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元スレ仗助「艦隊これくしょんンンン~~~~?」
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執務室に屯する、天龍と仗助。
加賀は若干(どころではなく)不機嫌そう。彼女としても、秘書艦――つまり補佐は自分だという自負がある。
にも関わらず、まるでコンビニの前のように二人は駄弁っていた。
「にしてもよぉー、提督ー」
「あん? たまたま売店で見付けたピンクダークの少年なら向こうだぜ」
俺の趣味じゃねーけど、と書棚を指差す仗助と首を振る天龍。
「あれ、どーにも絵柄が生理的になー」
「そーなのかぁー? 億泰の野郎も最初はそんな事言ってたけどなぁ……」
「しかも山城が八部から買い出したからついてけなくてよー」
「そーゆーのどーにも敷居が高いよなぁ」
閑話休題。
「……で、何なんだよ天龍」
「ん、いや……【クレイジー・ダイヤモンド】ってのに心当たりって言うか、うーん」
「?」
「ダイヤモンドって、日本語で言うと金剛石だろ? だから――」
金剛型、という船がある。
天龍が言ったのは、簡単に纏めるならそういう事だ。
そして、この艦隊にはまだ空きがあるという事は、
「まさか金剛が来るかもな。提督の言う、スタンド使いは惹かれ合うみてーに」
「それこそ、『まさか』だぜ。名前が一緒ぐれーで出てきはしねーだろ」
「まぁなぁ……丁度一隻分、まだ余裕あるけどなー」
ははは、と笑い合う二人の前に突き出された書類。
その先には、相変わらずのむっつり顔の加賀。
何かのリスト、のようだ。
「なんスか、これ」
「もう一隻が揃ってからの方がよかったけど……演習の申し込みです」
「演習……?」
「要するに別の艦隊同士、模擬試合をやろう……って事だぜ」
「天龍、さすがだぜおめーよォ~~~~! 判りやすさも世界水準超えてるな!」
「フフ、まあな!」
「……」
ノリよく笑い合う二人の不良を前に、加賀は沈黙。
じっと、書類の続きを促した。
演習のその書類には、相手方の提督名とその秘書艦の写真が掲載されている。
緑――深い黒髪をそう称することがあるが、文字通り深緑の髪。
それを頭の両脇で括った勝ち気そうな少女。胸当てから見るに、空母だろうか。
ひょっとしたら加賀の知り合いか、とチラリと提督の名前に目を写した仗助は、
「――――空条Q太郎ゥゥゥ~~~~~~~~~!?」
その異様さに、声を上げるのだった。
←To be continued...
「提督ー、夕御飯にカレー作りました!」
「……」
「自分で言うのもアレだけど、今回は自信作です!」
「……」
「さ、食べて食べて!」
「……おい、味見はしたのか?」
「あっ」
「……」
「むぐ……、……、………………ちょっと思ってたのとイメージが」
「……」
「ひえー……作り直しかぁ……」
「……」
「ごめんなさい。今日の夕飯は、適当に……」
「……待ちな」
「えっ」
「待たされて随分と腹が減っちまってるんだ。早く持ってきな」
「そ、それって……!」
「……」
「気合い! 入れて! よそってきます! 待ってて!」
「……やれやれだぜ」
ここまで。大井っちと山城はそれなりにデレるんじゃないでしょうか
おつでした
ひえーは向こうか。提督何者かわからないけどお腹壊さないと良いねぇ(棒
ひえーは向こうか。提督何者かわからないけどお腹壊さないと良いねぇ(棒
乙
流石はQ太郎ッ!俺達に出来ない(比叡カレー食べる)事を平然とやっけのけるッ!
そこに痺れる憧れるうううぅぅぅッ!
流石はQ太郎ッ!俺達に出来ない(比叡カレー食べる)事を平然とやっけのけるッ!
そこに痺れる憧れるうううぅぅぅッ!
仗助の幼少期のエピソードってさー
初見の時は「あ、これ絶対ラストバトルの伏線だ」って思ったよな
初見の時は「あ、これ絶対ラストバトルの伏線だ」って思ったよな
バイツァダストが出たときとかな
これで戻るのか!とか思ったよな
これで戻るのか!とか思ったよな
解体任務でほんとに解体すれば本部には達成と送れて隠蔽出来そうやで
(……未だに信じらんねー状況なんだよなぁ、こいつぁ)
鎮守府に着任してから二日目の晩。
執務室の床に布団を敷いて寝転ぶ仗助は、月明かりに透かすように右手を挙げた。
身体の感覚はある。スタンドも現れる。
それなのにゲームの中としか思えない場所におり、自分はそこでゲームそのものの流れに沿うような事を行っている。
スタンド能力でなければ信じられないが……。
(でも、夢の中じゃあねえ)
そう。
この世界で、“二日目”の晩なのだ。既に二日経過している。
その間に仗助は、既に一度睡眠していた。
夢の中がいくら自由が利くと言っても、流石に夢の中で寝る事はできまい。起きたと思ったらまだ夢だった、という話は聞くが。
だが、眠る事ができた。
ただ――寝る、と言ってもとても奇妙だ。
布団に入って瞼を閉じて、波に揺蕩うようにしていれば朝になっている。
夢は見ない。
覚醒と睡眠の中間を漂う微睡みが如く、長いとも短いとも言えぬ時間が過ぎているのだ。
その他には、何もない。一応疲労は回復している。
(なんだっつーんだ、マジにこの現象は……スタンドにしてもチと長すぎるんじゃあねーかぁ……?)
二日間。
丸々仗助を押し込め続ける持続力。そして、少なくとも基地一つ分以上を覆うほどの射程距離。
さらには仗助の他に六人――それもどう見たって人間に感じられるほど、完璧に再現するあの精密さ。
加えて言うなら、深海棲艦の主砲のパワー。
ここまで来ると、これはスタンドではないのではないかと言う疑問が頭を過り――
(いや……音石の野郎の【レッド・ホット・チリ・ペッパー】みてーなスタンドもいる。別の何かから力を得ている……と思ったら)
例えば、かつて仗助が戦ったスタンド使いに特殊なスタンドがいた。
電気をスタンドのエネルギーとして使用するスタンド。
力が弱い代わりに遠くまで進める遠隔操作タイプのスタンドながら、電気から力を得て一時は【クレイジー・ダイヤモンド】すら上回った。
また、仗助自身が戦った訳ではないが、かつては死人を生前の如く操りつつ、町一つ覆ったスタンドもいる。
そう考えるなら……何か別のものを核に動いているとすれば、その能力のパワーの強さも頷ける。
(俺はやった事ねーからイマイチわからねーんだがよぉ~、『ゲームの通り』になってるなら……案外そこら辺がパワーの源かも知れねーぜ)
虹村億泰がこの場にいるなら、その推察の助けになったかも知れないが……生憎と見当たらない。
それとも彼も、仗助同様どこかに着任しているのだろうか。
そうだとしたら、
(……案外あのヤローは満喫してっかもなぁ~、『扶桑ねーさまと結婚するんだ』とか言っちまって)
ひょっとしたら彼にとっては、居心地のいい世界なのかも知れない。
とは言ってもスタンド攻撃だと判れば、億泰も動き出すだろう。
……動き出す筈だ。そうでないと困る。
(これでここで暮らすとか言い出しちまったらマジにオタクじゃあねーかよ、億泰おめーよォ~)
……そうでない事を祈ろう。
仗助にはそれしか出来ない。流石にそれぐらいは信用している。
多分、これでもかというぐらいに億泰は泣き叫び、残念がり、怒り狂い本体を叩きのめす筈だ。純情を玩んだとか言って。
とりあえずは。
こうして仲間も友人も居らずに完全に一人っきりというのは、実に久しい状況だった。
だからこそ、そんな意味でも『空条Q太郎』という人物は心強い。
沈着冷静で、用心深い空条承太郎の事だ。きっと、このスタンドに巻き込まれる前の知人か、敵の罠かを確認する為に偽名を用いているのだろう。
そうでなければ、――しかもそれで――お化けのQ太郎みたいな髪型の空条承太郎のニセモノが出てきたら、色々な意味で困る。
(ま、案外承太郎さんの事だ。もうこのスタンドの攻略法とか思いついちまってるかもなぁ~!)
そうなるとありがたいし、彼なら強ち不可能ではないと思える。
そうなったら彼と共にこの状況を打開し、ここから脱出を――
――『私たちは、人を守れる事を誇りとしています。勝つ事を……今度こそ守れる事を』
(……)
……仗助の、口だけでなく心も黙る。
そう、この能力には不明な部分も多すぎるのだ。
例えば現在、明確に東方仗助は危機に至っていない。
巻き込まれこそすれ、敵のスタンド攻撃に襲われてはいないのだ。
だからこれが、仗助への害意を現したスタンド攻撃とは――
(……って、ちげーだろうがッ。あの深海棲艦はマジに生半可なスタンドじゃあ対抗できねーし……されちまってるじゃねーか、拉致ってのを)
ひょっとしたら、既に。
敵が息咳切って仗助を殺しにこない状況こそが、罠かも知れない。
このように幻覚の中に仗助を出来るだけ捕らえて、その間に同時に、既に能力が進行してしまっているとしたら……。
その時は……。
(……どちらにしても、ゲームに従って攻略ってのを続けるしかねーみてーだぜ。今のところは)
ヒントが少ない。
ストーリーが――敵の能力の構造が、筋書きが、論理が判らない。
そんな中で、目の前に出てくる課題を一つ一つ潰していくしか仗助に取れる手段はない。
そう。
別に彼女たちを中途半端に捨てて脱出する事が心残りという意味では――
「――深夜零時ね」
「どぉぉおわぁぁぁぁぁぁあ!?」
ごく至近距離から放たれた声色に、東方仗助は思わず飛び上がった。布団はもっと飛び上がった。
咄嗟に【クレイジー・ダイヤモンド】と共に右腕を振りかぶり、止まる。
何気ない顔を――いつも通りの――した加賀が、暗闇たる執務室に立ち尽くしているのだ。
あわや加賀の顔面を昨夜のミートソースめいた代物に変える前に、仗助は止まった。
「……」
「……」
「……加賀さん」
「何か?」
「どーしてこの部屋にいるんスか……?」
「昨晩と違って、ドアが空いていたので」
言いつつ、そちらに顎を向ける加賀。
そう、確か前日――東方仗助は、スタンド使い本体からの襲撃に備えて施錠を行っていたのだ。
無論の事、初めは気が高ぶって中々眠る事など出来なかった。
……あの現象を、眠りと言うなら。
「……」
「……」
「……提督」
「なんスか?」
「……どうして下着姿なの?」
「こっから寝るつもりだったんすよ! 見て判んねーんスか、あんたぁ!」
流石に学生服のまま眠る事は出来ない。寝相で着いた皺といつのは中々取れず、気になる事間違いなし。
そんな訳で今、仗助はTシャツにトランクス一丁。クールビズである。
そのまま外に出たら職務質問間違いなしで、冷や汗を掻くという意味で。
「……」
と、無言で加賀の視線が辿る。
下へ、下へと。
「提督」
「……なんスか?」
「そうやって、女性に見せ付けるのは大概にして欲しいものだわ」
(見せ付けてねーだろうがッ! 俺が見ろっつったのは布団の方だぜ! 布団のよォ~~~~!)
むしろ見られた側である。男女が逆転していたら裁判沙汰は必死なほどに、仗助は被害者だ。
何故、睡眠の邪魔をされた挙げ句に、夜道で会社帰りのOLにちょっかいをかける中年男性のごとき扱いを受けなければならないのか。
思わず浮かび上がる青筋を宥めて、仗助は【クレイジー・ダイヤモンド】で掛け布団を腰まで引き上げた。
超能力の無駄遣いな気がしなくもない。
「……で」
「……」
「加賀さんは、なんでこの部屋に?」
「秘書艦です」
そんな事は判っている。
仗助は声を荒らげそうになったが、むしろ加賀の“当然だが何故判らない?”とでも言いたげな目に黙る。
無論の事そんな意思は、加賀にはない――彼女の名誉の為に弁明しておこう。
そして、仗助は考えた。
これはゲームを下敷きにしている。それならば――そう考えるならば。
初心者である仗助には知り得ず、依然として存在するルールがきっとあるのだ。
なら、加賀が悪いとかそーゆー話ではない。伝達の齟齬の、悲しいヒューマンエラーだ。
パンツ姿は犠牲になったのだ。古くから続くラブコメの伝統の、犠牲の犠牲に……。
「ひょっとして……なんか仕事とかあるんスか?」
「不寝番です。一時間ごとに、時間を知らせる事になっています」
夜、深海棲艦が現れないとは限らない――むしろ奇襲を行うのであれば夜間が向いている。
そんな中、全員が全員平和に眠りについてしまったら対処が出来ない。そのまま、永久の微睡みに沈む事になる。
だからこそ、不寝番がたてられる。
それが秘書艦の役目だ――――という事らしい。
「……つーことは」
「何か?」
「ひょっとして、昨日も……」
「……鍵を閉められていましたが」
それでも不寝番を行った――と、加賀の咎めるような目線が告げる。
むしろ、仗助が閉め出してくれたお陰で厄介だった、と。
そんな意図はないのだろうが、表情が余り変化しない加賀から睨まれ……いや、見詰められるとそうも思ってしまう。
「……加賀さん」
「なんでしょうか?」
「それじゃあ、早速提督として命令だけどよォ~~~~」
「……夜戦ならお断りします」
「空母に夜戦させてもしょーがねーじゃねえっスか」
夜、艦上機を飛ばす事は出来ない。
艦上機に乗り込む妖精さんは余り夜目が利く方ではなく、機体に搭載されている電探の性能も優れているとは言えない。
よほどの緊急時以外は、出撃させても航空機の損害が大きくなりすぎてしまうのだ。
それならそもそも、空母である加賀が不寝番をするのもどうか……と仗助は思いつつ、
「寝て下さい」
「……、……だから夜戦は」
「だからぁ……何度も言ってるんスけど……夜戦じゃなくて布団で寝てくれって言ってるんスよ」
「……」
「艦娘も、寝ないと辛いんスよね?」
「……ああ、そういう」
「え?」と返す仗助に、何でもないと首を振る加賀。
それ以上踏み込む事は死を意味する――そう判る強い表情だ。
または……加賀、イケナイ人ッ!――とも言える。
何故だか判らんが、荒野のコヨーテさえもブルっちまってゲロを吐きながら一目散に尻尾を巻くほどの瞳に睨まれた仗助は……。
それでも何とか気を取り直して咳払い。
当初の予定通り、飄々とした表情で続ける。
「寝なくても、人間のように死にはしないけど?」
「死にはしないけど、辛い事は辛いんスね?」
「……」
「……なんかちょーし狂うぜぇ~~~~~~~、ホントよぉ~」
――能率が下がる。
寝不足の弊害である。気持ち、目付きもいつもの三割増しで怖い。
そんな事を考えたらその瞬間、人を殺しそうな目を「何か?」と向けられた事に脂汗を垂らしつつ――。
布団を指さし眠るように言いつけた仗助は、執務室の外に出ていた。
なお、残された加賀は憮然とした表情――ただし一見――内心、この体温の残る布団に寝ろと言うのかと呆然としていた。
(なんつーか、本当やりにくい人だぜ……多分悪い人じゃあねーんだけどよぉ~)
それにしたって、こう……。
少なくとも表面的な反応の似たタイプの――空条承太郎と過ごすその時、何だか気持ち仗助は間抜けさを強調されてしまう。
そう、似たタイプ。
そんな加賀と一緒に居て間抜けさが強調されると、相手が女性である分……こう……被害が酷い。
(それにしたって……こーゆー『トラブル』ってのは億泰の役回りじゃあねーのかよぉ~)
女性の前でハート柄のパンツを丸見えにするなんて辱めは、自分のキャラじゃない。
もうちょっとこう、『頼りがい』とか『理知的』とか『優しさ』が仗助くんのイメージだと、頬に手を当てて嘆く。
じっと見られたが、センスがないとか思われてねーだろうな――とか。
それにしたってもーちょっと見栄えがいいパンツを履いておけばよかった――とか。
何よりもピンチなのは、ここで服の替えが手に入るかどうかって事だぜ――とか。
なんでこんな乙女ちっくな事ばっかり考えちまってるんスかぁ~――――とか。
額を押さえつつ廊下を歩く仗助と、窓の外から覗く月。
夜空は――
(もぉーちょっと普段から……空とか星とか熱心に見てたっつーなら違和感とか分かるのかもしれねーっスけど)
少なくとも、東方仗助が見知ったものに見える。確信はないが。
やっぱり早く帰りたいと、仗助は溜め息を漏らした。
色々と、こう、辛い。
マヌケな場面ばっかり見せる事になってしまって、これをどこかで敵のスタンド使いがほくそ笑んで見ていると思うと――。
(……それだけでもう、ムカッ腹って奴だぜ)
――なんとしてもブチのめす。
心に固く誓って、拳を握りしめる。アルコール中毒患者めいてワナワナと震えるところまで、ある。
とりあえず、明日になってしまえば――。
何かしらの進展は見えるかも知れない。
相手が空条承太郎その人でなくとも、他に仗助のように人が居るというのなら。
それがここからの脱出経路に繋がっている。少なくともヒントにはなるだろう。
(こっから帰ったらなんとしても一箱、鎌倉カスターとごま蜜団子で豪遊してやるぜ……チクショー)
まだ見ぬスタンド使いへの怒りを秘めてほの暗い笑みを浮かべる仗助の目に、
「……はぁ、姉様」
映るは開いた非常扉の向こう、夜の海を前に物憂げに溜め息を漏らす山城。
横たわるような闇と、月明かりを反射して僅かに動きを知らせる水面。
憂鬱そうで儚げな、潤んだ山城の赤い瞳。
それだけ見たら絵になるし、男なら放っておかない光景だろうが……。
(マジかよ、ここで山城さんっスかぁ~……)
しかし仗助は、壁に張り付いて身を隠す。
あの姉への熱狂具合は、彼の良く知る危険人物を足して二で割らなかったぐらいの濃さがある。
ここでまた妙に絡まれたら、色々と堪ったものではないのだ。
何しろ――だ。
あの、億泰が山城の姉妹艦、扶桑と結婚しようとしているとうっかり漏らしてしまってから。
「姉様……そんなぁ……」と嘆き――それだけならまだ可愛げがある――。
「騙されてる……そうよ……きっと」と呻き――それだけならまだ、一応辛うじて守りたいと思えなくもなくもなくもない――。
「なんとしても見つけ出して……手を打たないと……」と呟く――流石にこれはヤバイ――。
そこから、丑三つ時に神社で出くわす女の様に静かな熱狂を湛えて仗助に話しかけてくるのである。
姉を誑かした男を直々に叩きのめす――。
そんな理由をモチベーションに海域の突破を図っているのだから末恐ろしい。
(こいつも多分悪い奴じゃあねーとしても……それでもなんだかよぉ~、あんま絡まれたくないって思っちまうよなぁ~)
負のオーラに、スタンドのエネルギーが搾り取られていく――そんな気がする。
加賀を沈黙が恐ろしいとするなら……。
山城は、彼女と喋っている事が恐ろしい。そんなタイプの艦娘だ。
無論、決してまるで人格的に褒められたものではないという意味ではない。
ただ、姉絡みの執念は恐ろしいというだけだ。
話してみればきっと普通だろう。……残念ながらちょっとそれをやる勇気が出ないが。
(つーわけで、仗助くんはクールに去るぜ――――って、な、何ィィィィィィィィ!?)
どんなベタな話だろうか。
たまたま足元に転がっていた縫ぐるみを、思いっきり蹴飛ばしてしまった。あの、開発に失敗した時に生まれる奴だ。
というか、そんなベタな話がある筈がない。
明らかに――明らかに誰かが仕掛けた。誰かというか、何かが。
(よ、妖精さんの野郎ぉ~~~~~~~~!?)
柱のかげ、こそこそと走り去る妖精さんが見える。
何故だかダンボールを被っている。小さい、妖精さんの体躯に合ったミニチュアの。
その裾からひらひらとバンダナのようなものが覗いているのが、偉くシュールだ。
「……だ、誰?」
そして、言い逃れができる筈がない。
恐る恐る窺う山城の声と、ジャキィィィイという金属が擦れあう音。
このまま出なければ、不審者として処理されるだろう。
……おそらくは【クレイジー・ダイヤモンド】のパワーすらも上回る、戦艦の主砲によって。
(ぐ、グレート……!)
それから――逃れられる筈がなく。
アメリカのドラマの如く両手を翳した仗助と、唖然と見つめる山城。
そのままの流れでなんとなく、二人して夜の海を眺める事になった。手すりに凭れて。
「……」
「……」
しかし、それにしても。
「……」
「……」
こう……無言だ。
扶桑の事について、或いは億泰の事について尋問めいた問い詰めを受けなくていい。
それはいい。確かにいい。
だが、沈黙は沈黙で苦しいものがあるのだ。というか加賀に続いて沈黙が重苦しい艦娘二人目だ。
せめてここに天龍や卯月が居てくれたら――。
そう考える仗助であったが、何とか辛うじて話題を絞り出す。から揚げに乗せられたレモンのように。
なお、ある昼飯でそれをやったら大井が盛大に舌打ちをしていた。
閑話休題。
「つ、月がこう……き、綺麗っスね……なんつーか」
「……ッ!?」
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