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    元スレほむら「思い出せない…私は何者だ?」

    SS+覧 / PC版 /
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    みんなの評価 : ★★★
    タグ : - 暁美ほむら + - 暁美ホームズ + - 魔法少女まどか☆マギカ + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    351 = 344 :

    一休み一休み(寝転がりながら

    352 = 329 :


    ほむら「ふーん」


    昼になる頃には、20機の綺麗な飛行機が完成していた。

    これが再び、大勢の観客の前で飛ぶことを思うと胸が高鳴る。


    まどか「随分作ったね」

    ほむら「おお、まどか…多いに越したことはないからね」

    まどか「あ、昨日ほむらちゃんがマジックやってる所、見かけたんだぁ」

    ほむら「なに?見られていたか」


    私は一切気付かなかった。


    まどか「うん、マミさんやさやかちゃんも遠目にだけどね、人、沢山いたね」

    ほむら「大勢の人が立ち止まってくれて良かったよ」


    ゆくゆくは大きな会場を借りてやってみたいものだ。


    私を囲む大勢の観客。

    繰り出す奇術に息を飲むホール。


    ほむら「…ふふ」


    ああ、鳩が欲しい。

    353 = 329 :


    屋上に上がるとマミが居た。


    マミ「暁美さん」

    ほむら「やあマミ、いつもいるね」

    マミ「いつも、というわけではないわ、最近よ」


    いつものようにベンチに腰掛ける。

    空は青い。


    こんな日はウィダーinゼリーで昼食を取るに限る。


    マミ「……」


    隣で弁当を広げている最中のマミが複雑そうな目でこちらを見ている。

    何か言いたげだが、彼女が言いたいことはわかっている。


    私は懐からもう一本のウィダーinゼリーを取りだした。


    ほむら「問題ない、さすがに1つで済まそうとは考えてはいないさ」

    マミ「……うん」


    10秒で食べられる食品ではなかったが、マミがひとつのおかずを食べ終わる頃には完食した。

    354 :

    ホムドヤァ

    355 = 329 :


    ほむら「二人の具合はどうかな、負担なくやれているかい、マミ」

    マミ「うーん、そうね…美樹さんは魔法少女になる意欲を強めている感じだけれど…私自身の負担はないわね」

    ほむら「さやか、そうか…」


    彼女にも躊躇はあるが、目的を目の前にしての踏ん切りに近いものだろう。

    あと一歩が踏み出せずにキュゥべぇと契約できない、そういった具合だ。


    だが何かきっかけを見つけてしまえば、彼女はすぐ魔法少女になってしまうのかもしれない。

    あまり好まれた事ではない。


    マミ「美樹さんもそうかもしれないけど、鹿目さんは願い事という時点でかなり悩んでいるわね」

    ほむら「それが正しい形だな」

    マミ「ええ、願い事はちゃんと考えてほしいものだし」

    ほむら「悪魔に魂を売り渡すようなものだからな」

    QB「悪魔とは心外だなぁ」


    白い猫が沸いた。

    キュゥべぇ。彼がどこから出現するのかは謎だ。


    ほむら「…なあ、キュゥべぇ」

    QB「なんだい?」

    ほむら「…いや、なんでもない」

    QB「?」


    客に見えないタネを仕込んでも仕方がないな。

    マミ達にはバレているし。

    356 = 329 :

    今日も学校が終わった。

    マミの話によれば、魔女退治は夕方過ぎ、ほぼ夜になってから始めるらしい。

    さすがに放課後からすぐに、というのは負担の多い話だ。当然だろう。



    「暁美さん、今日の帰りは…」

    ほむら「ああ、良いよ、約束だからね……付き合おう」

    「キャッ!ありがとう!」


    「いいなぁ、暁美さんと一緒に下校」

    「ねえねえ、私も良いですか?」

    ほむら「構わないけど…私にもやることはあるから、帰るだけだぞ?」

    「それって、路上でのマジックですよね!」

    ほむら「え」


    何故それを知っている。


    「昨日見てたんですよぉ!かっこよすぎてもう、ほん惚れちゃいました!」

    ほむら「なんと」

    「ねー、暁美さんって、実はすごいマジシャンだったんだねー、うちもお父さんが見てたよ」

    「ナイフとか使ったりねー」

    ほむら「……」


    目立ちすぎたか。いや、嫌いな事ではないんだが。

    357 = 329 :

    「ねえねえ暁美さんって、いつからマジックやってるの?」

    ほむら「あー、結構…いや最近」


    知らない。


    「前の学校って普通のって言ってたけど、すごい頭良い所だったり?」

    ほむら「んー、まあ」


    知らない。


    「お父さんとかお母さんって――……」


    知らない。


    やめてくれないか。


    頭にかかる靄が鬱陶しい。

    358 = 329 :


    クラスメイト達を送っている間に、随分と時間が経ってしまった。


    ほむら「…」


    深くは知らない道を歩く。

    見知った場所に着くころには、空に赤みが差しているだろう。

    暗い場所ではあまりマジックは見せたくない。

    この後私はどうしたものか。



    ほむら「……せっかくだ、このまま隣町まで行ってしまおう」


    向こうでマジックを披露して私の存在を周知させるのも一興だ。

    隣町ならば、まだ明るいうちに奇術をお披露目できるだろう。


    同じネタも使えるし一石二鳥だ。


    ほむら「よし!」


    気落ちしていたが一転、明るいやる気を湛えて歩きだす。

    いざ、名も知らぬ町へ。

    359 :

    このほむほむにはハーレム構築の才能があるな……

    360 :

    なんかここのほむほむの食事シーンを見る度、食べ物系のまどまぎスレを読み返してしまう

    361 :


    隣町でも人の反応はそう変わらない。

    私がハットに花を咲かせるたびに静かなどよめきが起こるし、スカーフをステッキに変えれば目が見開かれる。


    ほむら「はい、盾の中からステッキ~」

    「「「おおー」」」


    何の捻りもない芸を前にしても皆喜んでくれる。

    私の存在が周知されれば、魔法少女の姿で町中を歩いていても大丈夫なのかもしれない。


    ほむら「はい、盾の中からカットラス~」

    「「「おおー」」」


    私は盾マジックに味をしめ、次回からも使い回す事にした。

    362 = 361 :


    マジックを終えた後はゲームセンターの時間だ。

    ゲームは面白い。だが記憶を取り戻さなければ、という焦りが先行しがちで、楽しみきれていない気持ちがある。


    こちらも余裕があるわけではない。

    いつまでもクラスメイトからの質問に適当な答えを返すわけにはいかないのだ。


    今の私と昔の私に相違はあるが、全てがそのままでいいはずもない。



    ほむら「……」


    レバーを使った微調整。

    ほんの少しの操作ミスが死に直結する。


    魔法少女の動体視力をもってすれば、たとえ実弾であろうが避けられない弾などない。


    ほむら「くっ!」


    そんなことはなかった。



    「あーあ、また死んだじゃん」

    ほむら「ラスボスとはいえ……弾が大きすぎる、避けようがない」


    前にも会った事のある外野だ。

    この子もいつもゲームセンターにいるらしい。

    363 = 361 :


    「あの弾をオーバーに避けてるみたいだけど、周りの白っぽい所に辺り判定はないよ」

    ほむら「何?本当か、ありがたい、良い事を聞いた」


    再挑戦だ。勝つまでやる。


    「あんた最近ずっとここ入り浸ってるよね」


    顔は見ていないが、後ろの外野は飴を舐めながら喋っている。曇った声だ。


    「夜遅くまで色々なゲームやってるみたいだけど、家出でもしてんの?」

    ほむら「時間がないだけさ、夜は暇でね」

    「その制服、見滝原中だろ?自分の所にも大きなゲーセンがあるじゃないか」

    ほむら「取り締まりが厳しくてね」

    「ははっ、そういうことね」


    なるほど、確かに弾の白い部分は当たっていない。

    これなら避けるのも楽だ。

    364 :

    周りの白っぽい部分に当り判定はない…東方のドーナツ弾もそんなんだったと知った時のショックが蘇ったぜ。

    365 :

    蜂ですね、分かります

    366 :

    最近お気に入りのSSでよく作者失踪するから完結することを切に願う

    367 :

    >>366
    製作速報はVIPとは違ってゆっくり書くところだから、1日やそこらで失踪がどうこう言うのは逆にプレッシャーだろ
    訓練された製速民なら半年は待てる筈だ

    368 :

    三ヶ月待ったらhtml化されるじゃないですかぁ!

    369 :

    二ヶ月に短縮されたんじゃなかったっけ

    371 :

    ただ、いかんせん余裕がある故に、ふっと執筆に
    飽きたりする事があるから油断出来ない。

    372 :

    >>371
    怖いこと言うなよう……

    373 = 370 :


    ほむら「キミこそいつもいるだろう、ちゃんと学校に行ってるのか?」

    「行ってないよ、行くわけないじゃん」


    外野はさも当然であるかのように答える。


    「私の家、随分前から両親いないからね」

    ほむら「孤児か」


    ボムは使わない。ショットだけで勝つ。


    「……そーゆーこと、止める奴もいなきゃ促す奴もいない、楽な立場さ」

    ほむら「孤独なだけだ」

    「……あん?」


    紅い弾を避け続ける。


    ほむら「楽なのはいつだって最初だけ、寂寥は後からいくらでもやって来る」

    374 = 370 :


    強くなる度に、全てを守れない無力さに失望する。

    強くあろうと願う度に、私と“あなた”の距離は離れて…。


    ほむら「…だから……私は……」


    被弾。

    自機の魔女が死んだ。

    手が動かない。


    「おい……?」

    ほむら「……何故私はそんな事を」


    体が震える。

    記憶が戻ってきたわけではない。


    ただ突然に、どうしようもなく寂しくなった。

    寂しくて寂しくて、どうしようもない。


    「…ラスボスで死んでまで、私に何説教しようってのさ?」

    ほむら「…人は一人じゃ生きていけないってことかな?」


    後ろの外野に向き返る。

    八重歯の可愛いつり目のその子は、呆れ顔だった。

    375 = 370 :


    「一人で生きるのが寂しいのはまぁ、わかるけどさ」


    彼女が操る魔女は機敏で、すいすいと魚のように弾を避けてゆく。


    「大切なもん失って、もっと寂しくなってちゃあ世話ないっしょ」

    ほむら「心にも良くない?」

    「そ、何も持たない奴が、一番長生きするもんだよ」


    ボムが相手の弾を一掃する。

    光線が画面を飲み込む。


    ほむら「物足りなさを感じることはないのか」

    「さあね」


    再びボムが炸裂する。

    ボムは無くなった。


    「あんたは、何も持ってない人?」

    ほむら「いいや」


    私には友達がいる。


    「矛盾するようだけど、あるうちには大切にしなよ」

    「持たない方が良い、って思うのは、それからさ」


    敵を撃破した。

    376 :

    蜂ではなくデススマイルズだったか

    377 = 370 :

    暗い帰路。

    アルコール屋の眩しい明かりを目印に、家を目指す。

    スーツの有象無象の流れの中で、ゲームセンターで出会った少女の言葉を反芻する。



    大切なものを失うくらいなら、持たない方が良い。

    なるほど一理ある。魔法少女としてはその失望こそが最大の危険といえる。

    願った希望に裏切られた時、絶望は生まれる。


    それは魔法少女の願いだけに限らず、様々な場所に存在している。

    家族、友人、なんだって絶望にはなり得る。

    美味いチリトマトのスープだって、時として制服の左袖に牙を剥く事もあるのだ。人生は何が起こるかわからない。


    ならばいっそ孤独に、孤高に、という考え方もわからなくはない。



    詢子「うぇいぃ~…そッたれがよぉンのヤロ…」

    ほむら「……」


    若い女性が看板を抱いてうずくまっている。


    私は一人ではない。さやかやまどか、マミも友達だ。

    依存しているわけでもないが、彼女らは私の守るべき存在。

    私の手の届く内にある限り、私はその全てを守ってみせる。



    ほむら「家はどこに?指差すだけでも」

    詢子「ん~…良いシャンプー使ってんなぁ~…」


    OLを守れなかった贖罪を兼ねて、私は女性を担いで歩きだした。

    378 = 370 :

    ほむら(やれやれ、手間取ったな…)


    酒癖の悪い女性だった。

    私に上司の愚痴を垂らされても困る。

    彼女の誘導のままに家に送り届けたが、果たしてあの家で合っていたか。



    マミ「……あら」

    ほむら「ん」


    人気のない公園に彼女はいた。

    魔法少女の姿のままなので、魔女と戦っている最中だったか。


    マミ「こんばんは、暁美さん」

    ほむら「やあ、遅くまで大変だな」

    マミ「ええ……暁美さんは魔女退治ではないの?」

    ほむら「ただの夜遊びさ、おかげでソウルジェムも調子が万全じゃない」

    マミ「そう…じゃあこれ、使っていいわよ」


    グリーフシードが投げられる。

    黒っぽい色が夜に溶けて焦ったが、平静を装って受け取る。


    ほむら「悪いね、濁りは放っておくわけにはいかないからな…いつか借りを返さなくては」

    マミ「…良いのよ、同じ魔法少女なんだから」

    ほむら「そういうものか」

    マミ「私は、そうありたいと思っているわ」

    379 :

    詢子さん何やってんすかww

    380 :

    重要イベントが起きそうで起きないもどかしさがいいね

    381 :

    夜のベンチ。変身を解いたマミに、缶コーヒーの片割れ(税込120円)を差し出す。


    ほむら「マミとはよく隣り合う仲だな」

    マミ「ふふ、そうね」


    缶コーヒーを両手で包みこみ、マミは微笑んだ。

    やはり一つ上だ。笑顔もどこか大人の雰囲気がある。


    マミ「……」

    ほむら「やれやれ、まだまだ夜は冷えるな」


    缶コーヒーの芳醇な香りが鼻孔をくすぐる。だがしばらくは手の中でカイロになってもらおう。


    マミ「ねえ暁美さん、魔法少女の願いって、どんな願い事にすればいいのかしら」

    ほむら「ん?どうしたんだいきなり」

    マミ「ちょっとね……」

    ほむら「ふむ」


    缶コーヒーを頬に当てて考えてみる。答えはすぐに出た。


    ほむら「何でも良いんじゃないか」

    マミ「そんなことはないとおもうけど……」

    ほむら「自身が魔法少女であることに納得がいく願い事、というのがそもそも不安定なんだ」

    マミ「うーん」

    ほむら「魔法少女である自分を前提として、ついでに願い事を据えるのが一番だと思う」

    マミ「……そうね…そうよね、後悔が無いという意味では、それが一番よね…」

    382 = 381 :

    コーヒーを一口飲む。苦い。

    魔法少女としてのあるべき姿。


    まずは願い事を、可能な限り納得できる形で使う事だ。

    できれば他人のためではなく自身のために使うことが望ましい。


    だがそれはほんの序の口、そんなことは大前提と言えることで、それ以上に願い事に固執しない生き方をすることが良いだろう。


    何でも叶う願い事とはいえ、それを替えのきかない大黒柱として一生をソウルジェムに捧げることができるか、といえば、実に怪しいのだ。

    途中でものの考え方が変われば、たちまちに後悔となってソウルジェムを濁らせるだろう。最善ではない。


    極めて魔法少女としての長寿を望むのであれば、大切なものを持たず、その日暮らしで享楽的に過ごすことが一番だ。

    魔法の力を振るい、さながら魔王のように冷徹に、世間に君臨し生きる。

    壊れて困るものを身の周りに置かず、孤高に、孤独に、しかし楽しく過ごす。


    ゲームセンターの彼女が言うその生き方こそが、極端ではあるが最も健全な魔法少女としての姿と言えるだろう。

    わたしはそれほどまでになりたいとは、さすがに思わないが…。



    マミ「ねえ、暁美さんは……どんな願い事で魔法少女になったの?」

    ほむら「……」


    ああ、また聞かれたか。

    383 :

    SGの真実や魔女化の条件を知った上でってのが最重要だと思うが
    このほむらは魔女化については告げる気なさそうだなww

    384 = 381 :

    ほむら「…私の願いは、さあ、なんだろうな」


    変身する。

    時を止め、ハットとステッキを傍らに。


    マミ「…その盾は、暁美さん自身を守るためのもの……そう言っていたわね、他の人を守るようにはできていないって」

    ほむら「ステッキはまやかし、ハットもおかざりさ」

    マミ「暁美さん、弱くはないはずだけれど」

    ほむら「弱いさ、私には元々、魔法の素質が大してなかったのだろう」


    時が止められるのは私の能力だから良いとして、結界を張れないというのは魔法少女らしからぬ事だ。


    ほむら「願いも、大したことではないのだろうさ」


    思い出せないが。

    願い事以上に、私が過去にしてみせた数々の思わせぶりな景色に興味がある。


    ほむら「マミの願い事は何だったんだ?」

    マミ「私は…事故で死にそうになった所をキュゥべぇに助けてもらったの」

    ほむら「ああ…」

    マミ「命は大事だものね」

    ほむら「ああ、命は大事だ」


    コーヒーが冷めてきた。

    385 :

    はぐらかしてるな
    記憶喪失ってのは打ち明けないんかな?
    まあ、元の人格も内に溜めるタイプだったし

    386 = 381 :


    マミ「ねえ、暁美さん」

    ほむら「ん?」


    缶コーヒーを飲み干そうとした時、マミはたずねた。


    マミ「因果で魔法少女の素質が決まるって本当?」

    ほむら「ああ、そうだが」

    マミ「因果って何?」

    ほむら「決まってるだろう、それは……」


    因果って何だ?


    ほむら「さあ、なんだろう」

    マミ「…え?」

    ほむら「運命、ということなのではないかな、私は魔法少女のシステムの根幹まで知り尽くしているわけじゃないから」

    マミ「そう…暁美さんも、深くは知らないのね…」

    ほむら「何故因果なんて気にするんだ」

    マミ「…えっと、暁美さんが気付いているかはわからないんだけどね」


    手の中で缶を転がしながら、マミは語った。

    387 = 381 :


    ほむら「まどかに、魔法少女としての素質が…か」


    あのおっとりぼんやりな子が魔法少女というだけでも想像もつかないのに、とてつもない素質ときたか。


    マミ「ええ、キュゥべぇも言っていたし、私も感じるわ」

    ほむら「まどかに強い因果が関わっていると?」

    マミ「因果っていうのが関係しているとするならだけどね…」


    あの平凡な子にどんな因果が詰まっているのか、まったくわからない。

    確かに演歌を聞いていたり、挙動不審な所はあるかもしれないが、一般人と言ってなんら差し支えもないはずだ。



    ほむら「……む、むむ、まずい、な」

    マミ「え?」

    ほむら「それはマズイ、非常にマズイな」

    マミ「どういうこと?暁美さん」

    ほむら「まどかが一体全体、どの程度強い魔法少女になるのか知らないが…それに合わせて、まどかが魔女になった時のリスクが高くなる」

    マミ「え?」

    ほむら「あの子は流されやすそうだから…願い事、それに対する絶望や失望には脆い印象を受ける」

    マミ「……」

    ほむら「ひとたびソウルジェムが濁れば、まどかは最悪の魔女に変わり果ててしまう…それは、なんともまずい話だ」

    マミ「あの、あの……暁美さん」

    ほむら「ん?」

    マミ「魔女って…?その、あのね。鹿目さんが魔女に…?」

    388 :

    さらっとばらしちゃったー!?

    389 :

    サラッと言っちゃったぁー!
    まぁ今までも別に隠してた様子はなかったけど……

    391 :

    ここで魔女化暴露きたぁぁぁあ!!!!


    さあ…マミさんはどうなる?

    393 = 381 :

    ほむら「今すぐ魔女になるわけでは――」

    マミ「ごめんなさい、そうじゃなくて、えっと…」

    ほむら「どういうことだ?」

    マミ「ごめんね、こっちが聞きたいのよ…」

    ほむら「だから何を?」

    マミ「待ってよ、どういうことなのよ」


    声が震えている。マミは静かに立ち上がった。


    マミ「意味がわからないわよ…どうして鹿目さんが魔女になるのよ…」

    ほむら「……ああ、そういうこと」


    なんとなく察した。彼女は知らなかったらしい。

    魔法少女が魔女になることを。


    ほむら「私達、魔法少女が持っているソウルジェム…これが濁りきった時、私達は魔女に生まれ変わる」

    マミ「……」

    ほむら「知りたかったことはこれだろう」

    マミ「……知りたくなかった…」


    涙交じりに掠れ出た声。


    マミ「そんなこと……知りたくなかった…」

    ほむら「……」

    394 = 381 :

    マミ「私のやってきたことって……何だったの?」

    ほむら「……?」

    マミ「私が倒してきた魔女は……魔法少女だったのよね……」

    ほむら「ものによっては使い魔だ」

    マミ「私がこの手で…?」

    ほむら「おい、マミ大丈夫か」


    彼女の後ろ姿が危うく見える。

    両手を見比べ、わなわなと震えている。



    ほむら「落ちつくんだ、魔女は魔女であって、魔法少女ではない」

    マミ「……」

    ほむら「魔法少女が魔女になった時、それはもはや、戦う事をやめた“死”の時だ」

    マミ「……」

    ほむら「魔法少女のソウルジェムが限界まで濁り、魔女になる…確かにそれは世界にとって痛手となるだろうが、その新たなる魔女を抑制することも魔法少女としての務めだ」

    マミ「……」

    ほむら「マミ…」


    彼女から黄色い閃光が瞬く。

    私は咄嗟に盾を構えた。

    395 = 381 :

    金属が強く弾かれる音と共に、私は数歩ほど後ろに後退した。

    自分の意思で下がったのではない。

    マミの弾丸のエネルギーで押しやられたのだ。


    ほむら「冷静になれ、マミ」

    マミ「うっ…うううっ…!」



    左手の盾からエネルギーの余波が煙として棚引いている。

    煙の向こうには、マスケットの銃口をこちらに向けるマミの姿があった。


    両目から涙を溢れさせ、嗚咽を堪えて、しかし私を見ている。


    ほむら「マミ、」

    マミ「魔法少女は魔女なのね…!あなたも、私も…いつかは、魔女になるしか…!」


    何を言ってもどうしようもない目をしている。

    私がしばらく留まっていた病院の隣の部屋の患者がこんな目だった。



    ほむら「言うよりも頭を冷やさせる方が早いか、マミ」

    マミ「うわあぁあぁああああッ!」


    引き金が引かれる。

    させるものか。

    時を止める方こそまさにノータイムだ。


    カチッ

    396 :

    絶望マミさんキター

    398 = 381 :

    カチッ


    マミ「っ…!」

    ほむら「1.ミスディレクション」


    マスケット銃が公園の闇を撃つ。

    私はマミのすぐ隣に移動していた。


    ほむら「“こいつの力は一体?”君はそう考えているだろう」

    マミ「わぁああああッ!」


    伸びるリボン。わざわざ捕まってあげる義理もない。

    カチッ

    マミは錯乱状態にある。なんとかして、手荒な真似をしてでも目を醒まさせる必要がある。

    カチッ


    マミ「捕まえッ…!?」

    ほむら「2.ジャック・ザ・ルドビレ」

    マミ「くっ…!?鎧!?」


    私の居た場所には中世の鎧騎士。

    私は電灯の真上に移動している。


    マミとは一度戦った。攻撃パターンがわかっている以上、対策は簡単だ。


    ほむら「“瞬間移動?物質移動?両方?”冷静に物事を考えられるようになったか?」

    マミ「降りてきなさい!私のソウルジェムが濁りきる前にあなたを殺さないと……ッ!」

    ほむら「だめか」


    雁字搦めに縛られた中世の騎士がこちらに飛んでくる。やれやれ。


    カチッ

    399 = 381 :


    空中で面白おかしいポーズを取っている鎧騎士をワンクッションに、地上へ降り立つ。

    元のベンチに腰をかけ、ステッキを持ち、ハットを被る。


    カチッ



    ほむら「落ちつけマミ、魔法少女が今すぐ魔女になるわけではないだろう」

    マミ「嘘よ!みんな最後には魔女になる!なら今すぐ…今すぐみんな!」

    ほむら「冷静になれば君の言っていることがめちゃくちゃだと…おっと」


    カチッ


    危ない危ない。マミめ、銃の狙いだけは正確に私の左手のソウルジェムに合わせている。

    狂っているようで、戦闘面では狂っていないな。

    長年のしみついた戦闘経験からか。厄介な人だ。


    ほむら「言って聞かせてわからないんじゃ、次は痛めつけてみるしかないか」


    子供はそうして強くなる。


    私はゆっくりベンチから立ち上がると、右に数歩歩いて、


    カチッ

    400 = 381 :


    ベンチに突き刺さる弾丸。


    ほむら「3.殺人ドール」


    マミの腕に突き刺さるナイフ。



    マミ「っ…ぁああっ…!?」

    ほむら「静まれマミ、近所に迷惑だ」

    マミ「うぐっ、ううっ、あ、暁美さん…ううう…!」


    マミはその場にうずくまった。

    手を抑え、うめき声を漏らしている。



    ほむら「血を流して落ちついたか?」

    マミ「…うう……」

    ほむら「よく考えてもみるんだ、私達魔法少女がいなくなれば……」


    マミ「――魔女はいなくなる」



    ほむら「……くそったれ、やりやがったな」



    私の後方。

    風穴の空いたベンチの、その風穴から、一条の黄色いリボンが、私の左足首を捕えていた。


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