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元スレにこ「きっと青春が聞こえる」
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これはお前のssがお前を生んだ肉便器並みにまんこがばがばだからありふれた悲しみの果てに自殺したやつの画像
よっ殺人鬼
よっ殺人鬼
>>400
グロ
グロ
なんのために歌ってるの?
心の中で、誰かが私に問いかける。
花陽「凛ちゃん、今のところワンテンポ早くなってるよ!」
凛「にゃー、ごめんかよちん!」
やりたい子がいて。
穂乃果「…………」
海未「もう……どうして合わないんですか!」
やりたくない子がいて。
絵里「口ばっかりになったってしょうがないわ! もう一度やりなおしよ!」
やらせようとする子がいて。
大きさも形もちぐはぐな歯車が、それでも無理やり噛み合おうとして。
にこ「――――」
ぎしぎし、きしむ。
μ'sを作りたかった。
もう一度、やり直したかった。
楽しく笑い合って。
たまにはけんかして。
でも、すぐに仲直りして。
そんな9人を、作り直したかった。
その結果が、これ?
違う。
違う違う違う。
私が作りたかったのは、こんないびつなものじゃなかった。
ねえ。
なんのために、歌ってるの?
【Side:ことり】
ことり「それで……お話ってなにかな?」
花陽「はい、えっと……」
いつも通り、ぎくしゃくした練習が終わった後のこと。
私を部室へ呼び出したのは、後輩の女の子二人だった。
凛「かよちん、言いづらいなら凛から言おうか?」
花陽「ううん、大丈夫。大丈夫だよ」
言いづらいこと、なんだ。
なら、やっぱり話したいことって――
花陽「ことり先輩たちは――部活、楽しいですか?」
その話、だよね。
花陽「ごめんなさい。失礼なこと、言ってると思います」
花陽「だけど、だけど……二年生の三人を見てると、やりたくてやってるようにはどうしても見えなくて」
花陽「私は……アイドルに、すごくあこがれてて」
花陽「だからこの学校にスクールアイドルをやってる部活があるって知って、とっても嬉しかった」
花陽「だから、だからこそ……中途半端に、したくないんです」
ことり「そのためには……私たちは邪魔、ってことだよね」
花陽「そういうわけじゃ!」
ことり「……ごめんね、ずるい言い方だったね」
慌てる花陽ちゃんを見て、少し罪悪感。
だけど、きっと彼女の言いたいことをなんのフィルターもかけずに言うなら、そういうことなんだと思う。
私たち――特に穂乃果ちゃんは、この部活の邪魔になってる。
ひどくなったのは、穂乃果ちゃんが部活をさぼっちゃった日の、翌日。
朝から明らかに落ち込んでた穂乃果ちゃんは、それでも私たちに部活をさぼったことを謝って。
だけど、部活の取り組みは前日以上に悪くなっちゃった。
誰が見ても、やる気がないのは明らかだった。
でも、当たり前だよね。
だって、穂乃果ちゃんは、やりたくてやってるわけじゃない。
私に付き合ってくれてるから。
私のわがままに振り回されてるから。
楽しめるはずが――ないんだよね。
凛「先輩たちも、にこ先輩に強引に誘われたんだよね?」
ことり「ん、……そう、なるかなぁ」
凛「やっぱり」
苦笑いを浮かべる凛ちゃんは、凛もそうだったんだー、と照れながら話す。
凛「それでも、凛は根っこの部分ではアイドルやりたいって思ってたから。だから、今も楽しく続けられてる」
凛「だけど……先輩たちは、違うにゃ?」
ことり「…………」
そうだよ。
その一言は、言えなかった。
それを認めてしまうのは、本当に、真剣にアイドルに向き合ってるこの二人を、侮辱することになっちゃうから。
……認めなくても、それが事実なんだけどね。
花陽「……絢瀬先輩が言っていた条件も、正直なところ、気にする必要はないと思います」
凛「そうだにゃ! 生徒会長は自分勝手でわがままで、言うこと聞く必要ないにゃ!」
花陽「そこまでは言わないけど……理解できる部分はあるし」
凛「だけどあの人たち、よくわかんない理由で部員を集めてるんだよ? 占いがどうとか――」
ことり「あの、ね」
おかしな方向へ話を進める二人を呼び戻す。
ことり「二人には申し訳ないけど、私は私なりの理由で部活を続けてるの」
ことり「それこそ自分勝手でわがままだってこと、わかってる」
ことり「だけど、私にとって――私たちにとって、すごく大事なことなの」
ことり「だから……ごめん。もう少しだけ、続けさせて?」
凛「続けさせて、って言われても……」
花陽「別に私たちが許可するような話でもないですし……」
言いながら、顔を見合わせる二人。
私がこんなにもアイドル研究部に執着するのを、不思議に思っているのかもしれない。
でも、大事なんだ。
素直になれない私たちの。
自分勝手でわがままな私たちの、最後の悪あがき。
これを逃したら、きっと私たちは、ずっと後悔すると思う。
ことり「――そこまで、わかってるはずなのにね」
花陽「え?」
ことり「ううん、ごめん。ひとりごと」
そこまでわかってるはずなのに。
どうして私たちは、あと一歩を踏み出せないんだろう。
【Side:花陽】
凛「ことり先輩、諦めてくれなさそうだったね……」
花陽「うん……」
凛ちゃんと肩を落としながら歩く、夕暮れの帰り道。
とぼとぼ歩きながら、ついさっき交わしたやり取りを思い出します。
ことり『そのためには……私たちは邪魔、ってことだよね』
思わず否定しちゃったけど、だけど、その通りで。
嫌な子だなって、自分でも思います。
だけど。それでも。
今の二年生の先輩たちは、正直、あんまり好きになれません。
アイドル研究部は、どんどん良くない方向へ向かっています。
お世辞にもやる気があるとは言えない、二年生の三人。
ことり先輩は、まだ一生懸命ついて来ようとする思いが見られます。
だけど、穂乃果先輩と海未先輩は――。
凛「なんでやってるんだろうね? あの人たち」
歯に衣着せない凛ちゃんの言い方は、ちょっぴり辛口で。
でも、それには私も同意見です。
私たちにとって大事なこと。ことり先輩はそう言いました。
私には理解できない理由が、きっとあるんだと思います。
それでも。
私だって、アイドルを大事にしてるんです。
凛「にゃー、それもこれもぜーんぶ生徒会長のせいだにゃ!」
花陽「そう、なのかな?」
凛「そうだにゃ! 生徒会長があんな条件ださなければ、今頃もっともーっと楽しく部活できてたにゃ!」
花陽「…………」
突然出された生徒会長の条件と、そのための厳しいレッスン。
練習が厳しいことは、苦ではありませんでした。
自分がレベルアップしていくのが、実感できてるから。
だけど、そのやり方は、あまりにも一方的で。
ついていこうと、誰も思えないやり方でした。
凛「……なんだかね。三年生、あんまり信用できないかも」
花陽「三年生……って、にこ先輩も?」
凛「うん……」
曖昧に答えると、凛ちゃんは少しだけ言いにくそうに口をもごもごとさせて、うつむいてしまいます。
凛「さっきもちょっと言ったけどね? 三年生って、よくわかんない理由で部員集めしてるみたい」
花陽「あ……確か、占いがどうとか」
凛「ん。詳しくはわかんないんだけど、少なくとも、アイドルをやりたい人たちを集めてるってわけじゃないみたい」
花陽「それは……」
それは――二年生を見れば、わかることでした。
凛「もともとは、にこ先輩が始めたことだから、あんまり強く言えないけど……」
凛「だけど、これって、なんだか違うって、凛は思う」
花陽「…………」
にこ先輩は、「あんなこと」があっても、アイドルをやめない人でした。
だから、だからこそ、この人についていけば素敵なアイドルを目指せる。
そう、思っていたけど。
花陽「どう、なっちゃうんだろう……」
凛「――かーよちん」
花陽「え?」
凛「少し、寄ってこ?」
花陽「寄ってこ、って……神田明神? 凛ちゃん、今からトレーニングするの?」
凛「違うにゃかよちん。神田明神は別にトレーニングするためだけの場所じゃないにゃ?」
凛「アイドル研究部の今後を、神様にお願いしに行くにゃ!」
花陽「あ、そ、そうだよね」
ひょっとして。気を遣ってくれてる、のかな。
私が暗い顔しちゃってたから。
うう……反省です。
凛「あれ?」
花陽「どうしたの? 凛ちゃん」
石段をぴょんぴょん駆け上る凛ちゃんが、急に足を止めます。
凛「なにか聞こえる――」
花陽「え?」
言われて、私も耳を澄まると。
境内の方から、確かにうっすらとメロディが聞こえてきます。
だけど、この曲って――
りんぱな「『START:DASH!!』?」
私たちの曲が、なんで?
疑問の答えは、石段の先に広がっていました。
絵里「希! 今のとこちょっとずれてる!」
希「おっ、けー!」
絵里「――はぁ、はぁ。ここまでにしましょうか」
希「ふあぁー、疲れたー」
絵里「こらこら、こんなところで寝そべらないの。汚いわよ?」
希「そうは言っても……絵里ちこそほんとは寝そべりたいくらい疲れてるんじゃないん?」
希「部活でレッスンして、それから自分も練習だなんて」
絵里「それは、教える側が踊れなかったらしょうがないもの」
絵里「それに希だって、バイトがある日もこうして付き合ってくれるじゃない」
希「うちは部活に行っても見てるばっかりやしねぇ。少しは体動かしとかんと、いざ入部したらお荷物になってまうし」
絵里「私だって……強いるばかりで自分ばっかり楽していられないもの」
絵里「――あれだけの厳しい条件。与えてるんだから」
絵里「あれだけのわがまま、通そうとしてるんだから」
絵里「疲れてようとなんだろうと、私が誰より頑張らなくてどうするのよ?」
希「うへぇ……絵里ちには頭上がらんわぁ」
絵里「別に、バレエのレッスンに比べたらこれくらいどうってことないわ――」
花陽「――――」
凛「――――」
一度、凛ちゃんと目を合わせて。
何も言わず、私たちは回れ右しました。
石段を下りきり、再び家路についても、どちらも言葉が出てきません。
本気、なんだ。
みんな、それぞれ理由があっても。それぞれベクトルが違っても。
きっと、私と同じ。
みんな――本気、なんだ。
花陽「…………」
ぎゅっ、と握ったこぶしは、決意のつもり。
みんなで。
みんなでアイドル活動をしたいと、今日、初めて心から思うことができました。
だから――花陽は、そのために動き出します。
【Side:穂乃果】
いつものように練習が終わって、帰り道。今日も私はひとりぼっち。
別に海未ちゃんやことりちゃんがいじわるしてるとか、そういうことじゃなくって。ただ単純に、私が気まずくて一緒に帰れないだけ。
最近はお昼ご飯も他の友達と食べることが多くなった。海未ちゃんたちと一緒に食べても、なんだか、会話が続かないし。
なにやってるんだろう。私。
きっかけは部活動。ことりちゃんが望んで始めることになったこの放課後は、確実に私たちの間に距離を作っていった。
――ううん。そんな言い方、ずるいよね。
原因は私。ついていけないのがつらくて、つい部活をさぼっちゃったあの日から、私たちの間にはどうしようもない溝ができた。
海未ちゃんはきっと怒ってる。ことりちゃんは呆れてるかな。
怖くて聞けない。二人が、今の私をどう思ってるのか、なんて。
今の私は――ことりちゃんのために、やりたくないこと、続けてるだけだもん。
二人だけじゃない。きっと他のみんなだって、そんな中途半端な気持ちで参加してる私のこと、いらない子だって思ってる。
そうだよ。
私は、いらない子なんだ。
一週間。このぎくしゃくした部活動は、あと一週間で終わるみたいだった。
一週間後の今日、ネットにアップするための動画を撮影する。今日、生徒会長が私たちに告げたタイムリミットだった。
やっと終わる。そんな安心感が半分。
でも、一方で不安に感じる。誰よりもだめだめな私が、他のみんなとおんなじように歌って踊るには――きっと、足りない時間。
本番も失敗するのかな。転んじゃうのかな。歌詞を間違えるのかな。
にこ先輩、怒るかな。怒るよね。
でも……いっか。
だってにこ先輩は、きっと、私のことなんて見てないから。
にこ『ほら、ことりだって必死にやってるわけだし。それが理由でもいいじゃない?』
それは、全部の答えだった。
私があそこにいる理由なんて、後付けだって構わない。
「私」っていう個人に、意味は、きっとなくて。
必要なのは、「部員」っていう記号だけ。
穂乃果「…………」
なにやってるんだろう、私。
おんなじ言葉がずっと頭の中でぐるぐる回る。
ことりちゃんが日本を発つまで、もう2週間もない。
2週間も経ったら、ことりちゃんは――
穂乃果「――――やだ」
独り言は、夕暮れの道に溶けていく。
穂乃果「やだ――やだやだやだやだ、やだ!」
子供みたいに駄々をこねても、聞いてる人はいない。
ううん、違う。誰も聞いてないから、こんなこと言える。
私は一度だって、ことりちゃんに大切な一言を言えなかった。
怖い。
ことりちゃんがいなくなるのが、海未ちゃんとふたりぼっちになるのが、怖い。
だけど。
私が、それ以上に怖いのは――
ことり「穂乃果ちゃん」
海未「穂乃果」
穂乃果「っ!」
突然背中に投げかけられた言葉に、足が止まる。
ことり「よかったぁ、やっと追い付けたね」
海未「まったく、部活が終わるなり早々に姿を消すなんて、水臭いではありませんか」
穂乃果「ふたり、とも……」
なんだろう。すっごく懐かしい感じがする。
答えは簡単。二人と、こんなに「普通に」お話をするのなんて、すごく久しぶりだった。
こんなに「いつも通り」な二人は――すごく、久しぶりだった。
なんで?
なんでそんなにすっきりした顔なの?
ことり「穂乃果ちゃん」
私の疑問なんてお構いなしに、ことりちゃんは続ける。
ことり「……えっと、なにから話せばいいのか、うまくまとまらないんだけどね」
ことり「――ごめんね、穂乃果ちゃん」
穂乃果「……なにが?」
海未「私からも謝らせてください。すいませんでした」
穂乃果「だから、なんのこと? わかんないよ」
海未「身勝手だったこと、です」
穂乃果「身勝手……?」
ことり「私たち、自分のことしか考えられてなかったから」
ことり「きっとそのせいで、穂乃果ちゃんに嫌な思い、いっぱいさせたと思う」
ことり「アイドル研究部のことだって、穂乃果ちゃん、本当はやりたくなかったんだよね?」
ことり「だけど、私に付き合ってもらったせいで……」
悲しそうなことりちゃんの言葉を聞きながら、だけど私は別な人の言葉を再び思い出す。
にこ『ほら、ことりだって必死にやってるわけだし。それが理由でもいいじゃない?』
穂乃果「…………」
くらいくらい気持ちが、私の顔をうつむかせた。
海未「穂乃果」
優しい声だった。
まるでお母さんみたいに、とっても、あったかい声だった。
海未「私たちは、大切なことを見失っていました」
海未「ことりに留学の話が持ち上がって」
海未「それは、決してことりにとってマイナスな話ではありません」
海未「むしろ、ことりの将来を考えるなら承諾しないなんて考えられない話です」
海未「私は、そう信じて疑いませんでした」
海未「だけどそれはことりのための言葉なんかじゃなかったんです」
海未「全て――自分のためのものでした」
穂乃果「え?」
海未ちゃんの言葉に顔を上げる。
海未ちゃんは――泣きそうな顔だった。
ことり「私もだよ」
そう言うことりちゃんも、唇をかみしめてて。
今にも泣きだしてしまいそうな顔だった。
ことり「お母さんが、海未ちゃんが、みんなが私に期待してくれてるんだって考えたら……」
ことり「なんにも、言えなくなっちゃった」
ことり「言わなくちゃ駄目なのに」
ことり「絶対後悔するって、わかってたのに」
ことり「私は、いろんな人を理由にして―― 一歩を踏み出せなかった」
ことり「ずるいよね。人のせいばっかりにして、私は自分の気持ちを言えなかった」
ことり「だから……もう、そういうの、終わりにしなきゃいけないんだと思う」
ことり「穂乃果ちゃん。私は、もうすぐ海外へ行くことになります」
ことり「それは、私にとっては将来を決める大切なことです」
ことり「だけどもしその話を受けてしまったら、私は高校を卒業するまで帰ってこれません」
ことり「穂乃果ちゃんと、海未ちゃんと、離れ離れになってしまいます」
ことり「それを踏まえたうえで。穂乃果ちゃんにも聞きたいです」
穂乃果「……やめて」
ことりちゃんは、まっすぐ私のことを見つめている。海未ちゃんも真剣な目で私を見ていた。
怖い。
ことりちゃんが次に言うであろう言葉がわかってしまったから。
それは、私が一番恐れていた言葉だから。
だから、だから――
ことり「穂乃果ちゃんは――私に、どうしてほしい?」
穂乃果「やめて!」
穂乃果「やめて! やめてよ!」
穂乃果「そんなの、わかってるくせに! 答えなんて聞かなくてもわかってるくせに!」
穂乃果「言えないよ! 答えられないよ!」
穂乃果「ことりちゃんの気持ちも、海未ちゃんの気持ちも、否定したくない!」
穂乃果「ことりちゃんが心置きなく旅立てるように、海未ちゃんが頑張ってることも!」
穂乃果「そんな海未ちゃんの気持ちに応えようとしてことりちゃんが決心しようとしてることも!」
穂乃果「私がわがまま言ったら――全部、否定しちゃう!」
穂乃果「穂乃果が子供だからそんな答えになるって、わかってるよ! だから言えなかった! 言いたくなかった!」
穂乃果「――そうだよ! 離れ離れになんてなりたくない! ずっと三人でいたい!」
穂乃果「だけど、だけど!」
気持ちが熱い雫になって、ぽろぽろとこぼれる。
もう止められなかった。
穂乃果のほんとうの気持ち。
穂乃果が、ほんとうに怖かったこと。
穂乃果「穂乃果のわがままのせいで二人を悲しませるのは、もっと嫌なの!」
言えなかった、大切な一言。
それはきっと、二人の気持ちを無駄にする。
だから穂乃果が我慢すればいいんだって、そう思ってた。
そうすれば、二人の頑張りは無駄にならないから。
二人の気持ちは、否定しないから。
穂乃果が、我慢するだけだから――
海未「だから」
それでも海未ちゃんは。
穂乃果の気持ちを聞いた海未ちゃんは。
まっすぐに、私を見つめたままだった。
海未「だから、そう思わせてしまったことが――私たちの罪なのです」
穂乃果「罪……?」
どうしてそんな話になるんだろう。
ただ穂乃果が、わがまま言ってるだけなのに。
ことり「私たちの強がりのせいで穂乃果ちゃんが苦しんでたんなら――それは、私たちの罪だよ」
強がり?
海未「私たちも教えられたんです。自分たちがどれだけ愚かな意地を張っていたのか」
ことり「だからもっと素直になろうって。素直にならなきゃだめだって。気づかされたの」
穂乃果「教えてもらったって――誰に?」
そう訊くと、二人は一度目を見合わせて。
再び穂乃果に向けた顔は、やっぱりなにかを振り切った表情だった。
海未・ことり「大切な後輩たちに」
――――――――
――――――
――――
【Side:ことり】
花陽「あの……何度も何度も呼び出して、すみません」
ことり「ううん、気にしないで」
昨日に引き続き部活後に私を呼び出した花陽ちゃんは、本当に申し訳なさそうに私に言った。
その謝罪に対する私の言葉に嘘はない。
むしろ謝るのは私の方。私たちの方。
本気でアイドルに向き合う彼女たちを侮辱してる――私たちの方。
ことり「だけど……答えは変わらないよ?」
それでも、譲れない気持ちがあるのも事実だった。
このつながりが途絶えてしまったら、私たちはもう。
残りの時間を無為にすることしかできないから。
花陽「いいんです」
だけど、私の予想とは裏腹に。
花陽ちゃんは強いまなざしで私を見つめていた。
花陽「教えてほしいんです。二年生のみなさんがなんで、そんなにこの部活にこだわるのか」
ことり「――――」
そっち、か。
うん。当然だよね、気になるの。
言ってもいいかな、って一瞬戸惑ったけど、だけどにこ先輩にはもうした話だし。
もうすぐ嫌でもわかる話だし。
それになにより。
花陽「――――」
真剣な目の後輩の気持ちに、嘘はつきたくなかったから。
【Side:海未】
凛「ことり先輩が留学!?」
海未「はい」
部活が終わり、放課後。私を呼び出した後輩は、私たちが抱える真実を聞くと、目を丸くして驚きました。
ことりの許可も得ずに話しても良いものかと悩みましたが、いずれは知るところになる話です。
それに同じタイミングでことりももう一人の後輩に連れていかれたところから察するに、おそらく同じ話になっていることでしょう。
そしてなによりも。
真摯にアイドル活動に向かう彼女には、話さなければ失礼に当たると思いましたから。
海未「ことりがこの部活に執着しているのは、間違いなくこの話が関係していると思います」
海未「といっても、彼女がなにを考えているのかなんてわかりようもないのですが……」
凛「そんなのわかるにゃ!」
海未「え?」
まっすぐな瞳で断言する後輩に、つい間の抜けた返事をしてしまいます。
凛「ことり先輩、ほんとは行きたくないんだにゃ!」
凛「だってことり先輩、一生懸命だもん! 二年生の先輩たちは、正直ちょっと本気じゃないかなって思うところ、あるけど……」
凛「だけどことり先輩、一生懸命だにゃ! 衣装を作るためだけに入ってるなんて思えない!」
凛「本当は行きたくなくて! もっともっとこの場所で楽しいことをしたくて!」
凛「ちょっとでもすがりたくて!」
凛「ちょっとでもしがみつきたくて!」
凛「だから、その可能性をつなごうとしてるんでしょ!」
凛「海未先輩や穂乃果先輩と一緒にいるために!」
海未「それ、は――」
後輩の懸命な叫びに、言葉は返せませんでした。
だけど。
凛「海未先輩だって、本当はことり先輩に行ってほしくなんて――」
海未「違います」
この言葉だけは、濁すことはできません。
凛「――――っ」
その言葉は、私が思った以上に目の前の後輩に突き刺さったようでした。
海未「……すみません。少しきつい言い方になってしまったかもしれません」
海未「ですが、そんなことありません。私が、ことりに行ってほしくないなどと」
海未「そんな考えは、意を決したことりを侮辱することになります」
海未「決めたのです。笑顔でことりを送り出そうと」
海未「今さらそれを覆すことなど――」
凛「ほんとに?」
海未「――――」
なぜでしょう。
強い言葉をぶつけられたはずの彼女は。
先ほどよりも、強い目をしていました。
凛「先輩、似てるにゃ」
海未「……誰にですか」
凛「凛に」
そう言うと彼女は、えへへーと照れたようにはにかんで。
凛「さっきの冷たい言葉も、なにかを我慢してる顔も――」
【Side:ことり】
花陽「先輩は――行きたいんですか?」
ことり「え?」
花陽「留学、したいんですか?」
ことり「……すっごく魅力的なお話だなって、思うよ」
ことり「お洋服を作るのって昔からの夢だったから」
ことり「今回のお話は、私にとって夢をかなえる第一歩ってことになるかな」
ことり「だから、」
だから――なに?
花陽「――――」
自分の言葉が上滑りしているのが、花陽ちゃんの表情からうかがえた。
わかってる。わかってるよ。
花陽ちゃんが聞いてるのが、そういうことじゃないってことくらい。
ことり「――もう、私だけの問題じゃないの」
花陽「え?」
これは、本当に言うのをためらう言葉。
誰にも伝えたことのない、真実のカケラ。
それをなんで今、なんの関係もないただの部活の後輩に喋ろうとしてるんだろう、私。
――なんで、って。わかってるくせにね。
この子が、この子たちが、私たちを変えてくれるんじゃないかって。
私たちを導いてくれるんじゃないかって。
そんな淡い希望に、すがりついているからなんて、さ。
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