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元スレにこ「きっと青春が聞こえる」
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花陽「だから、煽ったんです。試すために」
花陽「アイドル研究部に、アイドル活動に、真剣に取り組めるかどうか」
花陽「あの六人が――ううん、絵里先輩たちも含めて、八人が」
花陽「アイドル研究部としてやっていけるかどうか」
花陽「絵里先輩のあの態度に怒ってばらばらになるならそれまで」
花陽「それでもなお、まとまりのあるグループを作れるかどうか。絵里先輩は、試したかったんじゃないですか?」
花陽「それならあの条件も納得できます」
花陽「ランキング100位なんて、絵里先輩にはどうでもよかった」
花陽「条件の本当の意味は――「100位に入れるくらいのまとまりを作れるか」、だったんですから」
絵里「――――」
絵里「ハラショー」
花陽「え?」
絵里「素晴らしいわ。まるで名探偵ね」
凛「それじゃあやっぱり!」
絵里「買いかぶりすぎなところもあるけれどね。おおむね当たりよ」
花陽「買いかぶり?」
絵里「……あの時の態度。あれは、そこまで深く考えていたわけではないわ」
絵里「ただ――ただ、腹が立ってしまっていただけ」
花陽「にこ先輩に、ですよね?」
絵里「……そこまでわかるものなの?」
花陽「私たちも、おなじですから」
凛「今のにこ先輩、ちょっぴり自分勝手だにゃ」
花陽「……二年生を勧誘したのは、正直、今でも納得できていません」
花陽「なんだかんだで、穂乃果先輩と海未先輩はやってもいいかなって気持ちに傾いていましたから、まだわかります」
花陽「だけどことり先輩に関しては、わけがわかりません」
花陽「衣装作り担当として勧誘したのなら、理解できました」
花陽「だけどにこ先輩は、アイドルをやってもらうために勧誘したって言ってました」
花陽「まったくやる気のない人を、すぐに辞めるかもしれないリスクを背負ってまで勧誘する理由は――わかりません」
絵里「それに関しては本人に確認するしかないけれどね」
絵里「それで? それがどう最初の話につながるのかしら?」
花陽「簡単です」
すぅ、と一度息を吸って。
花陽「絵里先輩。私たち六人は、あなたの望むレベルまでの一生懸命さを作ることができました」
花陽「二年生も、それは同じです」
花陽「絵里先輩が求めていた「本当の条件」は、達成しました」
花陽「だから――アイドル研究部に、入ってください」
絵里「……なぜ?」
花陽「え?」
絵里「なぜ、私たちにそこまでこだわるの?」
絵里「矢澤さんを自分勝手というなら、私たちだってよっぽど自分勝手よ」
絵里「それこそあなたたちにメリットがない」
凛「簡単だにゃ」
さっきの私の言葉をマネするみたいに、凛ちゃんが言います。
凛「先輩たちも、アイドル研究部のために一生懸命だからだにゃ」
凛「先輩たちと一緒に―― 一生懸命な人たちと一緒に部活をやりたいと思うって、おかしなことじゃないと思います」
凛「だから――アイドル研究部に入ってください」
地面と平行になるくらい、凛ちゃんが頭を下げます。
それは、絵里先輩たちと初対面の時の態度からは考えられない姿でした。
絵里「――そこまで言われたら、断りづらいじゃない」
凛「それじゃあ!」
ぱっと顔を輝かせて、凛ちゃんが頭を上げます。
私も、その言葉から良い返事を期待しました。
だけど。
絵里「でも……駄目よ。条件は条件」
花陽「え……」
凛「そんな……」
希「ちょっと絵里ち」
それまで黙って成り行きを見ていた希先輩が口を開きます。
希「そこまで頑固なる必要あるん? 絵里ちとしても願ってもない申し出やん」
絵里「それとこれとは話が別だわ」
絵里「ここでその話を飲んでしまったら、筋が通らないじゃない」
絵里「それこそあそこまで仕上げてきた彼女たちを侮辱する行為だわ」
絵里「私があなたたちの……矢澤さんのお願いをきくことは、できないわ」
思ったよりも、絵里先輩は頑なな人でした。
せっかく、せっかく真剣にアイドルに向き合える仲間が増えると思ったのに――
絵里「だから、ね」
花陽「え?」
自分でも気づかぬ間にうつむかせていた顔を上げると。
そこには、ほんのちょっぴり照れた顔の絵里先輩いました。
絵里「だから――こうさせてもらうわ」
* * * * *
絵里「私たちをアイドル研究部に入れてください」
希「お願いします」
にこ「…………」
絶句。余りにも意味不明な展開に言葉が出てこなかった。
約束の時間を少し過ぎたころ、なぜか絵里たちと一緒に花陽と凛もついてきて。
パソコンでサイトにつないで結果を確認したら――惨敗。
100位にはほど遠い数字が、私たちにつけられていた。
正直、わかってた部分はあるけど。それでもショックなことには変わりなくて。
絵里たちが入部しないって現実がじんわり体に染み渡ろうとしていたところで――その台詞。
にこ「あの、ちょっとなに言ってるか全然わかんないんだけど……」
絵里「たしかにあなたたちは私の出した条件をクリアできなかった」
絵里「だから、私たちが矢澤さんのお願いをきくことはできない」
にこ「うん、そうよね。私の認識、間違ってなかったわよね」
にこ「だったらなんで――」
絵里「だから、よ」
絵里「だから……今度は、私たちからお願い」
絵里「矢澤さんのお願いとか、私の出した条件とか、そんな話はもう一切関係ない」
絵里「自分勝手なのはわかってる。今までの態度も全部謝るわ」
絵里「だから――私と希を、アイドル研究部に入れてください」
にこ「…………」
いや、いやいやいやいや。
たしかに最初にお願いしたのは私だし、条件をクリアできなかったのに二人が入部してくれるのは願ってもない話。
でも、どこか私の心にはもやもやしたものが残る。
そう――最近ずっと感じている、置いてけぼり感。
私の知らないところで、私にかかわる致命的なものがどんどん進められていく感覚。
それが、また、私に襲い掛かった。
海未「それではこれからも生徒会長のレッスンを受けられるということですか?」
ことり「私は大歓迎かなぁ。レッスンはたしかにちょっと大変だけど、でも自分が成長してるのが実感できるし」
穂乃果「あ、あははー……私はちょっとどころじゃなかったけどなぁ……」
海未「穂乃果が一番必要とすべきでしょう? まったく情けない」
穂乃果「だってぇ……」
ちょっとちょっと、あんたたちも待ちなさいよ。
まだ私、返事してないじゃない。
なんでもう二人が入部するかのように話を進めてるわけ?
花陽「にこ先輩」
にこ「え?」
戸惑う私に、花陽が正面から向き合う。
花陽「断る理由は、ないと思います」
花陽「絵里先輩たちが入れば、この部はもっともっとレベルアップできます」
花陽「だから、この話は――」
真剣に語る花陽の言葉が、右から左へと流れていく。
『絵里先輩』
あんたたち、いつの間にそんな距離になったの?
にこ「……うん、うん」
にこ「いいんじゃない?」
気づけば私の口からは、そんな言葉が漏れていた。
凛「……! やったにゃ!」
ねえ、凛。
あんた絵里のこと毛嫌いしてたんじゃなかったっけ?
なんでそんな大喜びしてるわけ?
絵里「それじゃあ改めて」
絵里「三年生の絢瀬絵里です。今までは偉そうにしてごめんなさい」
絵里「だけどこれからは対等な部員。一緒に高め合っていきましょう」
希「うちからも言わせてもらおうかな?」
希「同じく三年生の東條希」
希「今まではあんまり関わることもなかったけど、これからはよろしくね」
穂乃果・凛「よろしくお願いしまーす!」
二人の元気な声を口火に、絵里たちはここに迎え入れられた。
ははは、やったじゃない。
ついに真姫ちゃん以外の八人が揃ったわ。
私の望んだ通りじゃない。
私の計画通りじゃない。
あはは。
あたま、いたいな。
ここまで
エリチカ編終了
ちょっとかよちんが説明キャラになったのは力不足でした
続きはまた近いうち
エリチカ編終了
ちょっとかよちんが説明キャラになったのは力不足でした
続きはまた近いうち
久しぶりにリアタイで読めた
いつもドキドキしながら読ませてもらってます
いつもドキドキしながら読ませてもらってます
花陽は本編でも一生懸命だし
こんな環境だったらこうなるかもしれない
周りに置いてかれるにこがいい感じに辛い乙
こんな環境だったらこうなるかもしれない
周りに置いてかれるにこがいい感じに辛い乙
【Side:真姫】
学校内でアイドル研究部の噂を耳にすることが増えた。
「アイドル研究部、最近頑張ってるらしいよ?」
「えっ、それって例のあの子の部活でしょ?」
「それがなんだか最近活動再開したらしくて」
「あー、それ私も知ってる。なんかおっきな大会に出るためのランキングに登録したとか」
「それそれ。踊ってる動画もあるけど結構いい感じだったよ」
音楽室へ向かう途中。前を歩く先輩たちの会話。
3年生の彼女らからしてみれば、アイドル研究部は触れちゃいけないタブーのようなもの。
――だったはずなのに、それが今、動き始めてる。
「うちの部活の後輩の話だと、興味持ち始めた子もいるみたい」
「へー。だけど、部長ってあの子のままでしょ?」
「またひとりぼっちにならなきゃいいけどねぇ」
「あはは、言えてる。なんかネットでは既に悪口書かれてるらしいし」
「きゃー、前途たなーん」
他人事のように茶化す彼女らの背中に続く。
いや、たしかに他人事なんだろうけど。だけどちょっと悔しいカンジ。
真姫「…………」
……私にとっても、他人事じゃないの?
たしかに曲を提供したのは私。
だけど、別に入部してるわけじゃない。
でも、その部長とはしょっちゅう会ってて――
真姫「――もう、わけわかんない」
私にとってアイドル研究部ってなに?
私にとって、「矢澤にこ」は――
真姫「……で? なんでまたいるわけ?」
にこ「…………」
もやもやしながら訪れた音楽室には、すでに先客がいた。
一番前の席でしかめっ面してる二個上の先輩。
アイドル研究部部長。
自称未来人。
矢澤にこ。
真姫「アイドル研究部、忙しいんじゃないの? あちこちで話聞くわよ?」
にこ「…………」
返事はない。
最近のこの人はいつもそう。
部活をほっぽりだして私のところに来たかと思えば、つまんなそうな顔して私の曲を聴いていく。
正直暇人? って思わないでもないけど、でも、そうじゃないことくらいわかる。
にこ「…………はぁ」
彼女が何かを抱え込んでることくらい。
真姫「ま、別にいいけど」
気にしてない風を装ってグランドピアノの前に腰掛ける。
鍵盤に置いた指がちょっとだけ震えてるの。ばれてないわよね?
間違っても気づかれちゃいけない。気づかれたくない。
何かに迷ってる彼女が。
何かに惑ってる彼女が。
唯一、私を頼ってくれてることが、嬉しいだなんて。
真姫「――――」
きっと、それが答え。
友達を作ることを頑なに拒んだ私が、一人になることを望んだ私が、ついに崩した壁。
一緒にいてもいいって。
一緒に何かをしてもいいって。
そう、思える存在。
きっかけはこの人がつけてくれる歌詞。私の曲に、ぴったりの歌を乗せてくれる人。
だけど、それが理由として小さくなるのに時間はかからなかった。
時々でも構わない。
私のために足を運んでくれるのが。私のために時間を費やしてくれるのが。
すごく、嬉しかった。
私のメロディに、彼女が歌を乗せる。
ただそれだけの時間が、ずっと、ずっと、続けばいいと思った。
短いけどここまで
今更だけどアニメ見返してたらリボンの色レベルでわけわからん勘違いしてた
シナリオ上関係はないけどちょこちょこ違和感あったらごめんなさい
次はまた近いうち
今更だけどアニメ見返してたらリボンの色レベルでわけわからん勘違いしてた
シナリオ上関係はないけどちょこちょこ違和感あったらごめんなさい
次はまた近いうち
この世界にきて最大の違和感を、ここ数日で嫌というほどに味わってる気がする。
μ'sのメンバーも八人まで揃い、残すは真姫ちゃん一人となった。
形としてはまだでも、雰囲気としてはもうかつてのμ'sと同じようなものになってたっておかしくない。
――はずなのに。
穂乃果「それでね、名前はなんかこう、春っぽい感じがいいと思うんだよね!」
ことり「わぁ、私も賛成! 私たちにぴったりだと思うなぁ」
穂乃果「だよね、だよね! どんなのがいいかなぁ……」
ことり「ちょっとおしゃれな感じも出したいよね……」
さっきから聞こえるこの会話。
私が部活に顔を出してる時は――ぶっちゃけ、最近は真姫ちゃんのところに行くことの方が多いんだけど――嫌というほど耳に入ってくる話題。
それがなにより――私の心をざらつかせる。
あんたたち、一体なんの話してるのよ。
海未「ほら、二人とも。そろそろ練習を始めますよ」
ことり「あ、はーい」
穂乃果「えぇー、もうちょっとでいい名前が浮かびそうだったのにぃ……」
海未「つべこべ言わないでください。絵里だってさっきからあなたたちの会話をどこで遮ろうか戸惑っているのですよ」
絵里「ちょ、ちょっと海未、私のことは別にいいから……」
海未「いえ、よくありません。こういったことはきっちり区切りをつけるべきです」
海未「にこ先輩だって、今日は作曲者の方のところでなくこちらへ顔を出してくれているのですから――」
うん、まあ、そういう建前を使わせてもらってるんだけど。
だから、こっちに顔を出さないのは、全面的に私の責任なんだけど。
絵里。にこ先輩。
距離感が――つらい。
にこ(あー、いづらい……)
開いた溝が、なおのこと私の居場所を奪い。
結果居心地のいい場所――つまり、放課後の音楽室に、足を運びたくなる。
それが拍車をかけてることなんてわかりきってるんだけどさ。
でも、今のこの部活は……なんだかものすごく、気味が悪い。
自分の作った料理を食べてるはずなのに、入れた覚えのない調味料が混ざってるような、そんな感覚。
居心地が――悪い。
海未「ところで花陽と凛はまだなのでしょうか。いつもなら真っ先にウォーミングアップを始めているのですが」
絵里「ああ、その二人なら今日は遅れるそうよ。さっきメールをもらったわ」
なんで部長の私に送らないの? なんて疑問は、誰も持たない。
そりゃそうよね。来るか来ないかわからない人間に送ったってしょうがないわよね。
海未「ああ、そうです。フランス語なんてどうでしょう」
穂乃果「?」
海未「先ほどのあなたたちの話です。おしゃれな名前をつけたいのでしょう?」
海未「ならば春をフランス語にでも訳してみてはと思ったのです」
ことり「フランス語で春って……?」
希「あ、うち知ってるよ。たしか――」
プランタン
希「printemps、やったっけ」
穂乃果「ぷらんたん……うん、いい感じ!」
ことり「とってもおしゃれな響きだねぇ」
穂乃果「ほんと、私たちのユニットにはぴったりな名前だね!」
ユニット。
たまに顔を出せば、いつも耳にする話題はそれ。
特に乗り気なのは穂乃果やことりみたいだけど、他の子たちもまんざらではない雰囲気を醸し出してる。
いやいやいや、冗談じゃないわ。
これからμ'sとしてやっていこうって時に、ユニット?
九人で――まだ、八人だけど――練習する時間は、まだまだ削れる段階じゃないの。
それを二、三人のユニットに割くだなんて、とんでもないわ。
にこ「…………」
だけど、こうして一人離れて他の子たちを眺めてると、よくわかる。
この集まりは、μ'sとは違う。
真姫ちゃんがいないこととか、個人個人の距離感が違うとか、細かいところもそうなんだけど、それだけじゃなくて。
決定的な部分で、雰囲気が違う。
ここにいる八人は、決して「八人の集まり」になってない。
穂乃果が作ったあの九人にあったまとまりが、ここにはない。
もちろんそれは仲が悪いとかそういうことではないし、関係にぎこちなさがあるってわけでもない。
だけどそう――かつて感じた一体感は、少なくともまだ、ここにはない。
……まあ、それを率先して乱してるのが自分だっていうのは、反省しなきゃだけど。
でも。
にこ(仮に真姫ちゃんが入部したとして――私たちは、あのμ'sになれるの?)
頭の隅にべったりとこびりつく不安は、何度かぶりを振っても離れてくれることはなくて。
言いようも知れない恐怖が、私の足をがっしりとつかんでいるのを感じた。
にこ(ええい、やめやめ!)
そんなことを考えてたってなにも始まらない。
今の私が考えるべきは、あの頑固な赤毛ちゃんをいかにしてここに引っ張ってくるかで――
と、私が考えを切り替えようとしたところで、ばーんと屋上の扉が開かれる。
花陽「た、大変です!」
飛び込んできたのは、なんだか懐かしさを感じる花陽の叫び声。続いてその本人と、同様に息を切らせた凛が駆けてくる。
絵里「ちょ、ちょっとどうしたの花陽? 落ち着いて?」
凛「落ち着いてなんていられないにゃ! ビッグニュースだにゃ!」
穂乃果「ニュース?」
希「なにがあったん?」
ただならぬ様子の二人に他の部員も集まってくる。さすがにおいてけぼりを食うわけにもいかなく、私も続いて彼女らに近寄る。
六人の視線を一手に浴びる花陽が、果たして口にした言葉は。
花陽「にゅ……入部希望者です!」
にこ「――――!」
断言できる。
その言葉に、一番動揺したのは、私だって。
海未「入部希望者とは……花陽たちのクラスメイトが、ということですか?」
花陽「は、はい」
凛「凛たちね、放課後になってすぐに声かけられたんだ。アイドル研究部に興味があるんだけど、って」
にこ「あ、あ……」
充実感? 満足感? 達成感?
今の気持ちをどう表現していいのかわからない。
だけど、それは間違いなく私の心を喜びに震わせていた。
ついに。
ついにあの子が、折れてくれた――!
絵里「それで、その子は来ていないの?」
花陽「はい、今日は用事があるから話だけ、って……」
凛「だけど興味津々だったし、絶対入ってくれるよ!」
にこ「その、その子の名前って、」
はやる気持ちを抑えきれず、つい漏れ出た私の質問は。
だけど、続いた凛の言葉にかき消される。
にこ「…………は?」
ことり「すごい、二人も入ってくれるの?」
穂乃果「おおー、一気ににぎやかさが増しそうだね!」
海未「にぎやかさは穂乃果だけで十分ですが……それでも人数は多いに越したことはありませんしね」
にこ「いや、ちょ、」
絵里「そうね、人数が多ければその分ユニットの組み合わせだって幅が広がるだろうし、悪いことじゃないわ」
希「――――」
にこ「ま、待って……」
沸き立つ場の空気に、混ざれない。
みんなが何を喜んでいるのか、私にはまったく理解できなかった。
二人? え?
真姫ちゃんじゃ――ないの?
私の疑問に答えるかのように、花陽が言葉を続ける。
花陽「小林さんと鈴木さんっていうんですけど、二人ともこの間の動画を見て興味を持ってくれたみたいで」
穂乃果「この間のって、『START:DASH!!』の?」
凛「うん。あれで興味を持ってくれた人、結構いるみたいなんだ」
ことり「そっかぁ……やっぱり意味があったんだね」
海未「ええ……なんだか嬉しくなってしまいますね」
絵里「よし、それじゃあその子たちをしっかり迎え入れるためにも、今日の練習を――」
にこ「――――め」
絵里「え?」
そんなの。
絶対に。
にこ「――――だめ!」
穂乃果「にこ、先輩?」
にこ「だめ、そんなのだめ、絶対に! 認められない!」
絵里「ちょ、ちょっとにこ? どうしたのよ急に」
絵里「部員が増えるんだったら願ってもない話じゃないの?」
にこ「願ってなんかない! 願ってなんか……」
目を白黒とさせながら、部員たちが私を見つめる。
構わない。どれだけ奇異に映ったって、構いやしない。
これは、これだけは譲っちゃ――
希「九人じゃ、なくなるから?」
にこ「――――っ」
言葉を継ごうとするより早く、息をのまされる。
希「にこっちが入って欲しいって思ってる人じゃないから、だからだめなん?」
にこ「それ、は……」
ドンピシャの答えを突き付けられ、口ごもる。
その通りよ、希。
私の、私たちのμ'sを。
見知らぬ誰かに、侵されたくないの。
絵里「……希。占いのことを言ってるのだったら、私は八人だと聞いていたのだけれど?」
希「うん、うちの占いではね。だけど、にこっちにとっての『それ』は、どうも九人みたいなんや」
希「せやんな? にこっち」
にこ「…………」
見透かすような希の言葉に、返すものが見つからず。
だというのに、希にとってそれは十分返答にあたるものだったみたいで。
希「もともとここにいる八人はね? 意味のある八人だったんや」
花陽「意味のある?」
希「うん。うちの占いでな? 八つの光がひとつに集まって、おっきなひとつの光になる、いうんがでたんよ」
希「それが――うちと絵里ちの占いの結果」
希「それが、この八人……なんだと、思ってた」
海未「……思ってた、ということは、実際は違ったのですか?」
絵里「待って希、そもそもそれは『私と希の占いの結果』なの?」
絵里「にこの占いの結果じゃ、ないの?」
希「…………」
意味ありげな沈黙。
ねえ、希。なんで?
なんでそんな悲しそうな目で、私を見てるの?
希「にこっちの占いの結果は――白紙だった」
にこ「――――は?」
希「うちが占ったその『八つの光』に、にこっちは――入ってなかったんよ」
希「だからきっと、あと一人、たぶんにこっちの考えてる九人目が、私たちにとっての八人目」
希「にこっちは、最初から――入って、なかった」
にこ「――――」
もう、よくわかんない。
この子は、なにを言ってるの?
私が死ぬ物狂いで集めた、このメンバーに。
私が、入って、ない?
希「ねえにこっち。うち、教えてほしいんよ」
希「教えてほしいから、わざわざこんなつらいこと突き付けることにしたの」
希「にこっちの大事な部分に触れたいから、知りたいから、嘘はつきたくなかった」
希「ごまかしたくなかったの」
希「にこっちにとってその九人って――なんなん?」
にこ「きゅうにん、きゅうにん、は……」
そんな、そんなの、言わなくてもわかるでしょ?
言わなくても、わかってよ。
だってそれは、もう形ができ始めてる。生まれ始めてる。
スタートダッシュを切ったじゃない。
まだ、六人っていう未完成な形だったけど。
だけど、その輪郭は、見え始めてたじゃない。
私の一言は、透明な空気の中に紛れて、消えた。
誰も、なにも答えない。
どうして?
六人で踊ったじゃない。歌ったじゃない。
練習なら、八人で。私たちのパフォーマンスを、μ'sパフォーマンスを、見せたじゃない。
なのに、なんでそんな――
穂乃果「みゅーず、って……なに? せっけん?」
にこ「――――」
それは、ひょっとしたら場を和ませようとした穂乃果なりの気の利かせ方だったのかもしれない。
だけど、今の私にとって。
それは、決定打。
にこ「うそ、だって……」
よろよろと、おぼつかない足取りで、屋上の隅に放られたかばんに近寄る。
その中からスマホを取り出し、インターネットブラウザを起動。
ラブライブ公式を、検索。
ここには、あるよね?
100位には入らなかったけど、だけど。
μ'sの名前が、ここには――
にこ「――――あ、」
だけど、私たちの順位を示す数字の、その隣には。
「音ノ木坂学院アイドル研究部」
なんの温かみもない、無機質な文字の並び。
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