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    元スレ和「フランスより」咲「愛をこめて」

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    みんなの評価 : ★★★
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    301 :

    乙 このスレ見るとお菓子が食べたくなる

    302 :

    やっと両想いになれて良かった

    303 :

    咲のどが公式以外ではほぼ死滅状態なのは認めよう
    それでも俺は咲のどが大好きだ

    305 :

    ありがとう!咲さんの誕生日に読めて幸せ!更新お疲れ様です!

    307 :

    やっぱ王道は良いものだ

    308 :

    久々に読み返したけどやっぱいいね~

    309 :

    今月末に更新予定です
    お待たせしてすみません

    311 :

    待ってます

    312 :

    続き楽しみにしてる

    313 :

    今週末に更新予定です

    315 :

    はい

    316 :

    ひゃっほー 待ってる

    317 :

    出発は、その日の深夜だった。

    空港には夜の九時頃までに着いておけばいい。

    なので、約半日分はスケジュールに猶予がある。



    「本当にお世話になりまして……」

    ミチコ「こちらこそ、快適なパリのお手伝いができて嬉しかったわ」

    会計を終わらせた後。

    マダム・ミチコがにっこりと笑って領収書を手渡してくれた。

    ミチコ「出発まで荷物を預かることも出来るけれども、いいの?」

    「はい。そんなに多くはないですし……これ以上ここにいたら、帰りたくなくなってしまいます」

    ミチコ「まぁ。嬉しいこと言ってくれちゃって」

    好意は気持ちだけ受け取っておくことにして、咲は十日間の住まいを後にした。

    318 = 1 :

    パリ最終日、咲がまず向かったのは貴子のところだった。

    待ち合わせ場所はすっかり馴染みとなった、明華が勤めるレストラン。



    「Bonjour!」

    いつの間にか口に馴染んだフランス語で挨拶をすれば、明華が出迎えてくれた。

    明華「貴子さん、奥の方に座ってますよ」

    「わかりました。明華さんにも本当にお世話になりました」

    明華「寂しくなりますね……。またぜひ食べに来てださいね、咲さん」

    「えぇ、ぜひ」

    固く握手を交わすと、咲は貴子が待つ奥へと進む。

    319 = 1 :

    貴子は日当たりのいい席でゆっくりとカフェを楽しんでいた。

    「お待たせしました」

    貴子「咲」

    「昨日はあのまま帰ってしまってすみませんでした」

    貴子と目が合うと、咲はすぐに頭をさげた。

    貴子「いや、何か変な輩に付きまとわれたんだって?災難だったな」

    「いえ。和ちゃんが助けてくれましたから」

    貴子「大事にならなくて幸いだったな。今日が最終日らしいが、どうする予定なんだ?」

    「特には……あ、昼過ぎくらいから新子さん達が送別会をしてくれるそうなんですけど」

    貴子「和は?」

    「それが……」

    貴子に問われて、咲は眉間に皺を寄せた。

    320 = 1 :

    和と結ばれた翌朝、最初は穏やかに朝食などを楽しんでいたのだが――

    どうも、咲の何かが彼女に天啓を与えたらしい。

    キッチンに引きこもって出てこなくなってしまったのだ。


    貴子「引きこもるって……あれか、カレンの『卒業試験』」

    「ご存知なんですか?」

    貴子「あの店を知る者には結構有名な話だからな。そうか……じゃあ、和も壁を壊せそうなんだな」

    「だと良いんですけど……」

    咲の顔は晴れることはない。

    もちろん、今の和の状態は歓迎すべきものだ。

    行き詰っていた作品作りに突破口が見つかったのは、彼女を応援するものとして素直に嬉しい。

    321 = 1 :

    (でも、これじゃあ最後に会えるかどうか……)

    先の別れ際にアドレスを交換したというものの、次はいつ会えるかわからない。

    それが、咲にはどうにも寂しかった。

    貴子「つまらなそうな顔をしているな」

    そんな咲を見て貴子が笑う。

    貴子「まぁ、今生の別れでもないんだし……メールやスカイプだってあるんだから」

    諭されるように言われてしまえば、咲もいつまでもふてくされているわけにもいかない。

    気を落ち着かせるためにショコラを一口飲んだところで、貴子が「それで」と切り出した。

    貴子「日本に帰ったら、どうするんだ?」

    「……」

    貴子「仕事に戻るのか?」

    それは咲の胸に痛い質問だった。

    貴子には、咲が今の仕事がうまくいっていないことが薄々知られているようだった。

    322 = 1 :

    「仕事は……やめようと思います」

    決死の思いで出した返事は、掠れたような声になってしまった。

    「無職になってしまいますが、貯金も少しあります。暫くは暮らしていけると思うので、新しい仕事を探そうと思ってます」

    「今度は貴子さんたちのように……胸を張って誇りを持って、文章を書いていきたいです」

    貴子「そうか……」

    咲の決意を静かに受け止めると、貴子は傍らのカバンから名刺を一枚出してきた。

    貴子「日本にいる知人だ。私のようなエージェントをしている。スポーツ関係が得意で、関係メディアへの顔は広い」

    「はぁ……」

    貴子「先日連絡を取ったんだが……ちょうどアシスタントを探しているらしい」

    「え、それって……」

    貴子「文章力と根性のあるヤツなら大歓迎だそうだ」

    そうして彼女はぎこちなくウィンクをしてみせた。

    貴子「それと、シンガポール・チームもな。日本の面白い話をレポートにして送ってくれと」

    「……!!」

    323 = 1 :

    貴子「咲と一緒に仕事をした全員の総意だ。引き受けてくれるな?」

    咲の目に思わずきらりと光るものが滲む。

    「もちろんです!貴子さん、ありがとうございます……!」

    咲は、もう一度深く頭をさげた。



    ――ピリリリリ

    しばらく貴子と談笑していると、突然機械的な音が鳴り響く。

    貴子「ちょっと失礼」

    味気ない電子音は貴子の携帯電話だった。

    フランス語で応対するものの、相手のせいかすぐに日本語に切り替わる。

    貴子「そうだ、今その話をしていたところで……え、咲か?」

    「え、私?」

    貴子「ちょっと待て……咲、今からカレンの店に行けるか?」

    突然の貴子の問いかけに、咲は「一応」と緩慢に頷いた。

    「予定は二時までないので、その間でしたら……」

    貴子「わかった……憧、聞いての通りだ。今から咲をそちらに向かわせる」

    「新子さん?」

    咲は目をぱちくりと瞬かせた。


    ■  ■  ■

    324 = 1 :

    ビストロから歩いて程なくして、咲の視界に特徴的な看板が入ってくる。

    「Rendezvous」――アメリカから単身やってきた女性が作り上げたパティスリーは「出逢い」という名前だった。


    (確かに、ここで沢山の人に出逢うことができた……)

    先ほどの貴子にオーナーのカレン、プチホテルの管理人であるミチコ、カルロ夫妻

    咲の背を幾度となく押してくれた憧に明華。

    しかし、咲にとっていつだって中心にいたのは一人だった。

    (和ちゃん……)


    カラン、と音を鳴らしてドアが開く。

    カウンターには先ほどの電話の相手である憧が佇んでいる。

    「来てくれてありがとう。宮永さん」

    「あの、私に用事って……」

    「和の卒業試験のことなんだけどね」

    「な、何かあったの?」

    その言葉に反応して、咲は思わず憧に詰め寄る。

    それを彼女は「落ち着いて」と優しくいなした。

    「和から連絡があったの。『今までで一番のものが出来ました』って……」

    「!!」

    「それで、これからカレンが見ることになったの」

    「出来た、の……」

    キッチンにこもること半日以上、和はまた壁に挑戦しようとしている。

    325 = 1 :

    (どんなものが出来たんだろう)

    彼女の最高傑作がどういうものか酷く興味がわいた。

    カレンの目に叶えば、和のオリジナルとして店頭に並ぶ――

    今度こそ、そのチャンスはやってくるのだろうか。


    「それでね。その試験に宮永さんも同席してもらいたいの」

    「はぁ……えぇっ!?」

    ふいに憧から言われた予想外の言葉に、咲は小さく叫んだ。

    「で、でも私は部外者だよ!?」

    「和たっての希望なの」

    「それにしたって……」

    「宮永さんがいたからこそ、出来たお菓子なんだって……それでカレンも特別に許可を出したの」

    そう憧が告げる横で、他のスタッフ達が何故か意味ありげにうんうんと頷いている。

    「もうすぐ和の準備が終わるはずだから、そこから厨房に入って……見届けてあげて」

    「でも……」

    「お願い。和も柄になく緊張して縋りたいだけなんだから」

    「わ、分かったよ」

    咲は言われるままおずおずとカウンターの奥の厨房へと入っていく。

    326 = 1 :

    今回はここまでです。
    あと2回程で終わります。

    328 :


    終わってしまうのは寂しいな

    329 :

    おつ
    やっぱ咲和は良い

    331 :

    今年もいい咲のどをありがとう
    よいお年を

    332 :

    こういう咲和もアリですね

    333 :

    い、淫ピの方が普通じゃないから(震え声)

    334 :

    楽しみにしてます

    335 :

    そろそろ来ますように

    336 :

    フランスのエビ食べたらセーヌ川の臭いがした
    日本に帰りたくなった大学生の夏

    339 :

    今月中に更新予定です
    お待たせしてすみません

    340 :

    やった!待ってる

    341 :

    待っ照

    342 :

    うむ

    344 :

    全てがステンレスで出来た室内には、あの朝と同じような甘い匂いが漂っていた。

    しかしどこかが少しだけ違う。

    バターと砂糖だけではなく、別の香ばしい匂いが混じっているようだった。

    カレン「来てくれたんだな。咲」

    最初に咲に気づいたのはオーナーのカレンだった。

    彼女は自分の隣の席を咲に勧める。

    厨房にきちんとしたテーブルなどもちろんなくて、厨房の真ん中にある巨大な作業台がその代わりだった。

    「出来ました……って、咲さんっ!?」

    オーブンから何かを取り出していた和が素っ頓狂な声をあげる。

    作業に集中していたのか、何も気づいていなかったようだ。

    カレン「お前が所望したんだろうが、和」

    「そうですけど……本当に来てくれるとは……」

    「私、やっぱりお邪魔かな?」

    「そんなことないですっ!」

    咲の言葉を、和は慌てて否定する。

    「どうしても……完成品の第一号は咲さんに食べてもらいたかったんです。出来上がるのがギリギリになりましたけど」

    そう言って和は小さな皿を咲の前に置いた。

    「これは……」

    小さなパイのようなお菓子だった。

    ドーム型をしており、表面には果物で美しくデコレーションされた王冠が載っている。

    345 = 1 :

    「食べてもいいの?」

    「どうぞ!」

    その言葉を受けて、咲はさっそくフォークをいれてみる。

    さくりと軽快な音と共にあの不思議な甘い香りが広がった。

    中にはクリームがぎっしりと詰まっていて、ところどこ ろにナッツを砕いたものも入っている。

    どうやら香ばしいのはローストしたアーモンドのようだ。

    一口頬張れば、より深い香りで満たされていく。

    フランス菓子らしい、たっぷりのバターと砂糖の風味。

    しかし想像以上にくどくない。

    余計なものを使っていないせいか、食の細い咲でもぺろりと食べれてしまいそうだ。

    カレン「……ふむ」

    うっとりと舌鼓を打っていると、鋭くなったカレンの声が聞こえてきた。

    彼女の目の前にもいつの間にか咲と同じ焼き菓子がある。

    半分ほどが、すでにカレンの胃に消えたようだった。

    カレン「こいつの名前は?」

    「Matin pour le roi(王様の朝)です」

    応える和の声も表情も、いつになく厳しいものだ。

    カレン「コンセプトは?」

    「名前の通り、朝に食べるケーキです……まぁ、昼でも夜でも良いんですが」

    「普段お菓子なんて食べない時に食べるケーキ、です」

    346 = 1 :

    カレン「大元はガレット・デ・ロワだよな?コンセプトも実物も、私が出した『特別』とはかけ離れている気がするが」

    「……私も最初はそう思ってたんですけど」

    和の声が、一瞬だけ震える。

    「誕生日とか、何かのお祝いとか。ガレット・デ・ロワもそうですけど、ケーキって大体『特別』な日に食べるものでしょう」

    「だから、特別な日って……案外ケーキにとっては普通なんじゃないかと思いまして」

    カレン「特別な日が、普通……ねぇ」

    「それよりも、特別にお菓子を買って食べようとは思わないような時に敢えて食べるケーキって凄く特別で贅沢なものだって……」

    「咲さんが、私に教えてくれたんです」

    カレン「へぇ」

    ちらりとカレンの視線を受けた咲は、何だか恥ずかしくなって誤魔化すようにまた一口ケーキを頬張る。

    「あと、咲さんが教えてくれたことがもう一つありまして」

    そう言った和がもう一品出してきた。

    見た目は先ほどのケーキと瓜二つだが、味と香りがまるで違う。

    今度はベリーとカシス、ほんの少しのオレンジに満ちていた。

    「こちらはMatin pour la reine(王妃の朝)っていうんですけど、最初のと対になっていて」

    味わいこそ違うが、飽きが来ずに食べ切れそうなところは同じであるという。

    347 = 1 :

    「咲さんが教えてくれたもう一つの『特別』が……好きな人と一緒に食べることでしたから」

    「これなら生菓子じゃないので、焼きたてでも冷めても美味しいですし」

    「あっさり目に仕上げましたから、名前通り朝に食べても胃に持たれないのではないかと」

    「二種類あれば、誰かと食べる時に交換とかしても面白そうですし」

    和の話を聞いて思い出すのは、どうしたってあの穏やかで幸せな朝だった。

    そう言えば、帰り際に好きなフレーバーを訊かれて

    「こっちで食べたカシスとオレンジがびっくりするほど美味しくて」と答えた覚えがある。

    (まさか、こっちの王妃のケーキって……)

    ますます羞恥で顔が逆上せあがるのが分かった。

    それを知ってか知らずか、和はあくまで凛とした声を張り上げる。

    「何でもない瞬間を特別なものに変える、何でもないお菓子……それが、私の答えです」

    そうして真っ直ぐに注がれた和の視線の先。

    そこにいるカレンは、しばらく考え込んだまま何も言わなかった。

    ケーキは両方ともほとんど完食されている。

    けれども、沈黙が何とも怖かった。

    348 = 1 :

    カレン「……」

    「……カレン?」

    カレン「……ent」

    「え?」

    カレン「Excellent, Nodoka!」

    「えっ、ちょ、んむっ」

    突然カレンが叫びだしたかと思うと和の元へ飛び込んだ。

    そうして和の顔をぐいと掴んで――思いっきりキスをしたのだ。

    「かかかかカレンさん、なにをしてるんですかっ!!」

    友人兼恋人と金髪美女との熱愛シーンに、咲も思わず立ち上がって駈け寄った。

    「咲さん、来ちゃ駄目です……っ!!」

    「え?」

    カレン「Saki! You're also amazing! 」

    未だに和に齧りついたままのカレンを引き剥がそうと、咲が彼女に手を伸ばす。

    その手をカレンはがっしりと掴んだ。

    そして咲はあれよあれよという間に彼女に抱き寄せられて――

    「あああああああぁっ!!」

    「え?……んんーっ!!」

    咲もまた、カレンに唇を奪われてしまったのだった。


    ■  ■  ■


    349 = 1 :

    カレン「いやー、すまんすまん。つい」

    「カレン……」

    照れ笑いを浮かべるオーナーに呆れた声を投げつけたのは憧だった。

    彼女が、様子のおかしい厨房に乗り込んで和と咲を助けてくれたのだ。

    げっそりしている咲の横で「カレンはキス魔だから」と憧が苦笑する。

    そういう情報はできれば事前に知りたかった。

    カレン「まぁ、では改めて……」

    オーナーの目が、すっと真剣なものに変わる。

    カレン「おめでとう、和。合格だ」

    「え……」

    和がぽかんと口を開けた。

    咲も、あまりにあっさり言われた言葉の重みにまだ追いつけないでいる。

    カレン「何でもない日を特別に変えるお菓子……素敵じゃないか!」

    満面の笑みがベテラン・パティシエールの顔に広がる。

    カレン「しかも、誰かとシェアすることを念頭においているのも面白い」

    カレン「伝統菓子のレシピを応用したものは、今まではウチになかったものだし……うん、これはいい」

    そう言うとカレンは咲が食べそびれていたケーキをひょいと摘んだ。

    彼女も、王妃の方がお気に召したらしい。

    和はまだ放心していた。

    無理もない。今までどんなに豪勢で完成度の高いケーキを作っても突っぱねられてきたのだ。

    350 :

    続き来た!


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