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    元スレ勇者「パーティ組んで冒険とか今はしないのかあ」

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    151 :

    更新はまだか
    テンプレキャラとは一味ちがう戦士たちに期待してんだぞ

    152 :

    しばらくぶりに再開します

    153 = 152 :


    「……ちょ、ちょっと待ってくれ。今なんて言った?」

    「だから、勇者パーティがこの街に訪れているって……」

    「ちがう。五日前って言わなかったか?」

    「うん、私の情報が正しければ五日前のはずだよ」

    「……五日前」

    戦士「お嬢ちゃん、なにか他に情報はないかい?」

    154 = 152 :


    「うーん、現時点ではあとは侵入地点が判明しているけどやっぱり魔方陣をくぐってきたみたい」

    僧侶「私たちが来るより先に勇者一行は来ていた、か」

    「それがなにか問題あるの? あ! もしかしてその勇者パーティがお仲間とか?」

    「……仲間、なのか?」

    「あ、じゃあ知り合いとかかな?」

    戦士「……よく、わからない。少なくともボクはボクたち以外がここへ来ることになっているなんていう話は聞いていないからね」

    「なんかどうかしたの、様子がおかしいけれど」

    「んー、あのさ。ひとつ気になったんだけど。勇者が来たって言っただろ? なにを根拠にこの魔界への侵入者が勇者たちだってわかった?」

    「それについては私も実は気になってたんだよね。まだまだ情報があやふやだからね。ただ、侵入者がいることは間違いないよ」

    155 = 152 :



    「うーん、じゃあもしかしたらそいつらは勇者じゃない可能性もあるんじゃないか?」

    「勇者を騙るニセモノってこと?」

    「そうそう」

    「どうだろうねえ。魔王様がわざわざ姿を隠しているという事実があるからねえ」

    僧侶「現時点では何とも言えない……そういうことか?」

    「まあそんなかんじかなあ」

    「うーん、難しいなあ」

    「…………」

    戦士「黙り込んで、どうしたのお嬢ちゃん? 熱心に勇者くんの顔を見てるけど」

    156 = 152 :



    「んー、ていうかさ。戦士のお兄さんってばこの男の人のことを『勇者くん』って呼ぶけどなんで?」

    戦士「え? えーっとだね、うーん……」

    僧侶(このバカ……迂闊すぎる)

    魔法使い「彼は勇者に憧れて、昔から一心不乱に強くなるためだけに修行を積んで来た。
         それで勇者くん、と戦士は呼ぶ」

    「お、おう……そうだぞ?」

    (なんていうか微妙すぎるフォローだがナイスだ、魔法使い!)

    「なにそれ、変なのー。いやあお兄さん、面白いなあ」

    「おう、当たり前だろ」

    「うん、本当に面白いよ。見ていて退屈しないっていうかさ。
       リアクションとかもいちいち大きいし、ちょっとのことですぐ驚くもんねー」

    157 = 152 :



    「……なんかバカにされてないか、オレ?」

    「そんなことないよ。ただ見てて愉快だなあってだけだよ。だって魔物がしゃべっただけで、急に叫び出したりするし」

    戦士「たしかにねえ、勇者くんはクールさにいちいち欠けてるよね。少しはボクを見習ってほしいよ」

    僧侶(……ん? なにかおかしくないか?)

    「ていうか、これからどうする? オレはオレたち以外の侵入者っていうのが気になるんだけど」

    戦士「そうだね、ボクも個人的に気になる。とりあえずどこか落ち着く場所で今後の行動方針を考えたい。
       そしてできれば、キミにも来て欲しいんだよねー」

    「私? どうして?」

    158 = 152 :




    戦士「魔界の情報通からいくつか聞きたいことがあってね、どうだい? ついてきてくれたらランチぐらい奢るよ?」

    「お兄さんのもってるお金、私があげたのだけどね」

    「「それを言われてしまうと、なにも言い返せないんだけどそこをなんとかさあ? ね?」

    「うーん、ちょっと待ってね…………いや、まあ大丈夫かな。いいよ、今回特別にキミたちに協力してあげるね!」

    「助かるよ! ありがとう!」

    「ただし、ひとつだけ言うことを聞いて欲しいんだ」

    戦士「なんだい、なんでも聞いちゃうよ」

    僧侶「なんでも、とか言うな。こちらが許容できる範囲の頼みだ」

    「べつに条件って言っても大したことじゃないよ。ただ、私が指定する場所に行こうってだけだよ」

    僧侶「指定する場所? いったいどんな場所だ?」

    「とってもイイところだよ」

    159 = 152 :


    ……………………………………………………


    戦士「ずいぶんと森の中を歩かされてるけど、いったいどこへ行ってるんだい?」

    「もうそこまで来てるよ、目的地に。ほら、あれあれ」

    僧侶「けっこう大きい建物だな、あそこになにかあるのか?」

    「ふふっ、なんだと思う? 着くまでに考えてみてね」

    戦士「もう着いちゃうじゃん」

    「はーい、時間ぎれー! 着いちゃいましたー!」

    160 = 152 :


    「おじいーちゃーん! 入るよー?」

    僧侶(見たところ普通の民家……か。念のため警戒しておいたほうがいいか?)

    「さあ、みんな入って入って!」

    …………………………………………………………


    魔法使い「子供がいっぱい……」

    戦士「まるで学校みたいだね。机とイスがあって……今はランチタイムかな?」


     「おやおや、またお友達をつれてきたのですか?」


    「おじさん、急にごめんねー。みんなもげんきー?」

    「わあ! お姉ちゃんまた来てくれたんだー」 「今はご飯の時間なんだよー」 「ねえねえ聞いてさっきねー」

    僧侶「人間の子供と……ドワーフ、だと?」

    ドワーフ「ふうむ、あなた方はいったい?」

    161 = 152 :


    「紹介するよ、おじさん。この人たちは街でバイト中に偶然出会って、うちの店で支払いを踏みた襲うとした人たちだよ」

    「おい! 事実と言えば事実だが、もうちょっと印象のよくなる紹介しろよ!」

    ドワーフ「はあ……それはまた破天荒な方々なようで……」

    「第一印象を悪くしておくと、あとからなにか人がよく見えるような行いをした時に、高評価をもらえるよ?」

    戦士「第一印象が悪いのはダメだし、そんないやらしい考えは捨てなよ、お嬢ちゃん。それで? どうしてボクたちを……」


    「お兄さんたちだれー!?」 「お姉ちゃんのおともだちー?」 「うわあ本物の剣だあ!」


    戦士「ちょ、ちょっとボクがナイスガイで迫りたくなるのはわかるけどキミらみたいなちっちゃい子供が剣に触るのはダメだよ」

    「ふふっ、久々の新しい来訪者にみんな興味しんしんなんだねー。そうだ、せっかくだからみんなご飯を食べてもらったあとで遊んでもらいなよ?」

    「ほんとお!?」 「お兄ちゃんたちあそんでくれるのー?」 「あそぼおっ!」

    戦士「えぇ!? ちょ、ちょっとボクらにはやるべきことがあるんだよ!」

    162 = 152 :


    「いいじゃーん。ちょっとぐらいこの子たちの相手をしたってバチは当たらないでしょ?
       それに、その分のお礼はきちんとさせてもらうからさ」

    僧侶「……まあ、少しぐらいならいいんじゃないか?」

    「おっ! お姉さん、話が早くて助かるよ」

    戦士「まさかキミがそんなことを言うなんてね……ちょっとだけなら相手するよ」

    「よくわかんねーけど遊べばいいんだろ? よしっ! お前らなにしたい!?」

    …………………………………………………………

    163 = 152 :


    「どうしたどうした!? 捕まえてみろー!?」

    (なぜかこうしてガキんちょたちと遊んでるわけだが……。
      オレはカラダをはって鬼ごっこ。そんで魔法使いが……)

    魔法使い「……」

    「わーすごーい」 「こんなに多い数でできる人はじめてー」 

    (お手頃なサイズに切った木でジャグリングとか言うのをしている。最初の三本からどんどん数を増やして今は六本の木でジャグリングしている。
      たぶん、魔法を使ってるな。で、次に僧侶はと言うと……)

    僧侶「この世界は魔王と勇者から始まりました。魔王と勇者は常にたたかっていました。やがて二人がたたかうための海が広がり島が浮かび上がりました。
       大地はどんどん広がり魔王と勇者はたたかいのあいだに自分たちの家族を作り、そして……」

    「それで、それで?」 「早く続き読んでー!」

    ( 僧侶は子供たちにおとぎ話の音読をしていだ。なんか意外なように思えるけど、オレたちと話しているときは全然声のトーンがちがう。
      心地のイイ声なのと読むのがうまいせいなのか、子供たちもすごい熱心に聞いている。そんで、最後に戦士のヤツは……)

    164 = 152 :



    戦士「ま、まだ……つ、続けなきゃダメなのかい……ぐぐっ……!」

    「えーもうげんかいー?」 「もっとできるだろー」 「がんばれがんばれー」

    (戦士はなぜか逆立ちを子供たちからしいられている。すごいツラそうだ……なんでアイツ逆立ちしてんだろ、うわあ)

    「まてー」 「おとなげないぞー」 「はやいよー」

    「たとえ鬼ごっこだろうとオレは全力だ!」


    ……………………………………………………………


    戦士「も、もう……と、とと当分のあいだ、逆立ちは……ハァハァ、いいや……」

    「ずっと逆立ちさせられていたな」

    「お兄さんたちおつかれー。子供たち、すごく楽しそうだったよ、ホントにありがと」

    165 = 152 :



    ドワーフ「私からもお礼を言います。子供たちがとても生き生きしていてよかったです」

    僧侶「それはいいんだが、どうして魔物であるあなたが人間の子供たちの面倒を見ているんだ?」

    ドワーフ「現役を退き手持ち無沙汰になりましてね。ただ老いるのを待つよりは、こうして新しい風となる子供たちと触れ合おうと思いまして」

    僧侶「いや、私が言いたいのはどうして人間の子供の面倒を見ているか、ということだ」

    ドワーフ「べつに、大それた理由などはございませぬ。ただ流れに乗っかってたら人間の子供たちの面倒を見ることになっていた……それだけです」

    「おじさんは子供たちに簡単な勉強を教えているんだ、字の読み書きができるだけでもできない人と比較すれば、すごい差だからね」

    「……魔物が人間に勉強を教える、か」

    ドワーフ「あなたはそのことをおかしいと思いますか?」

    「え?」

    166 = 152 :



    ドワーフ「魔物である私が人間の子供たちに勉学を教える、なるほど、たしかにありふれた光景ではないでしょうな。
         しかし、私たち魔物もあなたがた人間にも共通しているものがあります。なにかはわかりますな?」

    「……こころ、かな?」

    ドワーフ「そうです。我々は姿形こそちがえど同じこころを持つ存在です。そして、私が子供たちに施しをする理由はそれだけで十分なのです」

    「……」

    戦士「なかなかどうして含蓄のある言葉だね。あなたみたいな方ばかりだったら、世界は今よりずっと平和だったろうね」

    ドワーフ「私のような考えをもつ者は少なくはないはずです。事実、私のように人間地区で生活している魔物は意外といるのですよ」

    「そうだよ、そうじゃなきゃ、私とおじいちゃんが知り合うことなんてまずなかったんだから」

    ドワーフ「そうですな」

    167 = 152 :


    (世界にはたしかに人と魔物が手を取り合って生きていける場所がある……少なくともこの魔界には)

    戦士「まっ、なかなか興味深い話なんだけど、それよりもボクたちは今、どうしてもやらなければ行けないことがある」

    「そうだったね。子供たちのお守をしてもらったんだ。なにかお礼をしようと思っていたところだよ」

    戦士「じゃあ単刀直入に聞こうか。魔界の帝都に行きたい。行く手段は?」

    「帝都に、ねえ。いったいなんの用があってかな?」

    「それは……」

    「いや、その前にキミたちは何者なのかな? 来訪者さんたち?」

    168 = 152 :


    ドワーフ「来訪者? まさかこの方たちは……」

    「そう、そのとおりだよ、おじーちゃん。この人たちは魔界の外から来たんだ」

    ドワーフ「なるほど。そうなると、残念ながら子供たちの相手をしてもらっているとは言え、無条件にあなたがたの要求を聞くわけにはいきませんな」

    「まずキミたちの正体を教えてもらおうか。話はそこからだよ」

    戦士「…………」

    戦士(これは誤魔化せそうにない、雰囲気だね。さて、なんて答えるかな、勇者くん?)

    「オレたちは……」

    169 = 152 :

    今日はここまで

    このSSと関わりがある関連SSを挙げておきますのでよろしかったから見てください
    なお見なくても全然このSSの内容がわからないなんてことはありません


    神父「また死んだんですか勇者様」
    http://sp.logsoku.com/r/news4vip/1381939133/
    魔王「姫様さらってきたけど二人っきりで気まずい」
    http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs

    172 :

    再開します

    >>171すいません!ありがとうございます!

    173 = 172 :


    …………………………………………


    「ここが、あの女の子が言っていた地下水路か」

    僧侶「当たり前だが暗いな」

    戦士「いくら人間地区から魔物地区への境界を超えられないとは言え、このボクがこんな場所を歩くハメになるなんてね」

    僧侶「勇者、お前は昨日の疲れは残ってないのか?」

    戦士「昨日はずいぶんと勇者くんの訓練にボクと僧侶ちゃんは、付き合わされたからね。
       まあ結局はボクら二人に勇者くんがボコボコにされただけなんだけどさ」

    「……次は絶対にオレがボコボコに仕返してやるよ。ていうか昨日は夜遅くまで付き合わせちゃったけど、二は疲れてないのか?」

    僧侶「まだ多少は疲労は残っているが問題ない。お前こそ大丈夫なのか?」

    「それが全然疲れてないんだよな、まだまだ全然動けるぜ」

    戦士「ところでこの地下水路をぬけて魔物地区に着くにはどれぐらいかかるんだい?」

    リザードマン「ミレット……人間地区を抜けるには一時間はかかるだろうな」

    174 = 172 :


    「一時間、か」

    戦士「一時間もこんなカビ臭い場所を歩くのかあ。やだなあ……」

    僧侶「そうか、私としてはもっと長い時間歩くのかと覚悟していたから安心したぞ」

    リザードマン「すまないが我慢してくれ。諸君らが正規のルートで我々の地区に来ることはまずできなかっただろうからね」

    僧侶「憲兵に戸籍確認とかされては仕方が無い。むしろあなたは私たちに無条件で協力してくれているんだ、感謝しなければならない」

    「ああ、改めて礼を言う。ありがと」

    リザードマン「礼なら彼に言ってくれ」

    「ドワーフ、か?」

    リザードマン「彼に頼まれなければ俺は、諸君らに協力しようとは思わなかったさ」

    戦士「ずいぶんと彼のことを信用してるみたいだね」

    175 = 172 :



    リザードマン「信用、と言うよりは信頼だな。彼はかつては私が在籍していた軍学校の教官だった……思い出すだけでも震え上がる」

    戦士「教官、あの穏やかそうな彼がかい?」

    リザードマン「現役を退いた今でこそずいぶんと穏やかになったが、当時は我々にとっては畏怖の象徴とも言うべき存在だった」

    「へー、そんなにコワイやつだったのか。でもそんなコワイんだったらキライになっちゃいそうだけどな」

    リザードマン「はは、当時はキライだったよ。まあ、あることがきっかけでね、色々変わったのさ」

    僧侶「ドワーフが教官か……私たちの国では想像つかない光景だな」

    「そういうお前だって、昨日ガキんちょたちに本を読んでいるときは本物の僧侶みたいだったよ」

    僧侶「私はもとから本物の僧侶だ。しかも仕事がら音読などをする機会は少なくな……!」

    魔法使い「……なにかいる」

    176 = 172 :



    「なんだこの魔物は……人間のカラダに馬のカラダ?」

    リザードマン「……ケンタウロスを見るのは初めてか?」

    僧侶「無理もない。ここ百年の間に発見された新種だからな」

    リザードマン「おい、キミたちは……」

    ケンタウロス「ギイいいぃ……うああああああぁぁぁ…………っ!」

    戦士「ちょっ……僕らに向かって突進してくるってことは敵ってこと!?」

    僧侶「どうなっているこれは!? あなたの味方じゃないのか!?」

    リザードマン「わからん! とにかく構えろ! くるぞっ!」

    177 = 172 :



    「なんかよくわかんねーけど、行くぞ!」

    僧侶「昨日の成果を見せてみろ!」

    「りょーかい!」

    ケンタウロス三体が突っ込んでくる。
    勇者は地面を蹴一番左のケンタウロスにむけて飛びかかる。地面を満たす水が飛沫をあげる。

    (勢いが、やばい……!)

    正面からぶつかれば間違いなくやられる。咄嗟に跳ぶ。ケンタウロスの頭上を超えて背後に回る。

    戦士「勇者くん! ケンタウロスと真っ向勝負はやめるんだ!」

    魔法使い「ケンタウロスは魔物の中でも新種であり上位種。てごわい」

    リザードマン「一体は俺がなんとかしよう。だから諸君らで残りの二体はなんとかするんだ!」

    「わかった!」

    178 = 172 :



    勇者は鞘から剣を抜くと同時に背後から飛びかかる。剣を上段から振り下ろす。
    が、ケンタウロスの長い尾が鞭のようにしなり、剣を受け止められてしまう。
    ケンタウロスが勢いよく振り返ると同時に、いつの間にか手にしていたトマホークで斬りかかってくる。
    やむなく剣を手放す。背後に飛び退きなんとかトマホークをやりすごした。

    僧侶「やはり一対一の勝負で、しかもこの狭い地下水路では分が悪いな」

    戦士「そうだね、キミらには厳しいかな」

    「まったく……残念なことにな」

    戦士「だけどこの地下水路という地理は、逆に利用することもできる」

    勇者と同じようにケンタウロスとの格闘をこなしていた僧侶はローブを脱ぎ捨てる。

    戦士「勇者くんのサポートは魔法使いちゃんに任せる。僧侶ちゃん、キミのサポートはボクが引き受けよう」

    僧侶「どうやら今回はそのほうがいいようだな」

    「……サポート頼む、魔法使い」

    魔法使い「まかせて」

    179 = 172 :


    魔法使い「一瞬でいい。あなたはあの魔物の動きを止めて」

    「オッケー!」

    魔法使いが火球のつぶてを魔法でケンタウロスめがけて放った。この通路では迂闊に強力な呪文は使えない。
    火の玉をケンタウロスはあっさりと両の手のトマホークでなぎ払う。一瞬だけスキができる。
    勇者は魔物の足もとをすり抜けるようにスライディング。水が弾ける。
    ケンタウロスの背後に回ると同時に尻尾に巻き取られていた剣の掬を掴んで、力づくで奪い取る。

    「今だ……!」

    剣を下段からケンタウロスの胴体めがけて振り上げる。だが、それよりも先にすでに敵のトマホークが勇者に向かって振り落とされる。
    金属と金属がぶつかる甲高い音が通路に響き渡る。咄嗟に勇者は剣の起動を変えてトマホークを受け止める。

    が、もう片方のトマホークは完全にフリーだった。

    「ぐっ……!」

    斧が勇者に振り落とされる……否、突然地面から生えた氷の突起がそれを受け止めていた。

    魔法使い「本当に、一瞬だけの足止め……」

    「悪い、今のオレにはこれが精一杯だ」

    魔法使い「……上出来」

    ケンタウロスの足もとの水が瞬く間に凍っていく。ケンタウロスの足を氷が覆って行く。

    180 = 172 :


    「今度こそもらいだ!」

    未だになにが起きているのかを、理解できていない魔物に向かって勇者は跳んだ。
    だが、ケンタウロスはトマホークで勇者を斬りつけようとする。
    地面を蹴る。氷化した地面を滑りケンタウロスの足もとに飛び込む。
    同時に剣をケンタウロスの腹に向ける。肉の切れる音。ケンタウロスの腹肉を剣先が切り裂く。


    ケンタウロス「うぐやゃあああああああぁああぁあぁあぁ」


    断末魔の叫び。確かな手応えを感じ勇者が手のひらを強く握りかけたときだった。


    戦士「魔法使いちゃん、氷の壁! でっかいの作って!」

    戦士の言葉が終わるか終わらないかのところで、一瞬で水が氷に豹変し、それが勢いよく隆起する。
    あっという間にできた氷壁。その壁の内側にいた僧侶が、壁を飛び越えて外側へ。

    僧侶「伏せろ!」

    強烈な爆音と衝撃に混じって低い叫び声。

    181 = 172 :




    「なっ……なんだ今のは……?」

    僧侶「び、びっくりした……」

    「なんでお前がびっくりしてんだよ」

    僧侶「いや、魔法使いに渡された球体を指示通りにケンタウロスの口に突っ込んでみたんだが……ここまでの威力とはな……」

    魔法使い「あれは私の魔法の術式を組み込んだ魔具の一種で、ある一定量の魔翌力を送り込むことで時限式の爆弾となる。私はファイアボールって呼んでる」

    リザードマン「……まるでハンドグレネードのようだ」

    戦士「おっ、さすがだね。あのケンタウロスを一人で倒してしまうなんてね」

    「はんどぐれねーど? なんだそりゃ?」

    僧侶「手投げ式の爆弾だ。わが国にもあるが、未だに発展段階であまり使われてはいない。
       本で読んだことがあるが、魔界ではすでに実践で投入されてるらしいな」

    182 = 172 :


    リザードマン「用途別に種類わけされていてなかなか便利だからな」

    戦士「そういえばうちの国では、ピンを抜いてから爆発するまでの時間が長い上に、タイムラグが安定しないとか問題になってたなあ。
       投げたはいいけど時間差がありすぎて投げ返されて負傷したとか言って、裁判沙汰にもなっていたな」

    「よくわかんねーけど、武器とかも色々変わっているわけだ……って魔法使い、大丈夫か? 少し顔色悪いぞ?」

    魔法使い「いささか疲れた。けど大丈夫」

    「おいおい、本当に大丈夫かよ。なんなら少し休んだって……」

    魔法使い「その必要はない。それに……そんな暇はないみたい」

    「え?」

    次の刹那。地下水路の水がミシミシと音を立てて高速で凍りついて行く。
    魔法使いが一部だけを氷化したのに対して今度は視界に映る限りすべての水が凍っていた。

    「我らのペットをずいぶんあっさりと殺してくれたなあ」

    183 = 172 :



    僧侶「……何者だ?」

    「俺は礼儀を重んじるタイプだからな。本来なら名乗ることぐらいはしたいんだが……まあその必要もないか」

    戦士「キミたちは……」

    「もしかしたらここで貴様らは死ぬかもしれないからなあ! せいぜい生き延びてくれよなあぁ! せっかく出会ったのに名前も知ることなく[ピーーー]なんて忍びないからな!」

    「なっ……!」


    赤いローブを来た三人組が氷の地面を蹴って一斉に襲いにかかる。

    184 = 172 :


    「新手か! 次から次へと……!」

    剣を構えようして気づく。膝下まで絡みつくように凍りついていて身動きが取れなくなっていることに。

    戦士「しまった……!」

    魔法使い「……」

    魔法使いが小さくつぶやく。ミシミシと軋む音ともに氷が壁となっていっきにせり上がり、通路を防ぐ。
    さらに魔法使いが火術を唱えようとしたときだった。分厚い氷壁が紙でも破るかのように、あまりにもあっさりと砕かれる。

    戦士「うっそーん! あの厚さの氷をああもあっさりと破るなんて!」

    「魔法使いの術か。その若さでなかなかの使い手のようだが、まだまだ二流の域を出ていないな」

    僧侶「……チッ」

    不意に僧侶が拳をかかげた。拳を地面に打ちつける。細腕からは想像もできないほどの衝撃とその波が地面を伝う。
    地面に亀裂が走る。全員一斉に足に絡みついていた氷から逃れ、臨戦体勢をとる。

    「ナイスだ!」

    リザードマン「相当な手練れだ、さっきと同じようにツーマンセルでかかれ!」

    戦士「言われなくても!」

    185 = 172 :



    「貴様が勇者だな」

    「……どうやってそれを知った?」

    「さあなぁっ! 知りたきゃ腕ずくでねじ伏せるんだな、この俺を!」

    ローブを来た一人が広げた手のひらを勇者に向ける。距離は十分に開いている、魔法かなにかを仕掛けてくるのか……と構えようとした瞬間だった。
    謎の男のグローブをはめた手が淡く光る。光の球を見た、と思ったときには既にそれは高速の弾丸と化して勇者に襲いかかった。

    「!」

    横っ飛びに避ける。光弾が一瞬前まで勇者がいた位置を直撃する。水が弾ける。地面は深くえぐれていた。

    「なっ……喰らったらやばいじゃねえか!」

    「的当てゲームといこうか。何発まで避けられるかな?」

    男の手が再び光る。光の球の出現。男の手を離れ、凄まじい速度で勇者めがけて飛んで行く。
    勇者も先ほどと同じ要領でよける。が、もうすでに男の手には光弾ができていた。しかも次は二つ。

    「……くそっ!」

    186 = 172 :



    二つの光弾が勇者めがけて飛ばされる。これもかろうじて避ける。いや、わずかに腕を掠めている。籠手の光が触れた部分は消失していた。
    だが、その光景に息を飲む暇すらない。光弾はすでに眼前にまで迫っていた。奇跡的に頭を低くしてやり過ごす。

    (これじゃあ、あと数分どころか次か次の次でやられる……!)

    「これは……」

    不意に男の周りの氷が消え失せる。
    男の周辺の氷は数千本の鋭い針へと姿を変えて、男を囲っていた。

    魔法使い「……逃しはしない」

    「なかなか器用な魔法を使う。俺の大味の魔法とはえらいちがいだ」

    感心したような男の口ぶり。しかしそこには微塵の焦りもない。
    男は体勢を低くしたと同時に目の前の氷針へと自ら突っ込む。遅れてすべての氷針が男に飛ぶ。

    魔法使い「……!?」

    氷の大半は男が立っていた地面をえぐるだけに終わった。残りの氷の針は男が自ら進んで突っ込んだために刺さったものの、まるで意に介した様子はない。

    187 = 172 :


    「この程度の攻撃が聞くと思うのか!」

    速い……勇者へ迷わず男は突進してくる。勇者が剣を構えようとしたときには男はすでに目の前にいた。

    「……ぐあぁっ!」

    腹に重い衝撃を喰らった、と思った。男の拳が勇者の腹をたしかに捉えている。さらに追撃で蹴りが勇者の顔面に炸裂する。
    勇者が勢いよく吹っ飛び壁に背中から衝突する。

    「かはっ……!?」

    圧倒的な実力の差が二人の間にあった。
    視界が明滅して安定しない、まるで脳みそをかき回されているかのようだった。
    あまりの痛みに意識が途切れそうになるのをなんとかこらえる。

    「弱いなあ、貴様。貴様、本当に勇者なのか? 街歩いてるそこらへんの奴のほうが、まだ手応えあるんじゃないか?」

    顔をあげると赤いローブがすぐそばにいた。いったいどういうスピードをしているのだろうか?

    188 = 172 :


    「勇者様と闘えるっていうんでちょっと気合いれて来たけど、なんだよ。全然弱いなあ」

    視界のはしに僧侶と目の前の男と同じように赤いローブを来た誰かの戦闘が映る。
    自分をねじ伏せた僧侶が明らかに押されていた。魔法使いがなんとかサポートして戦いになっているが、こちらも実力の差ははっきりしていた。

    「勇者よお、お前、記憶がないんだってなあ?」

    「…………なんで、それ……を?」

    「なんだっていいじゃねーか、そんなこと。なあ、記憶がないお前がなんで勇者なんだ? どうして勇者を名乗ってんだ?
      誰かが勇者だってお前に言ったからか? いや、それしか記憶喪失の奴が自分を勇者だって主張する理由はねえよな。
       だが、お前さあ。こんなに弱くて勇者名乗るっつうのはいささかおかしくねえか? お前は本当に勇者なのか、こんなに弱くてよお」

    「なにが、いいたい……?」

    「さあな、なにが言いたいのかは俺もわかんねーわ。たださあ、記憶がないお前に勇者としてのアイデンティティがあんのか?」

    「…………」

    「実はお前は昔は殺人鬼だっていう可能性だってあるよな?」

    (……たしかに。あやふやな記憶しか持たないオレは、本当の勇者だったのかその確証が、ない。
      ただ、王に言われて周りに言われてままここまで自分は勇者として来たが……オレは何者なんだ……?
      そういや同じような質問を魔法使いにもされたっけな……)

    189 = 172 :



    「まっ、こんな息も絶え絶えの状態の奴に物事考えろってのも酷な話か。どうせこれから死ぬしなあ」

    (ふざけんなっ……こんなところで死ぬわけには……)

    男の手が勇者の首を締め付ける。勇者は抵抗しようにも手を動かすこともできない。


    戦士「そうそう勇者くんってばアホだから難しいことは考えられないよ」


    「……!?」

    魔法のように男の背後に現れた戦士は、男が振り向く前に蹴りを喰らわす。
    男は反射的にガードをしてこれをやりすごすが、すでに戦士は魔法攻撃に入っている。

    戦士「くらってくれると嬉しいね!」

    無数の青い火の玉が幽鬼のように戦士の周辺に浮かび上がり、そのすべてが男に向かって飛んで行く。男は区もなくそれをかわしていく。

    戦士「キミがこの中で一番強いみたいだね……あっ、ちなみにキミのお仲間ならそこで伸びてるよ」

    戦士の指指す方には仰向けで伸びている一人の赤いローブの男がいた。

    「ロン毛でいかにも軽薄な野郎だと侮っていたが……どうやら貴様らのパーティで一番腕が立つのは貴様のようだな」

    戦士「そうだよ。だからさあ、伸び盛りの勇者くんじゃなくて最強のボクの相手をしてくれなきゃ」

    190 = 172 :



    戦士「さすがに魔法使いちゃんみたいな魔法は使えないけど、下級魔法ひたすら連発するのは得意なんだよね。
       今度はボクの的当てに付き合ってもらうよ」

    再び青い炎が男に向かって飛んで行く。

    「……チッ」

    男は火の玉をやり過ごすが、しかし構わず戦士は術を連発する。

    ふと勇者は視線を僧侶の方へ持っていく。リザードマンとの二人がかりで赤いローブの敵と応戦していた。

    僧侶「はあぁっ!」

    僧侶が拳から衝撃を放ちなんとか敵を牽制していた。


    不意に身体が光ったと思った。


    自分が座っている場所を見ると魔方陣が浮かび上がっていた。
    これは……とあたりを見回すと、僧侶にも戦士にリザードマンの場所にも同じ魔法陣が展開されていた。

    魔法使い「……今」

    皆と同様に魔方陣の光に包まれた魔法使いが、地面に両の手を押し当ててつぶやく。

    191 = 172 :


    僧侶「……はあぁっ!」

    僧侶が二つの拳をかかげる。
    右手は渦巻く炎をまとい、左手にはバチバチと光る雷をまとっている。炎の拳を地面に振り下ろす。
    拳の炎は氷の床を容赦無く滑り溶かしていく。数秒足らずで火炎は氷を水に還元させた。

    「そういうことか……!」

    男はここに来てようやく僧侶のやろうときたことに気づいたようだった。手のひらから光の玉を出し、僧侶にめがけて放つ。
    が、僧侶の雷の拳が元に戻った水に直撃する方が早かった。

    雷の奔流が水を伝い、その場の全員に炸裂する。

    戦士「なんてメチャクチャなことをっ!」


    魔法使い「大丈夫」


    雷は赤いローブの敵にはしっかり効いたらしかった。僧侶とリザードマンが相対していた敵はその衝撃に背中を仰け反らせる。
    勇者と戦っていた男は間一髪のところで、自身の足もとに光弾を放ち雷の流れを断ち切っていた。
    それでも、ここに来て初めて男に焦りらしきものが窺えた瞬間だった。

    192 = 172 :


    勇者たちは魔法使いの魔法陣のおかげで僧侶の攻撃から身を守ることができたようだった。

    僧侶「はぁはぁ……」

    おそらく僧侶は今のでほとんどの魔翌力を使い果たしたのだろう。膝からくずおれる。
    魔法使いもほとんどの魔翌力を使い切ったのか、 へたりこんでしまった。

    「力の配分はしっかりとしておくんだなああぁっ!」

    男が僧侶に向かって走り出す、その速度はあまりに速い。

    戦士「まったく……つくづく手強いな」

    火球を男に向かって戦士飛ばす。が、速すぎて捉えることができない。

    「まずは一人目ええぇ!」

    リザードマン「くっ!」

    一番近くにいたリザードマンが僧侶を庇おうとしたが、赤いローブのもう一人が道を阻む。

    193 = 172 :




    僧侶(ここまでか……)

    すでに魔法使いの魔法陣もその効果を切らしている。身を守る術はない。

    「しねえええええええぇっ!!!!」


    「オレのこと忘れてんじゃねえよ、バーカ!」


    僧侶「お前……!」

    男の手が僧侶にかかる間一髪のところで、男と僧侶の間に勇者は割って入っていた。男の手首を勇者の手が掴んでいた。
    男の驚愕に見開かれる。勇者はせいぜい格好がつくように唇のはしを吊り上げてみせた。

    「馬鹿な……あれほどのダメージを負っていたのにどこにこんな力が……」

    「さんざんカッコ悪いところしか披露してないからな。そろそろイイところ、見せてやるよ……戦士!」

    戦士「アイサー!」

    勇者の合図より前にすでに放たれていた火の玉が男を襲う。

    194 = 172 :


    「……やってくれる!」

    男が勇者の腹を蹴り上げる。吹っ飛び、男の手首を掴んでいた勇者の手も離れる。
    だが、勇者によってわずかでも身動きを封じられたのが祟った。全ての火球をかわすことはできず、男に何発か直撃した。

    「ぐおっ……」

    「ざまあみろ……」

    「チッ……なかなかどうしてやるではないか。
      いいだろう、今回のとこは引こうではないか。勇者の亡霊よ、次こそ決着をつけよう」

    不意に男たちの周りを魔法陣が覆う。やがて景色がゆらめくと男たちは蜃気楼のように消え失せてしまった。

    魔法使い「……あの魔法陣」

    「……結局名乗ってねーじゃねえかよ」


    ……………………………………………………

    195 = 172 :


    「いやあ……なんとか助かったな」

    僧侶「かろうじて、な」

    戦士「いや、本当に全員無事なのが信じられないよ」

    魔法使い「疲労困憊……」

    リザードマン「……しかし、諸君やはパーティを組んで長いのか?」

    戦士「え? いや、全然そんなことないよ。今日でようやく三日目の即席チームだからね」

    リザードマン「そうなのか……いや、実に息のあった戦い方だったのでね。てっきりそこそこ長い期間の付き合いがあるのかと思ったんだ」

    戦士「だったら僧侶ちゃんのアレにびっくりしたりしなかったよ」

    僧侶「アレ? なんのことだ?」

    196 = 172 :


    戦士「キミのダブルパンチだよ、地面に向けてやったヤツね」

    僧侶「ああ、あの『ほのおのパンチ』と『かみなりのパンチ』のことか。私が使える数少ない魔法技だ」

    戦士「なにそのダサいネーミングは?」

    僧侶「ダサい、か? あっ……」

    「……ど、どうしたんだ、僧侶? なんか涙目になってないか?」

    僧侶「……安心したんだよ」

    戦士「なるほどね」

    「どういうことだ?」

    僧侶「あと少しのとこで死ぬかもしれなかった。けど、なんとか助かってホッとしたんだ……ジロジロ見るな」

    戦士「そうだよ、勇者くんはデリカシーってもんがないんだから困っちゃうよ」

    197 = 172 :



    「まっ、なにはともあれ生きている、それでいいんじゃないか?」

    戦士「一番ボコボコにされたキミがなぜか一番清々しい顔してるのが気になるなあ。もしかして、そういう趣味があるのかい?
       そういえば昨日も何度も返り討ちにされてもボクと僧侶ちゃんに食らいついて来たけど、あれも……」

    「ちげえよ。ただ、ちょっと嬉しかったんだよ」

    僧侶「なにが?」

    「いや、意外とオレたちっていいパーティなんじゃないかなって思って……」

    戦士「……たかが結成から三日しかたっていないパーティなのに、なにを言ってるんだか……まあ、でもたしかに三日目のパーティにしてはよくやってるかもね」

    「だろ?」

    僧侶「そうかもな」

    魔法使い「……うん」

    198 = 172 :




    リザードマン「それにしてもあいつらは何者だったんだろうな」

    僧侶「みんなは気づいたか? ヤツらのローブに刺繍されていた紋章」

    戦士「ああ、あれね。例の国だね」

    「例の国?」

    戦士「うちの隣の隣の国でちょくちょく小競り合いしてるとこだよ。あの連中のローブにその国の紋章があった」

    リザードマン「ではヤツらは最強巷でうわさになっている、外界からの侵入者?」

    魔法使い「決めつけるのは早計」

    戦士「そーなんだよねー。彼らが最後に使った移動用の魔法、アレさあ」

    「なんだよ、そんな渋そうな顔して」

    戦士「アレ、うちの国で主に使われている魔法陣なんだよねえ」


    ………………………………………………………………

    199 = 172 :

    ………………………………………………………………


    遣い「我が主は公務で帰ってくるまでにまだ時間がかかりますゆえ、こちらでごゆるりとおやすみください」

    僧侶「さすがは魔界の帝国貴族の屋敷ともなると、ここまで立派な建物になるわけか」

    戦士「このボクでもびっくりするぐらいの屋敷だね、これは。ていうか屋敷の遣いは普通に人だったね」


    (オレたちはなんとか地下水路を脱出し、魔界の帝都であり、同時に魔物地区とも呼ばれる街にたどり着くことに成功した。
      リザードマンとは別れ、情報屋の少女にまえもって言われていたある貴族の屋敷を訪れていた。

      あの少女が何者かはわからないが、帝国貴族の魔物とまで繋がりがあるらしく、オレたちはあっさりと屋敷に案内されてしまった。
      しかし、この館の主人は現在出払っており、オレたちはこうして広い部屋でカラダを休めることにした)


    「しっかし、暇だな。なんかやることないか?」

    戦士「なにを言ってるんだよ、勇者くん。あれだけボコボコにされておいてカラダを休めなくてどうするんだ」

    「正直、もう疲れは取れたし、カラダの痛みもそんなに気にならなくなってきたぞ」

    戦士「……本気で言っているの?」

    「おう……って、僧侶はなにやってるんだ?」

    200 = 172 :


    僧侶「いや、こんな立派な本棚があるからどんな本があるのかなって思って。魔界と私たちの言語は同じだから読もうと思えば読めるからな」

    「そう言えば僧侶は一日目のときもこっちの図書館で、本を読んでたんだよな?」

    僧侶「本を読むのが好きなだけだ。あ、これって……」

    「魔法使いは本読まないのか?」

    魔法使い「……読まないこともない。ただ読むなら一人で読みたい」

    戦士「ボクもけっこう読書家だよ?」

    「そういやお前も頭いいんだよな。オレは本って読んだことあるのかな……復活してからはちょっと目を通すぐらいだけど」

    僧侶「なあ、この本って……」

    「どうした?」


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