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    元スレ未央「安価で他のアイドルに告白する!」

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    51 = 45 :

    未央「はい、コーヒーでよかった?」

    「うん、大丈夫だよ。いただきます」

    未央「うん。じゃあ私も横に座って……」ポスッ

    「……えへへ」

    未央「ん? どうしたの、しぶりん?」

    「……いや、改めて幸せだなぁって。特別なことしなくても……こうやって隣で一緒の時間を過ごせるだけで、すっごく幸せ」

    「それも全部……未央のおかげだよ。未央が告白してくれなきゃ、私ずっとこの気持ちを抱えたままだった」


    コーヒーの缶を両手に持ったまま、しぶりんは少しうつむきがちにはにかんだ。その表情が、掛け値なしに心の底から幸せそうだ。
    そんな彼女のしぐさを見て素直に可愛いと思う反面……やっぱり心の奥で、ちくちくと罪悪感が鋭い針のように私の心臓に突き刺さる。


    未央「うん……そうだね……」


    私が発した言葉に小さくしぶりんがうなずくと、それから特にお互い喋ることもなくなったのか、無言の時間が流れた。
    とはいえそれは気まずさからくるものでは決してなく、むしろ彼女が全身からあふれさせている安心感や幸福感に、私も同じくして浸ってしまっていた、というのが本当のところだ。
    勿論あの日以降の私たちの常として、二人きりでいるときにはいつでも手を繋いでいた。肩と肩が触れ合うほどの距離でベンチに座っている私たちは、お互いの片方の膝の上で、指と指を絡ませあった――いわゆる「恋人繋ぎ」で手を握り合っている。


    52 = 48 :

    順調に攻略されてるな

    53 = 45 :

    ――何分くらい。あるいは何十分か経っていたのだろうか。
    私もそんな心地いい空間に浸ってしまっていて、体感で結構な時間、無言が流れていた。
    気が付けば繋いだ手は、ほんのり汗ばんでいるかのようでもあった。


    「――キス」

    未央「え?」


    そんな静寂の空気を急に破るように、隣のしぶりんが蚊の泣くような、消え入りそうな声でふとつぶやいた。


    「……キス、してほしい、な……」


    聞き間違い、じゃないようだ。
    しぶりんの透き通るような声は、声量自体は小さくても、きちんと私の耳にまで届いてくる。


    「……」カァァ

    未央「え、えぇと……」


    見てみると、しぶりんは耳までトマトみたいに真っ赤になって、さっきよりもより深く俯いていた。
    振れた肩がふるふると震えて、つないだ手に一層ぎゅうっと力が入ったのは、多分……気のせいじゃ、ないよね。

    54 = 45 :

    未央「(ま、ままままずいぞ……)」

    未央「(いや、確かに恋人同士なんだからキスくらいはするのが当たり前なのかもしれないけど……)」

    未央「(まさか2~3回を予定していたデートのうちの1回目、しかもこんなにすぐにキスを要求されるとは考えてなかった!!)」

    未央「(ど、どうしたものか……。わ、私もぶっちゃけファーストキスだしなぁ……)」

    未央「(……い、いや、でも待てよ? 私もこれからどんどんお芝居の仕事に力を入れていくつもりだし、そのうち男優さんとのキスシーンなんかも入るかもしれない……)」

    未央「(特に好きでもない男の人と仕事でファーストキスをするくらいなら……友達として好きなしぶりんでファーストキスを済ませてしまうのも、アリといえばアリなのか!?)」

    未央「(う、ううう、どうしよう……。突然の事で頭がパニックに……)」


    私が足りない頭の回路を必死に熱暴走させていると……




    とんっ



    と、その頭に熱いものが押し付けられた。

    「………//」

    しぶりんが、真っ赤に茹ったような顔を私の肩に委ねてきたのだ。

    55 = 45 :

    未央「(こ、これは……間違いない! しぶりんのキス待ちだ!)」

    未央「(えええ! 本当にどうしちゃったのしぶりん! これまでのしぶりん像が180度回転するくらいの積極性じゃない!?)」

    未央「(それまでも付き合いがあったとはいえ、1回目のデートでこんなにキスをせがんでくるなんて……!)」

    未央「(い、いや実際かわいいけど! そりゃアイドルの女の子なんだからかわいいに決まってるんだけど! そういうことじゃなくって!)」

    未央「(こ、これはもう……覚悟を決めるときなのかな……!)」


    隣から発せられる熱に耐えられなくなったからなのか、この切迫した空気に私も頭が茹っていたからなのか、あるいは私自身が衝動的にやってしまったのか――

    私はしぶりんの方を振り返ると、その細く、繊細な彼女の肩をがしっと掴んだ。


    「……!!」ビクッ


    その瞬間、しぶりんの肩が跳ねるのが伝わってくる。
    自分で言い出しておいて恥ずかしくなったのか――しぶりんはさっきよりも耳を赤くして俯いてしまった。

    56 = 45 :

    未央「(よ、よし、今なら周りは誰も見てないし……この流れで、もうキスしちゃおう!)」

    未央「(大丈夫! 女の子同士のキスならノーカンになる……はず? と、とにかく!)」

    もう流れに乗ってキスするしかないと焦った私は俯いたしぶりんと顔を向き合わせようとしたけど……。
    そうだ、肝心のしぶりんが俯いちゃってる。これじゃキスができないぞ!

    未央「(え、ええと、そうだ。とにかく顔をこっちに向かせればいいんだから……)」

    背中を丸めて、顔から火が出んとばかりに俯いてしまったしぶりんは、本来私よりも4㎝ほど身長が高いはずなのに、まるで年下の子供のように小さくなってしまったようにも感じる。
    そして私は、しぶりんにキスしようと焦るあまり、今時少女漫画の主人公くらいしかやってはいないだろう行動をとってしまった。

    未央「しぶりん、顔……こっちに向けて?」

    「え……? ……あっ」



    うつむいたしぶりんのすらっとした顎を左手で掴み、ぐいっと……焦っていたのもあって少し強引に、こっちに向けさせた。
    急に至近距離で私と目が合ったしぶりんは、あわあわと視線をあっちこっちに飛ばしてうろたえている。
    そんな彼女に、私は――


    未央「……目、閉じて――」





    ゆっくりと、震える彼女の唇にそっと顔を近づけて。



    キスを、した。

    57 :

    勝ったな

    58 :

    しぶりん完全勝利
    2周目もお願いします、別時空で

    59 = 45 :

    ――どれくらい時間がたったんだろう。
    短かったのか、長かったのか。それはわからないけど。
    その時の私は片方の手で彼女の肩を、もう片方の手で彼女の顎をがっしりと抑えて、ふるふると震えるしぶりんの唇に私の唇をくっつけていて。
    頭が真っ白になったような静寂の中で、一心不乱に……その、なんというか、しぶりんの存在を全身で味わっていた。

    未央「(…………)」


    何も頭が働かなかった。
    ただその時は、しぶりんの唇の柔らかい感触と、しぶりんの髪から漂ういい香りに、五感のすべてが支配されていた。


    しばらくして、ふと、どちらからということもなく――繋がっていた唇が離れた。


    「…………」

    未央「…………」


    なんだろう、この空気。
    私、鼻息荒くなかったかなぁ、とか、ぽけーっとした心持ちでそんなことを考えていると。

    一番食べごろな時のトマトのように真っ赤に染まった、まるで今にも煙でも吹きそうなしぶりんの顔が視界に捉えられるようになった。

    60 = 45 :

    「あっ……あぅ、あぅぅ…………」

    声にならないような声を発して、しぶりんが倒れこむように私の胸に顔をぽすんとうずめてきた。

    この反応を見て、今頃になって、この空気に現実味が帯びてくる。


    そうか、私――


    未央「(し、しぶりんと、キスしちゃった……!)」

    とはいえそんな感慨に浸っているわけにもいかない私は、甘えるように抱き着いてきたしぶりんの頭をそっと抱きしめる。
    うぅ、これって、ドラマとかでよく見る「すっごいいい雰囲気」ってやつなのかなぁ、ひょっとして。


    未央「し、しぶりん? ひょっとして……嫌だった?」

    おそるおそる聞いてみると、しぶりんは私の胸に更に深く顔をうずめる。


    「……私、死んじゃいそう。っていうか、もう死んでもいい。……夢じゃないよね……」

    どうもしぶりんは恥ずかしがる時に俯いたり、とにかく顔を隠す癖があるみたいだ。
    そんな彼女を見て、私は不意に


    未央「(……かわいい……)」

    なんて、思ってしまった。

    61 = 45 :

    未央「と、とにかくしぶりん。いつまでもこのままじゃいられないし、そろそろ公園からでよっか」

    「………」コクン

    しばらく私の胸の中で顔を隠していたしぶりんだったが、流石にアイドルである自分がいつまでもこの体制ではまずいと思ったのか、ゆっくりと名残惜しいように上体を起こした。
    と同時に、まるで子犬がお気に入りのおもちゃを片時も離したがらないように、私の手をぎゅうっと握ってくる。


    未央「え、えーと。とりあえず次の場所に行こう? 手ならちゃんとつないでるからさ」

    「……うん」

    今までよりも明らかに近い距離感で、立ち上がった私にしぶりんが体を寄せてくる。
    さっきまで並んで歩いている肩の距離が50㎝だとすると、今はもう5㎝も離れていないんじゃないかというほどに彼女は寄り添ってきているのだ。

    しぶりんの手を引いて、次のデートスポットに向かう。
    そんな私の頭の中では、さっきキスした彼女の唇の柔らかさが、反芻するように響いていた。



    私の心臓がさっきからやたらうるさく跳ねているのは、罪悪感……だけ、なのかな。

    62 = 45 :

    とりあえず今日はここまで。
    続きはまた起きたら書きます。初SSですが、見てくれてありがとうございました。

    63 :


    待っとるんやで

    64 :

    罪悪感だけならよかったんや…

    65 :

    おつ

    66 :

    乙、乙女凛可愛いなー
    凛編終わったら別の人バージョンも見たいな

    67 :

    しぶりん攻略し(ちゃっ)たつもりが、ちゃんみおが現在進行形で攻略されてるな…

    68 = 45 :

    再開していきます

    69 = 45 :

    未央「(とりあえず、こんなに急にキスしちゃうことになるとは思ってなかったけど……)」

    未央「(ひとまず次のデートスポットに向かおう)」

    未央「(時間はそろそろお昼時……)」


    未央「(どこに行こうかな?)」


    ↓2

    70 :

    カフェ

    72 = 45 :

    未央「とりあえず……もうそろそろお昼にいい時間だし、ごはんでも食べよっか?」

    「そうだね。私もちょうどいい感じにおなか減ってきたかも」

    未央「よーし、じゃあどこかよさそうなお店は……おっ」

    ふと、この間の休日にあーちゃんと一緒に行ったカフェが視界に入った。
    個人でやっている小さな喫茶店みたいなところで、ゆったりとした雰囲気が流れる、いかにもあーちゃんが好きそうなお店だ。
    確か軽食みたいなものもやっていたはずだし、ここにしよっかな。

    未央「じゃあしぶりん、あそこのカフェでもいい?」

    「うん。なんだかおしゃれそうなところだね……あそこに行こうか」

    というわけで、からんころん、と小さな鈴の音を鳴らしながら、木でできた小さなドアを開けて店内に入った。

    73 :

    初めてと思えないくらい素晴らしい

    74 = 45 :

    店員「いらっしゃい」

    おひげをたくわえたお爺さん店員が、カウンターの向こうから挨拶してくれる。
    ゆっくりとテンポを刻む店内のBGMが、さっきまではやっていた私の心をにわかにおちつけてくれるみたいだった。

    「へぇ……すごく落ち着く店内だね。私こういう雰囲気好きだよ」

    未央「でしょでしょ? この間あーちゃんと一緒に来た時に、いいなーって思ってたんだ!」

    「……ふーん、そう……」

    未央「(あれ? しぶりんなんかちょっと機嫌悪そう?)」

    釈然としないような表情をうかべる彼女をエスコートしながら、店の端にあるちょこんとした丸テーブルに向かい合って座った。

    「……藍子と仲いいんだっけ、そういえば」

    未央「ああ、あーちゃん? そうだねー、結構昔から仲良くしてくれてるよ」

    未央「こういう静かなカフェで落ち着いて本とか読んだりするのが好きみたいだから、私もたまに一緒に宿題とかやってたんだ」

    「……そっか」

    あれ? なんだかしぶりんの顔がどんどんむすーっとむくれていってる?

    75 :

    昔の女の話をするのはヤメロォ!

    76 = 70 :

    ヤンデレかフラグが着々と?

    77 = 45 :

    未央「(もしかして……)」

    未央「しぶりん、私とあーちゃんが仲良いの……嫉妬してる?」

    「!」

    ふいにそう尋ねると、しぶりんの両肩がぴくんと跳ねた。

    「ち、違うよ。二人が仲がいいのは私としても嬉しいことだし……。それに、よく考えたらポジティブパッションで一緒にいたもんね……」

    冷たい水が入ったコップについた水滴を指先ですくいながら、ばつが悪そうにしぶりんは小声でつぶやく。

    「でも、今日は私たち二人の初デートで……初めて入ったお店だったから……」

    「……なんだろ、わたしやっぱり嫉妬――しちゃってるのかな、藍子に……」

    「ごめんね……。みっともないよね、こんなの」

    未央「(あ……)」

    78 = 45 :

    そっか、しぶりんは……いつもクールな印象の子だったから気づいてなかったけど。
    こんな小さなことでやきもち焼いちゃう、普通の女の子でもあったんだ。

    未央「……そうだよね。今日は……初デートだもんね。ほかの子の話はしないほうがよかったね」

    未央「ごめんね、しぶりん」

    「ち、違うの! 未央は何にも悪くない! ただ……私がみっともなく嫉妬しちゃっただけだから……気にしないで」

    ごまかすように彼女は長い髪をかき上げる。
    そうだよね。今は……一応、仮とはいえ恋人同士なんだから、少しはしぶりんの気持ちもくんであげなきゃだめだよね。

    未央「ま、じゃあ気を取り直してさ。さっそく注文しようよ。ここサンドイッチとか、カレーライスとか、いろいろ軽食もあるみたいだし……」

    「……そうだね。えっと、それじゃあ私は……」

    しぶりんの方にメニューを向けてあげると、よかった。もう彼女も気にはしていないみたいだ。
    結局、私がサンドイッチ注文する事に決めると、しぶりんも「じゃあ……私もそれにしよ」と、二人で同じメニューを頼むことになった。

    79 = 45 :

    未央「おっ、きたきた。いただきまーす」

    「わぁ、小さくてかわいいね」

    少し小ぶりなサンドイッチがお皿に盛られて二人分運ばれてきた。
    ここのサンドイッチは実は結構絶品で、パンはふわふわ、具材もしっかり味付けがしてあって私のお気に入りでもあった。
    まぁ、あんまり詳しいこと言うとまたしぶりんがむくれちゃうかもしれないから、言わないでおいたけど。

    未央「あれ? 私のとしぶりんの、具材が違うサンドイッチがあるね?」

    不思議に思ってメニューを見返してみると、今日のサンドイッチは店主の気まぐれで中身が変わるらしい。
    見ると私のお皿としぶりんのお皿では、微妙にメニューが違うみたいだった。

    未央「じゃあせっかくだし、お互いのサンドイッチ食べあいっこしよっか。はい、あーん」

    「えっ!?」

    見たところ彼女のお皿に乗っていなかった種類のサンドイッチを持ち上げて、彼女の口元に持って行ってあげる。
    これくらいは普段からやっていたことだから、ことさら意識せず体が勝手に動いてしまった。

    80 = 45 :

    「…………」

    ところがしぶりんは急に体を硬直させたと思ったら、またさっきみたいに軽く顔を俯かせてしまった。

    未央「? どうしたの? しぶりん」

    「い、いや……うん、じゃあ、せっかくだから……貰おうかな」

    しぶりんはおずおずと、小さく口を開きながら、私が差し出したサンドイッチを可愛らしく一口食べる。
    まるで小動物のようにもぐもぐと咀嚼すると、そのまま離れて、また一層顔を赤くした。

    「……おいしいよ。すごく……」

    未央「でしょー! じゃあ私も食べよっと」

    「あ……!」

    さっきまでしぶりんが食べていたサンドイッチを、今度は私も一口ほおばる。
    うん、やっぱりここのサンドイッチはすっごくおいしい! 思わず笑顔になっちゃうよ。

    「……また叶っちゃった……」

    未央「え? 何か言った?」

    「う、ううん! なんでもない!」

    なんだかさっきから様子がおかしいなぁ、と、呑気に事を考えていた私はまだ気づいていなかった。
    友達同士で食べ物を食べさせあいっこするなんて行為は私にとっては日常的なもので、特別な意識はなかったけれど。
    今は……私としぶりんは恋人同士ということになっていて、こういう行為がいかに彼女のハートを鷲掴みにしているかということに、気が付いていなかったのだ。

    81 = 45 :

    「じゃ、じゃあ未央も……私のサンドイッチちょっと食べなよ」

    未央「え? いいの? じゃあいただきまーす」

    しぶりんがおずおずと差し出した彼女のサンドイッチに、私はすぐにかじりつく。
    長い髪の向こうで彼女の顔がどんどん俯いていっているのに、サンドイッチを味わうことに夢中だった私は気が付かなかった。




    未央「ふぅ、結構おなかいっぱいになったなー。しぶりんは大丈夫?」

    「うん。私も大丈夫だよ。……あ、ごめん未央、ちょっとお手洗いに……」

    未央「うん、わかった」

    しぶりんが席を立つと、ふとハンドバッグに入れていたスマホに通知が来ていることに気付いた。

    未央「あれ? 加蓮からだ」

    82 = 45 :

    加蓮「どんな感じ?」

    一言だけ、そうLINEの画面に彼女の言葉が表示されている。

    未央「(そっか、そういえば加蓮には今日がしぶりんとのデートって伝えてあったから)」

    未央「(うーん、でも……さすがにもうキスしちゃったとかまでは書かないでいいかな……書くの恥ずかしいし)」

    未央「結構いい感じだよ……っと。……うわ、返信はやっ」


    加蓮「凛はあれで結構恋すると受け身な子みたいだから」

    加蓮「少しは考えて行動したほうがいいよ」


    未央「どういうことだろ? 私の行動……どこか考えなしだったかなぁ?」

    未央「まぁ変にあーちゃんの話し出しちゃったのは私もちょっとまずかったかもしれないけど、他には食べさせあいっこしたくらいだし……」

    未央「まぁ加蓮なりに凜のこと心配してるんだろうな」

    未央「わかった、気を付ける……っと」

    そこまで返信したところで、奥の扉からしぶりんが帰ってきた。

    「ごめんね、おまたせ」

    未央「ううん、だいじょぶだよ! じゃあ行こっか!」

    今までの展開で半ば癖のようになっていたからか、私は自然にしぶりんの手をぎゅっと握った。
    ぴくん、と彼女の手が跳ねような気がしたけど、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべて私の手に指を絡めてくる。




    加蓮「……未央の奴、自分が天然タラシの才能あるって自覚ないのかな……」

    サングラスとマスクに身を包んだ加蓮が、離れた席から二人を監視しているのに、気づく二人ではなかった。

    83 = 45 :

    未央「さーて、おなかもいい感じになったし、そろそろ次に向かおうかな」


    未央「どこに行こう?」



    ↓2

    84 :

    水族館

    86 = 49 :

    遊園地

    87 = 45 :

    未央「そうだ、私ちょっと新しい服見ていきたかったんだ。寄っていってもいい?」

    「うん。じゃあ行こっか」

    最近はおこづかいも貰ってふところが暖かかったことだし……。ずっと前から気になってた服を見にいこうかな。
    そうして向かった先は、少し大きめのデパートの中にあるファッション品店だった。この辺りは結構何でも揃うから、都心に出てきた時には結構寄ったりしている。

    未央「わぁ、いろんな服が売ってる……。ねぇねぇしぶりん、どれがいいかな?」

    「未央なら何でも似合うと思うよ」

    未央「やーだなーしぶりん、そんなほんとのこと言っちゃって!」

    手を繋いだまま店の中に入ると、目当てだった服以外にも良さそうな感じのものがいくつも目に入ってくる。
    やっぱり誰かと――今はしぶりんとは恋人同士だけど、誰かと一緒にショッピングをするのは楽しく感じる。

    未央「そういえば言い忘れてたけど、今日のしぶりんのワンピースも似合ってるよね。いつもとはまた違った印象を感じるよ」

    「へっ!? そ、そうかな……ありがと」

    未央「うん、あと……美容院も行った? 髪もすっごくかわいい!」

    自分の正直な気持ちを彼女に伝えると、しぶりんは嬉しそうに握った手にぎゅうっと力を込めてくる。
    ううん、こういうところは素直にかわいいぞ、しぶりん。なんか……同じ女の子でも私とはタイプが違うんだなぁ。

    「……気づいてて、くれたんだ……ふふ」

    未央「ん? どうかした?」

    「ううん、なんでもない」

    88 = 45 :

    未央「それじゃあ私はお目当ての服をーっと……あれ?」

    未央「うーん、見当たらないな……」

    ずっと気になっていた服が見当たらないのを不思議に思って、店員さんに声をかけてみた。

    店員「ああ、あちらの商品ですか? 申し訳ございません、あちらは大変人気の商品でして、既に売り切れてしまっておりまして……」

    店員「今はまだ入荷待ちの状態なんですよ」

    未央「げっ、まじですかー……」

    うっ、あわよくば買っちゃおうと思っていたけど……。しょうがない、今回はあきらめるか……。

    未央「それなら……しぶりんっ!」

    「え? ……わっ」

    ふと後ろを向いていた彼女に、近くに飾ってあった大きな麦わら帽子をかぶせる。
    急に帽子をかぶせられて驚いたのか、しぶりんはこっちを振り返ってきた。

    「もう、急になにするの……」

    淡い色の揺れるワンピースと、つばの大きな麦わら帽子。
    そして長く艶のあるさらさらの黒髪は、しぶりんの新しく見えた――女の子らしい雰囲気に、ぴったり似合っていた。

    未央「おぉ、その帽子も似合うじゃん!」

    「まったくもう……かわいいかわいいって適当に言ってないよね?」

    未央「まさか! 私はただ自分の素直な気持ちを伝えてるだけだよ!」

    「そ、そう……じゃあ、はい!」

    そう言うとしぶりんは気恥ずかしさをかき消すかのように、近くにあったキャップを私にかぶせてきた。


    89 = 45 :

    未央「も、もう、急になにするのさしぶりん!」

    「ふふ、さっきのお返し。それに……その帽子、未央に似合ってるよ」

    未央「え、本当?」

    鏡で見てみると、なるほど確かにその小ぶりなレディース向けのキャップは、今日着てきた私のパーカーに結構似合っていた。
    な、なんだろう、なんだか自分がされると恥ずかしい……。

    「……せっかくだから、私この帽子買おうかな。似合ってるって言って貰えたし」

    未央「お? じゃあ……私もこれ買っちゃおうかな。欲しかった服は売り切れてたし、こういうのもめぐり合わせかも」


    服を見に来たのに、結局お互い帽子だけ買う結果になっちゃった。でも……似合ってるって言ってくれたし、これでよかったかな?




    一通りデパートの中も見終わって、気が付けば時間も結構いい時間になっている。

    未央「(そうだなぁ……。これからどうしよう)」

    そんな風に思案していると、ふとスマホに通知が来ていることに気付いた。



    加蓮「そういえば凛、最近見たい映画があるって言ってたよ」

    未央「お、加蓮からだ。それにしても何だかタイミングを見計らったかのようにLINEが来るなぁ……」


    90 = 45 :

    未央「(でも、時間的に映画ならいい選択肢だし……)」

    未央「しぶりん、映画でも見ていかない?」

    「えっ、いいの?」

    未央「うん。いや、しぶりんにもし見たい映画があればの話だけどさ」

    「実は……ちょっと気になってた映画があって……」

    手を繋いだまま、デパート内に設置されている映画館に向かう。

    「あっ、ちょうど今からやってるみたい。これ、なんだけど……」

    そういってしぶりんが指さしたのは、あまり聞いたことのないタイトルの、恋愛映画らしいものだった。

    未央「へぇ、聞いたことないけど面白そうだね。じゃあこれにしよっか」

    「うん!」

    2人分のチケットを受付で買うと、通路を通り、薄暗いシアターの中に二人で入った。
    ちょうどほかの映画の予告をやってるところのようで、タイミングはぴったりだ。

    91 = 45 :

    ――で、映画が始まって一時間ほど経って。

    未央「(こ、これって……)」

    さすがに鈍感な私でも、もう分かった。

    未央「(この映画、恋愛は恋愛でも、女の人同士で恋愛するやつだ……!)」

    映画の舞台になっているのは女子高らしく、そこで気弱な女の子が、同級生の快活な女の子に恋をする、といった内容のものらしかった。
    あまり名前を聞いたことがなかったのは、ひょっとして内容がこういうもの……だったからなのだろうか。
    しかし映画の内容自体はなかなかどうして面白く、すでに中盤に差し掛かるころには物語の展開に引き込まれてしまっている私がいた。

    でもそれは――


    未央「(隣で手を繋ぎながら観ているしぶりんがいなかったら、純粋に楽しめてたのかもしれないけど――)」

    当然映画館の中でも隣の席同士をとった私たちは、しぶりんが私の肩に頭をもたれかかるようにして映画を鑑賞している状態になっている。
    この映画の製作監督も、まさか本当に女の子同士の恋人が見に来てるなんてしったらなんて思うんだろう……。

    そんなことを考えていると、どんどん物語は進んでいった。いよいよクライマックスにさしかかろうとしている。

    二人を阻むいくつもの障害や難関を乗り越え、ついに気弱な女の子が抱える想いは、その想い人に届こうとしていた。
    画面の向こうの二人は手に手をとりあい、ついにお互いの想いが通じ合う時がやってきたのだ。

    未央「(う、展開自体は普通に感動的だよ……)」

    未央「(……ん? しぶりん)」

    画面に夢中で気が付かなかったが、隣の席に座っているしぶりんが、なぜかもぞもぞと動いているような気がした。

    92 = 45 :

    次の瞬間、スクリーンの向こうでついに唇を合わせようとする二人は、急に視界から掻き消えた。

    未央「(……?)」

    あれ? スクリーンが故障でもしたのかな。いいところだったのに――

    と妙なことを思っていたのもつかの間。

    私の目の前にしぶりんの顔があることにはっと気づいた時は、私の唇は、唇でふさがれていた。


    未央「(…………!?!?!?)」


    一瞬パニックに陥って、素っ頓狂な声をあげてしまう。
    しかししぶりんは私のそんな声をかき消すように、更に強く唇を押し当ててきた。

    未央「…………!!」


    息が……できない。
    いや、別に息はしていいんだろうけど、なんだろう、鼻息とかかかったらあれだし……なんて、妙に冷静な思考が頭の中を駆け回る一方で。

    なんで? なんでしぶりんが私にキス? ……あ、そっか、今私たちって恋人同士なんだっけ。それなら……普通なのかな? と、自分を無理やり納得させるような思考が同時に湧き上がってくる。

    少なくともこの異常事態に、私の足りない脳ではまったく思考能力が追いついていなかった。

    93 = 45 :

    十秒……くらいだろうか。しぶりんのさらさらの髪が私の頬に触れる感触が妙にくすぐったい、とかいったことを感じていると。

    スクリーンの向こうに、感動的なBGMと共に二人で抱き合う女の子たちが現れた。

    しぶりんが、ようやくキスをやめて離れたのだ。


    未央「し、しぶり……」

    「……ごめん。……なんか、我慢……できなくて」

    映画館の中ということもあって、小さめの声で隣の彼女と会話する。
    しぶりんはまたしても顔を俯けながら、恥ずかしそうに私の肩に再びもたれかかってきた。

    未央「(映画に触発されて……つい、しちゃったのかな……)」

    未央「(ま、まさか1日に2回もしぶりんとキスすることになるなんて……)」

    未央「(さっきは私のほうからキスしちゃったけど……なんだろう)」


    知らないうちに、自分の心臓がやたらうるさく聞こえていたことに気付いた。
    映画館の中に流れる感動的なBGMがかき消されてしまうかのようなボリュームで、心臓の鼓動が喉元にまで響く。


    未央「(ひ、人からキスされるのって……あんな感じなんだ……)」

    そんな事を思いながら私は、あぁ、やっぱりしぶりんの唇は柔らかいなぁ、なんて馬鹿な事を考えていた。

    94 = 45 :

    未央「い、いやー……面白い映画だったね……」

    「……そうだね……」

    結局100分ほどだった映画が終わり、スタッフロールまでしっかり観た後、私たちは映画館を後にした。
    あのキスの事に関しては……私からも、しぶりんからも、特に触れることはなかった。
    そりゃあ……しぶりんからすれば私たちは付き合ってる恋人同士なわけで、というか既にキスなら1回している訳で……。
    別に不思議なことはないのかもしれないけれど。

    未央「(……ど、どうしよ。なんかしぶりんの顔、まともに見れない……)」

    未央「(……私、なんでこんなにドキドキしてるんだろ)」

    未央「(はじめて、人からキスされたから? ……あの映画の変な空気にあてられて?)」

    未央「(……なんだろ、なんだか、今までと……全然違う)」

    今までに感じたことのない心臓の高鳴りを感じながら、私たちは一言も話さないまま、デパートを出た。



    外はもうすっかり暗くなっている。
    流石に今日はこれ以上どこかに出かけるのは、時間的に厳しいかもしれない。

    未央「(どうしようかな?)」


    ↓2

    1.凛を家まで送っていく。
    2.凛が千葉までついてくる。

    95 :

    エンダアアア

    97 = 45 :

    未央「じゃ、じゃあしぶりん。今日はもう遅いしこの辺で……解散にしよっか?」

    「……ん……うん」

    少し名残惜しそうにしぶりんがうなずく。
    まぁ、女の子があんまり遅くまで外をうろついているのもよくないだろう。一応私たちもアイドルな訳だし……。

    未央「じゃあしぶりん、また今度……」

    そこまで言おうとした時、彼女が握っていた私の手を、さっきまでよりもずっと強く握ってきたことに気付いた。

    「…………」

    未央「えっと……しぶりん?」

    「……ない」

    未央「え?」

    「今日は……離れたくない。ずっと未央と、一緒にいたい」


    ぎゅうっと握った手からは、子犬がお気に入りのおもちゃを取られた時に抵抗を見せるような、そんな気持ちの強さを感じた。

    98 = 45 :

    未央「え、えーとしぶりん、でもほら、流石にこれ以上遅くなったらいろいろとまずいし……」

    「……うん、わかってる」

    未央「それにほら、私の家って千葉にあるじゃん。だから――」

    「ついていく」

    未央「え?」

    「もし未央と……未央の家が迷惑じゃなかったら……未央の家まで行っていい?」

    未央「そ、それは……」

    確かに、しぶりんとしまむーと3人で、私の家でお泊り会をしたことは過去に何度かあった。
    ここから千葉の私の家まで電車で総武線で1本だし、そこまで遠いわけでもない。
    幸い明日も仕事は午後からなので、遅めに私の家を出ても十分間に合う。
    しかし……。

    未央「え、ええと、それって今日うちに泊まっていきたいってこと?」

    「……だめ、かな?」

    未央「い、いや、ええと……」

    普段の私だったら「おぉ、それじゃあ今日は二人で久しぶりにお泊り会だー! いやーテンション上がってくるねっ!」とか言ってそうなものだけど、生憎今の状況ではそういうリアクションは取れなかった。
    なんせ……今の私たちは恋人同士で、既に今日2回もキスまでしてしまっているのだから……。
    普段通りの空気はもう、そこにはなかった。

    未央「え、えぇと、私の家って今日は誰もいないんだよね。その……家族はみんなで泊りの旅行に行っててさ」

    未央「私は明日仕事があるからいけなかったんだけど……」

    「……そうなんだ。じゃあ……」

    未央「(うっ、しぶりんが期待を込めた眼差しで私の事を見つめてくる……!)」

    未央「(流石にここでダメだと言うほどの勇気は私にはない……)」

    未央「そ、そうだね。じゃあ今日は……泊まっていく?」

    「! ……うん!」

    嬉しそうに頷く彼女と再び手を握り返して、私たちは駅に歩いていった。

    99 = 45 :

    未央「(さて……そういうわけでしぶりんが家にやってきた訳だけど)」

    未央「(どうしよう……変に緊張しちゃっていつもの調子が全然出ないよ……)」

    未央「と、とりあえず……お茶でも飲む?」

    「あ、うん。じゃあ頂こうかな」

    電車に乗って、家に来るまでしぶりんは片時も繋いだ手を放そうとしなかった。
    確かに女の子同士だから手を繋いでるだけで恋人だとは思われないだろうけど……それにしたって限度ってものはある気はする。
    まぁ……それに慣れてきているような私も私だけど。

    とりあえずしぶりんをリビングのソファに座らせ、冷蔵庫にしまってあった麦茶をコップに注いで2人分を持っていくと、しぶりんは一言「ありがとう」と言ってコップに口をつけた。

    さて……時間としてはいま午後8時。寝るにはまだちょっと早い時間かな。


    未央「(これから……どうしよう)」


    ↓2


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