元スレ【新ジャンル】「台詞系SS総合スレ」( ^ω^)
新ジャンル覧 / PC版 /みんなの評価 : ▲
451 = 180 :
女「zzz」
はっは。Zはまだ発音できるんだ。
なんだかよくわからないけれど、笑ってしまった。
もう最後かな。君の声を聞くのは。
たった一つのアルファベットだけれど。君の声には違いない。
可愛いいびきを聞きながら、僕もベッドにもぐりこんだ。
君はどんな気持ちだった??
頭をなでながら、寝顔を見つめる。
女「zzz」
僕は今、名残惜しい気持ちと愛しい気持ちが入り混じっている。
君もこんな気持ちだったのかな。
最後の君の声を聞きながら、僕も眠りに引き込まれていった。
452 = 180 :
目が覚めた。
なんだか頭がぼーっとしている。
彼女は隣で笑っている。
笑っている??
女『おはよう』
!!
なぜ、声が出せるんだ。
女『やっと、私も追いつけたね』
何を言ってるのかよくわからない。
追いつけたって、なにに。
453 = 180 :
女『君が声を出せなくなってから、ずいぶん待たせちゃったね』
そうだ…
この声は、彼女の口からではなく、頭の奥から聞こえる。
女『君の声も、私にはちゃんと聞こえていたのよ』
本当に!?
女『うん、本当だよ』
僕の声も、同じように彼女には伝わっていたのか。
君の頭の中に、僕の声はあったのか。
女『うん、君は声を失ってしまっていたけど、私の頭の中にはあったよ』
女『でも、うまく説明ができなくて…』
女『でもこれで、やっと話せるね』
454 = 180 :
言葉は失っても、会話はできる。
男『じゃあ、ずっと言えなかった言葉を言いたい』
女『なあに??』
男『愛してる』
女『ふふふ。ずっと聞こえてたけどね!!』
女『でも、ありがとう』
★おしまい★
455 :
乙
いいアイディアだなw
面白かった!
456 :
乙!楽しかったよ。
GJです
457 :
読んでいただきありがとうございました
もし発音できないはずの言葉を喋っているとか、
ここわかりにくいとか、指摘があれば遠慮なく言ってくださいね
458 :
いいなこれ
459 :
.
460 :
>>457
素敵なお話でした。GJ!!
461 :
ブログの方で忠告いただいたのですが
「E」を発音できなくなった直後に「れ」を発音してました
すみませんwww
462 :
久しぶりに来たら良い話が投下されてた
464 :
一本投下します
前の話とよく似てますが…
・地の文あり
・新ジャンルではなく普通のSS
・エロなし過剰な萌えなし
男「あの頃の僕らにはもう戻れない」
465 = 180 :
「おはよう」
彼女が起きだしてきた。
「おはよう」
僕は笑顔で彼女を迎えるが、口の端が不自然になってしまった。
「お腹すいた」
よし、気付かれなかったようだ。
テーブルに向かう彼女を横目に、焦げついたフライパンをこっそり洗う。
また目玉焼きに失敗した。
何がサニーサイドアップだ。黒点しかないじゃないか。
部屋の中は焦げくさいにおいでいっぱいだが、彼女は気づかない。
そういう病気なんだ。
466 = 180 :
ソラニンという名前の病気が流行り出したのは、年号が変わって間もなくの頃だった。
僕は当時、彼女との同棲生活をスタートさせたばかりだったこともあり
TVをつける余裕もなく自分のことで精いっぱいだった。
初めは珍しい症例として時々取り上げられるだけだったが、僕がその病気を知る頃には
国民の5%近くが感染していた。
今ではもう20%の国民が感染しているらしく、大きく取り上げられることも減った。
そのかわり、社会は大混乱で、日本はもうどうしようもないところまで来た。
海外のニュースでは大騒ぎらしいが、日本もそれどころではない。
国民の20%だ。5人に一人は感染者だ。
僕も、彼女も、それに感染しないなんて、誰が断言できるだろう。
467 = 180 :
ソラニンは脳の病気だ。
脳の中から芽を出し、脳を侵す。
脳をスキャンすれば、まるでジャガイモのように芽を出した影がくっきり映るそうだ。
人から人へはうつらないらしい。
原因不明の治癒不能。
医学の発達でかろうじて進行は遅らせられるものの、今のところ治る手立てはないそうだ。
人から人へうつらないのになぜ感染者が膨れ上がったのか。
最初の感染者は誰なのか。
治す手立ては発見されるのか。
神も仏もいないのか。
なにもかもわかっていない。
僕も、国も。
468 = 180 :
ソラニンに感染すると、なにかを失う。
それは、聴覚だったり、視覚だったり、言語だったり。
記憶だったり、運動能力だったり。
人によってさまざまだそうだ。
ある一定期間の記憶だけを失った人もいれば、昨日の記憶もない人もいる。
下半身だけが動かなくなった人もいるし、右目だけ見えない人もいる。
日本語だけを忘れ、カタコトの英語で話すようになった人もいるらしい。
病気が進行すれば、さらに失うものが増える。
生ける屍になる。いつかは。
恐ろしい。
469 = 180 :
彼女の異変に気付いたのは、1カ月ほど前だった。
仕事から家に帰ると、どうも家の中が焦げくさい。
カレーを焦がしたようだ。
「ただいま」
「おかえり」
「どうしたん、焦げてるよ」
「え??」
彼女はニコニコ笑いながら、なべの底をお玉でかき混ぜていた。
笑いながら、何を言ってるのかわからない、といった顔をした。
ぐるぐる、ぐるぐる、鍋をかき混ぜる。
470 = 180 :
「焦げてるって」
僕は慌ててガスを止めたが、彼女はまだ理解できないようだった。
換気扇を回し、鍋の中身を別の鍋に移している僕を、奇妙な目で見ていた。
鍋の底で黒く固まるコゲを見てようやく、彼女も変だと気づいたらしい。
「鼻、詰まったのかな」
グスグスと鼻を鳴らし、呟く。
でも僕は、そんな、風邪とかそんなもので片付く話じゃないと予感していた。
やはり彼女は感染していた。
嗅覚を、失っていた。
471 = 180 :
病院で見せられた、脳のスキャン。
見事に芽が、咲いていた。
その晩、彼女は僕の胸に顔をうずめて泣いた。
涙が出なくなるまで泣いた。
「においが、しない…」
「あなたのにおいが、わからない…」
そう言って、何度も泣いた。
僕はどうすることもできず、ただ抱きしめて頭を撫でた。
ごめん。なにもできない僕で、ごめん。
472 = 180 :
それからというもの、彼女は嗅覚のない生活を送ることになった。
僕は、最初は鼻づまりの延長のようなものとして考えていた。
だけど、そんな程度ではないようだ。
「これ、シチューみたいな味がする」
カレーを食べながら、彼女が言った。
「辛くないの??カレーだよ、これ」
「舌がピリってするけど、辛さが、わからないの」
だそうだ。それから彼女はカレーを作ってくれなくなった。
473 = 180 :
というか、辛いもの全般が食卓に出なくなった。
舌がピリピリするだけで美味しくないのだそうだ。
明太子とかワサビとか、好きなんだけどなあ。
彼女のためだ。仕方ない。
どうしても食べたいときは、自分で買ってきて食べることにする。
そうしているうちに、いつの間にか夏になっていた。
外に出るのは億劫だけど、この部屋も蒸し暑い。
遠くでセミが鳴く声がする。
室外機が唸りをあげて夏に対抗しようとしている。
静かなのに、うるさい。
474 :
ベランダから外を見ると、真っ青な空が広がっていた。
雲が並んで、千切れて、広がって、飛んでいる。
ベランダの下では向日葵が花を広げようとしている。
一階は大家さんの敷地だ。
花の綺麗さを話題にしようと思ったが、彼女は花の匂いも嗅げないんだ。
少し考えて、その話題を振るのはやめにした。
「ねえ、去年の冬のこと、覚えてる??」
突然話題を振られた。
「ん…覚えてるよ、いろいろと」
そう、いろいろあった。
475 = 180 :
「あのとき、別れないで、本当によかった」
「…」
そう、僕たちは一度だけ、一週間だけ、他人になった。
よくある話だ。
いわゆる倦怠期。
僕たちもそれにかかった。
「ねえ、あなたは??」
「うん、僕も、別れないでよかったと、本当に思う」
元に戻れて、本当によかった。
そう思う。
あのときの一人寂しい夜とか、君が最後に編んでくれたマフラーとか、一人の年越しとか。
思い出して寂しくなってきた。
「本当に??」
「本当」
「嘘」
476 = 180 :
嘘じゃない、と言おうとした僕よりも先に、彼女は堰を切ったように喋り出した。
「私が、ソラニンにかかって、私のこと、重荷になってる」
「あのとき別れてれば、あなたはそれを知らず、きっと幸せだったわ」
「辛いもの好きだったのにね」
「お香も焚かなくなったもんね」
「花も飾らなくなったよね」
「それもこれも、私が…」
あとは、言葉にならなかった。
また彼女は泣いた。
僕はどうすることもできず、ただ抱きしめて頭を撫でた。
477 = 180 :
「失うものは、人によって違うんだってさ」
僕は、頭の中で整理する前に言葉にした。
「ソラニンで失うものは、自分自身が決めるんだってさ」
「それ、誰が言ってたの」
「テレビに出てた、偉い学者さん」
「…」
言葉は続く。
それが彼女を慰めるのか、傷つけるのか、判断できないまま。
「君は、嗅覚を失うことを、望んだ??」
478 = 180 :
「…」
長い沈黙。
こんな言い方でよかったのか。
いや、そもそもこんな不確定な話を聞かせて、僕はなにがしたいんだろう。
「望んでない」
彼女はきっぱり言い切った。
「ほんの少しの、心の声で、失うこともあるんだって」
「…覚えてない」
においを拒絶するとしたら、僕の体臭がきつかった、とか、そんな理由だろうか。
そうだとしたら、少々ショックだ。
いやかなりショックです。
479 = 180 :
もし、そうだとしたら、絶対に喧嘩はしたくない。
僕のことを忘れられたら、と思うと、怖くて。
「僕のこと、忘れないでくれよ」
「…うん」
届いたかな。
真夏だって言うのに、少し寒さを感じた。
悪寒でないことを祈ろう。
「さ、夕食の食材でも買いに行こうか」
「うん」
「今はなにが旬かな」
「…夏野菜のカレー、食べたい??」
「…うん」
「じゃあ、それ、作ろ」
480 = 180 :
「カレーは嫌じゃないの」
「いいの」
「辛くなくてもいいからね」
「…うん」
甘口と中辛の間に決めて、僕らは近所のスーパーにでかけた。
なんだか少しだけ距離が近づいた、気がした。
遠くなかったはずなのに。
不思議だ。
手をつないでスーパーまで歩いて行った。
影が伸びる伸びる。なんてことない光景だけど、笑えてきた。
481 = 180 :
「ね、ナスは入れようね」
彼女はポイポイとナスをかごに投入する。
「オクラは??」
「サラダも作ろうね」
彼女はポイポイとジャガイモやトマトをかごに投入する。
却下されたようだ。なんでだ。
「お、牛肉が安い」
「夏野菜カレーなら鶏肉だよね」
彼女はポイポイと鶏肉をかごに投入する。
僕の意見はどこに行った。
482 :
「パプリカもいいよね」
彼女はポイポイとパプリカをかごに…
「いや、これ嫌いなんだ」
投入する前に、僕が止めた。
「なんで??」
「色が嫌い」
「きれいじゃん」
「でも形はピーマンじゃん」
緑色じゃないピーマンは変だ。
ピーマンは食べられる。小学生じゃないんだから。
でもパプリカは無理。生理的に無理。
483 = 180 :
「むう」
彼女はちょっと不機嫌になったけど、なんとかパプリカは阻止した。
そのかわりピーマンで手を打った。
…ピーマンって夏野菜じゃないよな。
まあいいや。
「お腹すいた」
袋の中のジャガイモは、ソラニンを思い出すからあんまり好きじゃないけれど。
でもカレーにもサラダにも必要だ。
そう、ジャガイモに罪はない。
484 = 180 :
結果から言うと、カレーは旨かった。
久しぶりの味だ。
彼女も嬉しそうだった。
それが僕を安心させた。
そして、一緒に皿を洗って、一緒にドラマを見て、シャワーを浴びて、寝た。
「おやすみ」
「おやすみ」
どこかで「さよなら」と聞こえた気がした。
485 = 180 :
次の日、僕は目をこすりながら、白い天井を見上げていた。
なんだか変だ。
でも、知っている天井だった。
なんだろう、この違和感は。
窓の外を見ると、今日は天気が悪いのか、空は一面曇っていた。
こういう朝は気分が悪い。
スカッとした青空が見たいのに。
なんだかのどの調子が少し悪い。
そういえば昨日は冷房をかけっぱなしにしてしまった気がする。
486 = 180 :
「おはよう」
彼女が先に起きていた。
声に元気がない。
顔色も悪いようだ。
「夏風邪、引いちゃったかも」
鼻をすする音がする。
「熱は??」
僕は彼女のおでこに手をあてる。
「…手、冷たい」
彼女が笑う。
違う、君が熱いんだ。
487 = 180 :
「熱あるよ。もうちょっと寝てな」
薬を探そうと棚を漁りながら、また違和感を感じた。
顔色が悪いだって??
もう一度彼女に近づいて頬を手で挟む。
「冷たいよ」
違う、君が熱いんだ。
君の頬は熱いんだ。
なのになぜ、君の顔色はそんなに悪いんだ。
なぜそんなに青白いんだ。
…白い。白すぎる。
まるで人形のように。
死人のように。
488 = 180 :
急に気分が悪くなり、流し台に吐いた。
口からは胃液しか出ない。
昨日、なにを食べたっけ。
横を見ると昨日の鍋があった。
ああそうか、カレーを食べたんだ。
蓋を取って中を覗くと、真っ黒な液体が入っていた。
「なんだ、これ…」
彼女が心配そうに、僕の背中を撫でてくれる。
「これ、なに…」
「昨日のカレーじゃん」
「焦げてる…」
「焦げてないよ」
489 = 180 :
脳が鈍く回転を始める。
昨日のカレー。
昨日は焦げていなかったのに今日は真っ黒だ。
訳がわからない。
僕は頭を振る。
ひじがガラスのコップにあたり、床でガラスの割れる音がした。
「あらあら、危ないから、ほらどいて」
彼女が片付けようとしゃがみこむ。
僕もしゃがみこんで、ガラスを拾おうと…
「痛っ」
「あらあら、大丈夫??」
指先を切ってしまった。
指先から墨汁が流れ出す。
490 = 180 :
遠くでテレビの音がする。
「今日は全国的に快晴です」
アナウンサーが天気予報を告げる。
フラフラとベランダへ向かう。
「ねえ、どうしたの??本当に大丈夫??」
彼女の声が後ろで聞こえる。
君こそ、熱があるんだから早く寝なさい。
そう言おうとしたが声にならない。
空を見上げると真っ白な曇り空だった。
下を見下ろすと真っ白な向日葵が僕を見上げていた。
僕はようやく理解し、声をあげて泣いた。
★おしまい★
491 :
おつ
492 :
オチが理解できない
誰か説明よろ
493 :
投下乙です。胸のあたりが重苦しくなるような怖さが印象的でした
>>492
色覚を失ったって事かと。
理由は…前日パプリカの色が嫌いとかやってたあたり?
494 :
.
495 :
乙です
純愛と少しの不気味さがたまらないな
497 :
498 :
age
vipは今書ける環境じゃないねえ
499 :
兄「ただいま」
妹「おかえりー。卒業式なのに帰ってくるの早いね」
兄「クラスの奴らにカラオケ行誘われたけど、断って帰ってきた」
妹「そっか。制服のボタンが全て無事な事と関係があるのかと思った」
兄「はいはい俺はモテねぇよ。後期試験対策で明日も学校行くからな。遅くまで付き合いたくなかっただけだ」
妹「あれ、それじゃ明日も普通に制服で行くの? お母さんが制服クリーニングに出すって」
兄「小論文書いたの見せに行くだけだし、先生にも私服でいいって言われた」
妹「なんだ。んじゃ着替えたらちょうだい。渡しておくから」
兄「おう、悪いな」
妹「はい、お兄ちゃんの制服持ってきたよ」
母「ありがとう。あら、第二ボタンなくなってる。まだこんな習慣続いてるのね」
妹「……物好きもいるんだね」
母「そう? 美男子だけがモテるって訳でもないのよ……何、にやにやして」
妹「し、してないし!」
500 = 499 :
兄妹物の場合、直接的なエロじゃなくてこういうのが良いと思うんだ
みんなの評価 : ▲
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