元スレ美希「デスノート」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
551 = 541 :
【(回想終了)765プロ事務所近くの公園】
リューク「……そういう経緯で、俺はお前にノートを渡した」
美希「じゃあ、じゃあ……全部……」
リューク「そうだ。全ては偶然なんかじゃない。お前がデスノートを拾ったことも、お前のすぐ近くに他のデスノートの所有者がいたことも……全部、俺の仕組んだ必然だ」
美希「……だったら何で、英語でノートの説明なんて付けてたの? 最初から春香の身近な人間に使わせるつもりでいたなら、何で……」
リューク「あれは拾った人間にノートを信じさせるためのカモフラージュだ。日本語で『どうぞ使って下さい』と言わんばかりに説明文が書いてあったらかえって怪しまれるんじゃないかと思ってな」
美希「……じゃあ全部、ウソだったの? 退屈だったから落とした、とか言ってたのに……」
リューク「いや、それは本当だ」
美希「…………」
リューク「俺はあの日言ったはずだ。『退屈だったからノートを落とした』『人間界に居た方が面白いと踏んだ』……いずれも本当だ。詳しい経緯の説明は省いたけどな」
美希「…………」
リューク「さて、どうする? ミキ。これでお前は、これまで自分の周りで起こっていた出来事を全部知った。俺の事をどう思おうがお前の自由だし、デスノートを使い続けるかどうかもお前の自由だ」
美希「…………」
リューク「もし『今までずっと騙されてた。もうこんなノート使いたくない』って言うなら、今すぐデスノートの所有権を放棄することだってできる。その時は最初に言った通り、お前のデスノートに関する記憶だけ消させてもらう」
美希「……所有権を、放棄……」
リューク「ああ。ちなみにその場合、所有権は今お前のノートを預かっているハルカにそのまま移ることになる」
美希「…………」
リューク「もしそうするつもりなら、後はもう全部ハルカに任せて――……」
美希「……なんて、するわけないの」
リューク「! …………」
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美希「ここまできて……それに春香にもあそこまでしてもらって……今更全部を無かったことになんて、そんなのできるわけないの」
リューク「…………」
美希「それにリュークだって……ミキがそんなことするはずないって分かってるから、これまでの事、全部教える気になったんでしょ?」
リューク「……ククッ。まあな」
美希「いいよ。ミキがやることはこれまでと何も変わらない。デスノートで悪い人達を消していき……皆が笑って過ごすことのできる、心優しい人達だけの世界を作るの」
リューク「ああ。そうこなくっちゃな。ミキ」
美希「じゃあそういうわけで、リューク。今日帰ったら、早速カメラ探しよろしくなの」
リューク「え? でも俺昨日もリンゴ食ったし、今日はまだ別に……」
美希「……ミキの事、今までずっと騙してたくせに……」ジトー
リューク「……分かった分かった。別に騙してたつもりはないが……今日だけは特別に探してやるよ」
美希「! 本当?」
リューク「ああ。でも次からは俺がリンゴを食いたくなった時だけだからな」
美希「うん! ありがとうなの。リューク」
リューク「はいはい。どういたしましてなの」
美希「もー。ミキのマネしちゃ、ヤ!」
リューク「ククッ。悪い悪い」
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【その翌日・765プロ事務所近くのファミレス】
春香「えーそれではこれより、真と雪歩のセンター試験お疲れ様会を開きたいと思います! 皆、ジュースは手に持ったね? では……」コホン
春香「お疲れ様でしたーっ! イエーイ!」
一同「お疲れ様でしたー!」
雪歩「はぁ……これでやっと肩の荷が下りた気分だよ……」
千早「お疲れ様。萩原さん」
雪歩「ありがとう。千早ちゃん」
千早「萩原さんはセンター利用で出願するのよね」
雪歩「うん。いくつか出してみて、通ったとこに行くつもりなんだ」
千早「そう。受かるといいわね」
雪歩「ありがとう。結構難しかったからあんまり自信は無いんだけど……でもとりあえず暫くは受験の事は忘れて、リフレッシュすることにするよ」
千早「それがいいわね。どこか旅行でも行くの?」
雪歩「お仕事もあるから旅行は難しいけど……今度、自分へのご褒美として一人焼肉でも行こうかなって」
千早「一人焼肉?」
雪歩「うん。今度千早ちゃんも行ってみたら? 一人だと一枚一枚のお肉と深く向き合えるからお勧めだよ。もちろん皆と行くのも楽しいけど」
千早「そ、そう……。考えておくわ」
雪歩「ああ、今から楽しみだなあ……何食べようかなぁ……うふふふふ……」
千早「…………」
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真「ねぇねぇ聞いてよ伊織! ボク、ついに運命の王子様と出会っちゃったかも! それもセンター試験の会場で!」
伊織「はぁ? 何なのよいきなり」
真「実は昨日も今日も、隣の受験生がなかなか来なくてさ。試験5分前くらいに教室に入って来たんだよね」
伊織「ふぅん。それで?」
真「でもその人、いざ試験が始まったら解くのめちゃくちゃ速くてさ……どの科目も半分以上時間残して、残りずっと寝てたんだよ」
伊織「それ、単に解けなくて諦めただけじゃないの?」
真「いや、あれは違うね。絶対超天才君だよ!」
伊織「なんでそこまで断言できるのよ」
真「だってすっごくイケメンだったし! 背も高くてすらっとしてて、まるで王子様みたいだったな~」
伊織「どういう根拠よ……って、ああ、それで運命の王子様って……そういうこと?」
真「そうなんだよ! ああ、あの人と一緒の大学に行けたらな~」
響「いや、でも確か真の志望校って女子大じゃなかったっけ?」
真「うん、そうなんだよね。だから今からでも国立出してみようかなって。あの王子様は多分国立……それもきっと東大とかだと思うし!」
伊織「いやいや、あんた東大舐めすぎでしょ……」
雪歩「それ以前に、そもそも真ちゃんの受験科目じゃ国立受けられないと思うけど……」
真「え? そうなの?」
雪歩「だって理科とか受けてないよね? 真ちゃん……」
真「うん。だってボク文系だし……え? もしかして、国立だと文系でも理科って要るの?」
響「思いっきり要ると思うぞ……」
真「えーっ。そうなの? 知らなかったよ。ちぇっ、残念だなぁ」
雪歩「真ちゃん……」
千早「とても受験生とは思えない発言ね……」
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響「はー。でもいよいよ自分達も受験生かー。頑張らないとなー」
千早「そうね。アイドルのお仕事との両立は大変だと思うけど、頑張りましょう。萩原さんも真も、こうして乗り切ったのだし」
雪歩「まあ私達の場合、夏くらいまではそこまでお仕事が忙しくなかったっていうのはあるけどね」
真「確かにね。今の忙しさに加えて受験勉強もってなると、かなり大変かも……」
響「そうだなー。特にファーストライブ以降、学校休む回数もちょっとずつ増えてきてるし」
千早「私も……海外レコーディングで大分休んでしまったから、追いつくのが大変だわ」
伊織「それでもやっぱり、皆大学には行くもんなのね」
真「まあ一応ね。ボクも父さんから、大学行くのを条件にアイドル続けても良いって言われてるし」
雪歩「私も同じような感じかな」
やよい「皆さん大学とかすごいです……私なんか高校に行けるかどうかも怪しいのに……」
響「でもやよいは確か、友達のお兄さんに家庭教師してもらえるんでしょ? すっごく頭良いっていう噂の」
やよい「はい。それはそうなんですけど……前に春香さんが言ってたみたいに、私の頭でついていけるかどうか不安になってきて……」
千早「高槻さんなら大丈夫よ」
やよい「そうでしょうか……」
千早「ええ。高槻さんなら大丈夫だわ」
やよい「……えへへっ。千早さんにそう言ってもらえると、なんだか大丈夫なような気がしてきたかも! ありがとうございまーっす!」
千早「ふふっ。そういえば、春香もその人に家庭教師してもらうって言ってたわよね」
春香「うん。私は学校での勉強は基本捨てて、そのお兄さんに教えてもらう時間だけで受験を乗り切るつもりだよ!」
伊織「何もそこまで割り切らなくても」
春香「だって今は一分一秒が惜しいっていうか……極力多くの時間をアイドルのお仕事に使いたいからさ」
美希「! …………」
真「ま、確かに最近、ボク達のお仕事も増えていく一方だしね。ところで伊織と美希は大丈夫なの? 受験もうすぐだけど」
伊織「私は問題無いわ」
美希「ミキも多分大丈夫なの」
春香「よーし。じゃあ全員無事に合格したら、また改めて祝勝会をしないとね! 響ちゃんの奢りで!」
響「えぇ!? なんで自分!?」
春香「いや、なんとなくこういう役回りは響ちゃんかなって」
響「なんでだよ! おかしいでしょ!」
春香「まあまあ。あ、じゃあ私ちょっとお手洗いに……」チラッ
美希「! ミキも行くの」
556 = 541 :
【ファミレス内・トイレ前の通路】
春香「美希」
美希「春香」
春香「ごめんね。なかなか二人で話せるタイミング無さそうだったから……」
美希「ううん、大丈夫なの。ミキもそろそろどっかで春香と二人で話したいなって思ってたし」
春香「そっか。……で、カメラはあった?」
美希「ううん。昨日帰ってからリュークが部屋中探してくれたけど、カメラも盗聴器も無かったの」
春香「そう。じゃあとりあえず一昨日までの裁きについては観られてないってことだね。良かった」
美希「うん。それから春香、昨日早速ミキの代わりに裁きしてくれてありがとうなの」
春香「いえいえ。まだカメラは無いってことだけど、当面はこのまま私が裁きをするってことでいいよね? 今後いつ付けられないとも限らないし」
美希「うん。よろしくお願いしますなの。カメラもまたリュークに探してもらうようにするの」
リューク「まああくまでも俺がリンゴを食いたくなった時に、だけどな」
春香「分かった。じゃあ暫くはこのままで。引き続き頑張ろう! 美希」
美希「はいなの! 春香」
557 = 541 :
一旦ここまでですよ! ここまで!
558 :
悪い人達(身内除く)
559 :
乙
まっずいなぁ
このリュークは春香に魅入られてる気がする
原作と優先順位が違うから美希が若干不利になった瞬間に切り捨てかねない
560 :
デスノートを一度でも使った時点で人生詰みだからなぁ…
561 :
ライトと春香が接触しそうなフラグが...
562 :
というかもう接触してるんじゃね?
ライトと手組んだら美希が切り捨てられる気がする、、、
563 :
白いライトなら春香は一番嫌いなタイプだろ。
黒ライトでも利用はするが軽蔑してそう。
564 :
【ファミレス内・トイレ前の通路】
春香「美希」
美希「春香」
春香「ごめんね。なかなか二人で話せるタイミング無さそうだったから……」
美希「ううん、大丈夫なの。ミキもそろそろどっかで春香と二人で話したいなって思ってたし」
春香「そっか。……で、カメラはあった?」
美希「ううん。昨日帰ってからリュークが部屋中探してくれたけど、無かったの」
春香「そう。じゃあとりあえず一昨日までの裁きについては観られてないってことだね。良かった」
美希「うん。それから春香、昨日早速ミキの代わりに裁きしてくれてありがとうなの」
春香「いえいえ。まだカメラは無いってことだけど、当面はこのまま私が裁きをするってことでいいよね? 今後いつ付けられないとも限らないし」
美希「うん。よろしくお願いしますなの。カメラもまたリュークに探してもらうようにするの」
リューク「まああくまでも俺がリンゴを食いたくなった時に、だけどな」
春香「分かった。じゃあ暫くはこのままで。引き続き頑張ろう! 美希」
美希「はいなの! 春香」
566 = 564 :
【その二日後・星井家】
美希「ただいまなのー」
星井母「お帰り、美希」
菜緒「お帰りー」
美希「今日、パパは?」
星井母「遅くなるって」
美希「そっか」
菜緒「でもパパ、もうキラ事件の担当じゃなくなったんでしょ? なのに何でまだ帰って来るの遅いんだろ?」
星井母「さあ」
美希「ミキ的には、前に比べたら家に居る時間が大分増えたから、とりあえずは良いんじゃないかなって思うな」
菜緒「まあねぇ」
美希「…………」
美希(三日前、リュークがミキの部屋を調べてくれた時はまだカメラは無かったけど……今はどうか分からない)
美希(このリビングにだって、カメラや盗聴器が仕掛けられているかもしれない)
美希(家の中では、常に観られている可能性を考えながら行動しなきゃ……)
菜緒「あっ。美希のCM」
星井母「あら、ホント」
美希「なんか未だにTVの中の自分を観るのは慣れないの」
菜緒「ねぇ、この一緒に出てる子誰?」
美希「海砂ちゃんなの」
菜緒「ふーん。かわいいね」
星井母「ミキミキとミサミサって、なんかダジャレみたいね」
美希「それはちょっと失礼って思うな」
美希(自然に……自然に……決して怪しまれないように……)
567 = 564 :
【同日22時頃・美希の自室】
美希「…………」
美希(とりあえず今日はひたすらスマホのアプリゲームをしてやり過ごすの)
美希(リュークはまだ探してくれる気配は無いし……)
美希(でも大丈夫。何も心配することは無いの。裁きは毎日、春香が代わりにやってくれてるし……)
美希(大丈夫……大丈夫……)
美希「…………」
美希(もう10時過ぎか……そろそろ寝ようっと)
(部屋の電気を消す美希)
美希(でも正直、ここ最近は寝つき良くないんだよね……常にこんなことばっかり考えてるから)
美希(本当にカメラなんて付けられたりするのかな? 春香の考え過ぎじゃないのかな……)
美希(まああと一か月くらいの間何も無ければ、春香にノート返してもらって、また自分で裁きするようにしよう)
美希(あんまり春香にばかり迷惑掛けられないしね)
美希「……あふぅ」
568 = 564 :
【その二日後・美希の自室】
美希「…………」
美希(カメラで観られている可能性を意識しながら生活するのもなんとなく慣れてきたの)
美希(今日は夕食の後はずっと勉強するって決めてたし、このまま寝る前まで集中して……)
美希「…………」チラッ
リューク「…………」ウネウネ
美希(そういえば、今日のリュークはなんだか少し様子がおかしいの)
美希(さっきからずっと体をひねったりして……あっ)
――俺が長時間リンゴを食べなかった場合……体をひねったり、逆立ちしたりとか……人間でいう禁断症状が出るな。
美希(禁断症状……!)
美希(確かに、もう五日も食べてない……ということは……)
リューク「あー。ダメだ。もうそろそろリンゴ食わないと……」
美希(! やっぱり……)
リューク「正直、カメラ探すのが面倒だから我慢してたんだが……そうも言ってられないな」
美希「…………」
リューク「じゃあ探すぞ。ミキ。無いことが分かったら後でちゃんとリンゴくれよ」
美希「…………」
美希(大丈夫、大丈夫……。もし本当にカメラがあったとしても、今まで常にその可能性を意識しながら生活してきた)
美希(絶対にボロは出さない……。裁きは春香がやってくれてるし……)
美希(だからミキが不安になる要素は、何も……)
リューク「……おい。ミキ」
美希「!」
リューク「落ち着いて聞けよ。エアコンの中にカメラがあった」
美希「! …………」
リューク「ククッ。まさか本当に仕掛けられてるとはな。ハルカに救われたな、ミキ」
美希「…………」
リューク「じゃあ俺はとりあえずこの部屋にあるカメラを全部探し出す。こんないきなり見つかったんだ。どうせ一個や二個じゃないだろう。ま、せいぜいお前は平静を装って勉強を続けてくれ」
美希「…………」
美希(ほ、本当に……仕掛けられていた……!)
美希(じゃあ今のこの状況も、全部、Lに観られている……?)
美希(手、手が震え……)
美希(あ、焦るな……焦っちゃダメ……今変な動揺が顔に出ると、それだけで怪しまれちゃう……!)
美希(リュークの言うとおり、平静を装わないと……!)
美希(大丈夫。大丈夫……。ミキはただの受験生……。ミキはただの受験生……)
美希(ごく普通に方程式を解いて、ごく普通に答え合わせをすればいいだけ……)
美希(この状況だけで、疑われるはず、ないの……!)
569 = 564 :
リューク「おっ。天井の照明の中にも発見。机の上はここからのカメラだけでもバッチリだ」
美希「! …………」
美希(机の上……つまりこの真上から、Lが……)
美希(ああ、まずい。まずいの。頭がパニックになりそう)
美希(ええっと、問題……問題を早く解かないと、怪しまれ……あっ、そうだ。解けなくても怪しまれないように、発展問題を……)
美希(いや、違う。いきなりそんなことしたら余計変に思われるから……ああ、なんかこんがらがってきたの)
リューク「ククッ。大丈夫か? ミキ。顔が青ざめてきてるぞ」
美希「! …………」
リューク「まあ勉強中で良かったな。これなら多少表情が強張っていてもそんなに違和感は無い。ただ問題に手こずってるようにしか見えないからな」
美希「…………」
リューク「しかしLも大したもんだな。もう6個も見つけたぜ」
美希「! …………」
美希(もう、6個も……)
リューク「この分だとまだまだありそうだな……ていうかこれ、俺がリンゴ食える死角なんてあるのか?」
美希「…………」
美希(大丈夫……大丈夫なの……)
美希(カメラがどれだけ仕掛けられていようが、今の状況でミキが怪しまれるようなことは絶対に無い……!)
美希(今はただ、目の前の問題だけに集中……集中……)
570 = 564 :
【同日21時頃・美希の自室】
リューク「はぁ……はぁ……」
美希「…………」
リューク「み……ミキ……。カメラ多分全部探し出したぜ……。死神も頑張ると疲れるんだな……」
美希「! …………」
リューク「えっと……ああ、カメラの場所と向き、全部口で説明するんだったな……。ちょっと大変だからよく頭に入れてくれ。二度説明するのはごめんだからな」
美希「…………」
(カメラの場所と向きを美希に伝えるリューク)
リューク「……以上、全部で64個。カメラ付けてる奴は見つかるの覚悟で付けてるとしか思えない」
美希「! …………」
美希(64個……! まさか、ここまで……!)
美希(これはもう、完全にミキをキラとして疑ってるとしか……)
美希(ど、どうしよう……どうしよう……)
リューク「で……この状態で俺どこでリンゴ食うの?」
美希(リュークが何か言ってる……ああ、だめなの。何も頭に入ってこない)
リューク「あっ……家の中じゃ喋れないんだったな。明日外に出たときに教えてくれ」
美希「…………」
美希(怖い……怖いよ……)
美希(そうだ! 春香、春香に早く知らせなきゃ……!)
美希(……あっ)
――でもメールや電話は無しね。そんなの、その気になれば後からいくらでも履歴とか調べられちゃうから。あくまでも事務所で会ったときに、口頭で。
美希(そうだった……今春香に伝えるわけにはいかない)
美希(怖いけど……不安に押し潰されそうになるけど……今は、今は我慢しなきゃ……)
美希(明日、事務所で春香に会うまで……)
美希(今は……まだ9時半前か。少し早いけど……)
(部屋の電気を消し、ベッドに入る美希)
美希(早く明日になってほしい。早く春香に会いたいよ……)
美希(……春香……)
571 = 564 :
【その翌日・765プロ事務所の屋上】
春香「ろ……64個!?」
美希「は、春香。声大きいの」
春香「ご、ごめん。でもそれ……美希の部屋だけで?」
美希「…………」コクッ
春香「カメラの設置自体は想定の範囲内だったけど……まさかそこまで……」
春香(やっぱりLはこういう性格……目的の為なら手段を選ばない。それのみならず……限度ってものを知らない!)
美希「ねぇ、春香。これって多分、盗聴器も……」
春香「うん。カメラを付けずに盗聴器だけ付けるとは考えにくいと思ってたけど……カメラがあった以上は、普通に考えてまず盗聴器もあるだろうね」
美希「! …………」
春香「カメラの場合、どんなに小さいものでも必ずレンズがこっちからも見える位置にあるはずだから、まだ探しやすいけど……盗聴器の場合はそうはいかない。つまりリュークでも探しきれるとは限らない。万全を期すなら、探知機を買ってきて入念に調べないと」
美希「…………」
春香「でもそれをするのは当然、カメラが全て外されたのを確認してから……だから今はとにかく、何も気付いてないふりをしつつ、これまで通りの生活を続けるしかないね」
美希「ねぇ、春香……」
春香「ん?」
美希「ミキ、やっぱり捕まっちゃうのかな……?」
春香「美希」
美希「今までは、ずっと『大丈夫、大丈夫』って自分に言い聞かせてたんだけど……でもそれは多分、心のどこかで『実際そこまではされないだろう』って思ってたからで……」
春香「…………」
美希「だから、いざ現実にこうやってカメラとか仕掛けられると、不安が一気に込み上げて来て……もうどうしたらいいのか、分からなくなってきちゃって……」
春香「……大丈夫だよ。美希」ギュッ
(美希の身体を抱きしめる春香)
美希「! ……春香……」
572 = 564 :
春香「何があっても、私が絶対に美希を守ってあげるから」
美希「……春香……」
春香「それに裁きも、美希がやっていた時と全く同じように続けていく」
美希「…………」
春香「そうすれば、そのうち美希が情報を得ていない犯罪者も裁かれることになるから、やがてはLもカメラを外さざるを得なくなる。だから、その時までの辛抱だよ」
美希「……そうだね。ありがとうなの。春香」
春香「…………」
春香(実際、そういう状況になってもLが本当に全部のカメラを外すかは分からないけど……今はとにかく、美希を安心させることを優先すべき)
春香(それにしても、L……まだ十五歳の美希をここまで追い詰めるなんて……絶対に許せない)
春香(もし何らかの手段によって、私がLの顔を知ることが出来たなら、そのときは必ず――……)
美希「……春香?」
春香「ううん。なんでもない。それより落ち着いた? 美希」スッ
美希「うん。春香のおかげなの」
春香「そう。良かった」
春香(……殺す。美希の為にも……そして、私の為にも)
春香(美希の敵は私の敵……そして、765プロの敵だ)
春香(私達765プロの邪魔は、誰にもさせない。私達765プロに害をなす者は、いかなる手段を用いてでも必ず排除する)
春香(それが私の使命……ジェラスに貰ったこの命を使って、私が為すべき事)
573 = 564 :
春香「……リューク」
リューク「ん?」ウネウネ
春香「今日から、家に帰ったらまず美希の部屋に付けられたカメラのうち、任意の一個の有無を確認してみてくれる?」
リューク「何?」
春香「その一個が付いたままなら、残りの63個も付いたままと判断して良い。でも逆にもしそれが外されていれば、次の一個、さらに次の一個……と、取り外されずに残っているカメラに当たるまで確認を続けてほしいの」
リューク「…………」
春香「『無い』ことを確認するより、『ある』ことを確認することの方が容易いはずだから……お願い」
リューク「……まあ、いいだろう。今のままじゃいつまで経ってもリンゴ食えそうにないしな」
春香「ありがとう。リューク」
春香(リュークがリンゴ食べるだけなら、今ここで私があげてもいいんだけど……それをするとカメラの確認してくれない可能性高いしね。この死神の場合……)
春香「で、美希は……完全には難しいかもしれないけど、カメラの事はあまり意識しないようにして、なるべく普通の生活を送ること」
美希「うん」
春香「そして美希が情報を得ていない犯罪者が死んでいき、美希の潔白が証明されているのにもかかわらず、何日もカメラが外されないようなことがあれば……その時は、偶然に見つけてもおかしくないような位置にあるカメラを美希がたまたま見つけたふりをして、美希のお父さんに言って外してもらう」
美希「分かったの」
春香「それでももしまた辛くなったら、いつでも……ってわけにはいかないけど、こうやって私に相談して。できる限りのことはするから」
美希「ありがとう、春香。正直、ミキ一人だと頭がおかしくなりそうだったけど……こうして春香に話を聞いてもらえて、すごく気分が楽になったの」
春香「美希」
美希「それにミキ達の夢のためにも……こんなところで、挫けるわけにはいかないもんね」
春香「その意気だよ、美希。じゃあそろそろ戻ろっか。もうすぐレッスンの時間だし」
美希「うん」
574 :
はるかさんこわい
575 = 564 :
【その四日後・美希の自室】
リューク「じゃあ今日も確認するか」
美希「…………」
リューク「でももう何日もミキが情報を得ていない犯罪者が裁かれてるんだから、そろそろ外されてもいい頃だと思うんだが……」
美希「…………」
リューク「俺もいい加減リンゴ食いたいし……ん?」
美希「?」
リューク「……無い。無くなってる。天井の照明の中のカメラ」
美希「! …………」
リューク「おっ。ベッドのやつも無くなってる。ちょっと待ってろよ、ミキ。この分だと全部取れてるかも」
美希「…………」
美希(や、やっと……いや、まだ安心しちゃ駄目。全部外された事を確認するまで、たとえ一瞬でも表情を緩めちゃ駄目なの)
美希(それにまだ盗聴器だってあるかもしれない。その場合、もしカメラが全部外されていたとしても、うっかりリュークと会話したりしたら全てがパーになっちゃう)
美希(大丈夫……今まで何度もイメージしてきたの。こういう場合にどのように振る舞うべきかは……)
リューク「おいミキ。やっぱりカメラ取れてるぞ。全部だ全部」
美希「! …………」
美希(やった! とりあえずはこれで……)
リューク「おいミキ。聞いてるのか?」
美希「…………」トントン
(自分の耳を軽く指差す美希)
リューク「ああ、そうか。まだ盗聴器は付いてるかもしれないのか」
美希「…………」コクッ
リューク「じゃあ早速、明日にでも探知機買ってきて調べようぜ」
美希「…………」コクッ
リューク「そして盗聴器も無いことが分かったら……その時は頼むぜ、例のヤツ」
美希「…………」コクッ
美希(良かった……まだ完全には安心できないけど、これでとりあえず声さえ出さなければ……)ドサッ
(ベッドに倒れ込む美希)
美希(つ……疲れた……自分でも思った以上に気を張ってたみたい……)
美希(でもこれで一旦は、ミキは少なくともキラ容疑者の最有力候補からは外れたはず……)
美希(春香……本当にありがとう)
576 = 564 :
――――そして時間はその二日後――――現在へと戻る。
【現在・765プロ事務所近くの公園】
(隣り合う二つのブランコに並んで腰を下ろしている春香と美希)
春香「……本当に、色んな事があったね。この十二日間は」
美希「うん。でも本当、春香には感謝してるの」
春香「美希」
美希「もし春香が全部、話してくれてなかったら……ミキは確実にLに捕まってたと思うし。まさに命の恩人なの」
春香「私はただ……当然の事をしただけだよ。美希の友達として……また、765プロの仲間として、ね」
美希「春香……」
春香「まあでもとりあえずは良かった。これでまた、裁きも美希が自分でできるようになったわけだしね」
美希「うん。あ、でも春香」
春香「ん?」
美希「今、ミキのノート返してくれたけど……春香は元々、ノートは持ち歩いてないんじゃなかった?」
春香「ああ……うん。自分のノートは部屋に隠してあるよ。机の引き出しを二重底にしてね」
美希「二重底?」
春香「うん。開けたところにはダミーの日記を入れてあるの。その下に板を一枚敷いて、底との隙間にノートを入れてるってわけ」
美希「へー。そこまでしてるなんて流石春香なの」
春香「でも、そこはノート一冊分のスペースしか無かったし、他に良い隠し場所も無かったから、美希のノートは常に持ち歩くようにしてたの。だから結構ドキドキしてたんだ」
美希「そうだったんだ……ごめんね。ミキのために」
春香「いいって。さっきも言ったでしょ? これくらい当然だって」
美希「春香……」
577 = 564 :
春香「でも、美希。これからどうする?」
美希「ん? これからって?」
春香「裁きはまたこれまで通り美希が行うとしても……Lの方」
美希「あー……」
春香「流石に今回の件で、Lも、少なくとも『美希が情報を得ていない犯罪者が死んだ』ってことは認めざるを得ないだろうから、美希一人だけを疑い続けることはできなくなったと思うけど……」
美希「うん」
春香「でも『キラと同じ能力を持つ者が他にもいるのかもしれない』って疑われる可能性はあるからね。さらに前のプロデューサーさんに限って言えば、私達765プロの全員に彼を殺す動機があったわけだし」
美希「そうだね。でも……」
春香「でも?」
美希「ミキ的には、それでもやっぱり……Lを殺したりするのは抵抗があるってカンジかな……」
春香「……それは、Lが犯罪者じゃないから?」
美希「うん……。そういう意味ではむしろ、ミキ達の方が犯罪者になるって思うし……」
春香「…………」
美希「あっ。でもミキ達が間違った事をしてるとは思ってないよ? ただなんていうか、法律とかを考えたらっていう意味で……」
春香「……分かってるよ。美希の言うとおり、今の法律の下では私達の方が犯罪者であり、それを捕まえようとするLの方が正義になる……それは間違い無い」
美希「うん。だからそういうこととかも考えたら……せいぜい、Lに『これ以上キラの邪魔をしたら殺す』みたいな脅迫をするのが精一杯かなって」
春香「…………」
美希「まあでもそれも、Lの顔と名前……あ、春香は死神の目を持ってるから顔だけでいいのか……Lの顔が分かってないと、意味が無い事だけどね」
春香「……そうだね。じゃあとりあえずはLの顔を知る手段を考えよう。そしてそれが分かったら、Lを脅迫して私達を追わないようにさせる……」
美希「うん。それが良いって思うな」
春香「…………」
578 = 564 :
【同日夜・春香の自室】
春香「…………」
春香(やはり美希は甘い……というより、純粋すぎる)
春香(自分の正義を貫くには、相反する他のすべての正義を悪とみなし、それらを遍く排斥していくだけの覚悟が必要……その意味で、私達と異なる正義を掲げるLは悪でしかない)
春香(それに今までのやり方を見る限り、Lがたかが脅迫程度で止まるとは到底思えない)
春香(仮に一旦は止まったように見せたとしても、必ず私達の目を欺いて捜査を続け、いずれは私達を捕まえようとするに違いない)
春香(だから本当にLを止める手段があるとしたら……ただ一つ)
春香(Lを……殺すしかない)
春香(それに私個人としても、美希をここまで追い詰めたLを許してはおけない)
春香(美希も今日は普通に振る舞っていたけど、これまで内心、どれほどの不安と恐怖に駆られていたことか……)
春香(いや今だって、『もしもLに捕まったら』という恐怖感と戦い続けているはず)
春香(あそこまでのことをされたんだから、それは至極当然の感情)
春香(だから、美希を本当の意味で安心させてあげるためにも……私は、一刻も早くLを消さなければならない。……たとえそれが、美希の意思に反することになるとしても)
春香(そしてその為には、Lの顔を知ることが必要条件……でも一体、どうやって知ればいいんだろう)
春香(今のままでは、あまりに手掛かりが無さすぎる)
春香(美希のお父さんはLと直接会ったことがあるのかもしれないけど……でもだからといってLの写真なんて持ってるはずないだろうし、そんな物を美希から求めさせるのもおかしい)
春香(何か別の手段を考えないと……でも相手は警察を従えられるほどの力を持った探偵……ただの一高校生に過ぎない私じゃとても……)
春香(……ただの一高校生に過ぎない……?)
春香(! ……そうか。別に探るのは私じゃなくても……)
春香(何で、今まで思い当らなかったんだろう)
春香(お金も権力も人脈も……私よりもずっと豊富に持っている人がいるじゃないか)
春香(こういう時のために生かしておいてよかった)
春香(まさかもう、私達に対する“償い”を終えたつもりじゃないですよね)
春香(ね? ……黒井社長)
579 = 564 :
一旦ここまでなの
580 :
乙なの
581 :
黒ちゃん逃げてー
582 :
美希は正義的というか純粋
春香は悪的かと思えばこちらも方向性の違う純粋なだけ
悪だの正義だのって言葉・概念自体作り物だから絶対なんてないと言われればそれまでだけど
まあ、社会に生きてるなら社会的正義が絶対正義みたいなもんか?
583 :
月のポジションを二人で担っているような感じだな美希と春香
584 :
月とLが手を組んだらすぐに捕まりそう
月と春香美希が手を組んだらすぐに見捨てられそう
月の出現→詰み
585 :
月くんは出て来るんかな?
春香・美希側についたらLますます苦戦しそう
586 :
死神の目って読み仮名も表示されるんだっけ
そうじゃないならライトが春香に顔見られてもすぐには殺されずにすみそう
月と書いてライトと読むなんて、普通は分からないだろうし
587 :
>>586
本編でもミサミサはつきって読んでたから読み仮名は出ない
そもそも字さえあってれば問題ない
588 :
字さえ合ってたら読み仮名知らなくても問題ない
逆に読み方知ってても漢字やスペルが正確じゃないと死なないし下手に書いて故意にミスったってノートに判断?されたら自分が死ぬ
589 :
ひらがなで書いたらどうなるのっと
590 :
>>589
多分故意なミスになる
じゃなければ渋井丸拓男の名前を複数回書く理由が無い
591 :
ひらがなだと死なない
外人は現地の文字で、日本人は漢字とひらがなちゃんと使い分けて書かないとダメ
592 :
名前がカタカナ、ひらがな表記だとカタカナ、ひらがなで書かないと死なないよな、確か
593 :
戸籍が無い奴の名前ってどうなるんだろうな
本人の自称?とか通り名だったりすんのかな
原作で無戸籍の人間ってノートに書かれてたっけ
594 :
原作知らんけど、戸籍なんて殆どの国にないし、気にしない。
まつり姫を源朝臣まつり、みたいな表記もありうる?
595 :
>>593
死神の目には[ピーーー]のに必要な名前が見えるらしいから死神は何ら問題ない
要は「周りから本人を個人として認識できる名前」ということなのだろう
596 :
>>594
ほ? まつりには死の概念がないのです
597 :
【二日後の深夜・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】
(捜査員のほとんどは既に帰宅しており、Lと総一郎だけがまだ部屋に残っている)
L「…………」
L(あれから何度も星井美希の監視映像を見直したが……結局、彼女の行動・挙動に何ら不審な点は見付けられなかった)
L(それに何より、星井美希が報道された情報を得ていない状況下で、新たに報道された何人もの犯罪者が心臓麻痺で死んでいる……)
L(この事実は、星井美希以外の者が裁きを行っていたという事の証左に他ならない)
L(また他の捜査員の追加捜査により得られた情報にも、特に彼女がキラであるという可能性を裏付けるようなものは無い……)
L(これはやはり、私が間違っていたということなのか……?)
L「…………」
総一郎「竜崎」
L「はい」
総一郎「今後のキラ捜査についてだが……やはり一度、星井美希から離れた方が……」
L「…………」
総一郎「私も可能な限り星井美希の監視映像を検証したが……むしろこの映像により、星井美希がキラでないことが証明されたようにしか……」
L「そう……ですね」
L「…………」
ワタリ『竜崎。南空ナオミさんから連絡です』
L「! 分かった。つないでくれ」
ワタリ『はい』
総一郎「? みそらなおみ? 誰だ?」
L「……元FBIの捜査官です」
総一郎「何?」
L「詳しくは後でご説明します」
総一郎「…………」
ナオミ『南空です』
L「Lです。どうしましたか? こんな夜更けに」
ナオミ『すみません。本来はもっと早くにご報告するつもりだったのですが……彼とちょっと喧嘩になってしまって』
L「喧嘩?」
ナオミ『はい。『ここ最近、いったいこそこそ何をやっているんだ』と問い詰められまして……ああ、大丈夫です。私の渾身の説得により今は和解しています。もちろんLの事も話していません』
L「それは何よりです。では報告の方をお願いします」
ナオミ『はい』
総一郎「…………」
598 = 597 :
ナオミ『とりあえず、この一週間で765プロ所属アイドルのうち、星井美希、天海春香、萩原雪歩の三名に対する尾行捜査を行いましたが……』
総一郎「! …………」
ナオミ『結論から言って、際立って不審な動きを見せた者、明確にキラだと疑えるような行動を取った者はいませんでした』
L「……そうですか」
ナオミ『ただ、二点ほど気になった事がありました』
L「? 何ですか?」
ナオミ『はい。まず一点目。萩原雪歩についてですが……』
L「…………」
ナオミ『私が尾行を始めてから三日目……彼女は簡単な変装をした状態で一人で焼肉店に入り、食事をしていました』
L「…………」
ナオミ『変装はアイドルとして普段しているのと同様のものですが……18歳の女子高生が一人で焼肉を食べる、というのはちょっと異常な光景です』
L「まあ……そうですね」
ナオミ『もっともアイドルとしてのプロフィール上、彼女の好物は焼肉となっていますので、ただの個人的嗜好だった可能性も否定できませんが』
L「……分かりました。一応、記憶には留めておきます。二点目は何ですか?」
ナオミ『二点目は、星井美希と天海春香についてです』
L「! …………」
ナオミ『私が尾行を始めてから六日目……つい一昨日の事です。この二人は夕刻頃に事務所を出た後、近くの公園のブランコに並んで座り、暫くの間会話をしていました』
ナオミ『私は尾行していることを気付かれないよう十分な距離を取っていたため、会話の内容までは聞き取れませんでしたが……』
ナオミ『会話の途中で、天海春香が星井美希に黒いノートのような物を渡していました』
L「ノート……ですか?」
ナオミ『はい。一瞬、学校の授業のノートかとも思いましたが、この二人は学校も学年も違う……また黒色のノートというのはあまり見かけないので、少し気になりました』
L「確かに……そうですね」
ナオミ『まあ二人の年齢を考えれば、単なる交換日記か何かの類だろうと考えるのが素直だとは思いますが……』
L「……分かりました。これも一応、記憶しておきます」
ナオミ『他には特に報告すべき内容はありませんでした。三名とも、普通に学校に行ったり、アイドルとしての仕事をこなしたりしているだけでした』
L「そうですか。お忙しい中、どうもありがとうございました。また今後、必要に応じて捜査協力を要請させて頂いてもよろしいでしょうか?」
ナオミ『……L』
L「? はい。何でしょう」
ナオミ『私としても、あなたの捜査に協力したいのはやまやまなのですが……結婚を前に、これ以上彼に不信感を持たれてしまうのは……ちょっと』
L「……そうですね。では、どうしても南空さんの協力が必要になった時に限り、再度ご連絡させて頂く……というのでも駄目でしょうか?」
ナオミ『……分かりました。それなら』
L「ありがとうございます」
ナオミ『いえ。お役に立てずすみません』
L「とんでもありません。それでは」
ナオミ『はい。失礼いたします』
600 = 597 :
総一郎「……竜崎。今の女性はいったい……? しかも元FBI捜査官だって?」
L「はい。彼女の名は南空ナオミ。かつて私の下で働いてもらったこともある、極めて優秀な捜査官です」
総一郎「! 竜崎の下で?」
L「はい。といっても、上司・部下という関係ではありません。とある事件で、私の……いわば代理人のような立ち位置で働いてもらったという関係です」
総一郎「そんな女性が……なぜ、今? しかも星井美希達の尾行を……?」
L「はい。夜神さんもご存じの事ですが、星井美希の監視を始めてから三日目……星井美希が情報を得ていない犯罪者が心臓麻痺で死に、さらにその翌日にも同様の事が起こりました」
総一郎「ああ」
L「これを受けて、私は、他の捜査員の方への説明の都合上、夜神さんに出していたダミーの指示を別の誰かに代行してもらう必要があると感じました」
総一郎「……確か、星井美希、天海春香、萩原雪歩の三名に比重を置いての、当時在籍していた765プロの関係者全員と前任のプロデューサーとの間の人間関係の精査……だったか」
L「はい。私は当初、監視映像から星井美希がキラである証拠が掴めるものと踏んでいましたが……それが得られない可能性が高くなった以上、夜神さんが何の捜査もしていないという状況は不自然ですから」
総一郎「確かに……」
L「とはいえ、当然、他の捜査員の方には頼めませんから……必然的にこの捜査本部外の者にやってもらう必要がありました」
総一郎「それで先ほどの女性、というわけか」
L「はい。彼女の能力は十分信頼できますし、また『元』FBI捜査官という身分も好都合でした。現役のFBIですと国際管轄等の問題もありますので」
総一郎「なるほど。しかしよくこんなに早く動いてもらえたな」
L「元々、ダメ元で依頼し、もし無理なら他を当たるつもりでした。そもそも彼女は米国在住でしたので」
総一郎「じゃあ彼女はわざわざこの為に日本へ?」
L「いえ。ちょうど婚約者を自分の両親に会わせるために日本に来ていたそうです。これも極めて好都合でした」
総一郎「ではさっき彼女が言っていた、『彼との喧嘩』というのは……」
L「はい。婚約者といえど、私の指示で動くことについては絶対に秘密にするようにと伝えていましたので」
総一郎「……よくそんな状況で捜査に協力してくれたな」
L「最初はかなり難色を示していましたが……私が他に頼める人がいないと言って懇願すると、最終的には折れてくれました」
総一郎「……もし無理なら他を当たるつもりだったのでは?」
L「それはそれ。これはこれです」
総一郎「…………」
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