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    元スレ勇者「パーティ組んで冒険とか今はしないのかあ」

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    651 = 648 :


    「もしかしたらあの子は魔王になってからも、うちの国に来たことがあるんじゃないのか?」

    戦士「うおぉっ!?  びっくりしたなあ……急に背後から話しかけないでくれよ。
       ていうか、本を読んでたんじゃないの?  例の女王の手記を」

    「うん。読んでいて、ちょうど休憩に入ったところ」

    僧侶「それで、どうして魔王……じゃないけど、魔王でいいか。魔王がうちの国に来たことがあると思ったんだ?」

    「んー、なんとなくだけどさ。この手記の中に書いてあるんだけど、姫様は魔王と一緒に色んな国や街を見て回ってるんだ。
      だから、あの子も影響を受けて、そうしていたんじゃないのかなって思って」

    戦士「あの子って彼女、勇者くんの四百倍以上の年月を生きてるんだけど……まあそれはいいけど。なかなか勇者くんの意見はアリかもね」

    僧侶「姿を変える能力があれば、たしかにリスクも少なく、それをすることはできるな」

    「だろ? なかなかいい発想だと思うんだけど」

    戦士「勇者くんにしては、なかなかいい推理だと思ったよ」

    「へいへい。そういうお前は、なんかアイディアあるのか?」

    戦士「まあ、勇者くんと似たようなのだけど、一応一個ぐらいはね」

    652 = 648 :



    「どんなのだよ?」

    戦士「一時期、彼女がボクらの前に一切姿を現さなかったことがあったろ?」

    「あったな」

    戦士「あれって、実は魔王を復活させるために、研究所にこもってたりしてたんじゃないのかなあって思うんだ。所詮は憶測だけど」

    魔法使い「続けて」

    戦士「で、うちの国って軍事技術とかでは魔界に負けている。けど、医療技術では間違いなく、魔界より勝ってるんだ」

    僧侶「つまり、戦士が言いたいのは、医療技術を魔王復活に利用するために、私たちの国となんらかの関りを以前からもっていたってことか?」

    戦士「そういうこと。案外、勇者くんが言ったように、自らうちの国へ乗り込んでたりしてね」

    「本当にそうだったら、あの子すげえな」

    戦士「まあこんなのは、全部妄想に近い発想だけどさ。ていうか、こんなことよりもさ。勇者くんは帰ってからどうするんだい?」

    653 = 648 :



    僧侶「なにせ魔王になるチャンスをふいにしたわけだからな。一つや二つ、やりたことがあるから、断ったのだろ?」

    「あー……」

    魔法使い「ないの?」

    「そうじゃない。ただ、ふとオレが魔王の件を断ったときの、あの子の顔を思い出してさ」

    戦士「ん?  またなんで彼女の顔を?」

    「深い理由があるわけじゃないけど、オレが断ったらあの子、『やっぱりか』って顔をしたからさ。
      なんでかなって思って。だって、あの子は自分から頼んできたのに……」

    戦士「……ダメでもともとって言葉が世の中にはある。それが答えだよ」

    「そうなのかな……」

    戦士「それに、勇者くんはやりたいことがあるんだろ、実際のところ」

    「まだはっきりとプランが決まってるわけじゃないけどな」

    654 = 648 :



    僧侶「なにがしたいんだ?」

    「ずばり、冒険」

    戦士「……今、やり終えたじゃん」

    「だから、新しい旅をしたいんだ。そして、もっと色んなものを見たい。もっと色んな人と会いたい。
      もっと色んなことを知りたいんだ」

    魔法使い「……自分のことは?」

    「もちろん、自分のことも……と思ったけど、今はいいかなって。
      結局あの子は、なにか知ってる風だったけど、時間の関係で聞けなかったし。
      ていうか教えてくれる気があったのかも、わかんないけど」

    戦士「自分探しの旅をしたいってわけじゃないんだね」

    「そうだな。あの子の話とか、みんなとの今日までのことを浮かべたら、自分がなにものかってそんなに重要じゃない気がしたんだ」

    戦士「なるほどね……」

    戦士(彼女は勇者くんのこの考えを、見抜いていたんだろうな……)

    655 = 648 :



    「自分がなにものかって、結局あとから付いてくるんだなあって。だから、今はそういう難しいことはいいやって」

    戦士「さすが勇者くん。難しいことは全部後回しだよ。
       最終的には最後まで、自分のことを放置しておくんじゃないのかい?」

    「うるせー。オレだって一応は考えているよ」

    戦士「本当にかい?」

    「……たぶんな」

    僧侶「……旅に出たいなら出ればいい」

    「……僧侶?」

    僧侶「ただ、私たちには国に戻っても、やるべきとはあるし、それにお前の問題はどうなるか……」

    「まあな。でも、きっとなんとかなるよ。いや、なんとかする!」

    僧侶「そうか、頼もしいな。でも、勇者。お前はまさか忘れていないよな?」

    656 = 648 :



    「忘れる? なんかオレ、忘れてたことってあるか?」

    魔法使い「……私に、奢る約束」

    「あ……そうだった」

    戦士「ボクの演劇の脚本作りに協力するって話。当然、忘れてないよね?」

    僧侶「私に料理を作ってくれる件もだ。やりたいこともいいが、やるべきこともたくさんあるぞ」

    「……全部楽しみだよ。やらなきゃいけないことも、今のオレにとってはやりたいことなんだ」

    戦士「まったく……能天気なのか、頼もしいのか」

    魔法使い「……両方?」

    僧侶「まあ、いいんじゃないか。私たちの勇者はこんな感じで」



    彼の最初の冒険はまもなく終わろうとしていた。そして、新しい彼の冒険の始まりは、もうそこまで迫っている。










    お わ り

    657 :


    久々にスッキリ終わった面白いSS見れて俺自身もスッキリしたわ

    658 = 648 :



    青年の剣が、その最後に残った魔物の肉体を切り裂いた。
    これで、ここら一帯の魔物は全部始末した。
    周りを見回せば、青年の雷の呪文によってほとんどの魔物が跡形もなく、消え失せていた。

    この程度か――青年は淡々と独りごちた。

    王の命令によって、ここまで赴き魔物を排除した。
    が、彼自身はこの魔物の拠点がどうなろうが、どうでもよかった。
    ただ、命令されたからそのまま命令通りに行動した。行動理由はそれだけ。

    ふと、青年は額をおさえる。彼は、ここ何日間かずっと頭痛に悩まされていた。
    まるで脳がなにかを訴えるように、悲鳴をあげているようだった。
    記憶がどこか曖昧でぼんやりとしている。しかし、それがなんなのか。そもそもその記憶は必要か、なにもわからない。

    俺は勇者だ――青年は自分の掌を開いた。今まさに魔物を殺した手だ。
    自分はかつて、この手でなにかとても大切なものを掴みとった。
    しかし、それがなんなのか。記憶は闇の向こうから一向に姿を見せない。

    だが、今の魔物との戦闘で一つ思い出せることがあった。自分が一人で戦っているという事実が、過去の自分と食い違っていることに。

    かつて、自分には仲間がいた。だが、今は――

    空を見上げた。澄み切った青空に一つだけ雲が浮いていた。

    そう言えば――王がこの時代について説明してくれていた内容を思いだす。

    そして彼は――勇者は呟いた。






    勇者「パーティ組んで冒険とか今はしないのかあ」













    659 = 648 :


    ようやく終わりました。
    色々と解決していない話もありますし、自分でもあれ?となる部分はあります。
    けどひとまずはこれでこの話は終わりです

    ここまで読んでくれた人、ありがとうございました


    関連ss
    神父「また死んだんですか勇者様」
    魔王「姫様さらってきたけど気まずい」

    またべつのssで


    660 = 657 :

    今度こそ乙
    また同じ世界観で書いてください

    662 :

    おつおつ!
    最後のは八百年まえの勇者なのかな?

    663 :

    女王の言うあの男が気になる

    664 :

    乙乙

    665 :

    乙でした

    この終わり方は次に続くと思ってよいのかな

    666 :



    感想ありがとうございます
    続きはいずれ書けたらいいなあと思い、こんな終わり方にしました


    過去作

    関連ss

    魔王「姫様さらってきたけど二人きりで気まずい」
    神父「また死んだんですか勇者様」

    その他

    勇者「魔王が仲良くしようとか言い出したけどそんなの関係ねえ!」
    「くちゃくちゃくちゃ」兄「……」
    「せっかくだしコワイ話しない?」
    かきふらい「え? けいおん!の続編を書けですって?」
    八九寺「阿良々木さんはけいおん!をご存知ですか?」
    「1レスごとに私のおっぱいが1センチずつ大きくなります」

    じゃあまた














    669 :

    乙でした

    670 :

    お疲れ様でした

    次回作も作期待してますよ


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