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    元スレ菫「見つけた。貴方が私の王だ」咲「えっ」

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    402 = 338 :

    「憧、先ほどの話。貴方が裏を取ったという首謀者達の人数はいかほどなの?」

    突然話を振られた形になったが、物事に動じないと有名な秋官は余裕をもって答える。

    「多いわよ。内宮に配備された夏官の三割と思っていい」

    「ほんと塞の今までの苦労が手に取るように分かるわ、抑えようとしてもこれだから」

    「……なら、20人弱程か」

    確かに多いな、と塞は呟く。

    そして彼女は次に踵を返して再び純に向き直る。

    と、その隣に立つ誠子へと尋ねた。

    「ここに来る前に、貴方に頼んでいた事は調べた?」

    きっと誠子も純と同じ心地だろう。

    突然塞に話を振られ、誠子は確かに困惑していた。

    が、それも一瞬で、思い出した誠子はたどたどしい口調で答える。

    誠子「あの事ですか?確認してきましたけど、確かに変でした」

    誠子「今日、内宮の警備はいつも通りの配置のはずなんですが」

    誠子「何ヶ所か見て廻ってきたけど、持ち場を勝手に離れている奴が多かった。軍じゃ絶対に考えられないですよ」

    「………内宮でも絶対に考えられないよ。だからこそ、許せない」

    今までで一番剣呑な塞の声。

    吃驚して、思わず純は目を丸くしてしまった。

    403 = 338 :

    広くなった視界の向こうで、塞はまた女の妖魔に向き直る。

    「使令殿。手を貸して頂きたい、事は一刻を争います」

    『………それがあの方と、台輔のためになるのでしたら』

    「必ずなりましょう。いえ、ならなければいけない」

    「そのために私共は動いていますから。……純、誠子」

    「な、何だ」

    突如呼ばれて純は慌てて返事をする。

    塞は順番に視線を滑らせると、堅い口調で命じてくる。

    「すぐに働いてもらうよ、けど相手は多い。ここにいる使令殿のお力も貸して頂くから、失礼のないようにね」

    「私の権限で応援も掛け合ってみるけど、すぐには無理かもしれない。だから貴方たちが頼みだよ」

    力強く言われた。まだ困惑から抜け出せない純の言葉が掠れる。

    「……一体、俺達に何をしろって?」

    尋ねながらも自分たちにできることなど、この剣の腕ぐらいしかない事は分かっていた。

    「本来、貴方たちに頼もうとしていた仕事をやってもらうだけだよ」

    「………」

    「純」

    改まって塞より名を呼ばれた。

    まだ混乱している思考だったが、それでも彼女に意識を向ける。

    404 = 338 :

    彼女の鮮明な声が聞こえてくる。

    「聞いたことはない?貴方たちは確かに直に拝見した事はないだろうけど」

    「それでも、噂であれこの国の新たな王がどのような人か…少しは聞いた事があるんじゃない?」

    「………」

    指摘された純は記憶を掘り起こしている。

    そして、閃いた。

    あれはいつだったか。……確かまだここに来る前に、そう。

    理不尽に誠子と共に牢に繋がれたいた時に。

    そこの牢番と交わした何気ない会話の中で聞いたような気がした。

    ようやく立った王の話を。

    あの時牢番はなんと言っていた?

    確か―――年頃の少女であるらしい、と。


    「………!!」


    純の脳裏に、茶色の髪の小柄な少女の姿が浮かびあがる。

    符号が繋がっていく。

    それに、咲は純に言っていた。自分もつい最近ここに来たのだと……

    それはもしや、即位したから新たにここへとやってきたのだと、そう考えられないか?

    405 = 338 :

    まさか、と。

    すぐには信じられず、純は塞を見返す。

    「それを確かめるためにも純と誠子は行って」

    「その方が真実そうだとしても、違うとしても…馬鹿な考えの奴らが内宮をうろついているのならば」

    「私は内宰として、そいつらを処断しないといけない」

    「………っ」

    返事をする前に、勝手に体が動いた。

    純は握り締めていた剣を鞘に収め、踵を返そうとしている。

    なぜなら軍にいた頃のピリピリとした空気を、肌が思い出しているからだ。

    上官に命じられたのならば、純はそれを遂行せねばならない。

    後ろに誠子が続く気配を捉え、前方には先導する妖魔が待ち構えている。

    純は突き進みながら、短く答えた。

    「分かった」

    406 = 338 :

    思考が急激に冷えて、五感が研ぎ澄まされていく。

    先程の話。

    もはや相手も塞や憧に追い詰められて後がないのであれば捨て身だろう。

    そしてその件にもしや……いや、もう確信に違いが。

    純の知り合いである咲が関わっているというのなら。


    「決して失う訳にはいかない」

    「この疲弊した国がまたあの混沌とした時代に戻る事だけは…」

    「なんとしても、阻止しなくては」


    背中越しに聞こえた塞の声。

    分かっている、そんなの………

    純も絶対に御免だと思った。


    ■  ■  ■

    407 = 338 :

    一通り泣き切るとすっきりした。

    頬に出来た跡を拭い、咲は軽くそこを手の平で叩く。

    衝動も収まり、泣いて昂ぶっていた気持ちも落ち着いた。

    これならきっと大丈夫だろう。

    気遣ってくれた使令がここに戻ってきたら、立ち上がって菫の元に行く。

    遅すぎるのは分かっている、今更だけど。

    それでも腹を決めて話をしに行こうと思っていた。

    それが、ここまで自分を…咲を支えてくれた半身に対するせめてもの礼儀だ。

    罵られても、何を言われても受け止める覚悟はできている。

    散々泣いて色々と吹っ切れた。


    そんな時、ガサリと音がした。

    不自然な葉同士が揺れる音だから、もしや使令が戻ってきたのだろうかと思った。

    頬を覆っていた手のひらを離し、音がした方に顔を向ける。
     
    そこに想像した使令の姿は無く、人が佇んでいた。

    408 = 338 :

    官吏「こんな所にいらっしゃいましたか。随分とお探ししました」

    「………?」

    ニコニコと人がよさそうに笑う、恰幅のいい官吏の姿だった。

    咲があれ、と思ったのはその姿に見覚えがあったからだ。

    「貴方は…」

    確か、この前宮中で人に襲われそうになった自分を助けてくれた官吏ではなかったか?

    声が届いたのだろう、反応を返すように官吏は目を細めると、恭しく一礼をした。

    官吏「先日は、ご無事でようございました」

    ニコニコ笑う顔が、本当に人の良さそうな雰囲気を醸し出している。

    咲は「いえ、こちらこそ」と言葉を返したが……

    何かが引っ掛かった。

    まず不思議に思う。

    なぜ彼は今、そこに立っているのだろうか?

    咲ですらここが中庭のどこかも分からず辿り着いた場所なのに。

    もしや、わざわざ自分を探していたのだろうか?


    官吏「…お嘆きでいらっしゃたか。ご苦労されているのではありませんか?」

    「あ、いえ…」

    指摘されて、咲は慌ててもう一度目元の辺りを擦った。

    409 = 338 :

    大分涙の跡は引いたと思ったが、それでも見る人によっては気付いてしまうようだ。

    僅かに頬を赤くして、何でもないと伝えようとした。

    が、その前に官吏は続けて言ってきた。

    官吏「しかし、これからはご安心下さい。私共めがお側でお力添えさせて頂きますので」

    官吏「涙を流させるような事は金輪際ございません」

    「え?」

    思わず咲はぽかんとしてしまった。

    何か、変な物言いではなかったか?


    咲がそう思った瞬間。

    突如、官吏の背後より複数人の足音が聞こえた。

    それはすぐに木々を掻き分け、芝生を踏み締めながら姿を現す。

    新たにやってきたのは10人程だろうか。

    その誰もが体格が良く、着ている物も文官系の眼前の官吏とは違い厳つい印象を受けた。

    尚且つ、彼らはなぜか全員、帯剣している。

    官吏というよりは、宮中を守る守備兵なのではないかと思った。

    やっぱり変だ。

    そう咲が結論付けた瞬間、官吏の自信に満ちた声がした。

    410 = 338 :

    今回はここまでです。
    見てくださってありがとうございます。レスももの凄く励みになります。
    完結まであと2ヶ月弱ですが、よろしければ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

    411 :

    おつ
    菫さん早く来てくれぇ!

    あと2ヶ月で終わっちゃうのか…寂しいな

    412 :

    続きが気になるぅぅぅ!!

    413 = 394 :

    乙乙
    待ち遠しくて何度も更新してしまったよ

    414 :

    俺は純さんに期待、菫さんは咲ちゃんに任せ過ぎ!
    乙でーす

    416 :

    十二国記とか俺得過ぎて涙でそう。
    続き待ってます

    417 :

    乙乙
    純くんはよ
    はよ!!

    418 :

    俺たちの戦いはこれからだEND確定じゃないか

    419 :

    やっぱりあっち書いてるからこっちは打ち切られるわけか
    もうあっちだけに集中してくれよ、こっちが大作になるってワクワクしてた自分がバカみたいだわ

    421 :

    >>419のバカはほっといて期待してるから頑張って

    423 :

    このバカはマジで頭おかしいんだな…

    424 :

    俺得ssで嬉しい。
    期待してる人はすくならずいる。
    叩く人もいるけど是非完結させて欲しい。
    同時進行だって、進行してればいいじゃない!

    425 :

    いやあっちだけでいいんだが
    せめてこっちも和咲でやれば良かったのに

    426 :

    >>425
    じゃああっちだけ追ってろよ
    わざわざ書き込むことじゃない

    427 :

    だからこっちも咲和にしろって事だろ文盲

    428 :

    >>427
    なんでお前の好みに合わせなきゃいけないんだよ、アホか

    429 :

    >>427
    すっげえなお前

    430 :

    >>427
    とりあえずお前はここの1が書く和咲ものが好きだって事はわかった。
    もう和咲のとこにだけ張り付いて離れないでくれ。

    431 :

    和咲好きじゃなくただの荒らしだと思う

    432 :

    咲和じゃないスレで近ごろ見かける流れだね
    咲和要求→叩かれる→頃合い見計らって咲和好きじゃなくて荒しだと断言

    433 :

    >>431
    同意
    本当に和咲好きなら向こうにもレスしてるはず
    だけど向こうのスレでそんな形跡はないし

    434 :

    >>433
    だから余計臭うけれどな、本当に好きな方は荒らさないという魂胆だろ

    435 = 433 :

    >>434のレスで分かった
    こいつ>>422を張り付けた>>419のバカだな

    436 :

    咲は陽子の前の王に似てる感じがして不安やったけど、咲自身の設定を考えたら勤勉家やしええよな。
    他国の王や麒麟も今後書いてくれるなら歓喜やわ。
    期待してます

    437 :

    むしろ他国を書くべし

    438 :

    洋榎のとこ見たい

    もちろんこれがしっかり終わってから

    439 :

    そもそも一つ一つの国を最後までやるなら今年中には終わらないわけだが…
    他国も見たいって人は途中で投げ出せって言ってるのか、それともおまけみたいに短編が欲しいって言ってるのか

    440 :

    官吏「私共は、お迎えに上がったのです」

    言い切る声。それは反論を許さない圧力を感じさせた。

    だからこそ先ほどの疑惑が蘇ってくる。

    咲は従うべきではないと判断した。

    何よりここを動くなと言われている。

    使令が迎えに来るまで、他の誰とも咲は一緒に行きはしない。

    そのための意思表示をする。

    「結構です。私はここで供の者を待っているので、動くつもりはありません」

    すると何故か官吏はうん、うんと頷く。

    官吏「ええ、ええ。分かっております、あの恐ろしい台輔の妖魔の事でございましょう」

    官吏「本当にいつの時も貴方の側に控えていて、邪魔で仕方無かった」

    「…………」

    官吏「こうして、僅かでも離れてくれる瞬間を待っていたんです」

    官吏「折角顔を覚えて頂いたのに、貴方にはいつの時もあの小憎たらしい、融通の利かぬ台輔が」

    官吏「またはその手の妖魔が付いていましたから。こうしてお一人になられる瞬間をずっと待っていたのです」

    ニコニコ笑いながら言い続けているが、それは笑って言う内容ではない。

    鈍い咲とて、これで気付けた。

    徐に座っていた岩より腰を上げる。

    441 = 338 :

    自分でも不思議だが、驚く程鮮明にこの状況を把握し、官吏達と対峙する決意をしていた。

    だって許せないだろう。

    「随分な言い様ですが……私からすれば、彼女達にはたくさん助けてもらってます。感謝もしています」

    「彼女達の事を貶す言葉、訂正して下さい」
     
    はっきりと言い返す。

    と、ようやく官吏の顔から笑顔が消えた。

    変わりに随分と哀れんだ表情をされる。

    官吏「騙されているのです、貴方様は」

    官吏「だってあの者達のせいで、辛い思いをしていらしたのでしょう、ここで泣いていらっしゃったのでしょう?」

    咲は変な所を見られたと恥じる。

    だが気を取り直すと官吏に向かって、首を左右に振り否定した。

    「違います。これは私の不甲斐無さが許せずに泣いていただけです」

    官吏「そんな………王である貴方様が、そう畏まること事態がすでに可笑しいのです」

    官吏「悩む必要はございません、何かに手を煩わす事も無い。貴方はこの国では誰よりも高い地位におられるのですから」

    官吏「そのためのお手伝いをさせて頂きたいのです」

    「必要ありません。私は、私を支えてくれる人達と一緒にこの国の事を考えていきたい」

    「貴方の言っている方法では、まるで私は真綿に包まれて何も考える必要がない、虚像の王ではありませんか?」

    官吏「…………」

    442 = 338 :

    咲の言い分は真っ当だ。

    だからこそ、それを聞いた官吏の表情からは哀れむものすら立ち消える。

    後に残ったのは無表情なそれ。

    そして、その声も感情が抜け落ちたようだった。

    官吏「やはりあの綺麗ごとばかりぬかす麒麟が選んだ王だ」

    官吏「見た目もか弱いから、煽てていればこちらの意のままになると期待したが……もはや手遅れだったか」

    先ほどとは正反対の態度。

    おそらくこれが官吏の本性なのだろう。

    「貴方達はなぜそこまで菫さんを、台輔の事を厭うのですか?彼女はいつだって誰よりもこの国の事を想って…」

    官吏「それが綺麗事だというのです!」

    官吏「正論を掲げて、その通り物事が進むのなら主上がおらずともこの国はここまで荒廃する事はなかったでしょう」

    官吏「そして、それは私共にも同じ事が言える」

    「……そんな。今からでも、心を入れ替えて」

    官吏「できるはずがない。正規の王がいて、正道を進もうとする国でどう生きていくかも分からない。資格もないでしょう」

    官吏「……様々に手を染めてきましたから。だから我々に逃げ道はないんですよ」

    官吏「反抗的ではあったが今まで大人しかった内宰も扱い辛くなってきた。それにあの裏切り者のせいで司刑を担う秋官にも感付かれている」

    官吏「こうなったら、もう最高権威である貴方を手中に収めるしか、私達には生き残る道がない」

    「………」

    443 = 338 :

    咲は絶句する。

    自分たちの保身だけに走る官吏の姿勢、それは身勝手と言い切っていい。

    官吏「本当は、懐柔したかったのですが。……無理ならば」

    そう言って官吏は背後の兵士から鞘に包まれた刀身を受け取る。

    鈍い輝きが目に刺さった。

    官吏が抜き取ると、背後の守備兵達も得物を手に取る。

    普通の剣ではなくて、なにか細かな細工が施されたものだった。

    官吏「王はもはや神と同等です。ただの武具では御身に傷一つ負わせられないでしょう」

    官吏「でも、これはそんな不死者に対峙するための武具です」

    「……冬器、ですか」

    官吏「よく学んでいらっしゃる。それならば話が早い」

    「私を脅すのですか?」

    官吏「脅すだけにさせて頂きたいものです」

    官吏「貴方が私共に組して頂けるなら………気に入らぬ台輔とて、いずれはこちらに従うしかないでしょうから」

    麒麟は王にだけは逆らえないから、と官吏は笑う。

    咲は眩暈を覚えた。

    と、同時に今までの様々な出来事が鮮明に脳裏によみがえってくる。

    444 = 338 :

    こうして眼前の官吏と対峙した今、咲の胸中は悲しみに満ち溢れていた。

    だって、話していて官吏の口からただの一度もこの国に対する憂いを聞くことはなかった。

    ただその保身のためだけに彼らは動いている。

    咲が脅しに屈して彼らに従ってもこの国は変わるのだろうか?

    いいや、変わらないだろう。

    むしろ天は咲を見放すと思う。

    きっと、それでは咲が願った世界は永遠に訪れないだろう。

    かつて陰の如く生きていた自分のような境遇の人を生み出さないためにも、

    この国は彼らが捨てられない悪習を捨てて生まれ変わらなければならない。

    そのために智美達や、半身である菫はこの身を支えてきてくれたのだから。

    ならば彼女らのためにも咲が今、眼前の官吏達に言い返す言葉は決まっているだろう。

    官吏「主上、どうかご一緒に」

    冬器をちらつかせて、官吏が咲へと言い寄ってくる。

    もはや脅しに違いない。

    445 = 338 :

    自然と咲の腹に力が籠った。

    そして考えるよりも早く、反射的に唇が開く。


    「お断りします」


    多分咲はこんなにも明確に、相手に向かって意思表示をしようとしたことはないだろう。

    それでも彼らに屈しないために、今言い切らねばならないのだと分かっていた。

    身勝手な官吏達に組しろと脅されて。

    それに対して「断る」と。

    はっきりと力強い声で咲は言い返した。

     
    官吏「………」


    咲の言葉を聞いて、官吏は笑った。

    もしかしたら彼は咲がそう答えるのを分かっていたのかもしれない。

    そして咲が答えた事が次の場面へと移り変わる合図の一つでもあった。


    官吏らが、目の前で冬器を構えるのを咲は見ていた。


    ■  ■  ■



    446 = 338 :

    塞との話し合いも随分前に終わり、今までその内容を自分の部屋で纏めていた。

    それが出来上がったから携えて、のこのこやってきた訳だが。

    あれから時間も経ってるし、報告するべき人物はきっといるだろう。

    と、智美は内宮にある台輔の居室へと続く通路を歩いていた。

    奥まったそこはまだ行き来する人の数は少ない。

    正寝だけは、台輔である菫の権限で信頼の置ける者しか入れないようにしているからだ。

    だから本心では守備の点でかなり不安は抱いていた。

    信頼できる者だけになると、どうしても人手が足りないのだ。

    まぁ、そんな心配は内宰の塞との調整が済めば今より安心できる環境にはなるだろう。

    塞の言動と姿勢から分かるが、あの官吏は信用しても良いと思う。

    そのための努力もしてくれている。

    なにより信頼できる仲間ができるのは本当に有難いのだ。

    一人で色々な事を考え続けるのには限度がある。

    智美とてそのための努力を怠る気はないが、所詮、生身の体だ。

    仙籍にいるとはいえ、疲れない訳もない。

    それに今はまだいいがこの状態が長く続けば、いつかは判断に躓く時が来るかもしれない。

    智美(それまでに、もう少し内宮自体を綺麗にできればいいんだが)

    安堵してぐっすり眠れるぐらいになってくれれば尚良い。

    447 = 338 :

    うんうん、と一人頷きながら何度目かの通路の角を曲がる。

    ふと視線の先に違和感を覚えた。

    遠目だったが、それが何なのかすぐに分かった。

    今までの思考が一気に吹っ飛んでしまう。

    慌てて人気のない通路を横切り、違和感の正体元へと辿り着いた。

    智美「ちょっ……!?菫ちん、どうしたんだ!!」

    人気のない通路の途中で蹲っている菫の姿が見えた。

    智美は手に持っていた荷物を足元に置くと、蹲る菫を助け起こそうとする。

    そして気付く。菫を支えるために触れたその肩が小刻みに揺れている事に。

    智美「…菫ちん」

    一体何があった?

    智美が問いかけた瞬間、支えようと伸ばした腕を反対に掴まれた。

    そして今まで俯き加減だったその顔が僅かに上がった。

    額や米神に脂汗が浮いていて、どこか朧気に智美を見上げる紫色の瞳は必要以上に潤んでいる。

    「見つけ出せない……駄目だ、どこに……」

    智美「え?」

    聞こえてきた声は、断片的過ぎて智美はすぐに理解できなかった。

    そんな智美の困惑などお構い無しに菫は言い募ってくる。

    「さっきまで確かに目の前にいたのに。でも、消えた………」

    「私は、探したいのに、胸が苦しくて……集中できない」

    智美「……菫ちん?」


    「――――王気を、辿れない」

    448 = 338 :

    風邪気味につき今回はここまです。
    あと期待して頂いてる方には申し訳ないのですが、他国を書く予定はないです。

    次はまた来週の木曜に投下予定です。それでは見て下さってありがとうございました。

    449 :

    おつ
    うぐぉおおお気になるところで
    風邪お大事に

    450 :

    おつ

    お大事に


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