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    元スレ八幡「初詣?」小町「うん!」

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    1 :

    小町「そう、初詣行こ!」

    八幡「行かん」

    小町「何で!?」

    八幡「あのな小町。初詣ってのは神様にお願い事をする行事だろ。だけど今まで神様が俺の願いを聞いてくれたことはない。だから行くだけ無駄なんだ」

    小町「そういうもんじゃないでしょ! ほら、今年の抱負を宣言したりおみくじ引いたり!」

    八幡「その行為になんの意味があるんだって。混雑してるとこに出掛けるなんて面倒くさいだけだ」

    小町「そう言ってお兄ちゃん年が明けてから一回も外出してないじゃん。目だけでなく身体も腐っちゃうよ。もう三が日は過ぎたから混んでないってば」

    八幡「うーん…………」

    小町「それに小町もうすぐ受験でしょ。神頼みしとく方が気分的にもいいし」

    八幡「わかったわかった。ちょっと準備するから待ってろ」

    小町「うん!」

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    2 = 1 :

    八幡(そんなに寒くはないが、適度に厚着をして玄関に向かう。小町はすでに靴を履いていた)

    八幡「んじゃ行くか」

    小町「うん! れっつごー!」

    八幡(小町が元気よくドアを開ける。少し冷えた空気が流れてくるが、思った通りそこまで寒くはない)

    八幡「そんなにはしゃぐもんでもないだろ」

    小町「ううん、久々のお兄ちゃんとのお出掛けだもん! あ、今の小町的にポイント高い!」

    八幡「へいへい」

    八幡(まあ小町がはしゃぐのもわからんでもない。今までなんだかんだ理由を付けて出掛けるのを断ってたからな。小町も思うところがあるのだろう)

    小町「えへへー、えいっ」

    八幡(ぎゅっと腕を組んでくる小町の表情は久々に見る満面の笑顔だった)

    八幡「そういや小町は去年何を願ったんだ? 叶ったか?」

    小町「あ、えーと…………お兄ちゃんに、友達ができますように、って……」

    八幡「っ……そ、そうか。でも俺なんかじゃなくちゃんと自分のために祈れよ」

    小町「うん……」

    八幡(小町が少し顔を伏せてふさぎ込む。別に小町が悪いことをしたわけでもないのに)

    3 = 1 :

    八幡(二学期は色々あった。本当に色々と)

    八幡(当然良いことばかりでなく、悪いこともだ。むしろ上げて落とされたら心情的にはマイナスだろう)

    八幡(俺にも、できたのかもしれないと思った友達。仲間。居場所)

    八幡(…………奉仕部)

    八幡(その奉仕部と俺は今ぎくしゃくした仲にある)

    八幡(文化祭やら修学旅行やら生徒会長選挙やら)

    八幡(俺は…………)

    小町「お兄ちゃん…………」

    八幡(知らず知らず考え込んでしまったようで、小町が不安そうな表情で声を掛けてくる。いかんいかん、小町にはなんの関係もないのに)

    八幡「俺は大丈夫だから、な。小町は受験のことを気にしてろ」

    小町「うん…………」

    八幡(しばらくするといつも行っている神社の鳥居が見えてきた。この辺りでは割と大きい方なのでまだ人も多い)

    八幡「お、学業成就の御守りも売ってるな。あとで買っていこうぜ」

    小町「うん!」

    八幡(空元気かどうかはわからないが、小町が大きく返事をした)

    4 = 1 :

    八幡(しばらく参拝の列に並び、番が来て二礼二拍手一礼。願い事は…………まあ一応しておいた。期待はしてないが)

    八幡「せっかくだから甘酒かなんか飲んでいくか?」

    小町「お。お兄ちゃんわかってるねー。確かあっちに売ってたよ」

    八幡(そういって出店に近付いた時だ)

    ??「や、やめてください…………」

    八幡(か細い声が店の裏手から聞こえた気がした。小町にも聞こえたようで、二人でひょいと覗いてみる。そこは少し開けていて一斗缶で焚き火が行われていた)

    八幡(くつろげるようにベンチや椅子が用意されていたが、そこで着物姿の女性が酔っ払いに絡まれているのが目に入る)

    小町「うわ…………お、お兄ちゃん、助けてあげてよ」

    八幡「え、俺?」

    八幡(何で俺が見知らぬ人を助けなければならないんだ? もう、厄介事はごめんだ…………)

    八幡(だけどその女性と目が合ってしまい、懇願されるような視線を向けられたらさすがに無視はできなかった)

    八幡「小町、ちょっと離れてろ。一旦別行動だ」

    小町「え、う、うん」

    八幡(俺はつかつかと酔っ払い達に近寄る。その酔っ払いがこっちに気付くと同時に俺は両手を振り上げた)

    5 = 1 :

    パァン!!!!

    八幡(思った以上に大きな音が響き渡る。自分でもびっくりしたほどだ)

    酔っ払い「うわっ! わわっ」

    八幡(俺の手を叩いた音に酔っ払いは驚いてのけぞり、ベンチからずり落ちる。その隙に俺は女性の手を取り、その場から連れ出した)

    八幡(ちら、と振り向くと、相当酔いが回っていたのか酔っ払いは足元が覚束ないようだ。追いかけてきたりはしなかったので、ある程度離れたところで足を止める)

    着物姿の女性「え、えっと」

    八幡(そこで戸惑ったような声が聞こえた…………って、手を繋ぎっぱなしだった!)

    八幡「す、すいませんでした!」

    八幡(俺は慌てて手を離し、その場からダッシュで立ち去る)

    着物姿の女性「あ、ちょっと…………」

    八幡(呼び止められた気もしたが、周りに痴漢とか思われてもつまらない。これ以上厄介なことになる前に逃げるに限る)

    6 = 1 :

    八幡(入口の方まで早足でやってくると、鳥居の下で小町が手を振っていた)

    小町「んー、さすがお兄ちゃん! かっこよかったよ!」

    八幡「そんなことねえだろ…………女の人を引っ張っただけだし」

    小町「いやいや、なかなかスマートだったよー。あの手を鳴らすのは渚くんのやつ?」

    八幡「ああ、読んでてよかった暗殺教室」

    八幡(こっそり練習しただなんて言えないが)

    小町「うんうん。年始から良いことをしたお兄ちゃんにはきっといいことあるよー。願い事も叶っちゃうかも」

    八幡「だといいがな…………ってそうだ。小町の御守り買わねえと」

    小町「あ、大丈夫。お兄ちゃんがあの女の人を連れ出したあとに買ったよ」

    八幡「そうか、んじゃとっとと帰ろうぜ」

    小町「うん!」

    八幡(小町が俺の腕を掴むのを確認し、俺達は歩き出した)

    八幡(しかしちょっと外に出ただけでゴタゴタに巻き込まれるとは…………これだから外出したくないんだ)

    八幡(でも、まあ、うん。人一人を助けられたことはよしとしとこう)

    7 = 1 :

    八幡(はてさて。いよいよ今日は始業式である)

    八幡「行きたくねえ…………」

    小町「ちょっとお兄ちゃん、朝からそんな暗い声を聞かされる小町の身にもなってよ」

    八幡「そうだな……こんな暗い顔と腐った目もみたくないだろうし、俺は部屋に戻って二度寝してるわ」

    母親「はいはい。馬鹿なこと言ってないでさっさと朝ご飯食べて準備しなさい」

    八幡「はあ……いただきます」

    八幡(トーストを手に取り、バターを塗ってかぶりつく)

    9 = 1 :

    小町「じゃ、行ってきまーす」

    八幡「ます」

    八幡(元気な小町とは対象的に小さく挨拶をする俺。むしろ声を出しただけでも大したものだと思ってほしい)

    小町「それじゃ、お兄ちゃんよろしくー」

    八幡「へいへい」

    八幡(小町が荷台に乗ったのを確認し、俺は自転車のペダルを漕ぎ出す)

    八幡(少し久々の通学路。天気も良く、風もない。しかし俺の心は晴れやかではなかった)

    小町「…………ねえ、お兄ちゃん」

    八幡「ん、なんだ小町?」

    小町「その、上手く言えないけどさ、小町に何かできることがあったら遠慮なく言ってね」

    八幡「…………ああ」

    小町「絶対だからね」

    八幡「わかったわかった。でもな小町、一つ言っておくが」

    小町「なに?」

    八幡「お前がいてくれるだけで充分だから。俺は」

    小町「…………うん」

    八幡(小町は小さく返事をして、ぎゅっと俺に抱きついてくる)

    八幡「むしろ小町こそ俺にしてほしいことあったら言えよ。お前は受験間近なんだから」

    小町「はーい」

    八幡(うん。なんだか少しだけ心が軽くなった気がする)

    10 = 1 :

    八幡(小町を中学校の近くまで送り、総武高校へと向かう)

    八幡(この期に及んで俺はまだ悩んでいた。もちろん奉仕部のことだ)

    八幡(俺達の…………いや、俺と奉仕部二人の間がぎくしゃくしているのはもう避けられない事実なのだ。だからそれはいい。問題はそれを受けて俺は果たしてどうすべきなのか)

    八幡「なんて考えたところで、もう答えは出てるよな…………」

    八幡(とことん話し合うか、決別するか。つまるところその二択だ)

    八幡(だけど話し合えるならとっくにそうしてる。むしろそれをせずにずるずるとここまできたのが間違いだったのだろう。ならば…………)

    八幡「……………………」

    八幡(俺は心の中で覚悟を決め、ペダルを踏む力を少し強めた)

    11 = 1 :

    八幡「セーフ」

    八幡(教室に入るとすぐに担任がやってきた)

    八幡(心の中でかっこつけたものの、ようするに遅刻ギリギリだったので自転車のペースを早めただけである)

    彩加「おはよ、八幡」

    八幡「おう、おはよう戸塚。元気にしてたか?」

    八幡(始業式のために体育館へ向かう途中、戸塚が声を掛けてきた)

    彩加「うん。今年は家族みんなで初日の出を見に行ったんだよ。写真撮ったからあとで八幡にも見せてあげる」

    八幡「へえ、そいつはすごいな。俺は元旦は家から出なかったわ」

    彩加「あはは、八幡らしいね」

    八幡(戸塚は屈託なく笑った。なんて眩しい笑顔なのだろうか。俺達は雑談をしながら体育館へと向かう)

    12 :

    八幡(始業式が始まったが、正直どうでもいい話が続く。どうして校長先生ってのはああも喋りたがるんだろうか?)

    八幡(ひょっとして喋った文字数分だけ給料が出るの? だからここぞとばかりに喋ってるの?)

    八幡(そんな他愛もないことを考えているうちに始業式は終わった。あとは教室に戻ってHRで今日の行事は終わりだ)

    八幡(そう思って体育館を出たところで由比ヶ浜と出くわす)

    結衣「あ…………」

    八幡「………………よう」

    結衣「う、うん、久しぶり…………」

    八幡(やはりぎこちない会話になってしまう。というか会話が続かない)

    八幡「……んじゃな」

    結衣「うん。その、また部室で…………」

    八幡(…………部室で、か)

    13 = 12 :

    八幡(HRも終わり、だべっているクラスメイトを尻目に俺は真っ先に教室を出て行く)

    八幡(といっても奉仕部部室に向かうわけではない。俺が向かっているのは職員室だ)

    八幡(が、たどり着くより先に目当ての人物を見つけた)

    平塚「お、比企谷じゃないか。元気にしてたか?」

    八幡「ええまあ。ところで先生。ちょっとよろしいですか?」

    平塚「ん、何だ?」

    八幡「奉仕部の事でお話が……」

    平塚「そうか…………なら一度職員室に来たまえ。私の席で聞こう」

    八幡「わかりました」

    平塚「先に言っておくが、雪ノ下にはもう部室の鍵は貸しておいたから鉢合わせすることはない。安心したまえ」

    八幡「…………はい」

    八幡(ちょっと真剣な内容になると判断したのだろう。前もって平塚先生は俺にそう言ってきた)

    14 :

    本物が欲しいをしなかった世界線か

    15 = 12 :

    平塚「そっちの椅子に座りたまえ。ああ、そこの先生はもう部活に行ったから問題ない」

    八幡「わかりました」

    八幡(促され、俺は平塚先生の隣の席の椅子に座り、平塚先生に向き直った)

    平塚「で、話というのは何かね?」

    八幡「はい。俺は今日限りで奉仕部を辞めさせていただきます」

    平塚「…………一応理由を聞いておこうか」

    八幡「現状の奉仕部に俺はいない方がいいからですよ。雰囲気も悪くなるし、あれじゃ相談にくる生徒も来なくなります」

    平塚「面倒くさくなったから、とかではないのか?」

    八幡「そういうのも理由にあればいいんですけどね…………残念ながらちょっと前までの奉仕部は悪くないと思ってました」

    平塚「ほう、比企谷の口からそんな言葉が聞けるとは…………」

    八幡「だけど今の奉仕部に俺がいたら駄目です。雪ノ下も、由比ヶ浜も、俺がいない方がいい」

    平塚「本気で言っているのか?」

    八幡「冬休み中に考えて出した答えです」

    平塚「そうか。君達なら何があっても大丈夫だと踏んではいたのだが…………」

    八幡「いえ、大丈夫な方法もあったのでしょう。ただ俺達がその方法を取らなかっただけで」

    16 = 12 :

    平塚「ふむ、説得を受け付けるような感じでもなさそうだな…………なら、仕方ないか。いいだろう、退部を認めよう」

    八幡「え、い、いいんですか?」

    八幡(自分から言い出したものの、あっさりと受け入れられたことに俺は驚いた)

    平塚「やる気のない者をいさせても仕方あるまい」

    八幡「殴ってでも止めてくるものかと思いましたけど」

    平塚「私を何だと思ってるんだ。生徒の自主性は重んじるさ」

    八幡「強制的に奉仕部に入部させた事を忘れるなんて、先生もそろそろ物忘れするような歳……」

    平塚「憤ッ!」

    八幡(首筋に風が吹き抜けた。そこに伸びた先生の腕がゆっくりと戻されていく)

    平塚「次は視神経を切るぞ」

    八幡「く、首筋に視神経はありませんから!」

    八幡(怖いよ! 指先がちゃんと紐切りの形になってるし!)

    17 = 12 :

    平塚「だが、そうだな…………三日だ」

    八幡「え?」

    平塚「明日から数えてあと三日間、奉仕部部員として活動したまえ」

    八幡「何の意味があるんですかそれ?」

    平塚「奉仕部を辞めたらもう言いたくても言えなくなることもあるだろう? ならたっぷり発つ鳥跡を濁していくといい」

    八幡「教師の言葉とは思えませんね…………」

    平塚「なぁに。案外雨降って地固まる、かもしれんぞ」

    八幡「はあ、わかりましたよ。今週いっぱいはお勤めさせていただきます。ても期待に添えるようなことはないですから」

    平塚「ん、よろしい」

    八幡(こうして俺は、本来もう行かないはずの部室にもう少しだけ通うことになった)

    18 = 12 :

    八幡「…………」ガラガラ

    八幡(無言でドアを開けると、雪ノ下と由比ヶ浜がこちらに目線を向ける)

    八幡「…………うす」

    雪乃「……こんにちは」

    結衣「……や、やっはろー」

    八幡(やはりどことなくぎくしゃくしてしまう。が、この雰囲気も今週までだ。俺はいつもの席に座る)

    雪乃「…………比企谷くん。紅茶はいるかしら?」

    八幡「え? ああ、すまん、コーヒー買って来ちまったから今はいいや。ありがとな」

    雪乃「いえ…………」

    八幡(やはりぎこちない。俺が礼を言うし、雪ノ下もそれに突っ込まないし)

    結衣「うう…………」

    八幡(由比ヶ浜もなにやらオロオロしている。悪いな、今週いっぱいの辛抱だから)

    八幡(とりあえず手持ち無沙汰なので、俺はカバンから読み途中の本を取り出す。しかしそこで部室のドアがノックされた)

    雪乃「はい、どうぞ」

    八幡(おいおい、まさかこんな始業式の日から依頼があるのか? 勘弁してくれよ)

    姫菜「や、やっほー」

    結衣「あれ、姫菜じゃん。どうしたの?」

    八幡(海老名さんとはこれまた珍しい客だ。俺は椅子を用意してやる)

    19 = 12 :

    八幡(しかし海老名さんは用意された椅子に座らず、その場で立ち尽くしていた。え、なに? 俺の用意した椅子には座りたくないとか?)

    結衣「姫菜、どうしたの?」

    姫菜「えっと、その…………ご、ごめんなさい!」

    八幡(海老名さんはしばらく逡巡していたが、突然その場に膝を付いて頭を下げた。いわゆる土下座の体勢だ)

    結衣「ちょ、ちょっと姫菜! どしたの!? 起きてよ!」

    雪乃「え、海老名さん!? 頭を上げてちょうだい!」

    八幡(珍しく雪ノ下もうろたえて、由比ヶ浜と二人で駆け寄って海老名さんの身体を起こそうとする。が、頑なに海老名さんは頭を下げ続けた)

    姫菜「ううん! 私が悪いの! だから!」

    雪乃「ひ、比企谷くん、あなたも手伝いなさい」

    八幡「いや、そんなこと言われても…………女子の身体に触れるのはちょっと」

    雪乃「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!」

    姫菜「ごめんなさいヒキタニくん! 私だったらいくらでも頭を下げるから、だから、奉仕部を辞めるとか言わないで!」

    結衣「え…………」

    雪乃「え…………」

    八幡「…………」

    20 :

    よくわからない時系列だな

    21 :

    生徒会選挙までは原作通りだけど
    クリスマスイベントは手伝わなかったとかじゃね。

    23 = 12 :

    八幡(雪ノ下も由比ヶ浜も海老名さんの言葉に固まり、どうしたらいいのか迷っている様子だ。だけどとりあえず話ができるようにしないと)

    八幡「その、海老名さん。とりあえず椅子に座ってくれないか。でないとどうにもなんねえからさ」

    姫菜「う、うん」

    八幡(俺が呼び掛けると海老名さんは身体を起こし、素直に椅子に座る。それを見て雪ノ下も由比ヶ浜も元の位置に戻った)

    雪乃「それで、その、比企谷くん。あなたが奉仕部を辞めると言うのは本当なのかしら?」

    八幡「…………ああ」

    結衣「何で!? どうしてヒッキーが辞めちゃうの!?」

    八幡「心当たりならいっぱいあんだろ」

    結衣「う…………」

    八幡「というかどうして海老名さんが知ってるんだ? もしかしてさっき…………」

    姫菜「うん……私も職員室に用事があって、その時に」

    八幡「そうか……でも別に海老名さんには関係ないことじゃないか?」

    24 = 12 :

    姫菜「あるよ! だって私が修学旅行のときにあんなことをさせちゃったせいで、みんなの仲が…………」

    八幡(海老名さんはそこまで言って言葉に詰まり、俯いてしまう)

    八幡「いや、それは海老名さんのせいじゃないから。後先考えずにあれが最善だと勘違いした俺が悪いだけだから、な?」

    八幡(慌てて俺はフォローを入れ、雪ノ下の方を向いて同意を求める。しかし雪ノ下はゆっくりと首を振った)

    雪乃「いいえ。あれは奉仕部として依頼を受けておきながら結局何も出来ていなかった部長の私の怠慢のせいよ。ごめんなさい海老名さん」

    姫菜「そんなことない! そもそも私が依頼をせずに自分でちゃんとしていれば!」

    雪乃「いえ、私の落ち度よ。比企谷くんに原因があったとしても、その責は部長の私にもあるわけだし」

    姫菜「違うよ! 私が!」

    雪乃「いいえ。私が」

    八幡「はいはい、落ち着けお前ら」

    八幡(少しヒートアップしてきた二人の間に割って入り、手をぱんぱんと叩く)

    25 = 12 :

    八幡「とりあえず一番悪いのは俺ってことにしとけ。そうすれば丸く収まるから」

    姫菜「ううん。ヒキタニくんは悪くないって!」

    雪乃「部員の責任は部長の責任でもあるのよ」

    結衣「あーもう! あたしのせいってことでいいから一回落ち着こうよ!」

    八幡「そうだな。じゃ、悪いのは全部由比ヶ浜な」

    結衣「えっ?」

    雪乃「由比ヶ浜さん。どう責任を取ってくれるのかしら?」

    結衣「えっ? えっ?」

    姫菜「結衣、ちゃんと何とかしてよね」

    結衣「えっ? えっ? えっ?」

    八幡「………………ぷっ」

    雪乃「………………くすっ」

    姫菜「………………ふふっ」

    八幡(三人が同時に吹き出し、そのあと大きな笑いが起こった。最初はそれにむくれていた由比ヶ浜だったが、すぐにつられて笑顔になる)

    八幡(ああ、久しぶりだな、こんな空気…………)

    26 = 12 :

    八幡「うん、まあ、あれだ、何というか…………」

    八幡(ひとしきり笑ったところで俺は話を切り出す)

    八幡「俺のせいでみんなに迷惑をかけてばかりで、独りよがりばっかりして、俺なんか奉仕部にいない方がいいだろ。だから俺は奉仕部を辞めることにした」

    結衣「そんな! ヒッキーの独りよがりなんかじゃないよ!」

    八幡「文化祭の時にさ、みんな色々言ってきたよな」

    結衣「あっ…………」

    八幡「修学旅行の時も、生徒会長選挙の時も、みんなに散々言われた。俺は良かれと思って行動したことなのにさ…………結局俺が何をしても意味はないんだ。むしろ悪くしてしまっているかもしれない」

    結衣「そんなことないよ! いろはちゃんが生徒会をしっかりまとめてクリスマスイベントを成功させたのもヒッキーがいろはちゃんを推薦したからでしょ!」

    八幡「俺が邪魔をせずに雪ノ下が生徒会長になっていたとしても成功してただろ。そもそも一色は最初は生徒会長になりたくなかったわけだし」

    結衣「う…………」

    27 = 12 :

    八幡「面倒くさいとか動きたくないとかそういうことじゃないんだよ。考えた上で俺は奉仕部にいない方がいいと思ったんだ。だから海老名さんが気に病むようなことじゃない」

    八幡(話し始めてからまた俯いてしまった海老名さんに声を掛ける。しかし海老名さんの顔は晴れなかった)

    姫菜「…………ごめんね、ヒキタニくん」

    八幡「だから謝るようなことじゃ……」

    姫菜「ヒキタニくん、知ってる? 最近私達のグループ、結構微妙になっちゃってるの」

    八幡「え、そうなのか?」

    八幡(由比ヶ浜の方を向くと、少し困ったような表情をしていた)

    結衣「うん…………その、優美子がさ、隼人君に告白して、隼人君はそれを断ったんだけど」

    八幡「えっ!? マジで!?」

    雪乃「三浦さんも思い切ったわね…………」

    結衣「それがクリスマスイベントのあとのことなんだけどね、なんか集まりづらくてさ…………」

    八幡「そうだったのか……」

    八幡(クラスの様子を見てたらわかるのかもしれなかったが、今日は自分のことでいっぱいいっぱいだったしな)

    28 = 12 :

    姫菜「せっかくヒキタニくんが守ろうとしてくれたグループなのに、こうなっちゃって…………ううん、そのことは仕方ないんだけど、ヒキタニくんの行為を無駄にさせちゃって…………ごめんなさい!」

    八幡(そう言って海老名さんはまた頭を下げた。これだと困ったことにいくら言っても納得しないだろう)

    八幡「わかった。確かに海老名さんにも責任はある。ならお詫びとして俺の頼みをひとつ聞いてくれ」

    雪乃「比企谷くん!?」

    結衣「ヒッキー!?」

    姫菜「いいの結衣。うん、私にできることだったら何でもするよ」

    八幡「あー……この二人と仲良くしてやってくれ」

    姫菜「え?」

    八幡「由比ヶ浜は寂しがり屋ですぐ駄々をこねるし、雪ノ下はコミュ障だからな」

    結衣「ちょっとヒッキー! どういうことだし!?」

    雪乃「コミュニケーション障害の最たるあなたに言われたくないわよ」

    姫菜「クスッ、でもそんなのお願いにならないよ。元からそうだもん。ね、結衣?」

    結衣「姫菜……うん!」

    姫菜「もちろん雪ノ下さんも。これからもっと仲良くしようね?」

    雪乃「え、ええ。こちらこそよろしくお願いするわ」

    八幡(キマシタワー、ってか)

    29 = 12 :

    姫菜「だから別のお願いごとでいいよ。ヒキタニくんの言うこと、なーんでも聞いてあげる」

    八幡「な、何でも?」ゴクリ

    結衣「ちょっとヒッキー! 何考えてんの!?」

    雪乃「セクハラ谷くん、そのいやらしい視線をすぐにやめなさい」

    八幡「か、考えてねーし見てねーよ!」

    姫菜「えー、でも私結衣ほど胸大きくないし雪ノ下さんほど腰くびれてないよ」

    八幡(そう言って海老名さんは服の上から自分の身体を撫で回した。身体の線が出てつい目を逸らしてしまう)

    結衣「ちょっと! 姫菜!」

    姫菜「ごめんごめん。ヒキタニくんも怒らないで。ね?」

    八幡「別に怒ったりはしてねえけどさ…………」

    32 = 12 :

    姫菜「ま、一応エロい事は無しってことで。私は別にいいんだけど結衣達の手前、ね」

    八幡「なんかガハラさんみたいなセリフになってるぞ」

    姫菜「あー、じゃ、あれを言ってみようか?」

    八幡「あん?」

    姫菜「ヒキタニくん、彼女が欲しかったりしない?」

    雪乃「!?」

    結衣「なっ!?」

    八幡「…………欲しいって言ったら、どうなるんだ?」

    姫菜「ヒキタニくんに彼女が出来る。それだけのことだよ」

    八幡「…………」

    姫菜「…………」

    結衣「ひ、姫菜! 駄目だよ! そんな!」

    雪乃「そうよ、考え直しなさい海老名さん。そんな腐った目をした男なんて」

    結衣「ヒッキーと付き合ったりなんかしたら大変だよ! ひねくれてるし鈍感で気が利かないし!」

    雪乃「さっきも言ったようにコミュニケーション障害も患っているから苦労するだけよ。悪いことは言わないからやめておきなさい」

    八幡「お前ら…………」

    姫菜「あっはっはっ」

    八幡「いや、海老名さんも笑ってないで…………」

    姫菜「うん、ごめんごめん。心配しないでいいよ二人とも。今のは某アニメのやりとりを真似しただけだから」

    33 = 12 :

    結衣「え…………べ、別に心配なんてしてないし!」

    雪乃「私はただ海老名さんの身を案じていただけで…………」

    姫菜「うんうん」

    八幡(海老名さんは何やら微笑ましいものを見る目で笑っている。というかそういうやりとりだとわかっていてもドキドキしてしまったぞ)

    八幡「あー、じゃあ『はや×はち』を考えるのをやめてくれないか?」

    姫菜「ひどい! ヒキタニくんは私に死ねっていうの!?」

    八幡「そこまでのことなのかっ!?」

    姫菜「うえーん結衣ぃ、ヒキタニくんがイジワルを言うの」

    八幡「待って待って。むしろこの場合被害者は俺だよね?」

    姫菜「それだけは、それだけは勘弁してぇ。財布なら渡すしエロいこともしていいからぁ」

    八幡「優先順位がおかしすぎる!」

    姫菜「でも、うん。それがヒキタニくんの頼みなら仕方ないよね…………頑張ってみる」

    八幡「お、おう」

    八幡(そこまでのことなのかよ…………まあもし『とつ×はち』だったら歓迎だったんだが)

    姫菜「じゃあ代わりにヒキタニくんには一個私のお願いを聞いてもらいます」

    八幡「何でだよ。俺の頼みを一個聞くって話だったろうが」

    34 :

    姫菜「私の『はや×はち』封印にはそれだけの代償が必要なんだよ」

    八幡「ええー…………ま、とりあえず言ってみろよ」

    姫菜「奉仕部をやめないで」

    雪乃「!!」

    結衣「!!」

    八幡「…………それは」

    姫菜「うん、わかってる。これがヒキタニくんに対して物凄く迷惑なことだってのは。だってヒキタニくんが真剣に考えて出した結論だもんね」

    八幡「だったら……」

    姫菜「たぶんさ、今の私の気持ちって修学旅行のあの時のヒキタニくんとおんなじだと思うんだ」

    八幡「……!」

    八幡(修学旅行の、あの時の気持ち…………自分には無関係なグループなのに、それが壊れてほしくないってことか…………?)

    八幡「いや、しかし…………」

    姫菜「もし、このお願い聞いてくれなかったら、恐ろしいことが起こるよ…………ううん、私が起こすよ」

    八幡「何をするつもりだよ…………ちょっとだけ考えさせてくれねえか?」

    姫菜「うん。今週いっぱいは奉仕部に来るんだよね? だったらそれまでに、ね」

    八幡「ああ…………なあ、雪ノ下」

    雪乃「な、なにかしら?」

    八幡「ちょっと今日は帰っていいか? 色々考えたいし疲れたし」

    雪乃「え、ええ。構わないわよ」

    八幡「悪いな。そんじゃ」

    八幡(俺はカバンを掴み、逃げるように部室をあとにした)

    36 :

    とつはちがとつはやに見えて錯乱した
    おつ

    38 = 34 :

    結衣「ね、ねえ姫菜。なんで姫菜はヒッキーを引き留めようとしてくれるの?」

    姫菜「あれ、余計なお世話だったかな?」

    結衣「ううん。確かに最近雰囲気はあまり良くなかったけど…………それでもあたしはヒッキーに奉仕部を辞めてほしくない」

    姫菜「うん、だよね。雪ノ下さんもそうでしょ?」

    雪乃「わ、私は……」

    姫菜「そしてたぶんヒキタニくんもそう。理性では辞めるべきだって思ってても感情はここにいたいはずたよ」

    結衣「だといいんだけど…………」

    姫菜「私ヒキタニくんには恩があるからねー。恩返しってわけじゃないけど、私がヒキタニくんにとって奉仕部に留まるだけの理由になれればいいなって思ってる」

    雪乃「ごめんなさい海老名さん。奉仕部の問題に巻き込んでしまって」

    姫菜「やだなー、これは私の方から首を突っ込んでるんだよ。それにさっきも言ったけど私もこうなっちゃった原因のひとつなんだからさ」

    雪乃「だからそれは」

    姫菜「それに、友達が困ってるなら首突っ込んじゃうのも当たり前だし」

    雪乃「海老名さん…………」

    姫菜「ま、失敗しても許してね」

    39 = 34 :

    雪乃「ええ。というか私達はその『許す』という行為を比企谷くんに向けるべきだったのよねきっと」

    結衣「ゆきのん……」

    雪乃「何も出来なかった私が許すというのは烏滸がましいのはわかっているわ。でも間違ったことをしたのではないかと思っていた比企谷くんに必要だったのはきっとそれだったのよ…………」

    姫菜「じゃあさ、話し合ってみようよ。なあなあにしたり逃げたりしたりせずに」

    雪乃「…………そうね。それでも比企谷くんの気持ちが変わらなかったらそれはもう仕方のないことだわ」

    結衣「そうだね。このまんま何となく離れるよりはその方がいいよね」

    姫菜「今にして思えば優美子ももう中途半端な関係が嫌だったのかも。だから思い切って行動に出ちゃったのかな」

    結衣「やらずに後悔するよりやって満足ってやつだね!」

    雪乃「由比ヶ浜さん、ちょっと違うわよ…………」

    40 = 34 :

    八幡「たでーまー」

    小町「あ、お、お帰りお兄ちゃん」

    八幡(リビングから顔を出した小町に手を振り、俺は部屋で着替える)

    八幡「はあ……」

    八幡(ぼふっとベッドに倒れ込む。眠くはないが、精神的に疲れた)

    八幡(…………何で)

    八幡(何で海老名さんは関わってきたんだろうか?)

    八幡(もしかして奉仕部を新しい居場所にしようとしてるとか? …………いや、ないな。意味がない)

    八幡(頭の中に色んなことが渦巻いている。あんまり考え過ぎてるとパンクしてしまいかねないな)

    八幡(といっても考えないことなどできるはずもなく、小町から夕飯の連絡が来るまで俺はずっと脳味噌を働かせていた)

    41 = 34 :

    八幡「いただきます」

    小町「いただきます」

    八幡(手を合わせ、小町の作った夕食を取り始める。うん、美味い)

    小町「…………ねえ、お兄ちゃん」

    八幡「ん?」

    小町「お兄ちゃん、奉仕部辞めちゃうの……?」

    八幡「…………俺の態度とか表情ってそんなに単純か?」

    小町「わかるよそのくらい。小町が何年お兄ちゃんの妹やってると思ってるの?」

    八幡「そっか」

    八幡(正直自分だけで考えてても袋小路な気がするしなあ)

    八幡「小町、受験勉強の邪魔して悪いけどちょっとだけ俺の話を聞いてくれないか?」

    小町「おまかせあれ! むしろ相談してくれなきゃ気になって勉強どころじゃないし」

    八幡「悪いな」

    42 :

    いいぞ

    43 :

    いいぞ

    44 :

    いいぞ

    45 :

    いいゾ

    48 :

    サキサキまだー?

    49 :

    ルミルミまだー?

    50 = 34 :

    八幡(俺は簡単に昼のことを話した。平塚先生との会話と、奉仕部での出来事を)

    八幡「なんつーか…………また迷ってしまってんだよなぁ。海老名さんも余計な真似してくれちゃって」

    小町「そんなこと言わないの。その海老名さんもお兄ちゃんが内心まだ悩んでるのを見抜いて言ってくれたんでしょ」

    八幡「つーかさ、何で海老名さんがここまで関わってくるのかがわかんねえんだよな」

    小町「わかった! 海老名さんお兄ちゃんのこと好きなんだ!」

    八幡「はん、これだから中学生は。何でもかんでも恋愛に結び付けやがる」

    小町「えー。でも心当たりないんでしょ?」

    八幡「あえて言うなら修学旅行の時のあれだが…………正直理由としては弱いよな、海老名さんの性格からして。いや、そこまで海老名さんのことを知ってるわけじゃないけど」

    小町「そういえば小町って海老名さんと会ったことあったっけ?」

    八幡「千葉村行ったときに会ってるが……あんまり関わってねえか」

    小町「あの眼鏡かけた人だよね。ねね、お兄ちゃんから見て海老名さんてどんな人?」

    八幡「ホモ好き。腐女子」

    小町「」

    八幡「んで、あんまり自分の恋愛とかには興味ないっぽい」


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