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    元スレ京太郎「修羅場ラヴァーズ」久「もうちょっと、近づいて」

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    みんなの評価 : ★★★
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    801 :

    あこたそー

    802 :

    はたして生きて明日を迎えられるのかのう

    803 :


    瑞原はやりには、憧れの人が二人いる。

    805 :

    ほう

    806 = 1 :

    ある日の休日――枕に突っ伏すように転寝をしていたはやりは、母親の声で目を覚ました。


    「はやりー。起きてるー?」

    「うー……?」

    「ちょっと、お店番おねがいしたいんだけどー」

    「う~……」


    モゾモゾと身動ぎするが、中々に起きる様子を見せない。

    そんな娘の様子に、美月は仕方ないかと溜息を吐いて――


    「はー……金髪のお客さん、待たせちゃってるんだけど――」

    「っ!」

    「はやっ」


    その言葉を聞くなり、勢いよく起き上がるはやり。

    眠気に負けていた眼差しは既になく、キリっとした顔付きで階段を降りていく。

    慌ただしい足音は、彼女の心の中そのものだ。


    「我が娘ながら……」


    こんなので元気になるとは、現金なヤツ――と美月は独り言ちて娘の部屋を見渡す。

    さっきまではやりが眠っていたベッドの枕元には、いくつかの麻雀牌が転がっていた。

    807 = 1 :

    急いではやりが降りていった先には――母の言葉通り、金髪のお客さん。

    ショーケースの洋菓子を前に、腕を組んで悩んでいる様子の男の人。


    「いらっしゃいませっ」

    「お、はやりちゃん」


    小さいのに偉いね、と微笑みかけてくる彼。

    この人こそ――はやりが異性として憧れる男の人。


    「おすすめとかあるかな?」

    「はいっ このマドレーヌとか――」


    年上のお兄さんの、須賀京太郎だ。

    808 = 805 :

    洋菓子屋に男性が来ることの意味を考えるんだはやりちゃんェ

    809 :

    じ、自分用だから

    810 :

    披露宴でのケーキの下見なんだよ、きっと

    812 :

    まさか、もう一人の憧れの人と…

    813 :

    なんと

    815 :

    美月さんという可能性も...

    816 :

    この展開すき!

    817 :

    まさかの親子丼展開と申したか

    818 :

    彼と出会ったのは、おばあちゃんのお見舞いに行った帰りのこと。

    少し考えごとをしていたら、階段から転げ落ちそうになって――思わずギュッと目を瞑ったら、彼に抱きとめられていた。


    「大丈夫? ケガない?」


    病院の灯りのせいか、その顔は何だか眩しく見えて――それでも、ずっと見つめていたくなるような不思議な気持ち。


    それからずっと、胸の奥がフワフワするというか。

    こうして客として訪れてきた彼とお喋りしているだけでも、幸せな気持ちになる。

    小学2年生のはやりには、この感情の正体はわからない。

    けれども――この時が長く続いてほしい。


    そう、思っていた。


    819 :

    そう思ってたときがはやりにもありました

    820 :

    ロングロングアゴー、ってくらい昔の
    話が

    821 = 1 :

    「ありがと。また来るよ」

    「はいっ! 焼き立ていっぱいつくってますからっ!!」


    片手にお持ち帰り用の袋を持ち、もう片方の手でバイバイと手を振る彼を見送る。

    店の扉が閉まり、彼の背中が見えなくなって、ようやくはやりは胸を撫で下ろした。


    ――ちゃんとおでむかえできたかな? また来てくれるかな? こんどは――


    「まったく、見事にませちゃってー」

    「わっ」


    ドキドキが収まらないうちに肩に手を置かれたものだから、落ち着く暇もなくはやりは文字通り飛び上がった。

    振り向くと、母が頬に手を当てて何とも微笑ましい表情を浮かべている。


    「そ、そんなんじゃないよっ」

    「へぇー? じゃあ、どんなん?」

    「うっ……」


    年齢相応か、不相応か。

    どの道、そっちの方向にはまだまだ疎い彼女だった。

    822 = 1 :

    また、ある日のこと。


    「あれ……は」


    おばーちゃんの病室から見付かった忘れ物を受け取りに行った時。

    うちの洋菓子店の紙袋を持った憧れの人が、廊下の奥に向かって歩いていったのを見付けた。

    その隣に、女の人を連れて。


    「……」


    彼はまだ、はやりに気付いていない。

    そして、その女の人が誰なのか――はやりは、知っている。

    823 :

    あっ……
    最高なんじゃあ~

    824 :

    ですよねー
    ですよねー…

    825 :

    曇らせたい、その笑顔

    826 = 1 :

    用事は済ませたけれど、はやりは家に帰れなかった。

    どうしても、彼らが気になってしまったから。

    こっそりと、彼らの足取りをはやりは追いかけて。


    「あら」


    ――その先の、病室。

    そこには、彼と、一緒に歩いていた女の人と――


    「最初の見舞い客はずいぶんとかわいらしいのね」


    はやりの心の中を占める、もう一人の人。

    はいの

    827 = 1 :

    用事は済ませたけれど、はやりは家に帰れなかった。

    どうしても、彼らが気になってしまったから。

    こっそりと、彼らの足取りをはやりは追いかけて。


    「あら」


    ――その先の、病室。

    そこには、彼と、一緒に歩いていた女の人と――


    「最初の見舞い客はずいぶんとかわいらしいのね」


    はやりの心の中を占める、もう一人の人。

    牌のおねえさんこと、春日井真深がベッドに寝ていた。

    828 = 1 :

    はやりにとって、春日井真深は不思議な人だ。

    落ち込んでる時に元気付けてもらったことがある。

    危ないところを助けてもらったことがある。

    だが、京太郎と真深が一緒にいる理由は――?


    「あれ、はやりちゃん? どうしてここに?」

    「あ……」


    彼の問い掛けで我に帰る。

    そうだ、今は――


    「あ、あの……勝手に入っちゃってごめんなさい……っ」


    「それと……前は助けてもらって、ありがとうございました!」


    勝手に入ってしまったことの謝罪と、助けてもらったことへのお礼をする。

    彼と彼女の関係がどうであれ、やらなきゃいけないことはある。

    829 = 1 :

    「いいのいいの。偶然の出会いが3回ってことは縁があるってことだし……お見舞いうれしいわ」


    何てことのないように、真深は笑った。

    京太郎と、女の人――真深のマネージャーも驚いた顔は浮かべているもののはやりを咎める気はないようだ。

    はやりはほっとして、もう一つ気になっていることを口にした。


    「あの……」

    「ん?」

    「お二人は、お付き合いしてるんですか?」


    京太郎と真深を交互に見渡して、はやりは質問をぶつける。

    内側のドキドキを抑えながら、返ってくる答えに耳を傾け――


    「いや、ないから」

    「即答っすか」

    830 = 1 :

    「そうなんだ……」


    その返答に――自分でもビックリするくらいにホッとして。

    結局はやりは、その日に気が付くことはなかった。

    京太郎が、足繁くうちの洋菓子店に通っていた理由を。

    831 :

    はやりんより年上となると原作開始時だとこの京太郎は30代…雀力で老化を抑えられる世界だけど久は理由付けは可能だが老け専、中年好きになる。

    832 = 1 :

    その次の日から、はやりは何度も真深の見舞いに行った。

    晴れの日には、お店のお菓子を持って行ったり。

    雨の日には、てるてる坊主を作りに行ったり。


    「外が暗くなってきたな……」

    「もう子どもは帰る時間だなー。京太郎」

    「はいはい、わかってますよ」


    そして、真深とのお話が終わった後には京太郎に家まで送ってもらえる。

    真深が入院しているから有り得た時間。

    本当は喜んじゃいけないのに――はやりは、この時間が好きだった。


    彼女の容態が、悪化するまでは。

    833 = 823 :

    はやりん10
    京太郎22くらいでええんちゃう?
    シノハユのおかげで大人組の子供時代も無理なく見れて最高ですわ

    834 = 1 :

    ――春日井真深が、東京の病院に移った。


    はやりの手元に残されたのは、真深に貰った髪飾りだけ。

    彼女の連絡先も聞きそびれた。

    あの病室での時間は、もう無い。

    仕方のないことだ、と理解していても寂しさは拭えない。


    「はやり宛に手紙とー……ライブチケットだって」


    だから。

    その機会が巡って来た時に、はやりは一も二もなく飛び付いた。

    835 = 1 :

    こうがんざい。

    以前の真深との会話の中で出て来た言葉。

    それがどんな薬なのかはやりは知らないけれど――身体にあまり良くないものだ、というのは理解できた。


    なのに。


    「はやりちゃん」


    ライブ会場の控え室で再会した真深は、何てことのないように、はやりの頭を撫でてくれて。


    「楽しんでってね」


    マネージャーも、京太郎も、真深を強く信頼していた。

    836 = 1 :



    「私」


    「ちょーがんばるからっ!」


    837 = 1 :

    ステージの上の春日井真深は、とてもキラキラしていた。

    サイリウムとか、舞台の照明とか、衣装とか――そんなのじゃない。

    まるで、春日井真深という人そのものが、輝いているように見えて。


    「……すごい」


    みんなを元気にしてくれる人。

    自分が大変なのに――それ以上に、頑張る人。


    「……私も」


    ――こんな人になりたい。

    見ているみんなを、元気にできるような人に。

    838 = 823 :

    なぁーんだ
    修羅場かとおもってたけどはやりん成長物語かぁ

    839 = 1 :

    ライブが終わっても、観客の興奮は収まらない。

    勿論はやりもその中の一人。

    素直な気持ちをメールに書き出して、手紙に記された連絡先に送信する。


    「……返事ないなぁ」


    忙しいのか、送ったメールへの返信は返って来ない。

    はやりの足は、自然と真深たちのいた控え室へと向かった。

    840 = 1 :

    建物の中に入って、少し角を曲がった先。

    控え室へと続く廊下で、すぐに真深と京太郎は見付かった。


    「……」

    「……」


    真深は、大分疲れているように見えた。

    会話は聞こえないが――二人の口の動きと雰囲気から、真剣な話し合いをしているらしい。

    この機会を逃したら、次に会える時がいつになるのかわからない。

    はやりは、少し駆け足気味に二人に駆け寄ろうとして――


    「あ……ぇ?」


    二人が、抱きあって。

    映画のCMで見たかのような、キスをしている姿に、足を止めた。

    841 :

    先が長くないと思うとやっぱり一緒になりたいとはなかなか言えないよね

    842 = 1 :

    それからはずっと、頭の中がグチャグチャで。

    帰りの寝台列車のベッドに包まって目を閉じても、二人の姿が心の中を離れなかった。


    ――須賀さんは憧れの人。異性として、憧れた人。

    ――真深さんは憧れの人。同性として、憧れた人。



    「ないからって……言ってたのに……?」


    あの二人の姿は、夢なんかじゃない。

    だったら、真深はウソをついたのか。

    答えてくれる人は、いない。

    843 = 1 :

    「おかえりー。ライブどうだったー?」

    「うん……」


    「はやり?」

    「うん……」


    「……お風呂入る?」

    「……うん」



    「……疲れてるのかしら?」

    844 :

    「はやりー。ちょっと店番おねがいー」

    「はーい」


    ある日の休日――ベッドに寝っ転がって本を読んでいたはやりは、母の呼び声で身を起こした。

    とんとん、と静かに階段を降りていく。


    「……あ」

    「やっ」


    お店のショーケースの前には――ライブが終わってからずっと会えなかった人。

    春日井真深が、はやりを待っていた。

    845 = 1 :

    真深と二人で店を出て、近場の公園を歩く。

    風も静かで、二人の他に人影は見当たらなかった。


    「この前はゴメンね。ライブ終わった後ちょっと色々あって」

    「いえ……」


    真深と、二人きり。

    聞きたいのは、彼との関係。


    「まだ病気……のこってるんですか?」


    でも――それを口にするのが、今はとても怖い。

    もっと前は、すぐに言葉にできたのに。

    846 = 1 :

    「うん……手術することになった。もし成功してもしばらく養生だって」


    真深が足を止めて、空を見上げる。

    彼女が今、どんな顔をしているのか。

    はやりには、わからない。


    「できれば元気な春日井真深のまま去りたかったんだけどね」

    「はやりちゃんとは仲良くなりすぎて話すか迷ったんだけど……今、話しちゃった」


    「ゴメン」



    847 = 1 :

    初めて聞く、真深の心の底からの弱音。

    涙で滲む彼女の瞳。

    いつもみんなを元気にしようと、笑顔でいた彼女が。


    「死ぬのかな……私」


    その姿を見て。

    はやりは――やっと、一つの答えを見つけた。

    848 = 1 :


    「私が、がんばります!」


    こんな人みたいに、なりたい。


    「私ががんばって牌のおねえさんみたいになって、みんなを元気にします!」


    だって。


    「だから真深さんもがんばって! 病気に負けないで!」


    こんな人みたいに、なれば――

    849 = 1 :

    「もう……完全に負けてたんだけど」


    この人が、いなくなった後で。


    「はやりちゃん見てたら……また、頑張れそうな気がしてきた」


    この人みたいに、彼といっしょになれるから。

    850 :

    ああ、純粋な子が穢れていく(ゲス顔


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