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    元スレ八幡「は?材木座が不登校?」

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    401 :

    そんなこんなでたらふく食って満腹になった。
    このあとにはまだケーキが控えているらしいが、とりあえず箸休めがてらプレゼントの贈呈へと移ることに。

    八幡「あいよ、誕生日おめでと。あと受験合格もな」

    なんとも照れ臭いもので、早々に自分のプレゼントは渡してしまう。
    中身は少しお高めの電子辞書。

    小町「おー!ありがとーお兄ちゃん。なんかこれ使えば頭良く見えそうだよね」

    その発言がすでに頭悪そうだけどね。

    雪乃「人に釘を刺していたわりには高価なプレゼントね……」

    八幡「まあ一応身内だしな。金は小町のプレゼントっつったら親がくれたもんだし」

    つっても小町はいささかも遠慮とかする気配なし。俺からはこのくらいもらって当然と思っているのだろう。
    誰ですか、こんな甘やかして育てたのは!

    403 :

    ちなみに親に金もらったというのは嘘。
    まあね、なんだかんだがんばって受験も合格したわけだしね。このくらいは兄としてね。たまにはね。

    結衣「はい、小町ちゃん。あたしからはネックレス。ごめんね、あんまり高いものじゃないんだけど」

    小町「うわあ、ありがとうございますー!これすっごくかわいいですね~。さすが結衣さん!」

    由比ヶ浜が渡したプレゼントはなんかようわからん形の蔓が巻きついたハートのネックレス。
    これくらいなら許容範囲かな……。でもピアスなんて開けようとしたら、お兄ちゃん絶対許しませんからね!

    404 = 384 :

    雪乃「私からは手帳を贈らせてもらうわ」

    と言って雪ノ下が取り出したのは、えんじ色の皮張りのシックな手帳。
    なんだかできるサラリーマンが使っていそうなデザインで、女子高生らしくはない。

    雪乃「月別、週別、日別に予定を書き込める造りになっているから、学習計画帳として使うこともできるとおもうわ」

    小町「ありがとうございますー!なんかすごくできる女みたいに見えますよね、これ使ってたら」

    俺には一月後、プリクラやらシールやらでデコデコに着せ替えられたその手帳の姿が見えるような気がするが……。

    しかし、なぜだか女子って奴はやたら手帳好きだよな。
    男子で手帳使ってる奴なんて数限られると思うが。

    え?あ、俺が手帳なんか持っても余白だらけになるだろうってのは言われなくてもわかってます。

    405 = 384 :

    小町「結衣さんも雪乃さんも、それからお兄ちゃんも本当にありがとうございます!大切に使いますね」

    今日は一日ニッコニコの小町。つられて笑顔になる雪ノ下と由比ヶ浜。
    そのあとも終始和やかなムードのまま時間は過ぎていき、気がつけばあっという間に夜も8時を回っていた。

    由比ヶ浜は今日もまた雪ノ下の家に泊まるということで、小町と二人、自転車に乗ってえっちらおっちら家路へと着く。

    まだ肌寒い町並みを、はしゃぎ疲れたのか言葉少なな小町の体温を背中に感じながら、俺も特に喋ることなく自転車を漕いでいく。

    穏やかな気持ちでもって家へとたどり着き、さあ後は風呂に入って眠るだけ、今日は良い一日でした!というときに、スマホに着信があった。

    先に家に入るよう小町を促し、そのまま家の前で電話に出る。
    表示された電話番号から相手の名前はわかっていたが、俺は何も言わず、相手が喋る始めるのを数秒待つことにした。

    材木座「……八幡。お……我だ。材木座、義輝だ」

    406 = 384 :

    謎のフルネーム自己紹介に吹き出しそうになるが、やたら深刻そうな材木座の声色に危うく踏みとどまる。

    八幡「ああ、なんだこんな時間に」

    材木座「ん、うむ、一昨日着信があったようなのでな……。何か用か?」

    何か用かもくそもあるかこの不登校児!
    とは口に出さず、思いの外様子のおかしい材木座に若干戸惑いつつ、少しずつ探りをいれていく。

    八幡「いや、お前のとこの担任から奉仕部に依頼が来てな。学校サボってるらしいじゃねーか」

    材木座「……うむ、サボっている、といえばそうだな、サボっている」

    八幡「あ?なんか理由でもあんのか?ラノベの原稿でも書いてんの?」

    407 = 384 :

    材木座「んぐっ……!い、いやそういうわけでは……」

    違うらしい。
    中二病拗らせすぎて、学校やめてラノベ作家になります!とか言い始めたのかという俺の推理は外れていた。

    八幡「じゃあなんで来ねーんだよ。心配してるぞ、島崎先生」

    あと戸塚もな。悔しいから教えてやらんけど。

    材木座「……うむ。すまんな、その、奉仕部にまで迷惑をかけたようだ」

    八幡「いや、そこは気にすんな。そういう部活だからよ。俺も雪ノ下も由比ヶ浜も迷惑だなんて思ってねーよ。依頼だからな」

    うん、まあ雪ノ下と由比ヶ浜はちょーっとだけ迷惑がってるかもしれないね。うん。

    408 :

    材木座「……そうか。いや、いずれにせよ、すまなかった」

    八幡「だから気にすんなって。んで、明日からは学校来んのか?」

    材木座「いや……。行かぬ、と思う」

    八幡「は?だからなんでだよ。理由を言え、理由を」

    材木座「……」

    へんじがない。ただのしかばねのようだ。

    理由に関しては話すつもりがないのだろう。
    話したくないのか、話せない事柄なのか。

    八幡「理由、話したくないならいいんだけどよ、とりあえず学校は来ないとヤバいんじゃね?色々、出席日数とか」

    材木座「あ、ああ……うむ、そうだな……」

    409 = 384 :

    八幡「いや、そうだなじゃねえだろ……」

    わかってんのかね?
    もし留年なんてことになったら、来年からは1個年下の連中とクラスメイトになるわけだよ?
    エリートぼっちを自称してはばからない俺ですら、その状況は想像するだけで身が震える。

    新学期、つい先日まで後輩だったはずのクラスメイトたち、囁かれる留年生の噂、集まる好奇の視線、耐えられるはずもなく……。

    いや、これは本当きつい。それこそ不登校になるレベル。不登校が不登校を呼び込む付の螺旋。
    ダメだ、抜け出せる気がしない。

    八幡「どーすんだ、このままじゃ下手したら留年だぞ、留年。秦野とかと同級生になっちまうぞ」

    材木座「う、うむ……わかっている」

    410 = 384 :

    八幡「じゃあ学校来ないって選択肢はねーだろ。少なくとも期末試験は受けねーとマジで留年だぞ」

    材木座「……それは、問題ない」

    八幡「は?」

    材木座「お……、わ、我は……学校を辞めるつもりだ」

    一瞬、あまりに馬鹿げたその一言を上手く脳内で処理することができず、沈黙が生まれる。
    え、なに言っちゃってんのこのアホは……。

    材木座「もう決めたことだ……。手間をかけさせてすまなかった。奉仕部の二人にも謝っておいてくれ」

    八幡「何言ってんの、お前?馬鹿なの?材木座なの?」

    八幡から冗談めかしたパス、これを材木座、意外にもスルー。

    412 :

    やっと材木座登場か

    414 :

    小町の受験の長すぎじゃねーの?スレタイ詐欺も甚だしい

    415 :

    八幡「え、なにお前本気で言ってんのか?冗談じゃなくて?」

    材木座「うむ……本気だ」

    ノイズキャンセルされたクリアな音の向こう側で、材木座が一つ息を吸う音が聞こえた。

    材木座「本気で、学校を辞める」

    その言葉は、俺の知るどの材木座の顔とも結び付かないような声音でもって頭に響いた。

    八幡「お、おう、そうか。まあお前がそう決めたなら俺からは何も言えないわ」

    材木座「……ああ。では、な」

    材木座はそう言うと、俺の返事も待たずに電話を切った。

    416 = 384 :



    以前、「理性の化け物」と人に言われたことがある。
    そのときはその人がどんな意図でそう言ったのかわからなかった。

    今ならわかる。
    あれは嘲笑する意図での発言だった。

    それに気づかず、心のどこかですこし得意になっていた自分が恥ずかしい。
    論理的、理性的であることを誇らしく思った自分が。

    それだけではダメなのだと彼女は教えてくれたのに。

    417 = 384 :

    変わらなければ誰も救えないと、彼女が教えてくれたのに。

    結局俺はまた同じ間違いを犯していて、挙げ句そのことに気づいてすらいなかった。

    自ら否定したそのものに成り果て、欲したものを失おうとしていた。


    「理性の化け物」
    まったく、言い得て妙である。
    人の形になれない愚かなものは、まさに化け物と呼ぶにふさわしい。

    418 = 384 :

    >>413
    まだ声だけの出演だから……(震え声)
    一応ここで構想上の前半が終わりのつもり
    長さがちょうど半分になるかはわからないけど

    >>414
    すまぬ……
    せっかくだからと色々詰め込んでたらこんなことに……
    スレタイを特に考えずに決めてしまったせいでこんなことになってしまいました……

    420 :

    気にすんな、>>1の書きたいようにしたら良いさ

    421 :

    実際あまりに冗長だったし指摘はもっとも。
    まあ、あと半分このボリュームを楽しめると思えばいいか

    422 :

    本筋をシリアスに、しかも謎解きっぽく事件の少しずつ輪郭を表していく。
    一方でキャラの性格を掴みながらの日常コメディに妥協がない。

    冗談抜きで市販レベルなんだが何者だよ

    423 :


    人物捉えるの上手杉内
    完結が楽しみ

    424 :




    月曜日。
    世のサラリーマンからは親の仇のごとく忌み嫌われる週の始まりである。
    ちなみにエリート社畜のみなさんに言わせると、曜日の概念がある内はまだまだだそうだ。

    人が休みの日に働くからこそ競争に打ち勝つことができるわけで、他社が休んでいる間にこそ勝機があるのである。
    マジぱねぇっす。

    平凡な高校生であるところの俺はいつもと同じく無気力なまま学校へ行き、無気力なままに一日を終え、いつも以上に憂鬱な放課後を迎えた。

    昨晩の材木座からの電話のモヤモヤが頭に重く残っており、これから部室で材木座についての話し合いをするのもまた足取りを重くさせる。

    425 = 384 :

    もういっそのことサボって帰っちゃおうかな……と考えながら歩いていると、廊下の角で平塚先生とバッタリ出くわした。

    なんでこの人は俺のバックレオーラをこう敏感に察知して現れるかなぁ……。

    平塚「おお、比企谷。部活にいくところか?ちょうどいい、一緒に行こう」

    有無を言わさず俺の腕をとり、強引に引っ張っていく。
    抵抗しても無駄なのは嫌というほどわかっているので、俺もおとなしく引きずられるがままに任せておく(レイプ目)。

    平塚「それにしても今日の君はいつも以上に目が死んでいたな」

    八幡「まあ、月曜っすからね……」

    426 = 384 :

    月曜詰まったスケジュール。イライラしている火曜。水曜のんびりしたいけど。まだまだ遠いね、日曜日。こうして聞くと社畜ソングに聞こえるから不思議だ。

    八幡「そういう平塚先生もずいぶん疲れてそうですね」

    近くでよく見ると目の下にははっきりクマが刻まれている。

    平塚「ああ、さすがに昨日は疲れたよ」

    俺らが帰ったあとも教職員は色々やることがあったみたいだし、疲れは当然と言える。おいたわしや。

    平塚「疲れて家に帰って、何となくめぞん一刻を読み始めたらいつの間にか全巻読んでいてな……。寝不足だ」

    427 = 384 :

    八幡「何やってんすか……」

    平塚「いやあ、久しぶりに読んだが、やはりあれは名作だな」

    八幡「それは確かに」

    平塚「知っているか?あれ、初期から出ているメンバーで、結局結婚していないのは四谷さんだけなんだぞ。読み終わって少ししてから気がついたよ……」

    気づいてしまったか……。
    気のせいか平塚先生の目の下のクマがいっそう濃くなった気がする。

    平塚「何も朱美さんまで結婚することないじゃないか!」

    八幡「しかも四谷さんも結婚していないとは明言されてないっすからね。謎の多い人だし、妻子があっても不思議ではないという」

    平塚「ぐはっ!」

    428 = 384 :

    八幡「そういえば管理人さんは初登場時、21歳。作中で6年経過しているんで、最終的に……」

    平塚「よ、よせ比企谷……それ以上言うな」

    こうかはばつぐんだ!!
    平塚静香は弱っている。今モンスターボール(優しい言葉)を投げればゲットできるチャンスだ!

    八幡「エヴァのミサトさんは29歳、クレヨンしんちゃんのみさえも29歳っすね」

    八幡の追い打ち!きゅうしょにあたった!平塚静香を倒した!

    平塚「やめてくれ……比企谷。その攻撃は私の世代に効く……。やめてくれ……」

    430 :

    いっけね!ギリギリまで削ってからボール投げようとしてたら倒しちった!
    しかしNARUTOネタを挟んでくるあたり、まだ余力があるようにも感じる。

    平塚「しかし、めぞん一刻がラブコメの教科書のように言われる風潮は少し疑問だなぁ」

    八幡「そうっすね。今連載してたらヒロインが未亡人ってところが総叩きになりそうっすね」

    平塚「終盤の展開なんてけっこう生々しいしなぁ。三鷹さん然り、こずえちゃん然り」

    八幡「そこを上手くコメディ調に落とし込んでるのがさすがですよね」

    平塚先生とグダグダ高橋留美子について語っていると、奉仕部の部室にたどり着いてしまった。
    思わずソワソワしてキョロキョロよそ見をしてしまう。

    431 = 384 :

    部室に入ると、いつもとは真逆の珍しい光景が広がっていた。
    雪ノ下がスマホをポチポチやって、由比ヶ浜が本を読んでいる。

    八幡「うす」

    結衣「あ、ヒッキー。やっはろー。平塚先生も」

    平塚「おや、由比ヶ浜が読書か。珍しいな」

    結衣「いやー、あたしもちょっと文学少女目指そうかなーって……。たはは」

    平塚「ほうほう。いいじゃないか、なあ比企谷」

    八幡「ふっ……」

    由比ヶ浜が文学少女?
    はん!ちゃんちゃらおかしいわ!

    432 = 384 :

    結衣「鼻で笑われた?!なに、なんか文句あんの?」

    八幡「お前が文学少女だと……?笑わせるな、由比ヶ浜。まずその茶髪!髪型!ミニスカ!なめとんのか!」

    このビッチが!という一言はギリギリで飲み下した。

    八幡「文学少女ってのはな、腰まで届く黒髪の三編み!膝丈のスカート!夕陽に消えてしまいそうな儚い雰囲気!それらが揃って始めて名乗れる由緒正しい称号だ!」

    つまり、現代日本からはほぼ絶滅したと言える人種なのだ。

    平塚「比企谷……。現実と戦え。腰まで届く三編みなんてどれだけの長さが必要になると思ってるんだ」

    433 = 384 :

    平塚先生からの哀れみにも似た視線が痛い……。

    結衣「ひ、ヒッキーはやっぱり黒髪の方が好きなの……?」

    恐る恐るという感じで聞いてくる由比ヶ浜。視界の端で雪ノ下の肩がピクっと反応した気がする。

    八幡「いや、今のはあれだ、あくまで文学少女とは何かというテーマについて語っただけにすぎないから。俺の好みどうこうは関係なしに、文学少女は黒髪でなくてはならないという世の真理だから」

    そう、それはお前たちが世界と呼ぶもの。あるいは宇宙。あるいは神。あるいは真理。あるいは全。
    宇宙は真っ黒な髪でそれこそ真理でそれだけが全て……。

    434 :

    かのあだち充は「雑草道を歩いていたらそこが道になった」と久米田に語っている。

    タッチにしろめぞんにしろ、邪道だからこそ普及の価値観が輝くんだと思う

    435 :

    結衣「ちょっと何言ってるかわかんないけど……。でも、じゃあヒッキーは別に黒髪じゃなくてもす、好きってこと?」

    由比ヶ浜はなるべく俺の方を見ずに、努めてどうでも良さそうに尋ね、平塚先生は苦虫を噛み潰したような顔でそっぽを向き、雪ノ下はスマホを凝視しながらも再び肩をピクリと動かした。

    誰一人として俺の方を見てはいないはずなのに、みんなの耳がこちらを向いているような妙な圧迫感を感じる。

    八幡「あー、その、なんだ、とりあえず座ろう」

    俺もなるべくみんなと目が合わないように席へと向かう。
    それぞれの方向から、「……はぁ」というため息、「……逃げたわね」という諦観混じりの呟き、「甘酸っぱい青春か!爆発しろ!」というどこかで聞いたことのある叫びが聞こえた気がするが、気のせいだろう。

    先生、それ一年くらい前に自分でダメ出ししてたフレーズじゃ……。

    436 :

    雪乃「平塚先生、船橋先生はご一緒ではないんですか?」

    俺と平塚先生が着席し、なんとなく会議が始まる空気になったところで、スマホをカバンにしまった雪ノ下から会話が再開する。

    平塚「どうもHRが長引いているようだ。それより比企谷と由比ヶ浜、戸塚とは一緒に来なかったのか?」

    結衣「さいちゃんなら顧問に呼ばれてるとかで、ちょっと遅れるって言ってました」

    平塚「そうか。どうする、雪ノ下?この4人だけでとりあえず始めるか?」

    聞かれて一瞬考える雪ノ下。

    八幡「あー、そのことなんだがな。ちょっと俺から報告というかなんというか……そんなのがあって、できれば船橋先生と戸塚が揃ってから話したいことがあるんだが」

    437 :

    三者ともきょとんとした顔でこちらを見つめてくる。
    はぁ……気が重い。



    16時を回り、船橋先生と戸塚が揃ったところで雪ノ下が全員に紅茶を淹れ、合同捜査会議がスタートした。

    戸塚「遅れちゃってすいません!それと材木座君のこと、一応テニス部のC組の子に聞いてみたんだけど、やっぱり心当たりがないって」

    船橋「そう……。わざわざありがとうね、戸塚君」

    雪ノ下「それで、比企谷君の報告というのを聞かせてもらえるかしら」

    八幡「ん、ああ。実は昨日の夜、材木座と電話が繋がってな」

    少しうつむき気味だった船橋先生の顔がサッと俺の方へ上向く。
    僅かな光明をとらえたといわんばかりの人の良さそうなこの顔を、再びガッカリさせなければならないのは本当に心苦しい。

    438 = 384 :

    船橋「材木座君、なんて?」

    八幡「不登校の原因とかは話そうとしなかったんすけど、どうも学校やめるつもりみたいっす」

    材木座、学校やめるってよ。

    平塚「本気で言っていたのか?」

    八幡「かなりマジみたいすね」

    平塚先生は露骨に眉間にシワを寄せる。
    これで平塚先生のシワが増えたら材木座の責任は計り知れない。責任とって結婚させられるまである。

    船橋先生は目を悲しそうに細め、自分の膝に視線を落としていた。

    戸塚「八幡はなんて言ったの?」

    439 = 384 :

    八幡「止めたよ、さすがにな。だけど、かなり決意固いみたいだ」

    戸塚「そっか……。本当に何があったんだろう。相談してくれたら良かったのに……」

    場に重苦しい沈黙が降りる。
    雪ノ下は俺の報告を聞いても特に表情は変わらず、しきりに何か考えこんでいる様子。

    結衣「ヒッキー、どうする?」

    八幡「どうするったってな……。本人が辞めたいっつってる以上、こっちにできることはねえだろ。この間平塚先生が言ってた通り」

    高校は義務教育じゃない。本人の意志で入学し、本人の意志で通い続ける。
    その意志がなくなれば、あとはもう他人がどうこうする義務はない。

    440 :

    結衣「ううん、違うよ。そういうことじゃないよ、ヒッキー……」

    八幡「いや、そういうことだろ」

    どういうわけだか、由比ヶ浜の言葉にやたらイラついてしまい、つい語気が強くなる。

    八幡「子どもじゃあるまいし、辞めたいってやつの腕引っ張って無理矢理連れてくるわけにはいかねえだろ。そんなことする権利も義務もない」

    結衣「そうだけどさ……。そうだけど、違うじゃん。そんなこと聞いてるんじゃないじゃん」

    八幡「あ?じゃあ何が聞きたいんだ?はっきり言えよ」

    おかしい。何をこんなにイラついてんだ俺は。
    こんなイラついたヤツがオタクでぼっちだからね。

    441 = 384 :

    うほ……今気づいたけど『島崎先生』が『船橋先生』になってた……
    間違いです。お詫びして訂正します。

    名前くっそ適当に決めちゃったけど、今考えれば茅ヶ崎先生とかの方が良かったな……

    442 :

    乙です

    443 = 384 :

    >>442
    いつもありがとうございます

    444 :

    おつ

    445 = 384 :

    結衣「だから、ヒッキーがどうしたいのかを聞いてるんじゃん!権利とか義務とかそんなんじゃなくて、ヒッキーの気持ちを聞いてるんだよ」

    俺のイラつきに触発されてか由比ヶ浜も少しずつヒートアップしてきている。
    オーケー、少し落ち着こう。こういうときは感情的になっても話がこんがらがるだけだ。

    今回の案件はそもそも平塚先生と島崎先生からの依頼という形だったはずだ。
    なぜだか突然不登校になってしまった材木座の、学校に来ない理由の究明とその解消。
    それが大本の依頼だ。

    不登校の原因の方は戸塚を始め、生徒会の副会長や由比ヶ浜に聞き込みを頼んだが、どうも成果は芳しくない。
    俺自身、材木座本人に事情聴取を試みたが、あっさり失敗してしまった。

    446 = 384 :

    おまけに本人は学校を辞めると言い張っている。
    これはもう犬の比企谷君も困ってしまってワンワン泣き出すしかない。

    八幡「今回の依頼人は平塚先生と島崎先生だ。先生たちは先週、材木座が辞めるというなら教師は引き留めることができない、といっていましたよね?」

    平塚「そうだな。もちろん、多少の説得は試みるだろうが、本人の意志確認程度のことしかできない」

    島崎先生も辛そうな顔で頷く。

    八幡「そうなると、これはもう依頼人の方に依頼する必要性がなくなったってことだ。平たく言えば俺たちは依頼を完遂できず。失敗ってことだな」

    結衣「え!?ちょ、それは違くない?」

    平塚「比企谷……」

    447 = 384 :

    八幡「いや、違くないだろ。依頼そのものがなくなれば、俺たちが動く理由もない」

    雪乃「比企谷君、少し頭を冷やしなさい。論理は正しく聞こえるけれど、あなたは大切なことが見えていないわ」

    唐突に、これまで沈黙を守っていた雪ノ下が口を開く。

    八幡「大切なこと?なんのことだ?」

    雪乃「人の気持ちよ」

    雪ノ下は自分の発言に迷いも照れも見せることなく、凛として言い切った。
    その真摯な物言いに、むしろ言われたこちらが勢いを削がれてしまう。

    雪乃「平塚先生も島崎先生も、教師の職務として不登校生徒の更生を依頼しているわけではないでしょう」

    448 = 384 :

    島崎先生が今度は力強く頷く。

    雪乃「確かに教師という立場上、生徒本人の意志で退学を持ち出された場合、それを止めることはできないでしょう。でも、私たちはそうではない。教師ではなく、生徒なのだから。平塚先生もそこをわかっていて、奉仕部に依頼しているのでしょうし」

    雪ノ下に水を向けられ、平塚先生がニヤリと笑みをみせる。

    八幡「待て待て、話がループしてるだろ。そもそも、その依頼をするってこと自体が教師の職務に入ってないだろって話をしてんだ俺は」

    雪乃「だから言ったでしょう。人の気持ちだと。教師としてではなく、個人として依頼をしているのよ、このお二人は」

    それって詭弁じゃね……?

    449 = 384 :

    雪乃「先生、いくつか確認しておきたいことがあります」

    雪ノ下は、俺の再度の抗議は声をあげることすら許さぬと一瞥で封じ、平塚先生と島崎先生二人に向き直った。
    うーんこの反民主主義的態度。ついでに反人道主義的でもあるね、俺に対して。

    雪乃「先日、島崎先生が家庭訪問を行った際、……当該生徒から退学の申し出はありましたか?」

    今名前思い出せなかったよね?当該生徒とか言って誤魔化したけど、名前出てこなかっただけだよね?いつもの記憶力はどうしたユキペディア。

    由比ヶ浜が「と、トーガイセイト……?」とか混乱しちゃってるじゃねーか。

    450 = 384 :

    島崎「いえ、むしろ退学や留年はなるべくしたくない、というような話し方だったわ」

    あれ?昨日の電話とずいぶん違いますね……。

    雪乃「なるほど……。もう一度確認しますが、彼は17日から一度も登校していないんですね?」

    島崎「ええ。私が把握している限りでは一度も」

    雪乃「わかりました。それと、確認するまでもありませんが、今回の依頼には彼の退学意志の撤回も追加するということでよろしいですか?」

    平塚「ま、当然だろう。とりあえずなんやかんやとだまくらかして一度登校させて、はい依頼完了です、でも学校はやめるみたいです、え?でも一度登校してるんだから不登校ではなくなりましたよね?なんていうひねくれた方法は認められんよ」


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