元スレ八幡「雪ノ下が壊れた日」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
301 = 288 :
>俺はそれを見た時……雪ノ下について一つの確信を持った。
>雪ノ下雪乃はもう壊れている。
かなり最初からわかってるやん。だからそれを録音してはるのんに聞こうとしてたんだし
ヒッキーにとっては目をそらしたかったのかもしれんが
302 = 290 :
雪カスは苦しんでしねよ
303 :
>>296
普通に楽しく読んでるので、先々を予告しない方が自分は好みかもー
304 = 287 :
>>301
どういう方向で壊れてるのかから目を背け始めたんじゃない?
305 :
それでもゆきのんはきっと昔の八幡と同じことをしようとしてるでしょ?
306 :
短いながらもほぼ毎日投下してて好感もてるわ
307 :
たまにキリのいい所まで大量投下してくれたほうが好感持てると思うのです
308 :
無用な心配だろうが、展開を変える必要は全くないぞ。
今すごく面白いところだ
309 :
男と女のガチファイトってなんか好き。
リョナとかじゃなく、こう互角に夢中で取っ組み合うようなやつ。
310 :
◆4
二度ある事は三度あるというが、俺はそれを絶対にする気はない。ようやく目眩や吐き気がおさまり、昨日と同じくトイレに行って鏡を見て、そこで俺は愕然とした。
おい……。これ、どこの試合後のボクサーだよ……。
左頬と右目の真横あたりに紫色の痣がくっきりと残ってる。それだけじゃなく額や目元、頬にもかなりの切り傷が。首には歯形のみみずばれが出来てたし、それは手にもだ。これが葉山や戸部あたりならケンカでつけられた傷だと思ってくれるだろうが、俺の場合だとイジメを受けてるとしか思われないはずだ。
保健室だな……。そこに行って湿布だとかをもらってくるしかない。
前みたいに濡れたハンカチ程度では駄目だ。というか、本当に何だよ、これ。何で俺、こんな目に遭ってるんだ……?
何でかと言えば、雪ノ下のせいとなるのだが、実質的には俺のせいだ。君子危うきに近寄らずというのが俺のモットーであるというのに、自ら火中の栗を何回も拾いに行っている。誰がどう見ても馬鹿なのは俺だ。
不意に由比ヶ浜の声が甦った。
『ゆきのんは……ゆきのんはもう一人にしといた方がいいの』
……未だに俺はそう思わない。だが、由比ヶ浜の言ってる事も間違ってはいない様な気がした。
『このままじゃずるずる変な方に行っちゃうから。余計おかしくなっちゃう。ヒッキーまできっと巻き込まれる』
もう巻き込まれてる。後悔ってのは、本当に後からするものだと、そんな当たり前の事を痛感した。
312 = 310 :
さて……どうするか。
部屋の片付けを終えた後で、俺は顔の腫れと痣の事で困って途方に暮れていた。これはアレだ。テスト前日に部屋の掃除を始めるとやけに捗って、気が付けばテスト勉強を何もしてないのに深夜になっていた時と同じだ。つまりは、現実逃避だ。それが済んでしまったから、俺は見たくもない現実に目を向けなければならなくなっていた。
やはり……どうしようもないか……。
部室の鍵を返しに行かなければいけない以上、平塚先生とは嫌でも顔を会わせる事になる。例えば、一色あたりに代わりに鍵を返す事を頼んだとしても、どうせ明日の授業で会う事になる。その時に尋ねられるよりは、今、会いに行って話を済ませた方がいい。
ここまでは消去法だから問題はないというより仕方ない。だが、その次が問題だ。
どう言い訳するんだ、この傷と痣……。
触ってみるとまだずきずきと痛む。平塚先生もそうだが小町に対してもだ。明日の由比ヶ浜に対してもそうだし、戸塚に対してもそうだ。正直に話せばどれも面倒な事になる。
録音を確認する。きちんと録れていた。だから、これを聞いてもらえれば話を信じてもらえないという事はないだろう。しかし、これを平塚先生に聞かせた場合、どうなるか。喧嘩両成敗であっさり収めてくれればいいが、そうはならない予感がする。
特に雪ノ下は言動と行動がまずい。親に連絡がいき、更にややこしい事態になりそうだ。下手すればあいつの内申点にまで響いて受験に関わってくるだろう。雪ノ下さんに頼んで穏便におさめてくれるのを願っている俺としては、平塚先生にこの録音を聞かせる気はなかった。とはいえ、上手く誤魔化せるような嘘の言い訳も思い付かない。
詰んでるな、これ……。
いっその事、全部正直に話して丸投げにしたい気分だった。理由はどうあれ被害者は俺なのだし、それを証明してくれるテープもある。俺にとってはどう転んでも今より悪くなる事はないだろう。だが、雪ノ下にとっては。
……あいつを最悪の状態に持っていくか、それとも出来るだけ痛手にならないようにするか、その決定権が今の俺にはあった。そして、痛手にしない方が遥かに難しい状況なのだ。だが、楽な方を選べば俺は完全に雪ノ下を見捨てた事になる。それだけは、俺はする気はなかった。
313 = 310 :
職員室へと向かい扉を開ける。案の定、平塚先生は俺の顔を見てすぐさま眉を上げて尋ねてきた。「比企谷。その顔、何があった」やはり何もないでは済まされないだろうな。
「戸塚のテニスに付き合ってたら、ボールが当たりました」
そう答える。だが、予想通りというか、平塚先生は軽く溜め息の様なものを吐いた。
「つくならもう少しマシな嘘をつけ。ボールが当たって出来る様な痕じゃないだろう」
……だよな。俺自身もそれについては非常に同感だ。だが、他に思い付かなかったから、もうこれで突き通すしかない。
「戸塚、今日は絶好調だったんで。ボールが魔球の様に動いて、俺はそれに翻弄されて、気が付けばこうなってました」
「比企谷……。いい加減にしておけ。温厚な私でも流石に怒るぞ」
拳の準備を始める。温厚の意味を絶対に間違えている。
314 = 310 :
「とにかく、一度保健室に行くぞ。手当てをしてやる」
周囲の先生達の注目を集めながら、俺と平塚先生は職員室を出た。残っている先生達が少なかったのは不幸中の幸いだった。
並んで歩きながら、平塚先生はまた尋ねてきた。
「で、誰からイジメを受けた?」
イジメ前提かよ。
「それか、恐喝でもされたのか。そんな目をしているから君はそういう事をされるんだ」
むしろ、今、イジメを受けてね? 俺の目関係ないだろ。
「本当にテニスボールが当たったんです。……それだけなんですけどね」
そう言いながら、平塚先生の方にじっと目を向けた。これは賭けでもある。事情があって言いたくないという事を先生なら察してくれると思った。そして、それさえわかってくれれば平塚先生の場合、それ以上は聞いてこない気がした。放任主義とは違うが、自主性を重んじるとでもいうのか、この人は手放しに助けをしない。そういう面を持っている。
先生はやれやれといった感じで軽く頭を振った。
「雪ノ下か?」
予想外の言葉に俺は固まった。
315 = 310 :
「その反応だと図星か」
迂闊だった。俺のミスだ。十年前からわかっていたという顔を平塚先生は見せる。同じカマのかけ方でも平塚先生と俺とでは大違いだ。攻め方が直線的で強引なのだ、この人は。
「前から何かあるとは思ってたんだ。雪ノ下でなく君が何度も鍵を返しに来るし、由比ヶ浜も目に見えて沈んだ表情をしている。そして、昨日の引っ掻き傷、今日の君の痣とくれば、ピンとこない方がおかしいだろう」
私はいつでも君達を見ている、というこの人の言葉は、本当に冗談でも嘘でもないなと毎回忘れた頃に思い出す。いや、思い出させてくるのか、この人が。
「で、何を私に隠しているんだ、比企谷。雪ノ下と何があった? 素直に言った方が君の為だぞ。新しい傷を増やしたくあるまい」
いや、それ脅迫ですから。ポキポキ指を鳴らすのやめて下さい。かなり本気で。
仕方なく腹をくくった。虎穴に入らずんば虎児を得ずとも言うしな。もっとも俺は正面から堂々と穴に入るなんて真似は絶対にしないが。一人が囮になって親虎を引き付けている間に、横穴を掘ってそこから入る事を提案する人間だ、俺は。
「……テニスボールに当たった、って事にしといてもらえませんか。先生に迷惑はかけない様におさめるつもりなんで」
「やはり訳ありか」
平塚先生はちらりと俺に目を向け、頭から足の爪先まで一周した後、また軽く溜め息をこぼした。
「まあ、どんな形かは知らんが、雪ノ下が君の怪我に関わっているというなら、君はそうするだろうな。表沙汰にならないように、内々で片付けるつもりなんだろう。違うか?」
「……図星です」
「それで、君の考えているやり方で事がおさまる自信はどうなんだ。あるのか?」
「さあ……。それはやってみないとわからないです。ただ……自信はともかく、このままだと俺もまずいんで。そう見えないかもしれないですけど、めちゃくちゃ真剣なんですよ。……どうにもならないって訳でもないですし」
「まったく、本当に君ってやつは……」
諦めた様な口調。恐らく、提案を受け入れてくれたのだろう。だが、それにほっとしたのも束の間だった。
「だが、一つだけ正直に答えてもらうぞ、比企谷。その怪我は誰からつけられた? 教師として、それだけは黙認出来ないからな。犯人をはっきり答えてもらうぞ」
一難去ってまた一難。そんな諺が思い浮かんだ。
316 = 310 :
「で、誰だ?」
話している間に保健室に着いた。平塚先生が鍵を開けながら、俺に聞いてくる。誰かを言えば、俺が隠しておきたい事を白状している様なもんなんだが。
溜め息を一つ。中に先に入った平塚先生から「ほら、入れ。手当てをしてやる」との声。「こういうのは慣れてるからな」怖いんですが。
実際、手際よく消毒やら湿布やらされた。先生のイメージからして救急箱を放り投げられて「手当てをしておけ」と言われそうな気がしていたが、そうではなかった。俺の勝手なイメージってのは、腐るほどある訳だ。今更だが、そんな事を思った。
「顔と手はこんなものか。次は体だな。脱げ」
「は……?」
「脱げ。抱いてやる」
ちょっと、先生……? なんかワイルドさに思わずドキッとしちゃったんですけど? 責任取ってもらえるんですか?
「比企谷……。真に受けるな。冗談だ」
「いや、俺はそんな、別に……」
顔に出ていたらしい。恥ずかしさから思わず目を逸らした。今ここに列車がやって来て、それに「姉御女房エンド行き、平塚ルート経由」と書かれてあったら、俺は迷わず切符を買って乗車していただろう。いや、それは嘘だ。誰か早いとこもらってあげて。色々拗らせちゃってるから。
「私が思うに、男というものはそれぐらい大胆に言ってきてもいいと思うんだが、昨今の男は草食系ばかりでな。例えばデートに行くにしても、どこに行く? と聞いてくるやつばかりで、ついて来い、なんて私は言われた事すらないぞ」
そりゃ、先生にそんな事を言う男はいないでしょうね。言ったら泣き出しそうな気がしたので流石にやめた。
「体の方は自分でやっておけ。セクハラパワハラと最近はうるさいからな。背中だけは手伝ってやってもいいが、どうする?」
「いや……どうするという前に、多分、背中には怪我とかないんで」
腹の方も多分大丈夫だろう。怪我の原因は爪とスマホによる殴打がほとんどだからな。
「そうか。だが、一応確認しておけ。恥ずかしいというなら、私は後ろでも向いてるし、君はそっちのカーテン付きのベッドで脱げば問題ない。男の裸を覗く趣味は私にはないからな」
本当ですかね、それ? 思わず疑ってしまう俺がいる。いや、本当だろうけどな。特に俺の裸なんて見てもどうしようもないだろうし。流石にこれは偏見というものだ。
317 = 310 :
「で、誰だ?」
話している間に保健室に着いた。平塚先生が鍵を開けながら、俺に聞いてくる。誰かを言えば、俺が隠しておきたい事を白状している様なもんなんだが。
溜め息を一つ。中に先に入った平塚先生から「ほら、入れ。手当てをしてやる」との声。「こういうのは慣れてるからな」怖いんですが。
実際、手際よく消毒やら湿布やらされた。先生のイメージからして救急箱を放り投げられて「手当てをしておけ」と言われそうな気がしていたが、そうではなかった。俺の勝手なイメージってのは、腐るほどある訳だ。今更だが、そんな事を思った。
「顔と手はこんなものか。次は体だな。脱げ」
「は……?」
「脱げ。抱いてやる」
ちょっと、先生……? なんかワイルドさに思わずドキッとしちゃったんですけど? 責任取ってもらえるんですか?
「比企谷……。真に受けるな。冗談だ」
「いや、俺はそんな、別に……」
顔に出ていたらしい。恥ずかしさから思わず目を逸らした。今ここに列車がやって来て、それに「姉御女房エンド行き、平塚ルート経由」と書かれてあったら、俺は迷わず切符を買って乗車していただろう。いや、それは嘘だ。誰か早いとこもらってあげて。色々拗らせちゃってるから。
「私が思うに、男というものはそれぐらい大胆に言ってきてもいいと思うんだが、昨今の男は草食系ばかりでな。例えばデートに行くにしても、どこに行く? と聞いてくるやつばかりで、ついて来い、なんて私は言われた事すらないぞ」
そりゃ、先生にそんな事を言う男はいないでしょうね。言ったら泣き出しそうな気がしたので流石にやめた。
「体の方は自分でやっておけ。セクハラパワハラと最近はうるさいからな。背中だけは手伝ってやってもいいが、どうする?」
「いや……どうするという前に、多分、背中には怪我とかないんで」
腹の方も多分大丈夫だろう。怪我の原因は爪とスマホによる殴打がほとんどだからな。
「そうか。だが、一応確認しておけ。恥ずかしいというなら、私は後ろでも向いてるし、君はそっちのカーテン付きのベッドで脱げば問題ない。男の裸を覗く趣味は私にはないからな」
本当ですかね、それ? 思わず疑ってしまう俺がいる。いや、本当だろうけどな。特に俺の裸なんて見てもどうしようもないだろうし。流石にこれは偏見というものだ。
318 = 310 :
>>317
連投ミス
飛ばして
319 = 310 :
「それで、比企谷……」
素直にカーテンを引いてベッドで服を脱いでる時に言われた。何故かドキリとした。やはり俺の青春ラブコメ間違ってないか? 普通これ逆だよな?
だが、やはり間違っていなかった。それを瞬時に思い知らされた。
「話を最初に戻すが、その怪我は誰につけられたんだ? そろそろ話したらどうだ」
蝶が飛び回る庭園をのんびり歩いていたら、いきなり蜂の大群が飛んできた気分だった。どう答えるべきか考えながら、自分の体を確認する。腰や足らへんに小さな青痣が出来ている程度だ。これなら湿布もいらないだろう。
はだけたシャツを着直しながら、俺はカーテン越しに答えた。正面から攻めず搦め手から攻めるのは変わらないが。
「……雪ノ下陽乃さんに相談するつもりなんで。それを返答の代わりにしといてもらえませんか」
「陽乃に?」
意外という感じの声。それから「陽乃にか……」と呟く。そのまま長い事沈黙があり、それは俺が服を着直してカーテンを開けるまで続いた。
「……終わりましたけど」
渡された湿布やら消毒薬やらを返す。「ああ」と平塚先生は受け取ってそれをしまい始めた。それから「そうか、陽乃にか……」とまた呟く。
しまい終えてから、それが区切りの様に平塚先生は向き直って告げた。
「まあ、いいだろう。今回だけは君を信用して教師の理念を曲げてやる。誰がつけたかは聞かないでおこう」
俺は黙って頭を下げた。他の教師ならこうは言ってくれなかっただろう。何だかんだで俺は平塚先生に世話になりすぎている。
320 = 310 :
「ただ、比企谷。それは君の責任だという事を覚えておけよ」
真面目な顔で真面目な口調だった。俺は当然頷く。
「わかってます。さっきも言いましたけど、先生には迷惑はかけないんで」
「そうじゃないんだ。君はやはりわかっていないな」
半ば呆れた様な声だった。「……それって、どういう意味ですか?」
「その判断の結果、君が泣く様な事になったとしても、他に責任を押し付けるな、という事だ」
「それもわかっているつもりなんですけどね……」
「それが既に間違いだ。つもりと、わかっているとでは、何千万光年も離れているのだからな。東大に受かるつもりでいるのと、東大に受かるのとでは大違いだろ?」
それは確かにそうだろう。だが……。
「比企谷。世の中ってのは、冷たい様だが、行動は全て自己責任だと言うのは事実だ。何かをした結果、それで泣くも笑うも全部自分に返ってくる。そこまではわかるな?」
「ええ……まあ」
「だから、良い結果が出たなら自分を誇るといい。悪い結果なら反省するといい。それが普通だ」
「…………」
「だがな、たまに反省では足りない結果が出てくる時があるんだ。それについて一生後悔する様な結果がな」
一生、後悔か……。
「それを自分ではなく他のせいにするのは簡単だから、人はいとも容易く責任を転嫁する。自分は悪くない、あの時の状況ではああするしかなかった、仕方ない事だ、と自分を誤魔化して正当化する。結果的にそうなってしまったんだ、運やタイミングが悪かった。だが、そんな訳がない。特殊な例を除けば、大体は本人の責任だ」
修学旅行での告白、文化祭の時の相模への言葉の一件、それを暗に言われている気がした。俺にとっては耳が痛い事だらけだった。
321 = 310 :
「私はな、比企谷。君がいつか、そういう一生ものの後悔をしそうで怖いんだ」
平塚先生は尚も続ける。
「あの時の事は間違っていない、あの時はああするしかなかった、そう思い込んでまた同じ様な事をする。君にはそういう心配があるんだ。身に覚えがないとは言わせないぞ」
返す言葉がなかった。
「君は優しい、と私は思っている。だが、その優しさを自分に向けないのは誉められた事ではない。自分を省みない事を武器にするのは良くない。それは、自分が傷つくだけでなく、他人をも傷つける両刃の剣だ。君はそれを何回か味わっているだろう? 私の言いたい事はわかるか?」
「……はい」
「『正論は常に正しい、だが優しくない』という言葉が世の中にはある。正論で責められたら、どれだけその人に事情があろうとも反論出来ないからだ。正論は厳しいと言ってもいい。逆に言えば、正しくない事は優しい事でもある。だが、どれだけ優しくても間違いは間違いなんだ。優しさにより犯人を逮捕しない警察官は無能だと謗られるし、それ以前に害悪でもある。正しい事と優しい事、それを君は履き違えないようにしたまえ」
「……はい」
「そのせいで君が一生後悔する様な傷を負ったとしても、それは自分の責任になるのだからな。誰も君の痛みを肩代わり出来ないんだ。だから、それを忘れないようにした上で、君にとっての最善の行動を探すといい」
「……うす」
平塚先生は納得したように一つ頷いた。
「よし。説教はここまでだ。私は仕事がまだあるから戻るが、君はもう帰りたまえ。その怪我の事は、他の先生方には上手く誤魔化しておいてやるから安心しろ」
「……助かります」
軽く頭を下げる。「なに、構わんさ。大した事ではない」そんな言葉をかけられた。本当にこの人には頭が上がらない。
323 = 310 :
二人で保健室を出たが、行き先が違うので途中で別れた。別れる前に、最後に平塚先生は軽く微笑んで見せた。
「仮に、君の怪我が色々とバレて問題になろうとも、その時は私がつけた傷だとすればいい。君の御両親に私が土下座して謝れば大体の事はそれで片付く。遠慮なくやれ」
いや、流石にそれはまずいだろ……。だが、平塚先生は悪戯を仕掛ける前の子供の様な顔を見せた。
「もちろん、その時は君がムラムラきて私を襲ってきたという事にするがな。私は過剰防衛、君は強姦未遂だ。学校側も君の御両親も、どちらも隠しておきたい事情があるのだから、公になる事はない」
俺が言うのもあれだが、えげつないな……。流石だ、この人。男関係以外は油断も隙もない……。
「ま、そういう訳だから君は好きにやるといい。私はいつだって君の味方だ」
そう言って微笑してみせる平塚先生は、一瞬だがとても綺麗に見えた。いや、前から美人なのは確かなんだが、それ以上にという意味で。危うく惚れかけて慌てて思い直す。教師としてって意味だから。別に他に意味はないから。
『だから、いざという時は遠慮なく頼ってくるといい。私をあまり見くびるなよ』
また俺の勘違いや期待の押し付けかもしれないが、平塚先生の微笑はそう語っている様な気がした。
「それじゃあな、気を付けて帰れよ」
廊下を歩いて去っていく平塚先生の後ろ姿。俺はその背中に向けて自然と頭を下げていた。見えないのだから、この礼にははっきり言って意味がない。だが、意味がなくても俺はそれをした。俺にとって、それは意味のある行為なのだから。
324 = 310 :
ここまで
325 :
あっそ
326 :
乙。面白い。更新楽しみにしてる。
329 :
これは優しいんじゃなくてゆきのんに未練タラタラなだけじゃね?
まだ理由は明かされないらしいしもう一捻りあるんかな
330 = 322 :
はるのんも敵なのかー?先生教えてーなー
332 :
一応の伏線というかメッセージは張ってたのかゆきのん
333 :
乙!
先生がいい人過ぎるわw
惚れてまう
334 :
ここまでされてるのに雪ノ下を助けようとするのは惚れた弱味だろうな
八幡は別に聖人君子という訳ではないだろうから
335 :
おいおいすぐに惚れたはれたいうなんてとんだリア充じゃねえか。ぼっちに初めてできた居場所だから奉仕部は大切なんだろう?
336 :
いやモノローグをそのまま受け取れば惚れたからとしか読めないだろ
どうみても奉仕部じゃなく雪乃個人に執着してるしな じゃなければもっとガハマさんと協力する方向でいかないとおかしい
八幡がリア充なのなんて今にはじまったことじゃないし
337 = 335 :
八幡はガハマさんにも協力して欲しいことを告げてるし他人に行動を強制するやつではない。
雪乃に惚れてるか惚れてないかはこれから作中で語られることだろうに『惚れたからだろ?(ドヤ)』っていうのはあまりに短絡。ちんこすぎ。
いろいろ含んだ複雑な感情を推し量る読む方の方が味わい深い。
338 :
たかがSS如きに味わい深いとか何言ってんのこの人…
339 :
>>337
八幡だけが雪ノ下を助けようとするならともかく否定的な由比ヶ浜に協力を依頼してる時点で雪ノ下への比重が大きい
両者とも感情が同等なら否定的な人間に協力は依頼しない
少なくとも八幡の中では雪ノ下の方が上
どちらも大切とかではない
340 :
酷い目に合わされるの承知のうえで結衣に助けを求めるってことは
雪乃のために結衣に犠牲になれって言ってるも同然だしなぁ
この八幡は結衣をコマくらいにしか思ってないよ
341 :
叩かれてたからどうかと思ったけど、意外と満足
平塚先生がちゃんと大人と教師やってると理解度深いなぁと思える
342 :
>>339
感情が同等とかそうではないとか言ってるのがもうなんか考え方変だね。別の人に抱く感情はそれぞれ別々だろうに。
>>340
酷い目にあうかどうかはあの時点で八幡にはわかっていなかったしその上八幡は強制しなかったじゃん八幡。君の言ってること凄く矛盾してるよ。
343 :
雪ノ下が宝箱で由比ヶ浜が道具箱なのかもしれないけど結局道具の不調からは目を背けてる
あと協力を要請した時点で八幡は理不尽に引っ叩かれてたよね。酷い目かどうかはわからないけど
344 :
>>342
暴行被害者に暴行加害者の弁護を頼もうとする様なものだな
ここで言う被害者は由比ヶ浜で加害者は雪ノ下
こう書けば強制云々関係なく八幡の思考がおかしいのはわかるはず
345 :
結衣と話した時には暴力受けてたし結衣の態度で雪乃に何かされたのは察せられるよね
346 :
結衣に関しては雪乃のほうから邪魔だ奉仕部辞めろと言われたと言ってる
そこに暴力があったかは知らんが結衣にはせんだろ?
347 :
雪ノ下は由比ヶ浜に既に精神的暴力をあたえているから由比ヶ浜が何もされないというのはおかしい
348 :
あんま議論ばかりしてもしょうがないだろ
この>>1にはちゃんとした考えがあってこういう展開にしてるんだろうし。きっと納得させてくれるから大人しく待とうぜ
349 = 345 :
>>346
言いづらいことは言ってないだけかもしれないしあの結衣が雪乃を見限る理由としてそれじゃ弱いと思う
雪乃にはめられてチンピラにまわされるくらいはされてるんじゃない
350 :
平塚先生を見送って、俺は校舎の外に。歩きながらスマホを取り出し、雪ノ下さんに電話をかける。
1コール、2コール。そういえば雪ノ下さんに俺からかけるのは初めてだ。つうか、誰かに電話をかける事自体、滅多にないんだが。
「ひゃっはろー。もしもーし。陽乃お姉さんだよー」
繋がった。てか、テンション高いな、おい。
「比企谷君からだなんて珍しいねえ。雪でも降るんじゃないかな。なになに、私の声が聞きたくなっちゃった?」
「……違います。ちょっと聞いて欲しい用件があったんで」
「なんだ、そうなんだー。比企谷君から電話だったんで結構テンション上がっちゃったんだけどねー。……で、何かな?」
不意に声のトーンが下がる。警戒心が上がった声だ。やっぱ怖えよ、この人。
「雪ノ下の事なんですけど……」
「へえ、雪乃ちゃんの事でねえ。ふうん、なんか面白そうだね」
また声の質が微妙に変わる。表情がないから逆にわかる。面白そうだなんて本当は微塵も思ってないだろう。雪ノ下さんはやはり苦手だ。
みんなの評価 : ☆
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