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    元スレ八幡「は?材木座が不登校?」

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    502 :

    まあ確かに一人に丸投げってのは横暴だと思うな
    解決策がわかってるならヒントくらいはくれてもいいと思うが

    503 :

    平塚先生はくわえタバコのまま器用に片頬をつりあげニヒルに笑う。

    平塚「見ていておかしいやら呆れるやら……。昨日の君らの言い合いを見ていると、やはり奉仕部に君をぶちこんで良かったと思うよ」

    八幡「ぶちこむって……。妙齢の女性の言い草じゃないでしょ。あ、でも先生は」

    最後まで言い切る前にヒュッという素敵な音と共に平塚先生のジャブが俺の顔の横を通過した。

    平塚「次は耳だ」

    八幡「すいません、ラピュタのいかずちは勘弁してください」

    俺は今婚期に焦る30代独身女性の前にいるのだ……。
    俺の反応に満足気な表情を浮かべ、平塚先生は話を続ける。

    504 = 384 :

    平塚「人の気持ちを説く雪ノ下が君の気持ちをまるで汲んでいないあたりが実に面白い」

    八幡「雪ノ下に人扱いされないのは慣れてますよ」

    雪ノ下に限った話ではなく、俺の意見なんかが蔑ろにされるなんてのは日常茶飯事。
    そんなこといちいち気にするほどやわではない。

    平塚「そうだな、人扱いされていないというのは言い得て妙だ。雪ノ下は少々君のことを神格化しすぎているキライがある」

    八幡「神格化?いやいや、つい先日妖怪呼ばわりされましたけど」

    しかも普段なかなか見せないような楽しげな顔で。

    平塚「あぁ……妖怪か……なるほどなぁ」

    いや、おい。納得するとこじゃないでしょ!

    505 = 384 :

    平塚「ようするに君を等身大の一人の人間として見れていないということさ。君なら多少の理不尽や無理難題でもなんとかしてしまえるだろう、というな」

    そんなこと思われても……八幡困っちゃう……。

    平塚「良く言えば期待や信頼。悪く言えば甘え、理想の押し付け、依存といったところか」

    どうにも耳が痛い話だ。
    依存、か。なるほど、言われてみればそういう言い方もできるかもしれない。

    平塚「ま、しかしこれは雪ノ下の方の問題だ。君がどうこうという話じゃないよ。昨日もあのあと由比ヶ浜にずいぶん怒られていたみたいだからな」

    八幡「由比ヶ浜がですか。なんか一年前からは信じらんない話っすね」

    最近、由比ヶ浜が雪ノ下に説教するという、これまでと逆の構図が増えてきたように思う。

    506 :

    更新来てたのか、乙

    507 :

    中弛みは擁護できんが、本筋が進むなら応援する。
    叩くか讃えるかは結果次第だ

    508 :

    平塚「あの二人は良い関係を築けていると思うよ。非常に対等で、タイトな関係だ」

    いや、そんなどうだ上手いこと言っただろみたいな顔されても。

    平塚「雪ノ下の問題は置いておくとしてだ。どうかね、同級生の女子から信頼され仕事を任される気分というのは。いかな君と言えども多少は奮起されるのではないかね?」

    八幡「いえ、まったく」

    俺は仕事を押し付けられて喜ぶような変態にはなりたくない……!

    平塚「相変わらず頑なだな」

    八幡「コロコロ自分の意志を曲げるのが正しいとは言えないでしょ」

    頑なだとか頑固だとか融通がきかないと言えば聞こえは悪いが、裏を返せばそれらは自分の意見をしっかり持ってるとも言える。

    ものは言い様だ。
    他人の意見を柔軟に受け入れるというのは、悪く言えば自分が無いとも言える。

    509 :

    本筋をシリアスに、しかも謎解きっぽく事件の少しずつ輪郭を表していく。
    一方でキャラの性格を掴みながらの日常コメディに妥協がない。

    冗談抜きで市販レベルなんだが何者だよ

    510 :

    平塚「クラスでの君は流されやすいように見えるがね」

    八幡「流されてるように見えて、意外と上手に泳いでるんですよ。こう見えて泳ぎは得意な方なんで」

    平泳ぎとかめっちゃ得意。得意すぎて小学校のころはヒキガエルなんてあだ名を頂戴したりもした。

    ちなみに一睨みで俺を黙らせる雪ノ下は逆説的に蛇であると言える。
    ピット器官とかありそうだし。

    平塚「なるほどな、あくまで個人主義ということか」

    八幡「いや、そこまで大したものでもないですけど」

    実際、個人主義などというほど大それたものじゃない。
    みんながみんな、右へ倣えるわけじゃない。
    それを良しとして生きていっても別にいいじゃないくらいのもんだ。

    511 = 384 :

    平塚「雪ノ下はそういった意味ではまだ君を理解しきれていないのかもしれんな。その点では由比ヶ浜が一歩リードといったところか」

    八幡「なんの話すか?」

    平塚「なんの話だろうな?絶対に教えるもんか!絶対にだ!」

    なぜか突然声を荒げる平塚先生。気のせいか目尻には光る雫が……。

    平塚「ま、由比ヶ浜も最終的には君を信じるというところで雪ノ下と合意したよ。あの二人がそうするというのなら、私もそれに倣う。なにせ、今回の依頼は半分私からのものだしな」

    平塚先生はニカっと笑うと、「がんばりたまえ」と言い残して去っていった。

    512 :


    午後の授業中、平塚先生に言われたことを考えてみる。
    材木座のことは考えても現状どうしようもないので、考えるのをやめた。

    雪ノ下は俺に過大な評価と期待をしているという。
    それは以前、誰あろう俺自身が雪ノ下にしたことと同じだ。
    勝手に期待して、勝手に失望する。

    自分の中で始まり、自分の中で完結するその心の動きは、人間関係としてすごく歪なものに思える。
    否、相手を間に介さないそれは人間関係とすら言えないのではないか。

    かつての俺ならば、そんな歪な関係を許容することはなかったはずである。
    なんと言われようとも、こんな形で丸投げされた依頼は断っていただろう。
    うやむやの内に流されることはあっても、泳ぐ方向を指図されることはなかったはずだ。

    513 = 384 :

    一方、由比ヶ浜は雪ノ下以上に俺のことを理解しているという。
    理解したその上で、雪ノ下と同じく信頼し、任せるという。

    人は人を完全にわかってやることなどできない。
    あくまで「この人はこういう人間だ」という想像を押し付け合うことで、理解したつもりになるしかないのだ。

    だから、俺は簡単に人に理解しているなんて言われたくないし、誰かを理解しているとも言いたくない。
    理解したような顔であれこれ俺について語られるなんてまっぴらごめんである。

    では、雪ノ下と由比ヶ浜、あの二人の関係はどうなのだろうか。
    平塚先生が対等でタイトだと評したあの二人の関係は。

    514 = 384 :

    きっと、あの二人は理解しあっているからあの関係にたどり着けたのではない。
    お互いがお互いに理解したい、理解されたいと願ったからこそたどり着けた境地なのだと思う。

    始まりが間違っていたとしても構わない。
    理解されたいと思う気持ちが自己満足でもいい。
    たどり着いた答えが「理解」でないとしても。

    それでも、互いに願いあった末に行き着いたその関係は、とても尊く美しいものに見えた。

    雪ノ下に聞けば少し頬を赤くして、けれど迷いのない声で「友達よ」と言うだろう。

    由比ヶ浜に聞けば嬉しくて仕方がないという顔で「友達だよ!」と答えるだろう。

    515 = 384 :

    それはあの二人が手にいれて、俺に示して見せた一つの答えだ。
    あの二人でなければダメだった。あの二人だからこそ届き得た。

    それは俺が欲した何かと限りなく近いもののような気がした。


    では俺は。比企谷八幡はどうなのか。

    理解されたい・したいと思い合える誰かが欲しいのか。
    多分、少し違う。

    それらはきっと、欲したものではなく、手放したくないものになっている。

    始めに欲したものは形を変えて手にいれた。
    時間の経過や人の流れ、いろんな事があったせいで、手に入ったときには別のものになっていた。

    517 :

    真面目だなおい
    続き待ってるぜ

    518 :

    やっと追いついた

    519 :

    まがい物ではなく、純粋に別のもの。

    ある人はそれを俺の欲した原初のものではないと、糾弾した。
    お前は自分に嘘をついていると。形が変わってしまったそれを、当初の気持ちを誤魔化して己を納得させていると。
    手に入れたものがあまりにも暖かく手触りが良いものだから、手放したくないあまりに自己を偽っていると。

    そして、そんなことを許容してしまうのが比企谷八幡なのかと責め立てる。


    あのとき、あの寒々しい冬の奉仕部の部室で、俺が欲しいと渇望したものは一体なんだったのか。
    永遠に続けと願いたくなるような穏やかな暖かい日々なのか。

    520 :

    去り行くそれは、ただ惜しむことしかできないそれは、果たして俺が本当に欲したものなのか。

    問い続けることそれ自体が、俺の答えそのものだろう。
    俺の中の化け物染みた理性が現状を否定している。

    めんどくさい男だ。それにひねくれている。お世辞にも性格が良いとは言えない。

    でも、そんな自分がけっこう好きだったりもする。
    とかく否定されがちなこの人格ではあるが、せめて自分くらいは肯定的でいようと思う。

    それに、あの素敵な二人の女の子たちが信じてくれるというのなら、それは世界中の人間の否定を覆しうる根拠になるのではないかと思う。

    521 = 384 :





    放課後になって大変なことに気がついた。
    あれ、もしかして俺、今日から部室行かなくていいんじゃない……?
    部室にいたところで材木座の案件が進むわけもない。

    進捗がないという意味では部室にいるのも自室にいるのも変わらない。
    ならばせめてこの後何か起きたときのために体力を温存する意味もこめて、自宅待機が望ましいとすら言える。

    そうとわかれば俺の行動は早い。
    部活に急ぐ運動部を凌ぐ身のこなしで教室を後にし、廊下を競歩する。

    これでも1年の頃は帰宅部のスーパールーキーだった俺だ。
    奉仕部に入ったゆえ夢は絶たれたが、それでもこの程度は朝飯前。
    誰にも気づかれることなく学校を出た。

    522 :

    まあ普段から概ね誰にも気づかれずに生活しているわけだが。
    言うなれば帰宅部の幽霊部員。
    もうわかんねえなこれ。

    自転車に乗ってすぐ思い出したが、今日は家に帰れない理由があった。
    明日はマイラブリーシスター小町の誕生日。
    比企谷家においては1年間で最も重要視される一日だ。

    加えて今年は高校受験合格なんていう、他の日ならばどこでもエースを張れるようなオマケまでつくありさまだ。

    両親、主に親父の力の入れようは半端じゃない。それはもう超ドレッドヘアー級、略して超弩級の気合いの入り用である。ボブ・マーリーかよ。
    正しくは超ドレッドノート級な。

    523 = 384 :

    そんなわけで張り切りまくってる親父は前日から有給をとって準備に勤しむなど、ウザさに余念がない。
    今帰れば、ウキウキで飾り付けなんかを施している親父と、家で二人きりなんてことになる。

    考えるだに恐ろしいその状況を避けるべく、家に向けて走り出した自転車の舵を千葉方面へと切る。

    旦那は元気で留守がいい、なんて昔から言われていることだが、子ども目線でもそうなんだよなぁ。
    日本のお父さんは大変である。

    最近とみにご無沙汰になっていたゲーセンなんぞに入ってみる。
    抜け殻のようにパチンコの画面を見つめるじいさんたちの脇を抜け、お目当てのクイズゲームへ。

    524 = 384 :

    このゲームは基本一人プレイで、賢者になれるゲームである(意味深)。
    オンライン対戦がメインとなっており、全国のゲーセンにいるプレイヤーとリアルタイムで早押しクイズバトルができる。

    最近あまり力を入れなくなってしまったのが悲しいが、何世代か前のver.ではオフラインで遊べる検定試験なるものが豊富に揃えられていて、俺はそっちの方が好きだった。

    割りと古参プレイヤーを自称する俺だが、いまだにメイン画面に存在する「店内対戦」とかいうコマンドは触れたことがない。
    なんだろうね、これ。

    525 = 384 :

    カードをリーダーに置き、暗証番号を入力。
    さて、久しぶりにがんばりますか……。
    今日はとても良い日だよぉ!(裏声)


    ひとしきり楽しんでいると妙な視線を感じた。
    首は動かさず、目だけで背後を探ると、明らかに俺の後ろで立ち見をしている輩がいる。それも二人。

    このゲーセンの文化、本当嫌いなんだよね、俺。
    音ゲーとか格ゲーとかやらない理由の一つがこれ、立ち見。

    上級者さんのプレイに立ち見ができるのはまあわかるが、大して上手くもないごくごく普通のプレイヤーのこともたまに見てるやついるんだよね。

    あれ、すげえプレッシャーかかるから本当やめてください。

    526 = 384 :

    筐体は俺の他に3台空いているし、順番待ちというわけではない。
    なんなのなぁ、本当に。どっかいってくんねえかなぁ。

    別に俺が使っているのがゆりしーボイスの幼女キャラだから恥ずかしいというわけではない。
    本当だよ?猫耳とかスク水とかかなり本気カスタムしてるけど、全然恥ずかしくないよ?

    恥ずかしいわけないじゃないですか!
    こちとら悟りを開いた賢者様ですよ!

    くそ、やはり見られているプレッシャーからか、先程より正当率が落ちている。
    このままじゃ予選落ちしてしまう……。

    527 = 384 :

    Q『最初は四本足、成長すると二本足、最後に三本足になる動物は?』

    予選の最終問題が表示される。
    いかん、これに正解しないと絶望的だ。
    四文字のタイピング問題か……。あせるな、落ち着け……。

    しかし、ぼっちにとって最も辛いのが視線を集めることである。
    背後からの視線をビンビンに意識しまくる俺は完全にパニックに陥っていた。

    なんだ?四文字?
    最初は四本足、次に二本足、最後に三本足。考えろ……考えろ……。
    わかった!奈良漬けか!

    528 = 384 :

    慣れが必要とされるタッチパネルのタイピング入力も、宝石賢者の俺にとってはまるで障害にならない。

    中級者以上独特の素早いタイピングで「ならづけ」と打ち込む。
    恐らく「ならずけ」との引っかけ問題なのだろう。
    だが、国語学年3位の俺はそんな初歩的な国語に騙されることはない。

    勝利へのほのかな満足感と、予選落ちする愚か者たちに若干の哀れみを感じながら、今OKボタンを押す。

    と、顔に影が落ちたのを感じ、横を見ると誰かが俺の左側に立ち、筐体を覗きこんでいる。

    おいおいマジかよ、これ他人のゲーム立ち見する距離感じゃねーよ。
    やべー、なんかヤバい人かも……。

    530 :

    本筋をシリアスに、しかも謎解きっぽく事件の少しずつ輪郭を表していく。
    一方でキャラの性格を掴みながらの日常コメディに妥協がない。

    冗談抜きで市販レベルなんだが何者だよ

    531 :

    検定試験はむしろ今の方が充実してるんだよなぁ・・・

    532 :

    >>531
    マジ?
    6で引退したニワカですまん……

    533 :

    検定試験は特殊なものを除けば一度出たらずっと選択できるようになったからな
    今は16種類くらいから選択できるんじゃないかな?

    ラノベ検定はよ

    534 :

    女性特有のわけのわからない甘い良い香りが、反射的に俺の体をのけぞらせる。
    すると空いたスペースをさらに詰めるように、筐体に手をついて画面を覗き込んでくる。

    おいおい誰だよこいつと顔を見ると、雪ノ下の姉、陽乃さんだった。
    相変わらず距離感がやたらと近い。あとでかい。

    陽乃「ねえねえ比企谷君、これってクイズゲームじゃないの?大喜利ゲームだっけ?」

    画面から目を離さず、さっきからずっと一緒に遊んでいた友達と話すような気軽さで話しかけてくる雪ノ下さん。
    同時に俺の不正解を宣言する音が筐体から流れる。

    535 :

    ってかなんで誰も奈良漬けにつっこまんの?
    わかってないの俺だけ?

    536 = 384 :

    >>535
    「封神演義」というジャンプ漫画のパロディネタ
    すません、パロディとして使うにはちょっと知名度低かったかもしれぬ……

    537 = 535 :

    フジリューか、読んでたのにわからんかった。
    こっちこそすみません。

    538 :

    八幡「いや、もう予選落ち確定してたんでネタに走ったというか。……なんでいるんすか?」

    陽乃「なんだ、ただの受け狙いだったんだ。てっきり比企谷君のことだから『にんげん』って答えがわからなかったのかと思った」

    俺の質問は無視して笑顔で軽いジャブを放ってくる。
    やり方は180度違うものの、姉妹共々俺への対応は攻撃的で一致している。

    陽乃「面白そうなゲームじゃん!私も一緒にやろーっと」

    言いながら無理矢理俺の横のスペースに入り込んでくる雪ノ下パイセン。近い近い近い!あと柔らかい!でかい!

    八幡「ちょ、なんなんすか!他全部空いてんだから、やるなら隣の隣座ってくださいよ!」

    陽乃「そこでナチュラルに隣すら拒否するのがすごいよね。まぁまぁせっかくなんだから仲良くカップル席っぽく座ろうよ」

    539 = 384 :

    抵抗する間もなくシートの半分を奪われてしまった。
    仕方がないので俺が席を移ろうと腰を浮かせた瞬間、筐体から「くやしいな……くやしいな……」というゆりしーボイスが……!

    こんなこと言われてやめちまったら男が廃るってもんよ!
    アロエに免じてここは俺が折れよう。
    いや、それにしても良い匂い。

    コンテニュー料金を払おうと財布を出しかけた俺を制し、文句を言う間もなく雪ノ下さんが100円を投入する。
    素直に甘えておくことにして、オンライントーナメントをタップ。

    八幡「解答形式とか色々あるんすけど、基本的にはただの早押しクイズなんで。わかった段階ですぐ押しちゃってください」

    陽乃「おっけーおっけー」

    八幡「タイピングのときは俺が入力しますんで、答えわかったら教えて下さい」

    陽乃「りょーかい!」

    こうして俺と雪ノ下さんタッグによるトーナメントが始まった。
    ……どうしてこうなった。

    540 = 384 :

    八幡「……で、なんでここにいるんすか?」

    順調に練習問題を解いていく雪ノ下さんに先ほど流された質問をする。

    陽乃「んー?普通に学校帰りに友達と遊びに来てるだけだよ?」

    八幡「友達は放っといていいんですか?」

    雪ノ下さんと一緒にいたもう一人は気づかない内に消えていた。

    陽乃「私の他にあと3人いるからねー。
    どっか別のとこで遊んでると思うよ」

    練習問題が終わり、しばらくは待機画面が続く。
    手を止めた雪ノ下さんはいつもの底が見えない笑顔で俺を見た。

    陽乃「さっきの問題の答え『にんげん』で良かったね。『ともだち』だったら比企谷君は本当にわからなかったもんねー」

    541 = 384 :

    八幡「……いやわかりますよ。文系クイズは得意分野です」

    陽乃「ふーん」

    マッチングが終わり、ようやく予選が始まる。

    陽乃「でもその答えは比企谷君の正解ではないよね」

    一度画面が暗転し、ロード画面になる。なうろおでぃんぐ。

    陽乃「ことばの意味を見て『ともだち』って解答は出せても、『ともだ』ってことばの意味はわからないんだもんね」

    八幡「え、それどういう」

    意味ですか、という言葉が出る前にロードが終わり、予選の第1問が表示される。
    雪ノ下さんは何も言わなかったかのように画面をキラキラした目で凝視していて、俺は言葉を呑み込んだ。

    542 = 384 :

    >>541
    はるのんの『ともだち』ってセリフの『ち』が抜けてた!この脱字は恥ずかしい!

    544 :

    陽乃「へー、思ったより問題も凝ってるね、このゲーム」

    さすがというかなんというか、予選問題を連続正解で難なく解いていく。
    ガチでこのゲームに嵌まっている人たちは問題を覚えたりとかするらしいけど、この人の場合は単純に知識量が半端じゃない。

    学術系の問題から芸術系、エンタメ系、果てはサブカル系まであらゆるジャンルの問題を片端から解いていく。
    気がつけば全問正解で予選が終わっていた。

    八幡「俺の出る幕がない……」

    陽乃「ふふん、これが大学生の実力だよ」

    八幡「いや、大学生のハードル上げすぎでしょ……」

    545 = 384 :

    予選の通過順が表示される。
    てっきり1位通過だと思っていたが、結果は3位。

    陽乃「あれ?この人達も全問正解なのか。同率1位にはならないんだね」

    八幡「早押しが早いほど得点が上がるんです。多分そのあたりで負けたんじゃないすかね」

    陽乃「ふーん、そっかそっか」

    納得しうなずく雪ノ下さん。別段表情は変わっていないのに、なぜだか周りの気温が少し下がったような気がする。
    やだこの姉妹、すぐムキになるんだもん……。

    陽乃「よーし、比企谷君、今度は1位狙うよー!」

    八幡「う、うっす」

    やべー、タイピング問題きたら責任重大だよこれ。

    546 = 384 :

    結局、決勝も2位で終了。
    敗因ははっきりしている。俺のタイピングだ。

    隣の雪ノ下さんに当たらないよう、無理な姿勢で画面にタッチしなければならず、2回も不正解を出すという体たらく。

    俺が間違える度に雪ノ下さんは爆笑していた。

    八幡「すいません……」

    陽乃「どんまいどんまい!比企谷君の情けない姿を見れて、お姉さんは大満足だよ」

    そしてまた笑う雪ノ下さん。
    人の情けない姿が見れて大満足って……。
    雪ノ下さんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからね!って感じ。

    547 = 384 :

    陽乃「はい、それじゃあもう1回」

    当然のように100円を入れてコンテニューを押す。
    さすがに今回は俺が払おうとするも、頑として受け付けてくれない。

    陽乃「やだなー、高校生にゲーセン代たかるような悪いお姉さんに見える?」

    見えない。そんな小悪党で収まる器には見えない。

    2回目ということで慣れたのか、今度はおしゃべりに重点を置きながらのプレイ(意味深)。
    他のプレイヤーの解答にツッコミをいれたり、問題について雑学を披露してくれたり。
    なんだこれ、普通に楽しいじゃねえか。
    こういうのが本当のコミュニケーション能力ってやつなんだなぁ。

    548 = 384 :

    大抵のことでは一人を好む俺をして、タッグプレイを楽しいと思わせるとは恐るべしである。

    予選と準決勝を順調に通過して、決勝戦。

    陽乃「おっと、ごめん」

    メールでも来たのかスマホを取りだした雪ノ下さんは「ちょっとお願いね」と解答を俺一人に任せ、スッスッとスマホの画面を操作し始める。

    決勝第1問目はアニメゲームジャンルの四択クイズ。
    これならイケる!

    Q『パ』

    光の早さでC.ストライクウィッチーズをタップする俺。
    残り時間が18.8秒で止まっている。
    他の3人は俺のあまりの早さに驚愕しているだろう。

    549 = 384 :

    やがて正解のチャイムが流れ、少し安らかな笑顔が浮かぶ。
    この問題は外すわけにはいかねえよ……。

    とそのとき、カメラのフラッシュが焚かれ、盛大に体がびくつく。
    すわ、何事かと横を見ると、視界に入らない巧妙な角度で俺の肩あたりに頭を寄せて、スマホで自撮りしている雪ノ下さんがいた。

    いわゆる、ツーショットってやつだ。

    八幡「いや、ちょ、なにしてんのこの人!」

    陽乃「おー!予想以上のナイスショットだよ。笑顔の比企谷君が撮れてしまった……!」

    イタズラっ子のように無邪気な顔を浮かべる雪ノ下さんは撮れたての写真を見せてくれた。
    満面の笑みで写る雪ノ下さんの隣に、(ゲーム画面を見ているため)少し俯きがちにニヤニヤ気味悪く写る俺の顔が……!

    八幡「うわなんだこれ!気持ちわる!消して!いますぐ消して!」

    むしろ消えたい!
    画面の光が下からあたって、ニヤニヤしてる顔といいなんかもう本当に気味が悪い写真になっている。

    550 :

    力づくでスマホを取り上げようかとも思ったが、クイズは待ってくれない。
    決勝戦はまだ途中であり、俺は勝たなくちゃいけないんだ……!

    その後復帰した雪ノ下さんが全問正解し、見事優勝することができた。
    敵わんなぁ……。


    そのあともう一度トーナメントを優勝し、さすがに飽きたのか席を立つ雪ノ下さん。
    ようやく解放されたかと胸を撫で下ろしていると、なぜか腕を掴まれ俺まで立ち上がらせられる。

    陽乃「喉渇かない?渇くよね?よし、お姉さんが奢ってあげるからジュース飲みに行こう」

    強引にまくし立て歩き出す雪ノ下さんに引かれ、渋々後に続く。
    まあ奢ってくれるというなら断る道理もない。
    体育会系の縦社会なんかに属したことがないのでわからんが、先輩に素直に奢られておくのも後輩の務めと聞く。


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