私的良スレ書庫
不明な単語は2ch用語を / 要望・削除依頼は掲示板へ。不適切な画像報告もこちらへどうぞ。 / 管理情報はtwitterでログインするとレス評価できます。 登録ユーザには一部の画像が表示されますので、問題のある画像や記述を含むレスに「禁」ボタンを押してください。
元スレ【新ジャンル】「台詞系SS総合スレ」( ^ω^)
新ジャンル スレッド一覧へ / 新ジャンル とは? / 携帯版 / dat(gz)で取得 / トップメニューみんなの評価 : ▲
レスフィルター : (試験中)
女「zzz」
はっは。Zはまだ発音できるんだ。
なんだかよくわからないけれど、笑ってしまった。
もう最後かな。君の声を聞くのは。
たった一つのアルファベットだけれど。君の声には違いない。
可愛いいびきを聞きながら、僕もベッドにもぐりこんだ。
君はどんな気持ちだった??
頭をなでながら、寝顔を見つめる。
女「zzz」
僕は今、名残惜しい気持ちと愛しい気持ちが入り混じっている。
君もこんな気持ちだったのかな。
最後の君の声を聞きながら、僕も眠りに引き込まれていった。
目が覚めた。
なんだか頭がぼーっとしている。
彼女は隣で笑っている。
笑っている??
女『おはよう』
!!
なぜ、声が出せるんだ。
女『やっと、私も追いつけたね』
何を言ってるのかよくわからない。
追いつけたって、なにに。
女『君が声を出せなくなってから、ずいぶん待たせちゃったね』
そうだ…
この声は、彼女の口からではなく、頭の奥から聞こえる。
女『君の声も、私にはちゃんと聞こえていたのよ』
本当に!?
女『うん、本当だよ』
僕の声も、同じように彼女には伝わっていたのか。
君の頭の中に、僕の声はあったのか。
女『うん、君は声を失ってしまっていたけど、私の頭の中にはあったよ』
女『でも、うまく説明ができなくて…』
女『でもこれで、やっと話せるね』
言葉は失っても、会話はできる。
男『じゃあ、ずっと言えなかった言葉を言いたい』
女『なあに??』
男『愛してる』
女『ふふふ。ずっと聞こえてたけどね!!』
女『でも、ありがとう』
★おしまい★
読んでいただきありがとうございました
もし発音できないはずの言葉を喋っているとか、
ここわかりにくいとか、指摘があれば遠慮なく言ってくださいね
もし発音できないはずの言葉を喋っているとか、
ここわかりにくいとか、指摘があれば遠慮なく言ってくださいね
>>457
素敵なお話でした。GJ!!
素敵なお話でした。GJ!!
ブログの方で忠告いただいたのですが
「E」を発音できなくなった直後に「れ」を発音してました
すみませんwww
「E」を発音できなくなった直後に「れ」を発音してました
すみませんwww
_ ―- ‐- 、 「 ageてみるか 」
(r/ -─二:.:.:ヽ
7''´ ̄ヽ-─<:.:.', __
. 〈t< く=r‐、\:く _ ...-::‐::¬::::: ̄:::::::::::::::::::::::::::::::
∠j ` / ,j={_/ヽヽr' >:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
. っ Y _/ ヽ了 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
. し イ --─¬ /::::::/:/|:::/::∧:::∧:::::::::::::::::::::::::::::::::::
f: :_: : :_:_:_└ 、 |/f|/|/ .|/ |/ ∨ ヽ|\:::::::::::::::::::::::::
/-ー/: : : : : : :\ { ヘ:::::::::::::::::::::
/7: : : :r: : : : : : : : : } ', .j / } .}::::::::::::::::::::
/: : : : : :.|: :j: : : :\: : j } /_ ミ ヘ::::::::::::::::::
/: : : : : : : j: ヘ、: : : : \| /く<l´::<ニ二 ̄`> ミ:::::::::/
./: : : : : : : \::::ヘ: : : : : : :ヽ {::ア{:::::::}厂¨,`_______j:::::://
{: : : : : : : : : : ヘ:::ヘ: : : : : : :', V ヘ::::ノ` ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ .{::::|ヽ
',: : : : : : : : : : : :\ヘ: : : : : :ヘ. / ヘ¨ //:}::::|/
',: : : : : : : :::::::::::::::::::〉: :_:_.r--―く >ヽ / _ノ::::{ _/
'; : : : :.::::::::::::::::::::::r</ :.:.. `ー¬\__ /::::/
〈: : : : :ー---‐‐r―'´ :.:.:. ヘ: . ヽ . . }ー、 ./::::< 「 ああ 」
〈: : : : : : : : : : 〈r-‐、:.:.:.:ヘ.:.:.:.:. ', : : ',: . .|: : 〉 /:::::::/
(r/ -─二:.:.:ヽ
7''´ ̄ヽ-─<:.:.', __
. 〈t< く=r‐、\:く _ ...-::‐::¬::::: ̄:::::::::::::::::::::::::::::::
∠j ` / ,j={_/ヽヽr' >:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
. っ Y _/ ヽ了 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
. し イ --─¬ /::::::/:/|:::/::∧:::∧:::::::::::::::::::::::::::::::::::
f: :_: : :_:_:_└ 、 |/f|/|/ .|/ |/ ∨ ヽ|\:::::::::::::::::::::::::
/-ー/: : : : : : :\ { ヘ:::::::::::::::::::::
/7: : : :r: : : : : : : : : } ', .j / } .}::::::::::::::::::::
/: : : : : :.|: :j: : : :\: : j } /_ ミ ヘ::::::::::::::::::
/: : : : : : : j: ヘ、: : : : \| /く<l´::<ニ二 ̄`> ミ:::::::::/
./: : : : : : : \::::ヘ: : : : : : :ヽ {::ア{:::::::}厂¨,`_______j:::::://
{: : : : : : : : : : ヘ:::ヘ: : : : : : :', V ヘ::::ノ` ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ .{::::|ヽ
',: : : : : : : : : : : :\ヘ: : : : : :ヘ. / ヘ¨ //:}::::|/
',: : : : : : : :::::::::::::::::::〉: :_:_.r--―く >ヽ / _ノ::::{ _/
'; : : : :.::::::::::::::::::::::r</ :.:.. `ー¬\__ /::::/
〈: : : : :ー---‐‐r―'´ :.:.:. ヘ: . ヽ . . }ー、 ./::::< 「 ああ 」
〈: : : : : : : : : : 〈r-‐、:.:.:.:ヘ.:.:.:.:. ', : : ',: . .|: : 〉 /:::::::/
一本投下します
前の話とよく似てますが…
・地の文あり
・新ジャンルではなく普通のSS
・エロなし過剰な萌えなし
男「あの頃の僕らにはもう戻れない」
前の話とよく似てますが…
・地の文あり
・新ジャンルではなく普通のSS
・エロなし過剰な萌えなし
男「あの頃の僕らにはもう戻れない」
「おはよう」
彼女が起きだしてきた。
「おはよう」
僕は笑顔で彼女を迎えるが、口の端が不自然になってしまった。
「お腹すいた」
よし、気付かれなかったようだ。
テーブルに向かう彼女を横目に、焦げついたフライパンをこっそり洗う。
また目玉焼きに失敗した。
何がサニーサイドアップだ。黒点しかないじゃないか。
部屋の中は焦げくさいにおいでいっぱいだが、彼女は気づかない。
そういう病気なんだ。
彼女が起きだしてきた。
「おはよう」
僕は笑顔で彼女を迎えるが、口の端が不自然になってしまった。
「お腹すいた」
よし、気付かれなかったようだ。
テーブルに向かう彼女を横目に、焦げついたフライパンをこっそり洗う。
また目玉焼きに失敗した。
何がサニーサイドアップだ。黒点しかないじゃないか。
部屋の中は焦げくさいにおいでいっぱいだが、彼女は気づかない。
そういう病気なんだ。
ソラニンという名前の病気が流行り出したのは、年号が変わって間もなくの頃だった。
僕は当時、彼女との同棲生活をスタートさせたばかりだったこともあり
TVをつける余裕もなく自分のことで精いっぱいだった。
初めは珍しい症例として時々取り上げられるだけだったが、僕がその病気を知る頃には
国民の5%近くが感染していた。
今ではもう20%の国民が感染しているらしく、大きく取り上げられることも減った。
そのかわり、社会は大混乱で、日本はもうどうしようもないところまで来た。
海外のニュースでは大騒ぎらしいが、日本もそれどころではない。
国民の20%だ。5人に一人は感染者だ。
僕も、彼女も、それに感染しないなんて、誰が断言できるだろう。
僕は当時、彼女との同棲生活をスタートさせたばかりだったこともあり
TVをつける余裕もなく自分のことで精いっぱいだった。
初めは珍しい症例として時々取り上げられるだけだったが、僕がその病気を知る頃には
国民の5%近くが感染していた。
今ではもう20%の国民が感染しているらしく、大きく取り上げられることも減った。
そのかわり、社会は大混乱で、日本はもうどうしようもないところまで来た。
海外のニュースでは大騒ぎらしいが、日本もそれどころではない。
国民の20%だ。5人に一人は感染者だ。
僕も、彼女も、それに感染しないなんて、誰が断言できるだろう。
ソラニンは脳の病気だ。
脳の中から芽を出し、脳を侵す。
脳をスキャンすれば、まるでジャガイモのように芽を出した影がくっきり映るそうだ。
人から人へはうつらないらしい。
原因不明の治癒不能。
医学の発達でかろうじて進行は遅らせられるものの、今のところ治る手立てはないそうだ。
人から人へうつらないのになぜ感染者が膨れ上がったのか。
最初の感染者は誰なのか。
治す手立ては発見されるのか。
神も仏もいないのか。
なにもかもわかっていない。
僕も、国も。
脳の中から芽を出し、脳を侵す。
脳をスキャンすれば、まるでジャガイモのように芽を出した影がくっきり映るそうだ。
人から人へはうつらないらしい。
原因不明の治癒不能。
医学の発達でかろうじて進行は遅らせられるものの、今のところ治る手立てはないそうだ。
人から人へうつらないのになぜ感染者が膨れ上がったのか。
最初の感染者は誰なのか。
治す手立ては発見されるのか。
神も仏もいないのか。
なにもかもわかっていない。
僕も、国も。
ソラニンに感染すると、なにかを失う。
それは、聴覚だったり、視覚だったり、言語だったり。
記憶だったり、運動能力だったり。
人によってさまざまだそうだ。
ある一定期間の記憶だけを失った人もいれば、昨日の記憶もない人もいる。
下半身だけが動かなくなった人もいるし、右目だけ見えない人もいる。
日本語だけを忘れ、カタコトの英語で話すようになった人もいるらしい。
病気が進行すれば、さらに失うものが増える。
生ける屍になる。いつかは。
恐ろしい。
それは、聴覚だったり、視覚だったり、言語だったり。
記憶だったり、運動能力だったり。
人によってさまざまだそうだ。
ある一定期間の記憶だけを失った人もいれば、昨日の記憶もない人もいる。
下半身だけが動かなくなった人もいるし、右目だけ見えない人もいる。
日本語だけを忘れ、カタコトの英語で話すようになった人もいるらしい。
病気が進行すれば、さらに失うものが増える。
生ける屍になる。いつかは。
恐ろしい。
彼女の異変に気付いたのは、1カ月ほど前だった。
仕事から家に帰ると、どうも家の中が焦げくさい。
カレーを焦がしたようだ。
「ただいま」
「おかえり」
「どうしたん、焦げてるよ」
「え??」
彼女はニコニコ笑いながら、なべの底をお玉でかき混ぜていた。
笑いながら、何を言ってるのかわからない、といった顔をした。
ぐるぐる、ぐるぐる、鍋をかき混ぜる。
仕事から家に帰ると、どうも家の中が焦げくさい。
カレーを焦がしたようだ。
「ただいま」
「おかえり」
「どうしたん、焦げてるよ」
「え??」
彼女はニコニコ笑いながら、なべの底をお玉でかき混ぜていた。
笑いながら、何を言ってるのかわからない、といった顔をした。
ぐるぐる、ぐるぐる、鍋をかき混ぜる。
「焦げてるって」
僕は慌ててガスを止めたが、彼女はまだ理解できないようだった。
換気扇を回し、鍋の中身を別の鍋に移している僕を、奇妙な目で見ていた。
鍋の底で黒く固まるコゲを見てようやく、彼女も変だと気づいたらしい。
「鼻、詰まったのかな」
グスグスと鼻を鳴らし、呟く。
でも僕は、そんな、風邪とかそんなもので片付く話じゃないと予感していた。
やはり彼女は感染していた。
嗅覚を、失っていた。
僕は慌ててガスを止めたが、彼女はまだ理解できないようだった。
換気扇を回し、鍋の中身を別の鍋に移している僕を、奇妙な目で見ていた。
鍋の底で黒く固まるコゲを見てようやく、彼女も変だと気づいたらしい。
「鼻、詰まったのかな」
グスグスと鼻を鳴らし、呟く。
でも僕は、そんな、風邪とかそんなもので片付く話じゃないと予感していた。
やはり彼女は感染していた。
嗅覚を、失っていた。
病院で見せられた、脳のスキャン。
見事に芽が、咲いていた。
その晩、彼女は僕の胸に顔をうずめて泣いた。
涙が出なくなるまで泣いた。
「においが、しない…」
「あなたのにおいが、わからない…」
そう言って、何度も泣いた。
僕はどうすることもできず、ただ抱きしめて頭を撫でた。
ごめん。なにもできない僕で、ごめん。
見事に芽が、咲いていた。
その晩、彼女は僕の胸に顔をうずめて泣いた。
涙が出なくなるまで泣いた。
「においが、しない…」
「あなたのにおいが、わからない…」
そう言って、何度も泣いた。
僕はどうすることもできず、ただ抱きしめて頭を撫でた。
ごめん。なにもできない僕で、ごめん。
それからというもの、彼女は嗅覚のない生活を送ることになった。
僕は、最初は鼻づまりの延長のようなものとして考えていた。
だけど、そんな程度ではないようだ。
「これ、シチューみたいな味がする」
カレーを食べながら、彼女が言った。
「辛くないの??カレーだよ、これ」
「舌がピリってするけど、辛さが、わからないの」
だそうだ。それから彼女はカレーを作ってくれなくなった。
僕は、最初は鼻づまりの延長のようなものとして考えていた。
だけど、そんな程度ではないようだ。
「これ、シチューみたいな味がする」
カレーを食べながら、彼女が言った。
「辛くないの??カレーだよ、これ」
「舌がピリってするけど、辛さが、わからないの」
だそうだ。それから彼女はカレーを作ってくれなくなった。
というか、辛いもの全般が食卓に出なくなった。
舌がピリピリするだけで美味しくないのだそうだ。
明太子とかワサビとか、好きなんだけどなあ。
彼女のためだ。仕方ない。
どうしても食べたいときは、自分で買ってきて食べることにする。
そうしているうちに、いつの間にか夏になっていた。
外に出るのは億劫だけど、この部屋も蒸し暑い。
遠くでセミが鳴く声がする。
室外機が唸りをあげて夏に対抗しようとしている。
静かなのに、うるさい。
舌がピリピリするだけで美味しくないのだそうだ。
明太子とかワサビとか、好きなんだけどなあ。
彼女のためだ。仕方ない。
どうしても食べたいときは、自分で買ってきて食べることにする。
そうしているうちに、いつの間にか夏になっていた。
外に出るのは億劫だけど、この部屋も蒸し暑い。
遠くでセミが鳴く声がする。
室外機が唸りをあげて夏に対抗しようとしている。
静かなのに、うるさい。
ベランダから外を見ると、真っ青な空が広がっていた。
雲が並んで、千切れて、広がって、飛んでいる。
ベランダの下では向日葵が花を広げようとしている。
一階は大家さんの敷地だ。
花の綺麗さを話題にしようと思ったが、彼女は花の匂いも嗅げないんだ。
少し考えて、その話題を振るのはやめにした。
「ねえ、去年の冬のこと、覚えてる??」
突然話題を振られた。
「ん…覚えてるよ、いろいろと」
そう、いろいろあった。
雲が並んで、千切れて、広がって、飛んでいる。
ベランダの下では向日葵が花を広げようとしている。
一階は大家さんの敷地だ。
花の綺麗さを話題にしようと思ったが、彼女は花の匂いも嗅げないんだ。
少し考えて、その話題を振るのはやめにした。
「ねえ、去年の冬のこと、覚えてる??」
突然話題を振られた。
「ん…覚えてるよ、いろいろと」
そう、いろいろあった。
「あのとき、別れないで、本当によかった」
「…」
そう、僕たちは一度だけ、一週間だけ、他人になった。
よくある話だ。
いわゆる倦怠期。
僕たちもそれにかかった。
「ねえ、あなたは??」
「うん、僕も、別れないでよかったと、本当に思う」
元に戻れて、本当によかった。
そう思う。
あのときの一人寂しい夜とか、君が最後に編んでくれたマフラーとか、一人の年越しとか。
思い出して寂しくなってきた。
「本当に??」
「本当」
「嘘」
「…」
そう、僕たちは一度だけ、一週間だけ、他人になった。
よくある話だ。
いわゆる倦怠期。
僕たちもそれにかかった。
「ねえ、あなたは??」
「うん、僕も、別れないでよかったと、本当に思う」
元に戻れて、本当によかった。
そう思う。
あのときの一人寂しい夜とか、君が最後に編んでくれたマフラーとか、一人の年越しとか。
思い出して寂しくなってきた。
「本当に??」
「本当」
「嘘」
嘘じゃない、と言おうとした僕よりも先に、彼女は堰を切ったように喋り出した。
「私が、ソラニンにかかって、私のこと、重荷になってる」
「あのとき別れてれば、あなたはそれを知らず、きっと幸せだったわ」
「辛いもの好きだったのにね」
「お香も焚かなくなったもんね」
「花も飾らなくなったよね」
「それもこれも、私が…」
あとは、言葉にならなかった。
また彼女は泣いた。
僕はどうすることもできず、ただ抱きしめて頭を撫でた。
「私が、ソラニンにかかって、私のこと、重荷になってる」
「あのとき別れてれば、あなたはそれを知らず、きっと幸せだったわ」
「辛いもの好きだったのにね」
「お香も焚かなくなったもんね」
「花も飾らなくなったよね」
「それもこれも、私が…」
あとは、言葉にならなかった。
また彼女は泣いた。
僕はどうすることもできず、ただ抱きしめて頭を撫でた。
「失うものは、人によって違うんだってさ」
僕は、頭の中で整理する前に言葉にした。
「ソラニンで失うものは、自分自身が決めるんだってさ」
「それ、誰が言ってたの」
「テレビに出てた、偉い学者さん」
「…」
言葉は続く。
それが彼女を慰めるのか、傷つけるのか、判断できないまま。
「君は、嗅覚を失うことを、望んだ??」
僕は、頭の中で整理する前に言葉にした。
「ソラニンで失うものは、自分自身が決めるんだってさ」
「それ、誰が言ってたの」
「テレビに出てた、偉い学者さん」
「…」
言葉は続く。
それが彼女を慰めるのか、傷つけるのか、判断できないまま。
「君は、嗅覚を失うことを、望んだ??」
「…」
長い沈黙。
こんな言い方でよかったのか。
いや、そもそもこんな不確定な話を聞かせて、僕はなにがしたいんだろう。
「望んでない」
彼女はきっぱり言い切った。
「ほんの少しの、心の声で、失うこともあるんだって」
「…覚えてない」
においを拒絶するとしたら、僕の体臭がきつかった、とか、そんな理由だろうか。
そうだとしたら、少々ショックだ。
いやかなりショックです。
長い沈黙。
こんな言い方でよかったのか。
いや、そもそもこんな不確定な話を聞かせて、僕はなにがしたいんだろう。
「望んでない」
彼女はきっぱり言い切った。
「ほんの少しの、心の声で、失うこともあるんだって」
「…覚えてない」
においを拒絶するとしたら、僕の体臭がきつかった、とか、そんな理由だろうか。
そうだとしたら、少々ショックだ。
いやかなりショックです。
もし、そうだとしたら、絶対に喧嘩はしたくない。
僕のことを忘れられたら、と思うと、怖くて。
「僕のこと、忘れないでくれよ」
「…うん」
届いたかな。
真夏だって言うのに、少し寒さを感じた。
悪寒でないことを祈ろう。
「さ、夕食の食材でも買いに行こうか」
「うん」
「今はなにが旬かな」
「…夏野菜のカレー、食べたい??」
「…うん」
「じゃあ、それ、作ろ」
僕のことを忘れられたら、と思うと、怖くて。
「僕のこと、忘れないでくれよ」
「…うん」
届いたかな。
真夏だって言うのに、少し寒さを感じた。
悪寒でないことを祈ろう。
「さ、夕食の食材でも買いに行こうか」
「うん」
「今はなにが旬かな」
「…夏野菜のカレー、食べたい??」
「…うん」
「じゃあ、それ、作ろ」
「カレーは嫌じゃないの」
「いいの」
「辛くなくてもいいからね」
「…うん」
甘口と中辛の間に決めて、僕らは近所のスーパーにでかけた。
なんだか少しだけ距離が近づいた、気がした。
遠くなかったはずなのに。
不思議だ。
手をつないでスーパーまで歩いて行った。
影が伸びる伸びる。なんてことない光景だけど、笑えてきた。
「いいの」
「辛くなくてもいいからね」
「…うん」
甘口と中辛の間に決めて、僕らは近所のスーパーにでかけた。
なんだか少しだけ距離が近づいた、気がした。
遠くなかったはずなのに。
不思議だ。
手をつないでスーパーまで歩いて行った。
影が伸びる伸びる。なんてことない光景だけど、笑えてきた。
「ね、ナスは入れようね」
彼女はポイポイとナスをかごに投入する。
「オクラは??」
「サラダも作ろうね」
彼女はポイポイとジャガイモやトマトをかごに投入する。
却下されたようだ。なんでだ。
「お、牛肉が安い」
「夏野菜カレーなら鶏肉だよね」
彼女はポイポイと鶏肉をかごに投入する。
僕の意見はどこに行った。
彼女はポイポイとナスをかごに投入する。
「オクラは??」
「サラダも作ろうね」
彼女はポイポイとジャガイモやトマトをかごに投入する。
却下されたようだ。なんでだ。
「お、牛肉が安い」
「夏野菜カレーなら鶏肉だよね」
彼女はポイポイと鶏肉をかごに投入する。
僕の意見はどこに行った。
「パプリカもいいよね」
彼女はポイポイとパプリカをかごに…
「いや、これ嫌いなんだ」
投入する前に、僕が止めた。
「なんで??」
「色が嫌い」
「きれいじゃん」
「でも形はピーマンじゃん」
緑色じゃないピーマンは変だ。
ピーマンは食べられる。小学生じゃないんだから。
でもパプリカは無理。生理的に無理。
彼女はポイポイとパプリカをかごに…
「いや、これ嫌いなんだ」
投入する前に、僕が止めた。
「なんで??」
「色が嫌い」
「きれいじゃん」
「でも形はピーマンじゃん」
緑色じゃないピーマンは変だ。
ピーマンは食べられる。小学生じゃないんだから。
でもパプリカは無理。生理的に無理。
「むう」
彼女はちょっと不機嫌になったけど、なんとかパプリカは阻止した。
そのかわりピーマンで手を打った。
…ピーマンって夏野菜じゃないよな。
まあいいや。
「お腹すいた」
袋の中のジャガイモは、ソラニンを思い出すからあんまり好きじゃないけれど。
でもカレーにもサラダにも必要だ。
そう、ジャガイモに罪はない。
彼女はちょっと不機嫌になったけど、なんとかパプリカは阻止した。
そのかわりピーマンで手を打った。
…ピーマンって夏野菜じゃないよな。
まあいいや。
「お腹すいた」
袋の中のジャガイモは、ソラニンを思い出すからあんまり好きじゃないけれど。
でもカレーにもサラダにも必要だ。
そう、ジャガイモに罪はない。
結果から言うと、カレーは旨かった。
久しぶりの味だ。
彼女も嬉しそうだった。
それが僕を安心させた。
そして、一緒に皿を洗って、一緒にドラマを見て、シャワーを浴びて、寝た。
「おやすみ」
「おやすみ」
どこかで「さよなら」と聞こえた気がした。
久しぶりの味だ。
彼女も嬉しそうだった。
それが僕を安心させた。
そして、一緒に皿を洗って、一緒にドラマを見て、シャワーを浴びて、寝た。
「おやすみ」
「おやすみ」
どこかで「さよなら」と聞こえた気がした。
次の日、僕は目をこすりながら、白い天井を見上げていた。
なんだか変だ。
でも、知っている天井だった。
なんだろう、この違和感は。
窓の外を見ると、今日は天気が悪いのか、空は一面曇っていた。
こういう朝は気分が悪い。
スカッとした青空が見たいのに。
なんだかのどの調子が少し悪い。
そういえば昨日は冷房をかけっぱなしにしてしまった気がする。
なんだか変だ。
でも、知っている天井だった。
なんだろう、この違和感は。
窓の外を見ると、今日は天気が悪いのか、空は一面曇っていた。
こういう朝は気分が悪い。
スカッとした青空が見たいのに。
なんだかのどの調子が少し悪い。
そういえば昨日は冷房をかけっぱなしにしてしまった気がする。
「おはよう」
彼女が先に起きていた。
声に元気がない。
顔色も悪いようだ。
「夏風邪、引いちゃったかも」
鼻をすする音がする。
「熱は??」
僕は彼女のおでこに手をあてる。
「…手、冷たい」
彼女が笑う。
違う、君が熱いんだ。
彼女が先に起きていた。
声に元気がない。
顔色も悪いようだ。
「夏風邪、引いちゃったかも」
鼻をすする音がする。
「熱は??」
僕は彼女のおでこに手をあてる。
「…手、冷たい」
彼女が笑う。
違う、君が熱いんだ。
「熱あるよ。もうちょっと寝てな」
薬を探そうと棚を漁りながら、また違和感を感じた。
顔色が悪いだって??
もう一度彼女に近づいて頬を手で挟む。
「冷たいよ」
違う、君が熱いんだ。
君の頬は熱いんだ。
なのになぜ、君の顔色はそんなに悪いんだ。
なぜそんなに青白いんだ。
…白い。白すぎる。
まるで人形のように。
死人のように。
薬を探そうと棚を漁りながら、また違和感を感じた。
顔色が悪いだって??
もう一度彼女に近づいて頬を手で挟む。
「冷たいよ」
違う、君が熱いんだ。
君の頬は熱いんだ。
なのになぜ、君の顔色はそんなに悪いんだ。
なぜそんなに青白いんだ。
…白い。白すぎる。
まるで人形のように。
死人のように。
急に気分が悪くなり、流し台に吐いた。
口からは胃液しか出ない。
昨日、なにを食べたっけ。
横を見ると昨日の鍋があった。
ああそうか、カレーを食べたんだ。
蓋を取って中を覗くと、真っ黒な液体が入っていた。
「なんだ、これ…」
彼女が心配そうに、僕の背中を撫でてくれる。
「これ、なに…」
「昨日のカレーじゃん」
「焦げてる…」
「焦げてないよ」
口からは胃液しか出ない。
昨日、なにを食べたっけ。
横を見ると昨日の鍋があった。
ああそうか、カレーを食べたんだ。
蓋を取って中を覗くと、真っ黒な液体が入っていた。
「なんだ、これ…」
彼女が心配そうに、僕の背中を撫でてくれる。
「これ、なに…」
「昨日のカレーじゃん」
「焦げてる…」
「焦げてないよ」
脳が鈍く回転を始める。
昨日のカレー。
昨日は焦げていなかったのに今日は真っ黒だ。
訳がわからない。
僕は頭を振る。
ひじがガラスのコップにあたり、床でガラスの割れる音がした。
「あらあら、危ないから、ほらどいて」
彼女が片付けようとしゃがみこむ。
僕もしゃがみこんで、ガラスを拾おうと…
「痛っ」
「あらあら、大丈夫??」
指先を切ってしまった。
指先から墨汁が流れ出す。
昨日のカレー。
昨日は焦げていなかったのに今日は真っ黒だ。
訳がわからない。
僕は頭を振る。
ひじがガラスのコップにあたり、床でガラスの割れる音がした。
「あらあら、危ないから、ほらどいて」
彼女が片付けようとしゃがみこむ。
僕もしゃがみこんで、ガラスを拾おうと…
「痛っ」
「あらあら、大丈夫??」
指先を切ってしまった。
指先から墨汁が流れ出す。
遠くでテレビの音がする。
「今日は全国的に快晴です」
アナウンサーが天気予報を告げる。
フラフラとベランダへ向かう。
「ねえ、どうしたの??本当に大丈夫??」
彼女の声が後ろで聞こえる。
君こそ、熱があるんだから早く寝なさい。
そう言おうとしたが声にならない。
空を見上げると真っ白な曇り空だった。
下を見下ろすと真っ白な向日葵が僕を見上げていた。
僕はようやく理解し、声をあげて泣いた。
★おしまい★
「今日は全国的に快晴です」
アナウンサーが天気予報を告げる。
フラフラとベランダへ向かう。
「ねえ、どうしたの??本当に大丈夫??」
彼女の声が後ろで聞こえる。
君こそ、熱があるんだから早く寝なさい。
そう言おうとしたが声にならない。
空を見上げると真っ白な曇り空だった。
下を見下ろすと真っ白な向日葵が僕を見上げていた。
僕はようやく理解し、声をあげて泣いた。
★おしまい★
兄「ただいま」
妹「おかえりー。卒業式なのに帰ってくるの早いね」
兄「クラスの奴らにカラオケ行誘われたけど、断って帰ってきた」
妹「そっか。制服のボタンが全て無事な事と関係があるのかと思った」
兄「はいはい俺はモテねぇよ。後期試験対策で明日も学校行くからな。遅くまで付き合いたくなかっただけだ」
妹「あれ、それじゃ明日も普通に制服で行くの? お母さんが制服クリーニングに出すって」
兄「小論文書いたの見せに行くだけだし、先生にも私服でいいって言われた」
妹「なんだ。んじゃ着替えたらちょうだい。渡しておくから」
兄「おう、悪いな」
妹「はい、お兄ちゃんの制服持ってきたよ」
母「ありがとう。あら、第二ボタンなくなってる。まだこんな習慣続いてるのね」
妹「……物好きもいるんだね」
母「そう? 美男子だけがモテるって訳でもないのよ……何、にやにやして」
妹「し、してないし!」
妹「おかえりー。卒業式なのに帰ってくるの早いね」
兄「クラスの奴らにカラオケ行誘われたけど、断って帰ってきた」
妹「そっか。制服のボタンが全て無事な事と関係があるのかと思った」
兄「はいはい俺はモテねぇよ。後期試験対策で明日も学校行くからな。遅くまで付き合いたくなかっただけだ」
妹「あれ、それじゃ明日も普通に制服で行くの? お母さんが制服クリーニングに出すって」
兄「小論文書いたの見せに行くだけだし、先生にも私服でいいって言われた」
妹「なんだ。んじゃ着替えたらちょうだい。渡しておくから」
兄「おう、悪いな」
妹「はい、お兄ちゃんの制服持ってきたよ」
母「ありがとう。あら、第二ボタンなくなってる。まだこんな習慣続いてるのね」
妹「……物好きもいるんだね」
母「そう? 美男子だけがモテるって訳でもないのよ……何、にやにやして」
妹「し、してないし!」
兄妹物の場合、直接的なエロじゃなくてこういうのが良いと思うんだ
類似してるかもしれないスレッド
- 【新ジャンル】「台詞系SS総合スレ」( ^ω^) (866) - [100%] - 2010/7/17 8:00 △
- 新ジャンル「ダブるどころかトリプった女(20)」 (148) - [37%] - 2008/2/15 13:20 ○
- 新ジャンル「純粋すぎる姉」 避難所? (207) - [35%] - 2009/4/14 9:00 ○
- 新ジャンル「ご主人様を虐めるドSなメイド」 (210) - [35%] - 2008/9/8 10:45 ☆
- 新ジャンル「男「野球をしよう!」」 (56) - [33%] - 2009/1/8 23:30
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について