私的良スレ書庫
不明な単語は2ch用語を / 要望・削除依頼は掲示板へ。不適切な画像報告もこちらへどうぞ。 / 管理情報はtwitterでログインするとレス評価できます。 登録ユーザには一部の画像が表示されますので、問題のある画像や記述を含むレスに「禁」ボタンを押してください。
元スレ国王「さあ勇者よ!いざ、旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」
SS+ スレッド一覧へ / SS+ とは? / 携帯版 / dat(gz)で取得 / トップメニューみんなの評価 : ○
レスフィルター : (試験中)
来週とは今週中ってことだよな?
にしてもこの兄上いつから裏切ってたの?最初から?
にしてもこの兄上いつから裏切ってたの?最初から?
王城
兄「…それで? 教皇様より兵を預かってしてきたことが、たったこれだけか?」
貴族「はっ…それは、そのぅ…」
兄「お前の部隊長の任を解く。能力のないものは十字聖騎士団、改め王国正規軍には必要ない」
貴族「!! お、お願いですぅ!! もう一度、もう一度チャンスをぉっ!!」
兄「本来ならば、新たな軍法に照らし合わせて処刑とするところを、降格で良しとすると言っているのだ。下がれ、私は忙しい」
兄「今後は一兵卒として、活躍してくれ」
貴族「うぅ…そんなぁ…」
「将軍閣下。そろそろ王国軍出陣の儀の時間であります」
兄「分かった。すぐに向かおう」
兄「………いよいよか」
教皇「――汝、その血と肉に、戦場を駆けるその風に、女神の加護を授けん」
兄「…有り難き、幸せ」
「最後に、国王陛下よりお言葉を賜るッ!」
国王「………」
兄(…陛下)
国王「――あれは女神の力などではない」
国王「人の欲望が生み出した、幻影だ」
国王「存在もしないものに魅了されて…それに多くの命をかけるのは愚かなことだ」
兄「………」
兄「例え、幻影だとしても」
兄「魔王が討てるのならば…人には幻影が必要なのです」
兄「力があれば、平和すら手に入ります」
国王「…馬鹿なことを。真の女神の加護なくしては、魔王は討てん」
兄「………そうではないことを、証明して参ります」
女王「………」
兄(女王陛下…やつれたな。俺にあの日の策を託したことを悔いておられるのか)
兄(その選択は、間違いなかったという事を…示してみせます。だから…)
兄「…どうか、心穏やかな日々を、お過ごしください」
女王「………」
兄「…ふう。後は軍を率いて旅立つのみ、か」
兄「私の部屋に見送りにくる者など、ひとりも居ないな。これでも将軍なんだが」
兄(…嫌われたものだ。まあ、当然か。信頼の全てを裏切ってみせたのだからな)
兄(それでも…。全てと引き換えに、今や力は我が手中にある)
兄(成し遂げてみせる)
兄(真の平和を)
戦士「………」
兄「…おや」
兄「こんな私にも、見送りが居たか」
兄「傷は良くなったようだな。送別の花でも手向けにきてくれたか?」
兄「…なんて、気の利いたことが出来る男じゃないよな…」
戦士「………」チャキ…
兄「…まったく。お前は理解できないことがあればすぐ剣か?」
兄「そんな事だから、いつまでたっても甘いのだ、お前は」
戦士「…黙れ」
戦士「兄上の顔で、声で、言葉で」
戦士「それ以上語るな」
戦士「お前は兄上などではない」
戦士「操られ、ままならぬ姿の兄上を見ているのは………もう俺には耐えられない」
兄「…戦士」
兄「信じているのだな。俺を」
兄「父上を信じていたのと、同じように」
兄「でもなあ…戦士よ」
兄「俺は、操られてなど、いないんだよ」
兄「それが、現実なんだ」
兄「………受け入れてくれ」
戦士「嘘だっ!!」
兄「嘘じゃあない。俺の身体は俺のもので、俺の記憶だってそうだ」
兄「お前が小さな時、勇者ごっこに夢中になりすぎて、屋敷の階段から落ちたことだって覚えてる」
戦士「…やめろ」
兄「そういえば、あの時から俺は魔王の役回りばかりさせられていたな」
戦士「…やめてくれ」
兄「あれからもう二十年経つが…今のお前にしてみれば、俺は魔王のごとき存在に見えるのか?」
戦士「やめてくれっ!!」
兄「………」
兄「そう言えば、お前は勇者一行になったんだっけな。夢が叶って良かったな」
兄「でも、そんなものでは国は守れない」
兄「現実は………お伽噺話のようには、いかないんだよ」
戦士「うあああああああああああッ!!」
ダッ
ビタッ…!
戦士「ッ!!」
戦士(か、身体が…動かない…!!)
兄「…お前は、無力だ」
兄「考えも無しに突っ込んで、何が出来るというのだ」
兄「今や将軍たる俺に刃を向ければ…また謀反人に逆戻りだということも、分からんのか?」
戦士「…謀反人になろうが何だろうが…!」
戦士「俺には、もう譲れないものがあるんだ…!!」ググ…
戦士「守りたいものが、あるんだっ!!」グググ…
兄「力の無い者に、何も守れはしない!!」スッ
ズダァン!
戦士「うぐぅッ…!」
戦士「………兄上までもが…あの忌まわしき術を使うのか…」
戦士「父上を死に追いやった…その呪われた技を…!」
兄「使えるものは利用するだけだ」
兄「紛い物だろうが何だろうが、強きものだけが残るのだ!!」
ドタドタドタ…
「将軍閣下! 今なにか物音が…っ!? これは…!」
戦士「………」
兄「………」
兄「…なに、弟が見舞いに来てくれただけのことさ」
兄「我が一族には、こういう荒々しいしきたりがあってね…」
「し、しかし閣下! この者は武器を!!」
兄「暫くは動けない。放っておけ」
兄「………出陣するぞ」
兄「………」ツカツカ
戦士「…兄上が」
戦士「兄上が言ってくれただろ…」
戦士「"お前には、大事なことを感じ続ける力がある"って」
戦士「俺が…大事だと信じていたこと…」
戦士「――…間違って、いたのか?」
兄「…間違っていたのかどうかは、後の世の人間が好きに決めればいい」
兄「俺は俺で、お前はお前で、この国のことを思った」
兄「ただ歩く道が………遠く離れてしまった」
兄「それだけのことさ」
戦士「…待て、よ」
戦士「約束しただろ。女勇者様の、手紙…」ググ…
兄「………」
兄「もう………」
兄「俺には必要ないものだ」
戦士「………っ」
兄「さらばだ」
兄「我が弟よ」
戦士「………」
くノ一「………戦士殿」
国王「…」
国王「…兄弟とは、不思議なものだな」
戦士「………」
国王「同じ親を持ち、数えきれぬほど多くのことを共にしていたはずなのに…」
国王「気づけばいつの間にか、全く別の生を歩んでいる」
国王「それでいて…失ってしまえば、その代わりなるものなど、ひとつもない」
戦士「………」
くノ一「…」
くノ一「――忍は、血の繋がらない兄でした」
戦士「え…?」
くノ一「陛下の陰の力となるべく、一緒に育てられてきた義兄妹」
くノ一「兄者は私よりも遥かに優秀で、大事なことのためならどんなことも犠牲に出来る人でした」
くノ一「私は、まだまだ未熟で…あの日ですら、小さな子供を相手に手をあげることを、躊躇した」
くノ一「兄者が見たら、怒っただろうな…」
戦士「………俺は」
戦士「弟なのに、兄上のことを何も分かっていなかったんだ」
戦士(俺は…いつまでたっても)
戦士(結局、何も分からないままだ)
くノ一「………どんなに絶望を感じても」
くノ一「ひとには、出来ることが必ず残されている筈です」
くノ一「何度だって、立ち上がる権利があるはずなのです」
戦士「…くノ一」
くノ一「共に、陛下を支えましょう」
くノ一「最後の最後まで」
国王「――まだ、全てが終わったわけではない」
国王「お前の役目を、終わらせてやれはしないぞ」
国王「お前の居場所は」
国王「余の側だ」
戦士「………」
戦士「はい」
――
――――
――――――
――――――
――――
――
「戦士さんへ」
「王国正規軍は魔王の大陸を攻め上がり、猛進を続けているようですね」
「そして、今回のあの件…。一見、人類の行く末には、光が射し込んだように見えますが」
「私にはどうしても、このまますんなりと事が運ぶようには思えません」
「女神のあの言葉を、覚えているでしょうか」
「魔王は勇者一行の結成を待たずして攻めてくる。それは勇者が神託を受けるのとほぼ、同時だ…と」
「感じるのです…魔王の力が、大きな衝動を抱えているのを」
「………私たちが対峙するものは、もしかするととてつもなく強大なもので」
「あまりに無力な我々には、成す術もないのかもしれません」
「王国も抜かりなく備えているとは思いますが、くれぐれも注意して下さい」
「それと…」
「王国と、辺境連合との戦いが熾烈化していると聞いて、胸を痛めています」
「戦士さんと、盗賊さんが戦うなんて…和解の道は無いのでしょうか」
「私に出来ることがあれば、何でも言って下さい」
「僧侶」
戦士「…僧侶殿」
戦士(幽閉されていて尚、こうして秘密裏に文書を送ってくれる)
戦士(なんとかしてやりたいが…教皇領には、近づくこともままならん)
戦士「勇者一行…か」
戦士「それが真のことかどうか…今日こそ、はっきりするのだろう」
戦士(例えそれが真実だったとして…)
戦士(今さら何になるんだろうな)
「戦士殿。お時間です」
「勇者が、謁見の間に入室します」
戦士「…そうか」
王城 謁見の間?
戦士「…陛下」
国王「ついにこの日が来たな」
戦士「はい。彼は、本物なのでしょうか」
国王「まあ、教会の発表だからな。どうとも取りづらいが…。実際にその力で、地方の小さな集落をオークから救ったのだとか」
国王「女神に会ったお前は何も感じんのか?」
戦士「…はい。あの場に居た者たちにはそもそもその自覚はないですし、女神も勇者が誰とは言わなかったので…」
国王「そんなものか。なんか、こう、ないわけ? 運命を感じる…! みてーなの」
戦士「陛下におかれましては、絵巻物の読みすぎかとぞんじます」
国王「うるせーや」
国王「だが、しかしこれで…前線の兵士がいたずらに死ぬことも、防げるかもしれん」
国王「王国軍も…魔王軍もな」
戦士「………」
国王「その運命を、魔王と…一人の人間に任せるのは、間違っていると言わざるを得ないが」
国王「…まったく、ままならんな。女神様は何をお考えなのだか」
戦士「陛下…」
国王「それでも、余は勇者を激励せねばならん」
国王「むごたらしい運命を背負わせると分かっていても、送り出してやらねばならん」
国王「それが余の仕事だ」
「勇者様、入室されます!」
国王「…よくぞ参った。勇者よ」
勇者「はっ」
戦士(………あれが、勇者)
戦士(若いな。しかし、女勇者様も魔王を討った時はあれぐらいの歳だったと聞く)
戦士(本当にあの者が、女神の言っていたものなのか)
戦士(なんとも、感慨の無い出会いだ)
国王「知っての通り、魔王軍には王国正規軍が攻撃をしかけているが、未だ魔王撃破には至らない」
国王「女神の加護を…」
国王「…真の強さをもつそなたならば、きっと魔王を討てるのはずだ」
勇者「………」
国王「世界の重みをその肩にかけることを…許せ」
国王「勇者よ! 遊撃隊として勇者一行を組織し、魔王を撃破するのだ!」
勇者「はっ!」
国王「さあ、勇者よ!」
国王「いざ、旅立ち――」
バタンッ…!
伝令「で、伝令!」
伝令「魔王が、攻めてきました!」
国王「なに…!? それは真かっ!?」?
勇者「…!」?
ザワザワ…?
伝令「はっ!!」?
「ま、魔王が…?」?
「そんな馬鹿な…! 勇者が旅立ってこれからと言う時に!」?
「なんということだ…っ」?
国王「…状況を詳しく申せ」?
伝令「はっ!本日未明、魔王軍との最前線基地へ、新たな敵軍が出現!」?
伝令「我が国の軍は、新手の出現からわずか半時で全滅しました…!」?
国王「な、なんだと…!?」?
戦士(――全、滅?)
戦士(王国正規軍の、"全滅"--)
戦士(それは………)
戦士(司令官の死をも、同時に意味する)
伝令「新手はどうやら、魔王と直属の精鋭兵のようです!」?
戦士(死んだ?)
戦士(こんなにも、あっけなく?)
勇者「魔王が、自ら…!」
?
――兄「いつもいつもそういう場は面倒だと私に押しつけて…」
――兄「ふっ、可愛くない弟だ」
―― 兄「…約束だ」
伝令「魔王の部隊は、その後直近の拠点を蹂躙!南方大陸から海路に出ました!」?
――兄「もう、俺には必要ないものだ」
――兄「さらばだ。我が弟よ」
伝令「その猛進凄まじく…我が国の港町までおよそ数刻…!!」?
――兄「ふぐっ…馬鹿言うな…俺が泣くわけないだろう………」
――兄「よく、生きて戻った」
――兄「戦士」
>>624
貼り直します
戦士(王国正規軍の、"全滅"--)
戦士(それは………)
戦士(司令官の死をも、同時に意味する)
伝令「新手はどうやら、魔王と直属の精鋭兵のようです!」
戦士(死んだ?)
戦士(こんなにも、あっけなく?)
勇者「魔王が、自ら…!」
――兄「いつもいつもそういう場は面倒だと私に押しつけて…」
――兄「ふっ、可愛くない弟だ」
―― 兄「…約束だ」
伝令「魔王の部隊は、その後直近の拠点を蹂躙!南方大陸から海路に出ました!」
――兄「もう、俺には必要ないものだ」
――兄「さらばだ。我が弟よ」
伝令「その猛進凄まじく…我が国の港町までおよそ数刻…!!」
――兄「ふぐっ…馬鹿言うな…俺が泣くわけないだろう………」
――兄「よく、生きて戻った」
――兄「戦士」
貼り直します
戦士(王国正規軍の、"全滅"--)
戦士(それは………)
戦士(司令官の死をも、同時に意味する)
伝令「新手はどうやら、魔王と直属の精鋭兵のようです!」
戦士(死んだ?)
戦士(こんなにも、あっけなく?)
勇者「魔王が、自ら…!」
――兄「いつもいつもそういう場は面倒だと私に押しつけて…」
――兄「ふっ、可愛くない弟だ」
―― 兄「…約束だ」
伝令「魔王の部隊は、その後直近の拠点を蹂躙!南方大陸から海路に出ました!」
――兄「もう、俺には必要ないものだ」
――兄「さらばだ。我が弟よ」
伝令「その猛進凄まじく…我が国の港町までおよそ数刻…!!」
――兄「ふぐっ…馬鹿言うな…俺が泣くわけないだろう………」
――兄「よく、生きて戻った」
――兄「戦士」
>>623
も貼り直します。
もう許さん。マジで文字化け許さん…
国王「なに…!? それは真かっ!?」
勇者「…!」
ザワザワ…
伝令「はっ!!」
「ま、魔王が…?」
「そんな馬鹿な…! 勇者が旅立ってこれからと言う時に!」
「なんということだ…っ」
国王「…状況を詳しく申せ」
伝令「はっ!本日未明、魔王軍との最前線基地へ、新たな敵軍が出現!」
伝令「我が国の軍は、新手の出現からわずか半時で全滅しました…!」
国王「な、なんだと…!?」
戦士(――全、滅?)
も貼り直します。
もう許さん。マジで文字化け許さん…
国王「なに…!? それは真かっ!?」
勇者「…!」
ザワザワ…
伝令「はっ!!」
「ま、魔王が…?」
「そんな馬鹿な…! 勇者が旅立ってこれからと言う時に!」
「なんということだ…っ」
国王「…状況を詳しく申せ」
伝令「はっ!本日未明、魔王軍との最前線基地へ、新たな敵軍が出現!」
伝令「我が国の軍は、新手の出現からわずか半時で全滅しました…!」
国王「な、なんだと…!?」
戦士(――全、滅?)
>>623
も貼り直します。
もう許さん。マジで文字化け許さん…
国王「なに…!? それは真かっ!?」
勇者「…!」
ザワザワ…
伝令「はっ!!」
「ま、魔王が…?」
「そんな馬鹿な…! 勇者が旅立ってこれからと言う時に!」
「なんということだ…っ」
国王「…状況を詳しく申せ」
伝令「はっ!本日未明、魔王軍との最前線基地へ、新たな敵軍が出現!」
伝令「我が国の軍は、新手の出現からわずか半時で全滅しました…!」
国王「な、なんだと…!?」
戦士(――全、滅?)
も貼り直します。
もう許さん。マジで文字化け許さん…
国王「なに…!? それは真かっ!?」
勇者「…!」
ザワザワ…
伝令「はっ!!」
「ま、魔王が…?」
「そんな馬鹿な…! 勇者が旅立ってこれからと言う時に!」
「なんということだ…っ」
国王「…状況を詳しく申せ」
伝令「はっ!本日未明、魔王軍との最前線基地へ、新たな敵軍が出現!」
伝令「我が国の軍は、新手の出現からわずか半時で全滅しました…!」
国王「な、なんだと…!?」
戦士(――全、滅?)
「う…嘘だ…港町まであと数刻だと」
「港町からは、もうこの王城まで砦ひとつ隔てるのみだぞ!?」
「お、王国軍は!? 王国軍はどうなって…」
「主戦力の半分以上は最前線に送られているはずだ…それが全滅…」
「で、ではもはや港町以降を守れる人類の戦力は…!!」
「そんな…そんな馬鹿な!!」
国王「………」
兵士「し、失礼致します!」
国王「…今度は何だ」
兵士「陛下、こちらの書状を…。港町の長から、火急の報せとのことです!」
国王「港町…長というと、武器商会の長か」
国王「よい。読み上げてみよ」
『魔王との闘いは、近いうちに起こるでしょう』
『避けることは出来ません』
『魔王は、絶大な力を示して現れます』
『魔王は、勇者一行の結成を待たずして攻めてきます』
『勇者が、神託を受けるのとほぼ、同時にです』
『…あなたたちはそれぞれ別々に、魔王と闘うことを強いられます』
戦士「――どうやら全ては現実のこととなるようです」
国王「そうみたいだな」
戦士「私は、戦いに赴かなければなりません」
国王「そう言うことに、なるだろうな」
戦士「残存の王国軍を全て率いて、王国南方の砦に布陣します」
国王「確かに、それが良さそうだ」
戦士「…陛下?」
国王「………」
国王「こうなるかもしれんと分かっていて…それを止めることも出来なんだ」
国王「余は、人類の歴史上最も愚かな国王として記憶されるだろうな」
国王「しかし、どうやら悲劇に酔っている時間もどうやら残されてはいない」
女王「………陛下」
くノ一「………」
国王「戦士」
戦士「…はっ」
国王「共に足掻いてくれるか」
戦士「…」
戦士「私は、陛下のつるぎです」
戦士「最後の、時まで」
国王「そうか。では――」
国王「お前に、将軍の地位を授ける」
将軍「御意」
くノ一「戦士殿…」
くノ一「…いえ、将軍閣下」
将軍「…はは。お前にまでそう言われてしまうのは寂しいな」
くノ一「………いつか」
くノ一「この時が来るであろうと、覚悟はしておりました」
将軍「そうか」
将軍「………離れていても、我らのすべきことは変わらんさ。そうだろう?」
くノ一「…はい」
将軍(…例え、それが生と死ほどの距離であっても)
くノ一「隠密である私は、涙も失って久しく…可愛くない女ですね」
くノ一「こういう時に泣くことも出来ません」
将軍「…」
くノ一「将軍閣下」
くノ一「我らは、陛下をお守りすると誓い合った身。なまじ本懐を遂げずにおめおめと戻られようものなら」
くノ一「私は、あなたを許しません」
将軍「…ああ。分かっている」
将軍「それではな」
くノ一「はい」
将軍(よく分からんな…女心というものは)
将軍(嘘をついてまで、激励しなくてもいいだろうに)
将軍(兄者を失った時も人知れず、泣いていたろう。知ってるぞ、私は)
将軍(そして、私が去ったその部屋で、泣くことも)
将軍(優しさを捨てきれないお前が、そうまでして…)
将軍(…よく、分からんよ)
将軍(なあ、兄上。兄上だったら分かるのか?)
――兄「俺はな。お前にはひょっとしたら――」
将軍(…あの時、何を言おうとしていた?)
――兄「いや…。なんとなく、な。お前が先に見るべきな気がしたんだよ」
将軍(あの手紙を、兄上が読んでいたら…こんなことにはならなかったのか?)
――兄「うるさい。…兄ってものはな、色々考えてるんだよ」
将軍(何を考えていたんだ?)
――兄「…間違っていたのかどうかは、後の世の人間が好きに決めればいい」
――兄「俺は俺で、お前はお前で、この国のことを思った」
――兄「ただ歩く道が………遠く離れてしまった」
――兄「それだけのことさ」
将軍(分からないよ…そんな言葉で)
将軍「納得、できないよ」
将軍「死んでしまうなんて、ずるい」
兵士「か、閣下?」
将軍「………」
将軍「…中央、左翼は重装歩兵を前に出せ!!」
兵士「し、しかしあの破壊力の前では」
将軍「敵がいかに屈強でも、立ち止まるな!!」
将軍「決して歩みを止めるなッ!!」
将軍「我らの後ろに逃げ場などとうにないッ!!」
将軍「ここが、この王国軍が人類最後の砦だッ!!」
将軍「進めッ!!」
将軍「死して尚も前へッ!!」
将軍(全てを失った時…)
将軍(私は只のいち戦士へと戻るだろう)
将軍(そしてその時、私は)
将軍(死んでいるんだろう)
(そう思っていた)
「…それなのに」
「何故、私は生きているのだろうな」
「教えてくれないか? 魔王よ」ユラ…
氷姫「! 何、コイツ…」
炎獣「お前…」
魔王「炎獣、見覚えが?」
炎獣「…ああ。戦場でデカイ声張り上げてたからな。こいつは王国軍の…」
「そう。私はずっと、王国を守るために戦ってきた」
「守るべきものが、王国にはあった」
「色んなものに守られもした。そういう幾つもの想いを胸に進んでいくうち」
「人は私を、将軍、と呼ぶようになった」
「だが今の私は将軍などではない」
「兵を失い、旗は燃え尽き、剣は折れた」
「私は最早何も持たない」
「そう、私は只の――」
戦士「戦士だ」
戦士(滑稽だ)
戦士(何も出来はしなかった)
戦士(何も守れなかった)
戦士(何も分からないまま死んでいく)
戦士(何が勇者一行だ)
戦士(………万死に値する)
――「それでも」
――「何度でも立ち上がる権利が、あるはずです」
戦士(…うん)
戦士(そうか、だから私は)
戦士(身体は軋み、剣は折れ、兵を失い、誇りは費えても)
戦士「…」ザ…
戦士(この者達の前に立ち塞がろうとしている)
炎獣「退かないってか」
戦士「それが、私の権利だ」
炎獣「…そうかよ」
炎獣「じゃあ、手加減しねえからな」
戦士「…いざ」
ヒュオオォ…
炎獣「…」
戦士「…」
炎獣「…」
戦士「…」
ガラ…
戦士「」ドンッ
炎獣「」バッ
戦士(………盗賊。貴様は何を思いながら死んだ?)
戦士(商人、貴様はどうだ?)
戦士(………兄上)
――戦士「あにうえ!」
――戦士「オレ、おおきくなったら、ゆうしゃになるんだ! そして、まおうをたおすんだ!」
――兄「ゆうしゃ? おまえ、しってるのか? まおうのてしたには、まおうしてんのうってヤツがいるんだよ」
――戦士「じゃあ、してんのうもたおす!」
――兄「…あのな、ゆうしゃって、めがみさまにえらばれなきゃ、なれないんだぜ」
――戦士「ええ!? じゃあ、どうしよう?」
――兄「おれは、りっぱなせんしになりたいんだ。ちちうえみたいな!」
――戦士「せんしだったら、なれるのか!?」
――兄「うん、たいせつなココロエをもてばなれるんだって、ちちうえがいってた!」
――戦士「じゃあ、おれもせんしになりたい!」
――兄「…まねするなよ」
――戦士「べつに、いいだろ! あにうえといっしょがいい!」
――兄「…おまえが、おれよりいいせんしになったら、おれヤだなあ」
――戦士「あにうえより、いいせんしになんて、なれっこないよ! あにうえはスゴいもん!」
――兄「おまえ…」
――戦士「たいせつなココロエをまもって、いっしょにつよいせんしになろう!」
――戦士「そして、ちちうえみたく、まおうやしてんのうを、たおそうよ!」
――兄「…もう、いいだしたらきかないんだから」
――戦士「やくそくだよ、あにうえ!」
――兄「…」
――兄「うん。やくそくな」
戦士(兄上)
戦士(俺は、ほんとは)
戦士(勇者なんて大きなものになれずとも良かった)
戦士(兄上と共に並び立つ、ひとりの戦士であれば、それだけで)
戦士(――だから、最後まで)
戦士(俺はただただこの剣に)
戦士(俺の思いを託して)
戦士(死んでいくよ)
《――己の全てを、伝えるために剣を振れ》
《自分の伝えたいことを…忘れるな》
《もののふだったら、その剣に誓ったことを忘れるな》
《相手の命を奪う剣だから…それで正しいと思う道を示せ》
《人を切り伏せる時こそ…自分を伝えろ》
戦士(それが、戦士であることの、大切な――)
炎獣(――なんだ、こいつの剣…)
炎獣(ああ、そうかよ)
炎獣(お前も、守りたかったんだな)
炎獣(守るための、剣だったんだな)
炎獣(俺も、あんたみたく)
炎獣(守るための道を行けたらって思うよ)
炎獣(………羨ましい、な)
――狩人「………皆の、仇」
炎獣「…っ!」ズキッ…
ズガァアァンッ!!!
氷姫(一瞬――)
氷姫(炎獣の爪がほんの僅かにブレた)
氷姫(敵に受けた銃弾の傷が、微かに炎獣の踏み込みを甘くした)
戦士「」
氷姫(敵は一撃で消し飛んだ)
氷姫(――でも、折れた剣を握った腕だけが)
氷姫(怨念のように魔王の方へ、吹き飛んできたのに)
氷姫(咄嗟にあたしは反応出来なかった)
氷姫「――魔王っ!」
魔王「!」
魔王(腕だけになってまで――!! なんて執念)
魔王(弾き落とさなければ)サッ
ヒュンッ
魔王「なっ!?」
魔王(消えたっ!?)
ドシュッ
木竜「がァッ………!」
魔王「爺…!?」
炎獣「爺さん!!」
氷姫「ジィさんっ!!」
木竜「ぐっ、ごっ………」
魔王(何故っ…!)
魔法使い「やはり…人間と言うのは興味深いですね」
魔王「――!!」
炎獣「誰だっ!」
氷姫(この魔力…あの時の!)
魔法使い「想いの力…それは時より奇跡のような結果をもたらすのですよ」
魔法使い「折れた聖剣にも、あなたの想いのエネルギーは充分に蓄積された」
魔法使い「僕は、それをちょっとだけお手伝いしましょう…"王国軍の鬼"、戦士殿」
魔王「あ…」
魔王「あなたは--」
魔法使い「解放せよ」
木竜「グッ…」
木竜「………側…近………」
木竜「………貴様………」
魔法使い「お久し振りですね、木竜」
魔法使い「そしてさようなら」
ギュオォオォオオォオッ!!
木竜「グァアァアァアァアァアァアァア!!」
魔王「じっ…」
木竜「グァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ…!!」
魔法使い「………弾けろ」
パァンッ…!!
魔王「――爺ぃぃっ!!」
氷姫「そん、な」
炎獣「…爺…さん…?」
魔法使い「おや」
魔法使い「すんでのところで、間に合いませんでしたか。まったく、集中治癒とは恐ろしい術ですね」
魔法使い「四天王を二人片付けられると思ったんですが――」
雷帝「――貴様ァアァアッ!!」ダッ
魔法使い「久しいですね、雷帝」
魔法使い「ですが、病み上がりで無理をするものではありませんよ」
ポンッ
雷帝「っ!?」グルンッ
ドサッ
氷姫「雷帝…!」
氷姫(こいつ、転移を…)
炎獣「」ドンッ!
炎獣(――殺す)
魔法使い「おっと」ヒュンッ
炎獣「!? 消えた――」
魔法使い「おお、恐い。武闘家さんを倒したひとと、まともにやり合いたくなんかないですよ」
魔法使い「それに、本調子じゃ、無さそうですし、ね」ス…
ズゥンッ!…
炎獣「がっ!?」
炎獣(なん、だ…身体に…何かが、のし掛かってる、みてぇだ…!!)
氷姫「炎獣っ!」
魔法使い「…さて」
氷姫(こいつ、何者なの…っ!?)
氷姫(じ、尋常じゃない魔力…!!)
氷姫「ま、魔王…。下がって!」
魔王「………」
魔法使い「…ふふ。絶体絶命、といった所ですか? 今までにないピンチですねぇ」
魔法使い「…ですが、こんな所にしておきましょうか」
魔法使い「これ以上、手を出すと………貴女は怒り狂って、世界を破滅させてしまうかもしれませんし、ね?」
魔法使い「――魔王」
魔王「………」
魔法使い(ただならぬ圧力ですねえ。魔王の貫禄、ってやつですか)
魔法使い(あなたの娘はこの通り、ご立派に成長なさってますよ………先代。しかし…)
魔法使い「そんなに高ぶっては…コントロール出来ないのではないですか?」
魔法使い「…今、正に力を取り戻しているのでしょう」
魔王「………」
魔法使い「そんなに睨み付けないで下さい。これでも貴女の発する圧のせいで、息苦しくってしょうがないんですから」
魔法使い「分かりましたよ。私はこれで引きましょう」
魔法使い「まあ、木竜の撃破、という目標は達成したわけですし」
魔法使い「底なしの魔力で回復をし続ける彼が居ては、人間に勝ち目はありませんから。ヒーラーから撃破、は定石ですしねぇ」
雷帝「………側近…貴様ァ…!!」
魔法使い「ふふ。それはもう…死んだ者の名ですよ」
魔法使い「私はただの、魔法使いです」
魔法使い「それでは…また後程、まみえましょう…」
ヒュゥン…
氷姫(…さ、去った…)
氷姫「………雷帝」
氷姫「あんた…今、"側近"って…言った?」
雷帝「………」
雷帝「ああ」
雷帝「間違いない…奴は、先代様の側近を務めていた魔族だ」
雷帝「あいつは………女勇者に殺されたはず…」
炎獣「………」フラ…
炎獣「…なあ」
炎獣「爺さん」
炎獣「死んじまったのか?」
魔王「………っ」ギュウ…!
雷帝「――…」
雷帝(私が…)
雷帝(私が死ぬべきだった)
氷姫「…う…」
氷姫「うぅ…」ポロ…
氷姫「ジーさん…」ポロポロ
魔王「………………」
前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 次へ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+ スレッド一覧へ
みんなの評価 : ○類似してるかもしれないスレッド
- 魔王「勇者よ、ここで終わりだ!」勇者「ちいぃッ……!」 (354) - [39%] - 2012/6/5 21:45 ★
- 穏乃「うおおおおおおお!!燃えてきたぁぁぁぁぁぁ!!」 (474) - [37%] - 2015/3/31 6:15 ★★
- 提督「うぉゎぁああああああああああああああああああああああああああ」 (254) - [36%] - 2017/7/21 10:00 ☆
- 吹雪「だからこの鎮守府はおかしいって言ってるんです!!!」 (1001) - [34%] - 2015/5/11 4:15 ★★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について