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元スレ美希「デスノート」
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【同日深夜・春香の家の最寄駅の構内】
春香「…………」ピッ
(駅の改札を通り、家路へと向かう春香)
レム「事務所での打ち上げでも、特に変わった様子は無かったね」
ジェラス「……うん……」
レム「しかし今日はもう後残り二十分も無いが……本当に今日死ぬんだろうか?」
ジェラス「……あっ」
レム「?」
ジェラス「あれ……今日、ライブ会場に居た……」
ファンの男「…………」
レム「……ああ。ハルカがまだ駆け出しだった頃からずっと応援しているっていうファンか……でも何でこんな所に? いや、というかあいつ……明らかにハルカの後を……」
ジェラス「…………」
春香「…………」
ファンの男「…………」
レム「ハルカの方は気付いていない……」
ジェラス「…………」
ファンの男「――――」ダッ
レム「! 走り出した!」
ジェラス「! …………」
ファンの男「ねぇ!」ガシッ
春香「!?」
(ファンの男が突然背後から春香の腕を掴む)
春香「や、ちょっ……」バッ
(反射的に、思わずその手を振りほどく春香)
ファンの男「あっ」
春香「! あなたは……」
ファンの男「…………」
春香「……私がデビューした頃からずっと、ライブやイベントに来てくれてる……」
ファンの男「! 覚えててくれたんだ……嬉しいよ」
春香「…………」
春香「…………」ピッ
(駅の改札を通り、家路へと向かう春香)
レム「事務所での打ち上げでも、特に変わった様子は無かったね」
ジェラス「……うん……」
レム「しかし今日はもう後残り二十分も無いが……本当に今日死ぬんだろうか?」
ジェラス「……あっ」
レム「?」
ジェラス「あれ……今日、ライブ会場に居た……」
ファンの男「…………」
レム「……ああ。ハルカがまだ駆け出しだった頃からずっと応援しているっていうファンか……でも何でこんな所に? いや、というかあいつ……明らかにハルカの後を……」
ジェラス「…………」
春香「…………」
ファンの男「…………」
レム「ハルカの方は気付いていない……」
ジェラス「…………」
ファンの男「――――」ダッ
レム「! 走り出した!」
ジェラス「! …………」
ファンの男「ねぇ!」ガシッ
春香「!?」
(ファンの男が突然背後から春香の腕を掴む)
春香「や、ちょっ……」バッ
(反射的に、思わずその手を振りほどく春香)
ファンの男「あっ」
春香「! あなたは……」
ファンの男「…………」
春香「……私がデビューした頃からずっと、ライブやイベントに来てくれてる……」
ファンの男「! 覚えててくれたんだ……嬉しいよ」
春香「…………」
ファンの男「ねぇ……春香ちゃん」
春香「!」ビクッ
ファンの男「君も覚えてくれていたとおり、僕は君がデビューしてすぐの頃から、ずぅっと君の事を応援していた」
春香「…………」
ファンの男「嫌な事があった日も辛い事があった日も……君の笑顔が、声が、歌が……君という存在の全てが、僕を元気づけてくれた」
春香「…………」
ファンの男「……でも」
春香「……?」
ファンの男「君は今、人気アイドルとしての階段を着実に上り始めている」
春香「…………」
ファンの男「今はまだ、世間一般での知名度はそこまで高くはないけど……今日のライブを観て、僕は確信した」
春香「…………」
ファンの男「そう遠くない未来、君は今よりもっと多くの人に愛されるアイドルになる。そしていつか、本物のトップアイドルになるって」
春香「…………」
ファンの男「天海春香を応援するファンの一人として、それは大いに喜ぶべきことなんだろう。いや、心の底から待ち望んでいた瞬間の到来といっても過言ではない」
春香「…………」
ファンの男「でもそのことは同時に……君が今より、ずっとずっと遠くの世界に行ってしまうということを意味する。今僕の居るこの世界から、ずっとずっと遠くの世界に」
春香「! …………」
ファンの男「それは僕には耐えられない。これ以上、遠い世界に行ってほしくない。今のまま、僕と同じ世界に居る君のままでいてほしいんだ」
春香「えっ、と……」
ファンの男「だから……春香ちゃん」
春香「! な……何?」
ファンの男「僕と結婚して、アイドルは今日限りで引退してほしい」
春香「!」
ファンの男「そして、僕だけのアイドルになってほしい。そうすれば、僕と君はずっと同じ世界に居られる」
春香「…………」
ファンの男「……ね? 春香ちゃん……」
春香「!」ビクッ
ファンの男「君も覚えてくれていたとおり、僕は君がデビューしてすぐの頃から、ずぅっと君の事を応援していた」
春香「…………」
ファンの男「嫌な事があった日も辛い事があった日も……君の笑顔が、声が、歌が……君という存在の全てが、僕を元気づけてくれた」
春香「…………」
ファンの男「……でも」
春香「……?」
ファンの男「君は今、人気アイドルとしての階段を着実に上り始めている」
春香「…………」
ファンの男「今はまだ、世間一般での知名度はそこまで高くはないけど……今日のライブを観て、僕は確信した」
春香「…………」
ファンの男「そう遠くない未来、君は今よりもっと多くの人に愛されるアイドルになる。そしていつか、本物のトップアイドルになるって」
春香「…………」
ファンの男「天海春香を応援するファンの一人として、それは大いに喜ぶべきことなんだろう。いや、心の底から待ち望んでいた瞬間の到来といっても過言ではない」
春香「…………」
ファンの男「でもそのことは同時に……君が今より、ずっとずっと遠くの世界に行ってしまうということを意味する。今僕の居るこの世界から、ずっとずっと遠くの世界に」
春香「! …………」
ファンの男「それは僕には耐えられない。これ以上、遠い世界に行ってほしくない。今のまま、僕と同じ世界に居る君のままでいてほしいんだ」
春香「えっ、と……」
ファンの男「だから……春香ちゃん」
春香「! な……何?」
ファンの男「僕と結婚して、アイドルは今日限りで引退してほしい」
春香「!」
ファンの男「そして、僕だけのアイドルになってほしい。そうすれば、僕と君はずっと同じ世界に居られる」
春香「…………」
ファンの男「……ね? 春香ちゃん……」
春香「……ごめんなさい」
ファンの男「! …………」
春香「私はまだ、アイドル続けていたいんです」
ファンの男「…………」
春香「これからも、765プロの皆と一緒に、沢山ライブやったり、色んなお仕事したりして……私達の事、もっと多くの人に知ってもらいたいんです」
ファンの男「…………」
春香「そしてより多くの人を笑顔に、幸せにしてあげられるような……そんなアイドルになりたいんです。だから……」
ファンの男「…………」
春香「……私は、あなたのお気持ちにお応えすることはできません。どうかこれからもファンの一人として、私……いえ、私達765プロ皆の事を、温かく見守っていて下さい」ペコリ
ファンの男「…………」
春香「…………」
ファンの男「……分かった。じゃあ仕方ない」
春香「はい。本当にごめんなさ……」
ファンの男「今ここで君を殺して、僕も死ぬ」
春香「……え?」
(持っていた手提げ鞄から包丁を取り出すファンの男)
春香「! ちょ……」
ファンの男「そうすれば、君はこれから先もずっと、永遠に僕と一緒の世界に居られる。そうだろ?」
春香「や……やめて……」
レム「まさか……こんな結末だったとはな……」
ジェラス「…………」
レム「今日はもう後残り十分も無い。この男に殺されるのがハルカの寿命だったということか……」
ジェラス「…………!」バッ
レム「ジェラス!? おい、何を……」
ジェラス「…………」
ファンの男「! …………」
春香「私はまだ、アイドル続けていたいんです」
ファンの男「…………」
春香「これからも、765プロの皆と一緒に、沢山ライブやったり、色んなお仕事したりして……私達の事、もっと多くの人に知ってもらいたいんです」
ファンの男「…………」
春香「そしてより多くの人を笑顔に、幸せにしてあげられるような……そんなアイドルになりたいんです。だから……」
ファンの男「…………」
春香「……私は、あなたのお気持ちにお応えすることはできません。どうかこれからもファンの一人として、私……いえ、私達765プロ皆の事を、温かく見守っていて下さい」ペコリ
ファンの男「…………」
春香「…………」
ファンの男「……分かった。じゃあ仕方ない」
春香「はい。本当にごめんなさ……」
ファンの男「今ここで君を殺して、僕も死ぬ」
春香「……え?」
(持っていた手提げ鞄から包丁を取り出すファンの男)
春香「! ちょ……」
ファンの男「そうすれば、君はこれから先もずっと、永遠に僕と一緒の世界に居られる。そうだろ?」
春香「や……やめて……」
レム「まさか……こんな結末だったとはな……」
ジェラス「…………」
レム「今日はもう後残り十分も無い。この男に殺されるのがハルカの寿命だったということか……」
ジェラス「…………!」バッ
レム「ジェラス!? おい、何を……」
ジェラス「…………」
ファンの男「さあ、僕と永遠になろう。春香ちゃん」
春香「い……いやっ!」ダッ
ファンの男「! 待て!」ダッ
春香「誰か……誰か!」
ファンの男「フフッ、春香ちゃん。そんなに急いで走ると転んじゃうよ? そう、いつもみたいに――……ッ!?」
春香「……え?」クルッ
ファンの男「……あっ……ぐっ……!」
春香「な……何?」
ファンの男「……あ……が……」ドサッ
春香「!」
ファンの男「――――」
春香「…………え?」
レム「ジェラス。お前……」
ジェラス「……レ、ム……」ボロボロ
レム「! ジェラス! お前、身体が……」
ジェラス「……あの子の、事……たの、む……」
レム「ジェラス!」
(次の瞬間、ジェラスは砂とも錆ともわからぬ物に変わった)
レム「……ジェラス……」
春香「…………」
(恐る恐る、倒れたファンの男に近付く春香。男は目を見開いたまま仰向けに倒れており、ピクリとも動かない)
春香「……し、死んでる……?」
春香「何が起きたのか分からないけど、助かった……のかな……」
春香「えっと、こういう場合、どうしたら……。とりあえず、警察……?」
ドサッ
春香「?」
春香「何? この黒いノート……」スッ
「そのノートはお前の物だ」
春香「……え?」
(春香の目の前に舞い降りるレム)
春香「!? な……!」
レム「おっと。大きな声を出すんじゃない」
春香「…………!」
レム「私は死神のレム。今から、お前の身に起こったことを教えてやる」
春香「…………?」
春香「い……いやっ!」ダッ
ファンの男「! 待て!」ダッ
春香「誰か……誰か!」
ファンの男「フフッ、春香ちゃん。そんなに急いで走ると転んじゃうよ? そう、いつもみたいに――……ッ!?」
春香「……え?」クルッ
ファンの男「……あっ……ぐっ……!」
春香「な……何?」
ファンの男「……あ……が……」ドサッ
春香「!」
ファンの男「――――」
春香「…………え?」
レム「ジェラス。お前……」
ジェラス「……レ、ム……」ボロボロ
レム「! ジェラス! お前、身体が……」
ジェラス「……あの子の、事……たの、む……」
レム「ジェラス!」
(次の瞬間、ジェラスは砂とも錆ともわからぬ物に変わった)
レム「……ジェラス……」
春香「…………」
(恐る恐る、倒れたファンの男に近付く春香。男は目を見開いたまま仰向けに倒れており、ピクリとも動かない)
春香「……し、死んでる……?」
春香「何が起きたのか分からないけど、助かった……のかな……」
春香「えっと、こういう場合、どうしたら……。とりあえず、警察……?」
ドサッ
春香「?」
春香「何? この黒いノート……」スッ
「そのノートはお前の物だ」
春香「……え?」
(春香の目の前に舞い降りるレム)
春香「!? な……!」
レム「おっと。大きな声を出すんじゃない」
春香「…………!」
レム「私は死神のレム。今から、お前の身に起こったことを教えてやる」
春香「…………?」
【(回想終了)765プロ事務所近くの公園】
レム「……そして私は、今までお前達に話してきたのと同じことを全てハルカに教えてやり……ジェラスの使っていたノートをそのままハルカに与えた」
美希「じゃあそれが、今春香が持ってる……」
春香「そう。これね」スッ
美希「そうなんだ……って、あれ? じゃあ結局、春香の寿命はどうなったの? それに何でジェラスは死んじゃったの?」
レム「……死神は本来、人間の寿命を短くする……頂く為だけに存在している。人間の寿命を延ばすなんてもっての他」
レム「ゆえに死神は人間の寿命を延ばす目的でデスノートを使ってはならない。それをすると死神失格……死神は死ぬ」
レム「死神が死ぬと、その死神の命が助けられた人間に見合った寿命として与えられる。だから本来、あのファーストライブの日に終わるはずだった春香の寿命は、ジェラスの命が与えられたことによって延長された」
美希「そうだったんだ……」
レム「もっとも、死神が死ぬのは特定の人間に好意を持ち、その人間の寿命を延ばす為にデスノートを使った時だけだ。ジェラスの場合、それが恋愛感情と呼べる類のものだったかどうかまでは分からないが……少なくとも、ジェラスはハルカに対して明確に好意を持っており、そのハルカの寿命を延ばすためにファンの男を殺したから、死んだ」
リューク「ククッ。なるほどな。それが噂に聞く『死神の殺し方』ってやつか」
レム「そういうことだ」
美希「でも、その後ジェラスのデスノートが春香に与えられたってことは……死神が死んじゃっても、死神が使ってたデスノートはそのまま残るってこと?」
レム「そうだ。死神が死んだ場合、死神は消えるがデスノートは残る。このような場合、常識的には死神大王に返上するものとされているが、私は常識よりジェラスの遺志を尊重し、ジェラスの遺したノートをハルカに渡した」
レム「このノートをハルカの幸せのために使わせてやってほしい……ジェラスはきっとそう思って死んでいっただろうからね」
美希「なるほど。すごい愛なの」
春香「…………」
レム「……そして私は、今までお前達に話してきたのと同じことを全てハルカに教えてやり……ジェラスの使っていたノートをそのままハルカに与えた」
美希「じゃあそれが、今春香が持ってる……」
春香「そう。これね」スッ
美希「そうなんだ……って、あれ? じゃあ結局、春香の寿命はどうなったの? それに何でジェラスは死んじゃったの?」
レム「……死神は本来、人間の寿命を短くする……頂く為だけに存在している。人間の寿命を延ばすなんてもっての他」
レム「ゆえに死神は人間の寿命を延ばす目的でデスノートを使ってはならない。それをすると死神失格……死神は死ぬ」
レム「死神が死ぬと、その死神の命が助けられた人間に見合った寿命として与えられる。だから本来、あのファーストライブの日に終わるはずだった春香の寿命は、ジェラスの命が与えられたことによって延長された」
美希「そうだったんだ……」
レム「もっとも、死神が死ぬのは特定の人間に好意を持ち、その人間の寿命を延ばす為にデスノートを使った時だけだ。ジェラスの場合、それが恋愛感情と呼べる類のものだったかどうかまでは分からないが……少なくとも、ジェラスはハルカに対して明確に好意を持っており、そのハルカの寿命を延ばすためにファンの男を殺したから、死んだ」
リューク「ククッ。なるほどな。それが噂に聞く『死神の殺し方』ってやつか」
レム「そういうことだ」
美希「でも、その後ジェラスのデスノートが春香に与えられたってことは……死神が死んじゃっても、死神が使ってたデスノートはそのまま残るってこと?」
レム「そうだ。死神が死んだ場合、死神は消えるがデスノートは残る。このような場合、常識的には死神大王に返上するものとされているが、私は常識よりジェラスの遺志を尊重し、ジェラスの遺したノートをハルカに渡した」
レム「このノートをハルカの幸せのために使わせてやってほしい……ジェラスはきっとそう思って死んでいっただろうからね」
美希「なるほど。すごい愛なの」
春香「…………」
レム「ただハルカも、全ての事情を理解してからも本当にノートを使うべきかどうかは最後まで悩んでいた。あくまでも人間を殺す為の道具……悩むのも当然だ」
春香「…………」
レム「私はハルカが要らないと言うのなら、すぐにでもノートを返してもらうつもりでいた。しかしハルカは……悩みに悩んだ末、最後にはデスノートを使うことを決めた」
美希「……春香……」
春香「さっき、レムも説明してくれてたけど……私は本来、あのファーストライブの日に死ぬはずだった」
美希「…………」
春香「でもそれが、一人のファンの……それも、私がデビューして間も無い頃からのファンのおかげで、死なずに済んだ」
春香「そしてその一人のファンの命が、私の寿命として与えられ……そのおかげで、私は今日もこうして生きている」
春香「つまり、今の私が在るのは、そのたった一人のファンの……ジェラスっていう死神のおかげなの」
春香「もちろん私は見たことも会ったこともないけど……でも私にとって彼は命の恩人であり、かけがえのないファンの一人」
春香「そんな彼が、自分の命を犠牲にしてまで私の寿命を延ばしてくれたのに、そのことに気付かないふりをして、忘れたつもりになって与えられた寿命を生きていくなんて……そんなこと、私にはできない」
春香「だから考えた。今私ができることは何なのか。ジェラスがファンになってくれたアイドルとして……私は何をすべきなのか」
春香「そうやって考えたら、答えは自ずと見つかった。ジェラスはアイドルとしての私を応援してくれていた。ならばジェラスのくれた命を使って、私がすべきことはただ一つ」
春香「アイドルとしての夢を実現すること。つまり、765プロの皆と一緒に、より多くの人を笑顔に、幸せにしてあげられるようなアイドル……トップアイドルになることなんだって」
美希「! 春香」
春香「その時から、私にとって“夢”だった『トップアイドルになること』は私にとっての“使命”になった。これが私に命を与えてくれたジェラスに対して私ができる、たった一つの恩返し」
春香「だから私は、その為に……いや、その為だけにデスノートを使おう。そう決めたんだ」
美希「……春香……」
春香「…………」
レム「私はハルカが要らないと言うのなら、すぐにでもノートを返してもらうつもりでいた。しかしハルカは……悩みに悩んだ末、最後にはデスノートを使うことを決めた」
美希「……春香……」
春香「さっき、レムも説明してくれてたけど……私は本来、あのファーストライブの日に死ぬはずだった」
美希「…………」
春香「でもそれが、一人のファンの……それも、私がデビューして間も無い頃からのファンのおかげで、死なずに済んだ」
春香「そしてその一人のファンの命が、私の寿命として与えられ……そのおかげで、私は今日もこうして生きている」
春香「つまり、今の私が在るのは、そのたった一人のファンの……ジェラスっていう死神のおかげなの」
春香「もちろん私は見たことも会ったこともないけど……でも私にとって彼は命の恩人であり、かけがえのないファンの一人」
春香「そんな彼が、自分の命を犠牲にしてまで私の寿命を延ばしてくれたのに、そのことに気付かないふりをして、忘れたつもりになって与えられた寿命を生きていくなんて……そんなこと、私にはできない」
春香「だから考えた。今私ができることは何なのか。ジェラスがファンになってくれたアイドルとして……私は何をすべきなのか」
春香「そうやって考えたら、答えは自ずと見つかった。ジェラスはアイドルとしての私を応援してくれていた。ならばジェラスのくれた命を使って、私がすべきことはただ一つ」
春香「アイドルとしての夢を実現すること。つまり、765プロの皆と一緒に、より多くの人を笑顔に、幸せにしてあげられるようなアイドル……トップアイドルになることなんだって」
美希「! 春香」
春香「その時から、私にとって“夢”だった『トップアイドルになること』は私にとっての“使命”になった。これが私に命を与えてくれたジェラスに対して私ができる、たった一つの恩返し」
春香「だから私は、その為に……いや、その為だけにデスノートを使おう。そう決めたんだ」
美希「……春香……」
ジェラスの寿命が+されたってことはジェラスの寿命が300とかだったら317歳ぐらいまで生きるってこと? そりゃ目の取引するわな
「見合った寿命」だから、さすがに人間の細胞の限界を超えることはできないんじゃないかな
ほんとだ見合った寿命って書いてたわ なら80 90歳ぐらいなのかね
犬の13歳が人間の91歳みたいに
死神の300歳は人間の72歳とかね
死神の300歳は人間の72歳とかね
そのままだと人間離れした寿命になってしまったから目取引で調整した可能性ワンチャン
>>366
なんでわざわざ72歳にした!言ってみろ!
なんでわざわざ72歳にした!言ってみろ!
>>369
くっ
くっ
過去分いくつかまとめて訂正します。
お見苦しくてすみません。
お見苦しくてすみません。
TV『……続いて、昨日都内の銀行で発生し、行員ら三名が殺害された銀行強盗事件ですが、警察は犯人を麻薬取締法違反の容疑で行方を追っている恐田奇一郎・無職51歳と断定し……』
美希「はいはい、恐田奇一郎……っと。こんな大人しそうな顔して銀行強盗なんて、結構大胆な奴なの」カキカキ
リューク「……?」
TV『……先月15日に起きた女児誘拐殺人事件で、警察は鳩梅﨑元次郎容疑者を逮捕……』
美希「鳩梅﨑元次郎……ね。こっちはなんかいかにも悪そうな顔なの」カキカキ
リューク「……ククッ。なるほど、そういうことか」
美希「え? 何か言った? リューク」
リューク「いや、何も?」
美希「もー。人が頑張って裁きしてる時にジャマしないでほしいの。……あっ。海砂ちゃんから電話なの!」
リューク「俺はダメでミサはいいのかよ」
美希「うん。だって海砂ちゃんはミキの友達だもん」ピッ
リューク「…………」
美希「……もしもし? 海砂ちゃん? うん、まだ起きてたの」
美希「……うん。ああ、そこミキも行ってみたいって思ってたの! あはっ」
美希「うん、大丈夫なの。じゃあまた明日ね。おやすみなさいなの」ピッ
リューク「……ミサと会うのか? 明日」
美希「うん。明日オフだから駅前にできたケーキ屋さんでも行ってみない? って。ミキもちょうど明日お休みだし、前から一度行ってみたかったところだから良かったの」
リューク「へぇ。それは良かったな」
美希「さて、じゃあ残りの裁きもちゃっちゃと終わらせて寝ようっと。あふぅ」
リューク「…………」
美希「はいはい、恐田奇一郎……っと。こんな大人しそうな顔して銀行強盗なんて、結構大胆な奴なの」カキカキ
リューク「……?」
TV『……先月15日に起きた女児誘拐殺人事件で、警察は鳩梅﨑元次郎容疑者を逮捕……』
美希「鳩梅﨑元次郎……ね。こっちはなんかいかにも悪そうな顔なの」カキカキ
リューク「……ククッ。なるほど、そういうことか」
美希「え? 何か言った? リューク」
リューク「いや、何も?」
美希「もー。人が頑張って裁きしてる時にジャマしないでほしいの。……あっ。海砂ちゃんから電話なの!」
リューク「俺はダメでミサはいいのかよ」
美希「うん。だって海砂ちゃんはミキの友達だもん」ピッ
リューク「…………」
美希「……もしもし? 海砂ちゃん? うん、まだ起きてたの」
美希「……うん。ああ、そこミキも行ってみたいって思ってたの! あはっ」
美希「うん、大丈夫なの。じゃあまた明日ね。おやすみなさいなの」ピッ
リューク「……ミサと会うのか? 明日」
美希「うん。明日オフだから駅前にできたケーキ屋さんでも行ってみない? って。ミキもちょうど明日お休みだし、前から一度行ってみたかったところだから良かったの」
リューク「へぇ。それは良かったな」
美希「さて、じゃあ残りの裁きもちゃっちゃと終わらせて寝ようっと。あふぅ」
リューク「…………」
【三週間後・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】
L「皆さん、過去一年分、日本全国の心臓麻痺死者の調査お疲れ様でした」
L「現時点で、我々が検知した該当の心臓麻痺死者――これには心不全、心筋梗塞、心臓発作などキラによる殺人と実質的に同視しうる死因により亡くなった者全てを含みますが――その数は15万2435人です」
L「毎年厚生労働省が発表している心臓麻痺等の死亡者の総数から推計するに、おそらく全量の7~8割方に相当するデータは収集できたものと思われます」
L「今後も残りのデータを収集する作業は継続しますが、もう既にこれだけの数のデータが集まっていますので、並行してこれらのデータの分析も行っていきたいと思います」
L「ここまで来れたのも、ひとえに皆さんの不断の努力の賜物です。本当にありがとうございます」
総一郎「いや、竜崎……この短期間でここまでの量のデータが集められたのは、あなたの探偵としてのネットワークによるところが大きい。こちらこそ感謝する」
相沢「L、コイル、ドヌーヴ……まさか世界の三大探偵といわれるこの三名が全員竜崎だったとはな」
L「私は元々持っていたものを利用したに過ぎません。ですが一応、私が他の名前も持っていることは秘密にしておいてください」
松田「しかし、年代別、性別、地域別、職業別、死亡時期……可能な限りあらゆる項目でこれらの死亡者を類型化してみましたが、まだこれといって目立った共通項はありませんね」
星井父「強いて言えば、そのほとんどが高齢者ってことか……まあある意味当然だが」
総一郎「そうだな。だがまあこの数だ。後は竜崎の言うように、残りの2~3割の死亡者のデータを収集しつつ、既にあるデータについては地道に分析を重ねていくしかあるまい」
L「そうですね……キラ事件開始に近い時期に死亡した者達が何らかの共通した傾向を持っているなどということも、今のところは特に……ん?」
相沢「? 竜崎?」
L「皆さん、過去一年分、日本全国の心臓麻痺死者の調査お疲れ様でした」
L「現時点で、我々が検知した該当の心臓麻痺死者――これには心不全、心筋梗塞、心臓発作などキラによる殺人と実質的に同視しうる死因により亡くなった者全てを含みますが――その数は15万2435人です」
L「毎年厚生労働省が発表している心臓麻痺等の死亡者の総数から推計するに、おそらく全量の7~8割方に相当するデータは収集できたものと思われます」
L「今後も残りのデータを収集する作業は継続しますが、もう既にこれだけの数のデータが集まっていますので、並行してこれらのデータの分析も行っていきたいと思います」
L「ここまで来れたのも、ひとえに皆さんの不断の努力の賜物です。本当にありがとうございます」
総一郎「いや、竜崎……この短期間でここまでの量のデータが集められたのは、あなたの探偵としてのネットワークによるところが大きい。こちらこそ感謝する」
相沢「L、コイル、ドヌーヴ……まさか世界の三大探偵といわれるこの三名が全員竜崎だったとはな」
L「私は元々持っていたものを利用したに過ぎません。ですが一応、私が他の名前も持っていることは秘密にしておいてください」
松田「しかし、年代別、性別、地域別、職業別、死亡時期……可能な限りあらゆる項目でこれらの死亡者を類型化してみましたが、まだこれといって目立った共通項はありませんね」
星井父「強いて言えば、そのほとんどが高齢者ってことか……まあある意味当然だが」
総一郎「そうだな。だがまあこの数だ。後は竜崎の言うように、残りの2~3割の死亡者のデータを収集しつつ、既にあるデータについては地道に分析を重ねていくしかあるまい」
L「そうですね……キラ事件開始に近い時期に死亡した者達が何らかの共通した傾向を持っているなどということも、今のところは特に……ん?」
相沢「? 竜崎?」
【765プロ事務所/執務室】
春香「あっ。美希」
美希「春香」
春香「どうだった?」
美希「んー。別にフツーだったの。ただ知ってることを話しただけ」
春香「そっか。お疲れ様」
美希「ありがとうなの」
総一郎「えー、では次、天海さん。お願いします」
春香「はーい。じゃあ行ってくるね」
美希「うん。行ってらっしゃいなの」
(総一郎に促され、社長室へと入っていく春香)
美希「…………」
リューク「ククッ。大ピンチってやつじゃないのか? コレ」
美希(確かに……このままだと……)
P「美希? 大丈夫か? 少し顔色がすぐれないようだが……」
美希「ん? ううん、大丈夫なの。ただちょっと慣れないことだったから、疲れちゃっただけ」
P「はは。まあそうだよな。俺も初めてだよ、こんなの」
美希「あはっ。……さてと、じゃあミキ、レッスン行くね」
P「ああ。でも疲れてるようなら、少し休憩してからでもいいぞ。一応、先生には事情を言ってあるから」
美希「ありがとう、プロデューサー。でも大丈夫なの」
P「そうか。じゃあ頑張って来い」
美希「はーいなの」
ガチャッ バタン
美希「…………」
春香「あっ。美希」
美希「春香」
春香「どうだった?」
美希「んー。別にフツーだったの。ただ知ってることを話しただけ」
春香「そっか。お疲れ様」
美希「ありがとうなの」
総一郎「えー、では次、天海さん。お願いします」
春香「はーい。じゃあ行ってくるね」
美希「うん。行ってらっしゃいなの」
(総一郎に促され、社長室へと入っていく春香)
美希「…………」
リューク「ククッ。大ピンチってやつじゃないのか? コレ」
美希(確かに……このままだと……)
P「美希? 大丈夫か? 少し顔色がすぐれないようだが……」
美希「ん? ううん、大丈夫なの。ただちょっと慣れないことだったから、疲れちゃっただけ」
P「はは。まあそうだよな。俺も初めてだよ、こんなの」
美希「あはっ。……さてと、じゃあミキ、レッスン行くね」
P「ああ。でも疲れてるようなら、少し休憩してからでもいいぞ。一応、先生には事情を言ってあるから」
美希「ありがとう、プロデューサー。でも大丈夫なの」
P「そうか。じゃあ頑張って来い」
美希「はーいなの」
ガチャッ バタン
美希「…………」
【(回想終了)765プロ事務所近くの公園】
レム「……そして私は、今までお前達に話してきたのと同じことを全てハルカに教えてやり……ジェラスの使っていたノートをそのままハルカに与えた」
美希「じゃあそれが、今春香が持ってる……」
春香「そう。これね」スッ
美希「そうなんだ……って、あれ? じゃあ結局、春香の寿命はどうなったの? それに何でジェラスは死んじゃったの?」
レム「……死神は本来、人間の寿命を短くする……頂く為だけに存在している。人間の寿命を延ばすなんてもっての他」
レム「ゆえに死神は人間の寿命を延ばす目的でデスノートを使ってはならない。それをすると死神失格……死神は死ぬ」
レム「死神が死ぬと、その死神の命が助けられた人間に見合った寿命として与えられる。だから本来、あのファーストライブの日に終わるはずだったハルカの寿命は、ジェラスの命が与えられたことによって延長された」
美希「そうだったんだ……」
レム「もっとも、死神が死ぬのは特定の人間に好意を持ち、その人間の寿命を延ばす為にデスノートを使った時だけだ。ジェラスの場合、それが恋愛感情と呼べる類のものだったかどうかまでは分からないが……少なくとも、ジェラスはハルカに対して明確に好意を持っており、そのハルカの寿命を延ばすためにファンの男を殺したから、死んだ」
リューク「ククッ。なるほどな。それが噂に聞く『死神の殺し方』ってやつか」
レム「そういうことだ」
美希「でも、その後ジェラスのデスノートが春香に与えられたってことは……死神が死んじゃっても、死神が使ってたデスノートはそのまま残るってこと?」
レム「そうだ。死神が死んだ場合、死神は消えるがデスノートは残る。このような場合、常識的には死神大王に返上するものとされているが、私は常識よりジェラスの遺志を尊重し、ジェラスの遺したノートをハルカに渡した」
レム「このノートをハルカの幸せのために使わせてやってほしい……ジェラスはきっとそう思って死んでいっただろうからね」
美希「なるほど。すごい愛なの」
春香「…………」
レム「……そして私は、今までお前達に話してきたのと同じことを全てハルカに教えてやり……ジェラスの使っていたノートをそのままハルカに与えた」
美希「じゃあそれが、今春香が持ってる……」
春香「そう。これね」スッ
美希「そうなんだ……って、あれ? じゃあ結局、春香の寿命はどうなったの? それに何でジェラスは死んじゃったの?」
レム「……死神は本来、人間の寿命を短くする……頂く為だけに存在している。人間の寿命を延ばすなんてもっての他」
レム「ゆえに死神は人間の寿命を延ばす目的でデスノートを使ってはならない。それをすると死神失格……死神は死ぬ」
レム「死神が死ぬと、その死神の命が助けられた人間に見合った寿命として与えられる。だから本来、あのファーストライブの日に終わるはずだったハルカの寿命は、ジェラスの命が与えられたことによって延長された」
美希「そうだったんだ……」
レム「もっとも、死神が死ぬのは特定の人間に好意を持ち、その人間の寿命を延ばす為にデスノートを使った時だけだ。ジェラスの場合、それが恋愛感情と呼べる類のものだったかどうかまでは分からないが……少なくとも、ジェラスはハルカに対して明確に好意を持っており、そのハルカの寿命を延ばすためにファンの男を殺したから、死んだ」
リューク「ククッ。なるほどな。それが噂に聞く『死神の殺し方』ってやつか」
レム「そういうことだ」
美希「でも、その後ジェラスのデスノートが春香に与えられたってことは……死神が死んじゃっても、死神が使ってたデスノートはそのまま残るってこと?」
レム「そうだ。死神が死んだ場合、死神は消えるがデスノートは残る。このような場合、常識的には死神大王に返上するものとされているが、私は常識よりジェラスの遺志を尊重し、ジェラスの遺したノートをハルカに渡した」
レム「このノートをハルカの幸せのために使わせてやってほしい……ジェラスはきっとそう思って死んでいっただろうからね」
美希「なるほど。すごい愛なの」
春香「…………」
以下、>>356からの続きとなります。
美希「でも春香。デスノートを使ってトップアイドルになるって、一体どういう……?」
春香「美希はさ」
美希「? 何?」
春香「今の私達のままで……いや、正確には少し前の私達のままで……トップアイドルになれたと思う?」
美希「? どういう意味?」
春香「確かに、この世界は実力がまず第一。実力が無ければ上にはいけない」
美希「それはそうなの」
春香「でも実力さえあれば必ず上にいけるかというと、必ずしもそうではない」
美希「っていうと……運とか?」
春香「それもあるけど……一番大きい要因は、外圧の有無」
美希「外……圧?」
春香「そう。もう半年以上も前になるけど……さっきレムの話にも出た、去年私達765プロが出場した芸能事務所対抗大運動会。覚えてるよね?」
美希「もちろんなの。だってその運動会、ミキ達が女性アイドル部門で優勝したんだから」
春香「そう。私達が優勝した。……『空気を読まずに』ね」
美希「あー……そういえばあの頃、ちょくちょくそういうこと言われてたね。弱小事務所のくせに、みたいな」
春香「そしてあの頃から、徐々に私達、765プロの仕事先で変な事が増えてきた」
美希「変な事?」
春香「美希は気付かなかった? あったはずの仕事の予定が何故かキャンセルになっていたり、逆にダブルブッキングしてたり」
美希「それは確かにあったけど……。でも前のプロデューサーって元々全然仕事できない人だったし……」
春香「美希はさ」
美希「? 何?」
春香「今の私達のままで……いや、正確には少し前の私達のままで……トップアイドルになれたと思う?」
美希「? どういう意味?」
春香「確かに、この世界は実力がまず第一。実力が無ければ上にはいけない」
美希「それはそうなの」
春香「でも実力さえあれば必ず上にいけるかというと、必ずしもそうではない」
美希「っていうと……運とか?」
春香「それもあるけど……一番大きい要因は、外圧の有無」
美希「外……圧?」
春香「そう。もう半年以上も前になるけど……さっきレムの話にも出た、去年私達765プロが出場した芸能事務所対抗大運動会。覚えてるよね?」
美希「もちろんなの。だってその運動会、ミキ達が女性アイドル部門で優勝したんだから」
春香「そう。私達が優勝した。……『空気を読まずに』ね」
美希「あー……そういえばあの頃、ちょくちょくそういうこと言われてたね。弱小事務所のくせに、みたいな」
春香「そしてあの頃から、徐々に私達、765プロの仕事先で変な事が増えてきた」
美希「変な事?」
春香「美希は気付かなかった? あったはずの仕事の予定が何故かキャンセルになっていたり、逆にダブルブッキングしてたり」
美希「それは確かにあったけど……。でも前のプロデューサーって元々全然仕事できない人だったし……」
春香「確かにそうだね。でもあの運動会以降、その傾向は明らかに強くなった。それまでは社長さんや小鳥さん、律子さんのフォローがあったからなんとかなっていたけど、それも追いつかないくらいに」
美希「あー……言われてみればそうだったかもなの。正直その頃ずっと、前のプロデューサーからのセクハラがひどくて、そこまで気が回ってなかったけど」
春香「そうだね。でもそれだけじゃない。明らかにこちらの落ち度じゃない場合……たとえば律子さんが担当していた竜宮小町のラジオ収録なんかでも、いざ現場に行ったら知らないうちに収録時間が変更されていた、なんてこともあったみたい」
美希「ああ、それは覚えてるの。でこちゃんすっごく怒ってたよね」
春香「それと似たようなことが、私達のほぼ全員の仕事先で起こっていた。これだけでも十分変なのに、より違和感があったのが、前のプロデューサーさんの態度」
美希「? っていうと?」
春香「私が彼と一緒に現場に行ったときにも、さっき言った竜宮小町の件と同じようなことがあったの」
春香「本当は16時からの収録のはずだったのに、30分前に現場に着いたら『15時からの収録なのに、30分も連絡無く遅刻するなんてどういうことだ』ってすごく怒られて」
美希「言ってたね。事務所では小鳥も事前にスケジュール確認してくれてたから間違えてるはずないのに、っていう」
春香「そう。でも私が気になったのは、現場でそれを告げられた際、前のプロデューサーさんが、微塵も表情を変えなかったこと」
美希「え? そうだったの?」
春香「うん。眉一つ動かしてなかった」
美希「んー。でもそれは、単純に興味が無かったんじゃない? 事務所のお仕事そのものに」
春香「仮にそうだとしても、普通、全く予想していない事態に不意に直面したら、少なからず動揺が表に出ると思わない?」
美希「まあ……それはそうかもなの」
春香「でも彼にはまったくそんな素振りが無かった。現場でそう告げられて『ああ、どうもすみません』って、まるで台詞を棒読みするように一言謝っただけだった。まるで、そうなることが最初から分かっていたかのように」
美希「うーん。でもやっぱり、単純に事務所のお仕事に興味が無かっただけなんじゃないかなって気もするけど……」
春香「まあね。ただ私はその違和感がずっと心に残ってて、彼が裏で何かしてるんじゃないかという疑念がどうしても消せなかった」
美希「裏で?」
春香「うん。私達を陥れようとする何者かと、裏で手を引いてるんじゃないかって」
美希「あー……言われてみればそうだったかもなの。正直その頃ずっと、前のプロデューサーからのセクハラがひどくて、そこまで気が回ってなかったけど」
春香「そうだね。でもそれだけじゃない。明らかにこちらの落ち度じゃない場合……たとえば律子さんが担当していた竜宮小町のラジオ収録なんかでも、いざ現場に行ったら知らないうちに収録時間が変更されていた、なんてこともあったみたい」
美希「ああ、それは覚えてるの。でこちゃんすっごく怒ってたよね」
春香「それと似たようなことが、私達のほぼ全員の仕事先で起こっていた。これだけでも十分変なのに、より違和感があったのが、前のプロデューサーさんの態度」
美希「? っていうと?」
春香「私が彼と一緒に現場に行ったときにも、さっき言った竜宮小町の件と同じようなことがあったの」
春香「本当は16時からの収録のはずだったのに、30分前に現場に着いたら『15時からの収録なのに、30分も連絡無く遅刻するなんてどういうことだ』ってすごく怒られて」
美希「言ってたね。事務所では小鳥も事前にスケジュール確認してくれてたから間違えてるはずないのに、っていう」
春香「そう。でも私が気になったのは、現場でそれを告げられた際、前のプロデューサーさんが、微塵も表情を変えなかったこと」
美希「え? そうだったの?」
春香「うん。眉一つ動かしてなかった」
美希「んー。でもそれは、単純に興味が無かったんじゃない? 事務所のお仕事そのものに」
春香「仮にそうだとしても、普通、全く予想していない事態に不意に直面したら、少なからず動揺が表に出ると思わない?」
美希「まあ……それはそうかもなの」
春香「でも彼にはまったくそんな素振りが無かった。現場でそう告げられて『ああ、どうもすみません』って、まるで台詞を棒読みするように一言謝っただけだった。まるで、そうなることが最初から分かっていたかのように」
美希「うーん。でもやっぱり、単純に事務所のお仕事に興味が無かっただけなんじゃないかなって気もするけど……」
春香「まあね。ただ私はその違和感がずっと心に残ってて、彼が裏で何かしてるんじゃないかという疑念がどうしても消せなかった」
美希「裏で?」
春香「うん。私達を陥れようとする何者かと、裏で手を引いてるんじゃないかって」
美希「あー……でもミキ的には、なんかあんまりそういうずる賢そうなことするタイプには見えなかったの。セクハラするし、仕事はできないし……」
春香「もしそれらがカモフラージュだったとしたら?」
美希「え?」
春香「アイドルにはセクハラ、仕事はいい加減にこなす……表立ってそんなことをする人間が、裏で私達を『さらに』陥れようとしているなんて普通思わない。今美希が言ったみたいにね」
春香「現に美希は当時、さっき言っていたみたいに、彼によるセクハラの方に意識が向いていて、仕事の方の不自然な出来事にまでは気が回ってなかったんでしょ?」
美希「うん、まあ……。でも今までの話からすると、春香はそうじゃなかったってことだよね?」
春香「まあね。私もセクハラ被害は受けてたし嫌だったけど、こっちの方も同じくらい気にはなってた」
春香「誰かが故意に私達を陥れようとしているのでなければ、説明のつかないくらい、不自然な出来事が多く起こり過ぎてたからね」
美希「まあ確かに、そう言われてみれば……なの」
春香「またそうだとすれば、これらの出来事は、どれも私達の内部情報……誰が、いつ、どこで、どういう仕事をするのかといった情報が入手できなければ起こせないことばかりだった。仕事予定の変更にしろ、ダブルブッキングにしろ」
美希「そっか。うちの事務所に全然関係無い人にはそもそも出来ないってことだね」
春香「そう。だから私の中ですぐに答えが出た。『ああ、この人が私達の情報を流してるんだ』って。言うまでもないけど、彼以外にそんなことをするような人はうちの事務所にはいないからね」
美希「そこは確かに納得なの」
春香「そう考えると、普段の様子も実は全部演技だったんじゃないかって思えてきて」
美希「じゃあ……わざと仕事できないふりしてたってこと? セクハラも?」
春香「多分ね。まあ流石に100%そうだったとまでは断定できないけど。でももし私の考えの通りなら、前のプロデューサーさんはどこかのスパイだったわけで、本当に無能な人だったらスパイなんて任せられないでしょ」
美希「確かに。すぐ失敗してばれちゃいそうだしね。でもそうだとすると、一体どこのスパイだったんだろう?」
春香「美希も聞いたことあったよね。前のプロデューサーさんがどういう経緯でうちに来たのか」
美希「あー、うん。確か、うちの事務所に出資してる大きな会社の社長の息子で、就職先が決まらなかったから、父親のゴリ押しでうちのプロデューサーになったって……小鳥からそう聞いたの」
春香「そう。ちなみにその大きな会社って、どういう会社か知ってる?」
美希「んーん。知らないの」
春香「その会社はね。実はとあるアイドル事務所と密接なつながりがある会社だったんだよ」
美希「? とあるアイドル事務所?」
春香「うん。その事務所の名前は―――961プロダクション」
春香「もしそれらがカモフラージュだったとしたら?」
美希「え?」
春香「アイドルにはセクハラ、仕事はいい加減にこなす……表立ってそんなことをする人間が、裏で私達を『さらに』陥れようとしているなんて普通思わない。今美希が言ったみたいにね」
春香「現に美希は当時、さっき言っていたみたいに、彼によるセクハラの方に意識が向いていて、仕事の方の不自然な出来事にまでは気が回ってなかったんでしょ?」
美希「うん、まあ……。でも今までの話からすると、春香はそうじゃなかったってことだよね?」
春香「まあね。私もセクハラ被害は受けてたし嫌だったけど、こっちの方も同じくらい気にはなってた」
春香「誰かが故意に私達を陥れようとしているのでなければ、説明のつかないくらい、不自然な出来事が多く起こり過ぎてたからね」
美希「まあ確かに、そう言われてみれば……なの」
春香「またそうだとすれば、これらの出来事は、どれも私達の内部情報……誰が、いつ、どこで、どういう仕事をするのかといった情報が入手できなければ起こせないことばかりだった。仕事予定の変更にしろ、ダブルブッキングにしろ」
美希「そっか。うちの事務所に全然関係無い人にはそもそも出来ないってことだね」
春香「そう。だから私の中ですぐに答えが出た。『ああ、この人が私達の情報を流してるんだ』って。言うまでもないけど、彼以外にそんなことをするような人はうちの事務所にはいないからね」
美希「そこは確かに納得なの」
春香「そう考えると、普段の様子も実は全部演技だったんじゃないかって思えてきて」
美希「じゃあ……わざと仕事できないふりしてたってこと? セクハラも?」
春香「多分ね。まあ流石に100%そうだったとまでは断定できないけど。でももし私の考えの通りなら、前のプロデューサーさんはどこかのスパイだったわけで、本当に無能な人だったらスパイなんて任せられないでしょ」
美希「確かに。すぐ失敗してばれちゃいそうだしね。でもそうだとすると、一体どこのスパイだったんだろう?」
春香「美希も聞いたことあったよね。前のプロデューサーさんがどういう経緯でうちに来たのか」
美希「あー、うん。確か、うちの事務所に出資してる大きな会社の社長の息子で、就職先が決まらなかったから、父親のゴリ押しでうちのプロデューサーになったって……小鳥からそう聞いたの」
春香「そう。ちなみにその大きな会社って、どういう会社か知ってる?」
美希「んーん。知らないの」
春香「その会社はね。実はとあるアイドル事務所と密接なつながりがある会社だったんだよ」
美希「? とあるアイドル事務所?」
春香「うん。その事務所の名前は―――961プロダクション」
こうなってくると前Pをただ殺しただけなのもったいないな
情報吐かせるようノートに書いておきたかったな
情報吐かせるようノートに書いておきたかったな
あれ?Lがいないぞww
もう春香さんと美希だけでいいんじゃないかな
もう春香さんと美希だけでいいんじゃないかな
まあ春香の事情説明が終わればまたLが何か仕掛けてくるフェイズに戻るだろう
美希「961プロって……あのジュピターとかの?」
春香「そう」
美希「なんでそんなこと分かったの? 春香」
春香「うん。私一人で考えていても本当のところは分からないままだろうから、思い切って社長さんに聞いてみたの」
美希「? 何て?」
春香「『プロデューサーさんは私達を陥れるためにどこからか送り込まれてきたスパイなんじゃないですか?』って」
美希「春香は時々すごいの」
春香「そしたら社長さん、目に見えてうろたえちゃって。『そ、そんなことはないぞ』とかなんとか言ってたけど、もうみえみえでさ」
美希「実に社長らしいの」
春香「でも結局その時は、否定されたままで『すまないが私は用事があるのでこれで』って逃げられちゃったの」
美希「よっぽど言いたくなかったんだね」
春香「うん。でもおかげで私は自分の推測に確信を持てた」
美希「社長がウソをつけないタイプの人で良かったね」
春香「そうだね。ただ同時に、これ以上直接聞いても真相は教えてもらえないだろうなとも思ったから、少し作戦を変えることにしたの」
春香「そう」
美希「なんでそんなこと分かったの? 春香」
春香「うん。私一人で考えていても本当のところは分からないままだろうから、思い切って社長さんに聞いてみたの」
美希「? 何て?」
春香「『プロデューサーさんは私達を陥れるためにどこからか送り込まれてきたスパイなんじゃないですか?』って」
美希「春香は時々すごいの」
春香「そしたら社長さん、目に見えてうろたえちゃって。『そ、そんなことはないぞ』とかなんとか言ってたけど、もうみえみえでさ」
美希「実に社長らしいの」
春香「でも結局その時は、否定されたままで『すまないが私は用事があるのでこれで』って逃げられちゃったの」
美希「よっぽど言いたくなかったんだね」
春香「うん。でもおかげで私は自分の推測に確信を持てた」
美希「社長がウソをつけないタイプの人で良かったね」
春香「そうだね。ただ同時に、これ以上直接聞いても真相は教えてもらえないだろうなとも思ったから、少し作戦を変えることにしたの」
美希「というと?」
春香「多分だけど、小鳥さんもある程度事情を知ってるんじゃないかなって思ったんだよね。そもそも前のプロデューサーさんがうちに来るようになったいきさつを私達に教えてくれたのも小鳥さんだったし」
美希「確かに。じゃあ次は小鳥に聞いたんだ?」
春香「ううん。それはしなかった。小鳥さんに聞いても上手くはぐらかされるだろうと思ったし、そのことが社長さんに伝わったらかえって警戒されるだろうなって思ったから」
美希「なるほどなの」
春香「でももし社長さんと小鳥さんが事務所で二人きりになるタイミングがあれば、もしかしたらその関係の話をすることがあるかもしれない。だから私はその可能性に賭けることにした」
美希「ってことは……」
春香「毎朝事務所に行く時と、夕方以降また事務所に戻る時、いつも必ずドアを少しだけ開けて、中の会話の内容を確認してから入るようにした」
美希「流石春香なの」
春香「まあね」
美希「でもそれで上手くいったの?」
春香「もちろんそう簡単にはいかなかった。でも社長さんと小鳥さんが事務所で二人きりになるタイミングって比較的多いから、いつかはボロを出すんじゃないかと思って繰り返し試みてみたら……案の定だった」
美希(春香が悪い顔になってるの)
春香「多分だけど、小鳥さんもある程度事情を知ってるんじゃないかなって思ったんだよね。そもそも前のプロデューサーさんがうちに来るようになったいきさつを私達に教えてくれたのも小鳥さんだったし」
美希「確かに。じゃあ次は小鳥に聞いたんだ?」
春香「ううん。それはしなかった。小鳥さんに聞いても上手くはぐらかされるだろうと思ったし、そのことが社長さんに伝わったらかえって警戒されるだろうなって思ったから」
美希「なるほどなの」
春香「でももし社長さんと小鳥さんが事務所で二人きりになるタイミングがあれば、もしかしたらその関係の話をすることがあるかもしれない。だから私はその可能性に賭けることにした」
美希「ってことは……」
春香「毎朝事務所に行く時と、夕方以降また事務所に戻る時、いつも必ずドアを少しだけ開けて、中の会話の内容を確認してから入るようにした」
美希「流石春香なの」
春香「まあね」
美希「でもそれで上手くいったの?」
春香「もちろんそう簡単にはいかなかった。でも社長さんと小鳥さんが事務所で二人きりになるタイミングって比較的多いから、いつかはボロを出すんじゃないかと思って繰り返し試みてみたら……案の定だった」
美希(春香が悪い顔になってるの)
【(回想)765プロファーストライブの二週間前/765プロ事務所】
(仕事を終え、事務所に戻ってくる春香。事務所のドアの前で立ち止まり、ドアを少しだけ開く)
春香(今日この時間は、事務所にいるのは社長さんと小鳥さんの二人だけのはず……)
春香(そろそろうっかり喋ってくれてもいいと思うんだけどな……)
社長「……まったく、あの男にも困ったものだ」
春香「!」
小鳥「もう何回目か分かりませんね。仕事がいつのまにかキャンセルされてるの」
社長「うむ。今まではまだ我々の事務所内だけでの問題だったが、最近は明らかに外部の者と裏で連携しての工作がなされている」
小鳥「どうします? もう流石に本人に言っても……」
社長「いや……確たる証拠があるわけではないし、言ったところでどうにもならん。この事務所はまだ資金的には苦しい……今もし出資を打ち切られでもしたら……」
小鳥「でも社長。このままだと会社自体が……」
社長「確かに、今のこの状況が続くようでは何らかの手を考えねばなるまい」
小鳥「ファーストライブも二週間後に迫っていますし……。もし妨害とかがあったら、あの子達が……」
社長「そうだな。ライブ当日、彼の動きは極力監視するようにして……後は黒井か。まああいつが直接動くとは考えにくいが――……ん?」
春香「…………」
社長「!? あ、天海君!?」
小鳥「春香ちゃん!?」
春香「…………」
(仕事を終え、事務所に戻ってくる春香。事務所のドアの前で立ち止まり、ドアを少しだけ開く)
春香(今日この時間は、事務所にいるのは社長さんと小鳥さんの二人だけのはず……)
春香(そろそろうっかり喋ってくれてもいいと思うんだけどな……)
社長「……まったく、あの男にも困ったものだ」
春香「!」
小鳥「もう何回目か分かりませんね。仕事がいつのまにかキャンセルされてるの」
社長「うむ。今まではまだ我々の事務所内だけでの問題だったが、最近は明らかに外部の者と裏で連携しての工作がなされている」
小鳥「どうします? もう流石に本人に言っても……」
社長「いや……確たる証拠があるわけではないし、言ったところでどうにもならん。この事務所はまだ資金的には苦しい……今もし出資を打ち切られでもしたら……」
小鳥「でも社長。このままだと会社自体が……」
社長「確かに、今のこの状況が続くようでは何らかの手を考えねばなるまい」
小鳥「ファーストライブも二週間後に迫っていますし……。もし妨害とかがあったら、あの子達が……」
社長「そうだな。ライブ当日、彼の動きは極力監視するようにして……後は黒井か。まああいつが直接動くとは考えにくいが――……ん?」
春香「…………」
社長「!? あ、天海君!?」
小鳥「春香ちゃん!?」
春香「…………」
社長「き、君、いつから……」
小鳥「春香ちゃん。今の話……聞いてた?」
春香「……はい」
社長「…………」
春香「社長さん。小鳥さん。……教えて下さい」
社長「…………」
小鳥「…………」
春香「あの人は……プロデューサーさんは、やっぱりスパイなんですね? 私達を陥れようとしている……」
社長「…………」
春香「そして彼をこの事務所に送り込んだのは……黒井……というと、もしかして、あの961プロの黒井社長ですか?」
社長「! …………」
春香「お願いです。教えて下さい。もうここまで聞いているんです」
社長「しかし……」
春香「さっき小鳥さんも言いかけていましたけど……実際にお仕事をできなくされたりして辛い思いをするのは私達、アイドルなんです」
社長「! …………」
小鳥「春香ちゃん」
春香「だから私には……私達には、聞く権利があるはずです。あの人は……プロデューサーさんは何者なのか。そして何故うちに送り込まれてきたのか」
社長「…………」
春香「そしてそれをしたのが黒井社長なのだとしたら……何故そんなことをしたのか」
社長「…………」
春香「お願いします。教えて下さい」
社長「…………」
小鳥「春香ちゃん。今の話……聞いてた?」
春香「……はい」
社長「…………」
春香「社長さん。小鳥さん。……教えて下さい」
社長「…………」
小鳥「…………」
春香「あの人は……プロデューサーさんは、やっぱりスパイなんですね? 私達を陥れようとしている……」
社長「…………」
春香「そして彼をこの事務所に送り込んだのは……黒井……というと、もしかして、あの961プロの黒井社長ですか?」
社長「! …………」
春香「お願いです。教えて下さい。もうここまで聞いているんです」
社長「しかし……」
春香「さっき小鳥さんも言いかけていましたけど……実際にお仕事をできなくされたりして辛い思いをするのは私達、アイドルなんです」
社長「! …………」
小鳥「春香ちゃん」
春香「だから私には……私達には、聞く権利があるはずです。あの人は……プロデューサーさんは何者なのか。そして何故うちに送り込まれてきたのか」
社長「…………」
春香「そしてそれをしたのが黒井社長なのだとしたら……何故そんなことをしたのか」
社長「…………」
春香「お願いします。教えて下さい」
社長「…………」
社長「……分かった」
春香「! 社長さん」
小鳥「社長」
社長「君が言うように、今この状況で一番憂き目に遭っているのは他ならぬ君達アイドルだからな」
春香「社長さん。……ありがとうございます」
社長「ただそうは言っても、これから私が話すことには推測や憶測も多分に含まれる。ゆえに今はまだ君の心の中だけに留めておいてほしい。時が来れば、他の皆には私の方から改めて話す」
春香「……分かりました」
社長「ではまず……そうだな。私と黒井……961プロの黒井社長のことから話そうか」
春香「じゃあやっぱり、さっきの『黒井』というのは……」
社長「ああ。君の言うとおり、961プロの黒井社長のことだ」
春香「…………」
社長「私と黒井は、かつて一緒に仕事をしていた仲でね。同じ頃この業界に入り、良きライバル、そして友人として一緒に頑張ってきた」
社長「しかし、やがていつしか私と黒井はアイドルの育て方で意見がぶつかるようになってしまってね。彼のやり方が目に余るようになり、私は彼と話し合ったんだが、思いは受け入れてもらえなかった」
社長「そして結局、私達はそのまま袂を分かつことになったんだ」
春香「そうだったんですか……」
社長「それ以来、私と黒井は絶縁状態となった。またそれと共に業界における私達の立場も大きく異なっていった」
社長「アイドルを売るためならどんな手でも使う黒井は、まさに圧倒的なスピードでこの業界の頂点にまで上りつめた」
社長「一方私は私で、自分の信念にもとづいてアイドルの育成に力を注いできた。確かに今も、資金的には潤っているとはいえない状況だが……それでも私は、自分の選んだ道に間違いは無かったと思っている」
小鳥「社長……」
春香「…………」
春香「! 社長さん」
小鳥「社長」
社長「君が言うように、今この状況で一番憂き目に遭っているのは他ならぬ君達アイドルだからな」
春香「社長さん。……ありがとうございます」
社長「ただそうは言っても、これから私が話すことには推測や憶測も多分に含まれる。ゆえに今はまだ君の心の中だけに留めておいてほしい。時が来れば、他の皆には私の方から改めて話す」
春香「……分かりました」
社長「ではまず……そうだな。私と黒井……961プロの黒井社長のことから話そうか」
春香「じゃあやっぱり、さっきの『黒井』というのは……」
社長「ああ。君の言うとおり、961プロの黒井社長のことだ」
春香「…………」
社長「私と黒井は、かつて一緒に仕事をしていた仲でね。同じ頃この業界に入り、良きライバル、そして友人として一緒に頑張ってきた」
社長「しかし、やがていつしか私と黒井はアイドルの育て方で意見がぶつかるようになってしまってね。彼のやり方が目に余るようになり、私は彼と話し合ったんだが、思いは受け入れてもらえなかった」
社長「そして結局、私達はそのまま袂を分かつことになったんだ」
春香「そうだったんですか……」
社長「それ以来、私と黒井は絶縁状態となった。またそれと共に業界における私達の立場も大きく異なっていった」
社長「アイドルを売るためならどんな手でも使う黒井は、まさに圧倒的なスピードでこの業界の頂点にまで上りつめた」
社長「一方私は私で、自分の信念にもとづいてアイドルの育成に力を注いできた。確かに今も、資金的には潤っているとはいえない状況だが……それでも私は、自分の選んだ道に間違いは無かったと思っている」
小鳥「社長……」
春香「…………」
社長「そうして私と黒井は別々の道を歩むこととなり、もう交わることは無いだろうと思ったまま、二十年近くの歳月が流れた」
春香「…………」
社長「そんな中、とある大手の投資会社から、うちの事務所に出資をさせてもらえないか、との申し出があった」
社長「なんでも、うちの事務所のアイドルに将来性を見出したとかなんとか……。最初は訝しんだが、その会社の社長に会って話を聞くうち、信頼に足る人物だと判断できたので、私は彼の申し出を受け入れることにした」
春香「…………」
社長「それから三年ほどの月日が流れた。事務所の利益はあまり上がらなかったが……それでもその社長はうちの事務所を見放さず、『いつか必ず芽が出ますよ』と言っては私を励ましてくれた」
社長「私は単純に嬉しかった。自分の会社を応援してくれる人がいるというのは、経営者としてこの上ない喜びだと……心の底からそう思った」
社長「ところがその頃、その社長がばつが悪そうな顔をして、ある話を切り出してきた。『実は息子が今年大学を出るのだが、まだ就職先が決まっていない。もしよかったらそちらの事務所に入れさせてもらえないか』と……」
春香「! …………」
社長「正直、私は当惑した。まずそもそも、うちの事務所には新たに人を雇うほどの資金的な余裕は無かったし……。何より、いくら世話になっている人の息子さんとはいえ、全く知らない人物をいきなり迎え入れろと言われても……」
社長「しかし先方の意思は強かった。何度も何度も頭を下げられ……結局、最後には根負けした。もちろん背後には、ここまでされて断った場合、もし出資をやめられては……という危惧があったのだが」
社長「そうしてその社長の息子がうちの事務所に入った。何の経験も無い新人だったが、経緯を踏まえると、当然ぞんざいに扱うことはできない……たとえ名ばかりとなってもやむを得ない。そういう思いで、私は彼に『プロデューサー』という役職を与えた」
春香「そうだったんですか……」
社長「その後の彼の働きぶりは……まあ、君達も知っての通りだ」
小鳥「正直言って、仕事と呼べるレベルじゃないですよね……」
春香「…………」
社長「とはいえ、その後は君達アイドル諸君の頑張りもあって、事務所としては大きく成長を遂げることができた」
社長「律子君も途中でプロデューサーに転向してくれたため、彼の分の穴を一層強固にカバーすることができるようになった」
社長「そして今年の夏には念願のファーストライブ開催も決まり、更には先日の芸能事務所対抗大運動会での女性アイドル部門優勝と……いよいよ、我が765プロダクションが勢いに乗ってきたところで……だ」
春香「……ここ最近の、仕事先での相次ぐトラブルですね」
社長「そうだ」
春香「…………」
社長「そんな中、とある大手の投資会社から、うちの事務所に出資をさせてもらえないか、との申し出があった」
社長「なんでも、うちの事務所のアイドルに将来性を見出したとかなんとか……。最初は訝しんだが、その会社の社長に会って話を聞くうち、信頼に足る人物だと判断できたので、私は彼の申し出を受け入れることにした」
春香「…………」
社長「それから三年ほどの月日が流れた。事務所の利益はあまり上がらなかったが……それでもその社長はうちの事務所を見放さず、『いつか必ず芽が出ますよ』と言っては私を励ましてくれた」
社長「私は単純に嬉しかった。自分の会社を応援してくれる人がいるというのは、経営者としてこの上ない喜びだと……心の底からそう思った」
社長「ところがその頃、その社長がばつが悪そうな顔をして、ある話を切り出してきた。『実は息子が今年大学を出るのだが、まだ就職先が決まっていない。もしよかったらそちらの事務所に入れさせてもらえないか』と……」
春香「! …………」
社長「正直、私は当惑した。まずそもそも、うちの事務所には新たに人を雇うほどの資金的な余裕は無かったし……。何より、いくら世話になっている人の息子さんとはいえ、全く知らない人物をいきなり迎え入れろと言われても……」
社長「しかし先方の意思は強かった。何度も何度も頭を下げられ……結局、最後には根負けした。もちろん背後には、ここまでされて断った場合、もし出資をやめられては……という危惧があったのだが」
社長「そうしてその社長の息子がうちの事務所に入った。何の経験も無い新人だったが、経緯を踏まえると、当然ぞんざいに扱うことはできない……たとえ名ばかりとなってもやむを得ない。そういう思いで、私は彼に『プロデューサー』という役職を与えた」
春香「そうだったんですか……」
社長「その後の彼の働きぶりは……まあ、君達も知っての通りだ」
小鳥「正直言って、仕事と呼べるレベルじゃないですよね……」
春香「…………」
社長「とはいえ、その後は君達アイドル諸君の頑張りもあって、事務所としては大きく成長を遂げることができた」
社長「律子君も途中でプロデューサーに転向してくれたため、彼の分の穴を一層強固にカバーすることができるようになった」
社長「そして今年の夏には念願のファーストライブ開催も決まり、更には先日の芸能事務所対抗大運動会での女性アイドル部門優勝と……いよいよ、我が765プロダクションが勢いに乗ってきたところで……だ」
春香「……ここ最近の、仕事先での相次ぐトラブルですね」
社長「そうだ」
社長「元々、プロデューサーの彼のミスで仕事が上手くいかないことは間々あった。しかし最近頻発している数々のトラブルは、明らかに性質が従来のそれとは異なっている」
社長「どう考えても、彼一人のミスだけで発生したものとは思えない……明らかに、外部にこのトラブルを惹起している者がいる」
社長「そしてそれはおそらく、事務所内の情報が外部に伝えられることによって起こされている……この可能性に気付いた時、私は天海君と同じ推測をした」
春香「プロデューサーさんが、スパイ……」
社長「そうだ。確証は無いが、しかし仮にそうであるとすれば、情報を外に漏らしているのは彼としか考えられない。だから私は彼の身辺を調べることにした」
社長「彼の父親が経営している投資会社……この会社も、これまでの社長の態度からある程度は信頼していたが、この状況では調べないわけにはいかない」
春香「でも調べるって……一体どうやって?」
社長「善澤君のことは知っているね?」
春香「えっ。はい。よく社長さんと一緒にお茶を飲んでる……」
社長「そうだ。彼はああ見えても名うての記者でね。あらゆる業界の事情に通じている」
春香「そうだったんですか」
社長「そして私の昔馴染みでもある。だからその縁で、件の投資会社についても調べてもらった」
社長「その結果……驚くべき事実が明らかになった。件の投資会社は、裏で961プロから多額の資金提供を受けており、さらにその事業活動のほぼ全てを961プロに牛耳られていたんだ」
春香「えっ!」
社長「しかし961プロとその投資会社との間に資本関係は無く、表面的にはまるで無関係に見えるようにされていた」
社長「どう考えても、彼一人のミスだけで発生したものとは思えない……明らかに、外部にこのトラブルを惹起している者がいる」
社長「そしてそれはおそらく、事務所内の情報が外部に伝えられることによって起こされている……この可能性に気付いた時、私は天海君と同じ推測をした」
春香「プロデューサーさんが、スパイ……」
社長「そうだ。確証は無いが、しかし仮にそうであるとすれば、情報を外に漏らしているのは彼としか考えられない。だから私は彼の身辺を調べることにした」
社長「彼の父親が経営している投資会社……この会社も、これまでの社長の態度からある程度は信頼していたが、この状況では調べないわけにはいかない」
春香「でも調べるって……一体どうやって?」
社長「善澤君のことは知っているね?」
春香「えっ。はい。よく社長さんと一緒にお茶を飲んでる……」
社長「そうだ。彼はああ見えても名うての記者でね。あらゆる業界の事情に通じている」
春香「そうだったんですか」
社長「そして私の昔馴染みでもある。だからその縁で、件の投資会社についても調べてもらった」
社長「その結果……驚くべき事実が明らかになった。件の投資会社は、裏で961プロから多額の資金提供を受けており、さらにその事業活動のほぼ全てを961プロに牛耳られていたんだ」
春香「えっ!」
社長「しかし961プロとその投資会社との間に資本関係は無く、表面的にはまるで無関係に見えるようにされていた」
社長「もっとも、これだけなら単なる偶然とも思える。しかし善澤君がさらに調べてくれたところによると……ここ最近のうちの事務所に対する数々のトラブルも、どうやら961プロが主体となって仕組んでいるものらしい、ということだ」
春香「! …………」
社長「961プロは、今やこの業界の絶対的王者といっても過言ではないほどの地位にいる。同業者の多くはそんな961プロに目を付けられることを恐れているが、同時に、あわよくばその利権にあずかれないかと目を光らせている者も少なくない」
春香「それは……どういうことですか?」
社長「ここ最近、うちの事務所で頻発している数々のトラブル……そのいずれについても、我々の内部情報と、それを利用できる立場にいる者の存在が必要だ」
春香「利用できる立場にいる者……ですか?」
社長「たとえば、本来君達がするはずだった仕事を、たまたま他の事務所のアイドルが代役を務めることになった……とかね」
春香「あっ」
社長「つまり我々を外しても、その穴埋めができなければ結局仕事に穴が出る。でも逆にそれを埋めることができるならば問題は無い、ということだ」
春香「じゃあ……私達を陥れようとしていたのは……」
社長「そう。961プロのみならず、その利権にあずかろうとしている他のアイドル事務所――つまり、961プロに協力することで何らかの見返りが得られることを期待している連中――も関与している可能性が極めて高い。またそれらの事務所は件の運動会で我々765プロに出し抜かれたという恨みもあろう」
春香「そんな……」
社長「だがこれはまだ確定的な情報ではない。黒井もしたたかな男だ。そう簡単にボロは出すまい。善澤君も『765プロ周辺でここ最近起こっていることを総合すると、961プロとそれに追随する複数のアイドル事務所による“765プロ潰し”が行われているとみるのが最も自然だ』と述べるに留めている」
春香「でももしそうだとすると、それを可能にしているのは……」
社長「ああ。彼が持ち出していると思われる我々765プロの内部情報だ」
春香「…………」
春香「! …………」
社長「961プロは、今やこの業界の絶対的王者といっても過言ではないほどの地位にいる。同業者の多くはそんな961プロに目を付けられることを恐れているが、同時に、あわよくばその利権にあずかれないかと目を光らせている者も少なくない」
春香「それは……どういうことですか?」
社長「ここ最近、うちの事務所で頻発している数々のトラブル……そのいずれについても、我々の内部情報と、それを利用できる立場にいる者の存在が必要だ」
春香「利用できる立場にいる者……ですか?」
社長「たとえば、本来君達がするはずだった仕事を、たまたま他の事務所のアイドルが代役を務めることになった……とかね」
春香「あっ」
社長「つまり我々を外しても、その穴埋めができなければ結局仕事に穴が出る。でも逆にそれを埋めることができるならば問題は無い、ということだ」
春香「じゃあ……私達を陥れようとしていたのは……」
社長「そう。961プロのみならず、その利権にあずかろうとしている他のアイドル事務所――つまり、961プロに協力することで何らかの見返りが得られることを期待している連中――も関与している可能性が極めて高い。またそれらの事務所は件の運動会で我々765プロに出し抜かれたという恨みもあろう」
春香「そんな……」
社長「だがこれはまだ確定的な情報ではない。黒井もしたたかな男だ。そう簡単にボロは出すまい。善澤君も『765プロ周辺でここ最近起こっていることを総合すると、961プロとそれに追随する複数のアイドル事務所による“765プロ潰し”が行われているとみるのが最も自然だ』と述べるに留めている」
春香「でももしそうだとすると、それを可能にしているのは……」
社長「ああ。彼が持ち出していると思われる我々765プロの内部情報だ」
春香「…………」
社長「繰り返すが、確証は無い。あくまでも状況的にそうである可能性が最も高いというに過ぎん」
春香「…………」
社長「しかし私には、確証は無いが確信はある。私は黒井の性格をよく知っているからね」
春香「というと?」
社長「これはあくまでも私個人の考えだが……あの日袂を分かってから、奴はずっと、自分の考えに同意しなかった私を恨んでいたのだろうと思う」
社長「そしてずっと、私の考えを根本から否定し、圧倒的な権力で私を叩き伏せることを目論んでいたのだろう」
春香「…………」
社長「やがて奴は力をつけ、業界トップの地位に君臨した。そしてその潤沢な資金にものをいわせて、件の投資会社を支配するに至った」
社長「さらにいつかスパイを送り込むことまでを企図して、その会社にうちの事務所に対する出資までさせた」
社長「そして彼をうちの事務所に送り込み……事務所の仕事をいい加減にこなさせ、内部からうちの事務所を瓦解させようとした。同時に、彼に『いい加減な人間』を演じさせることで『スパイ』などという狡猾な側面を我々に察知されないようにしていた」
春香(あっ。私と同じ考え……。じゃあセクハラも黒井社長の指示だったのかな? まあ社長さんはセクハラの事は知らないから聞きようがないけど……)
社長「それで我々を内部から崩壊させられればよし。させられなければ……」
春香「次は外部から……ですか」
社長「そうだ。我々がそれにも動ぜず力を伸ばし始めると、黒井は、今度は彼をして自分の考えに同調するであろう他の事務所に我々の内部情報を流させ、組織ぐるみで我々を潰しにかかった」
社長「それが今の状況……私はこう考えている」
春香「…………」
小鳥「もし本当にそうだとしたら……。なんでそこまで……」
社長「さあな。ただ奴にも曲げられない信念があるのだろうとは思うよ」
春香「…………」
社長「しかし私には、確証は無いが確信はある。私は黒井の性格をよく知っているからね」
春香「というと?」
社長「これはあくまでも私個人の考えだが……あの日袂を分かってから、奴はずっと、自分の考えに同意しなかった私を恨んでいたのだろうと思う」
社長「そしてずっと、私の考えを根本から否定し、圧倒的な権力で私を叩き伏せることを目論んでいたのだろう」
春香「…………」
社長「やがて奴は力をつけ、業界トップの地位に君臨した。そしてその潤沢な資金にものをいわせて、件の投資会社を支配するに至った」
社長「さらにいつかスパイを送り込むことまでを企図して、その会社にうちの事務所に対する出資までさせた」
社長「そして彼をうちの事務所に送り込み……事務所の仕事をいい加減にこなさせ、内部からうちの事務所を瓦解させようとした。同時に、彼に『いい加減な人間』を演じさせることで『スパイ』などという狡猾な側面を我々に察知されないようにしていた」
春香(あっ。私と同じ考え……。じゃあセクハラも黒井社長の指示だったのかな? まあ社長さんはセクハラの事は知らないから聞きようがないけど……)
社長「それで我々を内部から崩壊させられればよし。させられなければ……」
春香「次は外部から……ですか」
社長「そうだ。我々がそれにも動ぜず力を伸ばし始めると、黒井は、今度は彼をして自分の考えに同調するであろう他の事務所に我々の内部情報を流させ、組織ぐるみで我々を潰しにかかった」
社長「それが今の状況……私はこう考えている」
春香「…………」
小鳥「もし本当にそうだとしたら……。なんでそこまで……」
社長「さあな。ただ奴にも曲げられない信念があるのだろうとは思うよ」
春香「でも仮に社長さんの考えが正しいとしても……黒井社長はこんな遠大な計画を、全部たった一人で考えたんでしょうか?」
社長「いや、おそらくそうではない。実は私と黒井が同じ事務所で仕事をしていたとき、黒井が自ら他の事務所から引き抜いてきた部下の男が同じ事務所にいてね。その男は文字通り黒井の右腕ともいうべき人物で、黒井が私の元から去ったとき、迷わず黒井について事務所を出て行ったんだ」
社長「そしてその男は今もそのまま961プロの取締役として在籍している……いわば黒井の側近、参謀だ」
社長「この男が今も黒井の右腕として、黒井と共に“765プロ潰し”を画策しているとみてまず間違い無いだろう」
春香「なるほど」
小鳥「でも社長。これからどうするんですか? さっきも言いましたが、彼に情報を持ち出されているとほぼ分かっていながら放置というのは……」
社長「これも同じく先ほど述べたとおりだ。仮に今、下手に動いて件の投資会社に出資を打ち切られでもしたら、事務所の経営がたちゆかなくなるおそれがある」
春香「でも……その出資自体、黒井社長の計画の一部なんだとしたら、どのみちいずれなくなるんじゃ……?」
社長「おそらくはな。だが今はまだこのままでいい。我々は黒井の策には気付かぬふりをして、黒井側の出資がなくなっても持ちこたえられるよう、力をつけられるようにすればいい」
春香「社長さん」
小鳥「社長」
社長「そのために最も必要なのは、君達アイドル諸君の更なる躍進だ。幸いにも二週間後にはファーストライブがある。これで風向きが変われば、黒井の妨害工作など関係無くなるはずだ。そうすればもう何も怖くはない。彼を追い出すことも含めて、前向きに考えられるようになるだろう」
社長「だから今はとにかく、二週間後のファーストライブに全力を注いでくれたまえ」
春香「……分かりました」
社長「いや、おそらくそうではない。実は私と黒井が同じ事務所で仕事をしていたとき、黒井が自ら他の事務所から引き抜いてきた部下の男が同じ事務所にいてね。その男は文字通り黒井の右腕ともいうべき人物で、黒井が私の元から去ったとき、迷わず黒井について事務所を出て行ったんだ」
社長「そしてその男は今もそのまま961プロの取締役として在籍している……いわば黒井の側近、参謀だ」
社長「この男が今も黒井の右腕として、黒井と共に“765プロ潰し”を画策しているとみてまず間違い無いだろう」
春香「なるほど」
小鳥「でも社長。これからどうするんですか? さっきも言いましたが、彼に情報を持ち出されているとほぼ分かっていながら放置というのは……」
社長「これも同じく先ほど述べたとおりだ。仮に今、下手に動いて件の投資会社に出資を打ち切られでもしたら、事務所の経営がたちゆかなくなるおそれがある」
春香「でも……その出資自体、黒井社長の計画の一部なんだとしたら、どのみちいずれなくなるんじゃ……?」
社長「おそらくはな。だが今はまだこのままでいい。我々は黒井の策には気付かぬふりをして、黒井側の出資がなくなっても持ちこたえられるよう、力をつけられるようにすればいい」
春香「社長さん」
小鳥「社長」
社長「そのために最も必要なのは、君達アイドル諸君の更なる躍進だ。幸いにも二週間後にはファーストライブがある。これで風向きが変われば、黒井の妨害工作など関係無くなるはずだ。そうすればもう何も怖くはない。彼を追い出すことも含めて、前向きに考えられるようになるだろう」
社長「だから今はとにかく、二週間後のファーストライブに全力を注いでくれたまえ」
春香「……分かりました」
【(回想終了)765プロ事務所近くの公園】
春香「そして二週間後のファーストライブ……結局、この日は特に妨害は無かった。多分だけど、これで更に私達の人気を一時的にせよ上げさせて、私達の反対勢力となるアイドル事務所の数を増やしたかったんじゃないかな?」
美希「なるほどなの。でも春香。この日って……」
春香「そう。このファーストライブがあった日……さっきレムが話してくれた経緯で、私はデスノートを手に入れた」
美希「…………」
春香「そしてその後、五日間ほど悩みに悩んで……結局最後には、私はデスノートを使うと決めた。私に命をくれたジェラスのためにも、私は絶対に765プロの皆と一緒にトップアイドルになるんだって」
美希「じゃあ、その為にノートを使うっていうのは……」
春香「うん。今のままじゃ、どんなに実力があっても私達はトップアイドルにはなれない。実力とは無関係の力を使って、私達に害をなそうとする人達がいる限り」
美希「…………」
春香「だから私は決意した。私達765プロに害なす全ての者を、このデスノートを使って排除しようと」
美希「! …………」
春香「そしてそのうえで……765プロの皆と一緒にトップアイドルになる。それが私の使命であり、私に命を与えて死んでいったジェラスの夢」
美希「……春香……」
春香「そして二週間後のファーストライブ……結局、この日は特に妨害は無かった。多分だけど、これで更に私達の人気を一時的にせよ上げさせて、私達の反対勢力となるアイドル事務所の数を増やしたかったんじゃないかな?」
美希「なるほどなの。でも春香。この日って……」
春香「そう。このファーストライブがあった日……さっきレムが話してくれた経緯で、私はデスノートを手に入れた」
美希「…………」
春香「そしてその後、五日間ほど悩みに悩んで……結局最後には、私はデスノートを使うと決めた。私に命をくれたジェラスのためにも、私は絶対に765プロの皆と一緒にトップアイドルになるんだって」
美希「じゃあ、その為にノートを使うっていうのは……」
春香「うん。今のままじゃ、どんなに実力があっても私達はトップアイドルにはなれない。実力とは無関係の力を使って、私達に害をなそうとする人達がいる限り」
美希「…………」
春香「だから私は決意した。私達765プロに害なす全ての者を、このデスノートを使って排除しようと」
美希「! …………」
春香「そしてそのうえで……765プロの皆と一緒にトップアイドルになる。それが私の使命であり、私に命を与えて死んでいったジェラスの夢」
美希「……春香……」
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