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元スレ仗助「艦隊これくしょんンンン~~~~?」
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【幕間】
「ねえキミキミ、ちょっとウチギャグ考えたんやけど見る~?」
「……」
「言っとくけど一度しかやらんからな? どう?」
「いや……」
「見るか見ないんか、どっちなん!」
「……見ようかな」
「じゃあ……いくで?」
「……」
「『まな板の上の鯖』」
「……」
「どう?」
「スゴくいい! 気に入ったッ!」
「へへ」
「得にその『鯉』を『鯖』にしたところがいい! たった今釣り上げた鯖にしたところが!」
「やろ? せやろ?」
「そこがクセになる! 海で手頃に手にはいるものを使うのがいい……まな板も身近で忘れようがない!」
「ウチのミラクルボディ大活躍や! ――――って誰が甲板胸や!」
「コンビ組む?」
ジョニィもいるのか
主人公勢全員居そうだな
大和の隣にならぶジョナサンとか胸熱
主人公勢全員居そうだな
大和の隣にならぶジョナサンとか胸熱
主人公のなかだったら定助が一番提督っぽいっていうか海の人間っぽいな
水兵さんスタイルだしな
艦娘自身の戦闘力はどんなもんなんだろう
スタプラやクレDと渡り合えたりしないのかな
艦娘自身の戦闘力はどんなもんなんだろう
スタプラやクレDと渡り合えたりしないのかな
ジョセフは賑やかで自由な、ジョルノは基本冷静な、徐倫なら男勝りな艦娘と仲良さそうだよなwww
>>156
彼が艦娘をどう見てるかわからないが身内には結構甘いよ
彼が艦娘をどう見てるかわからないが身内には結構甘いよ
>>158
無難でありながら質実剛健な艦娘が育ちそう
無難でありながら質実剛健な艦娘が育ちそう
轟沈判定喰らうほどのダメージ受けたら呼吸できないと思う(マジレス)
正規空母、後に雷巡、後に航戦、駆逐に軽巡とバランスが取れてるな…
そして子供には優しい承太郎が素敵
そして子供には優しい承太郎が素敵
>>163
当たる面積を最小にして波紋防御!
当たる面積を最小にして波紋防御!
やるなら四部は何シーズンくらいに別れるかな、うしとらみたいなざっくりカットもあり得そう
待ってました!
今回最終回に予告無かったらしいね。ぜひやって欲しいものだが…
今回最終回に予告無かったらしいね。ぜひやって欲しいものだが…
アニメ化は本当にして欲しい…動くクレDが見たい
そして続き待ってた
そして続き待ってた
「それでよ、龍田の奴が『あはは、貴方はこれから潜水艦になるんだよ? ……「なすすべもなく狩られる」「二度と浮上しない」って意味で』って」
「グレート! おいおいおいおい、マジにブッ飛んでやがるぜ、そいつぁ!」
「だよなぁ……流石のオレも、こう……」
「こう?」
「『フフ、……これ流石に怖くないか?』って」
「それをおめーが言っちまうのかよぉ~~~~~~! 味方なのに!?」
ぎゃはは、と響く歓談の声。
その源は実に判りやすい。
黒と紫を基調とした眼帯の少女:天龍と、一昔前の不良そのものである風情の東方仗助。
二人で提督の執務机を挟んで他愛ない話に花を咲かせていた。
どちらとも自分なりの美学に従って格好を決めている性質故か、相性が良いらしい。
性別の垣根を越えた友人というのはこういうものか。
などと考えつつ、暫し口を噤んだ後、加賀は徐に仗助に顎を向ける。
「……提督」
「ん、なんスか加賀さん?」
「秘書艦は私です」
「ご苦労様っス。間宮券いります?」
「いただきます。…………、ではなくて」
と、言ったそこでまたもや盛り上がる二人の声に続きを掻き消されて、加賀は溜息。
手元の甘味処のチケット――間宮券を眺め(彼女をよく知る人なら睨みと表現するだろう)、無言。
何を食べたいか思案する瞳ではなく、どちらかと言えば不満を感じている目――とやはり彼女を知る人なら言うだろうが……。
残念ながらここにはいない。
ここにいるのは、戦友や知人の話題で笑い合う二人と加賀。
黙りこくる加賀は――これも彼女を知る人なら驚愕するだろう――間宮券を机に叩き付けんばかりに睨み付けて(加賀基準)。
思い止まり、懐に仕舞った。
なおやはり、全て彼女を知るところの人間にしか事情は判らず、果たしてただ何の甘味を食べようか考えながら半券を大切そうに確保した風にしか見えない。
ただの食いしん坊万歳だった。
「任務の確認に行きます」
白いモルタル塗りの壁。その下に被さる木目が目立つ茶色の板壁。
どことなく――仗助の言葉通り、任務受領場所といつよりは西部劇のバーを思わせものだ。
或いは確かに、ギルドなどで仕事を受注するのに似ているかもしれない。
「ここが任務の確認場所っスか……もっとこー、レーダー画面とか置いてあって如何にもな指揮所を連想してたんスけど」
物珍しげに辺りを見回す仗助を連れて前を歩く加賀は平静そのものといった顔。
ただし歩数を調整して、後ろの仗助の速度に合わせていた。
複数の靴音が床を鳴らす。途中で合流して、結果としては艦隊全員が揃っていた。
「……どうして私まで」
「怒らせちゃ駄目よ。あいつは危ない奴だから……」
「おめーよぉー、どうしてそんな後ろにいるんだ?」
「ひっ……な、なんでもないっぴょん」
陰気そうな顔の山城。警戒気味の大井。距離を取る卯月を訝しむ天龍と、明らかに震える卯月。
一同はちょっとした集団である。
一見したところでは……お笑い集団、のようであると付け加えておこう。
仗助のリーゼントですら、逆に典型的だからこそ仮装に見えなくもない。
「それで加賀さん、任務の確認っつーのはどーするんすか? 整理券を持って窓口とか……」
「あちらです」
加賀が指差すその先――仗助が辿り見れば、黒髪長髪の女性。
眼鏡をちょこんと耳に掛けた、如何にも出来る女という風情。
例えるなら、クラスに一人はいる典型的な委員長か、それとも数学あたりの女教師かだ。
あまり、仗助のようなツッパっていると思われる(少なくとも相手からは)とは、相性がよろしくないタイプにも見える。
「どうも、提督。任務の調整を行っています軽巡洋艦娘、大淀です」
「どーも、大淀さん。東方仗助ッス。大淀さんは深海棲艦と戦わないんすか?」
「私は……今は大本営との連絡係なので」
そんなものか、と仗助は頷いた。
思えばこの鎮守府には、仗助と加賀らを除けば妖精しかいない。
妖精に事務仕事をさせるのかはともかくとして、確かにそんな風に任務の管理を行う人間が必要だろう。
(……そーいやぁ、ここの外はどーなってんだ?)
未だ、仗助は鎮守府の外には出ていない。
確かめるという意味では是非とも街に出てみたいところであるが、これをスタンド攻撃と考えるならあまり離れるのは得策には思えなかった。
というのも二つ。
一つは、相手のスタンドが“街まで到達できるほどのパワーを持っているのか”と言う事。
もう一つは、最初の物と関連しており、これが夢や空間を作り出すスタンドなら、その射程が及ばない場所には危険があるかも知れないからだ。
故に今のところ、ゲームの筋に添う事しかできない。
うっかりと舞台裏や袖の方まで出演者が向かったら、セットが崩れてくる……なんて事故のような事が起きる可能性もあるから。
「で、大淀さん……任務って?」
「大本営から送られてくる……戦略的な指標だけでなく、ノルマのようなものですね」
「へー」
感心した風に顎を動かしつつ、仗助は大淀の両隣に並ぶ書類の山を眺めた。
片方には赤く『達成』と書かれた判子が押され、もう片方には『未達成』の判子が。
そして、どうやら『未達成』のものと同じとおぼしきまっさらの書類の山もある。
一日ごとに達成と未達成を選り分けているのだろうか。
未達成の書類は破棄され、達成の書類は――
(書類が勝手に……!? ……って、ああ、下に妖精がいんのか。ホラーかと思ってビビったぜ)
スタンドそのものもホラーやオカルトであるし、今仗助が置かれた状況こそがまるっきりそうであるが……。
そんな事を他所に、彼は頬を押さえた。
視線の先では、下から某かが持ち上げたであろう高さで浮いた『達成』の書類が、カウンターを滑っていく。
ちょっとしたファンタジーな光景だ。
「……で、大淀さん。任務ってどーゆーのが残ってるんスかね?」
なるべく簡単なものが望ましいが――。
そんな仗助の内心に呼応したのか、テキパキとした手順で大淀が取り出し手渡す。
第何号指令書とか、発信者とか、受信者などと――如何にも軍隊らしく格式高い風を装われた書類。
だが、内容自体は非常に簡素。
ほんの三行こっきりの文章だ。
指令の表題と、何をしたらいいのか。やればどれぐらいの資源が貰えるのか書かれた紙。
白地に踊る黒字が、裸電球に照らされて……
「解体ィィィ~~~~~~!?」
東方仗助は声を上げた。
「『一隻』……一隻でいいです」
大淀が、仗助のかたごしの向こう、並び立つ艦娘を捉えた。
眼鏡が、電灯を反射して白く輝く。
狙撃手の望遠レンズめいた光に、仗助の頬を汗が伝う。
「……マジな話かよ」
「ええ。達成しなくても結構ですが……その先の任務には進めません」
事務的な大淀の言葉。
解体とは要するに……艦娘である事を殺す事、に近い。
仗助を含め、全員が意味を理解している。そして同時に、大淀が伊達や酔狂ではなくその事を口にしている、とも。
丸くなった仗助の目と、平然そのものの大淀の目。
その二つ――計四つの眼に照準される艦娘らは、
(……オレは多分ねーよな?)
(……しまった。もっと媚を売っておけばよかった、かも)
(不幸だわ……きっとこういうイヤな事は私に……)
それぞれ思い思いに、考えを巡らせる。
中でも、一際狼狽が目立つのは、
(う、う、う……これ、これきっと……きっと……)
卯月であった。
彼女は駆逐艦だ。遠征や護衛には欠かせないが戦力としては他の艦娘から明らかに目劣りする。
戦艦の主砲は言わずもがな。
それどころか、軽巡洋艦や、同じ駆逐艦からの攻撃で大破する装甲。
速力(あし)の早さだって、巡洋艦の方が基本的には上。
射程距離も短いし、夜戦は巡洋艦に踊る。優れているのは燃費だけ。
そして、駆逐艦というのは実に種類が豊富だ。
ここで卯月が失われても、他の駆逐艦が建造や海域からの保護で現れるだろう。
何より、
(う、うーちゃん……あいつを怒らせちゃったから……き、きっと恨まれてる)
当の提督の逆鱗に触れて、追い回されているのだ。
戦力として痛みはなく、心情的に庇う必要もない――――そんな船を解体しない理由があるだろうか?
卯月は身を固くした。
次の瞬間には、提督の口から死刑宣告に等しい言葉が飛び出す事を想定しながら。
(ひっ)
仗助の目線が、卯月を捉えた。
思わず目をぎゅっと閉じて――しかしその時は訪れない。
恐る恐る開いてみれば、仗助は彼女を一瞥しただけでカウンターの大淀に向き合っていた。
「解体って、あの『解体』だよな?」
「ええ。……説明の必要は?」
「いや、必要ねーっスよ」
仗助も……既に加賀から説明を受けていた。
解体というのは、艦娘をその任から解く事。
彼女たちが背負い、時に装着する――船やその機関をを模した装具――艤装をバラバラにする事。
これを失えば、艦娘として海に出る力を失ってしまう。戦う事が出来なくなるのだ。
それについて、加賀はかつて仗助に言った。
『私たちは、人を守れる事を誇りとしています。勝つ事を……今度こそ守れる事を』
解体と言っても、まさか肉屋に並ぶ夕飯のおかずの材料みたいにその肉体を細切れにされる訳ではない。
だが、戦いを志す艦艇の生まれ変わりにとっては、心情的には殺される事に近いらしい。
少なくとも、戦える自分を失うのだ。
「……なんで、自分から戦力を削るような真似をさせるんスか?」
努めて平静を保った仗助の声。
カウンターに置かれた書類を眺めるその目許は、髪型が影となり窺えない。
天龍は知らずに息を飲んだ。いつの間にか、場を緊張感が覆っていた。
しかし、大淀は至って平静に首を振った。
ただの事務作業めいている。
……そういう意味なら、仗助が先ほど比喩したように、整理券を貰って窓口に向かう施設の職員のようである。
「大本営なりの戦略や指針があるのだと……」
だが、
「なるほど……なら会わせて貰えないっスか? その大本営の人に」
負けじと食い下がる仗助。
必死さを感じさせこそはしないし、脅しめいてもない。
ただ、その言葉はどことなく重い響き。
それでも返されたのはやはり、
「不可能です」
「不可能って……例えばこちらの任務の達成の確認に来たときとかそーゆーときに呼んで貰えばいいんスけど」
「こちらからの書類の送付だけで、出向かれたりはしません」
にべもない大淀の言葉。
一刀両断、というほど切れ味の良いものではないが――だが取りつく島もないとはこの事か。
慇懃であるが、そこに敬意や親しさはなかった。
「なら……あんたが協力してくれりゃあいいって話じゃあないっスか。書類の方を達成って感じで出して……」
「……やりません」
「は?」
「買収でも脅迫でも、私は絶対に協力しません! ここは軍隊……上官の命令は絶対なんです!」
はっきりと言い放つ大淀。
東方仗助も上官であるが、それよりももっと上から伝えられている――そう譲らない瞳。
口を結んだ彼女からは、万人がただ頑なさしか感じないだろう。
加賀のそれとは、また意味合いが違う強情さだ。
「じゃあ……上官が死ねって言ったら死ぬっつーのか、あんたは」
「……そういうものです。それが『ルール』」
皮肉じみた印象を受ける内容の言葉。
言い放った仗助の瞳は細まり、普段の彼とはうってかわった強い眼光。そんな真剣そのものの眼差しであったが。
大淀は、それでも首を振った。
ここで激昂した仗助に胸ぐらを掴み上げられる可能性もあるし、或いはそれが最後の起爆剤になるかも知れない。
それでもやはり彼女は、覆さなかった。
二人の視線が交錯。
端から眺める天龍たちには、それが酷く長い時間に感じられ――そして、
「……抗議の意思だけは伝えたいっスね、俺としても。少なくとも気に食わない、ってアピールぐらいは」
「……余計な手紙は受け付けませんよ?」
「余計じゃあねーっスよ。それに手紙も要らない」
なら、どうするのか。
大淀が問い返すよりも早く、仗助が彼女の隣を指差した。
その先には――書類。
赤い印字がなされた、破棄予定の書類である。
「その『未達成』の判子が押された書類を送って欲しい。そんだけだぜ、俺が要求すんのはよぉ~~~~」
「そんなこと……!」
「常識で考えたら送らないかもしれないが、別に送るなとは言われてもねーよな?」
屁理屈かもしれない。
だけれどもそれは少なくとも、明確なルール違反ではない。
「もしも送り返されたり、処分のお小言があるならそんときゃあそんときっスけど……そうじゃあないなら……送る事は認められてる」
「……どうなっても知りませんよ」
「構わねーっすよ。もっとも、案外どーにもならないと思いますけどね」
原作の仗助も女性からモテやすい設定だったよな
いきなり不良リーゼント提督に惚れるような艦娘はいるのだろうか……
いきなり不良リーゼント提督に惚れるような艦娘はいるのだろうか……
それから六人が連れ立って、舗装された道路を歩く。
皆が皆、無言だった。
山城は俯きがちに。大井は、また面倒な事になった、と。
卯月は胸を撫で下ろしつつ落ち着かない様子で。加賀はいつも通り。
そんな中、天龍が足を止めた。
丁度燃料などを貯蔵する蒲鉾型の倉庫の前。両開きの鋼鉄の扉が、重々しく鎮座する。
「なあ、提督……大丈夫なのか?」
任務をあんな風に蹴り飛ばして上官に反抗的な態度をとった。
それはかつての帝国海軍なら考えられない事である。命令により、したくもないのに捕虜を処分した船もあったのだ。
だからこそ、天龍の懸念は尤もだが……
「ああ、別に何も問題はねーっスよ……何も」
仗助は平然と、そう答えた。
(相手が腹ァ立てて、こっちに直接出向いてくるっつーんならヒントになって好都合だしよォ……)
そこに、この現象の解決案があるかも知れない――仗助の瞳が鋭くなる。
(ただし……)
だからと言って――。
何もそのまま相手にただ抗議をするほど仗助は殊勝な人間ではない。
当然、仕掛けている。
その抜け目のなさこそが、スタンドという特殊能力以上に――東方仗助のこれまでの戦闘に貢献した。
一見したら回復だけを行う能力を、武器に変えたのだ。身を守り、悪を追い詰める武器に。
(【クレイジー・ダイヤモンド】……インクを一部だけ『直した』。スデにな)
大淀が封筒に任務書を仕舞うその瞬間、既に【クレイジー・ダイヤモンド】は書類に触れていた。
誰にも見えない。誰にも判らない。スタンド使いしか認知できないスタンドヴィジョンを使って。
ホンの一瞬、書類に拳を当てた。
大淀が押した判子の文字――【未達成】の、“未”のインクが付いた部分だけを元に戻したのだ。
達成した任務の書類も見た。
その判子の文字は、仗助が工作を行ったそれと寸分違いない代物。
そう、仗助は大淀を騙した。だがこれは、大淀が憎かった為だろうか?
(あれが任務係の口先だけの頑固さなら別に考えたけどよォ……)
答えは――否ッ!
(そうじゃあなくて……ご丁寧に上から命令として受け入れさせているって事ならよォ~~~~)
彼女の態度は、自分自身のプライドや無理解から来るものではない。
仕事に対する勤勉さも勿論あるだろうが、それ以上に彼女は命令を重んじた。
彼女に対して、“従わなくてはならない”と――彼女一個人の身の可愛さや嗜好からではなく、そうと思わせる存在がいたのだ。
ならば。
(その分、せしめちまっても何にも心は痛まねーぜ。まっっったく!)
その相手から分捕る。
文句があるならば、そいつが直接東方仗助のところに来ればいいのだ。
そうして、艦娘である大淀に『仲間の艦娘を解体するような任務を伝えろ』と渡した相手と対面する。
自分自身で直接姿を現してから、命令すればいい。仗助に――従えと言えばいいのである。艦娘の口など借りずに。
安全圏から、大淀や艦隊に押し付ける。その事が何よりも仗助には引っかかったのだ。
やはり宝くじの時の手段か、証拠隠滅に便利だがバレたら厄介だ
丞太郎の場合は時止めですり替えしてそう
丞太郎の場合は時止めですり替えしてそう
そんな中、唐突な声が仗助の思考を割く。
主は、
「提督……聞きたい事があります」
「どうしたんスか、加賀さん」
「貴方は優しい人だと……そう思っています。先程も、その前も」
スタンドは見えない加賀であるが。
確実に――確実に仗助があの言葉通りのスッとろい抗議ではなく、“何か”を仕掛けたのだと認識していた。
それも自分の意地や利益の為ではなく、誰かの為に。
彼女の考える東方仗助というのはそういう少年だった。
「先ほどもきっと……」
「……【クレイジー・ダイヤモンド】で直しましたよ。ええ、文字を『未達成』から『達成』に」
得意気にやった手品の種明かしをされたマジシャンが如く決まりの悪そうに呟いた仗助に、加賀は僅かに口の端を歪めて吐息。
そのまま静かに微笑を向ける。
やはり――、というかなんというか。どうにも加賀が期待している人間性と同じようで。
多少は溜飲が下がる。
きっと、大淀か――それともこの艦隊の為に。
彼と共にいる事で白の中にいると確信できるものではないが、並んでいると優しげな気持ちになれる男だった。
「な、なんスか? そんな、『目の前で一つしかない個室に入ろうとしている奴』を見るような目ぇして……」
「……」
「確かに……こう、『ズル』とか『イカサマ』の類いかも知れねーっスけど……」
「……」
頬と目尻を触ってみる。別におかしなところはない。
そのまま恐る恐ると加賀を伺う仗助を前に彼女は口から嘆息。
若干のトーンを落とし、話を続けた。本題はここからなのだ。
「だからこそ、この間の彼女への態度が不思議だわ」
向けた顎の先には卯月。
急に照準を向けられた事に肩を震わせた。髪が零れる。
そこから仗助に視線を戻し、加賀は彼を見詰めた。
先ほどよりもバツが悪そうに頭を掻いて、目線をさ迷わせる仗助。
そのまま熱心に――というよりは受け入れる心持ちで、気持ち優しげな目で彼を見続ける加賀。
どれほど向かい合っただろうか。
一分か、十分か、それとも十秒か。少なくとも一秒ではあるまい。それは確かだ。
根負けしたのか……やおら、仗助が口を開く。
何故だか彼は、超一流の殺し屋に四六時中狙われたかのように、頬に冷や汗を伝えているのが加賀には気になったが、黙殺。
「……あんまりおもしれー話でもないっスよ? 話してもあんまり真面目に受け取られたりしねーし……まぁ、俺も別にそれで構わねーたは思ってるんすけど」
「聞かせて下さい……貴方の事が知りたいわ」
「そこまで言われると、そーっスね」
そして、仗助は語り出した。
十年以上前の話だ。
ある雪の晩、四歳の子供だった東方仗助は生死の淵をさ迷うほどの高熱に魘されていた。大人ですらも耐えられない熱。
彼の母は息子の命を危ぶんで、車を出したが、しかし仙台の豪雪に――しかもその年の記録的な豪雪を前にタイヤを取られてしまった。
雪に埋まったタイヤ。
助けを呼ぼうにも運悪くそこは、開発されていない――コンビニどころか公衆電話もない田舎道だ。
東方仗助には、父親がいない。そして運転できるのは彼の母親しかいない。
止まってしまったタイヤをどうするのか。息子が、今も高熱に魘されているというのに。
そう――仗助が熱に苛まれるその時に現れたのは、一人のリーゼントヘアーの少年だった。
喧嘩後のような、青アザや切り傷が浮かぶ不良少年。
怪我を負っている彼を不信に思う東方仗助の母だったが……それを前にその少年は、ただ一言言った。
『その子……病気なんだろ?』
それから彼は躊躇いもなく己の勲章足る学生服をタイヤの下に強いて、車を押した。
雪道を走る為にチェーンが巻かれたタイヤは、容赦なく彼の上着を傷付けるだろう。
だと言うのに、その少年は構わず仗助たちを助けたのだ。雪の降る最中に。
そう。己も怪我をしているというのに! 雪が降り冷える冬の晩なのに!
それなのに、彼は己の学生服を躊躇いなく差し出したのだ! 見ず知らずの他人の為に!
その精神的『尊さ』と『勇気』――その少年の中にあった『黄金の精神』は、髪型と共に強い印象として仗助に刻み込まれた。
それは仗助の指標となった。
その優しさは、それから一ヶ月半以上熱に魘される彼の精神の支えとなったのだ。
その記憶が、仗助には根強く残っている。
昨日食べた夕飯の事でもなければ、警察官をしていた祖父でもなく――何よりも一番の支えとして。
自分が傷付きながらもなお、見ず知らずの他人の為に行動できる。
そんな少年の優しさが。
「……とにかく、この髪型を馬鹿にされるのだけは我慢ならねーんスよ。たとえ何モンだろうと容赦はしねー」
本能のように。
彼を真似た――彼と同じ髪型を馬鹿にされるというのは、彼の生き方を馬鹿にされ、彼を馬鹿にされる事である。
だからこそ東方仗助は、己自身でも手がつけられないほどに怒りを顕にするのだ。
「……そう」
加賀は内心えらく感動しながら、頷いた。
受け継がれていく尊さがある。その少年の優しさは東方仗助を通じ、巡り廻って加賀の命を救う事にもなったのだから。
ただ、彼女は深く――それこそ目を潤ませるほど感心していたが、残念ながらやはり顔色は変わらなかった。
残る艦娘は、無言。
仗助も特に付け加えない。
だから卯月に謝れと言う事もなければ、だから暴力を許してくれとも言わなかった。
ただ、そういう話なのだ。東方仗助に関する、それだけの話だ。
そんな中、
「その……それはそうと、さっきからどーにも判らねー話されてて聞きたいんだけどな?」
腕を組んで首を捻った天龍が、手を上げた。
眼帯の上の眉根は寄り、目尻にも力が籠る。見れば他の艦娘も皆一様に、そんな表情をしていた。
何かと、加賀と顔を見合わせた仗助が続きを促す。天龍は粗暴そうに髪を掻きむしりつつ、一言。
「その……よぉ……。あの……『なおす』とか【クレイジー・ダイヤモンド】とか……何だ?」
「それは……」
「ん、実際見せた方がはえーか。はえーよなぁ……」
呟いた仗助が、手で面々を払う。
何事かと首を捻りつつ従う皆の前で、“それ”は起こった。
「――【クレイジー・ダイヤモンド】ッ!」
仗助が叫ぶとともに、鋼鉄の扉が轟音を立てた。蝶番が揺れ、扉が軋む。
よく見れば、冗談の如く彫刻された拳型の凹み。人間のそれよりも一回りか二回りほど大きな代物に、思わず息を飲む天龍たち。
だが、それでは終わらない。彼女たちが真に驚いたのはここからだ。
そう、ここまでは前座。
見えない人型が、ただ一発鋼鉄の扉を殴りつけただけ。
「ドララララララララララララララララァァァァァ――――――――――――――ッ!」
弾丸の如く紡がれる仗助の言葉。並行して、矢継ぎ早に数多刻まれていく拳の痕跡。
ラッシュ。
機関銃の連射よりも早く、大砲の弾よりも強烈に撃ち出され続ける拳の暴風。
夏祭りの型抜きが如く、拳と拳の破壊痕の間に亀裂が入る。
「多分、戦車をも正面から跡形もなくブッ壊すっつー戦艦の主砲ほどじゃあねーにしろよォ~~~~~~~~~」
そして、ついに。
蝶番が限界を迎えるよりも早く――その扉を支える鋼鉄の軸が歪み――。
だがそれが曲がりきるよりも先に、圧し折れるよりも前に――――鋼鉄の扉が、コナゴナに吹き飛んだ。
「こんぐらいの壁だったら、ブッ壊せるぜ。問題なく、な」
踵を返し、破壊された扉に背を向け――唖然とする面々を捉える仗助の瞳。
だが、驚愕はまだ終わらないと仗助は目許を緩めない。
そう、
「――そして、問題なく『直す』ッ!」
逆再生の如く、猛烈な速度で破片が逆流。
何事もなかったかのように、元居た位置に鋼鉄の扉が出来上がる。騙しの手品映像でも見ているかの如く。
たった今起きたはずの出来事が、あたかも夢の中の現象とでも言わんばかりに元通りに。
『……』
眺める面々は、きょとんとしつつも、
(おおー、マジかよ……提督として世界水準軽く超えてんなー)
(すっとぼけた頭をしてると思ったけど、能力は便利そうね)
(これで……出撃するたびに壊れて資材を喰うとか……だから不幸の戦艦とか……言われない……?)
一様に皆、その有用性を認めていた。
ただ一人、卯月だけは、
(い、いくら元通りになるって言っても御免っぴょん!)
恐ろしさを背筋に伝えて、全身を総毛立たせていた。
戦艦の主砲ほどではないというのも真実。
駆逐艦として闘っていたときの卯月も、これほどの厚さの鋼鉄の扉を粉々にできずとも吹き飛ばす事は出来る。
ただし、自分に向けられるとしたら別だ。しかも至近距離から連続で。
痛いなんてものじゃあ済まされない。文字通り遺体になってしまう。
……と、彼女の恐怖はそれだけでは終わらなかった。
ふと思いついたように天龍が扉を指さし、言った。
「……ところで必ずこれって元通りになんのか? 失敗とかは?」
「そーなんだよなー……俺がブチ切れてたりするとそーもいかねーんだよなぁー」
実際、執務室の机とか、窓枠とか……未だに歪んだままだ。そのまま直ってしまっている。
仗助が怒っているならば、必ずしも元の形に戻るという保証はないのだ。
それを聞いた卯月は、
(ひ、ひい~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ)
二度と、絶対に、この男だけは怒らせまいと――身を固く強張らせるのだった。
>(すっとぼけた頭をしてると思ったけど、能力は便利そうね)
>(これで……出撃するたびに壊れて資材を喰うとか……だから不幸の戦艦とか……言われない……?)
凄い力の筈なのに、完全にこれ仗助の事心底ナメてるよな……
>(これで……出撃するたびに壊れて資材を喰うとか……だから不幸の戦艦とか……言われない……?)
凄い力の筈なのに、完全にこれ仗助の事心底ナメてるよな……
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