私的良スレ書庫
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元スレ国王「さあ勇者よ!いざ、旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」
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炎獣「…こんなもんかな」
雷帝「…」
氷姫「こんな…人間の土地で、木々もないところに墓なんて、さ」
氷姫「酷いもんだよね…」
氷姫「ごめんね…ジーさん」
炎獣「…」
魔王「………」
魔王「全て、終わったら」
魔王「きちんと、埋葬しましょう。木竜が治めていた森に」
炎獣「…そーだな」
魔王「今は」
魔王「進まなきゃ」
氷姫「…うん」
雷帝「…」
雷帝「翁の治癒魔法と翼を失った私たちは」
雷帝「地上からの行軍で、最小限のダメージに抑えつつ、勇者の元を目指す必要があります」
雷帝「炎獣は片腕を失い、致命的とも言える弾丸の傷を首筋に受けている」
雷帝「氷姫は、究極氷魔法で魔力を使い果たしており…それも翁がいない今となっては、時間経過による回復を待つ他ない」
雷帝「私は…魔剣を失い、その呪いも完全には浄化出来ていない」
雷帝「それでも、我々四天王の力で魔王様をお守りし、王城を突破しなければならない」
炎獣「…」
氷姫「…」
魔王「城下町か…あるいは、王城でなのか…。彼は再び私たちに牙を向いてくるでしょう」
魔王「加えて、勇者。この二人を、残りの力を振り絞って倒さなきゃならない」
魔王「私も皆と一緒に、前線に立つ。ただ…」
魔王「…」ギュウ
氷姫「魔王…?」
雷帝(魔王様…)
炎獣「…魔王の力は、近接戦向きじゃない。これから城下町に入っていくのだとして…もし人間がゲリラ戦を挑んでくることがあれば、力も使いづらいだろ?」
炎獣「細々としたのは、俺たちで蹴散らすぜ。それでいいよな、雷帝」
雷帝「…ああ、そうだな」
魔王「…」
魔王「うん。分かった」
炎獣「さあ、行こうぜ」
炎獣「悲しくても、進まなきゃ」
魔王「炎獣…」
雷帝「…ああ」
氷姫「………」
氷姫「アンタに言われるまでもないわよ」
氷姫「偉そうに言ってんじゃないわよ、このチビ! トンチキ! スンタラズ!」
炎獣「ぇえっ!? ここでそれを言うかぁ…」
氷姫「ふふ。さ、魔王!」ス…
魔王「…うん!」
ギュ…
魔王「行きましょう!」
雷帝(さあ、いよいよ王国の懐だ)
雷帝(ここまで来て、我らに何を見せるつもりだ…)
雷帝(人間)
教皇領
僧侶「………」
僧侶「戦士、さん…」
僧侶「逝って、しまったのね」
僧侶(盗賊さんも、商人さんも、武闘家さんも。そして…)
僧侶(戦場に立った、沢山の人々も…)
僧侶(――もはや人類は滅び去ろうとしている。希望を託す存在があるとすれば、それは…)
僧侶(勇者)
僧侶「…なんとか、ここを脱出しなければ」
僧侶「勇者様に、会わなければ…」
ガタガタ…ゴトンッ
僧侶「!?」
僧侶「誰…?」
???「僧侶殿…ですね?」
僧侶(女性の声…)
???「私は女王陛下の使いの者。いまお助けします」
僧侶「女王陛下の…」
ガチャン…!
くノ一「お待たせしました。さあ、十字聖騎士に気付かれぬうちに、脱出しましょう」
僧侶「…!」
僧侶「私を何処へ連れていくつもりなの?」
くノ一「勇者様のところへ」
くノ一「かつて、貴女は女神の啓示を受け、聖女として勇者一行として認められたことがおありのはずです」
僧侶「…魔王に抗う手段のために…ということね」
くノ一「はい。確認できる勇者一行は、もはや貴女1人だけなのです」
僧侶「分かりました。行きましょう」
僧侶(何が出来るか、分からないけれど…それでも、少しずつでも前進できるのなら)
僧侶(この身は惜しくない)
くノ一「さ、こちらへ」
くノ一「我々の手の者が馬車を用意しています」
僧侶「はい」
僧侶「でも…女神教会の人間である私を、王家に仕えるあなたが信用してくれるの?」
くノ一「…ええ」
くノ一「貴女はあの日…建国の儀式の時、我らと共に教皇を倒そうとして下さいました」
くノ一「結果は、どうあれ」
僧侶「そう。あなたもあの時…」
くノ一「…」
くノ一「戦士殿から、よくお話を伺っておりました。僧侶殿は、聖女の名に相応しい高潔で強い心を持った方だと」
僧侶「戦士さんが…」
僧侶「…聖女なんて、名ばかりよ。私は、多くを救うために誰かが犠牲になることを、厭わない」
僧侶「あの日だって、この超常の力を策謀のために利用してみた」
くノ一「円卓の席で見せた術ですね。両陛下すら、操られるままであったとか」
僧侶「操ってなどいないわ。私に出来るのは、せいぜい任意の方向へ気を反らすことくらい。それに念話を織り混ぜて、まるで暗示をかけたように装った」
僧侶「女神様に授かった力であるはずなのにね…必要だと思えば、人を騙すことにも使う。私は、そんな女」
僧侶「聖女なんて…おこがましいわ」
くノ一「教会の者たちは、こちらの意思に関係なく身体の動きを止めてみせたり、人格を乗っ取って自在に動かしたりしてみせていました」
くノ一「女神から力を授かった貴女の力よりも…教皇の"作り出した神秘"の念力のほうが、強力だと、いうことですか?」
僧侶「ええ。表面的な能力で言えば、私の力より教会のそれのほうが遥かに強力よ」
くノ一「…」
僧侶「矛盾してる、わよね。何故、純粋な祈りよりも、強い力を彼らが…」
僧侶「………女神様に祈り続けてきた私は、あの教皇様の力の前に成す術はなかった…」
くノ一「………希望は」
くノ一「希望は、あります」
僧侶「え?」
くノ一「全てを覆せるかもしれないものを、私たちは掴んでいます」
僧侶「…魔王を、倒せる…ということ?」
くノ一「………おそらく、それすら可能です」
僧侶「それって…一体…」
くノ一「詳しい話は、王城に向かいながらお話しします。まずは教皇領から脱出を」
くノ一「そこの裏手に、馬車が止まっています。とにかく今は勇者様と合流して…」
くノ一「――!」
僧侶「…どうしたの?」
くノ一「…おかしい。部下の気配がしない」
くノ一(まさか)
大僧正「やっと来ましたかぁ。待ちくたびれましたよぉ」
僧侶(! だいそうじょ--)
くノ一「僧侶殿!! 走れ!!」
僧侶「っ! はいっ」ダッ
大僧正「はぁあぁ…やれやれぇ。逃がしませんよぉ、私は…」
くノ一「つッ!!」ビュッ
大僧正「あれぇ、けっこう速いですn
ドスッ!
くノ一(心臓を捉えた)ズブ…
大僧正「おお、痛い痛いぃ…」
くノ一「!?」
大僧正「それはぁ、痛いに決まってるじゃないですかぁ」ガシ…
くノ一「うがッ…!」
大僧正「心臓なんて刺すんですからぁ…」
ミシミシ…
くノ一(馬鹿な…何故…!!)
僧侶「くノ一さん!!」
大僧正「くへへェ…さあ、あなたのばん」ォオォオ
僧侶「術を…!」
僧侶(…く! もう、破れてなるものかっ!!)
僧侶「はぁっ!!」コォオォオ
大僧正「あれっ! ああ、あっれっ」
大僧正「おかしぃ、おかしいぞぉ、なんでだぁ、なんで捕らえられないんだぁ!?」
大僧正「すごくぅ、強くなったはずなのにぃ…大変だぁ、もしまた失敗したら…」
大僧正「…」ピタッ
大僧正「失敗は許されない」
大僧正「失敗は許されない失敗は許されない失敗は許されない失敗は許されない」ォオォオ
くノ一(な…なんだ、こいつ…!!)
僧侶「うぐっ…!!」
僧侶(なんていう強大な力!! あの時の教皇様のもののよう…!!)
「ふむ。…足止めくらいの役は果たせるか」
教皇「急拵えにしては機能したほうと言える」
僧侶「!! きょ、教皇…」
大僧正「ヒィッ! きょ、きょうこうサマ…!!」
教皇「何度も私を手間取らせるでない。愚図が…」ス…
ドンッ!!
僧侶「げふッ…!?」
僧侶(何…!? この波動!! あ…頭が破裂する!!)
僧侶「ぐ………!」ドサッ…
くノ一(僧侶殿!!)
くノ一「教、皇…貴様…!!」
教皇「王家の犬か…。またしても我らの研究施設に入り込むとは。よくあの警戒網を潜り抜けたものだ。全く、盗人猛々しい」
教皇「私がわざわざ足を運んだのだ。吐いて貰わなくてはいかんな」
教皇「"アレ"を何処へやった?」
くノ一「………」
教皇「まあ、言わぬか。ならば言わせるまでのこと…」ォオオ
くノ一(不味、い…!!)
僧侶「…」ボソ
教皇「…ん?」
--バシュゥウウッ!!
大僧正「ヒッ!!」
くノ一(なんだ…!? 僧侶殿の身体光って…!!)
くノ一(か、身体が軽く…なっていく)
ドヒュンッ!!
大僧正「わ、わぁ!」
大僧正「アイツの身体が、消えた!!」
教皇「転移…だと!?」
教皇(馬鹿な…たかが聖女ごときにそのような能力は…!)
教皇「………僧侶自身も消えている。が」
教皇(この肉の焼けたような匂い。地面についた焦げあと)
教皇(蒸発したのか。転移を使う代償に?)
教皇「…全く、大した聖女だ。王家の犬を生かすために、躊躇なく死を選んだ」
大僧正「きょ、きょうこうサマぁ…わ、わわ、わたしのせいじゃ、ないんですぅ…」
教皇「黙っていろ」
大僧正「は、はひっ…」
教皇「これは、どういうことだ」
教皇「勇者一行の人物が、自ら命をかなぐり捨てたぞ」
教皇「お前は、何か知っているな?」
魔法使い「さあて、ね」
魔法使い「僕は何も知りませんよ」
魔法使い「ですが、強いて言うとしたら…」
魔法使い「運命がズレてきている…という所ですかね」
教皇「…」
教皇「魔王を倒していないのか?」
魔法使い「ええ。ムリでした」
魔法使い「いやぁ、怖いのなんのって」
教皇「ふざけるな」
教皇「魔王は戦士との闘いの際、お前の手にかかって死ぬ。そして残存の四天王を、勇者、僧侶と魔法使いが倒す」
教皇「それが"啓示"だったはずだ」
魔法使い「死んだのは木竜です。そして、それと同時にこちらの陣営の僧侶さんも」
魔法使い「色々と、ねじ曲がってきていますねぇ。もしかしたら、関与してきているのかもしれませんよ?」
魔法使い「女神が、ね」
教皇「………それは、"どっちの"だ?」
魔法使い「さあ? しかし、聖女が命と引き換えにたった一度きりの転移を使う…なんてことが起こったことを考えると…」
教皇「………」
魔法使い「さて。我々がこれからどうするのか、それを考えねばなりませんね?」
教皇「言われるまでもなく、考えている」
魔法使い「何か、策がお有りなんですか?」
教皇「…僧侶を使って、魔王を倒す」
魔法使い「いま、お亡くなりになってしまった様ですが?」
教皇「ふん。私を幾度も欺こうとした女だ。必要ない」
教皇「代わりを作ればいい」
教皇「女神の奇跡など…いくらでも作り出せるのだから」
今回はここまでです
文字化け、寝落ちなどグダグダ投下すみません
文字化け、寝落ちなどグダグダ投下すみません
キャラクター頼みのssが多い昨今で展開で魅せているのはすごいわ
キャラクターも立ってるじゃん
商人様は最近のssで俺のお尻を踏んでほしいランキング一位です
商人様は最近のssで俺のお尻を踏んでほしいランキング一位です
城下町
大通り
ヒュゥウゥウ…
少年「………」
少年「誰もいない。いなくなってしまった」
少年「かつて、お客を呼ぶ声で通りを賑わせた商売人たちはいなくなって」
少年「歓声をあげて駆け抜けた子供たちの姿も見えない」
少年「分厚い雲の覆う昼間の城下町。でも、その姿はまるで眠ってしまったかのよう」
少年「…あれ? でも、微かだけれど、聞こえるな」
少年「悲しみに包まれたしまったこの街に、不釣り合いな明るい声」
少年「不安と期待がないまぜになったかのような、少しかん高い、子供たちの声」
少年「…ふふ。大人が叱るような冒険って、どうしてこんなにワクワクするんだろうね?」
少年「さあ、早くお姫様を起こしてあげなきゃ」
少年「彼女はまだ、夢の中。不思議な気持ちの、夢の中」
少年「見たことあるような、始めてみるような」
少年「そんな世界の中にいる」
『救いの巫女は、現出します』
『祈るのです。その少女に』
『人々の希望の僧侶は、突如として舞い降りて』
『水の上に佇み、魔王と相対するでしょう』
『祈るのです…』
――「…この子たちが生き延びれば、親身になって導く存在が必要だ」
――「もう、これ以上………私の前から、居なくならないでよ…!」
――「――ガァアァアァアァアッ!!」
――「それを覆してきたのはいつだって勇者だった。ただの町娘が救いの巫女などと、ありえんことだ」
――「泣かないでね」
チュンチュン
赤毛「…ん…」モゾモゾ
赤毛「…朝かぁ…」
赤毛「へんな夢…」
赤毛(でも、何だか…気持ちの良い夢だったなぁ)
赤毛(空を飛んでるような心地で…皆があたしを見てて)
赤毛「…でも、夢は夢、だよね」
赤毛「現実は…」
赤毛「おはよー、ママ」
母「おはよう」
赤毛「パパは?」
母「町の集会所。…これからのこと、話し合ってるわ」
赤毛「これからのこと?」
母「…」
母「国王陛下は全面的に降伏すると発表なされた。それは、あんたも知ってるわね」
赤毛「…うん」
母「でも、肝心の教会の方々が武器を取って立ち上がるように声をかけている」
母「…この先どうすることがいいのか。私たち一人一人が自分で考えなければいけないわ」
母「本当は集会は禁止されているのだけど、町内の代表になる人たちが集まることになったの。パパも集会所へ向かったわ」
赤毛「…」
母「分かるわね。あなたも…気持ちの準備だけはしておいて」
赤毛「…うん」
母「…ねえ」 赤毛「…あのさ」
赤毛「あ、ゴメン。何?」
母「…ううん、なんでもないわ」
赤毛「はは。そっか。あたしも、なんでもないや」
赤毛「部屋に、いるね」
母「…ええ。窓は開けちゃ駄目よ」
赤毛「分かった」
トタトタトタ…
母「…」
母「こんな時に、あたしったらなんて夢を…。願望でも、現れたのかしらね」
赤毛「…はあ」
赤毛「魔王が攻めてくる…?」
赤毛「本当なのかなぁ」
赤毛(………)
コツン!
赤毛「!」
赤毛(なんだろう、いま窓に何か…もしかして!)ガタッ
キィ…
坊主「あ! 赤毛、顔出した!」
三つ編「しーっ! 大きな声出さないのっ。家の人に見つかっちゃうでしょっ」
金髪「よう」
赤毛「…みんな!」パァ
赤毛「ほっ、と」スルスル
スタッ
坊主「よぉし、ずらかるぜ!」
三つ編「だから、声が大きいってばっ」
金髪「お前んち、不便だよなぁ。二階建てなんてさ、抜け出すのにひと苦労だよ」
赤毛「3人とも…どうして?」
金髪「…どこの家も同じだよ」
赤毛「え?」
金髪「息、詰まるだろ。大人がみんなして暗い顔してさ」
赤毛「…そっか」
金髪「だから、こんな時こそ――」
金髪「秘密結社が集うべき時なのだ!」
坊主「その通りっ!」
三つ編「は、恥ずかしいなあ、もう」
赤毛「ふふ…! そだね!」
金髪「だからさ、赤毛!」
金髪「秘密基地、行こうぜ!」
赤毛「…うんっ!」
秘密基地
街の時計台の中
坊主「着いたー!」
三つ編「はー、ドキドキした」
金髪「ったく、どこもイカツい鎧の騎士がウヨウヨしやがって」
赤毛「見つかったら、ウチに連れてかれてたねぇ」
金髪「三つ編の調べた抜け道のおかげだな!」
三つ編「エッヘン!」
赤毛「ここまで来れば、大丈夫だよね。時計台の上からの声は、下までは聞こえないだろうし」
金髪「だな。大人も来ないし。やっぱ、秘密基地は最高だぜ!」
坊主「それにしても、みんなピリピリしちゃって…なんだか変だよねぇ」
坊主「城下町が、城下町じゃないみたい」
三つ編「…それは、魔王が攻めてくるんだから、仕方ないじゃない」
赤毛「本当なのかな?」
金髪「実感湧かねーけどなー」
坊主「ついこの前まで、普通に学校行ってたのにね」
金髪「ま、大手を振って学校を休めるっつーのは魅力だよな!」
赤毛「同感」クスッ
三つ編「もう、金髪も赤毛も。暢気なこと言ってる場合?」
金髪「暢気なこと言いたいから、ここに抜け出して来たんだろ?」
三つ編「それは…そうだけど」
坊主「あ、そーだ。そういえば」ゴソゴソ
赤毛「? どうしたの、坊主?」
坊主「ジャーン! ビックチョコレートの大袋!」
三つ編「わあ、凄い!」
赤毛「やったー! あたしコレ、大好き!」
金髪「やるな坊主!」
坊主「でへへ」
赤毛「…」モグモグ
赤毛「魔王、かあ」
三つ編「…」モグモグ
赤毛「魔王に負けたら、あたしたち、どうなっちゃうのかなぁ」
坊主「…た、食べられちゃう、かな!?」
金髪「かもな。魔族は、ハラ減ってなくても人間食うからな」
坊主「そ、そうなの…?」
金髪「ああ。あいつらは俺たちに脅かして恐がらせるために食うんだ」
坊主「ひっ…」
赤毛「金髪! あんまり坊主を怖がらせちゃダメだよ」
金髪「へーへー」
三つ編「授業で習ったけど、人と魔族はお互い、勝ったり負けたりを繰り返してるのよね」
坊主「勇者様が勝つときと…魔王が勝つときと、あるんだっけ」
金髪「ええ? そんなこと習ったかあ?」
赤毛「この間習ったばっかりじゃん」
金髪「そーだっけ…?」
三つ編「ここ数十年間は、勇者様が負けてないから、私たちもそういう感じがしないのよ」
坊主「じゃあじゃあ、今回も勇者様が勝てる!?」
三つ編「そ、それは分からないわよ、私だって」
金髪「でも、王様はもう降伏宣言してるんだぜ? それって人間の負けってことだろ?」
赤毛「それじゃあ、勇者様が負けちゃったのかなあ?」
坊主「ついこの間、神託を受けたばっかりじゃないの!?」
金髪「気の毒なこった。旅に出る前にやられちまうなんてよ」
赤毛「………勇者様が負けた時」
赤毛「昔の人は、どんな風だったのかな」
三つ編「…れ、歴史の教科書では」
三つ編「町やお城が壊されたりして、沢山の人たちが奴隷になって、連れていかれたりしたって 」
坊主「ど、奴隷…?」
金髪「…」
坊主「それじゃあ、僕らもそうなっちゃうの、かな?」
坊主「お父さんやお母さんは…?」
三つ編「…だ、大丈夫よ」
三つ編「きっと、教会の騎士様が、守ってくれるわよ…」
三つ編「きっと………」
赤毛「…」
赤毛「今日、うちのパパは町の集会に行ってるんだって、ママが言ってた」
赤毛「これからどうするのか…自分達で決めなきゃいけないって」
坊主「…そ、それって」
坊主「どういう、こと…?」
赤毛「………分からない」
金髪「だー、もう!」
金髪「お前たちまで暗くなってどーすんだよ!? 秘密基地のルール、忘れたのか!?」
金髪「ひとつめ! 言ってみろ、赤毛!」
赤毛「え、えっと…」
赤毛「秘密基地では楽しく過ごす。暗い話はご法度」
金髪「そうだ。ふたつめは!?」
三つ編「学校や家でイヤなことがあったら、いつでも来て良し。誰かが困ってたら、駆けつけること」
金髪「坊主、みっつめ!」
坊主「しゅ、宿題の話をしたものは、秘密基地から出ていく!」
金髪「そのとーり! 秘密結社は、困った時は助け合い、どんな時でも明るく楽しく過ごす!」
金髪「それがなんだよ、俺たちのこの有り様は!? 秘密基地まで来て、暗い顔すんなっての!」
三つ編「そんなこと言ったって…この状況で楽しい事なんか…」
金髪「そういうトコ、アタマが硬いんだよな三つ編は!」
三つ編「な、なによ!? 金髪だって、文句言うばっかじゃない! なんのアイディアも無いくせに!」
金髪「ぐむっ…。そ、それはだな」
金髪「よし、赤毛!」
赤毛「あ、あたし!?」
金髪「なんか、面白いことのアイディア! 言ってみろ!」
赤毛「…えっとー、うーん」
赤毛「あ、そうだ!」
坊主「何か思い付いたの!?」
赤毛「"大人達の集会所に潜入大作戦"、なんてのはどう?」
金髪「…」
赤毛「…ダメ?」
金髪「いいな! それ!」
坊主「うっひゃー、格好いい! 面白そお!」
三つ編「で、でも…外は危ないよ!」
金髪「――三つ編さ。気になってんだろ」
金髪「父さんのこと」
三つ編「!」
金髪「気になるんなら、自分で知りに行けばいい。違うか?」
三つ編「………」
三つ編「分かったわ」
金髪「っしゃ決まりィ!」
三つ編「その代わりひとつ約束! 潜入作戦の陣頭指揮は私がとります! 本当に危ないことは、禁止なんだから!」
坊主「三つ編、一番やる気なんじゃない?」
赤毛「かもね」フフ
三つ編「そこ! 何か言った?」
赤毛 坊主「なんでもありませーん」
少年「さあ、子供たちの大作戦が始まるよ」
少年「彼らは友達で仲間で、別ちがたい友情で結ばれてるんだ」
少年「少なくとも、彼らはそう信じている」
少年「大人になると、そんなものはないんだって言う人もいるよね」
少年「友達のこと、忘れちゃったって言う人もいる。忘れるつもりなんかなかったのに、いつの間にか離れてしまったって人もいる」
少年「あの頃とは全てが違ってしまって、カチカンが違ってしまったとか、タチバが変わってしまったとか」
少年「全ては、一瞬の煌めきだったって、みんな昔を懐かしむ顔になったりして」
少年「でも、子供にはそれが分からない。彼らにとってはその一瞬一瞬が全世界で、それに持てる全てで立ち向かっていくんだよ」
少年「それが、子供の特権なんだ」
三つ編「いーい? 私たちは今、三区の時計台裏の秘密基地にいる。目標は、町の集会場。ここに行くまでには…大通りを2つ、通っていかなきゃならないわ」
三つ編「でも、そういう所には教会の騎士様が沢山いて、見つかったら最後大変な目に会うかもしれない」
坊主「う、うぅ…」
金髪「坊主、今さらビビったのかぁ?」
坊主「そ、そんなことないよ!」
赤毛「でも、どうするの? 集会所には通りを越えて行かなきゃいけないでしょ?」
三つ編「そうね…1つめの通りは、富豪さんの敷地の中を通っていくのはどうかしら?」
金髪「あんのバカでかいウチか。確かに、通りを行くより安全だな」
赤毛「敷地の中の庭園を通って行くって事? だ、大丈夫かなぁ?」
三つ編「多分平気よ。どうせどこのウチかも、ウチに閉じ籠ってじっとしているはずだから」
赤毛「そっか…」
赤毛(けっこう強引な作戦な気がするけどなあ。三つ編、やっぱり一番ノリノリなんじゃ?)
三つ編「2つめの通りは、集会場の近くまで小川が流れてる。この水路に降りて、小舟で行きましょう!」
坊主「あ、そういえばあそこ、ボロの小舟があるよねぇ!」
金髪「おお…すごい。何だか上手く行きそうな気がしてきた!」
金髪「よーし、早速決行だ!」
赤毛「坊主、ビックチョコレート忘れないでよね! 大事な食料なんだから」
坊主「オッケー!」
三つ編「三区の地図ってどこかにあったかしら? 一応持って行きたいんだけど」
赤毛「ああ、それなら確かこの辺に…」
金髪「へへ! 久々にワクワクすんなあ! 早く行こうぜ!」
赤毛「ちょっと待ってよぉ。あ、あったあった!」
三つ編「良かった、これで準備万端」
金髪「坊主は?」
坊主「………」
金髪「? おい、坊主」
赤毛「どうかしたの?」
坊主「………本当にいいのかな」
坊主「僕たち、こんな事してて」
金髪「あん? 急にどうしたんだよ、お前」
坊主「王様が…外出禁止だって。チョクレイが降りたんだって、言ってた」
坊主「そんな命令を出したの、初めてだって」
坊主「父ちゃんも母ちゃんも言ってた。すっごく、恐い顔してた」
坊主「………本当に、僕たちこんな事してて、いいのかな」
赤毛「………」
三つ編「………」
金髪「はん」
金髪「王様が、なんだよ。あんなやつ」
金髪「魔族と戦うの怖がってばかりの、腰抜けじゃねーかよ。あんなやつが守ってくれるなんて、元々オレは思ってないぜ」
金髪「父さんだって………」
三つ編「金髪…」
金髪「…」
金髪「赤毛の親が言ってたってこと、聞いてたろ。これからどうするのか、自分たちで決めなきゃいけないって」
金髪「もしそうならオレたちだって、知って、考えなきゃいけない」
金髪「大人達に任せっぱなしにしてたって、魔族から守ってくれるなんて決まったわけじゃないんだ」
赤毛「…」
金髪「だから、行こうぜ。集会所」
金髪「そんくらいは出来るんだ…オレたちだって。もうコドモじゃない」
赤毛「そうだね。一緒に行こう。坊主のパパもきっとそこに居るから」
赤毛「三つ編が居れば、安全な道で行けるはずだし、もし騎士様に捕まりそうになったらその時は…」
金髪「オレがやっつけてやるぜ!」
赤毛「でしょ?」クス
赤毛「それに、坊主のビックチョコレートがあれば、元気も出る」
坊主「…」
金髪「おいおい、そんじゃあ赤毛は何するんだよ?」
赤毛「え!? えーっと、そうだなぁ…」
三つ編「…赤毛は」
三つ編「何だか、居てくれるだけで、安心する」
赤毛「えっ! や、やだなぁ何言ってるの!」
三つ編「ご、ゴメン。変だったね、私」
坊主「で、でも。分かる気がする、かも…」
金髪(…)
赤毛「坊主までっ! 止めてよー!」
金髪「おいおい、坊主! まさかお前、赤毛のこと…!?」
坊主「ち、違うよー!!」
赤毛「き、金髪ぅ!」バシッ
金髪「痛っ! 叩くことねーだろ!?」
三つ編「ふふふふ」
少年「あの時好きだった子のこと、覚えてる?」
少年「それとも、君のことを好きだと言ってくれたあの子のことを?」
少年「あの時、頬を撫でていった風を、差し込んでいた眩しい日差しを」
少年「胸のうちに燻っていたあのどう言ったらいいのか分からない気持ち」
少年「覚えてる?」
少年「案外、そんなあの子がケッコンなんかすると、"でもあいつ、昔俺のこと好きだったんだぜ"とか内心思ってる君たちを、よく知ってるよ」
少年「子供の好きってのは、本当に好きだったのかもしれないし、"好きっていうことにしていただけ"なのかもしれないよね」
少年「今の君は、誰かのことを好きだと思うかい?」
少年「それはあの時の好きとは違う好き? アイシテルって奴なのかな?」
少年「それとも…」
金髪「ん?」
坊主「あれ、この子…」
少年「やあ。お出かけ?」
金髪「…まあな」
三つ編「坊主、知ってる子?」
坊主「う、ううん。知らない。と、思う」
赤毛(…見たことない、男の子だ)
金髪「お前、こんな所で何やってんだよ。こんな時に」
少年「君たちこそ、何やってるのさ?」
金髪「オ、オレたちは…」
坊主「僕たちのは、秘密結社の大作戦中なんだよ! 凄いでしょ!?」
三つ編「それ、言っちゃったら全然秘密じゃないじゃない…」
少年「秘密結社か、凄いね!」
坊主「でしょ!? きみも仲間になる!?」
金髪「お、おい坊主! 勝手になに言ってんだ!」
赤毛「良いんじゃない? 別に」
金髪「だ、駄目だ! 誰でも入れたら秘密結社じゃないだろ!」
坊主「ええー」
金髪「駄目なものは駄目!」
少年「ふふ。それは残念」
少年「でもね、大丈夫だよ。一人で遊んでるから」
赤毛「そうなんだ…」
少年「そういうのが好きなんだよ」
坊主「そっかあー」
金髪「…」
少年「秘密結社の皆さん!」ビシッ
少年「作戦の無事成功をお祈りしてます!」
坊主 金髪「!」
坊主「了解でありますっ!」ビシッ
金髪「…そっちも気ぃつけてな!」ビシッ
三つ編「も、もう! 恥ずかしいってば!」
赤毛「じゃあね!」
少年「うん!」
金髪「富豪の家はすぐそこだぞ。気を抜くな、副長!」
坊主「イエッサー、隊長!」
三つ編「や、やめなってばぁ…」
赤毛(一人で遊ぶのが、好き…かあ)
赤毛「………」クルッ
少年「…」ジッ
赤毛(わ! 振り向いたら、め、目が合っちゃった!)
少年「泣かないでね」
赤毛「え…?」
少年「君には、女神様がついてるよ」
赤毛「………?」
三つ編「赤毛ー、早くぅー!」
金髪「置いていくぞー!」
赤毛「あっ、待って!」タタッ
少年「………」
少年「そう。泣いちゃ駄目だ。笑わなきゃ、ね…」
富豪の家
金髪「おし、こっちだ」コソッ
坊主「ホントに平気かなぁ」
三つ編「バレなければ平気よ」
赤毛「み、三つ編…」
三つ編「でも金髪、そっちは庭園を横切っていく道みたいよ。塀に沿って迂回した方が良くないかしら」
金髪「こっちのが良いんだよ。どうせあのオッサン、今頃震え上がって部屋の奥に引っ込んでら。庭なんか誰も見てねーよ」
金髪「それに、あそこ見てみろ」
三つ編「え? …何、あれ。犬小屋?」
金髪「うん。ロクに働かないヤツなんだけど、一応番犬がいることにはいる。塀伝いに歩けば、アレの近くを通ることになる」
金髪「万一吠えられたら、流石にマズイだろ?」
坊主「ば、番犬…!」
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