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元スレ国王「さあ勇者よ!いざ、旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」
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戦士「…は?」
兄「………それは、どういう…」
国王「もうすぐ、今追われている鹿が森から飛び出してくる」
国王「それを追っている弓使いのうち数人は、鹿を狙うと見せかけて余を狙ってくる」
兄「…!」
国王「あそこに近衛隊がいるな。あれの数人にも、息がかかっている。狙撃に失敗すれば、余に襲いかかってこよう」
戦士「ま、まさか…」
国王「これ、マジだから。ほんとビビるわ、余を誰だと思ってんじゃいっつーの」
戦士「で、では何故警護の者を遠ざけているのです!? 陛下の側には今我々しか…」
国王「どいつが敵の息がかかった者かまでは余にも分からん。念のためよ」
兄「…それでは何故、我々は信用して頂けたのですか」
兄「近衛隊まで裏切るようなこの状況下で、なぜ我々を。言っては何ですが、大将軍の息子などという立場の者など、どの勢力に加担してもおかしくはないと思いますが」
国王「確かにな」ニヤ
戦士「お、おい兄上!」
国王「………匂いが、するのだ」
兄「…え?」
国王「おぬしらからは、匂いがするのじゃよ」
国王「あの大将軍の、忠義に厚く一本木な、汗臭い匂いと同じ匂いがな」
国王「だから余は、そなたらを信じる」
兄「…」
戦士「陛下…」
「よーし、鹿が出たぞ!」
「追えー!」
国王「そら、来たぞ。しっかり余を守れよ」
国王「というより、この状況だとそなたらの命も奪われかねんわけだがな?」
兄(…我々が生き残れるかどうかすら、我々次第だと)
戦士「…そう言うことなら、お任せを。この私に剣を向けることがどういう事か、思う存分分からせてくれましょう」
国王「おー気負ってる気負ってる。あんまりフラグ立てんなよ。腐っても近衛隊だ、奴ら強いぞ」
戦士「有り難い、誉れ高き近衛隊と手合わせ願えるとは」
兄「…単純な奴め」ハァ
戦士「と、言いつつ兄上も少し楽しそうじゃないか?」
兄「馬鹿たれ、分かってるのか。これでいやがおうにも国家転覆の陰謀に巻き込まれたのだぞ」
戦士「ふん。誰が相手だろうが、降りかかる火の粉は払うまで」
兄「…お前のそういう所が羨ましいよ。何はともあれ」チャキ…
戦士「おう。生き残ろうぞ」チャキ…
弓使い「…」キリキリキリ…
戦士「――来る」
兄「陛下、お下がりください」
国王「へいへーい、と」
国王「………すまぬ」ボソ
国王「余が至らぬばかりに…そなたらの命、無駄にはせぬ…」
兄(? 今、何と…)
弓使い「」パシュッ
「あっ!?」
「陛下――!」
貴族(や、矢が陛下の方に!!)
ドヨッ
戦士「はッ!」
兄「ふッ」
カカンッ!
弓使い「は、弾かれた!?」
近衛長「ちっ!」シャキンッ
近衛兵「やむを得ん!」シャキンッ
ダッ
近衛長「王弟様、お覚悟!!」
戦士「来るぞ、兄上」
兄「ひぃ、ふぅ…五人か」
戦士「おや、割り切れんな。さてどちらが多く倒すか」
兄「兄に、華を持たせろよ」
戦士「こればっかりはそうもいかんさ」
兄「ふっ、可愛くない弟だ」
近衛長「女神よっ! 我に加護をっ!!」ダダッ
「は、反逆だ!」
「近衛隊が陛下を!」
「反逆者を捕らえろ!! 陛下を守れ!!」
「そこの弓使いも仲間だっ!!」
ワーッ
貴族「…ど、どうなっているんだ、これは!」
貴族(一貴族の身分から何とかコネで勝ち取った十字聖騎士団の部隊長の座…しかも、王室の鹿狩りのお供に選ばれて出世街道間違いなしだったのに!!)
貴族(へ、陛下の暗殺ぅ!? 私にどうしろと言うんだ!)
「貴族殿! 我々十字聖騎士はどうすれば!?」
貴族「ええい、ウルサイ!! 今考えているっ!」
貴族(はっ。待てよ)キュピーン
貴族(ここで陛下をお守りしたとあれば、十字聖騎士団の株は上がるっ! そうすれば私も…フヒヒ)
貴族「よし! 全員陛下の元へ馳せ参じよ!! 陛下をお守りするのだ!!」
貴族「急げ急げー!」パカラッパカラッ
貴族「戦士殿、助太刀致す………!?」
戦士「御免」ズブ…
近衛兵「」ドサッ…
戦士「…遅いぞ。もう、全員片付いた」
貴族「………さ、流石、見事な腕前…」
戦士「お世辞はいい。守りを固めろ。近衛隊がアテにならん、俺の隊の者達を陛下の元へ集めてくれ」
貴族「むぅっ…!! わ、分かった」
貴族(くそぅ~! またしても邪魔をしよって!!)
兄「おい、無事か………聞くまでもなかったか?」
戦士「当然だ。しかし、兄上も腕が鈍ったな。一人を相手に苦戦するとは」
兄「相手は近衛隊だぞ、四人も切り伏せる方がどうかしている」
戦士「そうか? 女勇者様の方が数段強かったぞ」
兄(比べる対象が女勇者様では…近衛隊も不憫だな)
兄「…陛下、まだ危険は完全に去ったとは言えません。我らのそばに…」
兄「…陛下?」
国王「…」
近衛長「」
国王「…そなたらがかつて余に捧げた忠義、忘れぬ」
国王「ろくな埋葬もしてやれぬが、安らかに眠れ…」
近衛長「」
兄「…陛下は、何を…。奴らは謀叛人だろう…」?
戦士「…」
戦士(…自分を裏切った者を…ねぎらうのか)
兄「…陛下、我らの隊をつけます。王城へ戻りましょう」
国王「………分かっている」
伝令「こ、国王陛下!」
戦士「何だ、貴様は?」
伝令「い、急ぎの報せです! 申し上げます!」
伝令「大将軍が、東の森林部で密かに軍を集結しておりました!」
伝令「大将軍はここを攻めるつもりでいた様です!」
兄「な――」
戦士「何だとっ!?」
国王「………今はどうなっている」
伝令「いち早く異変に気づいた女神教会の十字聖騎士団が大将軍を捕縛!」
伝令「現在事態の収拾に当たっています!」
戦士「ば…馬鹿な!!」
戦士「父上が!? 本当にそのようなことを!!」
兄(父上が………本当に…!?)
兄(…そんな、いくら何でも早すぎる!)
兄(それでは、この近衛隊は…!)
シャキン…
戦士「!?」
兄「…!」
貴族「う、動くなよ…この反逆者どもめ」
戦士「なんだと…!」
貴族「ち、父親が反逆を犯したのだぞ! 貴様らが何も知らぬはずはあるまい!!」
戦士「………そ…それは…」
兄(まずい…!!)
貴族「それ見ろ! 奴らは共謀者だ!! …反逆の共謀者を捕らえろぉ!!」
戦士「くそッ!」チャキ!
戦士「出来るものならやってみろッ!! 俺を捕らえるまでに刺し違えてでも殺してやるぞッ!!」
ゴォ…
貴族「ひッ…」
「…な、なんていう威圧感だ」
兄「よせ、戦士」
戦士「…でも、兄上!」
兄「大人しく捕まろう」
戦士「…今なら陛下を人質にとって逃げられる!」
兄「そんな事をして、どうなる! お前はこの場で全てを失うつもりか!」
戦士「っ…」
兄「何も分からないまま…ただ汚名を着せられて逃げ出すのか」
戦士「………くっ!」
兄「――必ず、挽回のチャンスがあるはずだ」ボソッ
戦士「………」
戦士「分かった」
ポイ ガシャン…
貴族「ふ…ふはは!」
貴族「武器を捨てたぞ!! 今だ!! 捕らえろ!!」
ワーッ
――――――
――――
――
王城 裁きの間
国王「…大将軍よ。このような場でそなたと向き合う事になるとは…とても残念だ」
大将軍「………」
国王「何も、話さぬか。それもまた、そなたらしい」
大将軍「………」
大領主「陛下。既にこのような場を設ける段階は過ぎております。それほど、この者の罪は重く、そして許されざる事です」
大僧正「我ら女神教会も同じ見解です。即刻、処罰を下すことをここに進言します」
国王「………」
大将軍「………」
国王「…どのような罪を犯した者でも、最後の言葉をこの世に残すことは許される」
大将軍「………」
国王「かの者たちを、ここへ」
ゴゴゴ…
兵「歩け。ここに跪け」
戦士「くっ…。このような屈辱…!」
兵「発言は許されていない」
兄「………」
大領主「…! なぜ、あの者たちが」
大僧正(陛下の独断か。また勝手をなさる…)
大将軍「………よぉ、クソガキども」
戦士「!! ち、父上っ!!」
兄「父上…!!」
戦士「ち、父上!! なぜですか!! なぜ…!!」
兵「黙れ!」グイッ
戦士「ウグッ…」
兄「…父上っ!」
大将軍「…ったくよぉ、てめぇらはいつまでたっても俺様のガキらしくなりやがらねえ」
大将軍「父上父上ってよ、気色悪ィっつーのに…爺の奴の教育の賜物だぜ」
戦士(父上――)
大将軍「だがよ。てめぇらの人生はてめぇらの人生だからよ。それで、いい」
兄(父上…!!)
大将軍「俺様が教えられたことなんざ、剣の振り方ぐれぇのもんだ」
大将軍「だが、それでも俺様は満足だ」
大将軍「…忘れんなよ。己の全てを、伝えるために剣を振れ」
大将軍「てめぇの伝えたいことを…忘れんな。もののふだったら、その剣に誓ったことを忘れるな」
大将軍「相手の命を奪う剣だから…そいつでお前が正しいと思う道を示せ」
大将軍「人を切り伏せる時こそ…自分を伝えろ」
戦士「ち…父上ぇ!」
兄「父上…っ!」
大将軍「あばよ」
大将軍「…ま、元気でやれや」
裁判長「――時間である。退場を命じる!」
兵「さあ、下がれ」
戦士「父上!! 父上ぇ!!」
兄「くそぉっ…父上…っ!」
戦士「うわあああああああああああああああああっ!!!」
国王「…他に、言い残す事はあるか?」
大将軍「………」
大将軍「さっきも言ったように、俺様があいつらに教えたことなんざ剣くらいのもんだ」
国王「分かっておる。あの者たちは、狩り場で余を守るために戦った」
大将軍「…そうかい」
国王「…」
大将軍「ありがとう、ございます。陛下…」
国王「…」
裁判長「引き続き、刑を執行する!」
大将軍「…へっ」
大将軍(偉そうなことを言って、このザマとはな…)
大将軍(政治やら駆け引きやら立場やら、随分面倒なもんを背負っちまったが)
大将軍(あいつらの目を見たら、思い出しちまった)
大将軍(ただただ、剣でのみ己を語ってたあの頃を)
大将軍(ただの、いち戦士だった、あの頃を――)
「構え!!」
ガチャ…
大将軍(懐かしいぜ)
――パァン…
――――――
――――
――
王城 とある一室
見張り兵「食事です」カタ…
兄「…すまない」
兄「………」
兄「なあ、少しは食べたらどうだ」
戦士「………」
兄「…今さら、我らを毒殺しようなどという輩はいない。その価値がない」
戦士「…もはや、何の身分も持たぬ雑兵だからか」
兄「反逆罪に問われなかっただけ救われた方だ」
戦士「もはや、誰も信じられぬ」
兄「………」
戦士「我が一族は、その身分を追われた。私と兄上にあてがわれたのは、この小さな部屋ひとつ」
戦士「剣を振るう場所すら奪われ、ただ生かされているのみ。これでは囚人と変わらない」
戦士「そんな辱しめを受けてまで、永らえる命ではない。俺は、一族の誇りまで失った覚えはない」
兄「…誇りが邪魔をして、生きることを捨てててしまうくらいなら…」
兄「それを失った人生を受け入れる勇気も、時として持つべきだ」
戦士「………俺はな、兄上」
戦士「父上が真の反逆者であったとは、今も信じていないんだ。きっと何かの間違いだ」
戦士「父上が、そう簡単に陛下を…我らを裏切るわけはない」
兄「…そうだと信じたくても、それを示す証拠を探す手立てすら、我々にはないのだぞ」
戦士「だとしても。…父上は反逆者ではない」
兄「………」
兄「頑固な奴だよ、お前は」
戦士「兄上は、そう思わないのか?」
兄(…)
兄「俺はな…」
ガチャ…
見張り兵「失礼します」
見張り兵「食事をお下げします」
兄「あ、ああ。すまないな」
見張り兵「…戦士殿、やはり手をつけていらっしゃらないのですね」
戦士「…」
見張り兵「あの、これ良かったらどうぞ」ゴト
兄「…パン?」
見張り兵「俺の知り合いで、パン職人のヤツがいて、そいつに特別力のつくようなパンを焼かせたんです」
戦士「…お前。分かっているのか? こんな事をしたら…」
見張り兵「いいんです。俺、前に一度だけ戦士殿に稽古をつけてもらったことがあるんです。厳しかったけど…でも、あの一切妥協を許さない剣が」
見張り兵「俺には、すごく嬉しかったんです。ああ、俺みたいな下っ端にも本気でやってくれるんだなって」
戦士「…」
見張り兵「実は、これを焼いた職人も元々兵士で…戦士殿には大恩があるって。今の境遇を聞いたら、いてもたってもいられないって、コイツを焼いてくれたんです」
見張り兵「毒の仕込み様がないようにしました。良かったら、食べてください」
兄「…」
見張り兵「王国軍の…特に戦士殿の隊にいた連中は、お二人の解放を望んで声をあげています。どうか、もう暫くの辛抱を…」
戦士「………すまん」
戦士「有り難く、頂く」
戦士「…」ガツガツ
兄「…俺に言わせれば」
戦士「…」ガツガツ
兄「全てが誰かの仕組んだ策略で、父上はそれに陥れられた、というのならば。俺たちを殺そうとしている人物は、役者を使ってでもああいう嘘を吐かせるな」
戦士「…」ゴクン…
兄「甘いよ…お前は」
戦士「………匂いが、するんだよ。兄上」
兄「なに?」
戦士「あの兵士も。狩り場でお供した陛下からも。最期に出会った、父上からも」
戦士「…この人は信用に値するって、匂いが」
兄「………」
戦士「…真実を見抜く眼を養え。人物の臭いをかぎ分けろ。戯言に耳を貸すな。己の想いの味を噛みしめろ」
戦士「覚えているか。父上が最後に酒を酌み交わした時に言っていた言葉。…俺は、自分は鼻が効く方なんだと、信じていたい」
兄「…」
兄「お前、女勇者様に憧れてるよな」
戦士「…ぇあっ?」
兄「いっつもいっつも、女勇者様が近づくと顔をみっともないくらい真っ赤にして…それくらい、憧れているよな」
戦士「んな、なななな、何を言い出すんだ兄上っ!」
兄「でも、その憧れは単純なものじゃない。…お前はなりたいと、ずっと思っているんだよ」
兄「――勇者に」
戦士「…」
戦士「子供の頃言ってた事、兄上がまだ覚えてるなんてな」
兄「お前は…つくづく甘ちゃんだよ」
兄「人物の人となりを見極めると言ったってその単細胞じゃあ、いつ騙くらかされても文句は言えない。言う頃には、命は無いかもしれないんだ」
戦士「兄上…?」
兄「あの夜、父上が言ったことがもうひとつある。″大事なことは何か、常に感じ続けろ″」
兄「………どうやらお前が一番優れているのはそれさ。そしてそれは、誰しもが真似出来ることではない」
戦士「…」
兄「俺はな。お前にはひょっとしたら――」
見張り兵「な、何者だ!? うっ!」
ドサ…
戦士「!?」
兄「な、なんだ? さっきの兵士の声か?」
???「そこを動くな。物音も立てるな。何かあれば、この兵士を殺す」
戦士「…っ!」
戦士(何者だ!? 刺客か!?)チラ
兄(…いや、おかしい。だとしたら、この立場の我々に、見張りの兵士を人質に取るなんて事をする必要がどこに…)
???「…なーんてな。許せよ。本当に声を上げられては困ることになるのでな」
戦士「こ、この声…」
兄「…まさか」
???「よっと」カチャカチャ…ガチャン
ギィ…
女勇者「やあご両人。助けに来たぞ」
兄 戦士「「女勇者様!」」
女勇者「再会を喜びたい所だが、時間がない。すぐに異変に見回りの兵士が気づくはずだ」
女勇者「脱出するぞ」
兄「!」
戦士「ど、どうして…」
女勇者「どうして? 野暮なことを聞くんだな。そんなものひとつに決まっているだろう」
女勇者「君らと、君らのクソオヤジ殿の無念を晴らすためだよ」
戦士「…!」パア
女勇者「お前たちはあの男に似て、やられてばかりは性に合わない性格だと思っていたんだが…私の思い違いだったか?」
戦士「…ははっ!」
戦士「ちょうど、身体がなまってしょうがないと思っていたところですよ!」
女勇者「そう来ると思ったよ。受け取れ」ヒョイ
戦士「お、俺の剣!」ガシャ…
女勇者「さて、お前はどうするんだ?」
兄「私は…ここに残ります」
戦士「――…え?」
戦士「あ、兄上? 何を言ってるんだ」
兄「女勇者様。ここを出て何処に向かうおつもりですか?」
女勇者「さあてね。とりあえずは武器商会の連中の所へ潜り込んでみようかと思っている。奴らが一枚噛んでいるのは間違いなさそうだ」
兄「そうですね、それが良いと思います。恐らくその辺りを叩けばホコリは出てくるかもしれません」
兄「女勇者様と戦士で、外から探りを入れて下さい。俺は、そこが動いたことによる内部の動きを探ってみます」
女勇者「そうか。ま、好きにするといい」
兄「…すみません」
女勇者「気にするな。どーせ私も、こんな立場惜しくはなかった」
兄「ありがとう…ございます」
戦士「な、何を言ってるんだ!? ここに残るって、どうして!?」
兄「…戦士。俺はな、お前みたく真っ直ぐな男じゃないんだよ。自分が可愛くて、保身に走るような、情けない男なんだ」
戦士「保身だと…!? こんな所に留まることが、何の保身になるっ! 我らにこれ以上失うものなど、あるものか!」
兄「それでも俺は、いつかまた我らの栄光を取り戻せると思っていたいんだよ。…お前の帰ってくる場所は、必要だ」
兄「お前みたいな奴は、この国に必要なんだ」
戦士「わけの分からないことを言うな!!」
女勇者「落ち着け、戦士。声がでかい」
兄「俺はな、戦士。女勇者様に全ての罪を被せて、全てにそ知らぬフリをしようとしているんだ」
兄「そうしてここでしぶとく生きてる事で、得られる事は必ずあるはずだ。逆に、俺も一緒に脱出してしまえば、その機会は永遠に失われる」
戦士「だからって、こんなチャンスも二度と来ないのだぞ!」
兄「分かっている。だが、それでいい。囚人ならば私にお似合いだ。…俺は、父上のことをお前みたく信じることは出来なかった」
戦士「…!」
兄「安心しろ。それでもむざむざ生き恥をさらすつもりはないさ。必ずこちらからも鍵を掴んでみせる」
女勇者「もう、時間がない。行くぞ」
戦士「兄上…!」
兄「俺も誰に似たのか頑固なものでな。聞き分けてくれ」
戦士「………」
戦士「必ず、生きて会おう。約束だ」
兄「ああ…約束だ」
女勇者「…達者でな」
兄「このご恩は忘れません。…弟を、宜しくお願いします」
女勇者「任せておけ。行くぞ」
戦士(兄上…――)
ダッ…
兄(さらばだ…弟よ)
兄(お前は、女勇者様の隣に並び立つに相応しい男だ。俺はいつも…)
兄(――そんなお前を眩しく感じていた)
兄「………さて」
兄「ああ言ってみせた以上…俺も上手くやらなければな」
もうこれ>>359のテキストほぼ回収してるのな
残すはアレやアレか
残すはアレやアレか
地下水路
女勇者「こっちだ」
戦士「…こんな所があったなんて」
女勇者「驚きだろう? この地下水路は迷路のように入り組んでいる。下手に迷い込めば、生死にかかわるほどだ」
女勇者「お前の兄には優雅だなどと言われたが、これでも私は勇者に成り立ての頃なんかはかなりのお転婆でな。この水路を冒険と称して歩き回ったものさ」
戦士「お、女勇者様が、ですか?」
女勇者「私は、お前が憧れているような人物ではないよ。勇者もただの人間だ」
女勇者「さ、行こう。兄はすぐに我らのことを話すだろう。捜索の手が入っても、しばくは見つからないくらいは奥に潜伏せねばな」
戦士「…あ、兄上がすぐに話す、とはどういう意味ですか?」
女勇者「その方があいつとお前のためなのさ。言っていたろう、私に罪を被せて自分はそ知らぬフリをすると」
女勇者「乱心した女勇者が王城の一室を襲撃、幽閉されている大将軍子息の一人を誘拐した…そういう事にするんだ」
戦士「…し、しかし、それでは女勇者様が!」
女勇者「あの部屋を襲撃した時点で、私の罪はどう転んでも変わらんからな。だったら、お前たち兄弟は被害者という事にしておいた方が、後々やりやすいだろう」
女勇者「まったくお前の兄はよくよく頭の回る男だよ」
戦士「………」
女勇者「納得いかない、という顔だな?」
戦士「兄上は…結果として一番利が得られそうな事を躊躇なく選べる。俺には、そういう駆け引きは向きません」
女勇者「ま、そうだろうな。私も兄上も、お前にそういう部分は期待してないよ」
戦士「うっ…」
女勇者「だが、この先その兄はいないぞ。生き残るためには、あらゆる判断が必要になる。よく、覚えておけ」
戦士「…はい」
女勇者「これからの事についてだが…」
戦士「武器商会、ですね?」
女勇者「ああ。お前たちも何か掴んでいたようだな」
戦士「はい。あの日の…謀反が行われた日の早朝、武器商会の長と名乗る女が我らの館に出入りしてるのを、この目で見ています」
女勇者「ふむ…」
女勇者「私もアレコレ探りを入れていたんだが、どうやら親父殿が武器商会を通じて密かに軍備を整えていた事は確かなようなのだ」
戦士(………父上、なぜ)
女勇者「だが、それが反逆の為とはどうしても私には思えなくてな。あいつは、人を裏切るようなやり方が何よりも嫌いな男だった」
女勇者「信じたいんだよ、私も」
戦士「…女勇者様」
女勇者「そろそろポイントか。…うん、あそこの縦孔がそうだな」
女勇者「そこの梯子を登ると、地上の井戸に繋がる。ちょっと顔を出して覗いてみろ」
戦士「は、はい」
ガタガタ… ゴトゴト
「おう、それはこっちに積め!」
「急げよォ、出発まで時間がねえぞ!」
戦士(…! あいつらは!)
女勇者「見えたか?」
戦士「武器商会…!」ギリ
女勇者「おいおい、そのまま突っ込んで行ってしまいそうだな。まあ待て、武器商会の連中は異様に用心深く、厄介だ」
戦士「…はい。しかし、どうするのです? あの様子では…近づく事すらままなりません」
女勇者「奴らの荷馬車のひとつに、底に穴を開けたものを紛れ込ませる。これは私のツテで協力者がいるので恐らく問題なく済む」
戦士(そ、底に穴を開けた荷馬車? そんな物を一体…)
女勇者「商隊の街中を通る間、水路からの縦孔が蓋をされている箇所の上を通る。我々は、穴の開いた荷馬車が頭上を通過する時を見計らって…」
戦士(まさか………)
女勇者「縦孔から飛び上がり、馬車に乗り込む」
役員「社長、荷の積み込み終わやした」
商人「よし。それじゃあ、後の事はあんたに一任する」?
役員「へい。お気をつけて」
商人「ああ。進め!!」
ガタガタガタ… ゴロゴロゴロ
「な、なんだいありゃ。何かの凱旋パレードかい?」
「港町の連中だ…。武器を積んだ馬車をしこたま引き連れて、今度はどこに行くつもりだか」
「ヤバい連中らしいぜ、関わらん方が身のためだ」
御者「ぁあん?」ギロ
「うっ…それ、言わんこっちゃないだろ」
御者「…フン」
御者(と、粋がってみたはいいものも、俺もまだ社内じゃ下っ端も下っ端、社長が恐くてしょうがない今日この頃)
御者(入る会社間違えたかなぁ。とにかく、今はこの荷を粗相なく送り届けにゃあ…)
――ドスン!
御者「うわっ!? なんだ、今の音?」
御者(ままま、まさか、なんか落としたか!?)
御者「…? いや、そんな感じもないな」
強面「おい、そこ! チンタラして隊列を乱すんじゃねぇ!」
御者「は、はぃっ!」ビクゥッ
御者(気のせいか…?)
荷馬車の中
女勇者「………どうやら、上手く行ったみたいだな」
戦士「…か、かなり無茶があった気がするんですが」
女勇者「結果良ければ全て良しだろう? タイミングは際どかったけどな。あのポイントなら商隊もそこまで速度を出していないということは分かっていた」
戦士(際どいどころの話じゃないぞ、成功したのが奇跡みたいなものだ)
女勇者「これくらいで音を上げるなよ。私が現役の頃はもっと無茶をしていた」
戦士(…お、恐るべし勇者一行)
女勇者「さーて、どこに連れていってくれるのか…」
戦士「えっ。分かっていないのですか?」
女勇者「ああ、そうだが?」
戦士(えええええっ!?)
女勇者「ま、この混乱の中で商人自らが動くんだ。それなりの場所に連れていってくれるだろう」
戦士「そ、そんなテキトーな!」
女勇者「他にアテもないのだからしょうがないだろ? あとは運任せさ。果報は寝て待て、せいぜい身体を休めておけよ」
戦士(………お、俺はとんでもない人についてきてしまったのかもしれない)
貴族「…おかしいな。何故、女勇者様が戦士を連れ去る。なんの目的で?」
兄「それは私には分かりかねます」
貴族「………」
貴族「まさか、かつての戦友の子息たる貴様らに、情でも沸いたか? 所詮は、女だからな」
兄「…」
貴族「まあいい。いつまでも知らぬ存ぜぬで通ると思うなよ」スタスタ
兄(…あのような者が、王城で大きな顔をするようになるとは。王国もいよいよ救いがない)
兄(二人は、無事に脱出しただろうか…)
兄「…」
--戦士「父上が真の反逆者であったとは、今も信じていないんだ。きっと何かの間違いだ」
兄(そうであったなら、どれだけ心が安らぐだろう。そう信じきれれば私も…)
兄(いや…あいつの言うことに賭けてみよう。そう決めたのだ。)
兄(考えろ。父上を陥れて一番得をする人物………)
兄(父上を一番大きな障害に感じていたのは、国王陛下であるはずだ。改革派の陛下にとって、父上は邪魔な存在であったはず…)
兄(しかし、どうにも釈然としない。なぜ陛下は狩り場で、我らにその身を守らせたのか)
兄(近衛隊や弓使いの殺意は本物だった。あれは父上の反逆を確実なものにするために張り巡らせた策略だったのか?)
兄(現に、陛下は襲撃を予期していた。…とは言えあのやり方は危険すぎる。しかも、その警護をなぜ…)
--戦士「狩り場でお供をした陛下からも」
兄(お前は、陛下が信用に値すると言っていたっけな…)
兄(………まさか)
兄(まさか、陛下は我らを守るために…? 反逆の罪から我らを救うために、わざとあのタイミングで呼び寄せたのか…!?)
兄(それが事実だとすれば、あの日陛下の暗殺を目論んでいた人物は)
――近衛長「女神よ、我らに加護をっ!!」
兄(………そうだ。仮に、父上が軍を率いていたとすれば…それを、十字聖騎士団ごときが撃破できるはずがない!)
兄「なぜ、もっと早く気付かなかったんだ…!」
ガタ…
「…! しかし!」
「良いと言っているのです。扉を開けなさい」
「はっ…」
兄(…今度は誰だ?)
ギィ…
兄「! じょ…」
兄「女王陛下!?」
女王「久しぶりだのう。最後に会ったのは宮殿での茶会であったか?」
女王「--少し、そなたと話がしたい」
これ、本来なら勇者が商人や盗賊や戦士や格闘家達を仲間にしていって一人一人四天王達を倒して魔王の元にいくやつの逆を魔王が先にやってんだな。
商人「荷降ろしはまだ済まないのか」
強面「へ、へえ。ほぼ済んだんですが…」
商人「なんだ?」
御者「すいません! すいません!!」
三下「ボケが、謝って済むかこのヌケサク!!」
商人「何事だ」
三下「しゃ、社長! い、いえこの阿呆が。とんでもねぇ失態をやらかしたもんでして!」
商人「…簡潔に話せ」
三下「は、はい! 荷馬車をその、ひとつ間違えて引いてきちまって…穴の空いたボロの、別の荷が入った物でした…っ!」
商人「なんだと? …これか」
御者「お、お許しをぉ…!」
商人(なんだい、これは? 見た目は我が社の荷馬車その物だが…どこか奇妙だ)
商人「出発の際の二重確認は?」
三下「はっ、そ、その時はしっかりやった筈なんですが…」
商人「………イヤな臭いがするね。頭の良い女の臭いだ」
商人「何者かが潜り込んだやもしれん。運び込んだ商品の警戒を強めろ」
強面「へ、へい! …向こうには伝えますかい?」
商人「交渉の前にこちらが下に見られる情報を伝えてどうするんだい。商品さえ無事なら後はどうなろうと知ったことではない」
強面「へい!」
タタタタ…
女勇者「…ふう、行ったか。流石に切れ者という感じだな、あの女社長」コソ…
戦士「間違いありません、あの女です」
女勇者「やはりな。ま、自分達の荷以外には興味が無いようで何よりだ。ラッキーだったよ」
戦士「…本当ですね」
女勇者「さて、と。ここはどこだ?」
戦士「随分と長い距離を移動してきましたが…気温が低いですね。かなり揺れましたし、山岳地帯の方へ移動したんでしょうか」
女勇者「そんな田舎に武器商会が何の用で…ん?」
戦士「どうかしましたか?」
女勇者「何か、歌が聞こえないか?」
戦士「確かに…これは…」
戦士「………聖歌?」
女勇者「おい、あそこ…あの建物、聖堂か!?」
戦士「こ、この荘厳な大聖堂、間違いありません!」
戦士「ここは、女神教会の総本山…教皇領です!!」
女勇者「武器商会が、教皇領に!? 女神教会は確か…陛下の主張に同調して、軍縮を訴えていたはず…」
戦士「! 誰か来ますっ!」
ガシャガシャガシャ…
十字聖騎士Ⅰ「異常なしか。ん、ここは…武器商会の連中の荷馬車」
十字聖騎士Ⅱ「…まったく無駄に豪奢な荷馬車でありますな。たかだか積み荷を運ぶ物をなぜこれだけ飾り立てる必要があるのか」
十字聖騎士Ⅰ「虚勢さ。自分達にはこれだけ力があるという事を示して、我らに舐められまいとしているのだ」
十字聖騎士Ⅰ「まあ…この先も顔を出すことは増えるだろう。変に毛嫌いせず、愛想良くしておいた方が我々のためかもしれぬな」
ガシャガシャガシャ…
戦士「…どういう事だ!? 十字聖騎士が武器商会を黙認しているなんて」
?
女勇者「………」
女勇者「藪をつついたら蛇が出た、とはこのことだな」
女勇者(女神教会め…ここまで政に深く関わっているとはな)
?
女勇者「潜入出来る箇所を探そう。商人の取り引き内容を確認するぞ」
戦士「は、はい」
?
?
「こちらでお待ちください」
商人「…ふん」
商人(呼びつけておいて、勿体ぶった態度だね。女神に仕える方々はお忙しくあらせられるってかい?)
商人(ここまで来て下々の者と少しでも上であろうって言うのか? 面倒なことだ。ま、あたしはやりたい様にするだけだがね)
商人「冷えきった外から連れた客人に、暖かい茶の一杯も出ないとは、女神様は作法には疎いのかい?」
「…し、失礼しました。すぐお持ちします」
強面(さ、流石社長。天下の教皇様の懐だってのに、全く気圧されねぇ…)
?
戦士「…どういう事だ!? 十字聖騎士が武器商会を黙認しているなんて」
?
女勇者「………」
女勇者「藪をつついたら蛇が出た、とはこのことだな」
女勇者(女神教会め…ここまで政に深く関わっているとはな)
?
女勇者「潜入出来る箇所を探そう。商人の取り引き内容を確認するぞ」
戦士「は、はい」
「こちらでお待ちください」
商人「…ふん」
商人(呼びつけておいて、勿体ぶった態度だね。女神に仕える方々はお忙しくあらせられるってかい?)
商人(ここまで来て下々の者と少しでも上であろうって言うのか? 面倒なことだ。ま、あたしはやりたい様にするだけだがね)
商人「冷えきった外から連れた客人に、暖かい茶の一杯も出ないとは、女神様は作法には疎いのかい?」
「…し、失礼しました。すぐお持ちします」
強面(さ、流石社長。天下の教皇様の懐だってのに、全く気圧されねぇ…)
ヒュゥウウ…
女勇者「よっ。ほっと」ヒョイヒョイ
戦士「ぜえ、はあ…」
女勇者「どうした、随分息が荒いな」
戦士(こ、こんな断崖絶壁を岩から岩へと移動すれば、息も上がるぞ普通)
女勇者「おっ、あそこから大聖堂に飛び移れるぞ」
戦士「あ、あそこを? それは飛び移るというよりは落ちると言うのでは…」
女勇者「それっ」ピョーン
戦士「!」
女勇者「おっとと」スタッ
女勇者「おーい、お前も早く来い!」
戦士「ハ…ハハ…」
戦士(兄上、不肖の弟、これにて最後を迎えるかもしれません)
女勇者「はーやーくー」
戦士「…ええい、ままよ!」バッ
女勇者「…おっ、どうやら当たりを引いたな。見ろ、商人だ。こんなバカ広い聖堂を貸し切って密談とは、豪勢なものだな」
戦士「…ひゅー…ひゅー」
女勇者「天窓から侵入するぞ。この造りなら、距離が離れていても声は響いてくるだろう」
戦士「…あ、あい…」
?
?
大僧正「おやおや、お待たせてしまいましたかな。これは失礼」
商人「…我ら商いに生きる者にとって、時間は生命だ。女神様に仕え、心穏やかに日々を享受している貴殿らとは時の流れ方が違う」
大僧正「以後、肝に命じておきましょう」
商人(…タヌキめ、こちらの態度は面白くないだろうに、おくびにも出さんとは。腹の探り合いは無駄か)
商人「率直に聞こう。何故、クーデターを潰した?」
商人「貴殿と私、そして大将軍の同意の元のあの合戦であったのではなかったのか? 聞かされていた話とはまた随分と違った結末だ」
商人「これは教会の裏切りと見なされても文句は言えぬぞ」
?
女勇者「…おっ、どうやら当たりを引いたな。見ろ、商人だ。こんなバカ広い聖堂を貸し切って密談とは、豪勢なものだな」
戦士「…ひゅー…ひゅー」
女勇者「天窓から侵入するぞ。この造りなら、距離が離れていても声は響いてくるだろう」
戦士「…あ、あい…」
大僧正「おやおや、お待たせてしまいましたかな。これは失礼」
商人「…我ら商いに生きる者にとって、時間は生命だ。女神様に仕え、心穏やかに日々を享受している貴殿らとは時の流れ方が違う」
大僧正「以後、肝に命じておきましょう」
商人(…タヌキめ、こちらの態度は面白くないだろうに、おくびにも出さんとは。腹の探り合いは無駄か)
商人「率直に聞こう。何故、クーデターを潰した?」
商人「貴殿と私、そして大将軍の同意の元のあの合戦であったのではなかったのか? 聞かされていた話とはまた随分と違った結末だ」
商人「これは教会の裏切りと見なされても文句は言えぬぞ」
女勇者(どういうことだ? 大将軍が取り押さえられたのは、武器商会の本意ではなかったのか?)
戦士(…武器紹介は、本気でクーデターを完遂させるつもりでいた…?)
大僧正「我々が裏切った等と、とんでもない事です。事実はその逆、我々は裏切り者を糾弾したに過ぎません」
商人「…大将軍が、裏切ったとでも?」
大僧正「ええ、その通りです」
大僧正「当初、我らの狙いは現国王を廃し、王兄様のご子息を王座に据えることで、強い王国の復活を図ることでした」
大僧正「そうすることで、軍備の拡大は進み、武器商会の方々も利益を得て、我々は魔王軍から女神の聖なる地であるこの教皇領を守ることが出来る」
?大僧正「ですが、事を起こす直前になって状況は変わったのです。………お入りください」
ギィ…
副官「…」
商人(! この男、大将軍の)
大僧正「彼の口から直接聞く方がよいでしょう。さ、お話になってください」
副官「…はい。大将軍様は、陛下を倒したのちに王室を廃し、自らが政権を握るつもりでおられました」
?商人「!?」
副官「王兄様の息子を王位に据えても、王兄様ご本人のような求心力はもう望めないと…時折もらしておりました」
戦士(な、何を言っている…あの男はっ…!)
戦士(父上が自ら政治の主導を握ろうなどということが…そんなことを言うわけがあるか!)
戦士(なぜ、こんな馬鹿げたことが、父上の腹心であったあの男の口から並べ立てられる…!?)
女勇者「…」
大僧正「聞いての通りです」
大僧正「彼が我々に知らせてくれなければ、大将軍は暴走をし、王国を大混乱に陥れるところでした。すんでのところで、我々は道を外さずに済んだのですよ」
商人「………」
商人「下らぬ芝居はそこまでにせよ」
大僧正「なんですって?」
商人「そのような詭弁で、この私を言いくるめられると思うてか。すべては教会が実権を握るための策略であろう」
商人「今回の一件で王国軍部はほぼ無力化された。その為に駆り出されているのが教会お抱えの十字聖騎士団だ。王家を助けた、という既成事実を盾に今や軍部もその手に握っているというわけだ」
商人「そうして我らを呼びつけ、今度は教会自らが、主導者を失った軍部を抑えつけるだけの力を手にしようというわけだな」
大僧正「…」
商人「大将軍が、そこまで愚かな男であったとは思わぬ。王室を廃して維持できる王国などありはしない」
商人「あの男はそれだけの思慮はある男だったはずだ…が、部下に裏切られるとはな。憐れだ」
副官「………」
戦士(何故だ。何故)
戦士(――副官が父上をそしり、あの女が父上の肩を持っている)
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