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元スレ国王「さあ勇者よ!いざ、旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」
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赤毛「金髪、ずいぶん詳しいんだね?」
金髪「ああ。小さい頃よく来てたからな、ここ。母さんの、取引相手だった」
坊主「金髪の母ちゃんって、行商人だったんだよね。僕の父ちゃんも商人ギルド勤めだから、昔は一緒によくご飯食べてたもんね!」
金髪「ははは。あの時は、楽しかったな。でも」
金髪「コドモの頃の、話だよ。もう」
三つ編「…」
赤毛「今でも金髪はコドモだと思うけど?」
金髪「…へっ。いつまでもパパとママにべったりの奴に言われたくないぜ。区のお偉いさんだからってよ」
赤毛「なっ…! パパとママのお仕事は関係ないでしょ!?」
三つ編「ちょ、ちょっと。こんな所でケンカ始めないでよ、二人とも!」
ジャラ…
三つ編「…ん? 何の音?」
金髪「! まさか、なんで!?」
坊主「ひっ…!」
赤毛「!」
番犬「…」ジャラ…
坊主「ひぃいっ…モガッ!」
金髪「馬鹿! デカイ声出すな!」ガシッ
番犬「…」キョロキョロ
三つ編「お、大きな犬っ…!」
赤毛(確かに…かなりの大型犬だ…!)
金髪「あ…慌てて大きな音を立てたりすんな。コイツ、滅多に吠えないんだけど…近くで子供が暴れたりすると、鳴くことがあるんだ」
赤毛「め、滅多に吠えないって、番犬としてどうなんだろ」
三つ編「でも、確かに今日は。もしこの犬が吠えたりしたら、何事かと家の人が出てくるかもしれないわ…」
金髪「魔王が来たかも…てか? こんな老いぼれの犬に吠えられる魔王って、どんなだよ」
坊主「~!」ジタバタ
金髪「ああもう、お前は暴れんなっつの!」
番犬「…」キョロキョロ
三つ編「………ねえ」
三つ編「普段から吠えない犬にしても、何か、変じゃない? こんなに近くに私たちがいるのに…この犬、まるで見えてないみたい」
金髪「!」
赤毛「そうだね。…死んじゃう少し前の、ウチの犬に良く似てるな」スタスタ
金髪「お、おい赤毛!」
赤毛「平気よ。ホラ、こうやって前から近づいて触ってあげれば」ソ…
番犬「…」
赤毛「多分、もう目も耳も………。鼻詰まりもおこしているみたい。これじゃあもう…周りのこと、全然分からないよね」
赤毛「不安だったんだよね、お前」ナデナデ
金髪「…!」
赤毛「ご主人様だと思ったの? ゴメンね、違うんだよ…」ナデナデ
坊主「わわわ…! こ、怖くないの赤毛!?」
金髪「………。あのオッサン、自分ちの犬がこんなになってんのに。面倒も見ずに、放し飼いにしてんのか」
三つ編「きっと、余裕ないのよ」
三つ編「…"魔王が攻めてくる"。自分達だってどうなっちゃうのか分からないんだもん」
金髪「…」
赤毛「それでも…」
赤毛「お前の居場所は、この庭なんだね」ナデナデ
番犬「…」
番犬「…」ヨタヨタ…
金髪「!」
赤毛(金髪の方に、すり寄っていく)
金髪「…お前」
番犬「…」スリスリ
金髪「う、うお…」
赤毛「ふふっ。もしかしたら、金髪のこと覚えてたんじゃないかな」
金髪「ん、んな事言ったって目ぇ見えないんだろ?」
赤毛「犬が覚えるのは匂いだよ。遊んでくれたこと、覚えてて…会いに来たのかも」
金髪「…ったく」
金髪「あん時は、まだお前ちっこかったじゃねぇかよ」
金髪「こんな、馬鹿でかくなっちまってよ」ナデナデ
赤毛「あはは、ぎこちない」
金髪「うるせっ」
坊主(…だ)
坊主(駄目だ、もう無理)プルプル
坊主「こ、怖いよぉーっ!」ワッ
金髪「ば、馬鹿お前…!」
番犬「…」ピクッ
番犬「バウッ! バウッバウッ!」
三つ編「きゃあっ!」
番犬「バウバウッ!!」
金髪(マズイ!)
「な、なんだ! 何事だ!」
金髪「やべぇ、人が来る! 走れ!」
赤毛「う、うん! ほら、坊主立って!」
坊主「ウウぅ…もう帰るぅ!!」
三つ編「いいから、急いで!」
ダッダッダッ…
水路 ボロの小舟
金髪「…………はぁー」
金髪「もう駄目かと思った」
赤毛「…ほんと」
坊主「うう…」エグッ
三つ編「ほら、もう泣かないで。男の子でしょ」
坊主「だってぇ…」エグッ
金髪「おい、布だけはちゃんとすっぽり被っとけよ。じゃないと、ここに居るのバレるからな」
赤毛「うん、そだね。ほら、坊主」
坊主「もう、帰りたいぃ…!」エグッ
三つ編「ここまで来て、何言ってるのよ」
ドタバタドタ
金髪「!」
金髪「しっ! 声出すな。たぶん、騎士だ。橋の上を通る」ヒソッ
「…どうだった?」
「どうやら、子供が数人で敷地に入り込んでいたみたいですね。住人が後ろ姿を見たそうです」
「ちっ。こんな時に、とんだ悪ガキが居たもんだ。今にも、魔王が来るかも分からんと言うのに」
「全くですね。保護しますか」
「本来はそれが我々の勤めだ。…だが。考えてもみろ。今さら子供のひとりやふたり助けた所で、どうなると言うんだ」
「…………魔王が来れば、全て滅ぼされてしまうかもしれない。そう言う、ことですよね」
「…。城下町の港町側に配置されてた連中は、命懸けの特攻をさせられるんだろう。我々はそうではない」
「…………」
「お前も…少し自分の心配をしてみろ。家族がいるんだろう? 教皇領まで逃げ延びればあるいは…」
「…そう、ですね」
ドタドタ…
赤毛(…)
坊主「…」グスッ
三つ編「…」
金髪「…」
金髪「なあ。…やめにするか?」
三つ編「え?」
金髪「帰っても、いいぜ。自分ちに、さ」
金髪「…オレが無理矢理ついて来させたようなもんだし。これ以上は…さ。ノリでいける感じじゃないだろ」
金髪「…いいよ。帰っても」
坊主「…」
三つ編「…」
赤毛「金髪は、行くつもりなの?」
金髪「…………オレは」
金髪「オレは、行く」
金髪「もう、コドモじゃないんだ。任せてられないんだ」
少年「子供に与えられる選択肢はいつだって多くなかった」
少年「精一杯虚勢を張って、大人の真似事をしようとしてみても、それは多くの人が許してくれなかった」
少年「危ないから、まだ早いから、あなたの為だから」
少年「大人も、叱る言い訳に必死だな…なんて思ったりもしたな」
少年「でも、その代わり子供はとても守られていた。安全で、安心なところに」
少年「大人は時々凄い力を誇示して、子供は所詮それに敵わないんだと思い知らされる」
少年「でもね…その大人が泣いてしまった時」
少年「どうしようもない不安な世界へ、放り込まれたような気がしてた」
赤毛「じゃ、あたしも行く」
金髪「んな…!」
金髪「…何でだよ。ウチに帰れば、ママが待ってんだろ?」
赤毛「呼び方、真似しないでよ。今帰ったら、ずっと金髪に馬鹿にされるもん。そんなのイヤ」
金髪「おまっ、分かってんのか!? そんな理由でなぁ…!」
赤毛「理由なんて、なんでもいいじゃん」
赤毛「誰かが困ってたら駆けつけること。それが秘密結社のルール」
赤毛「そうでしょ?」
金髪「っ…。か、勝手にしろ!」
赤毛「三つ編は、どうする?」
三つ編「――私は」
三つ編「私も、行くよ」
三つ編「集会所に行けば、お父さんのこと何か分かるかもしれないから」
金髪「そ、か」
赤毛「三つ編のパパって…兵士だったよね?」
三つ編「うん。まあ、教会の騎士様とは全然違うんだけどね。ずっとお城の警備をしてたから」
三つ編「でもこの間の出兵の時に、砦の防衛に行くんだ…て、城下町を出てったの」
赤毛「…そうだったんだ。あたし…知らなかった」
三つ編「隠してるつもりは無かったんだけどね。何か、どう言ったらいいか分からなかったから」
金髪「…」
三つ編「昨日あった、大きな地響きと…南の空に登った煙…。きっと、何かあったんだって思う」
三つ編「お母さんは、何も教えてくれないから。だから、私が聞きに行くんだ」
赤毛「…偉いね、三つ編は」
三つ編「ふふ。そうかな」
赤毛「うん。あたしは、そう思う」
三つ編「ありがと、赤毛」
金髪「…さて」
坊主「…」ズビ
赤毛「坊主、帰る? なら、三つ編の地図に帰り道を書いて、持って行って貰えば…」
三つ編「そうね。ここから集会所へは、この小舟で水路を下ればすぐだから、地図は必要ないもんね」
三つ編「えーっと、今いるのがこの辺りだから、坊主の家までは…」
坊主「…」ガサガサ
ドサッ…!
赤毛「…そうだったんだ。あたし…知らなかった」
三つ編「隠してるつもりは無かったんだけどね。何か、どう言ったらいいか分からなかったから」
金髪「…」
三つ編「昨日あった、大きな地響きと…南の空に登った煙…。きっと、何かあったんだって思う」
三つ編「お母さんは、何も教えてくれないから。だから、私が聞きに行くんだ」
赤毛「…偉いね、三つ編は」
三つ編「ふふ。そうかな」
赤毛「うん。あたしは、そう思う」
三つ編「ありがと、赤毛」
金髪「…さて」
坊主「…」ズビ
赤毛「坊主、帰る? なら、三つ編の地図に帰り道を書いて、持って行って貰えば…」
三つ編「そうね。ここから集会所へは、この小舟で水路を下ればすぐだから、地図は必要ないもんね」
三つ編「えーっと、今いるのがこの辺りだから、坊主の家までは…」
坊主「…」ガサガサ
ドサッ…!
金髪「!」
赤毛「どうしたの? ビックチョコレート出して」
坊主「…ぼ、僕は」
坊主「しょ、食料係だから…! みんなのビックチョコレートを管理する、大事な役目だから!」
坊主「…」ガソゴソ…パクッ
坊主「…」バリボリ
坊主「チョ、チョコレートで元気が出たから、もう平気なんだ!」
三つ編「…坊主」ポカーン
金髪「ぷっ」
金髪「あっはっは! 見栄っ張りだな、お前!」
赤毛「でも、そっか。坊主もパパの事、心配だよね。会いたいよね」
坊主「食料係だからだよっ! あ、赤毛がそう言ったんだ!」
赤毛「ハイハイ、分かったよ」クスクス
金髪「…じゃ、決まりだな。小舟、出すぜ」
三つ編「うん」
サラサラサラ…
赤毛「わあ…あはは! あたし、1度船に乗ってみたかったんだよね!」
金髪「…赤毛。お前、けっこう度胸あるよな」
赤毛「何で?」キョトン
金髪「何で…って、これから行くのは大人達ばっかりの集会所だぜ」
三つ編「ほんと。富豪さんの家でも、おっきな犬に平気だったし」
赤毛「んー。犬には慣れてたし…集会所には、パパも居るだろうしさ」
坊主「…あっ!」
金髪「どうした? 坊主」
坊主「僕、なんであの時、赤毛は居てくれるだけで安心って思ったのか、分かったよ!」
赤毛「ええっ? またその話ぃ? もう、恥ずかしいから止めてよ…」
坊主「ち、違うんだって! 僕、今朝赤毛の出てくる夢を見たんだ!」
金髪「!」
三つ編「!」
赤毛「えーっ!?」
坊主「魔王が、怖い獣を率いて城下町を進んでくるんだけどね、噴水広場の所で、赤毛が水の上に立って、光で魔王を照らすの!」
坊主「そしたら、魔王が急に苦しみ始めて…」
三つ編「連れている獣と、同士討ちを始める」
坊主「そう! …って、三つ編、何で分かったの?」
三つ編「私も見たわ。その夢」
赤毛「み、三つ編まで、何言ってるの!?」
三つ編「…女神様が、優しく赤毛を見守っていて、赤毛は温かい光に包まれていく」
坊主「えっ! い、一緒だ…。僕の見た夢と!」
金髪「………オレも」
金髪「オレも見たぞ。その夢」
坊主「エエッ!?」
三つ編「じゃ、じゃあ私たち三人とも、同時に赤毛の夢を見たってこと!?」
金髪「そ、そうみたいだな…」
赤毛「ちょ…ちょっと皆何言ってるの、もう! あたしのこと、からかってるでしょ!」
坊主「からかってなんてないよ! 本当に見たんだよ!」
金髪「しかも…お前らの話が本当なら、夢の内容まで同じだぜ」
三つ編「こんなことって、あるんだ…」
金髪「オレはてっきり、魔王を怖がってばかりいる自分が見た、妄想だと思ってたんだけど」
三つ編「私も…友達が魔王を倒してる姿なんて、変な夢だなあって思って」
赤毛(ど、どういう事…? 三人とも本当に同じ夢を見たの?)
赤毛(…夢…。夢…?)
赤毛(そう言えばあたしも今朝、変な夢を見たなぁ)
赤毛(見たこともないような、翼の生えた女の人が私を包んでくれて…すごく大きな力に身を委ねる夢)
赤毛(そう、この人はきっと女神様なんだ…って思ったんだ)
赤毛「――女神、様…?」
三つ編「どうかした? 赤毛」
赤毛「…う、ううん」
赤毛「何でもない…」
坊主「あっ、あれ! 集会所だよね!?」
金髪「おう、そうだな。降りる準備、しねーと」
三つ編「そうね」
赤毛「…」
金髪「? 何、難しい顔してんだ」
赤毛「あ、あはは。なんでもないよ、ほんと」
金髪「なんだか良く分からないけどさ、縁起が悪いってわけでもないだろ。むしろ良いくらいだ、きっと」
金髪「ご利益期待してるぜ」ナムー
赤毛「…人を地蔵みたいに拝まないでよ!」
金髪「へへっ。ほら、行くぜ」
赤毛「…うん!」
古びた教会(第三区町民集会所)
坊主「あ、相変わらずボロボロだなぁ。気味が悪いよぅ」
三つ編「でも何度か忍び込んでるし、坊主ももう平気でしょ」
坊主「そうだけど…神父さん怖いからなぁ…」
金髪「へっ。あんな偏屈ジジイ、大したことないぜ。それより問題は…」
赤毛「見張り。立ってるね」
金髪「うん。教会の騎士だな」
三つ編「…でも、それっておかしくない? 町の人たちは、女神教会に集会を開くのを禁じられてるのよ」
三つ編「なんで、あの騎士様たちは集会所の外を見張るようなことをしてるんだろう…」
赤毛「確かに。そもそも、集会所を開く場所が教会って言うのもヘンだよね」
金髪「ここで考えてたって分かんないだろ。とりあえず、いつも通り二階の部屋から忍び込むぜ」
坊主「う、うん!」
古びた教会 二階
坊主「よ、よいしょ!」スタッ
三つ編「大きい足音立てちゃダメよ。見つかったら、私たち大目玉どころじゃ済まないかも」
金髪「坊主、頼むから父さんや母さんを見つけても、大声で呼んだりするなよ。近づくのは、ちょっと我慢だ」
坊主「わ…分かった」
赤毛「町の人たちは、礼拝堂にいるみたいだね。丁度そこから見下ろせるよ」
三つ編「ほんとだ…神父さんに、町の人たち」
「…そんなことに、命を懸けるのか!」
赤毛(え…? この声)
金髪「お、おい…あれ」
金髪「赤毛の、父さんじゃねぇか?」
三つ編「…本当。皆の前に立って、何か話してるわ」
赤毛(………パパ?)
赤毛父「そんな事をして、何かが変えられる可能性があるのか!? 馬鹿げてる!」
神父「落ち着きなさい。見張りがいるとは言え、集会が見つけられては事だ」
赤毛父「落ち着け? これが落ち着いていられるものか! あんたらが言っているのは、体の良い生け贄を差し出して、自分達は逃げ出そうって話だ」
神父「そうは言っていない。しかし、例のことは紛れもない事実なのだ」
赤毛父「何が事実だ。魔王が攻めてくるって臆病風に吹かれて、妄想に逃げているだけじゃないか!」
赤毛父「これだけの大人が集まって、導き出した答えがそれなのか!?」
区長「…妄想。もはや、これは妄想の域を越えた話ではないですか?」
赤毛父「何?」
区長「相手は、魔王だ。私たちの理解を遥かに越えた存在。それを相手にする時…私たちの常識の範疇で事を起こしても、それが通用するとは思えない」
区長「そして、常軌を逸した事態が…昨晩、多くの人々の上に同時に降りかかった。このような時には、それこそ女神様のような存在にしか、すがるものがない」
金髪「…おい。何の話をしてるんだ?」
三つ編「分からない…」
坊主「………」
赤毛(…あれは…本当にパパ?)
赤毛(あの優しいパパが、あんな風に怒鳴るなんて…見たこと、ない)
赤毛(なんだろう………)
赤毛(怖い)ドクン…
坊主父「でも、皆さんにも、子供を持つ方は居るでしょう?」
坊主父「自分の子供がそうであったら、同じことが言えますか? 私は…正直ホッとしている。私の息子がそうでなくて良かった…と」
坊主父「自分の子供を、魔王と戦わせるなんて…そんな酷いことを受け入れられる親が、何処にいますか?」
坊主「父ちゃ…!」
金髪「こらこら」ガシッ
坊主「モガモガッ」
三つ編「あ、危なかったね」
金髪「やると思ったぜ。ったく、あれだけ言ったのによ」
坊主「…」
赤毛「………」ドクン…ドクン…
赤毛(ねえ)ドクン…ドクン…
赤毛(何の話を、しているの?)ドクン…ドクン…
坊主父「うちの倅もあなたのウチのお嬢さんとずいぶん仲良くしてもらってる。気持ちは…私も分かるつもりだ」
赤毛父「………」
区長「確かに、これだけの大人が集まって決めたことが"たった一人の少女に命運をかける"…などと言う答えなのは、情けないことかもしれない」
区長「しかし…その子供が、他の数千、数万の子供を救うかもしれないのです」
区長「分かって下さらぬか」
赤毛父「…娘が役目を果たせる確証は何処にもない…!」
区長「確証がない…と言うのであれば、勇者様とて同じです。女神の加護、というひどく曖昧なものに人類は依存している」
区長「そして…今確認出来ただけでもここに集まったすべての町民が、女神の信託にも似たものを見た」
区長「赤髪の少女が、噴水広場で魔王を討つという夢を」
赤毛「――!!」ドクン…!
三つ編「!」
金髪「な、なんだよ、それ」
坊主「ぼ、ボクたちが見た夢を…皆が見ていたってこと?」
三つ編「町の人みんなが、赤毛の夢を!?」
金髪「…どーなってんだよ」
赤毛「………」
赤毛父「…ああ、見たさ。その夢なら私だって見た」
赤毛父「娘が…教会の僧侶の出で立ちで、水の上を舞っていた。美しい女神を頭上に従えて」
赤毛父「親の欲目で見た、馬鹿げた夢だと思った。だってそうだろう、まだ目覚めぬ娘の様子を一目見ようと部屋に行ったら」
赤毛父「そこには、普段と変わらないあどけない寝顔があっただけだ。巫女だとか、軌跡の僧侶とか、そんなものとはまるで縁の無い――」
赤毛父「愛しい娘の寝顔だけがあったんだ」
赤毛父「それが、私の全てだ。奇跡も何もない、ただの優しい娘でいてくれれば、それだけでいいんだ」
赤毛父「夢を再現するために………娘を魔王と戦わせる? 噴水広場に、ひとり置き去りにして? そんな事が、出来るものか」
赤毛父「なあ、俺はまだ夢を見てるんだろう? もう沢山だ…! 目を覚ましてくれよ…!」
坊主父「赤毛さん…」
赤毛父「王国軍ですら、全滅したんだぞ!!」
赤毛父「あの爆発で、砦ごと吹き飛んだんだ!! そんな恐ろしいモノと子供を戦わせるなんて…正気の沙汰じゃあないっ!!」
金髪「!」
三つ編(王国軍が…全滅?)
三つ編(砦ごと、吹き飛んだ…)
三つ編(それっ…て………)
金髪「…」ギュ…
三つ編「…金、髪…」
バタン!
十字聖騎士「し、神父殿!」
神父「どうした!?」
十字聖騎士「教皇様の名義で、御触れが出ました…!」
十字聖騎士「"赤髪の娘を噴水広場へ連れてくるべし"」
十字聖騎士「""彼の者は、人々の救いの僧侶なり"…!!」
赤毛(――これは、なに?)
赤毛(いま、一体なにが起こっているの?)
赤毛(分からない…分からないよ)
ザワッ…
「きょ、教皇様が!?」
「…やはり、王国中の人々があの夢を見ていたんだ!」
「た、助かるのか? あの少女がいれば、助かるのか!?」
神父「そうか…」
区長「神父さん。これで迷う必要も無くなった」
区長「あなたは、女神教会の人でありながら私たちに場所を提供してくださった。人々にも選ぶ権利があると…」
区長「そうした結果、件の少女が誰なのか…今どうしているのか。それすら知ることが出来ている」
区長「私たちは、自分達で決断し、それを選ぶ」
神父「…」
赤毛父「馬鹿な…本当に娘が…」ヨロ
区長「これで、ご理解頂けますね」
区長「私たちは、あなたの家に向かいます。ついてきて、頂けますな」
赤毛父「…」ブンブン
区長「さあ。我儘は終わりにして下さい。私たちに、手荒な真似をさせんでくれ」ガシッ
赤毛父「…っ!」
坊主父「ダメだ!!」
坊主父「こんな事を子供にさせるのは間違っている!」グイッ
区長「何を…!?」
坊主父「逃げろ、赤毛さん!」
赤毛父「…!」
坊主父「女房と子供を連れて、早く!!」
坊主父「こんなことは、ただの殺戮だ!!」
区長「あなたまで何を言うのか! 同情もそこまでにしなさい!」
坊主父「大人たちの責任を子供に押し付けるな!!」
坊主父「ならば、我々だって武器を持って立ち上がるべきなんだっ!! 」
赤毛父「坊主さん…」
坊主父「行け!!」
赤毛父「…っ!」ダッ
区長「い、いい加減になさい! 人が滅びるか否かと言う時に!」
「そ、そうだ! 邪魔すんなよ!」
「赤毛の一家を、の、逃すな!」
「どけっ!」
バキッ!
坊主父「うがっ!」ドタ…!
坊主「――っ!!」
坊主「父ちゃんッ!!」
金髪(しまった――!)
赤毛(――ああ。大人たちが皆、こっちを見上げる)
赤毛(たくさんの顔が、あたしを見る)
「な、なんだ…? 今子供の声が…」
「どうしてこんな所に子供が…!?」
坊主父「…お、お前たち」
赤毛父「!!」
赤毛「パパ…」
「おい、アレ…」
「…そうだよな!? 夢に見たんだ、見間違いようがねぇ!」
区長「…!」
区長「赤髪の少女はあそこにいる!!」
区長「捕まえるんだ!! 保護するんだ!!」
ザワッ…!
「に、二階だぞ! 階段はどこだ!?」
「あそこだ! 急げ!」
少年「泣かないで」
少年「君は物語を紡ぐひと」
少年「君が泣いたら、皆が悲しむよ」
少年「忘れないで」
少年「友達のこと。その時の輝き」
少年「優しい思い出を」
赤毛(何人かの大人たちが、階段を登ってくる)
赤毛(下の大人たちは、みんな驚いた顔でこっちを見てる)
赤毛(どうすればいいの? どう、すれば…)
赤毛「…パパ」
金髪「保護…?」
金髪(違う。これはそんなんじゃない)
金髪(誰ひとり、そんな目でオレたちを見ちゃいない)
金髪(そう、だから)
金髪(オレがすべきことは)
赤毛父「――逃げろォっ!!」
赤毛「っ」ビクッ
金髪「…」ガシ
赤毛「! …金髪」
金髪「逃げるぞ、赤毛!!」
赤毛「で、でも…」
金髪「いいから走れっ!! 今すぐ!!」
赤毛「…う」
赤毛「うんっ」ダッ
三つ編「…」
金髪「三つ編、一緒に逃げるぞ!」
三つ編「…うん」
三つ編「でも、坊主は」
金髪「…っ」
坊主「父ちゃあんっ!!」
金髪「………ダメだ。一緒に行けない」
金髪「ここに残った方が、アイツは良いんだ」
三つ編「…っ!」
金髪「急げ!」
三つ編「分かった…!」
ダッ
「お、おい逃げたぞ!」
「追いかけろっ! 逃がすな!」
金髪「この、ついてくんな!」ドカッ
ガタガタガタ!
「う、うわあ! 木材が倒れてきた!」
「この餓鬼め!!」
「しかし、上に登っても逃げ道はないぞ! 追い詰めろ!」
金髪(へっ、甘く見んなよ!)
金髪「赤毛ぇっ! "いつもの逃げ道"で逃げるぞ!」
赤毛「! う、うんっ」
赤毛("いつもの逃げ道"…。教会の屋根の上)
赤毛(煙突の所に掛けてある梯子を、となりの民家の屋根にかけて、逃げる!)
赤毛「はあ、はあ」ガタタ…!
赤毛(いいんだ、これで。多分、きっと)
赤毛(パパが逃げろって、言ったんだから…!)
金髪「おし、赤毛は渡ったな」
赤毛「二人とも、早く!」
三つ編「…っ」ビクッ
三つ編「さ、先に行って。金髪。わ、私時間かかっちゃうよ…」
金髪「ダメだ。お前が先に行け、三つ編」
金髪「お前が高いところ駄目なのは知ってる。でも、頑張れ」
三つ編「でも、私…」
金髪「頼む。三つ編 」ギュ
三つ編「!」
金髪「お前が赤毛を守るんだ。お前にしか頼めない」
三つ編「………わ、分かった」
金髪「ありがとな」ニッ
三つ編(し、しっかりしろ私)ヨロ…
三つ編(そうだ、私が皆の分もしっかりしないと)ヨロヨロ…
赤毛「頑張って、後少し!」
三つ編(赤毛を守らないと…!)グッ
パシッ
赤毛(手が掴めた…!)グイッ
三つ編「はっ、はっ…」スタッ
三つ編「渡れ、た…」
赤毛「金髪も、急いで!」
金髪「よっと」ガコ…
パタン…!
赤毛「!? な、何してるの、金髪!」
赤毛(は、梯子を下に落としちゃった…!)
三つ編「金髪…?」
金髪「これでよし。ほら、行けよ! 猛ダッシュ!」
赤毛「金髪はどうするの!?」
金髪「オレはちょっと時間稼いでいく! ナメくさった大人たちに、目にモノ見せてやるぜ!」
三つ編「何言ってるのよ! 無理よ、そんなの!!」
金髪「つったって、もう梯子は落ちちまったしな。こうするしかないだろ!」
「あそこだ! 屋根に登ってるぞ!」
金髪(ああ、くそ)
金髪(声が震える。足も)
金髪「秘密基地で会おうぜ! ほら、アイツら来ちまう! 早く行けって!」
赤毛「…っ!」
三つ編「――必ず」
三つ編「必ず来てよね!!」
金髪「おう、任せとけって!」
三つ編「きっとだからね!!」ダッ
赤毛「三つ編…」
三つ編「急いで、赤毛! 逃げよう!!」グイ
赤毛「…!」
赤毛(き、金髪が…)
「この餓鬼、なんてことしやがる!」
「巫女様が、もうあんな遠くへ…!」
金髪「うるせぇ!!」
金髪「あいつは巫女様なんかじゃねえ!! 赤毛っていう、な…!」
金髪「オレの友達なんだよッ!!」
「黙れ、こいつ…!」
バキッ
金髪「うぐっ…!? 何すんだ!」
金髪「クソォっ!!」
赤毛(金髪――!!)
三つ編「………っ!!」ギュウ…!
タッタッタッ…
――
――――
――――――
秘密基地
赤毛「………」
三つ編「………」
赤毛(…)
赤毛(まだ、胸がどきどきしてる)
――「捕まえろ!」「そっちだ、追い詰めろ!」「逃がすなっ!」
赤毛(………)
赤毛(あの人たちの顔が、頭から離れない)
赤毛(いつも、学校に行く途中すれ違うおじさん。友達の家のおばさん)
赤毛(まるで知らない人みたいな顔をしてた。あたしのこと、いつもと全く違う目で見てた)
赤毛(………金髪…)
――赤毛「秘密結社?」
――金髪「おう、そうだ! 今日からオレたちは秘密結社の仲間っ!」
――坊主「うおーっ、カッケー!」
――三つ編「えぇ…なんか、可愛くないよね?」
――赤毛「そうだねー、金髪らしいけど」クスクス
――金髪「秘密結社の仲間は、ずっと一緒だ! 学校を卒業しても、大人になっても、ずっと!」
――赤毛「ずっと一緒?」
――坊主「いいなあ、それ!」
――三つ編「…私、ずっと一緒にはいれないと思うよ。みんな、おうちの仕事も違うし」
――三つ編「大人になったら、会えなくなっていくんだよ」
――坊主「そおなの!?」
――金髪「バカだなぁ、三つ編は!」
――金髪「大事なのは、仲間ってことだ。毎日一緒にいれなくなっても、仲間でいるって覚えてれば」
――金髪「いつか、会うための力になるんだよ!」
赤毛(金髪のバカ)
赤毛(ずっと一緒だって、言ったのに)
赤毛(………金髪も坊主も、なんで一緒に来てくれなかったの)
赤毛(………)
三つ編「…来ないね、金髪」
赤毛「…うん」グス
三つ編「ずっと一緒だって、言ったのにね」
赤毛「…そうだね」
三つ編「お父さんも言ったんだ。お前を置いてどこかに行ったりしないよって」
三つ編「なのに、みんな嘘つき」
三つ編「嫌いよ、皆…」
三つ編「嫌い…大嫌い」ポロ…
赤毛「三つ編」
三つ編「うっ…うぅ…!」ポロポロ…
赤毛(………パパ。ママ)
赤毛「う…っ」ジワ
三つ編「うわああぁん…!」
赤毛「ううぅうっ…!」ポロ…ポロ…
赤毛「えぐっ…ふぐっ…」
三つ編「…、あの、ね」
三つ編「この間の、雨の日にね」
赤毛「…?」グスッ…
三つ編「私、ひとりでここに来てたんだ。お父さんのことで…辛そうなお母さんを、見てられなくて」
三つ編「そしたらね、偶然、金髪も来てね。私、泣いちゃってたから。すぐにバレちゃって、色々話したんだ」
赤毛「…そうだったんだ」
三つ編「金髪もね。お母さん、亡くなってるんだよ」
赤毛「えっ…」
三つ編「知らなかったよね。金髪、居なくなったとしか言わなかったから」
三つ編「坊主はもしかしたら知っていたのかな、お父さんも同じ仕事だし。でも、金髪が言わないで欲しいってお父さんに話してたかもしれない」
三つ編「…魔物に食べられちゃったんだって。お母さん」
赤毛「…!!」
――金髪「魔族は、ハラ減ってなくても人間食うからな」
――金髪「ああ。あいつらは俺たちに脅かして恐がらせるために食うんだ」
赤毛(あれは…怖がらせようと思って言ったんじゃ、なかったんだ)
三つ編「つらいよな、て言って、背中さすってくれてた」
三つ編「俺が一緒に居てやる、て。そう言ったのに」
三つ編「なのに…」
赤毛「………」
三つ編「城下町まで伝わった、あの地響き。砦がやられたんじゃないかって、みんな話してた。だからね、本当は…」
三つ編「本当は、分かってた。お父さん、死んじゃったんだって」
赤毛「三つ編…」
三つ編「ゴメンね。赤毛だって辛いのに、私の話ばっかり…」
赤毛「ううん」
赤毛「あたしは…」
赤毛(――あたしは、自分が何をどう感じればいいのか…それも分からない)
赤毛(逃げてきて本当に良かったの? パパは? ママは? 金髪と坊主はどうなったの?)
赤毛(あたしは、どうすればいいの…)
ガタッ…
赤毛「!」ビクッ
三つ編「…金髪?」
赤毛「そ、そうかな? 帰ってきたのかな!?」
三つ編「そうかも…!」
ガラ…
ヌッ
三つ編「っ!」
赤毛(ち、違う。逆光で見えないけど、子供の背丈じゃない…!)
赤毛「だ、誰…!?」
??「やっぱりここでしたか。あの時、秘密基地でまた…なんて金髪くんが言っていましたからね」
赤毛(この声…!)
赤毛「…先生!?」
先生「ええ、はい。先生ですよ。探しました、二人とも」
三つ編「だ、ダメよ、赤毛!」グイ
赤毛「えっ…?」
三つ編「先生…! 何しに来たんですか!?」
三つ編「赤毛を、連れていきに来たんですかっ!?」
赤毛「っ! …先、生?」
先生「…ふう」
三つ編「答えてください、先生っ!」
先生「…三つ編さん。ありがとう」
先生「あなたは、とても強い気持ちで赤毛さんを守ろうとしていたのですね。周りの大人を、誰も信用しない覚悟で」
三つ編「…!」
先生「この状況では、そうする事が正しいと言わざるを得ないのが、なんとも悲しい所です。あなたはやっぱり利口な子だ。ですが」
先生「安心して下さい。先生は、純粋にあなたたちが心配で来ました。中に入れてください、他の人たちに見つかってしまいます」
赤毛「先生…!」
少年「大人はいつだって難しい話をしてるみたいだった」
少年「新聞を読んで、誰かの噂話をして」
少年「たまにお酒を飲んで、それだけでとても楽しそうにしたりして」
少年「楽しみはこれだけだー…て。そんなにつまらないなら、大人になんかなりたくないって思った」
少年「でも」
少年「大人も、不安だったんだよね」
少年「"これで大人になった"なんて称号を貰うことはないし…もしかしたら、貰ったのかもしれないけれど、"これが大人ってことなのかな?"ってずっと、不安だったんだよね」
少年「子供たちが、"これが好きってことなのかな?"って不安に思うみたいに」
少年「ようやく大人になったと思っていたある日、子供に大人なんて嫌い! って言われて」
少年「ふと、幼い頃の自分が胸をつきんと刺す…」
少年「…どうやら、大人も、大変そうだね」
先生「全く…以前からここには立ち寄らないようにと、あれほど言っているのに。秘密基地なんて名付けたりして」
三つ編「先生…知ってたんですか? ここに私たちが集まってるって」
先生「確証はありませんでしたが。優等生のあなたが、ずいぶん上手く振る舞うものですから」
三つ編「うっ…」
先生「しかし、何か最近ずいぶんと楽しげに放課後を過ごしている様子なのは知っていましたし、ここはあなたたちの家も近い」
先生「あの時の金髪くんのひと声で、もしやと思いましてね」
赤毛「せ、先生もあの場所に居たの!?」
先生「ええ。先生は、先生ですから。大事な大人の集会にはもちろん居ますよ」
三つ編「先生、金髪は!? 金髪はどうなったの!?」
先生「安心して下さい。ちゃんと保護されています」
先生「まあ、危うい所ではありましたが。一部の町民が暴徒化して、奇跡の僧侶を逃がした罪人だなんだと叫んで――」
赤毛「っ…!」
先生「…すみません、不安にさせるような事を言ってしまいましたね。とにかく、学校の先生方を中心に、金髪くんは保護して、安全な場所にいます」
先生「坊主くんは、親御さんのところへ戻っています。集会所は緊張状態にありますが…」
先生「あなたがここにいる以上は、こじれないはずです」
三つ編「金髪…坊主も。良かった」
赤毛(………なんでだろう。聞きたいのに、言葉がでない)
先生「………」
先生「赤毛さん。よく聞いてください」
先生「赤毛さんのお父さんは、教会の騎士に連れていかれました」
赤毛「………」
先生「でもね、平気です。先生、教会の騎士はご両親にひどいことはしないと思います。ただ、あなたの捜索の協力は求められるはずです」
赤毛「………」
先生「ご両親は、この場所の事は?」
赤毛「…知らないと、思う。あたし、誰にも話していないから」
三つ編「私たち、お父さんやお母さんには知られないように集まってたんです。私たち以外は、誰も知らないと思います」
先生「そうですか。不幸中の幸いですねぇ」
先生「つまりはここにいる以上は、安全という事になりますね」
三つ編「………」
赤毛「…先生」
先生「はい?」
赤毛「これから、どうすればいいんですか…?」
先生「どうとでもなるでしょう」
赤毛「………え?」
先生「どうとでもなりますよ。先生に任せておいて下さい。助けてあげますから」
先生「先生は、先生ですからね」
先生「勿論、三つ編さんもね」
三つ編「…はい」
先生「しばらくはウチに帰らない方が良いでしょう。あなたが赤毛さんと逃げていること、三区の人々には直に知れ渡るでしょうし」
先生「………こんなことを、二人に話すのは変かもしれませんけど。先生はね、子供が好きで先生になったんです」
赤毛「…?」
先生「子供には沢山の未来がある。その可能性の塊みたいな君たちと触れ合うことが、先生のエネルギーになるんです」
先生「そんな子供の未来を奪うようなことは、先生絶対させません」
赤毛「先生…」
先生「夢は、私も見ましたよ。赤毛さんがとても立派に輝く夢をね」
赤毛「!」
先生「でもね、先生にはちょっと違和感がありました。赤毛さんは、いずれとっても素敵な女性になるのかもしれないけれど」
先生「今のままの赤毛さんが、あんな風に人々の前に立って導く姿は、何かおかしい」
先生「もしかしたらね、赤毛さんにはそんな使命があるのかもしれません。でも、女神様がやれと言っても、赤毛さんが"やります"と言わなきゃならないなんてことは、絶対にないんです」
先生「逃げちゃっても、いいんですよ」
赤毛「………」
「全く、無責任なことをぺらぺらと子供に吹き込むな、あんたは」ガタ…
神父「それが聖職者のすることかね?」
三つ編「!!」
赤毛(教会の、神父さん…!)
先生「…なぜ、ここが分かったんですか?」
神父「そこの悪ガキに、どれだけこっちが被害を受けていると思っている。ねぐらくらい、私だって押さえておくよ」
神父「しかし時計台の中とはな。大したものだよ、全く。あんたの教育の賜物だな」
先生「悪戯も子供の仕事ですよ。それに、あなたは一度もこの子たちの事を届け出ていない」
先生「文句など言いつつも、好きにさせていたんではないですか?」
神父「馬鹿を言うんじゃないよ。私がどうして悪ガキの肩を持たねばいかんのだ。私は子供が嫌いなんだよ」
先生「そうですか。それでは」
先生「この子を連れていくつもりですか?」
赤毛「…!」ビク…
神父「………」ハア
神父「どうにも、不自然なことが多すぎる」
先生「え?」
神父「私が何年、教典を読み返していると思う?」
神父「五十年以上だ。物心ついた時にはもう教典を手にしていた。女神様のもたらした啓示の内容も、記述のあるものはほぼ全て暗記している」
神父「その私が言うんだ。今回のことは何かがおかしい」
先生「昨夜の、夢のことですか?」
神父「そうだ。女神様は、勇者には啓示を与えるが、それ以外の者には姿を現したことはないはずだ」
神父「教会にも、聖女と呼ばれる超常の力をもった女性がいるが…かつて一度話を聞いた時には、それは生まれもったもので、啓示を受けて手にしたものではないと言っていた」
先生「つまり…今回の件は今までに例を見ない事態だと?」
神父「…人間が魔王に追い詰められたことは、これまで幾度もあった。人々の文化は破壊され、搾取されたが」
神父「それを覆してきたのはいつだって勇者だった。ただの町娘が救いの巫女などと、ありえんことだ。ましてや、こんな悪ガキが」
赤毛「…」ムッ
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