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    元スレ八幡「雪ノ下が壊れた日」

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    201 :

    乙!
    これだけ周りに被害及ぼしてんのにほったらかしにしてすっとぼける彼氏ってなあ…
    それほどまでに自分が原因で壊れたと認めたくないのかこの屑山君は

    202 :

    何でSSの八幡って自分で捨てたものを他人に取られてからなりふり構わず暴れるのかね?
    他人に迷惑をかけないぼっちどころか迷惑極まりないんだけど
    んで、信者はそれをカッコイイと思い込んでるし。こんなやつ普通に友達いない理由わかるだろ

    大体、ラノベ主人公は女には下心丸出しのくせに男にはやたら高圧的なのがデフォだから男友達いなくて当たり前だけどな

    203 :

    >>200
    原作でやらかしまくってるからじゃね

    204 :

    >>201
    自分も被害者だと思ってるんじゃね?最初は大人たちの事情で棚ぼた式に雪乃と彼女になれて喜んでたけど
    実は大人たちの事情が洒落にならないような話だったとか。そのへんは陽乃も詳しいんだろうが、素直に話してくれるかどうか…
    入院レベルの雪乃をいまだに放置してるようじゃ…

    205 :

    >>202
    他のスレならともかく、ここでそれを言うお前が文盲なことだけはわかった

    206 :

    取られたとか取られてないとか
    そういう問題じゃないんだよなぁ…

    207 :

    >>204
    精々雪乃が壊れたけど俺は悪くない程度じゃね?葉山と言えば周りに責任を押し付けるような奴だし
    まあ、俺じゃ不服か位は思いそうだけど

    208 :

    1乙。面白い。続き楽しみにしてるね。

    209 :

    俺と葉山の違いは腐るほどあるが、その中でも決定的に違うのが思考の差だ。リア充とぼっちでは思考が真逆になる。

    葉山の場合、常に最高のケースを想定してそれを実現させようと行動する。俺の場合、常に最悪のケースを想定してそれを回避しようと行動する。

    雪ノ下の件で最高のケースを言えば、これまでの事全部は葉山と上手くいっていない事が原因で起きた、雪ノ下のストレスから来る一時的な異常行動であり、最終的にはそれが解消され由比ヶ浜もそれを理解して奉仕部に戻ってくるという結末だ。完璧なハッピーエンドとはいかないだろうが、これならそう悪くはない。

    それなら最悪のケースはと言えば、これは一言で済む。雪ノ下は既に精神が壊れていて、これから更に悪化していく。

    それは俺にとって最も考えたくもない結果で、何としてでも回避しなければならない結末だった。

    210 = 209 :

    だから、俺は雪ノ下陽乃さんにいつでも頼れる様に準備をしておく必要があった。もし今の雪ノ下が精神的に壊れていたとしたら、助けを差し伸べる事が出来るのは、姉であり家族である彼女しか俺には思いつかなかったからだ。どうあがいても、それは俺ではない。俺には薬も医者も用意できない。

    ただ、それはさっきも言った通り最悪のケースだ。俺は万が一に備えているだけで、今やっている事が徒労に終わる事は十分に有り得た。雪ノ下は単に不満を抱えていて、それを発散させているだけかもしれないし、俺に対して何か口に出来ない秘密を抱えていて、それを行動で訴えているのかもしれない。明日にはそれが全て判明して、事態はこれから良い方向に転がっていくかもしれない。

    何より、俺は徒労で終わらせたいのだ。雪ノ下に実家に戻って欲しくはないし、雪ノ下が狂っているなんて考えたくもなかった。

    何にせよ……。

    次が本番だ。また、あいつに……。雪ノ下雪乃に会う必要があるのだ。あの部室で。二人きりで。

    それには覚悟が必要だった。何をされるか本当にわからないのだから。正直、怖くもあった。明日また、という雪ノ下の言葉を思い出して、俺は思わず息を止めていた。蹴られた腹に軽く手を当てる。息を吸うと鉛の様に重い空気が俺の肺へとこぼれ落ちていった。

    211 = 209 :

    その日は、夕食を無理矢理胃に押し込んで、早々に部屋へと引きこもった。小町の訝しげな視線は完全に無視していたが、質問は避けられなかった。

    「お兄ちゃん、その首とか頬の傷、どうしたの? まさか、雪乃さんや結衣さんに何か変な事をしたんじゃないよね?」

    襲った挙げ句、逆襲を食らった犯人扱いか。むしろその逆だ、なんて言える訳もない。言ったところで絶対に信用されないだろう。「猫にやられた」そう答えるしかなかった。

    他にも適当に言い繕っておいたが、小町はほとんど信用してなかったのか、刑事が容疑者を見るような目付きで俺を見ていた。

    「まあ、お兄ちゃんにそんな度胸がある訳ないけども……」

    だよな。俺もそう思う。明日、雪ノ下と会って話をするだけだというのに、俺は不安だらけだった。直接的な不安も多かったが、未来への不安の方がずっと多かった。あの日の夜よりも俺はずっとずっと不安に怯えていた。

    212 = 209 :

    翌日の学校の授業も、俺の頭の中にはまるで入ってこなかった。昨日から考えているのは雪ノ下の事ばかりだ。どうすればいいか、何をどう聞くか。昨日からずっと考えているのに、際限なく考える。終わりというものがまるでない。

    由比ヶ浜はと言えば、あいつは三浦や海老名さんに混ざって会話をしていた。三人に笑顔が少ないのは当然だ。時折、由比ヶ浜が俺の方に不安げな目線を送ってきはしていたが、話しかけてくる事はなかった。俺もそれに倣った。

    葉山グループは今日は三人で神妙な顔を付き合わせている。そこに葉山の姿がないからだ。どこに行ったのかは知らないが、今日はほとんど教室にいなかった。昨日の事で俺と顔を合わせない様にしているのかもしれない。あいつら三人だって葉山や三浦の事は感付いているだろうから、本人不在という事で何か話し合っているのだろう。興味がないからどうだっていいが。

    「ねえ、八幡」

    戸塚だ。顔を上げると心配そうな顔が俺に向けられていた。

    「最近、なんか本当に元気がないよね。どうしたの? 悩んでる事があるなら、僕で良かったら相談に乗るけど……」

    やはり天使はいつでも天使だ。もしこの天使が暴走して昨日の雪ノ下と同じ事をしてきたら俺は世界を呪って自殺する自信がある。だが、その天使に対しても俺は本当の事を言えないし相談も出来ない。

    「悩みは……ない。大丈夫だ。ちょっと色々と疲れててな……」

    自然と戸塚から目を逸らしていた。それを見て戸塚は、少し困ったような寂しげな顔を見せた。

    「そっか……。でも、本当に何か悩みとかあったら話してよ。僕で役に立てるかはわからないし、何の力にもなれないかもしれないけど……」

    「……悪いな、戸塚」

    「ううん。いいよ」

    また困ったような顔。恐らく戸塚もわかっている。俺が悩みを抱えていて、それを戸塚に打ち明けようとしてない事を。それを口に出さないのは戸塚の優しさだ。だけど……。

    それは果たして『本物』の優しさなんだろうか。

    自分が欲しがっていたものが、俺には段々とわからなくなってきていた。

    213 = 209 :

    授業が終わった。スマホの仕込みをする為に俺は部室ではなく男子トイレへと先に向かう。だが、その途中で由比ヶ浜に後ろから声をかけられた。

    「ヒッキー、ちょっといい。こっち」

    そう言いながら俺の袖を掴む。昨日俺がした事と似たような事をされた訳だが、由比ヶ浜は俺より強引だった。そのまま返事も待たずに引っ張りながら歩き出す。

    「おい、由比ヶ浜、待て」

    「いいから。こっちに来て」

    離す気配はまるでない。引っ張られないように大人しく後をついていく。着いた先は屋上だった。そこに誰もいない事を確かめてから、由比ヶ浜は俺の袖をようやく離した。真剣な表情が俺に向けられた。

    214 = 209 :

    「その傷さ……」

    ドアを閉めると同時に由比ヶ浜は質問してきた。

    「なんか、引っ掛かれたみたいな傷だよね……。朝からずっと気になってた。どうしたの、それ?」

    「……カマクラにやられた。あいつ、マタタビでも小町に貰ったのか知らないが、昨日は興奮してたからな」

    「それ、本当に?」

    嘘だ。だが、本当の事を言えば、由比ヶ浜はその時の事について詳しく聞いてくるだろう。血が出るぐらい強く掴まれてディープキスされたって言えばいいのか。嘘を突き通すしかなかった。

    「……本当だ。カマクラにつけられた傷だ」

    「ヒッキー、嘘ついてないよね? 本当の本当にそうなんだよね?」

    相変わらずやけに真剣な目付きだった。逆にここまで念を押されて質問されれば、流石に俺もその事に気が付く。

    「雪ノ下か?」

    「え……?」

    「雪ノ下につけられた傷だと、お前は思ったんじゃないのか?」

    「…………」

    沈黙。それも一つの答えだろう。由比ヶ浜は目を伏せて重たい表情を浮かべる。嫌な予想ってのはいつだって当たる気がした。

    215 = 209 :

    「そんなんじゃ……ないから」

    由比ヶ浜が答える。少し悩んだが、俺は思いきって切り出した。

    「由比ヶ浜。俺も隠していた事をお前に言う。だから、お前も隠している事を俺に言ってくれないか。雪ノ下にも昨日聞いたんだが、あいつはそれを教えてくれなかったからな」

    前は、由比ヶ浜は信じてくれないだろうと思って言わなかった。だが、今はその状況も認識も変わっている。

    「……隠していた事って?」

    由比ヶ浜が疑い半分不安半分みたいな顔を見せた。俺はその目を見据えて口を開いた。

    「前に俺は……雪ノ下から文庫本で殴られた。紛い物だと散々言われて本気で非難された」

    由比ヶ浜が一瞬、目を大きく見開いた。だが、その後に出てきた言葉は否定とは真逆の言葉だった。視線を地面に落として独り言の様に由比ヶ浜は呟いた。

    「そうなんだ……。ゆきのん、ヒッキーにも……」

    やっぱりかという気持ちだった。正直、次を尋ねる事が嫌だった。だが、尋ねない訳にはいかない。

    「……お前は、何をされたんだ?」

    「私は……」

    躊躇い。迷う表情。そこから長い間があった。

    やがて由比ヶ浜はぽつりと呟いた。

    「奉仕部を辞めろって……。鬱陶しい……邪魔だって。……何回もそう言われた。絶対あれ、本気だった……」

    握られていた心臓を潰された気分だった。

    216 = 209 :

    「ヒッキーは……この事、信じる?」

    ゆっくりと頷く。今の雪ノ下ならやりかねないと思った。というより、何をしても今ではおかしくないと思う。

    「そっか……」と乾いた声。重苦しい空気が漂った。

    しばらくして、由比ヶ浜は俺の目を見ながらはっきりと言った。

    「やっぱりヒッキーも奉仕部を辞めるべきだよ。辞めなくても……もうゆきのんとは会わない方がいいよ」

    ……由比ヶ浜の言いたい事もわかる。強制ではないのだから、傷や嫌な思いを受けてまで部活に出る意味はない。だけど、それは……。

    「雪ノ下を……見捨てろって言うのか」

    それが俺には出来ない。見限る事も、忘れる事も出来ない。放っておく訳にはいかない。

    由比ヶ浜が首を振った。

    「そうじゃない……。そうじゃなくて……」

    訴える様な声だった。由比ヶ浜は俺の目をじっと見つめる。

    「見捨てるとかじゃないの。私も上手く言えないけど……でも、そうじゃないの。今のゆきのんは確かに変だよ。おかしいよ。でも、ヒッキーの考えてるおかしさとは少し違うと思う。今のゆきのんは何て言うか……」

    そこで言葉が途切れた。何か言葉を探す様に口を動かすが、次の言葉が出てこないのか結局口を閉じる。やがて「……私にもよくわからないけど」と言い訳の様に小さく口にした。

    「でも、とにかくヒッキーも奉仕部を辞めた方がいいと思う。今のゆきのんとは話さない方がいい。変な意味で言ってるんじゃない。このままじゃずるずる変な方に行っちゃうから。余計おかしくなっちゃう。ヒッキーまできっと巻き込まれる。ゆきのんは……ゆきのんはもう一人にしといた方がいいの」

    それは由比ヶ浜の口から出たとは思えない言葉だった。

    ゆきのんはもう一人にしといた方がいいの。

    そんな訳……あるかよ。それだけは何故かはっきりとそう思った。

    217 :

    「……悪い、由比ヶ浜。俺はもう行く」

    言いたい事はあったが、俺はそれを全部飲み込んだ。そのまま踵を返す。言ってもどうせ平行線にしかならない。そう思った。結局、俺はこの一年間奉仕部で何を見てきたのか。目が腐ってるどころか節穴の様にすら思えてきた。

    「……どこ行くの、ヒッキー」

    背中から声。振り向かずに俺はドアノブへと手をかけた。

    「部活に出る。雪ノ下の事が心配だからな」

    お前と違って、という言葉が口に出てきそうになってぐっと堪えた。それを言ったら二度と後戻り出来ない様な気がした。それは、まるで崩壊の呪文の様に思えた。

    「ヒッキーって……いつもゆきのんの事ばかりだよね」

    後ろから声。諦めと悔しさが入り交じった様な声。それはドアを閉める直前の事だった。

    「私だって……好きでこんな事言ってるんじゃ……」

    そこで由比ヶ浜は言葉を止めた。目を向けると、下を向いてこちらを見ようとはしない由比ヶ浜の姿が映った。それは何かに耐えている様な表情だった。

    俺はしばらくの間、そのまま由比ヶ浜の次の言葉を待った。だが、その後を続ける気配は一向になかった。

    「由比ヶ浜。出来る事なら……」

    躊躇った末に俺は由比ヶ浜に向けて自分の本心を告げた。

    「お前にも雪ノ下を助けて欲しいと、俺はそう思っている」

    そして、ドアを閉めた。返事を聞く気はなかった。返事を聞くのが怖かっただけかもしれない。俺は単なる身勝手な願望を押し付けただけだ。そうわかっていた。まるで俺らしくない事を、俺はこの前からずっとしている。

    218 = 217 :

    ここまで

    220 :

    雪カスが苦しんで死にますように

    222 :

    一人称とはいえ、地の文をこうまで読ませるのは才能だわな

    223 :

    ここまでされて見捨てないとかどんなメンタルだよwwwwww
    むしろガハマちゃんの方を軽視してるよな

    224 :

    まあ人にはそれぞれ優先順位があるからな
    ここの八幡にとって雪乃は何よりも大事だってことだろ

    225 :

    どっちが大事というか、明らかに雪ノ下の方が色んな意味で深刻だからそっちを優先せざるおえないだろ。

    226 :

    愛情の反対は無関心なんて原作で八幡が否定してることをわざわざ言わせてるあたり原作へのリスペクトもなくただぶっ壊したいだけなのは明らかだからな

    227 :

    >>226
    わざとじゃないんだ。すまん。直す


    >>185一部修正

    愛情の反対は憎しみではなく無関心だ。無関心という点においては雪ノ下は正反対だった。だとしたら、雪ノ下の裏の心は。

    差し替え↓

    憎しみではない。憎しみだけではキスの説明がつかない。雪ノ下は何か別の感情も抱いている。だとしたら、雪ノ下の裏の心は。

    228 = 227 :

    階段を降りて男子トイレへと向かい、そこで念入りにスマホの仕込みを終えてから俺は部室へと向かった。普段よりも遅い分、雪ノ下はもう来ているだろう。

    トイレで手を長めに洗っている間に気持ちは切り替えた。むしろ逆に踏ん切りがついた。後ろが崖ならもう前に進むしかないというそんな気持ちだ。

    ドアを開ける前にアプリの録音ボタンを押す。最大で四十分近く録音出来る。その間に雪ノ下の反応がなければ、またトイレに行って録音し直せばいい。今日は朝から電源を切ったまま持ってきているから、電池切れの心配もまずない。友達からのメールやLINEなんか入ってこないからな。途中で録音が途切れる心配もない。

    息を一つ吸い、覚悟を決めてからドアを開けた。

    雪ノ下はやはり先に来ていた。『いつも』の場所で『いつも』の様に文庫本を読む雪ノ下。

    「こんにちは」

    顔を上げて、雪ノ下がそう言った。二週間前にはそれが当たり前みたいに思っていた。今では、タイムマシンに乗って過去へと紛れ込んだ様な気になる。それぐらい久しぶりに聞いた気がした。

    229 = 227 :

    「……話があるけどいいか」

    距離を取って、雪ノ下にそう尋ねる。手元の文庫本にどうしても目がいった。不意に口の中に舌の感触が甦る。あまり近付くのを足が拒否していた。

    「何かしら」

    淡々とした声が返ってきた。視線も文庫本の方へと向けられている。関心がないといった素振り。実際、本当に関心がないのか、あるけど隠しているのか、それも俺には判断がつかない。

    一つ間を置いて、溜めを作ってから、俺は雪ノ下にもカマをかけにいった。言う言葉は昨日から決めていた。

    「葉山から全部聞いた」

    反応は一瞬で現れた。背中に氷でも当てられたかの様に雪ノ下の肩が震えた。まるで誰もいない部屋で後ろから肩を叩かれた様な反応だった。手元にある文庫本が小さく震えている。震えているのはもちろん本ではなく雪ノ下の手の方だ。

    予想以上に。予想よりも遥かに大きく。雪ノ下雪乃はその言葉に動揺を見せた。

    230 = 227 :

    「いいえ……それは嘘ね」

    震え声。絞り出す様に雪ノ下が言った。唇も震えていた。

    「……本当だ。昨日、葉山から全部聞いた」

    「嘘よ」

    そう言いつつも相変わらず手が震えている。畳み掛けるなら今しかないだろう。

    「……由比ヶ浜との事も聞いた。ついさっき、屋上で聞かされた」

    「…………」

    「あいつに、奉仕部を辞めろって言ったんだよな。邪魔だとも。鬱陶しいとも」

    「……嘘よ」

    「どこが嘘なんだ? お前がそう言ったんだろ」

    「由比ヶ浜さんの事ではなく、あの男の事よ。……あいつが言うはずないもの」

    あの男。あいつ。お前の彼氏じゃなかったのか。その言葉には明らかに敵意がこもっていた。一体、葉山と雪ノ下の間に何があって、二人は何を隠している。

    「嘘よね、比企谷君。あなたは何も聞いていないわ」

    声は変わらず震えていた。断定口調のくせして、やけに不安げな響きがあった。そうあって欲しいと懇願している様にも聞こえた。

    「いや……本当に全部聞いた」

    俺の声はどうなんだろうな。多分、震えてはいないだろうが、自信の無さが現れてないか不安になった。俺も強気に出れない立場だ。

    「それなら……」

    そう雪ノ下は言った。

    「それを聞いて……あなたはどう思ったのかしら」

    相変わらず俯いたままで、喉の奥からようやく出した様に雪ノ下はそう尋ねてきた。

    231 = 227 :

    どう思ったか。

    この質問によって雪ノ下は確信を得ようとしている。逆に言えば、これは俺にとって踏み絵の様なものだ。まともな回答を返せば雪ノ下を信じさせる事が出来るが、もしそうでなかった場合、雪ノ下は二度とカマに引っ掛かったりはしないだろう。

    どう答える。由比ヶ浜や俺の事から考えて、雪ノ下が葉山に何かしたと考える方が自然だろう。しかもそれは知られるとかなりまずい出来事のようだ。雪ノ下はあからさまにそれが表に出る事を恐れている。

    その上で俺に聞いてきている。こんな事をしたけど、あなたはどう思うかしら、と。俺はそれが何なのかを知るはずもないが、果たしてこれは肯定するべきか、否定すべきか。

    もしも肯定すれば雪ノ下はどう思うだろうか。受け入れてくれたと思い気持ちを緩和させるだろうか。可能性はなくはない。逆に否定したら、前みたいに逆上する可能性が強い。録音を目的ともしているから逆上させても構わないが、それによって事態が解決する事はないだろう。だとしたら、やはり……。

    まるで死刑判決を受ける前の罪人の様に、雪ノ下は俯いたまま小刻みに震えていた。俺は気持ちを落ち着けてから、雪ノ下に声をかけた。

    「……どうも思ってない。雪ノ下は雪ノ下だ」

    「…………」

    沈黙。だが、変化はあった。雪ノ下の両目からすーっと涙がこぼれ落ち、それが頬を伝って持っていた文庫本に落ちた。一滴、二滴、絶え間なくずっと。

    「やっぱり……」

    雪ノ下はそこで顔を上げた。そこには泣きながら微笑を見せている雪ノ下の顔があった。

    「嘘だったのね、比企谷君。あなたがそんな風に思うはずないもの」

    その言葉には確信に満ちた響きがあった。雪ノ下は涙を拭こうともせず、一人わかりきった表情で泣いていた。

    232 = 227 :

    「雪ノ下……」

    何を言えばいいかわからなくなった。どうして雪ノ下はあれだけの言葉で嘘だと見抜いたのか。そして何より、どうして泣き出したのか。

    だがそんな事を考える暇もなく、雪ノ下から冷ややかな言葉が飛んできた。それは、氷という表現を通り越して体中を凍えさせる程の冷たさに満ちていた。

    「比企谷君。そこに正座して」

    雪ノ下は涙を今も流しながら目の前の床を指す。

    「愚かにも私を騙そうとした罰よ。そこに正座しなさい」

    まただ。またこの言葉。この前の続きの様に雪ノ下は床を指した。ただ、この前と違ってそこには有無を言わさぬ響きが含まれていた。雪ノ下は涙に濡れたままで厳しい視線を俺に向けていた。

    233 :

    「わかった……」

    俺は素直に雪ノ下の言葉に従った。雪ノ下の口調や雰囲気からは絶対に断らせないといった意思があふれていたし、それに録音する機会でもあった。雪ノ下の変わりようを証拠として残すなら、言う事をきいた方がいい。

    「……これでいいのか?」

    椅子に座っている雪ノ下。その正面、足元から少し離れた場所に正座する。そのままだと、自然と目線が、雪ノ下の足、太もも、そしてスカートの奥にいく。流石にこれはまずい。俺は下を向いた。向かざるを得ない。

    「…………」

    雪ノ下はしばらく沈黙していたが、やがて俺の前に自分の足を伸ばすようにして差し出した。

    「上履きを脱がせなさい」

    はい?

    一瞬の間が空いた後で、勢いよく文庫本が飛んできた。腹らへんに当たり、床にばさりと落ちる。不意打ちだったので息が詰まり思わずむせた。相変わらず無茶苦茶しやがる……!

    「比企谷君。上履きを脱がせなさいと、私はそう言ったのよ。その残念な頭でも、それぐらいの事は理解出来るでしょう? それとも脳から体に命令が伝わるのが数秒もかかるほど、あなたは鈍い神経をしているのかしらね」

    俺はどこかの恐竜かよ。そう思いながらも、雪ノ下の足に手を伸ばした。今はまだ逆らわないで、そのまま録音させる事を優先した。

    234 = 233 :

    雪ノ下の伸ばされた足。そのかかとあたりを手に取って、文句を言われないよう丁寧に上履きを脱がせた。一体何をしてるんだろうかと自分でも思う。床に正座して同級生の女の上履きを脱がせている姿は相当間抜けというかアレだろう。平塚先生あたりが見たらその場で固まりそうな気がする。

    「脱がせたぞ……。この上履きはどこに置けばいい」

    瞬間、頬に衝撃。痛みが来て、その後、熱がゆっくりと左頬全体に伝わった。視界の端に雪ノ下の整えられた手が見えた。

    「おい、雪ノ下……。俺はどうして今、ビンタされたんだ?」

    すぐさまもう一撃。今度は逆頬だ。「黙ってなさい」と雪ノ下は一言。最早、こいつは叩くのに理由なんか必要としていない。

    「上履きはそこらにでも置いておけばいいわ。それより、次は靴下よ。早くしなさい」

    それが当たり前だと言わんばかりの口調。溢れていた涙もいつのまにか止まっていた。そして、その涙が流れたのは、全部俺のせいといった睨み付ける様な瞳。

    悔しさだとか怒りの感情が沸き上がる前に、空しさの方が先に込み上げてきた。黙って雪ノ下の言葉に従い靴下を脱がせにかかる俺は、録音の為とはいえ、自分でも本当に大馬鹿の様に思えた。

    235 = 233 :

    さっきと同じく、また踵あたりに手をかけて雪ノ下の足を固定し、空いている方の手で丁寧に靴下を脱がしにかかる。爪先あたりを引っ張って脱がすと、どうせまた手が飛んで来るのだろう。その未来図がありありと予想できたから、靴下を履く方の端を持って巻くように脱がしていった。

    「…………」

    無言。俺はずっと顔を上げない様にしていたから、雪ノ下が今どんな表情をしているかはわからないが、雰囲気からある程度察しはつく。どうせ冷たい目で見下ろしているのだろう。何を考えているのか本当にわからない。

    脱がせた靴下は、上履きの中に入れた。するとすぐに逆の足が差し出された。

    「こちらもよ」

    「……ああ」

    同じようにして、左足も上履きと靴下を脱がせる。別に匂いはしなかったが、そんな事を考えている時点で自己嫌悪に陥った。黙々と作業。そう、これは作業だ。そう言い聞かせ、二つとも脱がし終えた。雪ノ下の両足が裸足になる。

    普段はまず見る事のない雪ノ下雪乃の素足。

    それが目の前にあるというのが、何とも妙な気分だった。

    236 :

    これなんてプレイ?

    237 :

    ただの馬鹿だよなあ・・・
    録音なのに言葉にせず行動だけしてるあたりがまた

    238 :

    想像するとすごいシュールですね

    240 :

    逆に雪乃に葉山以外の結婚話が持ち上がり、雪乃が葉山に男避け依頼+八幡が
    好きだという事を告げて、葉山に強引に認めさせたとか?

    241 :

    >>240
    雪乃の態度からしてそれはないだろ。だったらああいう物言いにはならないと思うし
    それにそういった話あるなら葉山こそ不適格だぞ?なら葉山で良いかとそのまま話進められかねないから

    242 = 233 :

    「今日はやけに素直ね、比企谷君」

    不意に冷水をぶちまけた様な雪ノ下の冷たい声がかかった。

    「私の言う通り、床に正座して、上履きと靴下を脱がせて、更に頬まで叩かれてるのに、何も文句が出ないなんて。むしろ、人として異常と言えるのではないかしら」

    じゃあ、それをさせてるお前の方はどうなんだよ? そう思ったが口には出さなかった。どうせまた、はたかれるだけだ。

    「本当にあなたには人間の尊厳と言うか、誇りと言うものがまったくないのね。それでは昆虫や家畜と同様よ。いえ、人間の役に立っている分、家畜の方がマシなぐらいね。家畜以下、昆虫未満といったところかしら?」

    雪ノ下の毒舌が続く。それはいつもの事だから構わないが、その口調にはっきりと苛立ちが混ざっているのが気になった。これまで全て雪ノ下の言う通りに従ったというのに、それがまるで気に食わないといった口調だ。

    「クズタニ君。あなた本当に人間? 実はヒキガエルで、それが人間のフリをしているだけではないの?」

    おまけに悪意までこもっていた。そしてそれがエスカレートしていきそうな雰囲気を今の雪ノ下は醸し出していた。

    「つまらない男ね。いえ、言い直すわ。本当につまらないヒキガエルね。何でそんなに面白味のない存在なのかしら」

    雪ノ下が不意に椅子から立ち上がった。

    243 = 227 :

    「顔を上げなさい」

    冷徹な口調。もう逆上されるのを覚悟でそろそろ終わりにすべきか迷った。だが、これまで雪ノ下の言う事を最後まできいた事は一度もない。きけばどういう反応を示すのかそれが気になった。何かが変わるかもしれないという可能性を俺は捨てきれなかった。

    息を吸って、それから呼吸を止める。両頬は既に赤くなって腫れ上がっているだろう。いきなりのビンタにまた備えながら、俺は顔を上げた。

    雪ノ下からの攻撃はない。というか、俺はそこで完全に固まった。

    雪ノ下はためらいなくスカートの中に手を入れると、俺のすぐ目の前で見せつける様にゆっくりと下着を下ろしていった。膝あたりまで下ろして、それから片方の足を軽く上げて足から抜き取る。慌てて目を逸らした。だが、逸らしながらもどうしても目がいく。

    雪ノ下はまた同じ事をして、下着を完全に脱ぎ終えた。白色のレースのついた可愛らしい下着。それを片手でつまむ様にして持ちながら、俺の目の前に突き出す。

    「何て顔をしているのかしらね。気持ち悪い」

    そう言った瞬間、雪ノ下の手が伸び俺は髪の毛をいきなり掴まれた。そのまま、強引に下に引かれる。

    「おま……! 雪ノ下!」

    「つまらないから面白くしてあげるわ、クズタニ君」

    何を考えてるのか、雪ノ下は下着を俺の頭に押し付け、それをかぶせはじめた。本当にどうかしてる!

    244 = 227 :

    「やめろ! おい……! 雪ノ下っ!」

    もちろん抵抗した。したが、正座の体勢で頭を下に無理矢理下げさせられると手も上手く出ない。見えない。力も入らない。

    だったらいっその事正座を崩して逆に自分から床に寝転びにいくべきだった。だが、そんな事を思いつく余裕もなかった。無理矢理に頭から下着をかぶせられ、すぐさま真横に突き飛ばされた。

    肘に電気が走る様な激痛。体をかばおうとして反射的に出してたのか、思いきり打った。そのせいで反応が遅れた。また腹に蹴り。一撃目をもろに受け息が詰まる。二撃目に備えて腹を手でかばったのは経験からくる反射的な防御だった。だが、今回はそれが完全に裏目に出た。

    カシャッ。

    携帯カメラのシャッター音。背中に流れる冷や汗を感じながら見上げると、スカートの中が見えるか見えないかのギリギリの位置で、スマホのカメラをこちらに向けている雪ノ下の姿。

    カシャッ。もう一枚。カシャッ。もう一枚。

    「い、今のあなた……。っ……」

    吹き出しそうになっているのを必死に堪えている雪ノ下の顔。

    「最高に……っ……す、素敵よ……」

    カシャッ。カシャッ。カシャッ。

    「頭からパンツをかぶって……っ。どこからどう見ても変態……。変質者そのものね……っ」

    それは悪意と嘲笑が混ざった、悪魔の様な笑みだった。本当に楽しそうに雪ノ下は笑っていた。

    245 = 233 :

    とりまここまで

    246 = 238 :

    ドMにはご褒美なんだよなあ

    248 = 236 :

    いやもう狙ってるのは分かってるんだけど
    むりやり下着を頭にかぶせてくる雪ノ下はさすがに草

    249 :

    乙です
    ご褒美にしか見えん

    250 :

    乙…
    てか葉山に何をされたのかヒントみたいなのがないと
    ただゆきのんが乱心して八幡いたぶって悦に浸る屑女でしかなくてヘイト溜まる一方だぞこれ


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