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    元スレめぐり「比企谷くん、バレンタインデーって知ってる?」八幡「はい?」

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    タグ : - めぐり ×2+ - 俺ガイル ×2+ 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    401 :

    あーしさん……

    402 :

    >>398
    寒気のするレス
    きもちわるい

    403 :

    >>402
    コピペだぞ

    406 :

    七夕

    407 :



    ×  ×  ×


    八幡「……三浦に告白されたんだな」

    葉山「……ああ」

    何故か俺の横のベンチに腰かけてきた葉山に向かって、俺は一応の確認を取った。

    ここ最近の三浦の態度、先ほどの三浦の涙、そして今の葉山の態度。

    これだけ揃っていれば他の状況は考えがたい。ほぼ間違いなく三浦が告白し、それを葉山は振ったのであろう。

    横で腰掛けている葉山の顔を見やれば、哀しげな微笑を浮かべながらどこか遠くを見つめている。

    その目には、一体何が映っているのだろう。

    408 = 1 :

    葉山「……優美子には、悪いことをした」

    八幡「じゃあ振らないで、付き合ってやりゃ良かったじゃねぇか」

    葉山「ははっ、いろはの時も君は似たようなことを言ったね」

    そう軽口を叩くと、葉山は困ったように笑いながらこちらに顔を向けた。

    葉山「全く君は、性格が悪いな」

    八幡「何を今更」

    葉山「それもそうだったね」

    ははっと俺と葉山の乾いた笑みが重なる。

    だが目は笑っていない。葉山の目はまだ、何か暗いものに染まっているように感じられた。

    409 = 1 :

    八幡「……正直、三浦を振るのは意外だったんだけどな」

    葉山「どうしてそう思うんだ?」

    思わず呟いてしまった言葉だったが、それに対して葉山は真面目な声音でそう問うてくる。

    いやなんでもない……と誤魔化せるような雰囲気でもなかったので、ここは素直に何故そう思ったのかを答えることにした。

    八幡「いや、てっきりお前も三浦のことを好きだと思ってたからな」

    葉山「──!!」

    俺はただ感じていたことをそのまま答えただけのつもりであったが、葉山の表情には驚愕の色が浮かんでいる。

    目は見開き、口がぽかんと開いており、それを見た俺の方が、葉山もこんな間抜けっぽい顔で驚くこともあるんだなと逆に驚いたくらいだ。

    少しして葉山がまた暗い表情に戻ると、俺の目を真っ直ぐに見つめてきた。

    410 = 1 :

    葉山「君はすごいな」

    八幡「何が」

    葉山「いや……」

    言葉を途中で遮り、目を逸らして地面を見た。俺はそれにどう反応するか決めあぐね、黙って葉山の次の言葉を待つことにする。

    何故今俺をすごいと言ったのか。その真意は一体、なんなのだろうか。

    しばらく沈黙を感じていると、葉山の方から口を開いてきた。

    411 = 1 :

    葉山「なんで俺が優美子のことを好きだと思ったんだ」

    八幡「……別に。勘だ」

    本当は葉山が三浦を好きだと感じてきた根拠はいくらでもある。

    今までの態度や、マラソン大会での言動、そしてここ最近の三浦とのやり取り。

    八幡「それに千葉村でお前の好きな人のイニシャル聞いてるしな」

    葉山「……ああ、そういえばあの時、君もいたんだったな……」

    ふっと何か諦めたような、納得したような、そんな感じのため息をつく。

    412 = 1 :

    葉山「……そうだ、俺は優美子のことが好きだ」

    八幡「……」

    しかし、そうであれば純粋に分からないことがある。

    何故、葉山は三浦のことが好きなのに振った?

    普通ならばこれで両思いで付き合っておしまい、であるはずである。

    いくら葉山が特定の女と付き合うという事実が周りの期待を裏切るとしても、さすがにそれだけで三浦を振るとも思い難い。

    ならば何故? 何故、三浦のことを振ったんだ。

    脳内でいくら考えても答えは出ず、代わりに答えを求めて葉山の顔を見る。

    413 = 1 :

    八幡「じゃあ、なんで三浦を振ったんだよ」

    葉山「……彼女の想いに応えられないからだよ」

    八幡「答えになってねぇよ」

    ほんの僅か、自分でも語気が荒くなったのを自覚した。俺が苛立ってきているというのが分かる。

    葉山と三浦のことなんてどうでもいいはずなのに。どうして俺はこう苛立っているのだろう。

    ……おそらく、三浦の真剣さを知ってしまったからだろう。

    今から丁度一ヶ月くらい前、奉仕部に依頼に来た時に、三浦が涙を浮かべながら知りたいと呟いたことは今でも鮮烈に思い出せる。

    俺らしくもないとは思うが、どうやら俺はあの真剣な三浦の気持ちに対して、理由も分からずにその想いを切った葉山に対して腹を立てているのだろう。


    ──まるで、自分を見ているみたいで。


    すぐに自分に嫌気が差した。自分のワガママで人の真剣な想いを踏みにじろうとしているのは何もこいつだけじゃないだろうに。

    414 = 1 :

    葉山「……」

    しばらく葉山は黙っていたが、ふと何かを決心したような、諦めたようなそんなため息をつくと、俯いていた顔をあげた。

    葉山「本当は今月末のテストが終わるまでは黙っているつもりだったんだけどね」

    八幡「……なんだよ」

    葉山「実は俺、学校を卒業したら留学するんだ」

    八幡「──!?」

    今度は俺の顔が驚愕の色に染まる番であった。

    そんな俺の顔がおかしかったのか、葉山がははっと軽く笑う。

    415 = 1 :

    葉山「前の君の問いに答えようか。俺の三年の進路は文系でも理系でもない、国際教養科さ」

    八幡「あ、ああ……」

    そこで、過去の葉山の進路についてのことを思い出す。

    確かに留学するという選択肢を取るのであれば、文系でも理系でもない。俺の言う通りにしないという言葉にも矛盾しない。

    そもそも葉山は文理のどちらかなどで選択などしていなかったのだ。

    文系でも、理系でも、どちらでもない。

    八幡「……」

    葉山「親に言われてね、こればっかりは変えようがなさそうだ」

    416 = 1 :

    ふと、前に平塚先生と留学の話を僅かにしたことを思い出した。

    ──うちの学校は国際教養科もあるからな。留学志望の子もいるんだ。そういう子たちは早い段階から準備が必要だから、通常の学校よりも早いかもしれないな。

    ──ああ、でも葉山は出しに来ていたな。

    言われてみれば、確かに自然と国際教養科に行くという選択肢は外してしまっていた。考えてみれば、あの会話にもヒントが落ちていたというのに。

    葉山「……すぐに海外に行ってしまう俺なんかと付き合っていいとは思えなかったんだ」

    葉山が漏らしたその言葉は重々しく、決してただ振っただけではないことを窺わせた。

    そこで点と点が繋がったような気がした。葉山が常に女性と線を引いていた理由、進路を答えたがらなかった理由。

    分からないのは、ただ一つだけ。

    417 = 1 :

    八幡「……なんでもっと早く言わなかったんだ」

    留学するから三浦を振る。それで納得するかどうかはさておいて、まだ一応分かるには分かる。

    だが、留学するという選択肢を取るのならそれはそれで隠す必要などないのではないか。もっと早く大っぴらに国際教養科に行くと宣言してしまえば良かったものの。

    俺がそう言うと、葉山は俯きながら、慎重に言葉を選ぶように紡いでいった。

    葉山「……なんて言えば良いかな、それで他の人たちの考えに変な影響を出したくなかったんだ」

    八幡「……?」

    葉山「もし俺が国際教養科に行くと前々から言っていたら……多分、優美子も行くと言ってしまうだろう」

    そう呟く葉山の表情も声音も真剣そのものだ。俺は黙ってその言葉の続きを聞く。

    418 = 1 :

    葉山「でも、優美子まで留学は出来ない……それで優美子の進路に影響を出すわけにはいかない……」

    八幡「……」

    葉山「……いや、結局言い訳を重ねて、優美子の想いを受け止められなかっただけかもしれないな」

    そう自虐気味に言うと、葉山はベンチから立ち上がり、ちらと俺の顔を見た。

    葉山「見ただろ、俺の無様な姿を」

    八幡「……無様とは、思わねぇよ」

    葉山「そうか? それなら良かったんだけど」

    ははっと、先ほどまでと違い明るく笑う葉山だったが、俺はそれに釣られて笑う気にはなれなかった。一体、何がおかしかったのだろう。

    419 = 1 :

    しばらくその笑みを浮かべていた葉山だったが、ふと真顔になると真っ直ぐに俺の瞳を射止めるように見つめてきた。

    葉山「俺は優美子の気持ちに応えられなかった。だから君にはちゃんと応えてやってほしい──彼女たちにね」

    八幡「……お前に何が分かる」

    葉山「別に、勘ってやつだよ」

    先ほどの俺のセリフをそのまま使われてしまい、俺は黙ることでしかそれに答えられなかった。

    葉山「君には俺の二の舞になってほしくはない。だから君はちゃんと応えてやってくれ。その結果がどうなろうともね」


    420 = 1 :



       ×  ×  ×


    八幡「……」

    葉山が去った後、俺がいつの間に体育館のところにまで戻ってきてしまっていた。

    あのベンチから今いる体育館までの道のりは一切覚えていない。気がついたらここにいた、というやつである。

    体育館の中はまだまだ生徒たちの熱気が渦巻いていた。しかし今の俺にはいまいち別の世界の出来事のようにすら感じられてしまう。

    ちらりと入り口横の方へ目線をやる。そこには俺が手掛けたメッセージボードがあり、今も何人かの人がきゃいきゃい言いながら何かを書いてはボードに貼っていた。

    正直に言って不安であったが、意外とあのメッセージカードは好評なようだった。ボードを見れば、結構な量のメッセージカードが貼られている。

    421 = 1 :

    戸塚「あ、八幡!」

    材木座「む、これは八幡!!」

    八幡「ん、戸塚か」

    呼ばれた方向を振り返ってみれば、そこには戸塚彩加の姿があった。その横にいるのはざい、ざい、材なんとかさんだっけ?

    戸塚「あ、今仕事とか大丈夫? 忙しそうにしてたからさっきまで話し掛けづらかったんだけど」

    八幡「ああ、今は暇だから平気だ。むしろ仕事中でも話しかけにきてよかったぞ?」

    戸塚「いや、それは悪いかなぁって」

    悪いどころか戸塚が側にいてくれた方が仕事捗るだろうから、むしろ良いことだと思うんですけどね。

    422 = 1 :

    材木座「はぽんはぽん、この甘ったるい雰囲気は我らには受け難いものだな。そうだろう、八幡!!」

    八幡「そういえば戸塚、お前もなんかこれに書いていったらどうだ?」

    戸塚「このメッセージボード、八幡が考えたんだよね! すごいなぁ、ぼくもなにか書いていこうっと」

    材木座「はちまーん! 聞け八幡!」

    八幡「………あの、すみませんイベントスタッフなんですけども、騒がしい方には退場をお願いしたいんですけど」

    材木座「八幡!?」

    で、こいつ──材木座義輝は何故ここにいるのだろう。正直に言ってバレンタインデーイベントなぞこいつにとって苦痛以外何物でもないはずなんだが。でもまぁそれでもなんだか来る気はしてた。だって材木座だし。こまけぇこたぁ気にすんな!

    423 = 1 :

    戸塚と材木座と話していて少々先ほどまでの陰鬱な気分がいくらか晴れたことを感じながら、たくさんのメッセージカードが貼られたボードを見渡す。

    戸塚「みんな色々書いてるね」

    本当、ただ自由に書いて貼るだけなのによくもまぁこんなに好評だったものだ。考えたの俺なんですけどね。

    その貼られているカードを見ていると、その内容は本当に人それぞれだ。

    『○○ちゃんと一生一緒だよ!』

    うるせぇ別れろ。

    『期末試験で良い点数取りたい!』

    イベント来る暇あるなら勉強しろ。

    『リア充爆発しろ』

    それな。ほんとそれ。それしかないまである。

    『ハヤ×ハチが成就しますように』

    ねぇよ、ねぇ。一生ねぇ。

    『大志が高校受験成功しますように』

    ああ、そちらの弟さんも受験でしたね。……ま、来たら可愛がってやるよ。

    『けっこんしたい』

    ……早く誰か貰ってあげてよぅ! 俺が貰われちゃいそうになるから! 早く!

    424 = 1 :

    戸塚「あはは、みんな色々書いてるね」

    うん、本当に色々書いてる、自由過ぎると言えるな。特に海老名さん。いやもうほんと早々にその夢は諦めていただきたい。

    強いて言えば七夕でもないのに願い事関係が多い気がする。まぁ最初に書いた俺が小町の受験の成功を願うものだったし、別にいいっちゃいいのだが。

    材木座「けぷこん、ならば我も書くとしよう!」

    材木座がメッセージカードを取ると、ペンでキュキュッと何か書き始めた。おおう、こいつ字下手だな……一応物書きとしてそれはどうなんだ……いやまぁパソコンで文字を打つ時代なのだから必要ないのかもしれないけどさぁ。

    『声優さんとケッコンしたい』

    八幡「ラノベ作家じゃねぇのかよ!」

    材木座「あっ……いや、それは我の力で為すべきものだからな……ハーッハッハッハ!!」

    嘘付け、今素で忘れてたろ……。

    だがまぁ、自分の力でなんとかすべきものは願い事なんかに託すものじゃないとは思う。しかし声優さんと結婚することは自分の力でなんとかなるようなものじゃないとは分かってるのねこいつ……。

    425 = 1 :

    戸塚「あ、ぼくも自分の力でなんとかしなきゃいけないことは書かない方がよかったかな……」

    そう呟く戸塚のメッセージカードにはこう書いてあった。

    『テニス部にたくさん新入生が入ってきますように!』

    八幡「……別にいいんじゃねぇの。願いっつか、なんだ、決意表明とか、そんな感じで」

    戸塚「うん、じゃあそういうことにするよ!」

    そう言ってはにかむ戸塚の笑みはもうほんと尊い。お持ち帰りしたい。

    しかしその瞳に宿る決意は至って真剣だ。心の底からテニス部が繁栄することを祈っているのだろう。

    このテニス部部長は、俺なんかよりずっと、ちゃんと自分の居場所について考えているらしい。

    426 = 1 :

    戸塚「でもこういうのいいよね、自分の思いを書けるっていうの」

    八幡「そこまで深く考えてたわけじゃないんだけどな……」

    戸塚「そうなの? でも言葉では言いづらいことでも、文字でなら書けることもあると思うんだ」

    八幡「そうかなぁ……」

    その戸塚の言葉で、ふと、めぐりさんの言葉が脳裏を横切った。

    ──私も明日、なにか書いて飾っておくから、見つけてね。

    そうだ、そういえば昨日そんなことを言っていたような気がする。

    427 = 1 :

    つってもな、メッセージボードに貼られているカードの枚数はもうだいぶ多い。さっきは運良く知り合いのものをいくつか見つけられたが、ここからめぐりさんの物一枚を捜すのは手間が掛かりそうだ。

    しかし、その懸念は一瞬で晴れた。

    たまたま見上げた、昨日俺が貼った小町の受験合格願いの横に、何故かほんわかする印象を受ける文字で書かれたメッセージカードが貼られていたからである。


    『生徒会室に来てください めぐり』


    一瞬で鼓動が早くなり、頭の熱が沸騰してしまいそうなほどに燃え上がったような気がした。

    戸塚「……どうしたの、八幡?」

    八幡「悪い、ちょっと用事が」

    戸塚「そうなの、じゃあね八幡!」

    材木座「いやしかし我が書いたヒロインの声優が……八幡? どこへ行く!?」


    428 = 1 :



       ×  ×  ×


    体育館から出て、生徒会室までの廊下を歩く。

    あのメッセージカードには、別に俺宛だとは書かれていない。

    実は全く別の人宛である可能性も高い。というか、今までの俺ならばその可能性しか信じなかっただろう。

    だが、今の俺は。

    あれが俺に当てたメッセージなのだということを理解してしまっていた。

    429 = 1 :

    八幡「……」

    カツンカツンと俺の足音が人気のない廊下に響き渡る。

    2月14日。

    バレンタインデー。

    女子からの呼び出し。

    ──……優美子には、悪いことをした。

    先ほどまでの、葉山と三浦のことが思い返される。

    ……勘違いするなと、自分には強く戒めてきた。

    しかし、状況は完全に揃ってしまっている。

    430 = 1 :

    もしも、もしも。

    もしも、俺の思ってしまっていることが、勘違いじゃなかったとしたら。

    八幡「……俺も、葉山のことは笑えないな」

    今だけは自分のただの思い過ごしであって欲しいと思った。

    勘違いであって欲しいと願った。

    もし、めぐりさんがそれを願うのであれば。


    俺は、その想いを斬るつもりでいるのだから。



    431 = 1 :

    続きます

    435 :

    647 : ◆I0QEgHZMnU [saga]:2015/07/09(木) 02:19:51.62 ID:Rie/7WoP0これにて完結! 最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました!

    文章やシナリオで仕事をする憧れがあって、でももういつまでも憧れじゃいかんよなあと悟って実際に動くことに決めました。
    でも何の実績もない自分に仕事を頼む奴はいないよな、じゃあどうしたらいいんだろう? と思ってたどり着いた答えがこれでした。
    下手くそがなに生意気言ってんだという感想も甘んじて受けとめます! 逃げも隠れもしません! これが今の自分の全力です。

    文章量は804kb、構想・プロットに一週、執筆に三ヶ月と三週、加筆修正に三日くらいでした。書くのは初めてです。
    これが誰かの目に留まって、琴線に触れるものがあれば、ぜひなにか連絡くれたらなーと思います。
    連絡用にtwitterを作っておいときました。よろしければぜひ~。  @Ring8_428


    ひとつしか原作を知らない人にとっても、全部知ってる人にとっても、開拓したり読み返したりするキッカケになればこれ以上の幸せはありません。読んでくれたみなさまが幸せになりますよーに!
    それでは、ありがとうございました(´▽`)ノ さよなら~

    436 :

    >>435
    ググっても出てこないんだけど?

    捏造ですか?笑

    437 :

    別SSの後書きのマルチやけどなにがしたいのかは

    438 :

    >>436
    俺ガイルとアイマスとラブライブのSSのあとがき

    439 = 1 :



        ×  ×  ×


    生徒会室に向かう俺の足取りは重く、そして遅い。

    あのメッセージに気が付かなければ良かった、なんて考えが浮かぶ。

    例え本当に気が付かなかったとしても、それはただの問題の先送りにしかならないだろうに。

    八幡「……」

    冬の廊下は寒々しく、時折どこか空いた窓から冷たい風が入り込む。

    その隙間風が俺の頬を撫でたが、俺の心の中の方が冷えているのだろうか、むしろ風の方が温かいなんて、そんな感想を抱いた。

    さっきからいやに血流が早くて、体温が無駄に高い。それに反して頭の中はキンキンに冷えており、ありとあらゆる思考が脳内を巡り廻る。

    440 = 1 :

    カツンカツンと、ゆっくりと、ゆっくりと生徒会室に近づいていった。

    生徒会室への距離が縮まっていくほど、俺の体がまるで重りでもついたかのように重くなっていく。

    この先の生徒会室に向かったところで、待ち受けているのはハッピーエンドなんかじゃないことを知っているから。

    いっそ全部なかったことになればいいのに。

    そうやって心の中で現実逃避を繰り返していても、足は動いている以上、物理的にいつかは生徒会室に辿り着いてしまうのであった。

    八幡「……」

    そして、俺は生徒会室の扉の前に立っていた。

    はぁとため息をついてから、決意を固めてその扉を二度叩く。カッカッと音が鳴り響く。

    441 = 1 :

    めぐり「どーぞー」

    扉越しに間延びしたようなほんわかした声が聞こえてきた。これでめぐりさん以外の声が聞こえてきたらどれだけ俺は安堵しただろう。

    しかしそれは聞きなれためぐりさんの声だ。それ以外誰の声でもないことは、俺の耳が証明してしまっている。

    少し間を置いて、引き手に手をかけた。

    その扉は普通の扉だったはずだが、今日は特別重いような気がした。それでもぐっと力を込めて無理矢理開け放つ。

    中に入ると、その教室の奥に、女生徒が一人ポツンと椅子に座っていた。

    めぐり「や、比企谷くん」

    俺の姿に気が付いた女生徒──城廻めぐりは、小さく手をあげると、こちらに向かって軽くその手を振った。

    もう片方の手には、何か小洒落たビニール袋のようなものを持っている。

    442 = 1 :

    八幡「……ども」

    それに対して俺は軽く会釈だけ返すと、扉を閉めてからその生徒会室の真ん中辺りにまで進んだ。

    今はもうめぐりさんのではない、一色のものとなった生徒会室に。

    八幡「……メッセージカードのあれ、俺宛でいいんですよね?」

    一応念のため、そう言って確認を取る。

    もしもこれで否定してくれれば俺が単なる浮かれたアホだということで全ての決着は付くのだが──しかし、めぐりさんはこくりと首肯した。

    めぐり「うん、そうだよ。よかった、気が付いてくれて」

    つい先程、気が付かなければ良かったと思っていたことを思い出し、うっと言葉が詰まる。

    443 = 1 :

    そんな俺の様子には気が付いているのかいないのか、めぐりさんはいつものほんわか笑顔をその顔に浮かべたまま言葉を続けた。

    めぐり「もしかしたら気付いてくれないかなとか不安だったんだけどね」

    八幡「……まぁ、昨日言われましたしね」

    昨日、めぐりさんが直々に俺に伝えたのだ。見つけてね、と。まぁ戸塚に言われなかったら忘れていたかもしれなかったが。

    めぐりさんは本当に良かったよーと真っ直ぐに俺の目を見てきたが、その真っ直ぐな視線を受けるのがなんだか気まずく、俺は身を捩ってその視線から逃れるように目をそむけた。

    八幡「……で、なんか用ですか」

    俺は手近にあった椅子を引いて座ってからそう言うと、めぐりさんがパンと手を叩いた。

    めぐり「あ、そうだね。まぁ用っていうか、ちょっとお話がしたいって感じなんだけど」

    そのお話というのはなんなのか。

    一つ、予想してしまっているものじゃなければいいがと、心の中で祈る。

    444 = 1 :

    めぐり「とりあえず、イベントは成功みたいだね。お疲れさま」

    まず始めにめぐりさんが切り出してきた話題はバレンタインデーイベントについてのものだった。まだ終わってもないのに早すぎないかと心の中で少しため息をついた。

    八幡「まだ終わってないっすよ」

    めぐり「あはは、そうだったね」

    言うと、めぐりさんは軽く微笑んだ。

    めぐり「でも、ちょっと先に言いたかったんだ」

    八幡「……そうすか」

    まさかそれを言うためだけに、こんなところに呼び出したわけはないだろう。

    それだけならばイベントが終わった後の慰労会でもなんでも、そこで言えばいい。決してそれが本題なわけがない。

    ……本当にただイベントの感想を言いあって終わることが出来るなら、もちろんそれの方がいいのだが。

    445 = 1 :

    当然俺のそんな小さな願いは届かず、めぐりさんは再び口を開く。

    めぐり「比企谷くんのおかげでもあるんだよ」

    八幡「別に俺は何もしちゃいないですよ」

    俺がやったことなど、雑用がほとんどであり、決して目立った活躍をしていたわけじゃない。

    それを言うのなら一色や雪ノ下の方がよほどイベントに貢献していたと言えるだろう。

    めぐり「そんなことないよ、比企谷くんも頑張った!」

    八幡「はぁ、どうも」

    しかしめぐりさんが再びそう力強く言い放ってきたので、素直にそれを受け取ることにした。まぁあくまで比企谷くん『も』だしね。みんな頑張ってたしね。

    446 = 1 :

    決して俺一人だけを褒めているわけではないと自分に言い聞かせながら、めぐりさんの声に耳を傾ける。

    めぐり「比企谷くんは本当に頑張ってくれたよ……」

    八幡「……」

    しかし続く言葉は、俺一人を指したものであった。めぐりさんはいつもの、ちょっとゆるめのテンポで、ゆっくりゆっくりと言葉を紡いでいく。

    めぐり「比企谷くんはさ、雪ノ下さんみたいに目立った頑張り方じゃないと思う。でも、いつも気を遣ってくれてさ、皆のことを考えてくれてるんだ」

    八幡「……買い被り過ぎですよ」

    実際、そんな立派な奴じゃない。そんな風に言われるような奴じゃない、俺は。

    447 = 1 :

    めぐり「文化祭の時だってそうだったと思う。体育祭の時だってそう。皆のために動いてくれる」

    八幡「そんなんじゃないです。ただ俺の性格が悪いってだけでしょう、あんなの」

    めぐり「それに、この前の土日だって、わたしのことを助けてくれた」

    八幡「あれだって、別にそういうわけじゃ……」

    めぐり「じゃあどういうわけなの」

    八幡「……」

    そう言い返してきためぐりさんの声音は思ったより強く、思わず言葉に詰まってしまった。

    めぐり「……比企谷くんは、本当は優しい人だと思うの」

    俺が何かを答える前に、めぐりさんがそう呟く。

    その言葉には妙に熱が篭っているように感じられて、俺の耳の奥にまですっと届いた。

    448 = 1 :

    俺が優しい、か。そんなわけはない。しかしそのめぐりさんの言葉を遮ることも出来ず、歯噛みしたままその言葉の続きを待ってしまう。

    めぐり「だから、なのかな。わたしもさ、きっとそんな比企谷くんに惹かれちゃったんだよ」

    ガサッと音がした。

    めぐりさんの持っていたビニール袋から鳴った音であった。めぐりさんはその中からラッピングされた箱のようなものを取り出すと、それを自分の膝の上に乗せた。

    めぐり「比企谷くん、バレンタインデーって知ってる?」

    八幡「……」

    前にも、全く同じ問いを投げられたことがある。

    しかし、今回はその時とはまるで状況が違う。

    今回のその問いは何を問うためのものか。

    そこに気が付かないほど、俺は鈍感じゃない。むしろ敏感な方だ。敏感で、過敏で、過剰に反応してしまう。今までずっとそうだった。

    それでもそんなわけがないと、自分のことを戒めて生きてきた。

    しかし、もしもそれが現実となって、目の前にやってきたとしたら。

    比企谷八幡は、どうする。

    449 = 1 :

    めぐり「生徒会室に来てもらったのは、これのためなの」

    俯き、自分の膝の上に乗せた箱を見るめぐりさんの表情はどこか緊張しているようにも見える。肩や手、そして声も震えているような気がする。

    瞬間、生徒会室の空気が変わった。

    それを俺は肌で感じてしまう。これからどうなるのかも、予想がついてしまう。

    だから俺も決意を固める。これから、最低で、最悪な、それでも自分の信じることのために、やれることをやるのだと。

    しばらく俯いていためぐりさんだったが、ばっと意を決したように顔をあげると、何の穢れもない瞳で、俺の目を真っ直ぐに見つめてくる。


    めぐり「比企谷くん、わたしは──」


    八幡「めぐりさん」


    めぐりさんの言葉を遮るように、俺は声を被せた。

    450 = 1 :

    ぱちくりと、めぐりさんの目が見開いている。まるで肩透かしでも食らったかのような表情だ。

    しかし俺はそれに構わず、そのまま続ける。

    八幡「めぐりさんは、勘違いをしています」

    めぐり「か、勘違い?」

    八幡「俺は決してめぐりさんの言うような人間なんかじゃないです。優しくもないし、皆のことだって考えてるわけじゃない」

    やや語気が強くなり過ぎてしまっただろうか。めぐりさんの顔が驚きの色に染まっていく。しかしここまで来て俺だって引くわけには行かない。

    八幡「文化祭も、体育祭も、俺は自分のことだけを考えて行動しただけに過ぎません」

    めぐり「で、でも」

    八幡「それに、めぐりさんのことを助けたのだって、あんなの偶然でしかない……本当はあれ雪ノ下が助けようとしてたんですよ、それを横取りしてただけで」

    めぐり「……」

    自分の声が、頭が、体温が、だんだんと冷えていっているのを自覚する。それに伴い、めぐりさんの表情も冷たいものになって言っているように見える。


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