元スレ女友「アンタの体質って何なの?」男「…」
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251 = 217 :
「ちょうど三人…?」
「え、でも四人用っすよね?」
黒猫「ええそうよ。だからね、こんな幸せな私にはもっと──」
黒猫「──素晴らしい幸運が訪れると思うのよぉ」
「幸運って───」
キキィ! ドン!!
「──へっ!? な、なんだっ!?」
「ど、どこかで事故ったみたいっすね!?」
黒猫「……」
黒猫「…あら」
「あ、あれ…あの制服…南火の…」
「生徒っすよね…?」
252 = 217 :
黒猫「なんて、なんて、まぁ」
黒猫「南火生徒の子が…交通事故に──これは幸運ねっ!」
「え…」
黒猫「この方面では中々、南火の生徒には会えないのに…こうやって出会えた」
黒猫「だけど、残念ね。あの姿じゃあ…映画なんてとても見れないわ」
黒猫「出会えた幸運はあれど、映画を一緒に見ることは出来ない不幸」
黒猫「…本当に、本当に、残念だわだわ」
「こ、これは……」
「うっ…なんて、うそっすよね…これが〝体質〟とでも言うんすか…?」
(──彼女と関わるだけで、運命が狂わされ、不幸になる)
黒猫「ふふふ。さて、行きましょうか…二人共」
(『不幸体質』──南火校の〝黒猫〟……!!)
253 = 217 :
東地区 映画館前
男「………」
女「どうしたの?」
男「そういえば映画を見ると言っていたな、なんの映画だ?」
女「えっと、猫の一生ってやつだよ」
男「…猫」
女「好きなの?」
男「な、なわないだろう! この俺があの…ぷにぷにの肉球を持ち合わせた、可愛い家畜など!」
女「かわいいよね」
男「な、なんだそのほほ笑みは! やめろ! 違うと言っているだろう!」
女「高校生二人で」
男「むぐぅっ…!」
254 = 217 :
~~~
男「…映画を見るのは久しぶりだな」
女「そうなの?」
男「ああ、前はよく行っていたが…ここ最近は観に行ってなかった」
女「……」
男「まぁわかると思うが、そんな暇がなかったのでな」
女「きっと見つけるよ、目的の女の子は」
男「…ああ、頼む」
女「うん」
ブィー!
男「始まるみたいだな」
女「……」
男(猫か、ふん! この俺と満足できるものなのか…少し試させてもらうか)
255 = 217 :
数十分後
男「………」
男「…っ……」うるっ
男(っ…し、しまった。まさかこの俺が……まさか涙腺を緩めるなどと…!)
男(だがそれも仕方ないことなのかもしれん…この映画は素晴らしい)
男(猫と一生だと言ったか。チープなタイトルで疑っていたが…くそ…)
男「………」チラ
女「ぐすっ…」
男(ほぅ。コイツも心に来ているようだな…ふふ、ネコ好きか)
男(確かに、この世に猫嫌いなど居ないだろう。あのふわふわとして可愛らしい存在…)
男(愛くるしい鳴き声…全てが完璧だからな)
256 = 217 :
男(だが油断はしない。確かに涙腺にダメージはあったが、それはもはや乗り越えた…!)
男(男は泣かない。師匠の言葉だ、ふむ。全力で立ち向かわせてもらおうか!)
男「……」ボロボロ…
男「──ッ…!?」
男(な、なんだ…? 急に涙が!?)
キィイイイイイイイイイイイイン!
男(この感覚……は…)
女「ううっ…ひっぐ…」キィイイイン!
男(体質が発動しているのかっ…まずい、しかし、止めるべきかっ?)
女「ぐす…」
男(人を困らせているだけではない…ただ泣いて、そして共感するべくチカラを使っているだけだ…)
257 = 217 :
男(…にしても、なんていう体質だ)
「うぉおおおいおいおい!」
「ひっくぐすゅっ! びえええーん!」
男(他の客がところ構わず号泣している…女の体質に反応しているのか…)
男(…しかし、女の姿は客には見えていない。それに、女も客を見ている様子もない)
女「うっぐ…」
男(視界による条件ではないのだろう。しかし、ここまで大きく反応するのであればそれなりの条件が──)
ジリリリリリリリリリリ!!!!
男「むっ!? なんだ!?」
女「…え」
『──火事が発生しました。早急に係員の先導により、非難を行ってください』
258 = 217 :
男「火事だと…っ?」
女「え…!」
男「珍しいこともあるな、おい、とりあえず非難をするぞ」
女「……」
男「…? どうした、なにをしている? 早く立ち上がれ──」
女「い、いやっ…やだやだ…!」
男「お、おい?」
女「怖い──嫌だ、怖い怖い…!!」
男「どうしたっ!? 急になにが起こって──」
『──薬のせいで性格がブレることも在る』
男「まさかっ…くっ! とりあえず落ち着くんだ、女。大丈夫、怖いことはない!」
女「やだやだっ! 怖いよっ…やだ!」
女「怖い…!」
キィイイイイイイイイイイイイン
259 = 217 :
男「っ…!」ぞくり
男「なんだ、今のは…急に寒気が、むっ…? 足が震えて、うおっ!?」ドタリ
男「っ…? っ…!? 心臓が痛い…!」
女「っ……!」
男(まさかこれは──恐怖? 女の恐怖が周りに反応して──)
「きゃああああああ! やだあああああ死にたくないいいいいいい!!」
「やめろどけぇ! 俺が先に行くんだ! お前は後から来い!」
「引っ張らないでよ! てめーが先に死ね!!」
男(周りの客が暴れ始めている…!)
男「つっ…おい、落ち着け女!」
女「ううっ…ううっ…」
男「だ、大丈夫だ! なにも怖くはない! 」
260 = 217 :
男「なにを恐れている! お前を傷つける奴はここには居ない!」
女「……っ……」
男「だから心を静めろ! くそっ…聞こえてないのか女!」
女「…だめだよ…っ」
男「な、なにがだ!」
女「だめ…なにも見えない…声も光も…全然みえない…っ」
女「私はひとりぼっち…誰も見てくれない、誰も私を必要としてくれない…!」
女「だから、だめっ…!」
キィイイイイイイイイイイイイン!!
男(なんだそれはっ…意味がわからん! 一体なんだと言うのだ!)
男「おい、女…! お前がなにが言いたいのかさっぱりだ…っ!」
男「だがな、それでもお前は──希望を見つけるために頑張るんだろう!?」
261 = 91 :
ぶん殴って気絶させた方が早いんじゃないか
262 = 217 :
女「っ…希望…?」
男「ああ、そうだっ…! 希望は確かにあるぞ! だが、小さくて見えないだけだ!」
男「だから探すんだ! お前はきっと見つけられる! だから、くっ…!」
男(周りが暴動を起こしかけているっ…! これは…!)
女「私は…私は…」
男「…っ…」
女「……ううっ…わからないよ…なにをしたらいいのか、わからないんだよ…」
女「やっぱり人はそう簡単に変われないっ…また、私は人を傷つける…!」
男(…コイツ、最初の発動から更にこの状況で体質を発動させてるのか…!?)
男(なんという負の連鎖だ…自分に自信が無いものは、ここまで弱いものなのか…!)
男(コイツの弱さは──弱さは……)
男「……そうか、弱さか」ずりっ
男「今、なんとなくわかった…お前は弱いんだな」
263 = 217 :
女「ううっ…」
男「…俺は弱いものの気持ちが、わかりずらい」
男「昔から傲慢で、自信家で…そうやって生きてきた」
ずりっ…ずりっ…
男「だからお前の気持ちがわかってやれない」
男「けどな、それでも、俺はわかってやろうとしてやるぞ…」
男「昔の俺とは違う…なにも見えなかった、馬鹿な俺は居ないんだ…」
男「だから──お前の弱さを知ってやる」
ぎゅっ
女「…え…」
男「強くなれ、心を進化させろ。手助けしてやる、この俺が」
女「助けて…くれるの…?」
男「馬鹿言え。助けるはずがない、お前が助かるように努力しろ」
264 = 217 :
男「俺はただそれに乗っかるだけだ…」
女「……」
男「弱いなら、頑張れ」
女「……」
男「…強くなれ」
女「…強く…なれ」
キィイイイイイイイイイイ……
イイイイ…
女「…………」
男「…ふぅ」
「…あ、あれ? なんで俺…?」
「あ、ああっ! ごめんなさい! 私ってどうして…!」
男(元に戻り始めたな…頭が痛い、くっ! とりあえず非難をしなければ…!)
265 = 217 :
「──こっちよ! 二人共!」
男「むっ?」
女「あ…」
女友「ごめんなさい…! 助けるが遅くなって! あたしたちもその…っ」
友「動けるかい?」
男「ああ、大丈夫だ。わかってる、みなまで言うな」
女友「…う、うん」
男「さて、行くぞ。映画は見れなかったが、まずは己の命が大切だ」ぐいっ
女「……」
男「掴まれ。背負ってやる」
女「…うん」
友「こっちだよ、早く!」
男「ああ」たったった
女「………」ぎゅっ
267 = 217 :
東地区 公園
友「ふぅ、一時はどうなるかって思ったよ」
女「…ごめんなさい」
女友「っ…な、なに謝ってるのよ! あれは仕方ないことだったじゃない…!」
友「…あれ、そうかな? 確かに火事は違うかもだけれど、暴動が起きかけたのは彼女のせいじゃないか」
女友「な、なによっ!? 文句あるわけ!? だってそれは…!」
友「ボクは本当のことを言っているだけだよ。それに、君だってわかっているはずだ」
女友「そ、それは…っ」
女「ううん、いいんだよ。友さんの言うとおりだよ」
女友「女…」
女「ありがとう、また庇ってくれて…でもあれは私のせい」
女「私の体質がまた、周りを不幸にさせた…ただ、それだけのことなんだよ」
268 = 217 :
女友「違う…違うわよ! 仕方ないことじゃない、だってアンタは体質が…っ」
「そいつの体質の条件は〝心の弱さ〟だ」
女友「…え?」
男「やっと分かった。さっきの映画館で、俺はそう判断した」
女「…………」
友「心の弱さ、ってのはどういうことだい?」
男「怯えた時、怖かった時、自信がなかった時──」
男「──それに呼応して、女の『シンクロ体質』は行われる」
女友「それ…本当に…?」
男「ああ、そうだな…」
男「…しかし例外はある。安定剤で〝体質〟を落ち着かせた場合は違うみたいだが」
男「…それでも、きっと、お前の条件は」
女「…心の弱さ」
269 = 217 :
男「…。お前は自分に自信がないのだろう?」
女「…うん」
男「なにをしても、なにを思っても、それが正しいとは思えない」
男「何時も迷って、考えて、そして──体質によって〝悩み〟を吐き出す」
女「……」
男「それがお前の本質で、条件だ」
女友「…女…」
女「…確かにそうみたい、私もなんだかそんな感じがするんだ」
女「怖いんだよ、前を向くことが。どれだけ正しいことだって、わかってても」
女「…私の心がいうことを聞いてくれない」
女「何時まで経っても独りぼっちで、何処にいても…心にぽっかり穴があいてる」
女「なんでだろう…女友ちゃんみたいな、大切な子がいるっていうのに」
女「……私はいつも、怖かった」
270 = 217 :
女友「……っ…」
女「それにね、男くん」
男「なんだ」
女「貴方が言ってくれた──喧嘩を売ろうって言葉も」
女「きっと信じきれてない。まだ心の端では疑ったまま」
男「……」
女「貴方の言葉がとても強いことは、わかってた。信じて、その道を進むことも考えた」
女「…貴方に近づけば、私も強くなれるんじゃないかって」
男「そうか、なるほどな。今日はいい大胆さだったぞ」
女「…ありがとう、でもね、やっぱりだめだったみたい」
女「──私の心は、弱いままだった」
女「どうしたらいいんだろう、もうね、疲れちゃった…」
女友「…だめよ、変なことは言わないで…!」
271 = 217 :
女「…ありがと、女友ちゃん。貴方には本当に助けられてばっかりで」
女友「うっ…」
友「……」
女「だから、それこそ…私は弱いまんまなんだね──」
女「──ねえ、男くん」
男「どうした」
女「私は条件を見つけられた」
男「…ああ、そうだな」
女「この条件は、貴方の考えで…制御できると思う?」
男「……」
男「──無理だ、心の強さに制御など出来るはずがない」
女友「ッ…!」
女「…うん、わかってた。そうだって、思ってた」
273 = 217 :
男「………」
女友「なん、でよっ…どうしてよっ!? アンタは出来るって言ったじゃない!!」
男「言ったな、だが、無理なものは無理だ」
女友「なにようそつき!! 東の吸血鬼なんでしょ!? 救いなさいよ!! この子を!!」
男「…無理だ、俺には出来ん」
女友「っ…なにそれ…! なんなのよッ!? なに言ってるのよ!?」
女友「アンタはそうやってすぐに逃げるのね!? 出来なかった問題がすぐに目を背ける!!」
友「…」ぴく
女友「だから全てを失うのよ!! 王の座だって、アンタが馬鹿だから失った!!」
男「……すまん」
女友「謝ってほしくなんかないわよ!! このッ…他人の気持ちがわからない──」
友「──おい、黙れ」
女友「っ…な、なによ! アンタは黙ってなさいよっ!」
274 = 217 :
男「…友落ち着け」
友「ボクは落ち着いてるさ。けれど、彼女は言ってはいけない事を言っている」
友「これが怒る原因になりえることに、君にも文句は言わせない」
男「分かった。だが、落ち着いてくれ…それにお前もだ」
女友「っ…!!」
男「今は争う場合じゃない。女のことを考えるべきだ」
女友「なによっ…考えたって無駄じゃない、アンタにはなにも出来ないじゃない…!」
女「もうやめて、女友ちゃん…彼は悪くないよ」
女友「あ、アンタは黙ってなさい! あたしは絶対に諦めないから!!」
男「……」
女友「心の弱さがなによっ…この子は見つけてみせるわよ! ちゃんと乗り越えてみせるはずよ!!」
男「…そうか、勝手にしろ」すっ
275 = 217 :
女友「っ……なによ…なんなのよ…!」
男「俺は出来ないと言った。もうソイツに…できることはない」
女「……」
男「すまなかった。やはり人間は、運命に勝てないみたいだな」
男「…こっちの頼みは無しにしていい。ありがとな、では」すたすた
友「……じゃあね、また何か機会があったら」ふりふり
女友「っ……」
女「……」
女友「…ごめんなさい、あたしってば勝手にこんなこと…」
女「ううん、いいんだよ。これでよかったんだよ」
女友「でも、でもっ…あたしは諦めないから…! アンタの心の弱さを、絶対に強くさせてみせるから…っ」
女「…うん、ありがと」
276 = 217 :
~~~~
友「随分とまぁ、突き放すんだね」
男「事実を言ったまでだ。俺には出来ない、ただそれだけのことだろう」
友「そうだね。心の強さなんて、誰かにできることじゃない」
友「…だってそれは、君がずっと求めてることだものね」
男「……」
友「懐かしい雰囲気だよ。殺伐として、空気が淀んでる」
友「まるで彼女──【黒風の東】が近くに居るみたいだね」
男「……」
友「あれ、怒らないのかい?」
男「…なにが言いたい」
友「君の過ちさ。四年もたったんだ、ここは話そうよ腹を割ってさ」
277 = 217 :
男「…お前は何度言わせたら気が済むんだ」
友「何度だって言うよ。それがボクが出来ることだって、自負してるつもりだからね」
男「……」
友「君の後悔は、ずっと君を苦しめる」
友「彼女と君の間にあった──あの問題は」
友「男をそこまで変えてしまうほどのトラウマを生んだんだ」
男「…あの時の俺は、なにも知らなかった」
友「だろうね、人は言うかもしれない──そんな単純なことで傷つくなんて」
友「君はもっとも人が単純に乗り越えられるだろう問題を──乗り越えることが出来なかった」
友「それが君の過ちだ」
男「…変えようとしている、今は、乗り越えようと努力している」
279 = 217 :
友「出来ないくせに、強がるなってば」
男「……」
友「だけど応援はしてるよ。君が新しい自分になることを、ボクは何度だって応援してあげるよ」
友「…けど、忘れることは強さにはならないって思う」
男「…なにが悪い、俺はそれが全てだと思った」
友「だから新しい女の子を探して、また傷つけるのかい?」
男「っ…!!」
友「君は一体なにがしたいんだろうね、ボクにはわからないよ」
男「怒るぞっ…それ以上言うな、本気で怒るからな」
友「怒れるのかい。きっと君が一番理解しているはずなのに」
男「うるさいっ! お前になにが分かる! 知ったようなことを言うなっ!」
280 = 217 :
友「知ったようなことを言っているのは君のほうさ」
男「ッ…なにを…!」
友「君はなにも分かってない。いや、わかってるんだろうけど目を背けてる」
友「…弱いね、東の吸血鬼。相変わらず君は弱いよ」
友「ねぇ、聞かせてよ。この際だからさ、君はあの時──どう思ったの?」
男「なにがだッ」
友「全てに知ったような口ぶりをして、全ての王から敬意を貰い」
友「傲慢で、王様で、強情だった──完璧の君が…」
友「…どうして、あの【黒風の東】の彼女から──」
友「──好きだって言われただけで、酷く落ちぶれたのかなってさ」
281 :
ちいさいことだが非難→避難じゃね
282 = 217 :
男「………」
友「笑っちゃうよね。どうしてだい、東の吸血鬼さん」
男「…うるさいっ…」
友「君の体質にかかった女の子は皆、君のことを好きになっていたのにさ」
男「黙れっ…黙れと言ってる…!」
友「──どうして彼女だけは、駄目だったんだい? そして、乗り越えられなかったんだい?」
男「黙れ!!」
友「気づいたんだろ、自分の弱さに。きっとその瞬間に」
友「…本気で心を向けてくる人に対して、自分がなにを返せばいいのか」
友「わからなくて、ちっぽけで、馬鹿だったから」
男「っ……」
友「だから君は弱いんだ。本気を知らない、それは──あの女さんと一緒だよ」
283 = 217 :
男「…うるさいぞ…っ」
友「なにを見てるんだい、君は。また挑戦するために、代わりの女の子を探して」
友「また同じ過ちをするつもりなのかな?」
友「言ってあげるよ。君はまた──失敗する」
友「四年前と一緒だ、東の吸血鬼を捨てたあの時と同じ」
友「…君は更に落ちぶれる」
男「………」
友「変わったのは外見と、その虚勢だけだよ。君は」
男「…なんなのだ、お前は」
友「…」
男「…俺になにを求めてる。俺は、ちゃんと乗り越えようとしている…」
285 = 217 :
男「あの四年前から…全て、乗り越えてきたつもりだ!」
男「なのにお前はまだ…っ…責めるのか! あの時の俺を!」
男「いいだろうっ…もう、救われていいはずだろ…!」
友「…君は強い人間だ。本当だよ、だからこそ難しいだろうね」
友「人っていうのはどうやって這い上がるのか。もっと簡単に済むはずなんだ」
友「だけど元から君は強かった。だから一旦落ちぶれた時、どうすればいいのか分からない」
友「……師匠とやら見つけても、君は弱いまんまなんだ」
男「……」
友「ボクに言えるのはこれだけなんだよ、男…ごめんね」
友「言っただろう? 人の心は、他人がどうすることも出来ない」
286 = 217 :
友「もう一度よく考えるんだ。ボクは、ボクはずっと君の幸せを願っているんだから」
友「…君はなにがしたいんだい? 救われたいのかい? 乗り越えたいのかい?」
友「できることなら、ボクも君を……ううん、なんでもないよ」
男「………」
友「希望は何処に在るんだろうね、だけど、ボクはすぐ近くに在ると思うよ」
友「見つけられるといいね、男」
~~~
数時間前
東地区 映画館
ジリリリリリリリリリリ!!
「く、黒猫さん! 逃げましょうよ!!」
「や、やばいっすよ! 火事っすよ!?」
黒猫「もぐもぐ…」
287 = 217 :
黒猫「馬鹿言わないでくださるぅ? 映画はまだやってるのだわ」
「何いってるんですか…!? 危ないんですよ!?」
「ううっ…やっぱり不幸っすよこれは…っ」
「ば、バカお前! いうなっていただろ!」
黒猫「──不幸? ふふふ、たしかにそうねぇ」
黒猫「確かに今は不幸よねぇ…楽しみにしてた映画が火事で最後まで見れなくて…」
黒猫「なんともまぁ、私ってば不幸なのかしらぁ。うふふ、ふふっ! あははは!」
「っ…もうだめだ! 逃げるぞ!」
「は、はいっす!」
黒猫「あら、あら、もう行っちゃうの?」
「あ、アンタはっ…やっぱりバケモノだ! なにを考えてるのかさっぱりわからないっ!」
黒猫「まあ酷い。そんなこと、親にも言われたことないわ……ぐすん」
288 = 217 :
黒猫「だけど、いやぁね。そんな私を置いて逃げるなんて…」
黒猫「もしかして貴方──私より幸せになろうって思ってる?」
「え…」
黒猫「この不幸で可哀想な私よりも、幸せだって思ってる?」
黒猫「自分がいちばんかわいいって、なによりも奇跡に溢れてて」
黒猫「すべてのうんめいからすくわれたそんざいかだとおもってるのかしらぁ?」
「…なんだこの人っ…! えっ!?」
黒猫「いやーね、ほんっと」
黒猫「不幸になっちゃえばいいのに」
「人集りがこっちに、やめ、て来ないで──」
290 = 217 :
ドシン!!!
「ぅぁ…」
黒猫「あら下敷きになっちゃった。もしかして今、不幸?」
黒猫「──ありがとう、今とっても私は幸運よ!」
黒猫「貴方のお陰で運差が変わって、私が一番幸せなの!」
黒猫「嬉しい! これ程嬉しいことなんてないわ! あははは!!」
黒猫「…それに、ね」もぐ
黒猫「良い感じのタイミングで──これほどの最高のタイミングで」
「ほら行くぞ」
「……」
黒猫「ふふふ。なんて素敵な〝体質〟なのかしらね…彼女」
黒猫「──是非ともお仲間に入って欲しい限りだわ、だわ」
291 :
追い付いてしまった……しえん
292 = 91 :
これ不幸体質ちゃう
さげまん体質や
293 = 217 :
次の日 休日
男「……」
男「よく眠れなかったな…」
男(まあ眠れるわけがない、昔のことを随分と思い出した…)
男「…」かちゃ
男「今日一日、どうするか」
東地区 生命の女神像
男「……」
男(この街には4つの像が存在している──東西南北、それぞれには意味があり)
男(…そしてそれは、この街を救った英雄だと言われている)
男「英雄、か」
男「それは…師匠みたいな人を言うんだろうな」
294 = 217 :
男「…師匠、貴方は今どこにいるのですか」
男「あれから随分と時がたちました…けれど、貴方は帰ってこない」
男「俺は…なにをしているのか…もう……」
男「…なにが正しくて、なにが間違っているのか…」
男「っ……」
「──こーんにちわぁ」
男「むぉっ」
295 = 217 :
「あら、あら、びっくりさせちゃったかしら?」
男「お、お前は…」
黒猫「お久しぶりねぇ、何時以来なのかしらね」
男「…何故ここにいる、ここは東地区だぞ」
黒猫「いいじゃないですか。だって、この街はみんなの街なのだわ」
黒猫「今日はいい天気ですしねぇ。うん、うん、だからお散歩ですのよ」
男「要件は何だ。手短に…済ませろ」
黒猫「おや、おや、もしかして体調が優れないのかしらぁ?」
男「……」
黒猫「ふふふ。まぁいいですわ、今日は1つだけお話しをしに来ましたの」
男「話だと?」
黒猫「そうですわぁ。うふふ、貴方にとってどれほどの重要さはわかりませんがぁ」
296 = 217 :
男「…なんだ」
黒猫「あのですねぇ、やっと、やっと! 私にも幸運が訪れたのですわぁ!」
男「な、なんだっ? 幸運…?」
黒猫「そうですの! なんて素晴らしいのでしょうかぁ…私はきっと、誰よりも幸せなのだわ…」
黒猫「…ふふ、見つけましたの。最高の体質もちの方をね」
男「っ……」
黒猫「先日、映画館でお見かけしたのですわ。なんて、傲慢で綺羅びやかなチカラなのかしらと…」
黒猫「…思わずその顔を凝視してしまうぐらいに」
男「…それがどうした」
黒猫「いえ、ね。貴方には色々とご迷惑をかけたかと想いましたので、言いに来たのですよぉ」
黒猫「──もう色々と嗅ぎまわっても、私はなにもしませんわ。っとね」
297 = 217 :
男「…噂は聞いてる。体質もちを探しまわってるそうだな」
黒猫「ふふふ」
男「それで十分だと判断をくだしたのか。そいつは…それほどの体質持ちだと」
黒猫「どうなんでしょうか、ふふふ」
男「…言いたくなければ、それでいい」
黒猫「ごめんなさいねぇ。これでも、ボスを語ってるものですから」
黒猫「ともかく、なによりも、これだけを伝えに来たかったのですわぁ」
男「……」
黒猫「最後にひとつだけ。知ってますかしら? 幸運は不幸の裏返し、だと」
黒猫「──強まる不幸があるほどに、後に待つ幸運は絶大なチカラを発揮する」
298 = 217 :
男「…知らんな、宗教論か?」
黒猫「いいえ、私の独自の考えですの」
黒猫「なんとなく分かるのですわ。貴方は何処か、私に関係があるのだと…ね」
男「……」
黒猫「…運命の起こす出来事は、私にきっと幸せを呼ぶでしょう」
黒猫「だからこそ、貴方も私に──絶大なる幸運を、くださいまし」ぺこり
黒猫「では、では、それでは。ご機嫌麗しゅう」
男「…不吉なやつだ」
男(でも、そうか…とうとう見つかったのか。あの時の──映画館で)
男「…なにを考えている、俺」
男(もう関わらないと決めたはずだろうに。俺に、できることはなにもない)
299 = 217 :
男(出来なかったんだ。今日という日が来ないよう──)
男(──それでも、俺は役立たずだった)
男「アイツに、俺はなにもすることは出来なかったんだ」
男「それが運命だ…」ぎゅっ
男「…本当に、俺は口ばっかりの奴になってしまったな」
男「………」
男(いや、昔から口だけの奴だった。なにも変わっては居ない)
男(強がりで、傲慢で、だけど弱い)
男(…取り返しの付かないほどの、大馬鹿もんなんだ)
男「俺は……なにも出来ない」
東風校 寮
男「…」ガチャ
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