないですし……」
にこ「――――え?」
信じられないものだった。
強い違和感が私を襲う。
にこ「え、ちょっと……え?」
穂乃果「そうだ、にこ先輩!」
戸惑う私をよそに、穂乃果がぐっと私に詰め寄る。
穂乃果「今まで……すいませんでした!」
にこ「え……え?」
穂乃果「私、全然練習に一生懸命になれなくて、すっごく迷惑かけてましたよね……」
穂乃果「だけど、もう大丈夫ですから!」
穂乃果「私も、それに海未ちゃんもことりちゃんも、これから一生懸命がんばります!」
穂乃果「だから……改めて、よろしくお願いします!」
叫ぶように言いながら、地面と平行になるくらい頭を下げる穂乃果。
待って、全然状況についていけない。
ことり「そうだ、私『START:DASH!!』用の衣装作ってきたんです」
凛「えっ、本当!?」
穂乃果「おぉ、凛ちゃんいい食いつきだねぇ!」
花陽「だって凛ちゃん、それがお目当てだもんね?」
凛「えへへー」
海未「へえ、凛もかわいいところがあるのですね」
凛「あー、海未ちゃん馬鹿にしてる!?」
にこ「…………」
なんていうか。
懸念事項は、きれいさっぱりなくなったみたい。
私の――知らない間に。
にこ「あ……」
きゃいきゃいとかしましい後輩たちの姿を見て、気づく。
屋上に入ったときに覚えた違和感の、その正体に。
あの感覚。
にこ「――――」
最近毎朝教室に入った時に感じる感覚に、そっくりだったんだ。
ここまで
二年生編終了、長かった
次は三年生編になると思う
続きはそのうち
二年生編終了、長かった
次は三年生編になると思う
続きはそのうち
きゃいきゃいとやかましいって初めてみた表現だわ
きいきいだろ
俺の負の経験値なんかあげなくていいから
きいきいだろ
俺の負の経験値なんかあげなくていいから
>>477
きゃいきゃいうるさいぞ
きゃいきゃいうるさいぞ
【Side:絵里】
絵里「…………」チラ
希「…………」
絵里「…………」チラ
希「…………はぁ」
希「そろそろ、時間やんな?」
絵里「あら。もうそんな時間だったのね」
希「絵里ち。いくらなんでも白々しすぎ」
希「時計ちらちら気にしてたの、気づいてないと思った?」
絵里「……わかってるわよ」
希「実際のところ。どうなん? あの子らの出来栄えは」
絵里「先週の録画風景は希も見ていたでしょう?」
希「そんなこと言っても、うちダンスとか歌は専門外やし。あーうまくなったなー、くらいにしか思わへんかったよ」
希「あれでいけそうなん? ランキング100位以内」
絵里「…………」
希「……わかりやすいお返事どうも」
絵里「なにも言ってないわよ?」
希「目は口ほどに物を言う、ってね」
絵里「う……」
希「そっか。難しいんだ、やっぱり」
絵里「希の言う通り。うまくはなったわ。それも格段に」
絵里「二年生の三人が急にやる気になったのが大きいわね。おかげで一年生にも火がついたみたいだったし」
希「というより、見た感じ二年生の方が一年生に火ぃつけられた感じやったやんな?」
絵里「そう、かもしれないわね。もともとあの二人はアイドル活動に真剣に向き合っていたから」
絵里「だけど……やる気だけじゃまかなえないものも、あるわ」
希「まあ、やる気になってから一週間じゃねぇ……」
絵里「残念だけれど、結果は火を見ずとも明らかだわ」
希「なら、入らんの? アイドル研究部」
希「うちには絵里ちが楽しみにしてるように見えたんやけどな? アイドル活動」
絵里「――――」
アイドルに全く興味がなかった、と言えば嘘になる。
バレエの経験からダンスの心得はあったし、歌だって下手な方ではない。むしろどちらも好きなくらいだった。
だから、それらを生かして自分が輝く舞台に再び登れるのであれば。
かつての雪辱を、果たすことができるのであれば。
それは願ってもないことであった。
だけど。
絵里「アイドルはね。正直な話、どうでもよかったの」
希「ふぅん?」
からかうような、試すような、希の相槌。
ああ。やっぱりこの子は、底意地が悪い。
わかっていて聞いているのであれば――お手上げである。
絵里「私が興味あったのは、矢澤さんの方」
希「うん。喜んでたもんね。うちの占いの結果、聞いた時」
希「『あの矢澤にこさんと一緒に活動できるの?』って」
希「おかしな話やんな? うちの占いなんて関係なく、一緒に活動したいなら「いーれて」って言えばいいだけなのに」
希「まるで誰かのお許しがなければ、それもできないみたいにさ」クスクス
絵里「もう、笑わないでよ」
だけど、それも私が彼女に惹かれる理由。
私はそういうところ、素直になれないから。
「やりたいから」なんていうシンプルな理由で、一歩を踏み出すことができないから。
それを純粋に追いかけられる彼女が――そう、とても眩しかった。
絵里「でも……」
曇る私の表情を、希が察する。
希「うん。今のにこっちは、なんか違うね」
希「前に絵里ちが言ってた『私の知ってる矢澤にこと違う』って言葉の意味、今ならわかる」
希「今のにこっち――なんだか苦しそう」
絵里「…………」
六人が作り上げた『START:DASH!!』の完成度は、お世辞にも上出来とは言えなかった。
高坂さんが遅れ、星空さんが走り、小泉さんが息を切らせ。
園田さんはぎこちなく、南さんは声が上擦る。練習不足は誰の目にも明らかだった。
だけど、彼女らには他の誰にも負けない笑顔が宿っていた。
楽しそうに。
嬉しそうに。
最高の瞬間を作り上げていた。
もちろん、それは残る一人も同じだった――はずなのに。
絵里「…………」
矢澤にこのそれは、あまりにも完璧に「作り上げられた」笑顔だった。
希「スマイルはゼロ円ってよく言ったもんやね。むりくり提供される笑顔が無価値だって、にこっちに思い知らされたわ」
希の言葉になるほどと思う。
彼女の笑顔には、ただ口角を吊り上げ目を細められた彼女の笑みには、まるで価値が見いだせなかった。
ほかの五人との決定的な違い。
彼女は、笑顔になっているだけであり。
笑っているわけでは、ない。
絵里「そもそも……八つの光って、いったい何なのかしら」
希「っ」
絵里「別に希の占いをどうこう言うつもりは全くないのだけれど、だけど異様よ、あの八人は」
そこに自分も含まれているというのは、なんだかおかしな話だけれど。
でも、アイドルグループを結成するには、あまりにも向いている方向がばらばらな八人。
それがなんとか形にはなってきたけれど……あくまで結果論。
絵里「矢澤さんが集めようとしていたのは、あの八人なわけよね?」
絵里「私たちは希の占いであの八人なんだってわかったけれど、矢澤さんにはなにか意味のある八人だった?」
絵里「けれど、どこかに共通点のある集まりというわけでもないし……」
希「……ね、絵里ち」
絵里「ん?」
気づけばだんまりになっていた希が、言いにくそうに口を開く。
それはまるで、いたずらを告白する子供のような。
希「あんな? 実はその占いのことで、絵里ちにまだ言ってないことがあって」
絵里「言ってないこと?」
希「うん。実はな、にこっちのことなんやけど、その八人に――」
コンコン
だけれど、希の告白は。
花陽「――失礼します」
突然の来訪者に遮られた。
だいぶ空いた割に進まずに申し訳ない
続きは今書いてるからちょっと待って
続きは今書いてるからちょっと待って
【Side:花陽】
花陽「――失礼します」
私が生徒会室の扉を開けると、少し目を丸くした生徒会長と目が合いました。
凛「失礼します」
続いて凛ちゃんも。その姿を見て、生徒会長は表情を怪訝そうなものに変えます。
絵里「……いらっしゃい、アイドル研究部のお二人さん」
氷のように冷たい視線が、私の心を見透かそうとしているのがわかりました。
当然、だと思います。
今日の午後五時。生徒会長たちは、その時間に私たちの部室を訪れる予定でした。
この人たちが、アイドル研究部に入部するかどうかを決めるために。
絵里「こちらから伺う約束だったはずだけれど、私の記憶違いだったかしら」
絵里「それとも、別件で生徒会に用事?」
花陽「いいえ」
生徒会長と向き合う私の声は。ひょっとしたら、少し震えていたかもしれません。
これから自分がすることを考えたら、だけど、声だって震えます。
だって。
これはきっと、とってもずるい取引だから。
花陽「アイドル研究部に入っていただけませんか?」
絵里「――待って。言ってる意味がわからないわ」
花陽「なにも難しい話じゃありません。そのままの意味です」
花陽「アイドル研究部に、入ってください」
絵里「うん、うん。だからね? それを決めるためにあなたたちはランキング100位に入ろうと一生懸命――」
花陽「無理です」
絵里「――――」
呆れながら頭を抱えた生徒会長が、そのままの姿勢でこちらに視線を送ります。
さっきよりも。
冷たい、視線でした。
絵里「――無理、というのは?」
花陽「それも、そのままの意味です」
花陽「私たちの歌で、踊りで、『START:DASH!!』で――」
花陽「ランキング100位入りは、無理です」
絵里「諦めた、ということかしら?」
花陽「いいえ。ただの事実です」
花陽「私たちは一生懸命頑張りました」
花陽「最初はどうなるのかな、って思いましたけど」
花陽「だけど、みんな少しだけ向いてる方向が違うだけで、必死なのは変わりなかったから」
花陽「だから。だから、あの『START:DASH!!』は、今の私たちができる最高のパフォーマンスでした」
絵里「それなら――」
花陽「それでも」
何度も生徒会長の言葉を遮るようで、少し罪悪感があったけど。
私は、続けます。
花陽「アイドルは、甘くありませんから」
絵里「……そうね」
小さくため息をつきながら、だけど生徒会長は否定をしませんでした。
この人だってわかっているはずです。
花陽「ランキング100位に入ること、無理だって。わかってましたよね?」
絵里「別に、あなたたちの努力を否定するつもりはないのだけれどね」
絵里「だけど……そう、あなたの言う通り。あの出来栄えでランキング入りは――」
花陽「違います」
絵里「――――」
みたび、話を遮られた生徒会長は。
だけど、怒った風でもなく、静かに私を見つめています。
花陽「あの条件を出したときから、です」
絵里「…………」
花陽「ずっと不思議でした。この条件、そもそも条件として成立してないって」
花陽「だって、私たちがランキングに入ろうが入るまいが、生徒会長には関係ありません」
花陽「なんのメリットもない話です」
絵里「――だとしたら、なぜ私はあんな条件だしたのかしら?」
それは、わからないことを尋ねる質問ではなく。
答え合わせをするような問いかけ。
花陽「……生徒会長は、最初から答えを言っていました」
花陽「私に言った、あの言葉です」
絵里「――――」
花陽「『入るつもりがあったから』、って。生徒会長は言いました」
花陽「それから、『あなたはわかってるんじゃないの?』、とも」
花陽「生徒会長は――絵里先輩は、そもそも最初からアイドル研究部に興味があったんですよね?」
絵里「――――」
絵里先輩は、沈黙を貫くままでした。
花陽「その時の態度も、私は不思議でした」
花陽「私たちを煽るような。けんかを売ってるような。あの態度」
花陽「機嫌が悪かったっていうのも、あるのかもしれませんけど。でも、それだけじゃない気がしていました」
絵里「……なら、どんな理由が?」
花陽「試してたん、ですよね?」
花陽「理由はわからないけれど、絵里先輩には二年生も含めた「あの場の六人」がアイドル研究部にいることが必要だった」
花陽「いえ、それだけじゃありません」
花陽「今後もスクールアイドルとして活動していくことが、必要だった」
花陽「だけど、二年生は誰一人自分の意志でアイドルをやろうとはしていませんでした」
花陽「あのままの意識で続けていても。中途半端な気持ちで続けていても」
花陽「あの人たちがアイドルに真剣に向き合うことはなかった」
花陽「そんな人たちがもしもレベルの高い練習を要求されたら――」
結果は、穂乃果先輩がそのまま証明してくれました。
花陽「……きっと、いずれ辞めてしまっていたと思います」
絵里「…………」
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