元スレ武内P「凛さんの朝」
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451 = 365 :
凛「…………ッ!」ゴリゴリ グギ…!
凛「ぶっ!」ベチャッ!
武内P「渋谷さん!」
ジャアアアーーッ…!
凛「はぁ、はぁ……」
凛「ふふ……これじゃあまるで、痙攣の塊だよね」ブルブル…
武内P「…………」
凛「気にしないで。結構、面白いよ」ブルブル…
凛「どっちがこの体を、支配しているのか……
絶対、分からせてやる。こんなのに負けてたまるか、ってさ」
凛「ただ……寝る事だけが、怖いんだ」
凛「一度目を閉じて、もしそのままずっと、起きる事が無かったら……」
武内P「大丈夫です、渋谷さん」
武内P「目を瞑って、もう一度開けたら、明日の朝です」
凛「……うん」
452 = 365 :
【経過報告】
報告日:11月18日
報告者:P
発作は何の前触れも無く、突然やって来る。
そして、何かの拍子で戻る。
誰かが触ったり、呼びかけたりすると、突然また普通になる。
11月12日頃からこの繰り返しが確認されるが、その頻度と間隔は、
日を追う毎に多く、長くなっている。
一ノ瀬志希を交え、スタッフ同士で協議し、投薬量の増を決定。
一方、薬に耐性が出来ているのか、薬そのものの効き目が薄くなっている模様。
脳組織の変調は特に見受けられないとの事。
以上。
454 = 365 :
――――――――――――
――――――
凛「見て、皆」スッ
凛「入院生活があまりに暇でさ。未央からもらって、プラモデル、作ってみたんだ」
みりあ「うわぁー! すごい、すっごく本格的だね!」
武内P「とても、良く出来ていると思います」
きらり「こぉんな細かいの、良く作れたねぇー凛ちゃんすごぉい☆」
美嘉「何か見た事あるんだよねーコレ。アニメのだよね、何てヤツだっけ?」
莉嘉「えーっ、お姉ちゃんゼノグラシヤ知らないの? 遅れてるぅー!」
美嘉「はいはい、今度教えてね、莉嘉」
凛「あ、奈緒からDVDももらったんだよ。良かったら貸そうか?」
莉嘉「すごい、いいなぁ奈緒ちゃん!」
美嘉「ありがとう。ごめんね気を遣わせちゃって」
凛「いいよ、確かこの辺に……」ゴソゴソ…
凛「ん……あれ……?」ゴソゴソ…
455 = 365 :
美嘉「あ……あのさ、別にいいよ? 今度来た時でも…」
凛「いや、確かにここに入れて……」ゴソゴソ…
凛「……ッ!!」ガクガク…
凛「う……あぃ……ぎ……ッ!!」ガクガク…
きらり「凛ちゃんっ!?」
武内P「注視発作です…!」
凛「は、早くカメラを……ッ!!」ガクガク…
凛「撮って、わたしを……は、やくッ!!」ガクガク…
武内P「……!」カチッ ジィーーッ…
凛「……ァァアアアァァァァァァァァァァアアッ!!!」ガクガク…
みりあ「凛ちゃん!? 大丈夫、凛ちゃんっ!!」
美嘉「みりあちゃん、莉嘉、見ちゃダメっ!! 外へ……!!」
凛「ミカッ!! ……」ガクガク…
美嘉「!?」ビクッ!
456 = 365 :
凛「見て、わたし……み、みてみて、みて、みれ、みれぇ!!」ガクガク…
美嘉「り、凛……!」
武内P「…………」ジィーーッ…
武内P「……駄目です、渋谷さん」スッ
武内P「とても……とても、撮影する事はできません……!」
凛「ウアアアアァァァァァァァァッ!!! ガァッ、アッ、アッ……!!」ガクガク…
凛「見て、みれぇ!! わたし、をっ!! み、み……!!」ガクガク…
凛「撮ってとってとってとってとってとって…!!!」ガクガク…
凛「わたしのために、早く、とっ、て……みえ、みて、み、いれぇ……!!」ガクガク…
きらり「Pちゃん……お願いっ…!」
武内P「………………ッ」
スチャッ ジィーーッ…
457 = 365 :
~医務室~
武内P「お願いです。どうか……」
武内P「『Bu-DOPA R』の投薬量の増加を、ご検討いただけないでしょうか」
医師「…………」
志希「……これ以上増やしたら、薬効を薄めた意味が無くなっちゃう」
武内P「!」
志希「副作用の無い薬は無いの……だから……」
志希「今の『Bu-DOPA R』では、投薬量はこれが限界かな、って思う……」
458 = 365 :
武内P「そんな……」
志希「今の『Bu-DOPA R』では、ね」
志希「あたし、何とかするよ」
医師「……無茶です、一ノ瀬さん」
医師「いつから寝ていないのでしょう。あなたも体を休ませなければ…」
志希「んー、それ今の話と関係あるー? にゃははー」
博士「! お前……」
志希「止められてもやるよ。研究も、介護も」
志希「青春だもの……なんてね」ニコッ
459 = 365 :
【経過報告】
報告日:11月24日
報告者:高垣 楓
今日は、プロデューサーさんもシンデレラプロジェクトの人達も来られないそうです。
凛ちゃんとも相談し、差し出がましいとは思いますが、代わりに報告します。
ご飯を食べるのにも難儀するほどに、体のけいれんが深刻であることは、
事前に卯月ちゃん達から聞いてはいました。
リンゴをむいてあげましたが、凛ちゃんは手からリンゴを落としました。
新しく切り分けても、その度に、何度も落としてしまいます。
凛ちゃんが謝るので、気にしなくていいわよと私は言いました。
アネモネの花が添えられていたので、水を入れ替えに病室を出て、
また戻ってくると、凛ちゃんは泣いていました。
とても悔しそうに、泣きながら、布団の上に落ちたリンゴを拾おうとしていました。
私は彼女の事を、傷つけてしまったのかも知れません。
461 = 365 :
――――――――――――
――――――
『さぁ、視聴者の皆様方から凄い勢いで投票されていきますが、あぁっと!?』
『えっ、な……佐久間まゆさんと双葉杏さんにもかなりの票が集まってきています!
誰もが及川雫さんの独走を信じて疑わない中、これは意外っ!』
『さぁ、ここで問題です! この投票のお題は、一体何でしょうか?』
『私が三人の中で独走になれそうな事って、あるんでしょうかー』
『うふふ。雫さん、それはひょっとしてギャグで言っているんですかぁ?』
凛「…………っ」ガタガタ…
杏「…………」
かな子「ほら観て……ここの杏ちゃんの一言で、会場がすっごく盛り上がったんだよ?」
凛「…………く……!」グラグラ…
462 = 365 :
凛「……うぅ…………!」グラグラ…
凛「もぅイヤだ…………みれない…っ」ブルブル…
凛「一か所をじっとみれない……!」
蘭子「凛ちゃん、いいよ。ムリ、しないで大丈夫だよ……?」
凛「やっぱり、ダメなんだ……」
智絵里「凛ちゃん、やめて!」
凛「もう、治らないよ……」グラグラ…
アーニャ「リン……ニェット。リン、そんな事を言わないでください……!」
アーニャ「諦めちゃダメです!」ポロポロ…
凛「無理だよ、私を見ないで、こんなの、みじめだ……」グラグラ…
武内P「渋谷さん……」
凛「こんなの私じゃない……」
凛「こんなのわたしじゃない……」
凛「こんなのわたしじゃない……うぅ……!」
463 = 365 :
~医務室~
凛母「私達があの子のライブを見に行くのを、あの子はとても恥ずかしがっていました」
凛母「子供の頃の、学校の授業参観の時からそう……
でも、そういう時にはいつも、あの子は普段以上に張り切っていたそうです」
凛母「プライドが高く、見栄っ張りというのもありますけれど……
何だかんだで、親が見てくれるというのを、喜んでくれていたのだと思います」
凛母「でも……」
凛母「今のあの子は、私達がお見舞いに来ると、本当に苦しそうな顔をするんです」
凛母「みじめな姿を親には見られたくないという気持ちが、
表情や言動から滲み出て見えるようで……」
医師・博士「…………」
凛父「私達にはもう、あなた方にお願いをする事しかできない」
凛父「情けない話ですが……どうか何とかして凛を、救ってください」
凛父「この通りです」スッ
武内P「……彼女は、闘っています」
凛父「あなた方は、どうなんですか」
465 = 365 :
【経過報告】
報告日:12月5日
報告者:P
下降。
自身を取り巻く何もかもを投げ出し、関わりを断ち切りたい旨を吐露する事しきり。
一方で、記録を極力残し、今後の医療に寄与する事も彼女の望みである。
激しい矛盾を抑えながら臨む臨床は非常な負担となり、彼女と周囲を苦しめる。
一ノ瀬志希が体調不良により昏倒。
新薬の改良研究と渋谷凛への献身的な介護を並行して行う事への無理が祟ったため。
これ以上『Bu-DOPA』の改善は望めない。
当然、投薬量も現状維持を余儀なくされる。
渋谷凛自身にも、回復の兆しは見えない。
眠る事への恐怖を日増しに感じている模様。
以前は絶望を感じる間も無く長い眠りについた彼女が、今度は再び、
よりハッキリと迫り来る絶望を知覚した上で、眠りの世界に戻ろうとしている。
それを彼女は極度に恐れている。
自身の無力さを強く感じる。
だが、諦める訳にはいかない。
466 = 365 :
――――――――――――
――――――
凛「…………」ガタガタ…
凛「ぷ、プロデューサー……」
武内P「はい」
凛「今日は、卯月と、未央が……お見舞いに、来てくれる、って」
武内P「はい……その予定です」
楓「…………」
凛「お化粧、したい」
武内P「えっ……」
凛「今日は、二人に、大事な話……したいから」
467 = 365 :
武内P「引き出しの中に、ご自宅からお持ちいただいた道具類が……」ガラッ
武内P「……どうぞ」コトッ
凛「ありがとう……」
凛「……」ブルブル…
スッ ガシッ
プルプル…
469 = 365 :
凛「……ッ …………!」ブルブル…
カチャッ… ガチャン
グッ…
ガチャンッ! ポトッ
凛「はぁ……はぁ……くっ!」ブルブル…
スッ
凛「…………?」ブルブル…
楓「お手伝い、させてもらえないかしら?」ニコッ
470 = 365 :
凛「い……いい……一人で、やら…!」ブルブル…
楓「ううん、お願い」フルフル
楓「こんな時くらい、私も何か役に立ちたいから」
凛「…………」プルプル…
楓「目を閉じて」
凛「…………」コクン
楓「………………」スッ
楓「…………」
楓「綺麗な肌ね」
凛「そんなこと、ない……カサついてるし……」
楓「自信を持って。自分なんかダメだなんて、思わないで」
凛「! ……」
楓「………………」
471 = 365 :
楓「……はい、おしまい」
楓「凛ちゃん、いつも薄化粧でしょうし、しなくても十分に綺麗だから、
あまり手を加えなかったけれど」
凛「…………」スッ
凛「……ありがとう、楓さん」
楓「ううん。どうです、プロデューサー?」
武内P「えぇ……とても綺麗です、渋谷さん」
凛「プロデューサー、私をからかってる……」
武内P「いいえ」
楓「ふふっ」
コンコンッ
凛「あっ……」
楓「……それじゃあ、私はこれで」ペコリ
472 = 365 :
武内P「えっ? 高垣さん……」
ガララ…
未央「しぶりーん、ってうわっ!?」
楓「未央ちゃん、卯月ちゃん。お先に失礼しますね」ニコッ
卯月「あっ、あの…」
楓「プロデューサーは、一緒にいてあげてください」
スタスタ…
武内P「…………」
凛「……大事な話、だから、プロデューサーも、一緒にいて」
武内P「……了解しました」
473 = 365 :
未央「あ……しぶりん、いつもよりちょっとキレイじゃない!?」
凛「そ、そうかな? 楓さんに、お化粧、してもらって……」ガクガク…
卯月「とっても可愛いですよ、凛ちゃん!」
凛「卯月には、敵わない、よ……」
凛「最近、事務所は……どう?」ブルブル…
卯月「はい! えーと……クリスマスフェスに向けたレッスンで、大忙しです!」
未央「そうそう! しきにゃんが出れるかちょっと微妙だったんだけどさ。
この間復帰した途端、いつもの調子でバババーッ! ってかき乱してもー大変!」
卯月「はいっ、すーっごく元気になっててビックリしちゃいました!
クローネの人達とも合同ですから、皆もいつも以上に張り切っているんですよ!」
未央「大槻唯ちゃんって子知ってる? このゆいゆいがまた面白くてさー。
私のアイデンティティーを脅かす勢いだよぉ本当、アハハハー!」
凛「それは、良かったね……」
凛「私も、参加、したかったなぁ……」ブルブル…
474 = 365 :
未央「できるよ、しぶりんも」
凛「ふふ、未央……」
凛「慰め、なくていい……私は、ずっと……」ガクガク…
凛「このまま、この病院で、暮らすんだ……」
未央「…………」
凛「あの、ね……?」
凛「……ぁ……っ」ガクガク…
凛「皆に、会えると、すごく……気分が、良くて、うれしい」ブルブル…
凛「ッ………………」ガクガク…
凛「これまで…………ありがとう……」
475 = 365 :
卯月「!! り、凛ちゃん……?」
武内P「…………」
凛「…………」ガクガク…
凛「…………ぅぁ……」ブルブル…
未央「しぶりん……」
凛「……ぃ…………」ブルブル…
凛「………………もう……」ブルブル…
476 = 365 :
凛「会うのは…………」
凛「今日で、もう…………!」
凛「最後に…………」
卯月「凛ちゃん……!」
未央「……ッ!!」ガシッ!
凛「!? う、わ……」グイッ
未央「プロデューサー!! 今すぐしぶりん連れて裏庭に来てっ!!」
477 = 365 :
武内P「えっ……!?」
未央「しまむー!! 音源持ってるよね!?」
卯月「はいっ!!」
未央「じゃあダッシュで準備しよっ!! プロデューサー達も後で来てね!」ダッ!
卯月「凛ちゃんに絶対、絶対見てほしいのがあるので、裏庭で待ってますっ!!」ダッ!
ガララッ! タタタ…
凛「………………」ブルブル…
武内P「……外は冷えます。このコートを」スッ
凛「あっ…………ごめん」
武内P「歩けますか? 私の腕に、捕まってください」
凛「う、ん…………」ブルブル…
478 = 365 :
~中庭~
ザッ…
凛「…………」ガクガク…
武内P「寒くは、ないですか?」
凛「ううん、平気…………ただの痙攣、だから……」ガクガク…
武内P「はい……」
凛「卯月……未央、どこ……」
パッ!
凛・武内P「!」
未央「しーぶりん! こっちこっちー!」フリフリ
479 = 365 :
未央「ジャジャーン、どう!? 二人で作った渾身の即席ステージだよーー!!」
卯月「と言っても、ライトは懐中電灯で、音源はラジカセですけどね。えへへ」
未央「プロデューサー、ちゃんとビデオ持ってきた!?」
武内P「は、はぁ……えっ?」
凛「二人とも……ライブの、衣装……?」
未央「それじゃあ参りましょう、しぶりんのためにご用意したスペシャルステージ!」
卯月「お送りするのは、皆で歌ったこの曲!」カチッ
~~♪
未央・卯月「新たなヒーカーリーにー 会ーいーにぃー行こうー♪」
未央・卯月「生まれたーてのー 勇気をー 抱ーきしーめーてー♪」
未央・卯月「走り出ーそうー♪」
凛「…………!」
武内P「『Shine!!』……」
480 = 365 :
タンッ! タタンッ
タン タンタンッ キュッ! タンッ!
未央「~~~~ッ♪」
未央「……へっへっへ」ニヤッ
グイッ!
凛「!? えっ……ちょ……」
未央「さぁさ、一緒に踊ろうぜーしぃーぶりん!!」グイグイ
凛「そ、いや……私、踊れな…!」
卯月「私達でフォローするから大丈夫っ!! ねっ!?」
武内P「…………」コクッ
凛「……ッ!」キュッ
481 = 365 :
タン タンッ
ズッ…
凛「ふ、く……うぅ……!」
凛「う、あぁ!」ドテッ!
未央「ねぇー 捜してーいたーのーはー♪」ニコッ
凛「……未央」
卯月「12時ー過ぎーのー 魔ー法 そーれは♪」
未央・卯月「この自分のー靴でー♪」
未央・卯月「今進んでー行けるー 勇気でしょうー!?♪」スッ
凛「卯月……!」
新たなヒカリに会いに行こう
生まれたての希望を抱きしめたら
482 = 365 :
未央・凛・卯月「新たなじーぶーんーにー 会ーいーにぃー行こうー♪」タン タンッ
未央・凛・卯月「このえがーおがー 君ーまでー♪」タンッ タタン
未央・凛・卯月「とーどぉーくぅーよーうーにー はーしーれー!♪」タンッ スゥー…
凛「はぁ、はぁ、はぁ……!」プルプル…
凛「……っ」グラッ…
ガシッ!
武内P「大丈夫ですか、渋谷さん」
凛「プロデューサー…………」ブルブル…
武内P「素晴らしいステージでした。とても……本当に」
卯月「凛ちゃん……とても、楽しかったですね」ニコッ
未央「言ったでしょ? しぶりんのフォローくらい、いくらでも私達、できるんだから」
未央「だから、諦めないで……最後だなんて、バカみたいな事言わないで、ねっ?」
483 = 365 :
凛「ふ、ふっ…………はぁ、はぁ……」ブルブル…
凛「二人とも……ありがとう、でも…………」
凛「やっぱり、私…………無理だよ……」
未央「!? そんな事…!」
凛「未央、ごめん……」
凛「この顔を、見て…………」ヒク…
未央「……しぶりん」
凛「私は、もう……笑えない……」ヒクヒク…
凛「ダンス、だけじゃ、なくて……アイドルとして、一番、大事な……」
凛「笑顔でさえ……誰でも、できる、こと、私……」
凛「どんどん、できなくなってるんだ……」ブルブル…
武内P「…………ッ」
484 = 365 :
凛「今まで、プロデューサーも……ありがとう……」
凛「こんな、私、治る見込み、無くても……」ヒクヒク…
凛「志希と、一生懸命……付き合ってくれて、うれしかった……」
武内P「そんな事はありません。今、先生方と検討中の新しい治療法が間もなく…!」
凛「うそ……下手だよね、ほんとうに……」ブルブル…
武内P「……ッ!」
凛「誰でも、できるのに……笑顔なんて……」
凛「それすら、できないんだもの……」
凛「もう、私には、なにも……なにもない……!」ブルブル…
ガシッ
凛「……?」
卯月「誰でも出来るなんて、言わないでよ……!」
卯月「だって、私……嬉しかったもん」
卯月「凛ちゃんが、私に笑顔で語りかけてくれて、嬉しかったんですっ!!」
485 = 365 :
凛「えっ……」
卯月「誰かを元気づけられたら、眩しく輝かせる事ができたら、どんなに嬉しいって…」
卯月「私や皆のおかげで、そう思えるようになったんだって、凛ちゃんが言ってくれて、
私……!」
卯月「すごく勇気づけられたんですっ!」ジワァ…
卯月「あぁ、私みたいに、何の取り柄の無い人でも、凛ちゃんや、
誰かを励ます事、できたのかな……」
卯月「誰かの力になる事が、私にも、できるのかなって……!!」
卯月「あの時の、凛ちゃんの笑顔がキラキラで、眩しかったから……
ひっ、あ、あの笑顔があったから、私……!」ポロポロ…
卯月「う、うえぇぇ……!」ポロポロ…
凛「…………卯月」
未央「ッ……」グッ
未央「いよっと!」ガバッ!
凛・卯月「わっ!?」「うっ!」
486 = 365 :
未央「私ね……? 前にしぶりんがこの裏庭で、一人で練習してるのを見て…」
未央「やめてほしい! とは思ったんだけどさ……実は、嬉しかったんだ」
凛「……!」
未央「ニュージェネや、シンデレラプロジェクトの事、大事に思ってくれている……」
未央「あぁ、一度言い出したら聞かないしぶりんが、戻って来たんだなぁって。
えへへ! なんかさ、実感が沸いたっていうか」
未央「じわじわ―って心があったかくなったんだよね」
未央「だからさ? しぶりん……」
未央「お別れ以外のワガママだったら、これまで通り、いくらでも言ってよ」
未央「おしまいになんて私、絶対にしたくない……!」
未央「しぶりんが私達の事、何度突き放そうとしたって、何度でも手を繋ぎに行くよ」
未央「今度は私達が、何度でもこの裏庭に連れて行くから」
未央「また……一緒に、踊ろう?」
487 = 365 :
凛「未央……う、あ……」ブルブル…
プルプル…
……
…
凛「………………」ツー…
凛「うん……」
凛「うん……!」ニコッ
卯月「凛、ちゃん……!」
未央「ふふ、えへへ……!」ジワッ…
未央「いい笑顔だよ、しぶりん……ね、プロデューサー?」
武内P「はい……」
武内P「とても……良い、笑顔です……」
488 = 365 :
~夜、病室~
凛「プロ、デューサー……」
武内P「はい」
凛「二人……かえった…………?」
武内P「はい。先ほど、お帰りになられました」
凛「そう………………」
凛「プロ、でゅ……さー…………?」
489 = 365 :
武内P「はい、ここです」
武内P「私は、ここにいます」ギュッ
凛「ぷ、ろ……でゅ……さー…………」
凛「ぷ……ぉぅ……さ…………」
武内P「はい、いつでもそばにいます」
490 = 365 :
凛「うー…………ぁー…………」
武内P「はい、私はプロデューサーです」
武内P「私は、あなたのプロデューサーです」
武内P「これまでも、これからも、ずっと、そばに居続けます」
どうして?
491 = 365 :
「どうして……?」
そういう仕事なの?
「そうですね……本来業務とは、言えないのかも知れません」
「ですが、私は……」
「私だけのために、一日でも長く、あなたのそばにいたいと思います」
他の子の方がいいよ。私なんて――
「愛さない、愛されないようにする理由を、誰かのせいにしてはならない」
「それを、あなたは私に教えてくれました」
「たとえ独りよがりであろうと……私は、あなたを想い続けます」
ありがとう、プロデューサー――
――――――
――――――――――――
492 = 365 :
――――――――――――
――――――
チュン チュン チュンッ…
武内P「………………」
武内P「…………!?」
武内P「し、渋谷さん…………」
武内P「渋谷さんっ!!」
武内P「渋谷さん………………」
493 = 365 :
凛「 」
――――――
――――――――――――
494 = 365 :
――――――――――――
――――――
志希「あともう少ししたら、クリスマスフェスだね」
志希「心配しないでいーよ。もうそろそろ、復帰できると思うから」
志希「卯月ちゃん達から、聞いたよ」
志希「すごく良い笑顔だった、って……」
志希「一時的に痙攣がおさまったのも、ニュージェネの二人が、
あの子に幸福感を与えてくれて、脳内でドパミンが生成されたからなんだと思う」
志希「………………」
志希「ごめんね…………私、何も力に、なれなかった……」
――――――
495 = 365 :
――――――
未央「……そっか」
未央「仕方ないよ、やる事やったんだもの。そんな事よりさ、フェスのセトリを…!」
未央「そんな事より……?」
未央「そんな、事……」
未央「なワケ……ないじゃん…………う、うぅぁぁ……!!」
卯月「頑張って、治しましょう……!」
卯月「もう一度、凛ちゃんを迎えてあげましょう、プロデューサー!」
卯月「ねっ? ぷ、プロデューサー……」
卯月「はい、って……言ってください…………」
――――――
496 :
朝は来ないのか…
497 = 365 :
――――――
美城「先日、渋谷凛の両親が事務所を訪ねてきた」
美城「辛辣な言葉をぶつけてしまった……
娘に親切の限りを尽くしてくれた君に、心からお詫びをしたい、と」
美城「平身低頭して、謝辞を述べて行ったよ」
美城「……君には、しばらく休暇を与えようと思う」
美城「フェスまでの代役には、外部に出向させていた彼を引き戻しておくとしよう」
美城「君は良くやってくれた」
美城「プロジェクトにおける業績だけの事を言っているのではない」
美城「自分を責めるのは、やめなさい」
――――――
――――――――――――
498 = 365 :
――――――――――――
――――――
『……ァァアアアァァァァァァァァァァアアッ!!!』
『見て、わたし……み、みてみて、みて、みれ、みれぇ!!』
『……駄目です、渋谷さん』
『とても……とても、撮影する事はできません……』
『ウアアアアァァァァァァァァッ!!! ガァッ、アッ、アッ……』
『見て、みれぇ!! わたし、をっ!! み、み……』
『撮ってとってとってとってとっ』
ピッ!
カチ カチッ…
ピッ!
『…………』
『……それで、何喋ればいいの?』
『自己紹介って……もう、分かったよ』
『コホン…………どうも、渋谷凛です。8月10日生まれ。好きな食べ物はチョコレート』
499 = 365 :
『よく分からないけれど、私は随分長い間、眠ったままだったそうです』
『これからは、寝坊しないように気をつけます』
『ハハハハ…!』
武内P「………………」
『ではぁ、さっそく…』
『あ、あぁっ!? ちょっとしぶりーん、そこはノリツッコミでしょー!』
『悪ふざけもいい加減にしなよ、未央。一応それ、病院への報告用なんでしょ?』
『えー、だからこそでしょ。元気になったぞーってアピールしなきゃ! ねぇしまむー?』
『莉嘉、大丈夫? 無理して付き合わなくていいよ』
『へ、ヘヘ……病み上がりの凛ちゃんに心配されるほど、アタシへばってないもんねー☆』
『まったく、頑固だね莉嘉は』
『それ、凛ちゃんが言う事じゃなくなーい? にゃははーっ♪』
『な、それどういう意味!?』
『アハハハハハ…!』
500 = 365 :
ガチャッ
バタン…
楓「……失礼します」
武内P「………………」
楓「……やっぱり、ありますね」
楓「きっと、まだあるだろうと思って、グラス、買ってきました」
楓「凛ちゃんの誕生日に買った、ワイン」
楓「残しておくのもアレですし……飲んじゃいません?」
みんなの評価 : ☆
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