私的良スレ書庫
不明な単語は2ch用語を / 要望・削除依頼は掲示板へ。不適切な画像報告もこちらへどうぞ。 / 管理情報はtwitterでログインするとレス評価できます。 登録ユーザには一部の画像が表示されますので、問題のある画像や記述を含むレスに「禁」ボタンを押してください。
元スレ国王「さあ勇者よ!いざ、旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」
SS+ スレッド一覧へ / SS+ とは? / 携帯版 / dat(gz)で取得 / トップメニューみんなの評価 : ○
レスフィルター : (試験中)
魔王「………」
盗賊「お、避けたのか。やっぱりラスボスは、簡単にはいかねーってか」
魔王「あなた…今…」
魔王(………魔弓だ)
魔王(間違いない。彼は今、いとも簡単に魔弓を真似てみせた)
盗賊「何か、文句言いたそうな眼だねぇ?」
魔王「………あなたこそ、つらそうよ」
盗賊「…鋭いねえ、ホント。顔色を変えない演技に関しちゃ、自信があったんだけどな」
魔王「力の負荷に、肉体も精神も押し潰されそうなのね。力をもて余してる」
魔王「あなたには、与えられるべくして与えられた力ではないわ」
盗賊「ま、そうなんだろうな。俺の身の丈にゃ合わねーよ、どう考えてもな」
盗賊「いいトシこいて背中から翼なんざ生やしてよ。勘弁してくれってんだ、こいつをデザインした野郎はどんな趣味してんだろーな?」
魔王「思い当たらないわけではないわ」
魔王「………女神教会、ね?」
盗賊「…」
盗賊「確かに、この力は教会の荷から手に入れたもんだ。大層な護送してやがるから、どんなお宝かと思えば、光の力と来たもんだ」
盗賊「…ちょーっとばかり王国を困らせてやろうって手ぇ出したはずなのにさ、オカシイと思ったんだよなぁ」
魔王「やはり…」
魔王(女神教会。…確か、女神を唯一神とする人間の教団)
魔王(人のほとんどは宗教として女神を信じているから、膨大な権力を持っているはず)
盗賊「あの時の王国の慌てようは想像以上だったが…それ以上に反王国勢力から俺は戦乱の主役に担ぎあげられて」
盗賊「力を使えば…奇跡を起こす英雄として祭り上げられた」
魔王(…勇者に与えられるがごとき女神の力を使えば、確かに人にとって英雄となりうるだろう。でも…)
魔王「奇跡は、そう易々と起こしていいものじゃないわ」
盗賊「…へえ? 奇跡の塊みたいな力をもった魔族四天王の、ボスがそれを言うなんてねぇ?」
魔王「あなたの力は、存在自体に大きな矛盾を孕んでる」
魔王「この世に本来あるべきじゃない、捻れを…違和感を感じる。力の所有者であるあなたは、何も感じないの?」
盗賊「ああ、おかしいと思うね。奇跡の力だってんなら、使うたんびに俺の体を蝕まないでくれ、てさ」
盗賊「…何度も思ったよ」ツー
魔王(…血が)
盗賊「いい迷惑さ。起こしたくて起こしたわけじゃない奇跡も沢山ある。英雄だとか言って、多くの人間を戦乱に導いて、死なせてきた」
盗賊「力を封じて、役目も捨てて、何度戦いをほっぽり出しちまおうと思ったことか。…けどよ、今さら、そうもいかねぇんだ」
盗賊「こーんなダメな俺を…時には引っ張り回して、時にはケツを叩いて、側にいてくれたあいつらが居るからな」
盗賊「捻れた奇跡だって、起こさなきゃならねぇのさ」
魔王「あなたの歯車は、もう、止まらないのね」
盗賊「そゆこと。でもさ、俺は運命の為すがままに流されていたんじゃねーよ」
盗賊「俺は自由でありたかった。最初からな。そのために剣を取った」
盗賊「あんたと相対している今も、それはひとつも変わらないんだ」
魔王「………そう」
魔王(何かが起こっているんだ…何だろう、嫌な感じがする)
魔王(駄目だ。立ち止まって考える暇はないんだ。私は…)
魔王「私は、勇者を倒さなければならない。ここで倒されるわけにはいかないの」
盗賊「…そーかい」
盗賊(迷いのない眼だ。射抜くように、真っ直ぐな)
盗賊「こんな圧倒的に不利な状況で、そうきっぱり断言されちゃあたまんないぜ」
盗賊「肝っ玉の座ったねえちゃんだよ。魔王じゃなかったら、口説いてたかもなあ。あんた、魔族ってわりに美人だしな」
魔王「変わった人ね、あなた。でも、分かってるんでしょう?」
盗賊「ああ。…俺たちは殺し合わなきゃならない。名残惜しいけど、そろそろ始めるとすっか」
魔王「いつでも、どうぞ」
盗賊「言っとくけど俺マージで強いぜ、今」
魔王「…そう。楽しみね」
盗賊「女を泣かすのは趣味じゃねぇが」
――「ねぇ…その真の力を解放したとき、貴方はどうなるの?」
――「生きて、帰ってきてくれる…?」
盗賊「…俺が負けても、泣く女がいるんでね」
盗賊「恨むなよ」
魔王「………私が」
魔王「解放してあげるわ」
軍師「…」
狩人「…盗賊と魔王、光に包まれて消えた…」
狩人「使ったんだね…。あの力」
軍師「…そのようですね」
狩人「これで良かったの? 軍師さん」
軍師「………」
軍師「やめろと言っても、あの人はそうしたでしょう」
軍師「…それに、実際それに頼らざるを得ない状況に違いはありません。…私の能力の限界です」ギュ…
狩人「軍師さん…」
軍師「狩人。魔王が消えたことによる敵の動揺を誘います。ハーピィの術式の援護をしてください」
軍師「私たちに、出来ることをするのです」
狩人「そう、だね。分かった」
狩人「行ってくるよ」バッ
軍師「…」
軍師「どうか…生きて帰ってきて…」
雷帝「…」
雷帝(魔王様と、人間が光に包まれ消えた…)
雷帝(人間の自爆? いや、仮にそうだとしても、ここまで塵も残さず魔王様の肉体を消し去るのは不可能だ。あの人間が見せていた能力…転移魔法の一種、と考えるのが妥当だろうが)
雷帝(どこかに転移をして、魔王様を倒すつもりか? しかし、何処にも魔王様の気を感じられぬのは何故だ?)
雷帝(まるで、この世界から消え去ってしまったような…こんな事がありうるのか…!?)
雷帝(くそ…っ! どうなっている!)
吸血鬼「………ざまぁ…ありません、わね…」
雷帝「…まだ息があったか」
吸血鬼「…ふ、ふ…貴方の…そんな、狼狽たえた、 顔が見れる…なんて…長生きは、するものです、わ…」
雷帝「…」
雷帝「お前は、あの人間の能力を知っているのか」
吸血鬼「…知って、いたとして…教えると思い、まして…?」
雷帝「吐かせるまでだ」グイッ
吸血鬼「…やって、みな、さいな…」ニィ
雷帝「! 貴様…その瞳の色…」
雷帝(なんだ!? 瞳が青く光っている!?)
吸血鬼「ああ…これ、ですの?」
吸血鬼「魔力を、送ってるの、ですのよ…ハーピィ、に」
吸血鬼「私の、記憶を…」
雷帝「何…?」
雷帝「お前は、あの人間の能力を知っているのか」
吸血鬼「…知って、いたとして…教えると思い、まして…?」
雷帝「吐かせるまでだ」グイッ
吸血鬼「…やって、みな、さいな…」ニィ
雷帝「! 貴様…その瞳の色…」
雷帝(なんだ!? 瞳が青く光っている!?)
吸血鬼「ああ…これ、ですの?」
吸血鬼「魔力を、送ってるの、ですのよ…ハーピィ、に」
吸血鬼「私の、記憶を…」
雷帝「何…?」
ハーピィ「吸血鬼さんの魔力を拾えた!」
ハーピィ「き、記憶を拡散するよ! 召喚術用意っ!」
「了解!」
ハーピィ「! こ、これ…」
狩人「ハーピィ! 行けるなら、やって! こっち押さえるのも限界だっ!」
ハーピィ「よ、よし! 行くよ!」
「召喚!! 幻惑の海獣!!」
剣士「隊列を立て直せッ! 受けに回ったらやられるぞォ!!」
炎獣「いい加減うざったいぜ! オラァッ!!」
ドカァンッ!!
剣士「ちィ、バケモンが…ッ!」
炎獣「これで終わりだっ!」
炎獣「炎ぉ――」ゴゴゴゴ
フワッ
炎獣(!? な、なんだこれ!? 急に妙な景色が目の前に…!)
炎獣(敵の幻術か!?)
炎獣(あれは雷帝…それに、魔王?)
盗賊『魔王、借りてくぜ』
魔王『っ!?』
雷帝『魔王様ッ!!』
盗賊『我が身に宿る力よ――』
盗賊『その真の力を示せ』
ゴァッ――!!
雷帝『な、なんだ…――この力!! 魔王様ぁッ!』
炎獣「――!!」
炎獣「魔王が………消された?」
氷姫(またハーピィの召喚術ってわけ? …にしても、これ)
氷姫(只の幻術じゃ、ない! 誰かの記憶を幻として映し出しているんだわ。だとすれば、これは実際に起こった事…!?)
氷姫(まさか、本当に魔王が…!)
木竜(姫様が………! 馬鹿な…)
木竜(しかし、姫様の気が、感じ取れぬ! 本当に、消えたとでも言うのか…!?)
木竜「姫様………!!」バサッ
エルフ「て、敵が引き上げていく…」
魔女「乗り切った…か…!」
剣士「作戦は…成功ってかァ…?」
エルフ「精鋭部隊の突撃は、上手くいったってこと!?」
狩人「じゃあ、魔王を倒した…!?」
魔女「まだ、そこまで考えるのは早計じゃ」
ハーピィ「………」
剣士「…どうした、ハーピィ」
ハーピィ「きゅ、吸血鬼さんから受け取った記憶のなかに…倒れている騎士さんと斧使いさんがいたんだ」
エルフ「えっ!?」
ハーピィ「ま、魔王の他に、別の四天王の姿もあった…。と、盗賊様たちの突撃は、成功したのかもしれないけど」
ハーピィ「きゅ、吸血鬼さんたちは、もしかしたら…!」
剣士「んだとォ…? あんな、殺しても死なねぇような連中が…!!」
狩人「っ!」バッ
魔女「どこへ行くんじゃ、狩人!」
狩人「精鋭部隊、助けに行く…!」パカラッ
魔女「一人で行くつもりかっ!?」
狩人「まだ間に合うかもしれない!」
エルフ「私も行くよっ!」パカラッ
剣士「くっそッ、俺も…ぐっ!」
魔女「落ち着け! その傷ではお前が行ったところで足手まといじゃ」
剣士「くっそがッ…!」
ハーピィ「う…うぅ…」
狩人「皆は陣形を整えて軍師さんの指示、待っていて!!」
狩人(…そこには、四天王が全員揃ってるのかもしれない…)
狩人(怖い…怖くてどうしようもない…けど)
狩人(僕に出来ることがあるなら………!)
パカラッ パカラッ…
魔女「くっ…援護しようにも、妾たちの魔力も限界が来ておる…」
魔力(できることは、最早待つことだけか…しかし…)
魔女(魔法使いの奴め。いつの間にか姿を消しおった)
魔女(何を企んでおるのじゃ、お前は)
氷姫「雷帝っ!」スタッ
雷帝「氷姫…何故お前がここに」
氷姫「んな事どうだっていいのよ! どういうことよ!? 魔王は何処っ!?」
雷帝「落ち着け…!」
氷姫「落ち着けですって!? これが落ち着いていられるもんですかっ!」
氷姫「答えなさいよ!! 魔王は何処!?」
雷帝「…っ」
氷姫「何とか言えっ!」
雷帝「…私にも分からない」
氷姫「!」
氷姫「分からない、ですって!? あんた、それでも――」
炎獣「待てって、氷姫!」ザ…
木竜「こりゃ、どういうことじゃ…」バサッ
雷帝(炎獣、翁まで…)
炎獣「雷帝に噛みついたってどうにもなんないだろ! 一旦落ち着いて…」
氷姫「離しなさいよ!」バッ
炎獣「なっ…」
氷姫「あんたはなんとも思わないわけ!? あんなに言ってたじゃない! ″魔王を″守るって!!」
炎獣「…俺だって焦ってるさ…!」
氷姫「じゃあ、何でこの状況で平気でいられるのよっ!」
炎獣「平気じゃねえよ! 俺だってなあ…!」
木竜「よさんかッ!!」
氷姫「っ!」
炎獣「…!」
木竜「…こうしてこちらの混乱を招くこと事態が、敵の目的じゃ」
木竜「だからわざわざ、ああやって儂らに幻影を見せ、前線から退かせた…そうじゃろう、雷帝」
雷帝「翁…すみません」
雷帝「その通りです。これは敵の策の一種。…恐らく敵はこれを機に我々を包囲しにかかります」
氷姫「あ…」
炎獣「…くっ」
木竜「ふむ…かといって、姫様の身に何が起こっているか分からぬ以上、下手に身動きも取れぬ」
雷帝「…はい」
吸血鬼「く、ふふ。四天王、が、揃いも揃、って、不様、ですわ」
雷帝「こざかしいマネを…。どうやら、その浅知恵を働かせている者から排除する必要があるようだな」ギリ…
吸血鬼「そん、な事を、する前に、貴方たちの、負け、ですわ」
吸血鬼「魔王、は倒され、る」
雷帝「………」
雷帝「あの男の能力は…女神の力の片鱗だな?」
吸血鬼「!?」
雷帝「転移魔法の時に発生する白い翼…そして聖なる波動。光の勢力の使う術そのものだ」
炎獣「お、おい、どういうことだよ。女神の力…て、それ…」
炎獣「勇者に与えられる力のことだろ!?」
雷帝「そうだ」
氷姫「なんなのよ…。つまり、あいつが勇者だったってこと?」
雷帝「いや…少し違うな。それにしては聖なる波動が不十分だ」
雷帝「あの者はその断片の力を操っていたに過ぎない。最も、人間どもの目にはそんなものですら超常の力に写っただろうがな」
雷帝「ほんの一部とは言え、伝説と言われる女神の力だ。貴様ら魔族のはぐれ者や、外界を遮断し続けていたような特殊な民族ですら、その奇跡の前に夢を見たのだろう」
雷帝「そうして出来た特殊な集団は、王国軍とはまた質の異なる勢力を形成していた…それが、貴様らの軍、といったところか」
吸血鬼(…っ。この短時間で、そこまで見抜くなんて…)
雷帝「そして、その奇跡の力こそが、貴様らの奥の手だった。魔王様ですら、その力を以てすれば打倒できるはず…と」
吸血鬼「………」
雷帝「--…切り札にしては、何とも陳腐だな」
吸血鬼「なん、ですって…!?」
雷帝「女神の力の、断片程度で…魔王様を討てると思ったのか?」
雷帝「あのお方は、全ての魔族の頂点に立つお方」
雷帝「我々四天王を付き従えるだけの偉大なる力を持ったお方」
雷帝「――邪神の加護を一身に受けた、我らの救世主だ」
魔王「…」
魔王「ここまで、ね」
盗賊「がッ………ごッ………」
魔王「翼の力…か。勇者以外に聖なる力を使うものが現れるなんて思わなかった」
盗賊「うッ………ぎぃッ…!!」
魔王「でも…それでは、私は倒せない」
盗賊「…く………そ………ッ!!」
魔王「…さよなら」
盗賊「………お…れが…」
盗賊「…ま……ける………わけ…に………」
盗賊「いか………な…」
魔王「魔弓」
――「どうか…生きて帰ってきて…」
盗賊「………軍――」
ゴォッ――
炎獣「!! なんだ!?」
氷姫「眩しくて何も見えない…! でも…でもこれって…!」
木竜「姫様の、気じゃ!」
雷帝「………魔王様」
魔王「みんな」スタッ
魔王「心配かけて、ごめん」ニコ
炎獣「ま、魔王っ!」
氷姫「魔王!!」
木竜「姫様…良かった…!」
雷帝「魔王様…」
吸血鬼「そん…な」
吸血鬼「盗賊…様………」
あー!年内に投下終わらせられず…
ってゆーか年内に完結しないのかよ
クリスマスだろーが大晦日だろーが正月が来ようが土曜日はss
今後ともよろしくお願いします
ってゆーか年内に完結しないのかよ
クリスマスだろーが大晦日だろーが正月が来ようが土曜日はss
今後ともよろしくお願いします
氷姫「良かったっ…! 良かった無事で…!」
炎獣「魔王! 怪我、してないか? 」
魔王「ふふ、大丈…夫」ヨロ…
木竜「姫様!」バッ
雷帝「…!」
魔王「ごめん、なさい。少し立ち眩みがしただけよ」
魔王「聖なる波動にあてられ続けてたから…でも、もう平気」
炎獣「無理すんなよ!」
氷姫「そうよ…!」
雷帝「魔王様。手を見せてください」
魔王「っ、雷帝、平気だってば」
雷帝「魔王様」
魔王「…う、うん」ス…
木竜「! ひどい痕じゃ…」
氷姫「これ…!」
雷帝「魔王様…力を何度か使われたのですね」
魔王「…」
魔王「ほんの一部とは言え…女神の加護を受けた力と対峙するには、こうするしかなかったの…」
雷帝「…」
炎獣「…魔王、ごめんな」
炎獣「俺、守るって言ったのに…」
魔王「謝らないで。私は平気だから」
雷帝(………私には)
――「信じるわ。雷帝」
雷帝(私には、申し開きをする権利すらありはしない)
木竜「治療をしますぞ、姫様」
炎獣「か、肩貸すか? それとも椅子代わりになろうかっ?」
魔王「くすっ…大丈夫だってば、炎獣」
雷帝「…」
氷姫「…変に意地張ってると、本当に蚊帳の外になるわよ」
雷帝「………なんの話だ」
氷姫「…馬鹿」
炎獣「でもよ、まさか人間がこんな手を使ってくるなんて…」
木竜「女神の力の断片を手にした人間、か。もしそんな者が他にもいるとなると、今後の儂らの動き様も考えねばならんのう」
魔王「彼は、どういう経緯かは分からないけれど、力を持っていた…」
魔王「女神の力は、代々選ばれし人間が魔王を倒すために授けられてきたもの。すなわち、勇者にしか与えられない力のはず」
魔王「それを、勇者以外の人間が手にしていた…」
氷姫「なんでそんな事が…?」
雷帝「分からん。が、どうにもきな臭いな」
雷帝「何者かが、秩序を乱しているように感じる。…いや、もしくは」
雷帝「…」
炎獣「? なんだ?」
魔王「…」
雷帝「…いや。ともかく、魔王様をお守りしつつ、この戦いを乗りきらなければな」
木竜「そうじゃな。形勢は、それほどウマくないからのう」
エルフ「聖水の煌めき…っ!」
カッ!
氷姫「! 敵!?」
炎獣「ちっ! ここに攻めてきたのか!? なめやがって!」
木竜「しかしこれは…」
雷帝「単なる目眩まし、か? 」
エルフ「斧使いはオーケーだよっ!」パカラッ
狩人「こっちは騎士をつんだ! あとは…!」パカラッ
吸血鬼「…行きなさいな」
狩人「何言ってんの!? 吸血鬼も早く乗って!!」
吸血鬼「誰かが、敵の追跡を、防がねば」
エルフ「一人で、四天王全員相手にする気!?」
吸血鬼「誰かがやらなきゃ、振り切れませんわ」
吸血鬼「それに…」
吸血鬼「少しでも、あの人の側に居たいんですの…」
エルフ「!? それって…」
狩人「………まさか」
吸血鬼「盗賊様は、帰ってきませんわ」
エルフ「…っ!!」
狩人「…嘘、だよね…?」
吸血鬼「あのメガネ女狐に伝えてくださいな」
吸血鬼「きっと、仇を討て、と」
エルフ「盗賊、が…」
狩人「…嘘だ」
狩人「嘘だっ! 盗賊がっ! 死んだなんて!!」
吸血鬼「早く、お行きなさいな!!」
狩人「嘘だっ!!」
吸血鬼「エルフ!!」
エルフ「! くっ…!」ガシッ
狩人「離して、エルフ!! 盗賊がっ! 吸血鬼まで!!」
エルフ「行くんだ狩人…!」
「おい」
炎獣「奇襲にしちゃ、ずいぶん悠長だなあ!?」バッ
●
吸血鬼「盗賊様は、帰ってきませんわ」
エルフ「…っ!!」
狩人「…嘘、だよね…?」
吸血鬼「あのメガネ女狐に伝えてくださいな」
吸血鬼「きっと、仇を討て、と」
エルフ「盗賊、が…」
狩人「…嘘だ」
狩人「嘘だっ! 盗賊がっ! 死んだなんて!!」
吸血鬼「早く、お行きなさいな!!」
狩人「嘘だっ!!」
吸血鬼「エルフ!!」
エルフ「! くっ…!」ガシッ
狩人「離して、エルフ!! 盗賊がっ! 吸血鬼まで!!」
エルフ「行くんだ狩人…!」
「おい」
炎獣「奇襲にしちゃ、ずいぶん悠長だなあ!?」バッ
吸血鬼「貴方の相手は」ガシ…!
吸血鬼「わたくしですのよ」
炎獣「誰だ、お前」
炎獣「こっちは、気が立ってるんだよ」
吸血鬼「知ったことでは、ありませんわ…!」
狩人「離して、離してよエルフっ!!」
狩人「吸血鬼が、死んじゃうよ!!」
エルフ(…っ!!)ギュ…
炎獣「どけ」ゴッ
吸血鬼「あぐッ」グシャ
炎獣「逃がさないぞ、人間…!?」グイッ
吸血鬼「…」ニィ
炎獣「…お前」
雷帝「離れろ炎獣! 自爆する気だ!!」
炎獣「なっ…」
吸血鬼(…盗賊様………)
吸血鬼(地獄の果てまでお供します、なんて)
吸血鬼(…冗談で済めば良かったのですけど)
吸血鬼(今、お側へ…)
ドォ…ン!
狩人「吸血鬼ーッ!!」
王国軍・砦
軍師「…信用して頂けませんか」
将軍「ふん…。貴様ら賊の一団に、人類の命運を握らせるわけにはいかぬ」
軍師「面子の問題ですか? 王国正規軍の指揮を、辺境連合軍の指揮官に執らせる事が許せないと?」
軍師「人類の命運がかかっているのなら、尚更そのような事にこだわるべきではないと思いますが?」
将軍「…。確かにな」
軍師「ご理解頂けましたか。それでは今後の軍の指揮は、我々辺境連合軍が--」
将軍「だが、それだけではない。貴様らは信用するに値しない」
軍師「…将軍。意地を張るのも結構ですが…」
将軍「貴様らは確かに強い。魔王の手勢を相手取るだけの力と、策がある。しかし」
将軍「このような時ですら、貴様らは己達の利を考えている。…私の部下の最期を、みすみす貴様らの食い物にされるわけにはいかん」
軍師「…っ」
軍師「ですから、それは…!」
ハーピィ「--あぁ…!」ガタン
軍師「ハーピィ?」
ハーピィ「あ…あ…!」
魔女「どうしたんじゃ、ハーピィ!」
ハーピィ「吸血鬼さんが…吸血鬼さんが…!」
軍師「…!」
ハーピィ「吸血鬼さんが、死んじゃったよぅ…!!」
魔女「な…!」
軍師「…」ギリ…!
魔女「あやつが!? そのような事が本当に…!!」
魔女「………待て。それでは、精鋭部隊はどうなったのじゃ!?」
ハーピィ「…きゅ、吸血鬼さんの霊魂が………、え? なあに…? 僕に何か伝えようとしてるの?」
ハーピィ「分かんないよ…! 行かないでよっ、吸血鬼さん!!」
魔女「ハーピィ…何か見えておるのか?」
軍師(…)
ハーピィ「え…? と、うぞく、さま? 盗賊様が…」
ハーピィ「盗賊様が…死ん、だ?」
軍師「--…」
炎獣「…っぶねー…!」スタ
氷姫「炎獣、平気?」
炎獣「直撃したらヤバかったけど、な。平気だ」
木竜「逃がしたネズミを追うか?」
雷帝「…いえ」
雷帝「女神の力を使うものを排除した今、あのような雑兵が生き永らえた所で大した問題にはなりません」
雷帝「強いて驚異を排除するとしたら…敵の参謀です」
木竜「うむ。妙に敵がイヤらしい動きをしおるからのう」
炎獣「なんだかケンカがやりにくいのはそのせいか!」
氷姫「そいつを先に潰すにしても、こっちだってすぐには身動きを取れないでしょ。魔王の回復を待たないと」
雷帝「ああ」
魔王「ごめん、皆」
氷姫「謝らないでよ。元は、あたしたちが不甲斐なかったからなんだし」
氷姫(…そう、あたしが、人間なんかに遅れを取ったから)
氷姫(…)
氷姫「…究極氷魔法を使うわ」
炎獣「え?」
魔王「…!」
氷姫「そうすれば、敵の軍隊を一手に引き受けられる。その隙に…敵の砦を陥として」
雷帝「出来るのか? お前に」
氷姫「………やってやるわよ」
氷姫「あたしも…口先だけで、終わりたくないの」
雷帝「…そうか」
炎獣「おい、ちょっと待てよ。究極氷魔法って、氷姫お前、一度失敗して…」
氷姫「そうね。確かに、かつて一度負荷に耐えられずに暴走させた事がある」
木竜「あの時は、ひどい有り様じゃったのう。生きておったのが不思議なくらいじゃった」
氷姫「あの時のあたしじゃないわ」
氷姫「やり切ってみせる」
魔王「氷姫…」
氷姫「魔王…」
氷姫「信じて」
魔王「………」
魔王「ひとつだけ聞かせて?」
氷姫「何?」
魔王「究極氷魔法を使うのは、なんのため?」
氷姫「…」
氷姫(なんの、ため…? それは)
氷姫(人間に対する、怒り? いや、違う。不甲斐ない自分が許せないから…?)
氷姫(いや…それよりも)
――『なんで手出ししたっ!!』
――『ふふ…ふ。大丈…夫』ヨロ…
氷姫(私は…これ以上大事なものが傷つくのを見たくない)
氷姫(出来るかもしれないことをせずに、指をくわえて見てるなんて、そんなのは)
氷姫(もう、御免よ)
氷姫「――勝つため、よ。″皆で″ね」
氷姫「人間も必死だわ。そのためには、生半可な事じゃ駄目なの」
氷姫「魔王も。他の皆も。ここを乗りきるために」
氷姫「あたしも、自分に、勝ちたいの」
魔王「…」
魔王「そっか」
魔王「分かった。お願いします」
氷姫「…ええ!」
魔王「私も、爺に力を戻して貰ったら、手伝うから」
氷姫「そ? その頃には戦う相手はいなくなってると思うけど?」
木竜「やれやれ、負けん気の強い奴だのお」
炎獣「じゃあ、砦には俺が…!」
雷帝「いや、私が行く」
炎獣「!」
雷帝「私が、敵の本陣に攻め入り、この軍を指揮している人物…参謀を消す」
雷帝「今の私なら、それが確実に出来る」
炎獣「確実にって、どうしてそこまで…」
木竜「! 雷帝、おぬしまさか魔剣を抜いたのか」
雷帝「…ええ。魔剣の力があれば、氷姫のテレポートに似た瞬間移動すら可能です」
炎獣「…雷帝、おまえ」
氷姫「あんた、それって…」
雷帝「何も言うな」
雷帝「全てが終わったとき、魔剣との盟約により我が身は呪いに焼かれる」
魔王「…」
雷帝「その時は、翁。宜しくお願いします」
木竜「…まったく、どいつもこいつも。鷲の治癒能力に頼って無茶ばかりしよる!」
木竜「魔剣の呪いなんぞ、確実に解ける保証なぞありゃせんぞい!」
雷帝「信じていますよ」ニ…
木竜「………はあ」
木竜「好きにせい」
炎獣「…」
雷帝「炎獣。お前は魔王様の護衛を頼む。敵が、どんな手段をうってくるか分からん」
雷帝「お前が…」
雷帝(…)
雷帝「お前が守ってくれれば、安心だ」
炎獣「で、でもよ。俺…」
木竜「炎獣。おぬしは、おぬしの戦いをせい」
炎獣「え…?」
木竜「守るための戦いは、ただの殺し合いとは、わけが違う」
木竜「ただ相手を負かす、ということではない」
木竜「炎獣。お前の本能は、そういう事を求めておる。戦う相手は、そこになるかもしれぬ」
炎獣「自分の、本能と、戦う…」
木竜「………雷帝も、氷姫も。どうやら腹をくくったようじゃ」
木竜「おぬしも、自分と向き合うのじゃ」
木竜「本当の強さを、見せてみよ」
炎獣「…!」
雷帝「…行くぞ」
氷姫「ええ」
氷姫「………ねえ」
雷帝「なんだ?」
氷姫「重いわね」
氷姫「信じろ…って」
雷帝「…そうだな」
雷帝「だが、今はこうも思う」
氷姫「?」
雷帝「″信じる″というのは、悪くない気分だ」
氷姫「…そ、か」
雷帝「成功させろよ。究極氷魔法」
雷帝「信じてるぞ」
氷姫「…!」
氷姫「………そっちこそしくじるんじゃないわよ」
雷帝「ああ」
氷姫「信じて、やるんだから」
雷帝「…ふっ」
エルフ「…」
狩人「…」
剣士「おい…マジかよ」
剣士「マジで言ってんのかよ!?」
剣士「盗賊が死んだってよッ!!」
騎士「………」
騎士「ああ」
剣士「騎士ッ! てめェが…!」ガッ
騎士「…っ」
剣士「てめェがついてて、なんで…!!」
騎士「………」
騎士「すまない」
剣士「っクソがァ!」バキッ
騎士「ぐっ…」
エルフ「やめなよ!!」
魔女「………喚いたところで、盗賊は帰ってこんぞ」
剣士「…ちッ!!」
狩人「盗賊………吸血鬼…」
斧使い「………」
ハーピィ「ね、ねぇ」
ハーピィ「…でもさ、僕らなら…な、何とか出来るよね!」
魔女「…」
ハーピィ「盗賊様は、消えちゃったけど、し、死んじゃったって決まった訳じゃないし…!」
騎士「…」
ハーピィ「吸血鬼さんが…吸血鬼さんがさ。せ、せっかく命懸けで、助けてくれたんだから」
狩人「…」
ハーピィ「き、きっと…どうにか、出来るよね! 皆の力を合わせれば、さ!」
エルフ「…」
ハーピィ「か、仇、討たなきゃ、だよね! そう、でしょ…?」
斧使い「…」
ハーピィ「ね…ねえ。皆………」
剣士「…」
剣士「…盗賊の奴が生きてたとして、探しだしようがねェ」
剣士「そもそも、魔王はほぼ無傷で戻ってきたんじゃ…あのバカが生きてる可能性は低い」
ハーピィ「…っ!」
剣士「あいつの力を解放して勝てなかった魔王がいて………四天王は俺たちが全力でやって、一人として倒せねェ」
剣士「…翼の団も、王国軍も、疲弊してる。王国軍の連中なんざ、俺たちと連携する事を拒んで勝手に先走ってやがる」
剣士「俺たちも先の戦いで満身創痍だ」
剣士「吸血鬼は…死んじまった。認めたくはねぇが…あいつは俺たちの中で一番強かった」
ハーピィ「………」
剣士「状況は最悪だ。…そうだろうが」
剣士「何とか言ってみやがれ、軍師」
軍師「………」
剣士「そうなんだろうが…おい」
剣士「まだひっくり返せるってか…? 盗賊もいねェ、どいつもこいつもボロボロで」
剣士「生きているのでやっとだ! 絶望的じゃねェかよ…!!」
剣士「それとも次は、ケツまくって逃げ出す策か、ぁあ!?」
軍師「………」
軍師「盗賊なら」
軍師「盗賊ならこんな時、何て言ったのか…」
軍師「それを、考えていました」
剣士「…ッ! あいつは…!」
剣士「あいつはもう、居ねェッ!!」
軍師「居ますよ………此処に」
剣士「…何ィ?」
軍師「我々は…翼の団は…」
軍師「彼の志に共鳴して集まった者達です」
軍師「強者に虐げられた弱者に手を差し伸べ…自由を得るべく剣をとった人々です」
軍師「強大な王国の圧力の下で…空を飛ぶ鳥をただ羨んで、地面を這いつくばる事が当たり前だった私たちに」
軍師「空も飛べるのだと…彼はその障害を軽く飛び越えてみせました」
軍師「自由を得るための翼は、誰にでもあるのだ、と」
軍師「それを使わなくしている一番の敵は、王国ではなく、ただ落ちるのを怖がる自分なのだ、と」
軍師「さも、当たり前のように、彼はそれを言ってのけた」
軍師「…私たちが夢を見たのは、彼の身に宿る奇跡の力にだけでしょうか」
軍師「私たちは…いつの間にか、自分達まで空は飛べるのだと、当たり前のように口にしていたはずです」
軍師「彼の志は…もう」
軍師「みなの胸のうちに宿っているのではないのですか?」
剣士「………」
エルフ「――″絶望的な状況、か″」
エルフ「″まぁアレだ、やっぱヒーローの定番はピンチからの逆転勝利だろ?″」
剣士「!」
エルフ「…なんて。盗賊なら、そう言ったかもね?」
魔女「″もしダメでも、その時はせいぜい死ぬだけだ″」
魔女「などと、軽口を叩いてみせたかもしれんの」
エルフ「ああ、言いそう!」
狩人「″大丈夫だ、俺、持ってるから!″」
狩人「なんて、根拠のない強がり、言ったかもね」
騎士「…ああ。自身も不安でどうしようもなかったとしても」
騎士「盗賊殿なら、そう言った」
ハーピィ「…」
ハーピィ「″弔い合戦なら、派手にやんなきゃ″」
ハーピィ「″あの世の連中にも見えるように″」
剣士「…」ハァ
剣士「″つっても、俺たちがする事って言やァ″」
剣士「″ただ――″」
斧使い「″かっさらう事だけ、だ ″」
剣士「おっ…」
剣士「斧使い、テメェ普通に口きけたのかよ!?」
斧使い「…」
狩人「は、初めて聞いた! ね、オッサンもう一回! もう一回しゃべって!」
斧使い「…」フルフル
エルフ「あーっ、斧使い照れてる?」
斧使い「…」プイッ
騎士「お、斧使い殿からいつもの覇気がない…」
魔女「くくくっ、口を滑らせたのう、斧使い!」
剣士「かっかっかっ! なんだよ斧使いよォ、その顔はっ!」
ハーピィ「け、剣士さん、笑ったら可哀想…プッ、クスクス」
斧使い「…」ブン!
剣士「いてっ!? テッメェ斧使い、怪我人になんてマネしやがるっ!」
エルフ「もー、よしなよー!」
軍師(ああ)
軍師(やはり貴方がいなくては、ダメなのです)
軍師(何処かへ行ってしまっても…貴方の存在が、皆を救うのです)
軍師(だから、どうか)
軍師(どうか、見ていて下さい)
エルフ「軍師」
エルフ「…やろう。最後まで足掻こう」
騎士「これが最後になるならば…もはやそれで構いませぬ」
騎士「尚のこと、我輩たちらしくありたいと…そう思うのです」
魔女「勝ちを悠々取りに来る魔王に…手痛いしっぺ返しをくれてやろうではないか」
狩人「うん…もう、怖くないよ」
ハーピィ「わ、私は、ちょっと…恐いです、が………でも、頑張るですっ!」
剣士「…しゃーねェ。ここまで来たら腐れ縁だ」
剣士「付き合ってやんぜ」
斧使い「…」コク
軍師「………そうですね」
軍師「では、最後の策です」
前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 次へ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+ スレッド一覧へ
みんなの評価 : ○類似してるかもしれないスレッド
- 魔王「勇者よ、ここで終わりだ!」勇者「ちいぃッ……!」 (354) - [39%] - 2012/6/5 21:45 ★
- 穏乃「うおおおおおおお!!燃えてきたぁぁぁぁぁぁ!!」 (474) - [37%] - 2015/3/31 6:15 ★★
- 提督「うぉゎぁああああああああああああああああああああああああああ」 (254) - [36%] - 2017/7/21 10:00 ☆
- 吹雪「だからこの鎮守府はおかしいって言ってるんです!!!」 (1001) - [34%] - 2015/5/11 4:15 ★★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について