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元スレにこ「きっと青春が聞こえる」
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ジリリリリリリリリ……
にこ「……っるさーい」
カチッ
にこ「ふあぁぁぁあ」ムクッ
にこ「………」
にこ「……ねむい」
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1457750816
まだ肌寒さを感じる、3月某日朝。
ぬくもりが残る布団の中から、私は恨めし気に目覚まし時計を睨み付ける。
AM7:00
音ノ木坂を卒業した私が起きるにはまだ全然早い時間なんだけど――今日はお出かけの日。
いや、今日も、か。
μ'sのこれからが決まるまでは、おわらない用事。
にこ「…………はぁ」
重い溜息だけを残し、私は潔く布団から這い出た。
ぬくもりが残る布団の中から、私は恨めし気に目覚まし時計を睨み付ける。
AM7:00
音ノ木坂を卒業した私が起きるにはまだ全然早い時間なんだけど――今日はお出かけの日。
いや、今日も、か。
μ'sのこれからが決まるまでは、おわらない用事。
にこ「…………はぁ」
重い溜息だけを残し、私は潔く布団から這い出た。
にこ(終わらせる、べきなのよね……後輩たちが決めたことだもん)
にこ(学園を去る人間が――スクールアイドルでなくなる張本人がしがみついてたんじゃ、カッコがつかないし)
にこ(でも……みんなが、望んでる)
にこ(μ'sがスクールアイドルとして……ううん、ただのアイドルとしてでも)
にこ(活動を続けることを、頂点に君臨し続けることを、たくさんの人が望んでる)
にこ(じゃあ……私は?)
にこ「…………はぁ」
にこ「言わずもがな、なのよねぇ」
にこ(学園を去る人間が――スクールアイドルでなくなる張本人がしがみついてたんじゃ、カッコがつかないし)
にこ(でも……みんなが、望んでる)
にこ(μ'sがスクールアイドルとして……ううん、ただのアイドルとしてでも)
にこ(活動を続けることを、頂点に君臨し続けることを、たくさんの人が望んでる)
にこ(じゃあ……私は?)
にこ「…………はぁ」
にこ「言わずもがな、なのよねぇ」
アイドルって、やっぱりすごい。
μ'sとして活動してきた私が、改めて実感したこと。アイドルって、やっぱりすごい。
こんなにドキドキできて。
こんなにワクワクできて。
こんなに――にこにこできて。
ちっちゃな頃からあこがれていた理想の形が――ううん、それよりももっともっと素晴らしい形が、私にとってμ'sだった。
それを――簡単に手放せるはず、ないのよね。
にこ「我ながら未練がましいわね……」
思わずひとりごと。
なんていうか、それくらい私にとっては大きな分岐点なんだと思う。
μ'sとして活動してきた私が、改めて実感したこと。アイドルって、やっぱりすごい。
こんなにドキドキできて。
こんなにワクワクできて。
こんなに――にこにこできて。
ちっちゃな頃からあこがれていた理想の形が――ううん、それよりももっともっと素晴らしい形が、私にとってμ'sだった。
それを――簡単に手放せるはず、ないのよね。
にこ「我ながら未練がましいわね……」
思わずひとりごと。
なんていうか、それくらい私にとっては大きな分岐点なんだと思う。
専門学校進学。私が決めた、私の進む道。
正直金銭的にかなり厳しいのは理解してた。だから、私のアイドルへの夢も、ここまでかなって思ってた。
そう思えたのも、きっとμ'sとしての一年間があったから。
満足したからじゃ、もちろんなくて。
「満足したでしょ」って、自分に言い聞かせることができるくらいの経験ができたから。
ま、つまるところやっぱり未練たらたらだったってことなんだけど。
正直金銭的にかなり厳しいのは理解してた。だから、私のアイドルへの夢も、ここまでかなって思ってた。
そう思えたのも、きっとμ'sとしての一年間があったから。
満足したからじゃ、もちろんなくて。
「満足したでしょ」って、自分に言い聞かせることができるくらいの経験ができたから。
ま、つまるところやっぱり未練たらたらだったってことなんだけど。
でも、私が高校卒業したら働くって言ったら、ママはきょとんとした顔でこう言った。
『へ? あなたアイドルになるんでしょ?』
言われて、きょとんとするのは私の方だった。
何を当たり前のことを? みたいな口調で言われたもんだから、そりゃきょとんともするでしょ。
で、まあ私もよくわかんないままに、
『えっと、うん』
って答えちゃって、今に至る。
首の皮一枚でつながった私のアイドル人生。
学校で勉強すれば、きっと今までとは比べ物にならない上達が見込めるはず。
そのうち今までとは比べ物にならないきれいな衣装を着て。
今までとは比べ物にならない素敵な歌を歌って。
矢澤にこ、ここにあり! って、世界中の人々に知らしめることができる……かもしれない。
だけど。
絵里のうざったいくらい厳しいレッスンが。
ことりの甘っ甘な趣味全開の衣装が。
μ'sのメンバーと歌い、踊ってきた曲が。
名残惜しいって言ったら、それは、贅沢なのかな。
にこ「いっそのこと、この一年間やりなおせたらなぁ」
なにげなーくつぶやいた一言が、実は一番望んでることかも。頭の中で繰り返してみて……うん、やっぱりそれが一番ステキ。
μ'sとして駆け抜けた一年間。
もっともっと感じていたい。もっともっと刻み込みたい。
ありえないことだって、わかっていても。
やっぱり……やりなおしたいなぁ。
にこ「…………ん?」
「やりなおす」というワードに、なぜか引っ掛かりを覚える。
なんだっけ? なんだかついさっき聞いたような――
にこ「あ」
そうだ。夢だ。
ついさっきまで見ていた夢に出てきた人物――ちっちゃくてキュートで鈴の鳴るようなきれいな声、もうアイドルと言ったらこの子しかいないでしょってくらいアイドルオブアイドルみたいな子が、そんなことを言ってた気がする。
にこ「やりなおすとか……約束とか……」
いかんせんそこは夢。思い出そうとした端からぽろぽろと記憶がこぼれていってしまう。
にこ「ま、いっか」
夢は夢。そんなに気にする必要もないでしょ。
ただ――いっこだけ気になるのは。
その子――ちっちゃくてキュートで鈴の……っていうかぶっちゃけもう一人の私が、涙を流しながら、だけど微笑んでいたことだった。
とりあえずここまで
アニメ設定だったりSID設定だったり自分の勘違いだったりが混ざった世界観だけどお気になさらず
続きはまたあとで
アニメ設定だったりSID設定だったり自分の勘違いだったりが混ざった世界観だけどお気になさらず
続きはまたあとで
にこ「おはよー」
こころ「あー、にこにーおはよー」
ここあ「おはよー」
にこ「はいはーい、二人ともおはようにこー」
仲良く朝ご飯をとっているふたごちゃんを軽くあしらい、私も自分の席に着く。
私が起きてくる時間を見越してか、そこにはすでにトーストと目玉焼き、それにコップ一杯の牛乳が用意されていた。
準備してくれた当の本人は、スーツ姿で洗い物をしていた。
にこ「おはよう、ママ」
にこママ「おはよ、にこ」
背中を向けていたママは、わざわざこちらを向いて挨拶を返してくれた。
ママのこういうところ、好き。
こころ「むぅ……こころぷちとまときらーい」
サラダのプチトマトをフォークでで貫きつつ、こころがぐずつく。
ここあ「どうしてー? トマトおいしいよ?」
こころ「トマトはおいしいけど、ぷちとまとはすっぱいもん!」
ここあ「すっぱくないもん!」
こころ「すっぱい!」
ここあ「すっぱくない!」
にこ「こらこら、けんかはしちゃだめにこよー?」
こころ「だってぇ……」
ここあ「だってぇ……」
にこ「食べ物のことでけんかしてると……お野菜おばけがふたりのこと食べちゃうにこー!」
こころ「きゃー!」
ここあ「けんかしないー!」
効果てきめん。二人は一生懸命ご飯を食べだした。
うむうむ、仲良きことは美しきかな。私も満足し大皿からサラダを取り分ける。
……にしても、プチトマトが嫌いなんて、とっても贅沢。
基本はもやしの白、そこにレタスの緑が混ざってればラッキー、くらいの感覚なのに、真っ赤な粒がころころしてるだけで私としては宝石みたいに眩しく感じるんだけどなぁ……
と。そこで私はようやくある違和感に気づく。
きゃーきゃーと騒がしい朝食。別に珍しい風景ではない。
というか、朝食に限らずこころとここあがいるときは大抵こんな騒がしさが矢澤家の日常。
――そう、こころとここあがいるときは。
にこ(昨日の夜――この二人、いたっけ?)
一日前の記憶を引っ張り出してきても、目の前の騒がしさがそこに重なることはない。
ん、……まだ、寝ぼけてるのかな?
にこ「ねぇママ。こころたちって、昨日こっち泊まってたっけ?」
にこママ「そりゃ、泊まってたから今ここにいるんでしょう?」
にこ「や、そうなんだけど……」
ママの言うことはもっとも。私の単なる記憶違いっていうのが一番しっくりくる答え。
だけど、うん、ちょっと否定材料が増えちゃった。
にこ「っていうか――ママ、今日朝早いから朝ご飯自分で用意してって、昨日言ってなかったっけ?」
にこママ「……ちょっと、大丈夫? 具合悪いの?」
にこ「う、ううん、違うの、そうじゃなくって……」
にこママ「あんまり体調がよくないなら、今日は学校お休みしたほうがいいんじゃ……」
にこ「ほんと、大丈夫だから! ちょっと寝ぼけてただけ! ――ごちそうさま!」
話が妙な方向にずれてきたため、慌てて牛乳を飲み干す。
着替えや身支度は済んでるから、あとは歯を磨いたら――うん、カンペキなにこにーのできあがり。
にこ「それじゃあ行ってきまーす!」
こころ・ここあ「いってらっしゃーい」
にこママ「いってらっしゃい、無理しちゃだめよー」
にこ「わかってるー!」
三人分の声に背中を押されながら、ドアをくぐる。
春を待ちわびる三月の日差しが、ちょっとだけあたたかい。
よーし、今日もいっちょ頑張りますか。
三年生が卒業したものだから、通学路を歩く音ノ木坂生は少し前よりぐっと減った。
まあ単純に考えれば三分の一がいなくなったのだからそう感じるのも当然か。
にこ(ま、にこみたいな例外もいるんだけどね)
見ると私と同じ緑リボンの生徒もちらほら見られる。どんな理由か知らないけど卒業してからもごくろーさま。
……なーんて、人のこと言えないけど。
にこ「ん」
校門をくぐろうかというところで、見知った二人分の後姿。
私の大好きなμ'sのメンバーで、大切な同級生で――かけがえのない、友達。
恥ずかしいから本人らには言わないけどね。
なんだか一人で照れ臭くなったので、ごまかすように二人の肩をばしーっと叩く。
にこ「おはよー、絵里に希。朝からなかよしこよしでうらやましいわねぇ、このこの」
ジョークも完璧。今日もいい一日になりそ。
――なんて思ったのは、その瞬間だけで。
希「え? ……にこっち?」
絵里「…………?」
いぶかしげな二人の表情は、なんというか、予想外。
え、今のジョークそんなにマズった?
にこ「ど、どうしたの二人とも? そんな怖い顔しないでよー。ほらご一緒に、にっこにっこ、」
絵里「どうしたの、はこちらの台詞なのだけれど」
にこ「にー……」
せめて最後まで言わせてよ……
じゃなくて。
にこ「え、いや、ほんとにどうしたのよあんたたち? なんかあったの?」
絵里「…………ひとつ、確認させてもらっていいかしら?」
にこ「え、なにを、」
絵里「あなた――矢澤にこさん、よね?」
にこ「……言って、る、の……?」
あはは。
絵里、そのジョーク、さっきの私のより笑えないわよ?
絵里「一応生徒会長だし、希からもあなたの話は聞いたことあるから名前くらいは知ってる」
絵里「だけど、それだけでしょう?」
絵里「少なくとも――急に肩をはたかれて呼び捨てにされるような仲ではないと自覚していたのだけれど」
にこ「…………」
この子、何言ってんの?
それしか頭に浮かばない。
助けを求めるように視線を希に移しても、
希「えと、にこっち? うち相手にならまだしも、初対面の絵里ち相手にちょっとおふざけがすぎるんとちゃう?」
こっちはこっちでつまらないジョークを続けてた。
絵里「……別にあなたのことを嫌っているというわけではないけれど、相応の距離感は守ってほしいわ」
やめてよ。
アンタの口から、そんなこと――
絵里「別に、友達ってわけでもないのだから」
――言わないで、よ。
チャイムの音が遠い。
呆然と立ち尽くす私を、急ぎ足の生徒が追い抜いていく。
なにこれ、ドッキリ?
騙されたでしょーって、穂乃果あたりがネタばらしの看板でも持ってくるの?
じゃあさ、早くしなさいよ。
悪趣味だってば、こんなの。
ねえ。誰か教えてよ。
服の袖でぐしぐしと目元をこすって、すがるように視線を上げる。
さっきのチャイムは予鈴だったようで、本鈴に間に合うべく多くの生徒が昇降口に殺到している。
にこ「……あ」
その人ごみを見て、気づく。
にこ「うそ、でしょ……」
三年生が抜けた、三月中旬の音ノ木坂学院。
にこ「そんな……」
そこにいる生徒は皆、赤か緑のリボンを結んでいた。
まるで――私が二年生だった、一年前のあの頃のように。
ここまで
調べてみたらたしかにほぼ同名のSSがあった
たぶん内容はまったく違うから気にしない
次はまたそのうち
調べてみたらたしかにほぼ同名のSSがあった
たぶん内容はまったく違うから気にしない
次はまたそのうち
そのまま回れ右してよっぽど帰ってやろうかとも思ったけど、結局そのまま校内へ進むことにした。
なにかの勘違いかも知れなかったし。……まあ、なにをどう勘違いしたらこうなるのかわからないけど。
とりあえず同じ色のリボンの人を追いかけていったら、みながみな一様に教室棟の二階へ足を進めていった。
二年生の教室のある、だ。
自分が二年の頃に何組だったか思い出しつつ、途中他のクラスも覗いてみる。
ホームルーム直前ということもあってみんな席についてるからわかりやすい。
どこのクラスもほぼ全員が揃っている。まるでこれから、授業でも受けるかのように。
にこ(……やっぱり、そういうことなの? これ)
状況を知れば知るほど、可能性を否定できなくなってくる。
将棋は詳しくないけど、王将の逃げ道をどんどん減らされてるときってこんな気分なのかな。
そして、王手がかけられた。
にこ「…………」
記憶の底から引っ張り出してきた、去年の私のクラス。
そこにいたのは、確かに一年前に同じ教室で授業を受けていたメンバーに他ならなかった。
扉の前でぼーっと突っ立ってるわけにもいかず、とりあえず中に入る。
自分の席まで覚えてないな、と気づいたけれど、すでに空いてる席はひとつしかない。ちょっと緊張して席に腰掛けるけれど、それをとがめる人間はいなかった。
というか。
私が教室に入ってから席に座るまで、だれ一人として私を気にする気配がなかった。
にこ「…………」
やっぱり、帰ればよかったかな。
しばらくして現れた担任教師に挨拶して、ホームルームを終えて、一時限目の始まる前の休み時間。
そういえば、と私はようやくスマホの存在を思い出す。
インターネットブラウザを起動して、適当なニュースサイトを検索。
出てきた最新記事の日付は――
にこ「一年前、だ……」
案の定というか、ある意味期待外れというか。
ふわふわとしていた現状が、一気に現実として重みをもつ。
私、一年前の世界に迷い込んだの?
昨日いなかったはずのこころやここあが家にいたのも。
絵里や希がよそよそしかったのも。
卒業したはずの私たちの学年が授業を受けてるのも。
全部、一年前だから?
にこ「ありえない……」
ファンタジーやSFじゃあるまいし。
タイムスリップ? タイムリープ?
ループものなんて飽食のご時世でイマドキはやんないわよ、こんなの。
だから……だから。
誰か、嘘だって言って。
じゃないと。
にこ「――――」
私、またひとりぼっちになっちゃう。
置き勉上等の精神が功を奏し、ほぼ手ぶらで登校した私もテキストがなく困り果てる、という事態は避けられた。
どこかで聞いたような授業―― 一年前、この場所で聞いたんだろうけど――をほとんど聞き流し、お昼休み。
ママお手製のお弁当を机の上に出し……どうしよう。
ちら、と教室を見回す。
食堂組を除き、仲のいいグループは机を寄せ合いランチタイムに突入していた。
――居心地悪いなぁ……
ここ最近はずっとμ'sのメンバーと食べていたから、この頃お昼をどう過ごしていたのか覚えていない。
だけどひとつだけ確実。
少なくとも、誰かと一緒に過ごしていた記憶は、ない。
にこ(やば……泣きそう)
μ'sという居場所を手に入れた今だからわかる。
自分がいかに寂しい人間だったか。
全ては――仲間を失った、あの日から。
歯車が、狂い始めた。
にこ「どうしろってのよ、これから……」
思わず口をついて出る弱音。
真面目な話、先が全く見えない。
今日一日過ごして、おやすみなさいして、明日の朝すべてが元に戻ってるならそれでいい。
だけどもし、明日以降もこれが続いたら……?
ははは、家から出れる自信、ないなぁ。
込み上げる熱い感情が、視界をじんわりにじませた。
クラスメイト「ちょ、どうしたの? 矢澤さん」
にこ「え?」
クラスメイト「急に泣き出して、どっか痛いの? 保健室いく?」
にこ「や、え、ちょ……」
クラスメイト2「はいはい、ちょっと落ち着きなさい」
クラスメイト3「矢澤さん、困ってるよ」
クラスメイト「や、でも……」
クラスメイト2「でもじゃない。まずは事情を聞く」
クラスメイト2「というわけで矢澤さん。横から急に口出して申し訳ないけど、どうかしたの?」
にこ「え、っと……」
クラスメイト3「……ひょっとして、自己紹介が必要だったりする?」
にこ「そそそ、そんなことないわよ! さすがにクラスメイトの名前くらい知ってるから!」
にこ「飯塚さんに竹達さんに、後藤さん……よね?」
竹達「自信なさげだなぁ……」
後藤「なんにせよ、正解。よかった、矢澤さんに覚えてもらえてて」クスクス
にこ「……ひょっとして、おちょくってる?」
後藤「あらあら、そんなことないわよ?」
飯塚「それで、なんで急に泣いてたの?」
にこ「あ、それは……」
飯塚さんの質問に、言いよどむ。
本当のことを言っても信じてもらえるわけないし……
竹達「てゆーか珍しいよね、矢澤さんが昼休みに教室いるのって」
にこ「へ?」
竹達「だってそうでしょ? いつもチャイムが鳴ると同時に教室からいなくなって」
後藤「授業開始五分前に帰ってくる。どこ行ってるんだろうねって噂したこともあったわね」
竹達「や、それ本人の前で言うことじゃないでしょ……」
にこ「あーっと……」
そうだ、思い出した。
私お昼休みになったら、アイドル研究部の部室に逃げ込んでたんだ。
ひとりぼっちでご飯を食べてるみじめな姿を、見られたくなくて。
飯塚「でも今日はいつまでたっても席を立つ気配がなくって……」
飯塚「どうしたんだろ、って思ってたら急に泣き出すんだもん、びっくりして思わず声かけちゃったよ」
にこ「あ、そうだったんだ……」
飯塚「泣いてた理由、言えないならそれでも全然構わない」
飯塚「でも、こうして話したのもなにかの縁だと思ってさ。よかったら一緒にご飯食べない?」
にこ「え? ……ええ!?」
竹達「や、そんなに驚く話だった? 今の」
にこ「だって、だって……」
ぼっちの私が、誰かと食事?
うそうそうそ、ありえないでしょそんなの。
だって私、一年生の「あの一件」以来、学年の鼻つまみ者で――
後藤「いいじゃない、ご飯くらい。私たちずっと矢澤さんと話してみたいと思ってたのよ」
にこ「――うええぇぇぇぇええ!?」
竹達「だからそんなに驚く話だったかな!?」
にこ「驚くわよこんなの! だって、だって私は――」
飯塚「ほらほら机くっつけて」
にこ「って聞きなさいよ!」
後藤「あら、矢澤さんのお弁当おいしそうですねぇ」
にこ「勝手に開けてるしー!?」
ぎゃーぎゃー言いながら、なんだかんだで三人娘とお昼ご飯を食べることになった。
私と話してみたいと思ってたのは本当らしくて、いろんなことを聞かれた。逆に私もいろんなことを聞いた。
なんだか会話するのが当たり前で。
違和感とか全然なくて。
友達みたいだな、って思った。
私の、思い込みだったのかな。
一年生のとき、アイドル研究部の一件以降、好奇の目にさらされるようになって。
私には友達なんてできないんだって決めつけてた。
だけど、違ったのかな。
避けられてるんじゃなくって。
避けられることを恐れて――私が避けてただけ、だったのかな。
μ'sじゃ、ないけど。
飯塚「その言い方ひっどーい!」プンスカ
竹達「あはは、気にしない気にしない」ケラケラ
後藤「二人とも、おかしい」クスクス
居場所作っても――いいのかな。
答えはわからないけど。
にこ「もー、変なことばっかり言うんだから」アハハ
明日の朝も、学校に来れそうな気がした。
ここまで
名前ありのオリキャラっぽいのでてきたけどモブに毛が生えた程度の認識で大丈夫です
クラスメイト123じゃ味気ないなと思っただけなので
続きはまた近々
名前ありのオリキャラっぽいのでてきたけどモブに毛が生えた程度の認識で大丈夫です
クラスメイト123じゃ味気ないなと思っただけなので
続きはまた近々
飯塚「なんだかんだで馴染んだよねぇ、矢澤さん」
にこ「ま、一週間も一緒にご飯食べてればね。さすがに馴染みもするでしょ」
竹達「ほんとねー、この一週間で矢澤さんのお母さんの卵焼きのおいしさがよーくわかったわ」
にこ「私もあんたがそういう意地汚い人間だってことがよーくわかったわよ! てか卵焼き返しなさい!」
竹達「返せと言われて返すなら最初から取らないし!」
にこ「私なんで逆切れされてるの!?」
後藤「そうして二人のお弁当からは大事なおかずが一品ずつなくなるのでした」モグモグ
にこ・竹達「さらっと持ってくな!」
飯塚「……本当に馴染んだね……」
後藤「だけど、本当に不思議よねぇ」モグモグ
にこ「今私の唐揚げがあんたにもぐもぐされてる以上の不思議なことなんかないわよ」
後藤「それもそうね」
にこ「納得すんな!」
飯塚「よーしよしよし、矢澤さん抑えて抑えて」
にこ「私ゃ犬かなんかか!?」
後藤「ほーら、三回回ってワンと言ったらこの唐揚げを上げるわよー」
にこ「元から私のだけどね!?」
竹達「話が進まないから一旦落ち着きなさい落ち着きなさいって」
にこ「私? 私が悪いの?」
竹達「で? 何が不思議だって?」
後藤「へ?」モグモグ
竹達「おう、この際私のウインナーがいっこ減ってることは不思議に思わんから続けなさい」
後藤「あーうん、大したことじゃないんだけど」
にこ「まったく、付き合ってらんないっての……」牛乳ズゾー
後藤「矢澤さんってなんでぼっちだったのかなって」
にこ「ぶふー!」牛乳ビシャー
飯塚「ぎゃあ! 汚い! 汚いよ矢澤さん!」
竹達「容赦ないボール投げるわねあんたも……」
後藤「そうかしら?」
にこ「げほっ、げほっ」
飯塚「だ、大丈夫? 矢澤さん」
竹達「牛乳まみれになりながらその張本人を気遣えるあんたの器の大きさにゃ感服だわ……はい、タオル」
飯塚「あ、ありがと」フキフキ
にこ「ぜー、ぜー……痛いとこついてくるじゃない」
後藤「そう?」
にこ「しれっとしてるのが憎らしいけど……まあいいわ」
にこ「私たちが一年生の時の『アイドル研究部事件』。これでわかるでしょ?」
飯塚「あ……」
竹達「それって、あの……」
後藤「ああ、にっこにっこにーが口癖の話聞くだけでいたたまれなくなるくらい恥ずかしい人がぼっちになったっていうあの……ということは?」
にこ「……いたたまれなくなるくらい恥ずかしい人で悪かったわね……」
にこ「そーよ。あの時一人で勝手に暴走して部員に愛想つかされて、ひとりぼっちになったアイドル研究部唯一の部員が、この私ってわけ」
にこ「それ以来友達なんかいなかった。いらなかった」
にこ「……ううん、いらないと思い込んでた」
飯塚「矢澤さん……」
にこ「ぶっちゃけちゃえば、つらくないわけないわよ。登校もひとり。ご飯もひとり。放課後もひとり」
にこ「でも、どうすることもできなかった。どうせ嫌われ者だって予防線はって自分を守るのが精一杯」
にこ「誰かと関わる余裕なんてなかった」
竹達「…………」
にこ「でも、気づいたの」
にこ「一歩踏み出せばよかっただけなんだって」
にこ「がんじがらめの有刺鉄線の中でぶるぶる震えてるんじゃなくって」
にこ「ちょっとの勇気を出せば――こうして、友達ができるんだって」
後藤「…………」
にこ「だから……ねぇ」
にこ「私、もうちょっとだけ勇気を振り絞ってみようと思うの」
にこ「来週からもう春休みになって」
にこ「三年生になったら、同じクラスになれるかわからない」
にこ「だけど、さ」
にこ「春休みも――三年生になっても」
にこ「私と、友達でいてくれる?」
三人「…………」
それは、決別の言葉だった。
四月になって廃校騒ぎが校内に蔓延して。
穂乃果たちがスクールアイドルを始めた時。
私が彼女らにちょっかいをかけなかったら。
私がμ'sに入ることは――ない。
だけど、それでもいいかな、なんてちょっぴり思えてしまったんだ。
あの九人だけが、私の形じゃないって。
この四人という形が、教えてくれたから。
だから――これでも、きっといい。
そんな私の、出会う前に終わった仲間たちとの関係を知る由もない三人は。
飯塚・竹達・後藤「――――」ニコッ
笑顔で頷いてくれた。
後藤「それにしてもアイドルかぁ……うちの後輩が食いつきそう」
竹達「後輩って、部活のあの子? そんな風には見えないけど」
後藤「ああ見えて可愛いの好きなのよ。本人は興味ないふりしてるけど」
照れ臭くなったのか、話題は別な方向へと進みだした。
まだばくばくしてる心臓を、ゆっくり落ち着かせる。
残った牛乳をちゅーちゅー吸ってると、会話からあぶれてる飯塚さんと目が合った。
飯塚「……春休みさ」
にこ「ん?」
飯塚「春休みさ。いっぱい遊ぼうね」
飯塚「来年は私たちも受験生だからあんまり余裕はなくなっちゃうかもだし」
飯塚「だから、春休み。めいっぱい遊ぼう」
飯塚「――にこちゃんの、これまでのぶんも」
にこ「――!」
名前。呼んでもらった? 今。
飯塚「…………」フイッ
あ、顔そらした。
ふふ、変なの。顔真っ赤にしちゃって。
――鏡見たら、きっと同じようなことになってるんだろうなぁ。
ま、なんにせよ。
これから一年――目いっぱい楽しもう。
――楽しめる、よね?
にこ(……なんだろ、この気持ち)
嬉しいのに――なんかちょっとだけ、もやもや。わけがわからない。
にこ(――嘘)
本当は――わかってる。
わかってるけど――今は、今だけは、目をそらしていたい。
「…………」
これから一年――目いっぱい楽しもう。
――楽しめる、よね?
にこ(……なんだろ、この気持ち)
嬉しいのに――なんかちょっとだけ、もやもや。わけがわからない。
にこ(――嘘)
本当は――わかってる。
わかってるけど――今は、今だけは、目をそらしていたい。
「…………」
にこ「ただいまーっと」
自分の声がむなしく廊下の奥へ響いていくのを聞きながら、自分の部屋へと向かう。
バッグを放り制服のままぼすん、とベッドに体重を預ける。
マットレスにずぶずぶと体が沈み込んでいく感覚におぼれながら、ここ数日途端に増えた幸福な思い出に浸る。
にこ「「……ふへへっ」
我ながらキモイ笑い声が漏れる。
でもしょうがないでしょ?
だって、楽しいんだもん。
今日は唯一部活に入ってる後藤も活動がないってことで、四人そろって放課後にカラオケ。
私の歌唱力に三人ともびびっちゃってたなぁ。
こーんな楽しい毎日が、これからずっと続くんだ。
春休みはもちろん、三年生になってからも。
受験勉強? ううん、そんなの関係ない。
だって、どうせ私は専門学校に――
にこ「――――」
行く、のかな。
心の奥に奥にしまいこもうとしていた気持ちが、水の中の泡みたいにぷかりと浮かんでくる。
アイドルは、どうするの?
ごろんと寝返りを打ち、うつぶせになる。制服がしわになっちゃうかな、と一瞬頭をよぎったけど、そんなのはすぐにかき消された。
そう、なんだよね。
μ'sに入らないってことは――スクールアイドルを諦める、ってことなんだよね。
むぎゅ、と顔を枕にうずめる。
にこ「ううううぅぅぅぅ……」
アイドルは、諦めたくない。
子供のころからの夢を、手放したくなんてない。
だけど、気づいちゃったんだ。
今の四人って――すっごい気楽。
目標がなく。努力がなく。必死さがなく。練習がなく。練磨がなく。
ただ毎日を、頭からっぽにしながらけだるげーに消耗させていく。
なにかに打ち込んでいる人たちからしてみたらそんなの無駄な日々でしかなくて、アニメ作品なんかにしたらただのモブキャラにしかなれないような女子高生A。
だけど。
そこには、私の三年間にはなかった、気楽さがあった。
にこ「ううううぅぅぅぅ……」
9と4。
両皿にそれらを乗せた天秤は、いつまでもゆらゆらするばかりで傾いてくれない。
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- 美琴「みことにっき、でいっか」 (1001) - [47%] - 2010/7/28 6:31 ★★★×4
- 八幡「ぼっち過ぎて勉強がはかどる」 (115) - [46%] - 2015/6/24 12:30 ☆
- モバP「宝くじの一等が当たった」 (127) - [45%] - 2015/1/23 7:30 ☆
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