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元スレ国王「さあ勇者よ!いざ、旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」
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乙乙
だけど新たな勇者ご一行様は潰走どころか壊滅寸前だな...
だけど新たな勇者ご一行様は潰走どころか壊滅寸前だな...
>>502
勇者一行でもまったくバラバラに攻撃しにいってるから、各個撃破の的になってるから。
勇者一行でもまったくバラバラに攻撃しにいってるから、各個撃破の的になってるから。
商人「勇者、一行だとっ…!?」
僧侶「わ、私たちが!?」
武闘家「…グガー…」
盗賊「六人…って、俺入ってんの? マジ?」
魔法使い「くっくっくっ」
戦士「………」
『魔王との闘いは、近いうちに起こるでしょう』
『避けることは出来ません』
『魔王は、絶大な力を示して現れます』
戦士「待て」
戦士「待ってくれ」
戦士「魔王との闘いが避けられない? では、教会の思惑通りになってしまうと言うのか!?」
『…残念ながら』
戦士「馬鹿な! 分かっているなら、まずはそれを止めるべきだ!!」
戦士「そんなことがまかり通れば、王国自体が脅かされてしまうぞ!」
戦士「ここにいる全員が力を合わせられるなら、まずそれを止められるはずだ!! そうだろう!?」
僧侶「…私は」
僧侶「私は、止めて見せるわ、教皇様を! そのつもりよ!」
魔法使い「…」
武闘家「…グォー…」
盗賊「………王国が、王国がってよ」
盗賊「あんたの頭ん中は王国でいっぱいだな」
盗賊「でもよ、王国の外にも人間はいるんだぜ」
戦士「!!」
盗賊「悪いけどよ、王国に肩を貸す気には俺はなれねーよ」
戦士「き、貴様…!」
盗賊「俺たちは散々王国に苦しめられてきたんだ。そりゃ、当然だろ」
僧侶「しかし、このままでは、魔王軍との全面戦争になってしまうんですよ!?」
盗賊「俺は俺のやりたいようにやる。最初からそういう奴だぜ、僧侶ちゃん。誰の指図も受けねー」
戦士「このっ…!」
商人「くっくっくっ。まあそう言う事だね」
商人「教会との取引を受けるんだ。上手く行って貰わなきゃ困る」
戦士「なっ!? 教会との取引を、受ける!?」
商人「教会は気に入らないが、国王の言いなりになるつもりは無いのさ」
商人「友愛に満ちた世の中で、武器商会が食っていけると思うかい?」
戦士「ば、馬鹿な…!」
戦士「これが、こんなものが…」
戦士「勇者一行だと言うのかっ!?」
魔法使い「しかしそうは言いますが、あなたも大概″王国″の事ばかりを気にかけているように感じられますがねぇ」
戦士「…っ!」
魔法使い「勇者一行とは言え、人ですからねぇ。ま、僕は人間じゃありませんが」
魔法使い「お互い、自分のことしか考えられないのでは?」
戦士「………」
――女勇者「勇者も、所詮はただの人間さ」
戦士「…そうだ」
戦士「勇者は!? 何処にいるんだ!」
戦士「今の今まで、女勇者様が一緒にいたんだ! あのひとなら!」
『彼女は、ひとつ前の勇者です』
『かつて女神の加護をその身に受けて魔王と闘いましたが、今はもう、その役目を終えています』
『新たな魔王に対抗するために、新たな勇者が選ばれます』
僧侶「それは、誰ですか!?」
僧侶「その方が居れば…勇者一行はまとめられるはずです!」
僧侶「垣根を飛び越えて、人をまとめるのが勇者であるはずです!」
僧侶「かつて、女勇者様がそうであったように!!」
『勇者になるべき者は、まだその力を目覚めさせる時ではないのです』
『しかるべき時にならねば、女神の加護を受けられません』
商人「…ハッ、女神とは言え下らぬ形式を守るのだな」
商人「乙女じゃあるまいに、ではまた次の機会にと先伸ばしをされても不愉快だ!」
商人「教えろ! その者の名を!!」
『それは、私にも分かりません』
『加護を受けるその時まで、その者は勇者ではなく、ただひとりの人間なのです』
魔法使い「くっくっくっ」
魔法使い「では、啓示を与える瞬間になって初めて、女神である貴女もその者が勇者であると分かるわけですね?」
盗賊「誰が勇者だか本当に分からねーだけじゃねーの?」
盗賊「その理屈じゃ、そいつが勇者になる前におっ死んじまったらどーすんのよ?」
『全ては定められたこと』
『勇者となりし者が啓示を受けるのも』
『勇者一行であるあなたたちが、ここに集められたのも』
商人「運命、だとでも言うのか。ヘドが出るね」
武闘家「…ガゴー…」
僧侶「…」
魔法使い「こんなにバラバラな人々が、勇者一行であるはずがない、という顔ですね?」
僧侶「…ええ。でも、勇者様がいないからに、違いないわ」
魔法使い「くっくっ…どうでしょうかねぇ」
盗賊「そもそも、勇者も居ねぇのに、勇者一行って言われてもよ。信憑性ないよな」
『あなたたちは、勇者と行動を共にすることはありません』
戦士「な、なんだと…!?」
『魔王は、勇者一行の結成を待たずして攻めてきます』
『勇者が、神託を受けるのとほぼ、同時にです』
『…あなたたちはそれぞれ別々に、魔王と闘うことを強いられます』
『それはとても過酷な闘いです。それぞれが命を落とすほどの』
『ですが、少しずつ少しずつ、魔王を追い詰めることが出来るでしょう』
『本当に僅かながら…我々は前進できるでしょう』
『ですが、この中の一人でも闘うことをしなければ、それは水泡と帰します』
『どんなに恐ろしくとも、踏みとどまり、闘ってください』
『…きっと人類は勝利を得られるはずです』
パァンッ!
商人「下らん御託は聞き飽きたっ!」
商人「結論から言おう。あたしは貴様のような正体のわからないモノの言いなりになるつもりはない!!」
僧侶「な、何と言うことを…」
『…全ては、必然』
商人「黙れっ!」パァンッパァンッ!
盗賊(やっ、ヤバくねーかあのオバサン)
盗賊(ま、無茶苦茶言うなよ、とは思うけどよ。急に勇者一行とか言われたってなー…)
僧侶「私は、一体どうすれば…」
戦士「………」
戦士「どうもこうもあるまい。例え運命だと言われても…諦めきれぬものが、俺にはあるぞ」
戦士「最後の最後まで、足掻き続けてやる」
僧侶「…戦士さん」
魔法使い「くっくっくっ」
魔法使い「だから言ったでしょう。どうせ辿る道は変わらないと」
商人「そう言うことだ!」
商人「お前の思うがまま、あたしを動かせると思うな!」
盗賊「もういーだろ、解散で…」
『…』
『優しさを隠した兵器、商人』
『快楽の真実を探求せし者、武闘家』
『風を束ねし自由の翼、盗賊』
『誇り高く鍛えられしつるぎ、戦士』
『慈愛と救済の天秤、僧侶』
『運命に抗いし魔の血、魔法使い』
『あなたたちに、幸あらんことを』
フワァア…
僧侶「…テレパスが消えた」
戦士「去った、のか」
武闘家「…スピー…ズズズ…」
盗賊(い、今更不安になってきたぜ。あんな事言って…バチ当たんねーかな!?)
商人「ふん。時間を無駄にした」
魔法使い「ああ、待って下さいよ商人さん」
魔法使い「打ち合わせ通り、次に港町にお邪魔するのは、また月が満ちる頃になりますので…よろしくお願いします」
商人「…なに食わぬ顔で、あたしと取引を続けるつもりかい」
魔法使い「魔族だからと言って私の目的に嘘はありませんし、貴女にとってもアレの完成の手助けになるのであれば、言うことはないでしょう?」
商人「…食えない男だ。まあ、いい。好きにしな」
魔法使い「ふふ、今後ともご贔屓に…」
戦士「待て!!」ザッ
商人「………なんだい、若造」
戦士「教会との取引を、させるわけにはいかない…!!」
商人「ふぅん? だったらどうすると言うんだ? あたしを殺すか?」
戦士「………」
商人「面白い…」カチャ
盗賊「あいつ…本気でやる気かよ」
僧侶「ダメよ!! 勇者一行同士が戦うなんて!!」
武闘家「…なんじゃあ、さっきからうるさいのお」
魔法使い「おや、起きたんですか、武闘家さん」
武闘家「…何処じゃ、ここ?」
魔法使い「教皇領の地下ですよ。失礼ですが、起きたら素直についてきてくれないと思ったので、勝手に転移させてもらいました」
武闘家「…ぁあ? 転移? というか誰じゃお前?」
魔法使い「覚えてくださいよ、いい加減…」
武闘家「うーむ、あまり寝た気がせんのお。妙な念仏を聞かされ続けた気がするが…」
武闘家「にしても、何をしとるんじゃ? おぬしら。そんなに殺気をバラまいて」
武闘家「--楽しそうだのぉ。ワシも混ぜろ」パキ…
ズズ…
戦士「!!」
盗賊(な、なんだこの爺さん!? 滅茶苦茶な闘気だ…! 息が、つまる程の!!)
武闘家「ぬふふふ」
魔法使い(…さて、どう転がりますかね、これは)
戦士「…」
商人(…)ポイッ
カッ!
僧侶「きゃっ!」
盗賊(閃光弾っ!)
戦士「むっ…! 待て、商人ッ!」
魔法使い「くっくっ、相変わらず引く時はあっという間ですね」
戦士「くそ、逃がすか!!」
武闘家「おい」トッ
戦士(! いつの間に前に――)
武闘家「付き合えよッ!」ゴッ
戦士「ッ!?」ドキャッ
ドシーン!!
僧侶「戦士さんっ!」
魔法使い「あれっ、ちょっと、武闘家さん! それ死んじゃいますって!」
武闘家「いやぁ? この位で死ぬタマじゃあるまいて」
武闘家「そうじゃろ?」
戦士「…ぺっ」ムク…
武闘家「ほらな」ニヤ
戦士「………」ギロ
魔法使い「…ほう…!」
僧侶「も…もう、止めてっ!」
戦士「…」スラ…
武闘家「そうじゃ。ワシを楽しませてみい」
「いやぁ、戦士が受けか、そういうのも興味深い!」
女勇者「出来ればもっとこう、絡み合って欲しいものだけどな!」ザッ
戦士(!)
僧侶「女勇者さんっ!」
武闘家「…勇者?」ピク
女勇者「私としては暫くその濃密なやり取りを見ていたい気分なのだが、そうもいくまい!」
女勇者「地上へ戻れ、戦士。お前にはまだやる事があるだろう」
女勇者「あんたの相手は私が引き受けよう、最強の使い手、武闘家殿!」
戦士「…!」
武闘家「女剣士か。勇者ってのは本当なのかの?」
女勇者「いかにも。とは言っても、十五年前の話だがな! しかし剣の技はそこのイノシシ野郎にも劣らぬぞ!」
女勇者「それにあの男の姉弟子としては、あんたには挑戦しておきたいしな!」
武闘家「なんじゃ? 誰の弟子じゃと?」
女勇者「剣豪。…私のパーティーにいた、後の大将軍になる男さ」
武闘家「…ほう! 思い出したぞ! 奴は強かったな! あの弟子か!」
戦士「女勇者様、何を…」
女勇者「そういうわけだ、戦士。決闘の権利は私に譲れ!」
盗賊「そーゆーことらしーぜ」ザ…
僧侶「盗賊さん!? いつの間に外に! …背負ってるのは副官さんですか?」
盗賊(さっきの閃光弾に紛れてしれっと逃げ出すはずがよー…この女に掴まっちまうとはな)
女勇者「モテる男はつらいな?」
盗賊「…よく言うぜ、ホント」
戦士(………女勇者様)
戦士(死ぬつもりですか)
女勇者『…戦士』
女勇者『この武闘家という男、話して分かる相手ではない。二人でかかれば勝てるかもしれんが、二人とも無事では済まん』
女勇者『行け。…兄に生きて会うんだろ』
戦士(…出来ません)
女勇者『馬鹿者。王国を守るのだろう』
女勇者『それにさっき言ったこと、嘘ではない』
女勇者『私は、死に場所を探していたのかもしれん』
女勇者『この男に挑むことで…自分が勇者であったことを、確認したいのだ』
女勇者『行け』
戦士「なぜ…」
盗賊「さっ、行くぜ僧侶ちゃん、イノシシ野郎!」
僧侶「…は、はい」
盗賊「ほら、何してんだよ!」
戦士「………」
盗賊「…しっかりしろよっ、この野郎!!」グィッ
盗賊「真実を知ったからこそ出来ることをするんだろ…!? 人間らしく生きる道を探すんだろ!?」
戦士「…お前」
盗賊「あんまり失望させんなよ、この馬鹿イノシシ…!!」
戦士(………)
戦士「なぜ貴様にそこまで言われねばならん」スクッ
僧侶「戦士さん…!」
女勇者「…」
戦士「女勇者様。私の代わりに戦うのですから…絶対に、負けないで下さい」
女勇者「誰に向かって口利いてる、馬鹿者」
女勇者「こちとら天下の勇者様だぞ」
戦士「…すみません」ダッ
女勇者『…達者でな』
武闘家「なんじゃあ? 結局二人で来んのかあ?」
武闘家「つまらん…つまらんなぁ」
武闘家「ワシとの実力差が分からぬほどでは、ないじゃろ、お前」
女勇者「まあ、そう言うな。やってみたいんだよ、私ひとりで」
武闘家「嫌じゃ」ドッ
ギュンッ!
女勇者「なっ――!?」
女勇者(速すぎる…戦士!!)
戦士「…っ!?」ゾクッ
武闘家「お前も相手せい」グワッ…
魔法使い「それ!」
ポンッ
地上
武闘家「むっ?」
女勇者「なっ… 」
武闘家「あれ? あいつ何処行った?」
武闘家「と言うか今度は何処じゃ?」
女勇者(転移か)
女勇者「…お前の仕業だな」
魔法使い「ええ、まあ」
武闘家「…」
魔法使い「あんな所でドンパチされた日には、研究が全ておじゃんになってしまいますからねぇ」
女勇者(研究、か…)
魔法使い「それだけじゃありませんよ。貴女には、個人的に借りがありましたから」
魔法使い「返しておきますよ。死んでしまう前にね」
女勇者「気が利いてるじゃないか、魔族のくせに」
魔法使い「それほどでも…!?」ヒュンッ
武闘家「喝!!」ゴッ
グシャッ!!
魔法使い「…ふう、危ないところでした」
武闘家「ふーむ。空間移動と言うやつか、厄介だのお」
魔法使い「ちょっと、待って下さいよ。僕、そういうのじゃありませんから」
武闘家「強者に武も魔もありゃせん。ちょっと相手せい」
武闘家「ワシの楽しみを邪魔したのじゃ。それなりの――」
女勇者「」ギュバッ!
ズバァンッ!!!
武闘家「っと…」
武闘家(空間を、断裂したのか…!)
女勇者「なめられたものだ…私も…」
女勇者「そこまで落ちぶれたつもりはないぞ…」ォオ…
武闘家(剣豪並の剣筋ではないか…うむ?)ズキ
武闘家「ワシに、手傷を負わせるとは…」ヌル…
武闘家「所詮は女と、少し見くびっておったか」
魔法使い『それでは、さようなら。また貴方の頭が冷えた頃に伺いますよ、武闘家さん』
魔法使い『そのひとに、勝てたらですが。それから私は魔法使いです。今度こそ、覚えて下さいね…』
武闘家「あっ、コラ待たんか!」
女勇者「シッ!!」ヒュンッ
スパァンッ!
武闘家「いつつ。やりおるな」
武闘家「………おいおい、どんどん闘気が練り上がっていくの。どこにそんな牙を隠し持っておった?」
女勇者「出し惜しみせず、全力で来い」
女勇者「でなければ」
女勇者「今度は死ぬぞ」ゴォオォオ…
武闘家「…ククッ。死ぬ、か!」
武闘家「面白い!! ワシに味わわせてみよ!!」
武闘家「死を、なッ!!」ドンッ
バギュッ!!
女勇者(――本気の突きだ。とても目で追えない)
女勇者(そうか。本気を出してくれるのだな)
女勇者(私は、それに値するのだな)
女勇者(最後の最後で私は…)
女勇者(ようやく………何者なのか、知ることが出来る)
「おい、聞いたか! 天使の塔に潜伏していたらしい!」
「なんだってそんなところに! それで、捕らえられたのか?」
「いや、まだだ! 北門の方に逃げたとのことだ! 行くぞ!」
ガシャガシャガシャ…
盗賊「ちぃ…流石に出入り口は固められてるな」
盗賊「僧侶ちゃんが嘘情報を流してくれてるとは言え、あれを突破するにはちょっとやそっとじゃ…」
戦士「…俺が突破口を開く。お前は後からついてこい」
盗賊「あのなぁ…あんなもん力づくで切り抜けた日にゃ、追っ手がゴマンとかかるだろーが!」
盗賊「逆だ逆! おら、コイツはテメーががおぶされ!」
副官「…」グタ…
戦士「!? どうするのだ?」
盗賊「俺が衛兵を引き付けて、聖堂の方へ逃げる。警備の目が離れた隙に、テメーがそいつを背負って脱出する」
盗賊「門を出て山に入れば、ちょっとやそっとじゃ見つからねぇ」
戦士「…なんのつもりだ」
盗賊「勘違いすんじゃねーぜ。言っとくが、俺は王国なんて大っ嫌いだ、クソ食らえってなもんだ」
盗賊「でもな。テメーには賭けてやるよ。馬鹿だが、真っ直ぐ走る、テメーにな」
戦士「…」
盗賊「ああ、こんなテンプレ、まさか自分で口にする日が来るなんてよぉ」
戦士「………俺がひっ捕らえるまで、他の誰にも捕まるな」
盗賊「うへっ! うすら寒いこと口走んじゃねーや! つうかこの俺が捕まるわけねーだろ! ましてやお前のよーな馬鹿に!」
戦士「お前も大概だろう」
盗賊「うるっせ! いいか、よく聞けよ!」
盗賊「--王国が腑抜けた醜態晒そうもんなら、俺が全部かっさらいに来てやるからな…!」
盗賊「よく、肝に命じておきやがれ!」
戦士「…心得た」
「おい、今こっちの茂みで声が聞こえたぞ」
盗賊「うわっ、やべ! 予定と違う!」
戦士(コイツ馬鹿だな)
盗賊「うおりゃーっ!」ガサッ
「のわっ!? 何かでた!」
盗賊「そい、せりゃ!」バキ、ドカッ
盗賊「捕まえてみやがれ、トロマどもっ!!」ダッ
「く、くせ者だー! 大聖堂の方へ逃げたぞー!!」
戦士「…ほんっとに馬鹿だな」
戦士(――…行かねば)
山道
戦士「ぜえ、はあ…」
戦士(人をおぶさって、山の中を駆けると言うのは、なかなかに…)
戦士(いや、足を止めるわけにはいかん。みなが…)
――僧侶「しばしのお別れ、ね。戦士さん。私は私の道で、動いてみるわ。だから、戦士さんも…」
――盗賊「テメーには賭けてやるよ。馬鹿だが、真っ直ぐ走る、テメーにな」
戦士(命を、賭して…)
――女勇者『達者でな』
戦士(女勇者、様)
戦士(俺は…俺も、勇者になりたいと思っていた)
戦士(憧れていた。でも俺みたいな前を向いていることだけが取り柄のような人間は、どうやら勇者には、なれないようだ)
戦士(俺が勇者一行の一員だと、あの女神は言った…だが、こんなにも無力な男が、魔王に何ができるだろう)
――国王「そら、来たぞ。しっかり余を守れよ」
戦士(生かしてもらってばかりだ)
――大将軍「あばよ、クソガキども」
戦士(父上)
――兄「弟のこと、宜しくお願いします」
戦士(兄上)
戦士(俺は…どうやら、弱い)
山道
戦士「ぜえ、はあ…」
戦士(人をおぶさって、山の中を駆けると言うのは、なかなかに…)
戦士(いや、足を止めるわけにはいかん。みなが…)
――僧侶「しばしのお別れ、ね。戦士さん。私は私の道で、動いてみるわ。だから、戦士さんも…」
――盗賊「テメーには賭けてやるよ。馬鹿だが、真っ直ぐ走る、テメーにな」
戦士(命を、賭して…)
――女勇者『達者でな』
戦士(女勇者、様)
戦士(俺は…俺も、勇者になりたいと思っていた)
戦士(憧れていた。でも俺みたいな前を向いていることだけが取り柄のような人間は、どうやら勇者には、なれないようだ)
戦士(俺が勇者一行の一員だと、あの女神は言った…だが、こんなにも無力な男が、魔王に何ができるだろう)
――国王「そら、来たぞ。しっかり余を守れよ」
戦士(生かしてもらってばかりだ)
――大将軍「あばよ、クソガキども」
戦士(父上)
――兄「弟のこと、宜しくお願いします」
戦士(兄上)
戦士(俺は…どうやら、弱い)
戦士(兄上。ほんとは、俺は)
戦士(本当の俺は…)
戦士「ぜっ…はっ…」
戦士(いかん…意識が、朦朧と、してきた)
戦士(どれだけ走ったのか、分からん…いったいここは、どこだ…)
戦士「うおっ…」ヨロ…
ドシャ…
戦士(くそ…からだが…うごかん)
ザッ
戦士(…なんだ…? だれ、だ…?)
戦士(みたことのない…)
戦士(…)
忍「戦士殿…間違いないな。背負っているのは………副官殿、か!」
忍「間違いない。運べ」
「「はっ」」
ザッザッザッ
忍「………どうやら、やり遂げましたな。戦士殿」
忍「兄上が、首を長くして、お待ちですよ」
チラ… チラ…
女勇者(………雪か)
女勇者(あの日も、こんな雪が降っていたかな………)
武闘家「…ここまで、か」
武闘家「まあ良くやったほうじゃ。誉めてやる」
武闘家「或いは男じゃったら…などと言うのは…」
武闘家「研鑽を積んだおぬしの剣技に失礼、というものじゃな」
武闘家(………しかし、なんじゃ? なんかまとわりつくような視線を感じるのお。とっとと今夜の寝床を探すか)
武闘家「どこにおるのか、ワシに死をもたらす者よ…」トーンッ
ヒュゥウウ…
女勇者(………終わりか)
女勇者(死ぬのか。ようやく)
くノ一「女勇者様!」ザッ
女勇者(…ああ、女王陛下の…)
女勇者(…荷馬車の件、世話になった…)
くノ一「待っていて下さい、今手当てを…」
女勇者(…いいよ、この傷では助からん…)ソ…
くノ一「………女勇者様」
女勇者(…もはや…念話を使う気力も無いとは…)
くノ一「…戦士殿は、我らの仲間が救出しました」
女勇者(…生き延びたか…。…そうでなくては…兄のやつに会わせる顔もないしな…)
女勇者(………そして、お前にもな)
女勇者(クソジジィ)
大将軍『…おめぇ、最後の踏み込みが甘ぇのよ。もうちょっと、こう、ガッと、よう!』
女勇者(…うるさいよ…筋肉ダルマ…)
女勇者(………また、暑苦しいのと一緒とは…)
女勇者(………死ぬっていうのに………賑やかなことだ………)
くノ一「女勇者様…! 女勇者様っ…!!」
『魔王との闘いは、近いうちに起こるでしょう』
『避けることは出来ません』
戦士「…うるさい」
『魔王は、絶大な力を示して現れます』
『魔王は、勇者一行の結成を待たずして攻めてきます』
『勇者が、神託を受けるのとほぼ、同時にです』
戦士「黙れ」
『…あなたたちはそれぞれ別々に、魔王と闘うことを強いられます』
『それはとても過酷な闘いです。それぞれが命を落とすほどの』
『ですが、少しずつ少しずつ、魔王を追い詰めることが出来るでしょう』
『本当に僅かながら…我々は前進できるでしょう』
戦士「黙れ!」
『ですが、この中の一人でも闘うことをしなければ、全ては水泡と帰します』
『どんなに恐ろしくとも、踏みとどまり、闘ってください』
『…きっと人類は勝利を得られるはずです』
戦士「黙れっ!!」
チュンチュン バサバサ…
戦士「…はっ」
戦士「夢…か。俺は…」
戦士「なんで、ベッドなんかで寝ているんだ。俺は…確か、教皇領を抜け出して…」
兄「山を走り通して越え、あと少しで城下町というところで、力尽きた」
戦士「そうだ、副官殿を背負っていて…」
戦士「…んっ!? あっ、兄、上?」
兄「なんだよ。幽霊でも見たような顔して」
戦士「ほ…本物か…?」
兄「こんなにイイ男が二人と居るか」
戦士「あ…」
戦士「兄上………っ!!」
兄「…何も泣くことはないだろう?」
戦士「な、泣いてないぞ…! 見間違いだろう。兄上こそ…!」
兄「ふぐっ…馬鹿言うな…俺が泣くわけないだろう…」
戦士「…素直じゃないな…相変わらず…」
兄「………」
兄「よく、生きて戻った」
兄「戦士」
戦士「…約束、したからな」
兄「…そうか」
戦士「でも…俺のために、女勇者様が」
兄「…話は、聞いた」
戦士「では、確認した者が?」
兄「…ああ。遺体は東方の故郷に戻って、埋葬された。つい、二、三日前の話だ」
戦士「――そう、か」
戦士(女勇者様)
―― 女勇者「己が一番に何を成すべきか…それは忘れるな」
戦士(………)
戦士(いま、立ち止まっては駄目だ)
戦士(進まなければ、全て意味が無くなってしまう)
戦士(…決めたんだ)
戦士(最後まで足掻くと)
戦士「俺は、どれくらい寝ていたんだ」
兄「お前が運ばれてきたのは、ちょうど新月の夜だったか。今夜は綺麗な三日月が出る頃さ」
戦士「そんなに寝ていたのか…」
兄「そのまま、目覚めないんじゃないかと思ったぞ」
戦士「兄上。あまり、ゆっくりもしていられないんだ」
兄「…ああ。こちらでもそれなりに突き止めていることはある」
兄「じきに、女王陛下がいらっしゃる。優秀な部下を連れてな」
女王「待たせたのう」
忍「…」
くノ一「…」
戦士(…この者たちは)
女王「無事で何よりじゃ。暫くは身体を休めよ…と、言ってやりたいところなんじゃがな」
戦士「分かっています。俺が知り得たことを…早いうちに、伝えておかないと」
女王「うむ。宜しく頼む」
――
――――
――――――
女王「ふむ…。やはり、建国の儀式でひと騒動企んでおったか」
兄「では、手筈通りに…」
女王「そうじゃな。…そなたたちには苦労ばかりをかける」
兄「私が望んですることです。忍殿。宜しく頼む」
忍「あい分かった」
戦士「手筈、とは?」
兄「…教会の中に紛れ込むのさ。敵の情報 を詳細に手に入れ、必要とあらば内側から崩す」
戦士「っ…それを、兄上が?」
兄「ああ。こちらの忍殿と共にな。なーに、お前ほどではないが、私とて父上の息子だ。教会の聖騎士どもには遅れはとらないさ」
戦士「それは、心配してないさ。しかし、敵には人の心を操る技を使う者がいるんだぞ」
忍「我らは、現在王城にて待機している貴族殿の隊に紛れて教皇領に入ります。彼は、その権限のわりに管理が甘く、つけいるのに適しています」
兄「こちらの正体がバレなければ、術にかけられることもないだろう。それに、お前が向こうで協力者を得てきたのは、かなり大きい」
戦士「僧侶殿か…。確かに彼女なら兄上の力になってくれるだろうな」
兄「後で一筆したためてくれ。それ以外は、お前も力が回復するまで安静にしていろ」
兄「今度は、俺が体を張る番さ」
戦士「兄上…」
戦士「…それで、作戦というのは?」
くノ一「作戦は、建国の儀式の最中に行われます。教会の悪行を、現行犯として天下に知らしめることによって、彼らの退路を断ちます」
女王「もはや、小細工をしたところで教会を止めることは叶わぬようじゃからのう。彼奴らの策略を、逆手に取るのじゃ」
兄「敵を追い詰めるカードは、それなりに揃って来ているからな」
忍「我らが教皇領で更なる証拠を掴めれば、教会に逃げ道はありません」
くノ一「私は、その時まで武器商会の方を探り、妨害を試みます」
兄「お前にも、当日は一役買ってもらうぞ」
戦士「? ああ、勿論私に出来ることならば…」
女王「さて、各々やる事は決まったようだのう。気がかりがあるとすれば…」
女王「地下で戦士の前に姿を現した、女神を名乗る存在…そして、そこに集められた者たち、か」
戦士「………」
忍「女神…本物なのでしょうか。勇者の前には姿を現し、天啓を授けると言われていますが」
くノ一「女神様を知る、女勇者様は、もう…」
戦士「私にも、よく分かりません。あれがなんだったのか」
戦士「ただ、確かにあれは圧倒的な存在感のある者だった。聖女である、僧侶殿も半ばその存在を認めていました」
兄「本物、だというのか? しかし、僧侶殿や戦士は分かるとして、なぜ辺境の盗賊や、武器商会の女社長まで…」
女王「勇者一行には、かねてよりその身分は様々な者が選ばれておった。その者たちが勇者一行だとしても、なんら不思議はない。だが…」
忍び「…魔族」
女王「うむ。魔族は本来、魔王の配下にある者。勇者とは相対する者のはずじゃ」
女王「何より、彼の者が平然と人の世を渡り歩いているという事実も、恐ろしいのう」
くノ一「女勇者様を殺害した武闘家についても調べさせてはいますが、依然行方は分からず…」
女王「あの者は、昔から御し難い男でのう。居場所を突き止める事すら叶わん」
忍「危険人物に対する警戒を強めます」
女王「うむ。まあ、城内は新たに組織した近衛隊がおるからのう。十字聖騎士団に任せるよりは安全じゃ」
戦士「近衛隊が、新たに…」
兄「そうだ、言っていなかったが、当面はお前も近衛隊扱いになるぞ」
戦士「…え」
兄「陛下に程近い守備位置でな。その方が、身分も隠しやすいし、何かと都合がいいのだ」
戦士「お、俺が…」
戦士「陛下の、近くに?」
国王「…」
戦士「…」
国王「お前かよ、よりによって」
戦士「…申し訳御座いません」
国王「うわー、余に対してその不貞腐れた態度。マジ許せんわー。腹切れ、お前」
戦士「…申し訳御座いません」
国王「おい、なあ。なんでこいつなの?」
女王「文句は受け付けませぬ。陛下におかれましては、この者とよく話し、理解を深めて頂きますよう」
国王「ヤダヤダヤダー! なんでこんなむさっ苦しいのにつきまとわれわれねばならんのだ!」
戦士「…申し訳御座いません」
国王「妃! お前んとこの、ほら、くノ一とかいう者おったろう! あやつがいいな、余!」
女王「くノ一は諜報活動に忙しい故」
国王「いやー、隠密たるもの、主君についてもう少し知っといた方が良かろう! とくにあーんな所やこーんな所なんかも、グフフ」
女王「陛下」
女王「私の采配に、何か問題が?」ゴゴゴゴ
国王「え、や、えーと、…アリマセン」
戦士(…まったく。国王陛下はこのような態度を取られるから、変人扱いを受けるのだ)
国王「あーお前いま心の中で余を馬鹿にしたろ。不敬罪で打ち首に処すぞコラァ」
国王「だいたい、お前のよーな直情型の阿呆と違って、人前じゃキチンと国王やってるんだもんね! TPOぐらい弁えるわ、余を誰だっと思っとんじゃ」
戦士(なんだとぉ…?)イライラ
国王「だが、まー、アレだ。これだけは言っとかねばならん」
国王「………お前の親父殿」
国王「…助けられず、すまなかった」
国王「余の至らなさ故じゃ」
戦士「陛下――」
戦士「…」
戦士「陛下はあの時、反逆の罪から我ら兄弟を救って下さいました」
戦士「…それだけで、十分過ぎるほどです」
戦士「――………ありがとうございました」
戦士(日が、暮れてゆく)
戦士(こんな風にゆったりと景色を眺めるのは、いつぶりだろうか)
兄「お、ここに居たか」
戦士「兄上」
兄「…明日、貴族の隊が教皇領に向け出発する。今夜のうちに紛れ込むつもりだ」
戦士「………いよいよ、だな」
兄「ああ。大詰めってところだ」
戦士(…この国の、行く末がどうなるのか。俺たち次第で決まるのだ)
兄「…」
兄「戦士。なんだか、雰囲気が変わったな、お前」
戦士「そうか?」
兄「なんというか、あの部屋で別れたときの、目をギラつかせていたお前とは、違う」
戦士「…色んなものを見せて貰ったんだ。様々な人々に」
戦士「報いねば、ならない」
兄「…」
兄「女勇者様のことを気に病むのは分かるが、あの人はこの国のために命をかけたのではないと、俺は思う」
戦士「どういう意味だ?」
兄「あの人は、もっと小さなものに命を賭けられる人だった。あるいは、更に大局を見越していたのかもしれんが」
戦士(………)
兄「これを渡しておく」
戦士「…手紙?」
兄「女勇者様の部屋を整理していたら出てきたそうだ。我々宛てになっている」
戦士「俺たちに…。兄上はもう見たのか?」
兄「いや…。なんとなく、な。お前が先に見るべきな気がしたんだよ」
戦士「兄上、相変わらず変なところでこだわるな」
兄「うるさい。…兄ってものはな、色々考えてるんだよ」
戦士「そう言うものか?」
兄「そう言うものだ。それに忙しくてそれを開ける暇がなかった、という事でもある」
戦士「しかし、もう行くんだろう。見ないままで良いのか?」
兄「良いさ。どうせ、向こうですることは変わらない。俺もこの目で教会の真実を手にしてくるつもりだ」
兄「帰ってくるまで、お前が預かっておいてくれ」
戦士「…分かった」
兄「ではな…」
戦士「…兄上」
戦士「もう一度、約束だ」
戦士「生きて必ず会おう」
兄「………ああ。約束する」
――――――
――――
――
ギィ…バタン
国王「…ふう」
戦士「議会、お疲れ様でした」
国王「…そう思ってんなら茶の一杯でも入れておけっつーの」
戦士「私は軍人なので、そのような能力はありません」
国王「けっ、使えねーわ、マジで」
戦士「…陛下」ハァ
戦士「議院の者たちに、あのように好き勝手を言わせておいて良いのですか」
国王「なんだ? お前見てたの?」
戦士「陛下の手腕があれば、彼らを黙らせることは容易なはずです」
国王「ひょえー、軍人のくせにいっちょまえに語るのー、お前」
国王「………。黙らせて、押さえつけることこそ簡単だ」
戦士「…」
国王「しかし、それでは分かり合えない。そして、彼らから考える機会を奪ってしまう」
戦士「考える、機会?」
国王「我が兄上は、確かに政権のカリスマだった。だが、それ故に国内はイエスマンだらけになってしまったものよ」
国王「国は、みんなで作らねばならん。国王のワンマンでやっていくやり方は、いずれ頭打ちになる」
国王「ゆくゆくは、余に権力が残されなくとも良いと思っておる」
戦士「陛下…!?」
国王「まぁ、まだ先の話だがな。いま放り出すわけにはいかんしな。土台ががまだまだ出来とらんし…それに、王国である以上、王室は王室で権威を保たねばならん」
国王「とは言え、教皇に明け渡すつもりも、大領主どもにそのまま任せるつもりもないぞ。まずは、人々が選んだ代表が発言権をもつ、議会を作らねば」
国王「まーったく、理想には程遠い。ほーんに肩凝るわー、国王tureeeee」
戦士(………陛下は、先の先まで見越しておられるのか)
国王「人は、力に翻弄される。力のために争い、争いがまた争いを呼ぶ。それはもしかしらたら、どんな世になっても変わらぬのかもしれん」
国王「だがそれでも、血を見るような争いが限りなく起こらぬ国を作らねばならん」
戦士「………肝に命じます」
国王「余は、魔族とて分かり会えると信じている。力に魅入られている教会も、救うことが出来るはずだ」
国王「争いを終わらせるのは、相手を凌駕する力ではない。憎しみを生むのでなく、理解と友愛を生む方法を探さねばならん」
国王「そのために力を貸せ、戦士。来るべき時に向け、余の懐刀としてその刃を研いでおくのだ」
戦士「…はっ!」
戦士(…俺は、この人のつるぎになる)
戦士(鞘におさめ、抜く必要もないほど、美しく鍛えられたつるぎに)
兄「…」
兄(戦士のやつ、見違えるようだったな)
兄(きっと、あいつは陛下の近くで更に様々なことを吸収するだろう)
兄(弟の成長か。これほど嬉しいものはない)
兄(…うん。そうだ。そのはずだ)
僧侶「…準備はいいかしら?」
忍「うむ。頼む」
兄「…行こう」
僧侶「…この扉の奥には、凄惨な研究現場が広がっているわ。くれぐれも、動揺して物音などを立てないように、気をつけて」
僧侶「………開けるわよ」
ギィ…
僧侶「――私に案内が出来るのはこんな所かしら」
忍「…感謝致す」
僧侶「いえ。しばらくはこの部屋で休みましょう。ここは、研究員も見張りの聖騎士も訪れない場所だから」
兄「助かります。あまりにも、非現実的な技術の数々に…今までの価値観が揺らいでしまうほどだ」
僧侶「そうね。私も、知れば知るほど、本当に現実のことなのか疑いたくなるくらいだったわ。もしかしたら、幻術にでもかけられてるんじゃないかって」
僧侶「…人間の限界値を越えた魔力を有する人造人間たち。そして、その者たちが中心となって作り上げた、強力な破壊力を生み出す、物質の融合による爆発」
僧侶「目に出来た文献だけでも、空間転移を可能にする翼や、中には時を遡る技の研究まで存在する」
忍「教会は、どうやってここまでの成果を手に入れたのだろうか」
僧侶「…元々教皇様は、古代文明の遺産の研究に熱心な方だったわ」
兄「古代文明…? 遥か昔、人や魔族が生まれる前に栄えていたとされる、あれですか?」
僧侶「ええ。そこには大いなる秘密があるに違いないと、考えていたみたい。でも、あくまで最初はこんなに規模の大きなものではなかった」
僧侶「それが、何がきっかけとなったのか…ある時から、莫大な資金を注ぎ込んで研究が行われるようになったみたいなの」
僧侶「丁度、私が教会に来てすぐ…十五年前、女勇者さんが魔王を倒した時あたりからね」
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