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元スレ京太郎「俺が三年生?」淡「えへへ、だーい好き!」

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51 :


霞ちゃん可愛い

55 :

ネ・ムイ
ネ・ムイナ
ネ・ル

56 :

最上位になるとネ・テタになるのかなエストポリス知らんけど乙

57 :

日曜の昼過ぎにこんにちは
夜勤続きなんで今からやります

それじゃ、もうちょっとしたら

58 :

来てた

59 = 1 :

んじゃ、始めます

60 = 1 :




「二人とも、いいかしら?」


初美「なんですか、あらたまって」

「もしかしてお説教?」

「それもあるけれど」

「あるんだ……」

初美「そんなんだと今から小じわが増えちゃいますよー?」

「……初美ちゃんとはあとでじっくり話すからいいとして」

初美「そ、それは遠慮しておくのですよ」


「私が聞きたいのは、あなたたちの意図」

「彼に不必要に近づいて、何がしたいのかよ」

61 = 1 :



「……」

初美「そうきましたかー……」

「あなたたちは直接相対していないけれど、小蒔ちゃんが一昨年の夏にどうなったのかは知っているでしょ?」

「……うん」

「その原因も、結果も」

初美「もちろんなのですよ」

「じゃあ、言いたいこともわかるわね?」

「……わかってる」


「でも、やめない」

「私はあの人に姫様を選んで欲しいから、そうなるように精一杯頑張るだけ」


「……あまり褒められた手段ではないと思うわ。初美ちゃんも考えは同じ?」

初美「私は……そこまで考えてないのですよ」


初美「ただ、一緒にいると楽しくって、ずっとそうしていられたら……そう思っているだけで」

62 = 1 :



「それは、それだけはダメよ。いつかきっと取り返しのつかないことになるわ」

初美「それを霞ちゃんが言うのですか?」

「どういう意味かしら」

初美「勝手に一人で抱え込んで、それでこの前のインハイでどうなったか……」

「あれは私の力量が足りなかったから……それだけよ。他に理由なんてないわ」

初美「ウソですね、バレバレなのですよ」

「ウソなんかじゃ……!」


「ストップ」


「やめて、ここで喧嘩してもなんにもならない」

「……少し気が立っていたみたい。ごめんなさい」

初美「私も……少し無神経すぎたのですよ」

「そんなこと、ないわ。だって、なんにもないのは本当なんだから」

初美「霞ちゃん……」


63 = 1 :




京太郎「部屋を占拠されちゃったよ……」

「あら、追い出されちゃったの?」

京太郎「三人で話したいことあるからって。石戸が説教でもしてんじゃないかな」

「損な役回りねぇ」

京太郎「だよなぁ」


「ただいまー」


「おかえりなさーい」

「靴多いけど、またお客さんか?」

「今日は三人も来たんだから」

「それは賑やかになるなぁ」


京太郎「なんだってうちの親は来る者拒まずなんだか……」


「お父さんも帰ってきたし、そろそろご飯にする?」

京太郎「はいはい、呼んできますよー」


64 = 1 :




『ウソですね、バレバレなのですよ』

『ウソなんかじゃ……!』


京太郎「……なんとも入りづらい雰囲気だな」

京太郎「人んちに来てまで喧嘩すんなと言いたいとこだけど……」

京太郎「あんま割り込みたくねぇな」

京太郎「うーん、じゃあやばそうになったらってことで」


『やめて、ここで喧嘩してもなんにもならない』


京太郎「今の、滝見か?」

京太郎「あいつが仲裁に入るとは……」

京太郎「まいったな、これじゃ格好つかないな」

京太郎「……さっさと入るか」ガチャ


京太郎「よっす、話は終わったか?」


「……」

初美「……」


京太郎(え、空気重……そこまで深刻だったとは)


「なにかあった?」

京太郎「そろそろ飯だから」

「わかった、すぐ降りるから」

京太郎「じゃ、そういうことで」


65 = 1 :




「……」

初美「……」

「……」


「……おい、あの子達あんなに無口だったか?」

京太郎「滝見はもともとあんな感じだけど……」


京太郎(石戸はともかく、薄墨までだんまりとは……)


「うーん……」


(これ、どうにかしなきゃいけないわね……)


66 = 1 :




京太郎「ふぅ……雪かき終了」

京太郎「思ってたより積もってたな」


良子「グッドイブニング」


京太郎「またこっちで仕事ですか」

良子「ええ、先にチェックインを済ませてきました」

京太郎「正直、もうちょっと早く来て欲しかったな……」

良子「トラフィックジャムに巻き込まれてしまいまして……なにかありましたか?」

京太郎「大アリですよ。おかげでこうして雪かきに逃げてます」

良子「春たちがトラブルでも起こしましたか?」

京太郎「直接の被害は来てないですけどね、なんか三人で話してて揉めたみたいで」

良子「ふむ……それがまだ尾を引いているということですか。またレアケースですね」

67 = 1 :



「あ、姉さん」


良子「春、ケンカしたというのは本当ですか?」

「え、いきなりなに?」

良子「彼が困っていたようなので」

「困ってた? ……それはごめんなさい」

京太郎「だったらさっさと仲直りしろ……ってわけにもいかないんだろうな」

「うん……」

良子「それであなたもエスケープしてきたというわけですか」

「おつかい頼まれたから」

京太郎「あー、お前だけ手伝わないで黒糖食ってたもんな」

良子「ほう?」

「こ、黒糖は出されたものだから……それに、霞さんたちが進んで手伝いして私のやることがないだけ」

良子「まあいいでしょう。では、私は挨拶をしてきます」

「今日は?」

良子「少ししたらホテルに戻ります」

「なんだ、すぐ帰っちゃうんだ」

良子「私にクッション役を期待しても無駄ですよ」

「バレてた」

68 = 1 :



京太郎(実は俺も戒能さんに何とかしてもらおうと思ってたんだけど)


「じゃあ、行ってきます」

京太郎「待てよ、俺もついてく。母さんも多分そのつもりだろうし」

「本当?」

京太郎「まぁな、時間おいたらほとぼり冷めてるかもしれないし」

「……」ジトッ

京太郎「冗談だ。行こうぜ」


69 = 1 :




京太郎「そういや、何頼まれたんだ?」

「デザート。私は黒糖だけでよかったんだけど」

京太郎「お前は主食も黒糖で良いとか言い出しそうだしな」

「さすがにそれは栄養が偏る」

京太郎「それがわかってるとは……褒めてやろうか?」

「バカにしてるでしょ」

京太郎「黒糖馬鹿なのは本当だろうが」

「違う。ただ黒糖をこよなく愛してるだけ」

京太郎「物は言いようってな」


京太郎(こいつはいつもの調子が戻ってきたな……)

京太郎(しかし、やっぱりちょっとは聞いとくべきだよな)

70 :

霞さん入るだけで重苦しくなる最悪だな
ちゃちゃのんのファンやめます

71 = 1 :



京太郎「それでさ、俺に力になれることってあるか?」

「荷物持ち」

京太郎「そっちじゃない。お前らの問題のことだよ」

「……じゃあ、神境に来て」

京太郎「それで解決するのか?」

「少なくとも、私のは」

京太郎「まぁ、行くだけなら別に構わないけど」

「そうじゃなくて、姫様と契って」

京太郎「……待て、話が見えない」

「そもそも、私やはっちゃんが度々来てるのも、そうしてほしいからだし」

京太郎「んー……」


京太郎(その割には好き放題なんだよな、こいつらは)


京太郎「悪いな、俺がまだはっきりしたこと言えてないから」

「本当にそう。早く、姫様を選んで」

京太郎「小蒔のために言ってるのはわかるけど、そういうのはほかのやつにどうこう言われて決めることじゃないと思うんだよ」

「……」

72 = 1 :



(姫様のため? ……それだけじゃない)


「お願い、私に出来ることならなんでもするから」

京太郎「そこまで言うか……」

「あなたが望むなら……」グイッ


「こういう、ことだって」ムニュ


京太郎「いや……ちょっと待てよ、お前はそれでいいのか?」

「良いも悪いもない。それで姫様を選んでもらえるなら――」

京太郎「悪いけど、そいつは無理だ」

「どうして? ……私に興味がないから?」

京太郎「違う。お前を選ぶから、小蒔を選べなくなる」

「え……」

京太郎「やっぱ初めての相手は特別というか、まだそういうのに幻想があるというか……って何恥ずかしいこと言ってんだ」

「……ごめん、なさい」

京太郎「カミングアウトに謝られても……」

「ウソ、ついちゃったから」

73 = 1 :



「姫様のためじゃない……だって姫様を選んでもらえれば、私も傍にいられるから」

「選んでもらえなくても、一緒にいられるから」

「それでいいかなって思ってたのに……もう、無理だよ」

「仕返しだとか、ああいうのは全部建前」

「だって、私は……姫様がどうでもよくなるぐらい、あなたのことが……」


京太郎「もういい、十分伝わったよ」

「うん……」

京太郎「悪かったな、無理に聞き出すような形になって」

「構わない。すっきりしたから」

京太郎「それならいいんだけどよ……ま、なんかしてほしいことあったら言ってくれ」

「なんか今日は優しい」

京太郎「いっつもわりかし甘くしてると思うんだけどな」

「私のこと、好きになっちゃった?」

京太郎「黒糖を食べてるとこは嫌いじゃないな」

「本当? なら姉さん打倒に協力して」

京太郎「するかよ」

「意地悪……じゃあ」

74 = 1 :



「名前で呼んじゃ、ダメ?」


京太郎「名前? そんなの好きにしろよ。なんだかんだで結構な付き合いだろ」

「なら……京太郎?」

京太郎「……呼び捨てか。敬意が足りないな、さんをつけてみろ」

「やだ」

京太郎「ったく……まぁいいか。さっさとデザート買いに行くぞ――春」

「あ……うんっ」


75 = 1 :




良子「いつも従姉妹の春がお世話になっています」

「いえいえ、なんだか娘が増えたみたいで楽しいですから」

良子「お礼と言ってはなんですが、これを」

「あら、気にしなくてもいいのに」

良子「あくまでこちらの気持ちですよ」

「そういうことなら受け取っちゃいましょうか」


良子「しかし、息子さんはすっげーストームの目ですね」

「戒能さんもそう思う?」

良子「動向次第でカタストロフも起こりえますよ」

「それならきっと大丈夫。今までもなんだかんだでなんとかしてきたらしいし」

良子「大したトラストですね」

「当面の心配は……刺されないかどうかかしら?」

良子「なるほど、たしかに」


良子「それでは、私はこれで」

「もう帰っちゃうの? 春ちゃんたちが帰ってくるの待ってたら?」

良子「春たちとは家の前で話しましたから。それに、明日は早いもので」

「わかりました。お仕事、頑張ってね」

良子「ええ、お邪魔しました」


76 = 1 :




「洗い物、終わりました」

「あら、ありがとう霞ちゃん」

「……戒能さんは?」

「帰っちゃったわ。明日は朝早いみたい」

「そうですか……」


初美「お風呂はピカピカになりましたよー」


「まあ、ありがとう初美ちゃん」

初美「私の手にかかればちょちょいのちょいですからねー」

「他になにかお手伝いできることはないでしょうか?」

初美「お掃除でも洗濯でもなんでもやっちゃうのですよ」

「それじゃあ、少しお話しましょうか」

初美「お話ですか?」

「あの、なにか至らない点が?」

「そういうことじゃないの。ちょっと昔話を聞いてもらいたいだけ」


77 = 1 :




「昔、山の中にお姫様がいてね。特に不自由なく、平和に暮らしていたの」

「数人の付き人と、たまに家族と。関わりあう人は少なかったけれど、その生活に満足していた」

「でもある日、山の外の男性と出会って恋をしてしまったの」

「それはいわゆる許されない恋で、二人は当然の如く引き裂かれたわ」

「お姫様は泣いて、泣いて……結局それを受け入れて」

「でも、お姫様の傍にいた付き人の一人は思ったの……どうしてここには自由がないんだろうって」

「それからその付き人にとってそこは窮屈なものに感じられて」

「そして山の外で出会った男性と恋に落ちて、そのまま外に行ってしまったの」

78 = 1 :



「……以上です。どうだった?」

「どう、と言われても……」

初美「少し、反応に困っちゃいますねー」

「お姫様について、どう思ったかしら?」

「……仕方のないことだと思います」

初美「でも、そんなに泣くぐらいだったら付き人さんみたいに外に出てしまえば良かったのですよ」

「そうは思わないわ。しきたりや決まりごとは守らないといけないものなのよ?」

初美「なら当人の気持ちはどうでもいいのですか?」

「……そうせざるをえないのなら」

「それじゃあ、山を出て行った付き人は?」

初美「駆け落ちというやつですねー、ちょっとロマンチックなのですよ」

「正直に言って、無責任だと思います」

初美「そうかもしれないですけど、やっぱり幸せになれるのならそれにこしたことはないのですよ」

「いいえ、そんなことはないわ」

79 = 1 :



(だって、そうじゃないと……)


「ごめんなさいね、変な話に付き合わせちゃって」

初美「いえいえ、中々に興味深いお話だったのですよ」

「ええ……色々と考えさせられました」

「そう? じゃあ霞ちゃん、ちょっとお布団出すの手伝ってもらってもいい?」

「はい、かまいません」

初美「私もお手伝いしますよー?」

「初美ちゃんはお風呂をためてくれる?」

初美「はーい」


80 = 1 :




「よいしょ……これで寝床は完璧ね」


「ごめんなさいね、手伝わせちゃって」

「自分たちの寝具ですから」

「ここはあの子の部屋だけど、自由に使っちゃってもかまわないから」

「京太郎さんの……」


(そういえば、匂いもなんだか……)


「ベッドは男の子臭いけど、我慢してね?」

「そ、それは……仕方ないことですから」


「それより、さっきの話はもしかして」

「恥ずかしながら、あなたたちの一代前のお話よ」

「やっぱり……じゃあ、あの付き人は」

「うん、そうなの」

「ごめんなさい、無思慮なことを言ってしまいました」

「気にすることないわ。無責任だったのは事実だし」

「それでも、私にはやっぱり……」

81 = 1 :



「……石戸家、神代に最も近い血筋……禍神を引き受ける身代わり」

「あなたが背負ったものは大きい、だからこそ自分に厳しくあろうとする姿勢も理解できる」

「それでも、あなたはまだ十八の女の子なのよ?」


「年齢の多寡は、お役目を全うする上での問題にはならないと思います」

「それは狭い世界にいたのなら……じゃない?」

「……」


「一度目は、疲れていたとはいえ制御を完全に誤りました」

「二度目は、なんとかギリギリ抑え込みました」

「だから、三度目はないんです。もう、あんなことには……」


「そう……」


(この子、予想以上に固いわ……)

(本音はふとした拍子に漏れ出てるのに、踏み込もうとしたらこの調子)

(少しでもガス抜きさせてあげられればと思ったんだけど)

(もっと時間がいるみたいね……)


82 = 1 :




京太郎「ただいまー」


初美「おかえりなのですよ。ご飯にします? お風呂にします? それとも――あいたっ」

京太郎「はいはい、ご飯はさっき食べましたよ」

初美「むー、様式美というやつなのですよ」

京太郎「そういうのはもうちょっと育ってから言えよ」

初美「……私が上に乗ったら大きくしたくせに」

京太郎「あんだけ刺激されりゃ……って、まぎらわしい言い方すんな」


「なにそれ詳しく」ヒョコ


初美「はるるも一緒でしたか」

「うん、一緒におつかい行ってくれた」

京太郎「最近はコンビニスイーツもバカにできないもんだ」

初美「わぁ、デザートですか。取られないうちにキープしておきましょうか」

京太郎「ここにインハイチャンプはいないから安心しろ」

「どういう意味?」

京太郎「お前の同類だって意味だよ」

83 = 1 :



京太郎(そうだよ、黒糖食ってる姿が照ちゃんに似てるんだよな)


「ん、京太郎の熱い視線を感じる」

京太郎「生温いの間違いだな。寒かったから熱さに敏感になってるんだろ」

「冷えてるから暖めて」ピトッ

京太郎「はいはい、ストーブにあたろうな」


初美(んー?)


初美「お二人とも、なにかありましたか?」

京太郎「……特には」


「……(告白)しちゃった」ポッ


初美「なんですと!?」

京太郎「省略はある意味日本の文化だけど時と場合を考えてっ」

「(本心を)全部さらけ出しちゃった……」テレテレ

初美「そ、そんなまさか……」ワナワナ

京太郎「だから省略は用法用量を守ってだな――」

「そういえば、上に乗られて大きくしてたって?」

京太郎「今更そこ戻るのかよ!?」


84 = 1 :




「デザート、買ってきてくれてありがとうね」

「お邪魔させてもらってますから」

「ふふ……ね、なにかいいことあった?」

「……」コク

「そう。あまり偉そうなことは言えないけれど、大事にしてね」


「さ、そろそろお風呂にしましょうか」


京太郎「俺は後でいいや。その方がトラブらないと思うし」

「一番風呂はさすがに……」

「あらそう? じゃあ春ちゃんと初美ちゃん、一緒に入らない?」

「うん」

初美「んー、じゃあ私も後で入るのですよ。三人だとさすがに窮屈だといいますか」

「じゃあ私と春ちゃん、初美ちゃんと霞ちゃん、それから京太郎とお父さんね」

京太郎「ちょっと待った。なんで親父とペアなんだよ」

「あ、ごめんなさい。やっぱり女の子と一緒が良かった?」

京太郎「無理にペア組む必要あるかってことだって!」


85 = 1 :




京太郎「さて……風呂の時間まで自由にしてようかな」

京太郎「うん、今日はテストもやったし許されるはずだ」


初美「またお勉強の話なのですか?」


京太郎「たまには休んでもいいんじゃないかってお話だよ」

初美「なるほど、その調子で受験はやめちゃうといいのですよ」

京太郎「またそれか。もうすぐだし、ここまで来たら最後までやるっての」

初美「むー、強情ですねー」

京太郎「それより、もうケンカは大丈夫なんだろうな?」

初美「ケンカなんてしてないのですよ」

京太郎「ま、それならそれでいいけどよ……そういや石戸は?」

初美「お部屋ですね」

京太郎「ふーん」


京太郎(三人の中じゃ一番引きずってるってことか?)

京太郎(まぁ、そんな感じはするよな)

86 = 1 :



初美「そういえば、はるると外でいかがわしいことをしてたとか」

京太郎「お前も蒸し返してくるか……やましいことはしてないっての」

初美「天地神明に誓って?」

京太郎「はいはい、誓う誓う。でもまぁ、本音を聞けてよかったとは思うよ」

初美「……本音、ですか」


初美(そういえば、名前で呼んでましたね)


京太郎「で、お前はなんか言いたいことがあったりするか?」

初美「よく、わからないのですよ」


初美「ただ……自分の思う通りにして、無責任に逃げた人がいて、その人のことをどう思いますか?」

87 = 1 :



京太郎「さぁな……逃げるってことも時には必要だしな」

初美「そう思いますか?」

京太郎「ただなぁ、大抵の場合は後になってまた直面するもんなんだよ」

初美「……」

京太郎「死ぬほど逃げ出したくても、結局は逃げられなかったりな」

初美「そんなこと、わかっているのですよ」


初美「でも、あなたといるのは楽しくて、もっと傍に寄りたくて」

初美「それがいつか抑えきれなくなるのなんてわかってて」

初美「姫様に悪いから、姫様に悪いから、なんて考えてたらだれかさんみたいになるのは目に見えてて」

初美「じゃあ、なにも考えずにしていれば、今だけ楽しければって」

初美「それって、そんなにいけないことなのですか?」


京太郎「現実逃避かー、俺もしたいわー」

初美「もうっ、真面目に聞く気はなしですか!」

京太郎「さぁな……ってのはさっきも言ったか」

88 = 1 :



京太郎「たださ、どいつもこいつも小蒔を信じなさすぎだろ、とは思うよ」


初美「そんなこと……」

京太郎「どこぞの少女漫画かってぐらい気を使ってるよな」

初美「私的にはあんなドロドロしたのはゴメンなのですよ」

京太郎「俺も修羅場は遠慮しときたいとこだな」

初美「あなたがそれを言っちゃいますか」


京太郎「とにかく、逃げたきゃ逃げればいいさ」

京太郎「それで首が回らなくなったら、俺がなんとかしてやるよ」


初美「適当なことを言ってくれますねー」

京太郎「具体的にどうするかなんて、その時になんないとわからないからな」

初美「頼りにしていいか、いまいちわからないのですよ」

京太郎「ま、その時が来たらいやでも背中押してやるから覚悟しとけ」


京太郎「俺だって、そうされたからさ」

89 = 1 :



初美「もしかして、逃げた経験がアリアリですか?」

京太郎「なんだかんだでな……おかげであいつにお別れも言えないとこだった」

初美「あ……」

京太郎「うちの母親だって駆け落ちして逃げ出したくちだしな」

初美「そうだったんですか……」


初美(じゃあ、さっきのって)


京太郎「そういうわけだ。逃げたってなるようになるし、なるようにしかならない」

京太郎「それがいやだったら、ちょっと向かい合ってみればいいんじゃねーの?」


初美「ぶぅ、それを考えたくないって言ってるのに……」

京太郎「はは、そうだったか?」

初美「それに、せっかく勇気を出したカミングアウトは無視ですか!」

京太郎「カミングアウト? 現実逃避の話ならもうしたろ」

初美「そうじゃなくて! うぅ~、えいっ」ドン

90 = 1 :



京太郎「……マウントとってどうする気だよ」

初美「どうするかなんて、決まってるのですよ……んっ」


初美「……あんまり動じませんね」

京太郎「なんというかな、慣れてきたのかもな」

初美「経験豊富さんでしたか……」

京太郎「俺のことはともかく、随分と大胆だな」

初美「もうヤケっぱちなのですよ」

京太郎「でも逃げてないだろ? 偉いぞ」ナデナデ

初美「また子供扱いして!」バッ


初美「覚えてるのですよ!」


京太郎「……まぁ、変に落ち込んでるのよりはいいか」

京太郎「さて、母さん達が上がってくる前に俺も引っ込むかな」


91 = 1 :




「それでなんでここに来る」

京太郎「だって俺の部屋は女子部屋になってるし」

「女子と仲良くなるのが得意技みたいなもんだろ」

京太郎「どこのナンパ野郎だかな!?」


京太郎「よく言うよ。親父だってここに避難してるくせに。ずるいぞ」

「自分の部屋にいるだけで非難されるとはなぁ」

京太郎「というわけで、なんか映画見ていい?」

「デッキにRED入ってるからそれ見るか」



「で、なんで俺らが一緒に風呂に入ってるんだ?」

京太郎「流れ&時間短縮」

「ようするに母さんに押し切られたからだな」

京太郎「映画に夢中になってたのもいけないんじゃね?」

「まったくだ」


92 = 1 :




京太郎「ふぃー」

「あら、お上がり」

京太郎「あいつらは?」

「部屋にいるんじゃない? さっきアルバム渡しておいたから」

京太郎「それ絶対俺が恥ずかしいパターンじゃん……」

「あ、そういえばさっき初美ちゃんに、末永くよろしくお願いしますって言われたんだけど」

京太郎「……」

「なんかしちゃったの?」ニヤニヤ

京太郎「さぁね」

「大丈夫大丈夫、お母さんわかってるから」ウンウン

京太郎「うーん、このしたり顔」

「それにしても、ちょっと安心したわ」

京太郎「普段から悩み事なんてなさそうに見えるけど」

「だれが能天気で美人な母親ですって!?」

京太郎「言ってない言ってない、特に後半」


京太郎「それで、安心したって?」

「ふーんだ。お母さんのことを能天気呼ばわりする息子なんて知りませーん」

京太郎「めんどくさっ、年甲斐なさすぎだろ」

「ひどいっ、息子がひどいっ」


93 = 1 :




「……こほん、二人と話してくれたのよね?」

京太郎「まあ、空気悪くされても困るしな」

「そう……二人とも、笑顔が三割増しだったから」

京太郎「なにそれ、ニヤけてたってこと?」

「それはもう、恋する乙女感がひしひしとね」

京太郎「ま、また適当なことを」

「残念、言質はとってあるんだから」

京太郎「……あんまり考えたくなかったんだけどさ、喧嘩の原因ってやっぱり……」

「この、罪作りぃ!」グリグリ

京太郎「わかったからグリグリすんなって!」


京太郎「したら、説教をかました石戸に二人が反発して喧嘩になったってとこか」

「……それはどうかしらね」

京太郎「あれ、違うの?」

「それはそれでいいと思うけど……」

94 = 1 :



(それだけなら、あの頑なさは説明がつかない)

(やっぱり、霞ちゃんも……)


「あの子達が帰る前に一度、話してみてくれる?」

京太郎「話すって、石戸と?」

「なんだったら夜のプロレスになだれこんでもいいから」

京太郎「しないから」

「もう姫様とくっついてみんな抱え込んじゃえばいいんじゃない?」

京太郎「問題発言!」


95 = 1 :




京太郎「話せと言われてもな……」


京太郎(結局その機会もなく寝る時間になったわけだけど)

京太郎(というより、避けられてたのか?)

京太郎(……今日はからかいすぎたかな)


――カチャ


京太郎(ん?)


「……」


京太郎(石戸? まだ寝てなかったのか)

京太郎(……いいタイミングかもな)


京太郎「寝れないのか?」

「――っ」ビクッ


「誰かと思ったら……ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」

京太郎「そもそも寝てなかったから気にすんな」

「そう……」

京太郎「水でも飲むか?」

「ええ、いただくわ」


96 = 1 :




京太郎「うちの母さん、強引だったろ」

「押しが強い方だとは思うわ」

京太郎「来るもの拒まずどころか、むしろ引きずり込んでる感じだからな」

「突然押しかけて、申し訳ないと思ってるわ。部屋も貸してもらってるし」

京太郎「まあ、俺はいいよ。そもそもあの二人が来た時点でこうなるのは確定だからな」

「……二人と話したの?」

京太郎「まぁな。喧嘩してたみたいだし」

「私が悪いの。余計なことさえ言わなければ……」

京太郎「ホント、損な役回りだな」

「あなただって、背負い込むじゃない」

京太郎「ま、そうかもな……でも、そういうのは余裕がある奴がすることだ」

「私にはないと、そう言いたいのかしら?」

京太郎「率直に言えばな。一番思いつめた顔してたの、お前だぞ?」

「……」

京太郎「……まあいいや、ちょっと付き合ってくれ」

「どこか行くの?」

京太郎「小腹が空いたから、ちょっとそこまでな」


97 = 1 :




京太郎「滑りやすいから注意しろよ?」

「……ええ」


(誘われるままついてきてしまったわ……)

(母が強引だといったけれど、あれは自分のことを棚に上げて言ってるのね)

(……断ってしまえばよかったのに)

(彼がそれくらいで悪く思ったり……いえ、悪く思われたとしても別に問題はないはずよ)

(だって、私は――)


「あっ――」ツルッ


京太郎「っと、言ったそばから」

「ごめんなさい、考え事をしていて」

京太郎「はは、謝ってばっかだな」

「そうね……」

京太郎「冗談だって、立てるか?」

「……」ギュッ

京太郎「石戸?」

98 = 1 :



(いや、いやいやいやっ)

(どうして我慢しなければいけないの!?)

(私だって、彼と……)

(小蒔ちゃんの、身代わりだなんて……!)


「――っ!」ゾゾッ


(ダメ、違う、そうじゃない……!)

(私の、私の役目は……!)ググッ


京太郎「石戸っ」

「だ、大丈夫よ……立てるわ」ヨロッ


(ほら、抑え込めた……)

(大丈夫、私はやっていける)

(だから……)

99 = 1 :

唐突にコンマ判定

高ければ高いほど(ry


直下


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