のくす牧場
コンテンツ
牧場内検索
カウンタ
総計:127,062,769人
昨日:no data人
今日:
最近の注目
人気の最安値情報

    元スレめぐり「比企谷くん、バレンタインデーって知ってる?」八幡「はい?」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - めぐり ×2+ - 俺ガイル ×2+ 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitter

    1 :

    俺ガイルのSSです。

    短編ではないかもです。

    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1433651798

    2 = 1 :

    二月、初週の日曜日。

    冬に突入してからそれなりの時が過ぎたというのに、吹きすさぶ風の冷たさは未だに衰えようとしない。

    びゅーと風が吹くと、その冷たさに思わず体をぶるっと震わせてしまう。

    それなりに厚着をしてきたつもりなのだが、それでもまだ足りないほどに寒い。今度ニット帽でも買って被ろうかなんてことを本気で検討し始める。実に俺には似合わなさそうだ。

    早く暖房のついたところへ入らないと、このままでは凍え死ぬ。

    そう考えて歩く速度を少しだけ早めると、俺は目的地の本屋が入っている大型ショッピングモールを見上げた。

    3 = 1 :

    八幡「……」

    ついこの間まで、俺たち奉仕部は一色の手伝いでフリーペーパーを作るために奔走していた。

    かなりギリギリではあったがそれもようやく終わり、久しぶりに新刊を買い漁ろうと思って本屋にやってきていたのであった。

    しかしこんなに寒いと知っていれば家に引きこもっていたのに……。天気予報は吹いている風の冷たさも考慮してもっと詳しく報道するべきだと思うんですよねと、軽く恨み言を心の中で呟く。

    まぁ、この地獄のような寒さもこのショッピングモールの中に入ってしまえばおしまいだ。

    暖房を発明した奴って本当神かなんかだよな……。もっとも暖房を開発した奴が誰かなんて名前も顔も知らないのだが多分千葉県出身だろう。適当に感謝しつつショッピングモールの入り口の自動ドアに近づこうとする。

    その時だった。

    4 = 1 :

    男>1「なぁ、姉ちゃんちょっと俺らと一緒にいかね?」

    男>2「ほら、いいとこ知ってるからさ」

    入り口付近にチャラそうな兄ちゃんが二人と、その二人に絡まれている女性が一人がいた。

    まるでマンガやドラマなどで使われそうなほどあまりにテンプレっぽい絡み文句が気になり、思わずその方向を向いてしまった。

    ──後になって思えば、これが全ての始まりだったと思う。

    八幡「……城廻先輩?」

    その兄ちゃん二人に絡まれている女性には見覚えがあった。

    肩まであるミディアムヘアーは前髪がピンで留められ、つるりとしたきれいなおでこがきらりと眩しく光る。

    めぐり「いや、その、私用事があるのでー」

    そのどこかほんわかとした、しかし今だけは少々焦りも含まれているような声にも聞き覚えがあった。

    その女性の名前は城廻めぐり。我が総武高校の前生徒会長である。

    5 = 1 :

    なんでこんなところに……。いやそんなことは、今はどうでもいい。

    チャラそうな兄ちゃん二人に囲まれているめぐり先輩は、明らかに迷惑そうにしている。

    ここは俺がさらっと手を差し伸べて、めぐり先輩を助けに行くべきではないだろうか。

    男>1「そんなこと言わずにさ、ね?」

    男>2「面白いところだからさーまぁ一回来てみてよ」

    めぐり「いや、あの」

    いや、めっちゃ怖い。あの中に割り込むとか無理。

    俺のチキンっぷりを舐めてもらっては困る。クリスマスシーズンを過ぎるとそこら中で投げ売りされるほどのチキンっぷりだ。なんなら年中投げ売りしているまである。

    しかしここで見て見ぬ振りしてどっか行くのも、それはそれで後味悪いしな……と少しの間そこで立ち止まっていると、そのチャラい男たちに絡まれていためぐり先輩が何かに気が付いたように顔をバッとあげた。

    ……よく見れば、その顔は俺の方を向いているような気がする。

    それに気が付くのと同時に、めぐり先輩が手を振りながらこちらに向かって駆け出してきた。

    6 = 1 :

    めぐり「あっ、比企谷くーん!」

    八幡「えっ、ちょっ、城廻先輩」

    男>1「あっ、待ってよ君ぃー!」

    そのまま城廻先輩はがばっと抱きつくようにして俺の手を取ると、そのまま俺のことを強引に引っ張りながら駆け出した。

    めぐり「待ってたんだからね!」

    八幡「あ、ああ、すんません……」

    あのチャラそうな兄ちゃん達から離れるための演技だということには一瞬で気が付いた。

    しかしそれは分かってはいても、腕にめぐり先輩の体温を感じてしまうと、つい鼓動が早くなる。

    さっきまで感じていた寒さも吹き飛び、身体中が一気に熱くなったような感覚を覚えた。近い近い柔らかい近い近いいい匂い近いめぐりん可愛いよめぐりん。

    めぐり「ごめんね、比企谷くん。ちょっとだけ付き合ってね」

    八幡「えっ、城廻先輩!?」

    めぐり先輩は耳の傍でそう小声で囁くと、俺の腕を取ったままそこから逃げるように走り出した。

    後ろからあのチャラい兄ちゃん達の声が聞こえてきたが、一瞬振り返ってそちらの方を見てみると追いかけてくるつもりはなさそうだった。

    それなら良かった、こんな町の中で鬼ごっことか勘弁して欲しいし。

    そんなことを適当に考えながら、俺の手を引っ張って走るめぐり先輩についていった。

    7 = 1 :



         ×  ×  ×


    めぐり「いやー、ほんと助かっちゃった。ありがとうね、比企谷くん!」

    八幡「いや俺、何もしてないですし……」

    あのショッピングモールの入り口から少々離れたところまで走り、あのチャラい兄ちゃん達の姿が見えないところまでくると、ようやくめぐり先輩が立ち止まった。

    それにしても、意外とめぐり先輩走るの早いですね……いきなりトップスピードで走り出したせいか、俺の心臓もばくばくいっている。……原因は、走ったことだけではないと思うが。

    お礼を言いながら、めぐり先輩は俺の手を離す。自分の手に残る温もりに関しては無視することにした。いやだってドキドキするし。

    めぐり先輩の顔を見てみると、ほんわかとした微笑みを顔に浮かべていた。

    うーん、いつ見ても癒されるなぁこの笑顔。俺の疲れも一気にめぐりっしゅされたような気がする。

    8 = 1 :

    めぐり「いや、比企谷くんのおかげだよ。すっごい困ってたんだ」

    八幡「あー、大変そうでしたね」

    一瞬だけ、そのほんわかとした笑顔に陰が差す。しかしすぐにまたいつもの笑顔に戻った。

    本当に俺は何もしていないのだが……。

    まぁこの笑顔を守れたのなら良しとしよう。この人の笑顔は、我が総武高校の財産とも呼べるべきものだからな。

    めぐり「お礼をしなくちゃね。比企谷くん、お昼はまだ食べてない?」

    八幡「え、ええ、まぁ」

    めぐり「じゃあさ、お昼奢っちゃうよ!」

    ぱあっと笑顔を浮かべて、めぐり先輩がそう提案する。さっきからこの人の笑顔についてしか言及してない気がするな。それだけ素晴らしいってことなんだけど。

    9 = 1 :

    しかし俺はたまたま、あそこに立っていただけのいわば村人Aポジションの人間だ。

    正直に言ってお礼を言われる筋合いすらないのに、飯まで奢らせてしまっては逆に悪いだろう。

    八幡「いや別にいいですよ。俺はたまたま通りがかっただけですし」

    めぐり「じゃあどこに食べに行こうか!」

    聞いてなかった。聞けや。

    八幡「いや、あの、城廻先輩?」

    めぐり「あっ、そういえば最近あのモールの中に新しいお店が出来たんだって! そこにしよう!」

    八幡「……」

    結局話は聞いてもらえずに、そのままめぐり先輩にお昼を奢ってもらう流れになってしまったので、仕方なくそれについていくことにした。

    今ここで学んだことがある。

    めぐり先輩は意外と押しが強い。


    10 = 1 :



        ×  ×  ×


    めぐり「いやーおいしかったね」

    八幡「そ、そうですね……」

    めぐり先輩に昼飯を奢ってもらった後、ショッピングモールの中を先輩と二人で並んで歩いていた。

    いや一応自分で金は払おうと思ったのだが、どうしてもめぐり先輩が出すと言って聞かなかったのだ。おかげでなんでこいつ女に金出させてんのみたいな周りから視線が酷かった。俺くらいの強靭なメンタルを持ってなかったら、多分その場で泣き崩れていてもおかしくないレベル。

    さて、なんで俺はこんな美人な先輩と肩を並べて歩いているのか。

    まぁ結局昼飯は奢ってもらってしまったわけだが、お礼というのはそれで済んだはずである。

    ならば、めぐり先輩はこれ以上俺と一緒にいる意味も無いと思うのだが。

    11 = 1 :

    めぐり「あっ、見て比企谷くん。あれすごいねー」

    八幡「あっ、そうすね」

    なんだか楽しそうなめぐり先輩を見ていると、こちらから別れは非常に切り出しにくい。

    しかしめぐり先輩は俺と一緒についてくるみたいな流れを醸し出していたので、こんな感じで二人で歩いているということだ。

    めぐり「あれとかいい感じだねー」

    八幡「そ……そうですね」

    ちなみに俺の返しがほとんど同じような気がするのは、単に俺のコミュニケーション能力の欠乏からくるものだ。

    こんな美人な先輩と至近距離で会話をすることに緊張してるからとかじゃないぜんぜんいしきとかしてないしちょうよゆう。

    12 = 1 :

    めぐり「そういえばさ、最近一色さん達どうかな?」

    八幡「え、一色?」

    しばらくそんな感じで会話を続けていると、ふと話の話題が一色のことについてになった。いや、一色さん「達」というのだから生徒会全員のことを指しているのだろう。

    めぐり先輩がかつてそこにいて、今は後を託したそこのことを。

    八幡「ああ、なんだかんだ結構上手くやってるんじゃないんですかね」

    めぐり「そういえば海浜総合とのクリスマスイベント、あれって比企谷くん達が手伝ってくれたんだって?」

    八幡「知ってたんですか」

    めぐり「うん、後からね」

    そういえば一色はめぐり先輩には相談してなかったんだったなぁ……。

    13 = 1 :

    それを聞いて、ふと去年のクリスマスのことを思い出した。

    一色に依頼され、手伝ったあのクリスマスイベント。あれからもう一ヶ月と少しが経っている。ついこの間のように感じるが、もうそんなに経ったのか。時が経つのは早い。

    しかしあれは大変だったな……雪ノ下、由比ヶ浜とも色々あったし……何よりあっちの生徒会長が無駄に曲者だったから本当にやりにくいったらありゃしなかったものだ。

    めぐり「ちょっと遅いかもだけど、本当にありがとうね」

    もし海浜総合高校の生徒会長があんな奴ではなく、めぐり先輩だったら俺ももっとやる気になってたんだろうけどなぁ……。いや、そのめぐり先輩が率いていた文化祭や体育祭もやる気だったかというと怪しいか。いやあれは相模が悪いめぐり先輩は悪くない。

    八幡「別に城廻先輩がお礼を言う必要ないでしょう、あれは一色たちの問題ですよ」

    めぐり「まぁまぁ。生徒会を手伝ってくれたのには、本当に感謝してるんだよ」

    そう言うと、めぐり先輩の表情が暗くなる。そうして、少し俯いた。

    14 = 1 :

    めぐり「私はもうそろそろ卒業しちゃうからさ、あの大好きな生徒会を助けることはもう出来ないの」

    八幡「あっ……」

    騒がしいショッピングモール内でも、小声で呟かれたその言葉は不思議と俺の耳に届いた。

    そういわれて、今の日付を思い出す。もう二月なのだ。

    そして、めぐり先輩はもう三年生。あと一ヶ月もすれば卒業なのだ。

    八幡「城廻先輩……」

    少々暗くなってしまった雰囲気をどうにかすべきかと、先輩の苗字を呼ぶ。

    しかし顔をあげためぐり先輩の顔には、再びほんわかぱっぱとした笑みが浮かんでいた。

    15 = 1 :

    めぐり「でも、比企谷くん達もいるから安心だね!」

    八幡「……いや、俺たち生徒会じゃないんですけど」

    そうは言いつつも、最近は実質生徒会みたいな状態になっているのは否めない。

    特につい先日までやっていたフリーペーパーの件に至っては、生徒会より奉仕部の方が動員している人数が多かったほどだ。いやまぁ他の生徒会の面子は決算のあれこれで動けなかったと一色が言っていたため、決してサボっていたと言う訳じゃないのは分かっているのだが。

    めぐり「これからも一色さん達が困ってたら、助けてあげてね」

    八幡「まぁ、奉仕部として出来る限りなら」

    めぐり「そっか、じゃあ安心だ」

    そう言って笑っためぐり先輩を前に、思わず心臓がドキッと跳ねたような気がした。

    やっべぇ、今の笑顔の破壊力はやばかった……。笑顔を向けるだけで男子の寿命縮めるとかマジなにもんだよこの人。もはや笑顔テロとでも名付けるべきだと思う。ちなみに他には戸塚もたまにそのテロを行なっている。

    16 = 1 :

    めぐり「あっ、プリクラがあるよ! そうだ、比企谷くん。私と一緒に撮ろう!」

    八幡「えっあっちょっ、城廻先輩!?」

    ショッピングモール内にあるゲームコーナーのプリクラの筐体を見つけると、めぐり先輩はてててーっと走り出してしまった。俺も遅れてそれを追いかける。

    そういえば、もう卒業の時期だったのだ。

    あのほんわか笑みを浮かべためぐり先輩も、内では寂しく思っていたりするのだろうか。

    めぐり先輩は、自分がいた生徒会を大好きだと言っていた。

    俺には今までに大好きだと胸を張って言えるような居場所はない。強いて言うなら自宅。

    そこでふと、あの奉仕部の部室が頭に浮かんだ。

    俺にもいつか。大好きだと。そう思える場所ができるのだろうかと。

    そんなことを想った。

    めぐり「ほら、撮るよ比企谷くん」

    待ってだから近い近い柔らかい意外と大きい近い近いいい匂い近いって!!


    17 = 1 :

    ほんわかぱっぱめぐめぐめぐ☆りんめぐりんパワー!

    あっはい、ども、普段俺ガイルRPGとか、過去にこまちにっきとか感謝のやっはろーとか書いてた者です。
    少々長くなりそうなので、よろしければお付き合いくださいませ。

    それでは書き溜めしてから、また来ます。

    18 :

    酉が特徴的だからわかりやすいな
    期待

    19 :

    ひょっとしなくても>>1はドM?

    いや色々書いてくれるのは嬉しいんだけどね。

    期待!

    20 :

    「やっはろー!」ドゴォ

    21 :

    おまいだったのか

    22 :

    ほんわかぱっぱめぐめぐめぐ☆りんめぐりんパワー!

    23 :

    ああ日記の人か…期待するのやめた

    24 :



       ×  ×  ×


    めぐり先輩の件があった翌日。

    月曜の朝はただでさえ布団から出るのが億劫なのだが、それに厳しい寒さが加わると本当にもう出たくなくなる。

    いっそこのまま布団の温もりに身を委ねてしまおうと思ったが、小町に蹴り飛ばされて渋々家を出た。

    寒い日の自転車通学というのは、耳は冷たくなるわ冷たい風はマトモに食らうわ、挙句ようやく体が温まったと思えば学校に着いてから汗が冷えて余計に寒く感じるわでろくなことがない。ちなみに夏はと言えば汗のせいでシャツが蒸れて余計に暑く感じるので、やっぱりろくなことがない。

    教室に入ると、いつも通り誰とも挨拶を交わさずに自分の席に着く。

    戸塚はまだ朝練が終わっていないのか教室に姿はなく、由比ヶ浜はいつもの三浦や葉山たちと輪を囲んで話をしている。

    マラソン大会の一件によって葉山と雪ノ下の噂もすっかり息を潜め、あのグループも前と同じようになっているようだ。

    25 = 1 :

    ふと、あのグループの方に視線が向かってしまった。

    三浦「でさー、今日の朝とかちょー寒くてさー」

    三浦は進路の件が終わったからか、前より活き活きとしているように見えた。

    それは俺が先日の件で葉山に対する想いなどの事情も知ってしまったからというのもあるだろうが、色眼鏡抜きで見ても今の三浦は前より可愛くなっていると感じる。

    恋する乙女はなんとやらという奴だろうか。

    そんな頭の悪そうなフレーズなどずっと馬鹿にしていたが、いざこうして目にすると意外と侮れないなと思う。

    だが、その三浦ではない、別のところで違和感を覚えた。

    戸部「わかるわー、今日とかもう布団から出るのめっちゃ嫌でさー」

    葉山「全く、テストも近いんだから気を抜くなよ」

    八幡「……?」

    だが少しの間眺めていてもその違和感の正体が分からなかったので、俺はそれ以上あのグループの方を見るのをやめた。

    別に戸部と俺の意見が被って一緒にすんなとか思ったわけではない。戸部と俺どころか、全人類の大半は冬の朝には布団から出たくないと考えているだろう。

    まぁ、例え何かがいつもと違ったところで俺が気にすることでもない。

    あいつらのことはあいつらでなんとかするだろうし、そもそも俺は人のことを気にかけてやれるほど余裕があるわけじゃない。自分のことすら上手く出来ているわけじゃないのにな。

    26 = 1 :

    そう結論付けて前の黒板の方に視線をやると、戸塚が扉を開けて教室に入ってくるのが見えた。

    戸塚は俺の視線に気がつくと、そのまま真っ直ぐに俺の席にとててっとやってきた。

    戸塚「八幡、おはよう!」

    八幡「おお……おはよう」

    ぱあっと輝く戸塚の笑顔を見て、俺の太陽はここにあったと確信した。

    例え季節が冬で身を切るような寒さであろうとも、戸塚を見た瞬間に心がぽっかぽかになってくる。

    戸塚「……どうかしたの?」

    八幡「戸塚、俺の太陽になってくれ」

    戸塚「は、八幡? 意味が分からないよ……?」

    首を傾げてはてなという顔をした戸塚もやっぱり可愛い。いやもうほんと、戸塚が我が家にいれば冬の寒さに負けて布団に引きこもろうとか考えなくなるんだろうなぁ。

    27 = 1 :



        ×  ×  ×


    放課後の部室。

    俺は湯呑みに口をつけ、一息に紅茶を飲み干してからほうっと小さく息を吐いた。

    いや、暖房と暖かい飲み物というものは本当に良いものだ。

    体が内外ともに温まり、先ほどまで感じていた寒さを感じなくなる。これで俺の太陽こと戸塚もこの場にいたら完璧だったのに。

    確かな文明の勝利を感じながら、部室をちらっと見渡してみた。

    いつも通りの位置に、雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣の二人がいる。

    その二人は雑談に花を咲かせており、俺は本のページを繰りながら落ち着いた声音と元気な声のおしゃべりに耳を傾けていた。

    この前まで一色が持ってきたフリーペーパーの件で仕事に追われる日々が続いていたので、こういうまったりとした空気を感じるのは久しぶりであった。

    もう一度紅茶を啜りながら、平和の尊さについて考えを巡らせた。戸塚が地球の神になったら世界平和が訪れたりしないかなー。

    このまま平和な日々が続けばいいなと思っていると、部室の扉がトントンと短くリズミカルに刻まれた音がした。

    ……俺が平和を願うとろくなことが起きねぇなと、若干恨みがかった視線を扉に向けた。

    28 = 1 :

    雪乃「どうぞ」

    そんな俺のことなどよそに、雪ノ下がそう声をかけた。いやまさかこの前のあれが終わった直後でまたすぐに一色が仕事を持ってくることなんてないよな……とそう思いながら開け放たれた扉を眺めた。

    いろは「こんにちはー」

    亜麻色の髪が揺れるのが視界に入ると、若干俺の中の警戒レベルが上がる。

    遊びに来ただけだよな? そうだよな? 今日ならなんで奉仕部にいるんだとか聞かないでやるから、頼むから仕事とか持ってこないでくれよ。

    結衣「いろはちゃんだ、やっはろー! 今日はどしたの?」

    いろは「遊びに来ちゃいましたー」

    っしゃ良かったぁ! 仕事じゃねぇ! と俺は心の中でガッツポーズをする。思わず、顔にもその喜びが浮かんでしまった。

    そんな俺の表情を見てしまったのか、一色がジト目でこちらを見つめてきた

    いろは「……なんですか、先輩。わたしが来て嬉しいのは分かりますけど、ちょっとそのにやけ顔はどうかと思いますよ」

    八幡「ちげぇよ、お前が面倒事を持ってこなくて良かったとほっとしてたんだよ」

    いろは「えー、まるでわたしがいつも面倒事を持ってくるみたいな言い方やめてくれません?」

    いや、割といつも持ってくるよね? と同意を求めたアイコンタクトを部内の二人に向けると、雪ノ下はうんうんと頷いていた。由比ヶ浜はそもそも俺のアイコンタクトにどんな意味が込められているのか気が付いていないのか、きょとんと首を傾げていた。

    29 = 1 :

    まぁ仕事を持ってきたわけじゃないなら、別にいいんだ。もうしばらくこの平和を感じていたいと考えていると、その一色の後ろにもうひとりの人影が見えた。

    その人物も部室に入ると、ほんわかとした空気が感じ取れた。

    編まれたお下げをぴょこぴょこと揺らし、前髪をピンで留めているおかげで丸出しになっているおでこがきらりと光る。

    その人物は、前生徒会長の城廻めぐりだ。

    めぐり「失礼しまーす」

    八幡「城廻先輩……?」

    雪乃「こんにちは、城廻先輩」

    めぐり先輩がこの部室に来たのは、随分と久しぶりのような気がした。

    最後に来たのは、一色を生徒会長にしたくない云々の時だったか。あの件も今となっては随分と昔のように感じる。あの頃の奉仕部の空気を思い出したくないだけなんだが。

    そういえば、あの時もめぐり先輩は一色と並んで部室に入ってきたんだったな。

    その二人が並んで一緒にいるのなんて、生徒会が関係しない場だと初めて見るような気がする。一色がめぐり先輩を苦手そうにしてるせいだろうけど。

    30 = 1 :

    雪乃「今日は、どのようなご用件で?」

    雪ノ下は椅子に座った一色とめぐり先輩に紙コップに入れた紅茶を出しながら、そう尋ねた。

    そういえば自由登校期間であるめぐり先輩がここにいるというのも珍しい。今日は特別な行事があったわけでもない。……強いて言えば節分の日だが、さすがに節分だから学校に来るなんて奴はおるまい。

    めぐり「いや、別に用件とかじゃないんだ。一色さんと打ち合わせが合って、そのまま奉仕部に行くっていうから私もついでに遊びに来たんだ」

    結衣「打ち合わせ?」

    由比ヶ浜がその言葉に引っ掛かったのかそう聞くと、めぐり先輩はあははと笑った。

    めぐり「ほら、来月には卒業式だから。それで送辞と答辞を考えようって」

    雪乃「なるほど、それで生徒会長の一色さんに……」

    雪ノ下が納得したように頷くと、一色はうだーと机に突っ伏した。

    おそらく現生徒会長の一色が送辞、前生徒会長のめぐり先輩が答辞を担当するのだろう。立場的にはそれが一番妥当と言える。

    しかし一色はいまいち乗り気でないのか、はたまた苦手なめぐり先輩と一緒にいるのがあれなのか、ぶーくさ言いながら文句を垂れ流していた。……こいつまさか、めぐり先輩と二人きりになるのが耐えられなくて奉仕部に逃げてきたな?

    31 = 1 :

    そこでふと、昨日のことを思い出す。めぐり先輩と二人きりといえば、昨日俺がそうだった。

    そういえば昨日はめぐり先輩と二人で飯を食べに行って、二人でウィンドウショッピングを繰り広げ、二人でプ、プリクラを撮ったりしたんだった……。

    そのことを思い返すと少々気恥ずかしくなって、めぐり先輩から目を逸らして一色の方を向いた。

    八幡「……で、まさか俺たちに送辞やれとか依頼しにきたんじゃねぇだろうな」

    いろは「先輩が送辞やったら、三年生の方たちから大ブーイングですよ……」

    おいそりゃどういう意味だと一色を睨みつけると、由比ヶ浜を挟んで横に座っている雪ノ下も同意したように頷いていた。あなた今日やたら頷いてますね。

    雪乃「確かに比企谷くんが送辞を受け持ったら三年生からはこう言われるでしょうね、私たちを冥土に送り出すつもりかって」

    八幡「人を死神みたいに言うのやめてくんない?」

    雪乃「いえ、冥土へ手招きするゾンビみたいと言うつもりだったのだけれど」

    笑みを浮かべてそう言った雪ノ下は実に楽しそうだ。

    何か言い返してやろうかと思ったが、このまま言い合ってもどうせ雪ノ下に丸め込まれるだけだと考え直した俺は再び一色に目線をやった。

    32 = 1 :

    八幡「じゃあ自分でやりきるってことだな、えらいえらい。奉仕部に丸投げされると思って冷や冷やしたわ」

    いろは「いえ先輩なら大ブーイングですけど、雪ノ下先輩とかならどうかなーって」

    そう言うと一色はちらちらっと雪ノ下の顔色を窺った。しかし雪ノ下は首を横に振りながら、やらないわと断った。

    雪乃「生徒会長がやるべきだと思うわ」

    いろは「ええー、そんなぁー」

    媚びるように声色を伸ばす一色は今日もあざとい。ほんとこの子ったらそういうのどこで覚えてきたのかしら……。

    雪ノ下に断られると、次に由比ヶ浜のほうへ向いた。

    いろは「えーと、じゃあ結衣先輩は……やっぱ雪ノ下先輩、送辞やってみません?」

    結衣「なんであたし飛ばしたし!?」

    いやぁ、一色の判断は妥当だと思うけどなぁ。こいつ、多分カンペ見ながらでも漢字が読めないとか言い出しそうだし。

    雪乃「残念だけれど、それは一色さん自身がやらなければ意味がないわ」

    いろは「うえー……」

    しかし一色も本気で丸投げするつもりはなかったのだろう、じゃあ卒業式のお手伝いだけでもお願いしますねと言うとあっさりと引き下がった。……おい待て、どさぐさに紛れて変な約束取り付けるんじゃねぇ。

    そんな奉仕部と一色のやり取りをしばらく静観していためぐり先輩が、突然あはっと笑い出した。

    33 = 1 :

    めぐり「一色さんとみんな、すっごく仲良いね」

    八幡「仲良いっていうか、体良く利用されているだけなんですけど……」

    俺がそう返すと、一色がえーそんなことないですよーと語尾を伸ばして反論した。こいつ、ほんと全ての行動をあざとくしないと気が済まないのだろうか。

    めぐり「やっぱり昨日も言った通り、奉仕部のみんなが手伝ってくれれば生徒会は安心だねっ」

    めぐり先輩が俺の方向を見ながらそう言った。あの、出来れば昨日の事とか言わないで欲しいんですけどって思った瞬間に、一色が身を乗り出してきた。

    いろは「あれ、城廻先輩、昨日先輩と会ったんですか?」

    そこに気が付くとは、やはり天才か……いや、ほんとなんでそこに気が付くかなぁこいつと若干恨みを込めた目線を一色に向けた。しかし一色は俺の方を向いておらず、めぐり先輩の方を向いてしまっていた。

    めぐり「うん。昨日ね、比企谷くんに助けてもらったんだー」

    結衣「え、えっ、ヒッキーに?」

    ああー言っちゃったよこの人ーと思っていると、由比ヶ浜が興味津々そうに机に乗り出してきた。見れば、その横にいる雪ノ下までなんか興味深そうに聞き耳を立てている。

    めぐり「昨日ね、男の人に絡まれてたら比企谷くんが助けてくれたの」

    ほんわかぱっぱとした雰囲気を出しながら笑うめぐり先輩に対して、俺は額から冷や汗を流していた。いや、その俺マジで何もしてないんすけど……。

    ああなんか変な誤解をされそうだなって横を見てみると、案の定由比ヶ浜と一色が食いついていた。

    34 = 1 :

    結衣「えっ、ヒッキーが……!?」

    いろは「先輩が……? え、ありえないんですけど」

    誤解も何も、そもそも信じてくれていなかった。そりゃそうか。俺が野郎に絡まれている美女を颯爽と助けるイメージなど、説明されようが思い浮かばないだろう。

    いやー思ったより話が変な方向に行かなくて良かった。あとは適当に言ってればこの話題も流れるだろうと思っていた時だった。

    めぐり「そのあとね、比企谷くんと二人でお出かけしたの。あっプリクラも撮ったんだよね、比企谷くん」

    天然物の天然さんをナメていた。

    まさか弩級の爆弾をいきなり投げ込んでくるとは思わなかった。

    なんでそのこと言っちゃうんですかとやや責めるような視線をめぐり先輩に送ったが、当の先輩はほんわかと笑っているだけで俺の目線には気が付いていなかった。お願いだからこっち見てこっち。

    そして横の由比ヶ浜、向かいにいた一色がガタンと椅子から立ち上がった。

    結衣「プププ、プリクラ!?」

    いろは「ちょっとどういうことですか先輩!」

    八幡「なんで俺が責められてんだよ……」

    こうなったら適当に知らん振りを続けて話題が次に移るまで待つしかないかと考えていると、めぐり先輩は自分の鞄をガサゴソと漁ると、光沢紙のようなものを取り出した。

    ……待って、まさかそれ。

    35 = 1 :

    めぐり「ほら、これなんだけど──」

    いろは「ちょっと見せてもらっていいですか」

    めぐり先輩が取り出した何かを見ると、一瞬で一色がめぐり先輩からバッとそれを奪い去った。

    そしてそれを机に置くと、雪ノ下、由比ヶ浜の三人でそのプリクラを囲んで吟味するようにジロジロと見始めた。っていうか、やっぱりプリクラじゃねぇか!!

    雪乃「……これは」

    結衣「わ、わー……」

    いろは「……先輩、随分と楽しそうですね?」

    それを見た雪ノ下は手を顎にやりながら何かを思案し始め、由比ヶ浜は顔を赤らめながらそのプリクラをじろじろと見ており、一色は何故か責めるような目線を俺に送ってきた。いや、つい先日お前にも無理矢理写真撮られたことありましたよね……?

    八幡「おい、恥ずかしいからもうやめろ……」

    一応そう言ったのだが、三人はその写真と俺を見比べるのをやめなかった。いや、その、ほんと恥ずかしいんでやめて……。

    雪乃「……一体、どんな脅し方をしたのかしら」

    いや、めぐり先輩から頼んできたんですよ。ほんとだよしんじて。ぷるぷる。

    結衣「……ヒッキー、ちょっと近寄り過ぎてない?」

    俺は離れようとしたのに、めぐり先輩がもっと近寄んないと入らないよーって近づいてきたんだよ! ほんと近かったしいい匂いだったよ畜生!

    いろは「……」

    あの、一色さん? 無言で睨みつけられても反応に困りますよ? 心なしか今チッって舌打ちしませんでしたか? ねぇ?

    36 = 1 :

    めぐり「昨日は楽しかったよねー、比企谷くん」

    しかしそんな不穏な雰囲気を知ってか知らずか、めぐり先輩はそう言って微笑みかけてきた。危なかった。中学生までの俺なら多分この後告白しにいって玉砕してた。

    あのですね、めぐり先輩? めぐり先輩に悪気はないんでしょうけど、その微笑みは簡単に経験値の薄い男子を落とすから安易に向けるのはやめてくださいね? ほんまテロやでぇ……。戸塚にも今度気をつけるように言って置こう。

    さて、未だにあのプリクラを掴んで離さない由比ヶ浜と一色からどう取り戻そうかと思考し始めると、机を挟んだ前にいるめぐり先輩が顔をぐいっとこちらに近づけてきた。

    思ったより近い距離にまで顔を近づけられ、思わず顔を引いてしまった。あぶねぇ、今俺も顔を前にやってたら頭と頭がごっつんこしてたよ。

    めぐり「そういえば」

    しかしめぐり先輩はそんな俺のリアクションには構わず、その口を開いた。


    めぐり「比企谷くん、バレンタインデーって知ってる?」

    八幡「はい?」

    37 = 1 :

    ほんわかぱっぱめぐめぐめぐ☆りんめぐりんパワー!(挨拶)

    書き溜めしてから、また来ます。

    38 :


    続きも期待してます

    40 :

    めぐえもーん、アラサーの静ちゃんが怖いんだ
    助けてよめぐえもーん

    41 :

    王道魔王勇者物にヤンデレ物にムキガハマさんにせわしねえなほんとw

    42 :

    めぐり先輩ってデコキャラだっけ?
    そんなに強調されてなかった気がするが

    43 = 1 :

    >>42
    6巻初登場
    肩まであるミディアムヘアーは前髪がピンで留められ、つるりとした綺麗なおでこがきらりと眩しい。

    8巻
    お下げ髪に前髪をピンで留め、つるりとしたおでこが可愛らしい。

    6.5巻
    前髪はヘアピンで留められ、つるっとした綺麗なおでこに夕日が照り返し、彼女の人柄そのままの明るさを感じさせる。

    一応ご参考までに。

    44 :

    めぐりんってデコキャラだったのか知らなかった

    しかし相変わらず書く量多いな

    45 :

    >>43
    原作だとそんな描写あったのか すまない
    アニメだと全然そんな風には見えなかったから意外だった

    46 :

    いつも思うんだが、この人の雪ノ下の毒舌っていうか罵倒、
    むかつくだけで全然面白くないからいっそ雪ノ下出さないで欲しい

    47 :

    >>46
    雪ノ下は原作でもウザイだろ

    48 :

    原作でも生ゴミとか
    言われてますよ

    49 :

    地の文ありのめぐりんSSとかレア過ぎる、超期待
    あとはこれで病んだりムキムキになったりしなければ…

    50 :

    >>49
    どうして両方同時に起こらないと思った?


    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+一覧へ
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - めぐり ×2+ - 俺ガイル ×2+ 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。

    類似してるかもしれないスレッド


    トップメニューへ / →のくす牧場書庫について