私的良スレ書庫
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元スレにこ「きっと青春が聞こえる」
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にこ「は、はは……」
絵里「に、こ?」
にこ「あは、あはは、あっははははははは!」
海未「ど、どうしたのですか? 落ち着いてください!」
そっかそっか、わかった。わかっちゃった。
「これ」、μ'sじゃないんだ。
そっかそっか、納得。
そうよね、そうに決まってるわよね。
じゃなきゃ、こんなことになってるはず、ないもんね。
あはは。
はは。
は……
にこ「……なら」
希「にこっち?」
にこ「それなら!」
希「っ!」
それなら。
それならそれならそれなら!
にこ「それなら――」
私の中のきれいな心は、言っちゃダメって言ってる。
私の中のきたない心は、言っちゃえって言ってる。
それはどっちもおんなじくらい大きな気持ちで。
だから、私は。
自分の意志で、選んだ。
「――――」
誰かが息をのんだ。
みんな、だったのかもしれない。
決定的に走ったヒビに、とどめを刺したのは。
花陽「――わかりました」
意外な人物。
花陽「……私、にこ先輩は、本当にアイドルが好きなんだなって思ってました」
花陽「だからこそ、ひとりぼっちになっても、アイドル活動を続けられたんだなって」
花陽「だけど……違ったみたいですね。勘違いでした。ごめんなさい」
花陽「絵里先輩。今日からアイドル研究部の部長、お願いします」
花陽「ちゃんと、一生懸命になれる人に、引っ張ってもらいたいですから」
花陽「もう――こんな思い、したくないっ!」
絵里「花陽!」
湿った叫び声と共に、花陽は屋上を飛び出す。
それが、皮切り。
海未「……失礼します」
穂乃果「え、っと……私も」
ことり「あ、待って……」
ひとり、またひとりと。
絵里「……少し、頭冷やしなさい」
希「…………ごめん、にこっち」
屋上から去って行き。
そして、私は。
にこ「あ――あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!」
また、ひとりぼっちになった。
ここまで
ずいぶん間が空きましたごめんなさい
続きはできれば近いうち
ずいぶん間が空きましたごめんなさい
続きはできれば近いうち
乙です。
バッドエンドになりそうで怖いのですが……そんなことはないと信じてこれからも続きを楽しみにしています。
バッドエンドになりそうで怖いのですが……そんなことはないと信じてこれからも続きを楽しみにしています。
それは、真水のようなものだった。
ぎゅっと掴んで、もう離さないと心に決めながら、それとは裏腹に指の隙間を零れ落ちていく。
どれだけ力を込めても。どれだけ願いを込めても。
それをあざ笑うかのように、手の中にはなにも残らない。
私にとって、μ'sとはそういうものだった。
夕暮れに沈む教室で、ひとり窓の外を眺める。
ガラス越しに聞こえる運動部の掛け声がいやに遠くて、どこか現実味を失わせた。
まるで。
この世界に、ひとりぼっちであるかのように。
にこ(……あほくさ)
センチになっているだけだ。すべてが徒労に終わり、すべてを失って、少しだけ疲れが顔をのぞかせて。
だから、こんなに虚しさが胸を占めている。
望みすぎてしまったのだろう。言い聞かせるように繰り返す。私は望みすぎてしまった。
私たち3年生の卒業が間近に迫って、μ'sは終わりにしようって決めて。
だけどアメリカでのライブが世間に与えた影響は、大きくて。
一躍スターになって、そう――望みすぎてしまった。
ああ。
もっと、続けたい。
だからある意味、この世界は好都合だったのかもしれない。
私にとってμ'sをやり直すチャンス。
あの輝いていた一年間を取り戻すチャンス。
訳が分からないなりにあがき続けられたのは、そんな希望があったからかもしれない。
――じゃあ、今は?
にこ「――――」
μ'sを再び築き上げる道は、絶たれた。
それどころか、私がこの世界でスクールアイドルとして活動できる可能性は、ほぼゼロ。
なら。
私がこの世界にいる意味って、なに?
思えばμ'sの再結成はひとつの現実逃避だった。
リアリティのない現象に遭遇して、絶望しかけた私を、すんでのところで花陽がすくい上げてくれた。
私の頑張る理由が、生まれた。
じゃあ、今の私が頑張る理由は?
この世界にいる理由は?
そもそも。現実逃避をやめた私は考える。そもそも、この世界はなんなのだろう。
本当に過去に戻ってきた?
だとしたら廃校の話がなくなっている理由がわからない。
少なくとも私の周りに関してのみ言えば、元の世界とは別のシナリオで進んでいる。
ただ単純に過去に戻っただけとは考えにくかった。
じゃあ、パラレルワールド?
たとえそうだとしても、今、このタイミングで私がこの世界に迷い込んだ理由は?
そうだ。考えてみれば見るほど、私という存在は異質。
私だけが元の世界の存在を知覚している。
私だけが、この世界で非常にイレギュラーな存在なんだ。
にこ「なんで……私ばっかり」
みんなが幸せそうにしているなかで、私一人がつらい思いをして。
理不尽じゃない、そんなの。
一生懸命頑張ったじゃない。何の説明もなくこんな世界に連れてこられて、それでもμ'sを作るためにあがいて。
なのになんなのよ。みんなみんな、私の邪魔ばっかり。
私は、私はただ……
にこ「――アイドルになりたかった、だけなのに」
不意にこぼれた、その言葉は。
にこ「――え?」
声と、音が、同時。
どちらに反応すべきか。迷うほどの時間もなく、声の主は現れた。
「こんにちは」
にこ「あんた……!」
元アイドル研究部の、あの子。
「声をかけただけじゃない、そんな怖い顔しないでよ」
にこ「声をかけただけって……いや、そんなことどうでもいいわ」
にこ「あんたも聞いたでしょ? 今の音」
大きな音だった。何かにひびが入るような、決定的な音。
いつの間に現れたのかわからないけど、私に聞こえて彼女に聞こえていないとは考えにくかった。
「そうね」
返ってきた言葉はそっけない。
興味がないような……あるいは、別に不思議ともなんとも思っていないような。
にこ「……なんの音か、わかるの?」
「ええ」
答えはひどくシンプルだった。
そのかわりに。
「あなたには――なんの音に聞こえたの?」
続く言葉は、私を少しだけ悩ませた。
にこ「……なにかが、割れるような音」
考えた末に出た答えは、それだった。
いや。もっと正確な言葉を、私は思い浮かべたはず。
「ひびの入った音」
にこ「――――」
考えを読んだかのように、彼女は私の言葉を続けた。
「そうね、その通りよ。今のはひびが入った音」
「ひな鳥がその内側から卵をわるために」
「外の世界へ歩みだすために」
「自分を守る殻を?ぐために」
「ひびを入れた、音よ」
にこ「わけ……わかんない」
「うそつき」
にこ「嘘なんかじゃ、」
言いかけて、気づく。
私を罵るその言葉を、つい先ほど言われたばかりだということに。
にこ「あんた……さっきも私のこと」
「言ったわね。うそつき、って」
その言葉は、何に対しての?
その直前に、私が言った言葉は?
それは、たしか――
にこ「――嘘じゃ、ない」
「――――」
にこ「アイドルになりたいって言葉が……嘘なんかなはず、ないじゃない!」
「そう?」
私の大事な部分に触れて、だというのに、彼女は飄々としたまま返す。
「だけどそれは、あなたにとってとても大きな意味合いを持つ言葉よ」
「だからこそ、殻は破れ始めた」
にこ「……は?」
「あなたは嘘じゃないと言った。そうかもね、その言葉自体は嘘じゃないのかもしれない」
「だけどね」
「その奥に眠ってる想いを、言葉を、語ろうとせず蓋をしたままでいるのは――うそつきと同じじゃない?」
にこ「……待って。ついていけない」
入ってくる情報量の多さに目が眩む。
彼女の意図している部分の、きっと半分も、私は理解できていないんだと思う。
だけど、なんとなくわかったことがある。
わかったというか、察したというか。
あるいは、感じ取った。
にこ「あんた……この世界のこと、知ってるの?」
「ええ」
答えは、やっぱり、シンプルだった。
そして、続く言葉は。
「だって、この世界を作ったのは私だもの」
やっぱり、私を、悩ませた。
私の両手が彼女の肩へ伸びたのは、ほとんど衝動的なものだった。
にこ「教えなさい! なんなのよ、この世界は!」
にこ「なんのために作って!」
にこ「なんのために私を閉じ込めたの!」
にこ「教えなさいよ!」
「――痛いわ」
にこ「あっ、」
がくがくと揺さぶられるままになっていた彼女は、静かにそれだけ呟いた。
にこ「ごめん、なさい……」
「いいわよ、別に」
「それよりも……この世界がなんなのか、よね」
「その前にひとつ聞きたいのだけれど」
「それを聞いてあなたはどうしたいの?」
にこ「え?」
「この世界はこれこれこういうものでした。おしまい」
「それで、それを聞いてあなたはなにか満足するの?」
にこ「満足、っていうか……」
にこ「この世界を出る方法が、見つかるかもしれないじゃない」
「――そう、よね。あなたはこの世界から出たいのよね」
にこ「あ、当たり前じゃない」
「なぜ?」
にこ「なぜ、って……」
「この世界は、不都合?」
にこ「ふ、不都合よ! こんな、」
「μ'sがない世界?」
にこ「……そうよ」
――自分の言葉を先取りされるのは、ほんとに気持ち悪い。
「じゃあ、またやり直す?」
にこ「は?」
それはまるで、ゲームをリセットする? ってぐらいに気軽な言葉で。
思わず聞き流しそうになる。
「μ'sを作れなかったのが気に食わないんでしょう? なら、もう一度3月の「あの日」からやり直しましょう?」
「大丈夫よ、次はもっとうまく立ち回れるわ。今回の失敗をいかして、ね」
「そうすれば満足なんでしょう?」
にこ「そ、そんなこと……」
「可能よ」
にこ「…………や、でも、」
「今度はもっと、理想的なμ'sが作れるかもね」
にこ「…………」
彼女の言葉が、完全に私を黙らせる。
「――ここで黙ってしまうから、あなたはうそつきなの」
にこ「え?」
「なんでもないわ」
「そんなことよりも。今言った通り、この世界はあなたの思うようにやり直せる」
「そもそもがそういう世界なの」
「あなたがμ'sの一年をやり直したいと願ったから、この世界は生まれた」
ノゾミ
「あなたの希望が産んだ世界」
にこ「私の、のぞみ?」
「そう。もっとわかりやすい言葉を使った方がいいかしら?」
「意識の奥底、無意識の内側、そこに潜む自分の願望」
「眠りの中で触れる、自らの希望」
「そんな世界の名前。わかるでしょう?」
にこ「――――」
「3月のあの日。あなたはいつも通り眠りに落ちた」
「そしてこの夢に迷い込んだ。私が作った、この夢に」
「言うなれば、私は管理人といったところかしら」
「もちろんこの姿だって借り物」
ア ナ タ
「私は矢澤にこ。あなたの頭の中に棲む、あなた自身」
にこ「そん……な。だって……」
「信じられなくても、受け入れるしかないわ」
「認めなさい、この世界を」
「ここはあなたが夢見た場所」
ユメ
「あなたが手を伸ばした憧憬で」
ユメ
「あなたが掴もうとした希望で」
ユメ
「あなたがつくり上げた幻想で」
ユメ
「とてもとても甘い――悪夢よ」
「もう一度、改めて聞くわ」
「この世界の真実を知って。あなたは、どうしたい?」
「この夢から、醒めたい?」
にこ「私、わたし、は」
「……今決めろっていうのも、酷みたいね」
「だけどね、これだけは忘れないで。私がこの世界にあなたを招いたのには、意味がある」
「その意味をあなたが理解するまでは」
ワ タ シ
「その上で、あなたが矢澤にこを否定できなければ」
「私は、あなたをここから逃がすつもりはない」
にこ「意味、なんて、そんなの……わかんない……」
「うそつき」
三度目の、否定。
「さっきも言った通り。この世界には、ひびが入り始めた」
「少しずつ、あなたが目覚める準備が整い始めた」
「だからこそ私はこうしてあなたに真実を教えたの」
「あなたが真実を受け入れる準備が、整い始めたから」
「だけどね、それはあくまで準備でしかないの」
「あなたが自分に嘘をつき続ける限り、準備は準備のまま」
「雛が孵ることはない」
にこ「……わたし、どうしたら……」
戸惑う私の、その胸に。
彼女は――もうひとりの「私」は、優しく指を突いた。
ハコ
「ここにある匣。その蓋を開けなさい」
「その中にある現実に、目を向けなさい」
「あなたがアイドルを目指している。それは本当」
「だけど。それだけじゃ、ないでしょう?」
「それを――認めなさい」
それだけを言い残して、「私」は蜃気楼のように揺らめいて、消えた。
にこ「――――夢」
思わずほおをつねろうとして、やめる。この世界で痛い思いなんて、十分してきた。
体も。心も。
すごく、痛い思いをしてきた。
それが、私の望んだ世界?
にわかには信じられない――けど。
この世界に迷い込んだあの日。私はたしかに、望んでいた。
――いっそのこと、この一年間やりなおせたらなぁ
それを……自分の頭の中で実現したってこと、なの?
にこ「…………」
「私」が指さした場所を、ぎゅっと握りしめる。
ここにある、箱。
それがなにを指すのか。今の私にはわからない。
うん、わからない。
わからない。
…………
そっか。そういうことなんだ。
にこ「自分に嘘はつけないってこと、なのね……」
その中から、災厄があふれ出てくることを、知りながらも。
それでも私は、この匣を開けなきゃいけないの?
ノゾミ
この世界が、私の希望を叶えた世界だというなら――
にこ「誰か、教えてよ……」
「にこっち」
にこ「えっ」
突然の声だった。
振り向くと、そこにはつい先ほどまでなかった人影。
問答なんてする余地もない。
私のことをそう呼ぶのは、たったひとりだけ。
にこ「希……」
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