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    元スレ八幡「は?材木座が不登校?」

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    1 :

    平塚「うむ、どうやらそのようだ」

    担任C「もうかれこれ10日ほど欠席が続いてるわ」

    平塚先生が、材木座の在籍するC組の担任を連れて奉仕部に現れたのは、2月も終わりに近づいたある日の放課後だった。
    教師二人の訪問とあってか、雪ノ下は文庫本に栞を挟んで机に置き、由比ヶ浜は携帯を閉じたわけだが、材木座の名前が出た瞬間に二人とも本と携帯を開いた。
    ひでぇな……俺に丸投げかよ……。

    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1431894559

    2 = 1 :

    八幡「お前らな……、いかに材木座絡みといえども、一応依頼の体で来てるわけだから話くらい聞けよ……」

    雪乃「大丈夫よ、比企谷くんなら一人で出来るわ。むしろ誰かと一緒になんて何もできないのではないかしら?」

    八幡「前半だけなら信頼に溢れた台詞だったのになんで余計な一言つけちゃうの?この国の政治家なの?」

    雪乃「大丈夫よ、比企谷くんなら一人で出来るわ」

    八幡「今さら削ったって無駄だから。一度出た発言は議事録からは消せても人の心からは消せねえんだよ」

    相変わらず口を開くごとに俺の心の傷を増やす奴だよなこいつは。緩急自在にデッドボールだけ投げてくるとか、コントロール抜群すぎるだろ。

    3 = 1 :

    結衣「あはは……。中二はヒッキーの専門だからしょうがないよ」

    八幡「いや、専門とかねーから。仮にもし専門で分けるなら、俺は戸塚専門が良い」

    ほら、推しメン一人しか作らねえ奴のこと○○専とか言うじゃん?あんな感じ。戸塚専。
    『比企谷八幡、戸塚専です
    !戸塚以外に興味ありません!この中に戸塚、もしくは彩加がいたら私のところまで来なさい!』うん、3年のクラス替えの自己紹介決まったわ。これで3年も開幕からぼっち安定だな。

    結衣「でたー……。ヒッキー、彩ちゃんのこと好き過ぎだよ……」

    八幡「なっ?!べ、べべ別に好きじゃねーし!へ、変なこと言うなし!」

    おいおいやめろよ、変な汗かいちゃうじゃねえか。うわー、あたし顔赤くなってないよねー?

    結衣「反応がすっごいピュアだ……」

    由比ヶ浜がげんなりしたように俺を見る。

    4 = 1 :

    平塚「あー、そろそろ依頼の本題に入ってもいいかね?」

    黙って見ていた平塚先生が呆れたように場を促す。

    平塚「まあ、雪ノ下と由比ヶ浜の言いたいこともわかるんだが、今回は割りと深刻な内容でな。ちゃんと聞いてもらえるかな」

    言いたいことわかっちゃうんだ……。
    まあ材木座だしな。日頃の行いって大事だよな。

    担任C「材木座君……、その……、なんていうか……、個性的……?だからね」

    これには材木座の担任も苦笑い。
    ていうかこの人英語の島崎先生だ。俺も授業受けてるわ。

    5 = 1 :

    雪乃「それで、不登校という話でしたが?」

    島崎「そうなの。最初の内は体調不良ということでお母さんの方から連絡が来ていたのだけどね、さすがに何日も続くと心配でしょう?それで詳しく話を伺ってみたのだけれど……」

    平塚「どうもほとんど部屋からでてこないようでな。食事も部屋でとっているらしい。話を聞こうにもご両親には取りつくしまもない様子らしくてなぁ」

    結衣「うわぁ……、リアルヒッキーだ……」

    由比ヶ浜が軽く引いた目で俺の方を見る。
    リアルヒッキーってなんだよ。引きこもりはいつだってリアルな社会問題だよ。あと俺を見んな。

    6 = 1 :

    八幡「ったく、重度の中二病から重度の引きこもりかよ。どうしようもねえな、あいつ」

    雪ノ下「あら、あなたとそう違わないのではなくて?物理的に引きこもるか、精神的に引きこもるかの違いでしょう?」

    八幡「お前のその精神的な暴力によって、俺の心の扉がますます固く閉ざされるんだよ……」

    雪乃「ごめんなさい、物理的な暴力は自信がないのよ」

    なんで暴力を受けることが前提なんですかねえ……。

    島崎「それで今週の頭に家庭訪問も行ってみたのだけれど、やっぱり出てきてくれなくてね」

    雪乃「話もできない有り様だったと」

    島崎「えぇ……。帰ってくれの一点張りだったわ」

    7 = 1 :

    まあそうなるわな。小学生ならまだしも、高校生の男子ともなれば担任が来た程度ではどうにもならんだろう。

    雪乃「それで、奉仕部への依頼というのは彼の不登校を更正する、ということでよろしいのでしょうか?」

    平塚「端的に言えば、な。ただ、それはあくまで理想の話だ。登校させるだけというなら、色々方法がないわけでもない」

    うわぁ、なんか言い方が怖いんですけど……。特に平塚先生が言うと。

    平塚「ただ、高校というのは義務教育ではないからな。本人の意思に反してまで登校させる義務は我々にはないんだよ」

    島崎「そうなのよ……。私たち教師にしてみれば、やっぱり生徒には無事総武高校を卒業して欲しいけれど、本人が辞めたいと言えば引き留めることはできないのよね」

    8 = 1 :

    良い先生、なんだろうな、島崎先生は。あの材木座のことをここまで真剣に悩んでやれるなんて。

    八幡「ってことは依頼内容は材木座の不登校の原因を突き止めて、それを解消させるってことですかね」

    はぁ……、めんどくせえ。そもそもがめんどくせえのに、相手が材木座だと輪をかけてめんどくせえな……。
    まずあいつと会話することからしてめんどくさい。

    島崎「そうね……。材木座君、あの性格だから、もしかしたら私の気づかないところでいじめにあっているのかもしれないし」

    まあ普通に考えたらそうなる。

    島崎「友達も……比企谷君くらいしかいないみたいだし」

    え?いやいや、ちょっと待ってください。
    俺も別に友達じゃないよね?いや、本当マジ勘弁して!そういうのじゃないから。材木座が友達とかマジで1mmもないから。

    9 = 1 :

    結衣「うーん、確かに中二はけっこうめんどくさいけど、ヒッキーの友達だしね!」

    ちょっ、やめろし!そんな笑顔でこっち見んなし!

    雪乃「そうね、彼と比企谷君はヒッキー友達ですものね」

    お前もそんな良い笑顔でこっち見んなし!
    ていうか良い笑顔だけど言ってることはかなり酷いからな、主に俺に対して。
    なんだよヒッキー友達って。宇多田ヒカルのファンクラブかよ。

    八幡「あー、まぁ材木座は友達ではないが、奉仕部の依頼だしな……。一応やるはやってみるか」

    友達ではないけどな。そこは譲らねえぞ。

    10 = 1 :

    平塚「ふっ、相変わらず捻くれているな、君は。だが、やってくれる気になったならそれはそれでいい」

    平塚先生が優しげな目で俺を見つめながら言った。
    やめて……なんか恥ずかしいから。

    結衣「もー、素直じゃないなーヒッキーは」

    島崎「比企谷君、ありがとね。私も協力できることがあればなんでもするからね」

    八幡「あー、えー、まあなんだ、善処しますよ……」


    こうして奉仕部の今回の活動内容が決定した。
    不登校になった材木座の原因究明と更正。
    うわー、やる気でねぇなこれ……。

    11 :

    流石に二人が冷たすぎると思うんだが

    12 :

    材木座だしな

    13 = 1 :

    方針が決定したため、とりあえずは基本的な情報を洗い出す運びになった。
    具体的的に何日から材木座が登校していないのかとか、その付近で何かしら変化がなかったかとかそういうことだ。

    島崎「材木座君の不登校が始まったのは十日前、二月十七日からね」

    結衣「ヒッキーは中二が来てないの気づいてなかったの?」

    八幡「いや、まあ気づいてたっちゃあ気づいてたけど、あんま気に止めてなかったのが正直なところだな」

    だって材木座だし。

    八幡「先週の体育でいなかったからな、妙だとは思ったけど特にそれ以上は……」

    14 = 1 :

    平塚「十七日以前で何か変わったことはなかったか?」

    八幡「と言われても……。いつも通りうざかった記憶しかないっすね」

    島崎「比企谷君が最後に材木座君に会ったのはいつ?そのときの様子は覚えてるかしら?」

    え、なに?なんで取り調べみたいになってんの?
    お、俺は無実だ!その日も一人で……!
    あ、いつも一人だったわ。アリバイとか証明できるわけねーわ。旅先で蝶ネクタイつけた眼鏡の小学生にあったら死ぬか容疑者かしかねーな。
    これはもう旅とか出ちゃいけない人種だな。一生家にいよう。

    八幡「そうっすね……確か十五日の帰るときに会ったかな……。いつも以上にうざかったんで適当にあしらって帰りましたけど」

    15 = 1 :

    結衣「ヒッキー……それって……」

    雪乃「比企谷君の心無い対応に傷ついて……あり得るわね」

    なんか皆が俺をえぇ~……みたいな目で見つめくる……。
    いや、うざがってたって言っても材木座相手にはいつも通りだしなぁ。
    あいつもその程度で今さら不登校になるほどメンタル弱いとは思えん。

    八幡「いや、さすがに不登校にするほど邪険にはしてねえよ……多分」

    だ、大丈夫だよね?俺犯人じゃないよね?
    あと雪ノ下は最初から俺を犯人扱いするのやめろ。

    島崎「う~ん、それでも翌日の十六日は普通に登校してきたはずだし、特に変わった様子も見られなかったのよね……いつも通り、その……」

    あー、いつも通り中二全開、痛さMAXだったんですね、わかります。
    つーかあいつ教室でもいまだにあのキャラ貫いてるのかよ、すげーな。

    16 = 1 :

    平塚「となると十六日から十七日の朝までに何かがあった可能性が高いな……」

    雪乃「そうですね……。ホシヶ谷君、何か心当たりは?」

    八幡「ねえ、俺を犯人扱いするのやめてくれる?なんだよホシヶ谷君って。いつからここは捜査一課になったんだよ。その日は材木座に会ってねーよ」

    漢字に変換したら星ヶ谷。けっこうかっこいいじゃねーか。
    多分あれだな、俺が星になるなら北極星だな。回りに何も寄せ付けない感じが。
    もしくは北斗七星の横に輝く例の星。あぁ、それで材木座は死んだのかもな。いや、まだ死んでねーか。

    17 = 1 :

    島崎「比企谷君以外で材木座君と親しい人……となるとちょっと思いつかないわね……。学校以外かしら?」

    えぇ~……、なんかそれ嫌だなぁ……。他にもいるでしょ、材木座と親しい奴。ほら、例えば……その……、うん、いないな。

    平塚「……っと、いかん、もうこんな時間か。島崎先生、もうすぐ会議の時間です」

    腕を組んで考えていた平塚先生が、不意に時計を見上げて立ち上がる。

    島崎「そうですね……、もう行かなくては」

    島崎先生も促されて立ち上がると、申し訳なさそうに俺たちの方を見て手を合わせた。

    18 = 1 :

    島崎「ごめんなさい、明後日のことでどうしても抜けられない会議があるの」

    雪乃「いえ、お気になさらず。とりあえず今ある情報でこちらでもアプローチを考えてみます」

    平塚「ふむ、とは言え今日明日でどうにかなる問題でもないだろうからな。まあ早く解決するに越したことはないが、焦って対応を間違えて済む問題でもない。明日は土曜日だし、来週の月曜また改めて場を設けることにしようか」

    雪乃「そうですね、不登校ということであればやはり原因は学校内にあると考えるのが妥当ですし、月曜日までは特にできることもないでしょう」

    八幡「まあそうだわな」

    島崎「ごめんなさいね。ではまた月曜日に」

    平塚「月曜の放課後、島崎先生とまたここに来るとしよう。それまで各自考えてみてくれたまえ」

    19 = 1 :

    それって土日を使って材木座のこと考えろってことだよね?すげえ嫌なんだが……。
    島崎先生と平塚先生が揃って教室を後にしてから、うんうん唸っていた由比ヶ浜が、ぽんと胸の前で柏手を打つ。
    うわ、すげえ……揺れたよ……。
    いや、まあ何がってわけじゃないですけどね、ええ。

    結衣「そーだ!ヒッキーが今中二に電話してみればいーじゃん!」

    うん、俺も気づいてたけどね、気が進まないというか……。

    雪乃「話を聞いた限りだとそう簡単にいくとも思えないけれど、やってみる価値はあるわね」

    雪ノ下も賛成のようで目線で俺に促してくる。
    ええ、わかってますよ。ここで文句言ってもどうせやらされることはわかってますよ。やりゃいいんでしょ、やりゃ。

    21 :

    >>16
    死兆星じゃねーかw

    22 = 1 :

    携帯を取り出してアドレス帳から材木座を探すも見当たらず。ていうかサ行に誰も登録ないしね、探すまでもなかったね。
    というわけで例によって発信履歴の出番である。

    八幡「……でねぇな。留守電になっちまってる」

    雪ノ下「そう。あまり期待はしていなかったけれど」

    八幡「普段の材木座なら寝てるとき以外なら必ず電話に出るか、出れなくてもほぼノータイムでかけ直してくる」

    自分で言ってて思うけどキモいなぁ……。

    雪乃「ということは、あなたとも話すことは拒絶しているのね」

    結衣「でも着拒されてるわけじゃないんでしょ?それならまだ寝てるだけかもしんないし!」

    八幡「どーだかな」

    23 = 1 :

    多分、正解は雪ノ下だろう。
    キモいし認めたくはないのだが、材木座の性格上、俺に話せることなら不登校になる前に泣きついてきてるはずだ。
    それが今に至るまでなく、なおかつ俺からの着信にも出ないことを見るに、どうやら俺とも話す気はないらしい。
    由比ヶ浜が言うように着信拒否されてないあたりがまだ望みがありそうな気がするも、現状ではどうしようもない。

    八幡「もう少し情報を集める必要があるな」

    雪乃「そうね、さすがにこれだけでは……はい?どちら様かしら?」

    雪ノ下の言葉はノックの音に邪魔されて最後まで紡がれることはなかった。
    本日2組目の来客。ずいぶん盛況だなおい。

    24 = 1 :

    結衣「はーい、開いてますよー、どーぞー」

    若干の苛立ちが込められた雪ノ下の誰何に恐れをなしてか、入るのを躊躇っている来客に由比ヶ浜がフォローをいれる。
    おずおずと扉を開けて入ってきたのは、どうにも見覚えのある二人組だった。

    秦野「あの……失礼します……」

    入ってきたのは眼鏡をかけた二人組。
    先に入ってきたのがフレームなしのシャープな台形の眼鏡、後に続いて来たのが丸みを帯びたレンズのインスパイアーザネクストな感じの眼鏡。
    ……あー、ていうかこいつらあれだ。ずいぶん前に材木座と揉めた遊戯部の一年だ。

    雪乃「秦野君と相模君……だったかしら。今日はどういった要件で?」

    すげーな、こいつ。名前まで覚えてんのかよ。さすがユキペディアさん。

    25 = 1 :

    相模「その説はどうも……あの、すいませんでした」

    秦野「今日はちょっと剣豪さんのことで相談……というか話があって来たんですけど……」

    まあ予想通りっちゃ予想通りだな。こいつらと俺らの接点なんて材木座しかないわけだし。
    そういや、この学校で俺以外に材木座と関わりがあるっていうと、こいつらもそうだったな。忘れてた。

    雪乃「ちょうどそのことで、今先生方とも話したところだったのよ。その椅子に座って詳しく聞かせてもらえるかしら?」

    秦野と相模は明らかに雪ノ下にびびっていたようだが、由比ヶ浜がいつもの人当たりの良い笑顔で椅子を勧めると、幾分落ちついたようで、話を切り出した。

    26 = 1 :

    秦野「えーっと、剣豪さんのことなんですけど、最近学校に来ていないってのは本当でしょうか?」

    八幡「ああ。俺たちもさっきそのことで担任から相談を受けたところだ。十日前から来ていないらしい」

    女子と話すことに免疫がないのか、俺の方に向けて話し始めたので、仕方なく返事をする。

    相模「剣豪さん、学校だけじゃなくて最近ゲーセンにも来てないんですよ」

    八幡「え?そうなの?」

    秦野「はい。ちょうど十日くらい前からです。それまではほとんど毎日来てたんで、どうしたのかなって思ってたんですけど」

    あいつ毎日ゲーセン行ってたのかよ……。執筆作業はどうした。

    27 = 1 :

    結衣「ゲーセンの人とまた喧嘩しちゃったとか?」

    いや、それはないだろ。それで学校まで来なくなるのもおかしいしな。

    秦野「いえ、そういうことはないと思います」

    相模「それと、各ゲー仲間の掲示板にも、ゲーセンに来なくなってから一度も書き込んでないんですよ。これまではほぼ毎日張りついてたのに」

    あいつそんなことばっかやってたのか……。どんだけ暇なんだよ。

    秦野「けっこうみんな心配してて、掲示板で呼び掛けたり、連絡先知ってる人はメール送ったりしてみたんですけど……」

    雪乃「返事がなかったと」

    相模「はい」

    あー、それもうしかばねになってるわ。諦めるしかないんじゃね?

    28 = 1 :

    結衣「んー、なんか最近中二に変わった様子なかった?」

    相模「変わったことって言えるかわからないんですけど、一応一つだけ……」

    結衣「おお!初ヒントじゃん!なになに?」

    ちょ……由比ヶ浜、乗りだしすぎだから……。そういうリア充の距離感で、こんな遊戯部(笑)とかいう童貞非モテ丸出しの男の子たちに近づいたら勘違いさせちゃうから。
    秦野も相模も椅子ごと後ろにのけ反っちゃってるしね。

    秦野「ええと、これなんですけど……」

    29 = 1 :

    と言って秦野が取り出したのは自分のスマホ。テュルテュル何やら操作して、出てきた画面を俺たちから見やすいように正面に向ける。

    結衣「……ん?パズドラじゃん!あたしもやってるよ~……ってランク832!?」

    画面を覗いていた由比ヶ浜が驚いて身を引く。

    秦野「あー、まあ一応遊戯部ですし……」

    その由比ヶ浜の反応に気を良くしたのか、僅かにどや顔を覗かせる秦野。
    この展開には見覚え、もとい身に覚えがある……。自分の隠していた得意分野を女子に驚かれ、良い気になって「な、なんなら教えてやろうか?」みたいに調子こいちゃうやつだろ。
    やめとけ秦野、それ驚いてるっていうかドン引きしてるだけだから。オタクの持つステータスは、高ければ高いほどパンピーに引かれる、悲しみの比例グラフを描くんだよ……。
    つーかパズドラの800ランカーってなんだよ。間違いなく重課金勢じゃねーか。俺も引くわ。

    雪乃「これは……ソーシャルゲームというやつかしら?」

    相模「いえ……、ソシャゲーとはまた少し違うんですけど……」

    30 = 1 :

    八幡「ソシャゲー要素もちょいちょいあるが、基本的にはパズルゲームだ。課金すればより快適に進められるが、別に課金しなくても十分楽しめる。対人機能はないし、協力プレイという概念も薄い。一応ゲーム内にフレンドという機能はあるが、それほど強い結び付きにはならんしな」

    雪ノ下はふむふむと俺の説明を聞いていたが、ある程度合点がいったようでこちらに笑顔を向けてきた。
    おい、やめろ。その顔はまた言葉の刃を抜いた顔だろうが。

    雪乃「つまり比企谷君にピッタリのゲームと言えるわけね」

    八幡「確かに、本来俺みたいな奴専用ゲームなはずなんだがな。ゲーム自体のとっつきやすさと、絶妙なバランス調整のおかげもあって、今や若年層の間じゃ国民的大ヒットだ。スマホ持ってる奴なら大抵やったことあるはずだ」

    31 = 1 :

    一時期戸部とかあの辺も騒いでたしな。この手のゲームは俺みたいなぼっちの暇潰しツールだったはずなのに、いつの間にかリア充どものコミュニケーションツールになってやがる。

    結衣「ヒッキーはパズドラやってないの?」

    八幡「前はけっこうやってたが、今はもうやってねーな」

    だって光ヴァル弱いんだもん……。初ガチャで当てたキャラだから愛着持って使い続けて、ハイパーにまでしたのにな。なんで列つかねーんだよ。

    結衣「えー。あ、そーだ!ゆきのんもやろうよパズドラ!」

    雪乃「今聞いた限りでは特に興味は引かれないわね。別に対戦要素があるわけでもなさそうだし」

    あー、まあ雪ノ下はそうだろうな。こいつがパズドラやってるところとか想像つかん。

    32 :

    由比ヶ浜買い換えたっけ?スマホに

    33 :

    まあ気にすんなよ

    35 = 1 :

    細かい設定とかは気にしないでくれると助かる
    あとアニメは未視聴、原作は10巻までしか読んでないんで、よろしく

    36 = 1 :

    八幡「雪ノ下ならディスティニーツムツムとかいいんじゃねえの。対戦っつーかスコアランキングあるし。パンさんも出てくるしな」

    何気ない一言だったつもりだが、雪ノ下の「パンさん……?」という呟きで失言に気づかされる。
    あ……やべ……。

    雪乃「比企谷君、そのツムツムとやらについて詳しく聞きたいのだけど」

    雪ノ下がやたら真剣な面持ちで俺に問いかける。なんでお前パンさんが絡むとそんなガチなんだよ。こえーよ。

    結衣「ゆきのんツムツムやる?あたしが教えてあげるよ!まずねー、このLINEっていうアプリを……」

    由比ヶ浜の説明を超真剣な目でふんふん頷きながら聞く雪ノ下。
    ていうかやべーな。雪ノ下の場合財力もあるだろうし、パンさんが絡むとなると、かなりガチの廃人プレイヤーになる可能性が高い。

    37 = 1 :

    パンさんハイに陥った雪ノ下のことは由比ヶ浜に任せ、俺は先ほどから放置されている遊戯部の二人に向き直った。

    八幡「悪いな、話が逸れて。それでパズドラがどうしたって?」

    秦野「あ、はい、実は僕らパズドラでも剣豪さんとフレ登録してるんですけど、剣豪さんがゲーセン来なくなってから急にハンネが変わったんですよ」

    ハンネ、ハンドルネームの略だろう。第二次大戦中の日記を書いてたユダヤ人の女の子のことじゃないから注意な。

    秦野「この『テル』っていうのが多分剣豪さんです」

    パズドラはハンドルネームを自由に変えることができるが、ユーザーの固定情報というのがハンドルネームと9桁のIDしかない。
    故に、突然名前を脈絡のないものに変えたりすると、フレンドからはそいつが誰なのかわからなくなったりする。フレンドのIDまで暗記してる奴なんてまずいないだろうしな。

    38 = 1 :

    相模「前にパズドラ内のメールを剣豪さんからもらったことがあってわかったんですけど」

    秦野「ちょっと前まではずっと『剣豪将軍』ってハンネだったんですよ」

    『てる』ってのは多分本名から来てる名前だろう。
    あいつの場合、『剣豪将軍』というキャラにアイデンティティーのようなものがあるわけだし、確かに突然変えたというのは気になる。

    八幡「確かにちょっと気になるな。最近ゲーセンの方でなにかあったりしないか?」

    相模「いえ……特に何かあったというのはないと思います」

    八幡「そうか。悪いが俺らもさっき聞いたばかりで何もわからん。来週から本格的に調べてみるつもりだから、お前らもなんかわかったらまた教えてくれよ」

    こちらとしては材木座不登校の原因が、ほとんど校内の出来事に絞られただけで収穫だ。
    もしゲーセンの交遊関係が原因なんて言われても何もできねえしな。
    しかし由比ヶ浜も雪ノ下も、結局ほとんど俺に丸投げだったな……。いいんですけどね、別に。

    39 :

    こういう本当に原作でも扱いそうな
    ネタは面白い

    40 :

    原作読んでないから感じたのかもしれないけど意外と仲間のいる材木座さんに感動した

    41 = 1 :

    それから下校時刻までは特に何事も起こらず、雪ノ下は何やら必死の形相でスマホをいじり、由比ヶ浜は誰かと盛んに連絡を取り合っているのか、1分おきくらいでLINEの通知音が鳴っていた。う、鬱陶しい……。
    お前マナーモードって言葉知らないの?公共の場所ではなるべく音を出さないのが常識だろ。俺なんかスマホだけでなく、自分自身すらマナーモードにしてるっつーのに。

    雪乃「……そろそろ下校時間ね。今日はここまでにしておきましょうか」

    ようやくスマホから顔を上げた雪ノ下が部活の終了を告げ、俺たちはそれぞれ荷物を持ち、教室を後にする。

    結衣「じゃあ、ゆきのん!下駄箱で待ってるね!」

    雪乃「ええ、なるべくすぐ行くわ」

    どうやら女子二人はこのあと一緒に帰るらしい。俺は誘われてないが、いちいちそんなことは気にしない。
    ……気にしないったら気にしないのだ。
    そもそも俺は自転車だしな。
    下駄箱に向かい由比ヶ浜と並んで歩きながら、とりとめのない雑談を交わす。

    42 :

    面白い

    43 = 1 :

    八幡「お前ら家真逆だけど校門まで一緒に帰るのか?それ一緒に帰るって言うの?」

    結衣「今日はゆきのんの買い物に付き合うって約束なんだー。まー、買い物って言ってもコンビニだけど」

    八幡「はぁ、仲のよろしいこって」

    結衣「なんかゆきのん、iTunesカードが欲しいんだって!」

    おい……。あの女いきなりやる気じゃねーか。ジャブジャブ様かよ。ヌト姫可愛くねーよ。

    八幡「あいつに課金の仕方教えて大丈夫か?パンさん絡みだと際限なく行く可能性もあるぞ」

    なにせ以前、UFOキャッチャーのプライズにムキになって、ジャブジャブ連コしてるところを目撃しているからな。

    44 = 1 :

    結衣「いやー、さすがに大丈夫だと思うけどねー」

    あはは、とどことなく不安げに由比ヶ浜は笑う。まあこいつはこれで、財布の紐に関してはしっかりしてるからな。由比ヶ浜がついているならそうそう無茶もさせないだろう。

    結衣「あ!ていうかヒッキーもLINEやってるなら教えておけし!」

    え?なんで知ってんのこいつ。
    ずいぶん前にLINEのゲームがやりたかったのと、小町との連絡が楽だからという理由で、アカウントは一応持っているが、こいつにそんな話をした記憶はない。

    八幡「は?いや、やってねーよ」

    とりあえず何かあれば否定するのが俺だ。ここも当然否定の一手に限る。

    結衣「いや、さっき小町ちゃんにLINEで聞いたから。今さら知らばっくれてもムダだし」

    45 = 32 :

    さすがヒッキー
    拒否してんだな

    46 = 1 :

    なるほど、犯人は小町か。まあ薄々わかってたけどね。つーかいつの間に由比ヶ浜と小町はLINEで繋がってんだよ。油断も隙もねーな。

    八幡「いや、あれだ。一応LINEのアカウントはあるが、あれは家族専用っていうか。小町専用だから」

    そう、俺のLINEのトーク欄には小町一人しかいない。
    LINEはアカウント作成にスマホの電話番号を使うため、デフォルトの設定のままアカウントを開設すると、自分の電話帳に登録されている人間で、LINEに登録済みの相手のアカウントを自動で表示してくれるサービスがある。
    これだけならば便利機能で片付くのだが、厄介なのは相手の電話帳に自分の番号が登録されている場合、相手のLINE上にも勝手にこちらのアカウントが表示される点だ。
    これを知らずにうっかりLINEアカウントを作ってしまった日には、「え、なんか比企谷LINE始めたっぽいんだけど(笑)」「ウケる(笑)なんか送ってみなよ(笑)」「えー、やだよ(笑)」「あ、そーだ、クラスのグループトークに招待してみれば?(笑)」「えー(笑)」 みたいなトークに花が咲くこと間違いない。

    47 = 1 :

    そんな小粋なトークの肴になりたくないぼっちは、細心の注意を払って設定を進めなくてはならない。
    そう、かくいう俺もかつてfacebookなるソーシャルメディアで痛い目を見た口だ。
    せっかく、同じ中学の連中のいない高校で、新しい人間関係をスタートさせようと登録したfacebookのトップページに、「もしかして知り合いかも?」とか中学の連中が表示された衝撃たるや、思わず「おぴょう!」とか変な声出たわ。
    クリック一つでお友達になれるとかどこの世界の話だよ。3年間同じ学校で過ごしてもお友達になれなかったっつーの。

    結衣「出たー、シスコン……」

    八幡「うるせえ、俺はシスターにコンプレックスはねえ。シスター以外の全てにコンプレックスがあるだけだ」

    劣等生で十分だ。はみ出しもので構わない。

    48 = 1 :

    結衣「もー!とにかくゆきのんもLINE始めたんだから、3人で奉仕部グループトークしようよ!」

    八幡「プライベートでまで雪ノ下の罵倒にさらされたくねえんだが……」

    いや、マジあいつの発言、文字に起こされたら耐えられる気がしねえよ。

    八幡「そもそも俺はあんまりLINEって好きになれねーんだよな。既読とかいう余計な機能のせいで、『あ、すいません、寝てて見てませんでしたー』とか通用しねえし」

    本当あの既読というのは厄介な機能だ。
    返事を強要されてる気がして、プライベートを縛られる感じが好きになれん。

    結衣「まあもう小町ちゃんからヒッキーのID教えてもらったし、勝手に送っておくね!」

    八幡「マジかよ……」

    なんで小町お兄ちゃんのプライバシー勝手に拡散しちゃうの?

    49 = 1 :

    スマホを取り出して確認してみると、確かに『☆★ゆい★☆』とかいう奴から登録申請が来ていた。
    俺の小町専用LINEの命もここまでか……。まあいいか。

    八幡「ほい。申請許可出しといたぞ。これ、ブロックってどうやるんだ?」

    結衣「このタイミングでそれ聞くんだ?!絶対教えないよ!!ていうかちゃんとトーク送ったら返事返してね、ヒッキー」

    なんだよ、さすがに冗談だよ。いくら俺でもいきなりブロックなんてしねーよ。いきなりブロックされんのは得意だけどな。

    八幡「あー、まあ暇だったらな」

    結衣「むー……」

    由比ヶ浜はまだ不服そうだったが、一応納得はしたようだ。

    八幡「んじゃあ俺は帰るわ」

    下駄箱で靴を履き替え、雪ノ下を待つ由比ヶ浜に別れを告げる。

    50 = 32 :

    全くの私的なことだが

    その由比ヶ浜の名前LINEのスパムで来た


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