私的良スレ書庫
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元スレにこ「きっと青春が聞こえる」
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私たちが駆け抜けてきた一年間が。
私たちが過ごしてきた時間が。
私たちが、踊り、歌い続けてきた曲たちが。
私たちの――大切な青春の日々が。
さあ、今度こそ終わりにしましょうか。
名残惜しいけど、この世界とはもうさよなら。
大丈夫。
たしかに私は強くはないけど。
だけど、もう――弱くもない。
だからこれは。
過去に別れを告げて、私が前に進むための言葉。
パキ――ン
殻は、ついに破られて。
世界は、真っ白な光に包まれた。
にこ「――――ん?」
「気が付いた?」
にこ「え? ……え、ここどこ?」
あの世界に別れを告げた途端、視界がぶわーってまっしろけになって。
次に目を開いたら、世界はまっしろいままで。
だけど目の前には、『私』がいた。
「ここは夢と現のはざま」
「現実の世界と夢の世界をつなぐ通路みたいなものかしら」
「安心して。もうじきあなたは目を覚ますわ」
「長い長い夢から、ね」
にこ「…………」
そっか。終わったんだ。
本当に長かったように感じる。
そりゃ体感的には数か月を過ごしてるんだから当たり前なんだけど。
だけど、これで目が覚めたらまた――
「そう。あなたは3月のあの日に戻るわ」
「もちろん、あなたが高校3年生のね」
にこ「――そう」
「……名残惜しい?」
にこ「……惜しくない、っていえば、嘘になるわ」
「うん……」
「――まだ、間に合うわよ?」
にこ「え?」
「あの世界は消えてなくなったわけじゃない」
「あなたの頭の隅っこの方で、まだ残り続けてる」
「10年後まで残ってるかもしれないし、明日消えるかもしれない」
「だけど――今はまだ、ある」
「まだ、戻れるわよ?」
そう言いながら、私の後ろを指さす『私』。
つられて視線をやると、白い世界の中で、一際目立つようにキラキラ光る扉が見えた。
あれをくぐったら、その先は――
にこ「――もう、やめてよ」
ため息交じりに答える。
にこ「あのね、名残り惜しいのと未練がましいのは違うの」
にこ「私は決めたわ。過去とはさよならするって」
にこ「私をまた夢の世界に引きずり込もうとしたってそうはいかないんだから!」
「ふぅん、そう」
ふふーんと胸を張る私とは対照的に。
楽し気もなく。かといって気分を害した様子もなく。
『私』は、そっけなくそう返すだけだった。
「じゃあ、最後のあいさつをどうぞ?」
にこ「へ? ……って、うわぁ!」
どうぞ、と示された先に、私がいた。
いや、『私』が、ということではなく。
正真正銘、どこからどう見ても矢澤にこがいた。
にこ『――――』
その私は、どこかうつろな目をしていて焦点が合っていない。
そう、寝ぼけ眼って言葉がまさにぴったりな感じ。
「言ったでしょう? 夢と現の通路だって」
「3月のあの日とつながってるのだから、もちろん現実から夢の世界へ向かうあなただっているのよ」
にこ「……そういうもんなの?」
「そういうものよ」
にこ「…………」
まあ、そういわれてしまえば「そうですか」としか答えようがない。
しっかしまあ――目の前に自分が立ってるってのも、不気味なもんね。
――だけど、そっか。
この子は、これからあの世界に向かうんだ。
これから――長い長いお別れの旅に出るんだ。
にこ「――やりなおすのなんてね、結局くだらないことなのよ」
にこ「夢は夢。現実は現実」
にこ「約束してあげるわ。あんたは絶対この場所に帰ってくる」
にこ「私自身が言うんだもの、説得力あるでしょ?」
にこ「ま、大船に乗ったつもりで向かっちゃいなさいよ。ほらほら」
自分でも不思議なくらい矢継ぎ早に、私は言う。
――ああ、だめだ。
これ以上、ここにいては、だめだ。
にこ「……ま、まあ、そういうわけで私はとっとと現実世界に帰るから、あんたも達者でやりなさい」
にこ「それじゃ、」
一方的に言い放ち踵を返そうとした私の裾を。
にこ『――――』
私がぎゅっとにぎって、そして。
この子は。まぎれもない私は。
まぶしく輝く扉を指さして。
にこ『――あっち、いきたくないの?』
にこ「――――っ!」
無邪気な子供のように、私の心を抉った。
喉から飛び出ようとする言葉を飲み込んで。
振り返りたくなる足を押さえつけて。
だけど、ぼろぼろ零れ落ちる涙だけは抑えられないまま。
精一杯の強がりだけを顔にへばりつけて。
私は、首を横に振った。
たしかに私は、もう、弱くはないけど。
だけどやっぱり――強くも、ない。
この気持ちは。宝石箱を開きたい、この気持ちは。
きっと、いつまでも私の胸の中に、強く残り続けるんでしょうね――
山本五十六大将
山口多聞善相撲シヨウゼ
アイドルの相撲とか視聴率凄そう笑点感覚
山口多聞善相撲シヨウゼ
アイドルの相撲とか視聴率凄そう笑点感覚
* * * * *
ジリリリリリリリリ……
にこ「……っるさーい」
カチッ
にこ「ふあぁぁぁあ」ムクッ
にこ「………」
にこ「……ねむい」
まだ肌寒さを感じる、3月某日朝。
ぬくもりが残る布団の中から、私は恨めし気に目覚まし時計を睨み付ける。
AM7:00
音ノ木坂を卒業した私が起きるにはまだ全然早い時間なんだけど――今日はお出かけの日。
いや、今日も、か。
μ'sのこれからが決まるまでは、おわらない用事。
にこ「――ううん」
もう、おわらせなきゃいけない用事。
にこ「あれ……?」
自分の行動に、自分で強い違和感を覚える。
私、なんで今、あんなにはっきり否定できたの?
μ'sを続けたい、アイドルを続けたいって気持ちは、まだこんなにあるのに。
それに――ねえ、なんで?
にこ「なんで私――泣いてるの?」
原因不明の涙を指ですくいあげながら。
今の今まで見ていたような気がする長い夢の内容が、ぽろぽろ零れ落ちていくのを感じていた。
* * * * *
にこ「おはよー……って、そっか」
返事のないリビングを見回して、そういえばと思い出す。
ふたごちゃんたちはお泊り保育だかで昨日から不在。
ママは朝が早いから朝ご飯は自分で用意してーって言ってたっけ。
にこ「…………?」
なんだか今日はやけに違和感が絶好調。
ことあるごとに頭の中に引っ掛かりが生まれる一日みたい。
ま、気にしててもしょうがないけど。
* * * * *
3年生が卒業し、音ノ木坂生の減った通学路を歩く。
違和感先輩はなおも絶好調。
自分でもわけがわからないけど、つい同じ制服を着た子の顔を覗き込んでしまう。
そんでもって見覚えのない後輩の顔を見て安心。それの繰り返し。
……一体全体、私、どうしちゃったの?
とまあ、首をひねりながら校門をくぐろうとすると。
にこ「ん」
前方に見知った二人分の後姿。
にこ「あ――」
おはよーって声かけて、軽い冗談のひとつでも飛ばしてやろうかしらと思い立ったところで。
言葉がのどに詰まる。
え、なにこれ?
心臓がどくんどくん鳴って、嫌な汗が背筋を伝う。
なんで?
なんであの二人に声をかけるのが、怖いの?
まるで、その先におそろしい未来が待っているかのように――
絵里「――あら?」
希「ん?」
にこ「……っ」
二人が振り向いた。私の存在に気づいた。
あ、いや、やめて。
こわい、こわい――!
絵里「にこじゃない、おはよう……どうしたの、変な顔しちゃって」
希「どしたん? 風邪でもひいた?」
にこ「…………え? あ、いや……」
ふたりに声をかけられた途端。恐怖心が一気にどこかへ消え去った。
にこ「あ、や、えーっと……おはよう」
絵里「え、ええ……おはよう」
希「おはようさん」
にこ「…………」
絵里「……ねえ、本当に大丈夫? 自由登校なのだから無理する必要は……」
にこ「う、ううん、大丈夫……大丈夫だから……」
その言葉に偽りはなく、動悸も呼吸も次第に落ち着きを取り戻した。
だけど、なんで?
なんで私は、この二人に――大切な友達のこの二人に、拒絶されるかも、なんて思ったのかしら。
にこ「あー、ごめん。ほんと大丈夫だから」
絵里「そう? ならいいのだけど……」
にこ「ありがと、心配してくれて。だけど、この程度で帰ってなんてられないわ」
にこ「大切な話があるんだから、さ」
絵里「……うん」
希「……そうやね」
にこ「……あのさ。二人にちょっと聞いてもらいたいんだけど――」
そうだ。まずはこの二人に聞いてもらおう。
大切な友達の、大切な仲間の、この二人に。
私の中に生まれた、強く、だけどまだまだ脆い、決意の話を。
真姫「――――♪」
凛「真姫ちゃんまたその曲?」
真姫「う゛えぇ!? ほ、星空さん!?」
凛「じゃなくて?」
真姫「あ、え、えっと……凛?」
凛「よくできましたー!」パチパチ
真姫「……ひょっとして馬鹿にしてる?」
花陽「ご、誤解だよ真姫ちゃん!」
真姫「ああもう、わかってるわよ。それよりほら、部室行くんでしょ?」
放課後音楽室に引きこもる日課は、私のスケジュール帳から消え去った。
ううん、違うわね。
自分で、消した。
私が楽曲提供してるアイドル研究部の扉を、自分のこの手で叩いたから。
正直なんでそんな暴挙に出たのか自分でもよくわからない。
そもそも――私はなんで彼女たちに楽曲を提供していたの?
それすらもなぜか曖昧。
だけど、ただ。
ひとりぼっちで諦めているだけの3年間には、したくないって思えたから。
卒業するときに振り返ってみて、宝石みたいに輝く時間を作りたかったから。
――って、なに恥ずかしいこと考えてるのかしら。ばかばかしい。
花陽「だけど真姫ちゃん、本当にその曲好きだよね?」
凛「そうそう、しかも同じフレーズばーっかり繰り返してるにゃ」
花陽「それに自分で作った曲なんでしょ? すごいなぁ……」
真姫「……違うわ」
花陽「え?」
真姫「たしかに曲自体は自分で作ったものだけど、このフレーズは――」
真姫「このフレーズだけは、誰かからプレゼントしてもらったような……そんな気がするの」
真姫「名前も覚えていない、誰かに……」
そこまで言って、ぽかーんとしてる二人の表情に気づく。
いけない。つい変なこと口走っちゃった。
真姫「ご、ごめん、気にしないで。たぶんただの気のせい――」
凛「ううん、そんなことないよ!」
真姫「え?」
凛「凛とかよちんもね、話してたんだ」
凛「凛たちがアイドル研究部に入ったのって、なんでだろう、って」
真姫「入った、って――あなたたちが作ったんじゃないの?」
花陽「それが……よくわからないの」
花陽「たしかに今いるメンバーの最古参は私と凛ちゃんなんだけど、だけど私たちが作ったわけでもないの」
凛「じゃあ凛たちどうやって入ったんだっけ? てお話してるんだけど、全然思い出せないんだにゃ……」
真姫「…………」
まさか、こんなに身近に私と同じような違和感を覚えてる子がいるだなんて。
正直、驚きを隠せなかった。
花陽「それにね、希ちゃんが言ってたの」
花陽「私たち8人でユニット組んだでしょ? あの――」
真姫「――μ's、よね?」
花陽「うん、そう。だけどね、それって神話に出てくる女神さまの名前らしいんだけど」
花陽「その女神さまって、本当は9人いるはずなんだって」
花陽「1人足りないねって話してたら、気づいたの」
花陽「そもそもこの名前をつけたのって――誰? って」
真姫「……なによ、段々ホラーじみてきたんだけど?」
花陽「あ、そういうわけじゃ……」
真姫「考えてもしかたないんじゃない? というか、私は考えないことにしたわ」
真姫「だって思い出せないんだもの。考えたってしょうがないわ」
花陽「うーん……それはそうなんだけど……」
凛「――っていっけない! もう練習始まってる時間にゃ!」
花陽「え? ――あああああああ!」
凛「急がないと海未ちゃんカンカンだにゃ!」
花陽「そ、そうだね……真姫ちゃんもはやく!」
真姫「あ、ちょっと待ちなさいよ――」
慌てて教室を飛び出ていく二人の背中を追いかけようとした、その時。
ビュウゥゥゥ!
真姫「きゃっ!」
窓の外から吹き込んだひときわ強い風が背中を押す。
夏の色を感じさせるその風に、思わず振り向いて。
真姫「――――」
なぜかしら。
そこに、誰かの気配を感じた。
だから、ってわけじゃないけど。
誰もいないそこに向けて。
真姫「――――♪」
私はもう一度だけ、大切な誰かからもらったそのフレーズを、口ずさんだ。
以上で終了です、長い間お付き合いいただきありがとうございました。
ぐだぐだした挙句ミスも多く申し訳ないです。
次はまたどこか別のスレで
ぐだぐだした挙句ミスも多く申し訳ないです。
次はまたどこか別のスレで
乙乙!
真姫ちゃんsideのμ'sにはいずれあのにこちゃんが加入してくれるって信じてる
真姫ちゃんsideのμ'sにはいずれあのにこちゃんが加入してくれるって信じてる
完結してたのね、乙
やっぱきっと青春が聞こえると愛してるばんざーいは名曲だわ
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