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元スレさやか「全てを守れるほど強くなりたい」
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マミ「ティロ・フィナーレ!!」
大砲が魔女を貫く。黒い煙を血の様に噴き出して、魔女は散り散りに消滅した。
まどか「す、すごい」
さやか「どっしぇー……ほんと魔法少女って、見てて飽きないなぁー…」
マミ「もう、見世物じゃないのよ?」
結界は解けて、マミさんは街灯の上から降りてくる。
なるほど、単純な体の丈夫さも飛躍的に上がっているらしい。
さやか「あれ?グリーフシード、落とさなかったんですかね」
まどか「そういえば……」
薄明かりの中、地面にそれらしき物の姿はない。
黒く小さな宝石を捜していると、唐突に白い獣が現れた。
QB「今のは、」
さやか「うわっ、びっくりしたっ」
QB「……今のは魔女から分裂した使い魔でしかないからね、グリーフシードは持ってないよ」
まどか「魔女じゃなかったんだ」
かくいう私も魔女だと思っていた。
魔女か使い魔か。どっちも同じようなもんじゃないのか。その違いは魔法少女にしかわからないのだろう。
さやか「何か、ここんとこずっとハズレだよね」
マミ「使い魔だって放っておけないのよ。成長すれば、分裂元と同じ魔女になるから」
さやか「そうですね」
心の片隅で、人を食べさせれば……と考えてしまったけれど、すぐにやめた。
マミ「さぁ、行きましょう」
このさやかちゃんは死活問題だと分かれば杏子のやり方に賛同はせずとも理解はしめしそう
マミ「二人とも何か願いごとは見つかった?」
帰り道の質問に、ついぐっと、胸を圧された気がした。
単純な、来るであろう質問なのに。
さやか「んー…まどかは?」
まどか「う~ん…」
我が親友もまだ、願い事を決めかねているらしい。当然だろう。
なかなか決められるものではない。
マミ「まあ、そういうものよね、いざ考えろって言われたら」
まどか「マミさんはどんな願いごとをしたんですか?」
マミ「……」
それは不気味な、きまずい沈黙だった。
空気を重さを悟った私とまどかは、唐突におろおろし始める。
けど何故だろうこの不条理。歩道を歩いてたら癇癪玉を踏んだ気分ってきっとこれだ。
まどか「いや、あの、どうしても聞きたいってわけじゃなくてっ」
マミ「私の場合は……考えている余裕さえなかったってだけ」
遠い目が見る先を幻視する。
マミ「後悔しているわけじゃないのよ?今の生き方も、あそこで死んじゃうよりは、よほど良かったと思ってるし……」
彼女の願い事。私達が決めかね、彼女が叶えようとする違い。
背中を押す“何か”の違いがあったのだろう。
マミ「でもね、ちゃんと選択の余地のある子には、きちんと考えた上で決めてほしいの」
マミ「私にできなかったことだからこそ、ね」
さやか「ねえ、マミさん」
マミ「え?」
魔法少女の先輩に聞かなくてはならないことがあった。
さやか「魔法少女に一番必要なものって、何だと思いますか?」
マミ「一番必要なもの、かあ」
曇り空を見上げて、うーんと可愛らしく考える。
その様は大人っぽいようで、子供っぽいようで、私の中では“おう、いいな”って思った。
マミ「夢を壊すような答えになっちゃうのかな……根気?」
まどか「こ、根気……」
魔法少女というよりも、熱血スポーツのようなテーマだ。
マミ「うーん、やっぱり、長い戦いになるわ……一生を通して、魔女とは戦っていくんだもの…」
まどか「そうですよね……大変そう」
マミ「けど悪いことばかりでもないの、良い事だってあるわ」
さやか「良い事?」
マミ「うん」
可愛らしい笑顔をこちらに向ける。
マミ「人を助けるって、やっぱりやりがいがあるもの……人を助けたい、助ける、その意志が大切だとも、言えるわね」
さやか「ほへあ」
マミ「気の抜けた返事ねえ」
まどか「あはは……」
人を助ける。
うん、私には合ってそうだ。
さやか「……」
自室で竹刀を見やる。
ささくれ一つない、新品のままの二本目の竹刀だ。
さやか「これで何ができる?」
つい蛍光灯に掲げ、影を仰ぐ。
丸くぼんやりとした、およそ凶器には見えないシルエット。
振ってみればその実、突かない限りは人を傷つけることもない無害な武器だ。
これを振り続けて、そこからどうしようか。
私はそれを考え続けていた。
さやか「家に強盗が押し入ってて、両親が襲われてる、なんて」
数年前に気付いていた事も口から漏れる。
そう。守ろうとするものは限られている。守れるのはいつだって、自分が運よく居合わせた時だけ。
一ヶ月前の痴漢も、二ヶ月前の痴漢も、三ヶ月前のひったくりも。悪事を止めて人を守れるのは、私がそこにいたときだけなのだ。
守りたいものがある。
それは両親であったり、親友であったり、友達であったり、私が知り合った全ての人だ。
私は、私が出会った全てのものを愛おしく思う。だってそれら全てが、今の私を形作り、成長させているんだもの。
でもそれら全てを守ることなんてできやしない。
だってそうしたいと願う私は、ここに一人きりしかいないんだもの。
さやか「魔法の剣を握れば、変わるっていうの?」
答えは見出せない。
魔法少女?なんだそれは?と思う自分がいる。
しかし確固たる力を掴む機会がそこに、確かにある。
竹刀の影は揺れっぱなしだ。
ほむら「貴女は無関係な一般人を危険に巻き込んでいる」
マミ「あら……誰かがいると思ったら、暁美さんだったのね」
ほむら「……」
マミ「相変わらず……いえ、やめておきましょうか?」
ほむら「……」
マミ「彼女たちは一般人、だけどキュゥべえに選ばれたの、もう無関係じゃないわ」
ほむら「貴女は二人を魔法少女に誘導している」
マミ「それが面白くないわけ?」
ほむら「ええ、迷惑よ……特に鹿目まどか」
マミ「ふぅん……美樹さんは?」
ほむら「……何?」
マミ「美樹さんは迷惑じゃないって?」
ほむら「……“特に”鹿目まどか、と言ったの。深い意味は無いわ」
マミ「……そ、酷い人ね」
ほむら「?」
マミ「でも、あなたも気づいてたのね。あの子の素質に」
ほむら「彼女だけは、契約させるわけにはいかない」
マミ「自分より強い相手は邪魔者ってわけ?弱い人なら契約してもいいの?……臆病で卑怯ないじめられっ子の発想ね」
ほむら「…貴女とは戦いたくないのだけれど」
マミ「なら二度と私の目の前に現れないようにして」
ほむら(……何、この感じ)
マミ「話し合いだけで事が済むのは、きっと今夜で最後だろうから」
竹刀を振る手が止まる。
さやか「……本当なの」
恭介の病室で、それは告げられた。
他でもない恭介自身からだ。
恭介「ああ、ほんのさっき、言われたよ」
ベッドの上で窓の外を眺めながら言う彼の声には、生気が込められていない。
声帯に空気を通しただけ。そんな声だ。
さやか「どうしても?」
恭介「ここの医者が言うんだ、間違いはないさ」
竹刀を再び振る。振りながら考える。
恭介「もう、治る見込みは無いって、現代の医学じゃあ、到底不可能だって」
強く振る。兜を叩き割るくらいに強く。
恭介「……諦めろって」
涙ぐむ彼の声で、私の竹刀を握る手が止まった。
恭介「……悔しいよ、さやか……全てが恨めしいんだ、何もかもが、この世の全てが敵のように思えてしまうんだ」
さやか「恭介……」
恭介「僕はなんて弱いんだろうね、さやか……僕は、こんな僕は」
さやか「恭介は弱くなんてない」
竹刀を振る。白い壁を睨む。
さやか「……やりきれないのは仕方が無いんだ」
恭介「……」
しばらくの間、沈黙が続いた。
さやか「……これからどうするの?いや」
さやか「恭介は、どうしたいの?」
酷な質問だったと思う。
恭介「何もしたくない」
けど、打ちのめされきった彼は答えてくれた。
さやか「この世に一つの希望も無いっての?」
恭介「なくなった」
さやか「本当に?」
恭介「ああ」
仕方が無いとはいえ重症だ。
さやか「私の命と左手、どっちが大事?」
恭介「……」
竹刀を振る間にも、ベッドの上の振り向く音は聞こえてきた。
さやか「正直に答えてよ」
恭介「……選べない」
さやか「左手でしょ」
恭介「……さやかには嘘がつけないな。軽蔑してくれよ」
さやか「するわけないじゃん」
まだ、竹刀を振り続ける。
恭介「正直、僕は、恐ろしいんだ……きっと、家族でさえ、僕は……この腕のためなら、もしかしたら……」
さやか「それでいいんだよ、恭介、それだけ大切なものだったんだ」
素振りをやめ、竹刀を椅子の上へ乱暴に放る。
恭介「……酷い人間だ、僕は……ごめん、さやか……」
さやか「親友でしょ、構わないって……それに」
額の汗を拭い、恭介の顔を見る。抜け殻のような、血の気の無い蒼白な顔。
さやか「私の夢と恭介だったら、私だって夢を選ぶしね」
さやか「よう、お待たせ」
まどか「おか……って、なんか汗かいてなあい?」
私の額を見て気付いたようだ。これはうっかり。
さやか「あはは、ちょっと素振りしてた」
まどか「もう、静かにしないと、上条君だけじゃない他の人にも迷惑じゃない?」
さやか「あっはっは、大丈夫、あそこ無駄に広いからねー」
まどか「そういう問題じゃ……」
恭介のことは、まだ伏せておくことにした。
腕が治らない。それを言うべきかどうかは、本人の口から確認をとってからの方が良いだろう。
今日だって、話すまでに間があったのだ。躊躇するに違いない。
恭介は、自分の惨めな姿を、あまり見られたくない奴だから。
さやか「……!」
病院の外壁に、それどころじゃないものが見えた。
まどか「あそこ……」
さやか「グリーフシード!」
QB「本当だ!孵化しかかってる!」
まどか「嘘…何でこんなところに」
白い壁に打ち込まれたように存在するそれは、禍々しい輝きを放ちながら壁を侵食している。
ちょっとずつ。けどナメクジの行進なんかよりは比較にならないほど速く。
QB「マズいよ、早く逃げないと!もうすぐ結界が出来上がる!」
さやか「まどか、マミさんの携帯、聞いてる?」
まどか「え?ううん」
しまった。学校で会えるからって失念してた。迂闊だ。私はバカかっての。
さやか「まどか、先行ってマミさんを呼んで来てくれる?」
まどか「うん!けど、さやかちゃんは……?」
さやか「あたしはこいつを見張ってる」
まどか「そんな!」
QB「無茶だよ!中の魔女が出てくるまでにはまだ時間があるけど……」
さやか「何?」
QB「結界が閉じたら、君は外に出られなくなる……マミの助けが間に合うかどうか」
さやか「結界が出来上がったら、グリーフシードの居所も分からなくなっちゃうんでしょ?」
グリーフシードは魔女の本体だ。
本体が動く前にグリーフシードを捕捉しておかないと。病院が巻き込まれてからでは、犠牲者が出るかもしれない。
さやか「放っておけないよ」
QB「まどか、先に行ってくれ……さやかには僕が付いてる」
まどか「うん」
さやか「ダッシュ!」
まどか「う、うん!すぐに連れてくるから!」
彼女はよろけながらも、彼女なりの駆け足で病院から離れていった。
QB「マミならここまで来れば、テレパシーで僕の位置が分かるだろう」
さやか「うん」
QB「ここでさやかと一緒にグリーフシードを見張っていれば、最短距離で結界を抜けられるよう、マミを誘導できるから」
さやか「ありがとう、キュウべえ」
お菓子だらけの空間。
糖分たっぷりの物で溢れ返っているというのに、甘い匂いは一切ない。きっと、ここにあるお菓子は食べられないのだろう。
時々小さな使い魔らしき生き物が、結界の中を歩いている。
その気配を察して物陰に隠れる。
あんな小さな生き物相手に無力だけど、魔法少女でないのだから仕方がない。
何をしてくるかわからないのだから。
QB「怖いかい?さやか」
さやか「え?」
QB「この結界がさ」
さやか「うーん」
QB「願い事さえ決めてくれれば、今この場で君を魔法少女にしてあげることも出来るんだけど……」
さやか「……」
足を止める。そして、思わず微笑む。
グリーフシードの見張り。それはただの方便でしかなかった。
本当は一人になりたかった。
まどかにマミさんを呼ばせ、誰にも邪魔されないように。
何より、私のせいでまどかの決断を焦らせないように。
私はこの時を待っていたんだ。
QB「さやか?」
さやか「キュゥべえ……良いよ」
QB「!」
さやか「契約しよう」
「待ちなさい!」
さやか「ありゃ」
つい、にやけた顔のまま振り向いた。
さやか「ほむら」
ほむら「……さやか……」
少し息を切らせたような、魔法少女のほむらが追いついていた。
私とは少し距離を保ち、私を見ている。
ほむら「……鹿目まどかと、巴マミは?」
さやか「まどかなら、マミさんを呼びにいったよ、まだもうちょっとかかるんじゃない?」
ほむら「……そう」
さやか「ほむらは何しにきたの?というか、どうしてまだ現れてもいない魔女を……」
うっすら浮かんだ汗を指ではじき、再び凛とした、今度は疲れのない余裕の冷静さで、私を見据えた。
ほむら「契約するのはやめなさい、さやか」
さやか「どうして」
ほむら「……魔法少女になってはいけない」
また、この複雑な表情だ。
私にはほむらの意図が読めない。
さやか「私、人の目を見れば何考えてんのか、だいたいわかるの」
ほむら「何……」
さやか「テレパシーでもなんでもないけどさ、それまでの人の性格とか、流れでわかっちゃうんだ」
ほむら「……」
さやか「けどほむらの目を見ても、何もわからない」
ほむら「……さやか」
さやか「目的は隠すし、行動を見ても、なんも読めない」
さやか「正直に、隠していることを話すなら今だよ、ほむら」
ほむら「……?」
ほむらを睨む。空気が一変して、急速に張り詰めてゆく。
さやか「私に契約させるなって、ほむらは言ったよね」
ほむら「……言ったわ」
さやか「ならここで隠している事、すぐに打ち明けてよ」
ほむら「なっ……」
驚きの表情。なんだ、案外抜けてる所があるんだ。
彼女は何かを隠している。言いにくい事を隠している。
さやか「でないと私、この場でキュゥべえと契約して、魔女を倒しにいくから」
ほむら「さやか!それは……!」
さやか「何よ、私が契約するかどうかは私の勝手、本気で止めたいのなら理由を言ってよ」
キュゥべえを正面へ突き出すと、近寄ろうとしたほむらの脚が止まった。
QB「?」
ほむら「……くっ」
キュゥべえと私を見比べて動くことができない。
おどおどと頼りない姿に、私はまた苛立ってしまう。
ああそうか、この苛立ちは。
うろたえる情けないほむらの姿が、似ても似つかない煤子さんとそっくりだからなんだ。
さやか「……そんな顔で、そんな顔するな」
QB「さやか?」
ほむら「何故……」
さやか「何故?何がよ、はっきりしてよ、私はね、」
ほむら「どうして!?さやからしくない!」
さやか「はぁ?」
ほむら「どうして貴女は、私が知ってる美樹さやかじゃないの!」
さやか「……!」
互いの違和感がちょっとだけ触れ合い、私の頭に静電気が走った。
ほむら「何が貴女をそうさせたの!?」
不満?戸惑い?葛藤?
顕にされているにも関わらず、全く読むことのできないほむらの感情を前に、私の思考は停止した。
ほむら「確かに貴女は冷静よ!それは解る、けど全てを受け止められるというの!?そんなのありえない!」
畳み掛けられる言葉。自問混じりの叫びがお菓子の空間に響く。
ほむら「誰も人を理解しようとはしない、誰も、上辺の興味は抱いても、それを認めるわけじゃない!」
ほむら「もう誰にも頼らないと決めたのに、それなのに、……!」
さやか「っ」
叫びに涙も加わった。
狂気だ。私はそう感じた。
少しして涙を拭い、感情を押し殺した目に戻る。
ほむら「……もういい、全てあなたの好きにしなさい、さやか」
さやか「……」
ほむら「ただし、ここの魔女は私が始末する……あなたの出る幕ではない」
ほむらは私の真横を抜け、結界の奥へと駆けていった。
去り際には流し目も無かった。
ただ冷たい目で、動かぬ表情で、私を抜き去っていったのだ。
さやかが冷静なのは因果律に対する反逆
そらほむほむも錯乱するわ乙
そらほむほむも錯乱するわ乙
>>221
つまり、最終的に早乙女先生も結婚できるっていうわけか・・・・
つまり、最終的に早乙女先生も結婚できるっていうわけか・・・・
さやか「なんか諦められた」
彼女は私の何かを見限った。何かって?きっと私自身をだ。
失礼な話だ。言いくるめられてもいないのに、勝手にしろだと。
さやか「怒った、もう本当に怒ったかんね、私」
ただでさえほむらと話していると頭の中に霧がかかるっていうのに。
最後にバカでかい濃霧を吐いて去ってしまうなんて。
そんなの許せる?私なら許せないね!
意味深なYes/Noの質問を30回分岐させられて結果が出ないようなものだ!
上から他人を見下して!何も始まってないのに見捨てられた!
まして、煤子さんとそっくりな、あの顔で!
さやか「キュゥべえ!聞いて!」
QB「言ってごらん」
白いふわふわを両手で持ち上げる。
さやか「冷静になれ、慎重になれ、そうは言われ続けてきたけど……私はどーしても、がんがん突き進むこの癖が直らない!」
QB「何の話だい?」
さやか「抑えつけられても、どうしても曲げられない背骨が一本あるせいで苦労したことも、ちょっとある!」
QB「……」
さやか「けどやっぱ契約する」
QB「ほう」
赤い瞳に、今にも吸い込まれそうだ。
さやか「私って魔法少女になったら強いかな」
QB「今よりは強くなれるよ」
さやか「不安になる言い方だね、それ。あんま強くならないの?マミさんくらいになる?」
QB「マミは最初こそへっぽこだったけど、修練を積んで強くなっていったんだ」
さやか「契約したばっかりのマミさんと契約したばっかりの私、強さの割合でいえば何対何よ」
QB「魔法少女としての素質かい?様々な要因が関わってくるから正確にはわからないけど正直に言うよ、およそ3対1だ」
さやか「ぐふッ」
い、いかん。今のはさすがにちょっぴり決心が揺らぐ。
QB「けど相性っていうのもある、さやかがどのような願い事で契約するかによって、使える魔法の形も大きく変わってくるはずだ」
さやか「ほほう、詳しく聞きたいところ……だけど、願い事はもう決まってるんですね」
QB「言いのかい?」
さやか「私の本質だもんね」
たとえ私が3人束になってマミさんと同等の力しか持たない魔法少女だとしても、それくらいで私の願いは揺るがない。
恭介の左手ほどもね。
さやか「ちゃんと一言も漏らさず聞いて、私の願いを叶えて、キュゥべえ」
QB「いいだろう、君は何を望んで、その魂を差し出してくれる?」
私の願い。なりたかった私。
まるで夢、御伽噺の勇者。教室で言えば数年来の友達も笑うだろう。
けど私は本気だ。漠然とした指標のひとつが、形として成り立つというのであれば。
魂だろうが尻子玉だろうが、喜んで差し出してやるわ。
何を対価に差し出してでも大きすぎる、私の傲慢な願いこそ――
おっつ
まぁ上条くんの治されるべきはクソねじ曲がった性根な訳で
まぁ上条くんの治されるべきはクソねじ曲がった性根な訳で
乙
このさやかちゃんなら魔女化を知ってもすぐには絶望しなさそう。
カオルとかと相性良さそうでコンビが見たいくらい
このさやかちゃんなら魔女化を知ってもすぐには絶望しなさそう。
カオルとかと相性良さそうでコンビが見たいくらい
>>232
???「歌はいいねぇ」
???「歌はいいねぇ」
QB「さあ、受け取るといい、それが君の運命だ」
私の内から大切なものが輝きを放っている。
それは私の願い。私自身。私の魂。
変身の方法は全て頭の中へ入ってくる。
感覚として直接入り込んできた知識に一瞬びっくりしたが、それらの有用性を認めた私はすんなりと受け入れることができた。
私は魔法少女となった。
そして、今の私は人間の私よりも、より多くの事ができるはずだ。
青い宝石がそれを教えてくれた。
形として見えることができたるの信念。これからはもう、見間違える事も、疑うこともないだろう。
ソウルジェム。
これを見やれば、私は私であることを忘れることなどないだろう。
さやか「私の手にあるこれが運命なわけじゃない、運命はこれから作ってくものだよ」
パシ、と右手で受け取る。
ふわりと浮くような衝撃を受けた体を両脚で支え、持ちこたえる。
さやか「――よし」
QB「おめでとう、美樹さやか、これで君も魔法少女……」
さやか「待ってなさいよほむら!」
キュゥべえが何か言っていたが、それどころじゃない。
私には怒るべき相手がいる。倒すべき魔女がいる。まずはそれからだ。
変身はいつでもできる。
けど、変身せずとも体が軽やかだ。これもきっと効果のひとつなのだろう。
そういえば、マミさんが制服姿のまま街灯から飛び降りていたっけ。
やっぱりある程度は問題ないのだろう。
けど今は自分の力を試してみたい。
私の願いがどれほど使えるのか。
魔法少女の私がどこまで戦えるのか。
まどかを後から来るように言っておいて正解だった。
彼女が一緒にいたら、きっと私の決断に流されてしまうから。
私は私の意志で魔法少女となったのに、まどかをそれを巻き込むわけにはいかない。
さやか「変ッ、身!」
宣言しなくても変身はするだろうけれど、それでも叫んだ。
記念すべき第一回目の変身なのだ。盛り上がっていこう。
青い輝きの球体に包まれる。
全身に、私の意志が鎧となって纏わりつく。
体が軽い!こんな気持ち初めて!
さやか「それに、これッ」
何もない脇から一本の刀身が伸びる。
右手で勢いよく抜き放ち、光の球を一閃。
私は卵の殻を破る様に、繭を裂くように、変身空間から脱出した。
右手に握るは、真・ミキブレード。
ハンドガードがついている。日本刀ではなくサーベルだろう。
さやか「へっへ、こういう武器になってくれたかぁ、私の願いっ」
ついつい顔がにやけてしまう。
だって自分の可能性が広がったんだもの。
魔女を倒してソウルジェムを保つ。
日常的に、息をするように人を守ることができるのだ。
胸が高鳴って、何が悪い!?
クッキーの滑り台から使い魔が降りてきた。
一ツ目の小動物ナース。四足歩行目玉親父。
さやか「へえ、何事も最初は基本から、ってことね」
一匹。二匹。
十匹。二十匹。
まだまだ現れる。さっきまでは静かな結界だったのに、急速に慌しくなり始めた。
さやか「……!そうか魔女が……」
魔女が生まれそうなんだ。だから使い魔も一気に増え始めた。
ほむらが奥で暴れているかもしれない。それが使い魔たちを刺激した可能性もある。
けど今、私がやらなくてはならないことは一つ。
さやか「私はほむらより先に、魔女を倒すんだから」
最初だからまずは使い魔から、なんて温いことは言わない。
私の願いは“強さ”だ。
使い魔で試し切りをしなければ不安になる程度の力など願ってはいない。
さやか「道を開けろ!」
地面に叩きつける右足。
轟音に揺れる一帯。飛び散る衝撃波。
使い魔「……!」
床を基点に発生した青白い魔力の爆発が、正面の使い魔を消し飛ばす。
魔女「―――」
◆お菓子の魔女・シャルロッテ◆
人形は着席した。
足長椅子に着席した彼女は、悠然とこちらを見下ろしている。
使い魔を倒し荒らされ、既に目の前に居座る侵入者への怒りを顕にしているのだ。
ほむら「間に合った」
侵入者は指であごの汗を弾く。
ほむら「あなたには、何としても消えてもらわなくてはならない理由がある」
弾いた指にはハンドガンが握られていた。
そのままスムーズな動きで、照星を魔女へと向ける。
何も言わない。ただ銃をわずかに揺らし引き金を引いたままにする、それだけ。だが結果は異なる。
ほむら「さっさと本性を見せなさい」
空中で綺麗に配列された弾丸。13発の弾が円形に並ぶその空洞から魔女を睨む。
ほむら「巴マミが来ないうちにね」
そして時は動き出す。
オートマチックの13発は寸分のズレもなく同時に発射された。
小さな円形に密集するようにして打ち出された弾丸は、斜線上に座っていた魔女を容赦なく貫いた。
魔女「……!」
弾は貫通した。が、衝撃は魔女の体を浮かせた。
O字に切り裂かれた、小さな魔女の体を。
魔女「……!!!」
だがこの魔女はそれだけで終わることはない。突然の敗北などはありえない。彼女には執着がある。
彼女の執念が根負けするまでは、彼女が消滅することなど、万に一つもない。不意打ちでは絶対に“納得しない”。
つまり。
魔女「がぁああああぁあ」
ほむら「出たわね」
全力を出した状態の魔女を倒さなくてはならないのだ。
骸から脱皮するように生まれた、巨大な蛇のような魔女を。
ほむら「けど、あなたがどんなに早かろうとも、どんなに硬かろうとも関係ない」
魔女は体をうねらせながら、悪魔のような大きな口を開いてほむらに襲い掛かる。
そして口は閉じた。
魔女「……!」
ほむら「どうせあなたは負ける」
口を閉じた魔女の頭の上で、アサルトライフルを構えたほむらが躊躇無く引き金を引いた。
魔女「がぉおおおおおぉおお!」
穴だらけの頭を、怒りに任せて振るう。
蛇の体、しかし先端の顔は、明らかな“不機嫌”な表情を見せている。
ほむら「弾丸ごときでは効果は薄いわね」
暴れのた打ち回る魔女を尻目に、ほむらはゆっくりと床を歩いていた。
しばらくはその場で暴れていた魔女だったが、ほむらが全く違う場所に居ることに気付くと、さらに表情をゆがめた。
ほむらの位置は、魔女がいるところと全くの別。
結界の端と端で、片や見当はずれに暴れ、片や冷静に観察していたのである。
魔女「……!」
ほむら「あら、馬鹿にしていることがわかるのね」
魔女「がぁぁあぁぁああ!」
魔女は胴を伸ばして、空間の端にいるほむらにと一気に襲いかかる。
牙を剥き、体をバネに飛び掛る魔女のエネルギーは計り知れない。
ほむら「愚直ね」
ほむらの狙いはそれだった。
爆弾を口の中へと投げ込み、炸裂させる。
だが爆発が最も効果を出すためには、口だけではいけない。
魔女の全身をくまなく同時に爆破しなくては、一撃必殺の決着とはならない。
とぐろを巻く相手では、上手く爆弾を投げ込めない。
だからあえて遠くまで一旦距離を置いて、相手に攻めさせた。
体を一直線に伸ばす、その瞬間のために。
巨大な衝撃だった。
爆発ではない。激突だった。
ほむらは左手の盾を使用することができなかったのだ。
ほむら「なぜ……」
右手に爆弾、左手に盾。そのまま動きを止めてしまっていた。
さやか「何故、だって……!?」
魔女「……!」
巨大な牙に対して、華奢すぎる一本のサーベルが競り合っている。
ギリギリと音を立て、どちらも折れることも砕けることもなく均衡して、その場で動きを止めているのだ。
さやか「決まってんでしょほむら、そんなの当然……!」
刃が青くきらめく。
魔女「!」
鋭い牙に亀裂が走る。
さやか「あんたじゃない、私の出る幕だからだ!」
力の均衡を破って振り下ろされた上段よりの輝く一撃は、魔女の顔面を2つに叩き割った。
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