元スレ男「……いよいよメラが使える様になるとか末期だな俺は」
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251 :
シュールやん…
まあ見えないアレを振り払おうとしてたって言えばええな
252 :
そうすると、超人的な動きをしていたのは、見えないアレに振り回されてたって事にするか
255 :
主任「……とりあえず私と男さんは、本格的に警察を呼ばれる前にここを出ましょうか」
男「でもこの人は? 魔法が使えたならもしかして見えるんじゃ」
女性「……見え、る?」
主任「さっきの彼が戦っていた相手が、見えていましたか」
女性「あの黄色い……死神…?」
男(見えてる!?)
主任(よく考えてみれば、最初の悲鳴がモンスターを見てしまったからなのだとすれば有り得ますね)
主任(……でも、それだと私を手当てしていた時のこの女性の行動が説明つかない……)
主任「まぁ……彼女は彼女で、客室に荷物やこのあとの予定があると思いますし」
男「……」
男「じゃあ、その、なんと言えばいいか……」
女性「……そうですね」
男「ありがとう、貴女がいなかったら俺は死んでました」
女性「私もですから、頭を下げないで下さい! こんな事が起こるなんて……魔法? みたいなの使った今も信じられなくて……」
男「…………」
主任「エレベーターが一階からこっちに上がってきてますね、警察かも」
男「うわ、非常階段で出る?」
主任「そうしましょうか」
256 = 255 :
< ピーポォーピーポォー
< 「退いて下さい! ここは封鎖します! 下がってー!! 」
< 「輸送車がもうじき到着するぞぐずぐずするなぁ!」
< 「警視庁の捜査官は機動隊の方々に『水』をかけろ! 急げ!」
< ウゥゥゥ……! ウゥゥゥ……!
< ピーポォーピーポォー……!
男「……凄い騒ぎだな」
主任「き、機動隊って……もしかして男さん立て籠りだと思われてたりして……」
男「ありえそうで笑えねぇえ……」
主任「冗談ですよ」
男「でもありえそうで笑えねぇえ……」
257 :
一気に来た!
水かけるって事は事態に気付いてる奴らもチラホラ居るのかね
258 = 255 :
コツッコツッ……
スタスタ……
男「そう言えば会社、どうすっかな」
主任「休みの連絡を入れたらどうかな」
男「携帯、主任のヒャダルコでぶっ壊れたみたいですわこれ」カチカチ
主任「え」
男「……本格的に買い直しかなぁ、これ」
男「っと、あれ……ッ」グラッ
主任「!」
< ガシッ
男「…………頭が、揺れてる」
主任(顔色が悪い…? まださっきの戦いの疲労が出てるのかも)
主任「男さん、何処かで休みませんか?」
男「……」
主任「男さん?」
男「ホテルは懲り懲りっすね」
主任「ちょ、何を言うんですか!」
男「あはは……じゃあ、あの……つまんないもんしかないっすけどさ」
男「俺の家、行かないか…?」
260 :
【自宅】
男「そこが主任に貸す寝室、寝室出て右の突き当たりがトイレね」
主任「一人で一軒家に住んでるの?」
男「いや、妹と暮らしてたよ」
主任「妹さんは?」
男「四年前に事故で亡くなったんだ、両親と一緒に」
主任「……悪いことを聞いちゃったね」
男「気にしないでいいっすよ、知らないんだから仕方ない」
男「んで、トイレ横のがバスルーム」
主任「……」
男「えーと……や、やましい事は無いよ」
主任「借りて良いですか?」
男「どうぞ………」
261 = 260 :
< ザァァア……
男(……タオル置いとくか)バサッ
男(女性、それも主任をこの家に泊めるなんてなぁ……人生ってわかんねーや)
男(……っ…)ヨロッ
< ドサァッ! ピッ
男「いってー……さっきから定期的に頭がぐわんぐわんする……」
< 『……機動隊が出動し、一時騒然となり…………』
< 『監視カメラのこの異常な映像から、男性の身元を調査中』
< 『なお現場にいた女性は現在警察が保護しており、詳しい状況を聞いているとの事です』
男「これ……やっぱりホテルかぁ……やべぇな、仕事クビどころか捕まるんじゃ……」
男(他のチャンネル見んのこええな)ピッ
< 『臨時ニュースです、本日都内のホテルで信じられない事が起きました』
< 『今からお見せする映像は、ホテルの宿泊客がスマホで録画したものです、CGは使われていません』
男(…………え?)
262 = 260 :
……いつからだったのだろうか。
RPG『ドラゴンクエスト』の世界を半ば楽しむ程度の認識だったのは。
戦う事で強くなれる、その考えと知識がそうさせたのかもしれない。
そして何より俺は自分は頭がおかしいと思っていた。
だが。
< 【ぁあアッははははハハァアハハハハハハハハ!!!!】ケタケタケタケタケタ
< ビュッッ!! ダンッッガガガガガガダダダッガガガガッッッッ
< 「ぐっ、ぉおおおおおおお!!!」ダダダダッッ
男(な、んだ…………これ………………)ズルッ…
< 【嘗めるなァッ!!】
< 「ッ……!」ズサァァッ! ダンッ!!
< ガギィンッッ ドゴォッ!! ダダダダダダガガガガガガガガガガッッッッ
< ダァンッッッ!!!
< ビュッッ!!
< 「ひ、ひぃいっ!?」ガタガタゴトゴトッ!
< 『最後にアップで映った黄色の死神を見た撮影者の男性は、身の危険を感じてベランダから通報したそうです』
< 『この信じられない光景を撮影した男性は、「女性の悲鳴が聴こえたので通路を覗くと別の女性が黄色の衣を着た仮面の女に鎌で切りつけられていた」と証言しており』
< 『現場に残された多量の血痕から他の女性の存在は明らかであり、この映像の後にどうなったかを男性から聴取しているとの事です』
< 『繰り返しますが、今の映像にCGは使われていません』
< 『彼は何者なのか、また彼が見えない何かを振って応戦していたこの尋常ではない壁を高速ですり抜け、男性に襲い掛かっている女性らしき人物』
< 『一体何が起きていたのでしょうか』
男(…………は…は、ははは……)ドサッ
男(何で、何でだ……)
男(何で見えている……モンスターが何で他の人達にも見えてるんだ!?)
263 = 260 :
< ガチャッ
主任「シャツまで貸してもらってすいません」
主任「……男さん?」
男「…………」
主任「どうかしたんですか? 大丈夫…?」
男「主任……ニュース見てくれ」
主任「ニュース、ですか」ピッ
< 『……で、男性を襲ったこの人間らしき存在はもしかしたら今世界で起きている見えざる事象を……』
主任「これ……!!」
男「見えて……る」
男「あのホテルで会った女性が特別な訳じゃなかった、『あのモンスターが特別だったんだ』」
主任「見えない人達にも……見える、モンスター……?」
男「……」
主任「でもっ、これで私達は世間の人に受け入れて貰えます! 男さんも私も、見えるモンスターの数が多い程度でしかないんです!」
男「…………」
男(もし他の人達もモンスターが見えるようになって)
男(モンスターの存在が、もしも一般的な認識になったら)
男(俺が見殺しにした事は……罪になるんじゃないか…?)
264 = 260 :
俺は忘れていた。
初めてスライムに襲われた時に感じた恐怖を、混乱を。
あの痛みから感じた『本物』を。
ゲームを意識するより先に、俺が信じた現実。
そう、現実にゲームのキャラクターは出てこない。
これはゲームではない事を、俺はきっとこの世界で一番早く知っていたのだ。
テレビの中で何度も繰り返される映像は、俺がその現実に居る事を世界が認識を急がせている様に見える。
何より。
何度も聴こえてくる『死神』の笑い声は、まるで俺の苦悩する姿を嘲笑っている風に聴こえた。
俺は崩れ落ちながら確信していた。
もう、俺は戻れないのだと。
265 :
ふうむ…
266 = 260 :
─────【二週間後】─────
────【イギリス:ロンドン……ウェストミンスター大聖堂】────
父親「うわああぁあああっ!!」ブシュゥッ!!
女児「パパー!」
父親「来るなぁ!! 逃げろ、早く逃げろぉお!!」
シルバーデビル【ギキキキ、逃げたらお前のパパ殺しちゃうよぉ…?】メキメキッ……
父親「ぎぃぃぃいいいい……っっ!!!??」
女児「パパー! パパー!!」
シルバーデビル【ギキキキ……ギキキキ……!】
シルバーデビル【『死神』の野郎が見つけた依り代が馴染むぜ、だが顕現位置が違うのはどういうこった?】
父親「ば、化け物めぇ……!」
シルバーデビル【ハン、てめぇら人間はもうおしまいだぜ】
シルバーデビル【余興だ……パパの前でガキごと街を吹き飛ばしてやるよ!】キィィンッ
父親「な、何を……っ」
シルバーデビル【……『イオラ』……】キィィンッ
────────── カッ……!!
< ボォンッッ!!
シルバーデビル【!?】ピタァッ
267 = 260 :
────────── 「スラリン、スラきちで追撃」
────────── 「スラベエはスクルトを、ホイミンは彼等にべホイミを」
スライム…?「行くよスラきち!」ぴょーんっ
スライム…?B「おう!」ぴょーんっ
──────── 【『スラ・ストライク』ッ!!】 ────────
< ヒュッッ……ズドドォッ!!
シルバーデビル【ご、ごふァッ……!? てめぇ……ら、まさか……】ヨロッ
スライム…?C「皆をまもるよ! 『スクルト』!」
< キィィンッ
ホイミスライム…?「『べホイミ』っ、大丈夫……?」
父親「な、何が起きてるんだ…? 折れていた腕が治っていく……おお、神よ」
ホイミスライム…?「……」
シルバーデビル【くそがぁ!! 『イオ』!】キィィンッ
スライム…?「させない! 『スラ・ストライク』ッ!!」
< ズドォッ!!
シルバーデビル【ッッ……カハァ……!!】ドシャァアッ
────────── ポワァ・・・ン……ッ
268 :
父親「はぁ……はぁ……、恐ろしい化け物だった……」
女児「パパ! こわかったよぉ……!」
父親「ああよかった、お前が無事で……」
女児「あの子たちなーに?」
父親「……ん? 何の事だ」
スライム…?B「あの娘見えてんのかー?」
スライム…?「そうみたい」
「……シルバーデビルの魔法による干渉の影響は受けていない筈だね」
「となると、漸く見つけたのかもしれないな」
< スタスタ……
「お怪我はありませんか、異国のお嬢さん」
女児「ほら! パパを助けてくれた人だよ!」
父親「な、何を言ってるんだ女児、何もいないよ」
女児「え? いるよ、ほら! 髪の毛が真っ赤だよ!」
「……見えているのか、僕が」
269 = 268 :
女児「お兄ちゃん、触っていーい?」
「……」
「ああ、構わないよ」
女児「パパー! ほら、手!」ぐいっ
父親「Oh……」
< さわっ……
父親「なっ!?」ビクッ
「なるほど、子供らしい発想とはいえ説得力がある」
「これで僕の存在がやっとこの世界の人間に知られた訳だ」
「『こちらに来て四ヶ月経った』が、仲間と連絡を取れる日も近いな」
女児「?」
「ありがとうお嬢さん」
「実は私はお嬢さん達には見えない、特別な人なんだ」
女児「妖精さんみたいに?」
「そうだね、彼等と違うのは子供のように澄んだ心の持ち主でも私達を見ることが出来ず声が聞こえない」
「今はね」
女児「そうなんだぁ」
父親「女児、いったい誰と話をしてるんだ…?」
女児「妖精のお兄ちゃん!」
父親「!?」
270 :
魔法を受けるとDQ世界とチャンネルが合うのか、見えるようになるのかな?
で、男や女児のように先天的に見える人間もいると……
海外ではドラクエの知名度低いらしいしどうなるのかな?
1~4がdragon warriorでそれ以降はdragon questになるんだっけかな。
271 = 268 :
父親「よ、妖精だって? そんなまさか……」
女児「でも悪いおっきいお猿さんやっつけて助けてくれたよ」
父親「……」
「お嬢さん、私達を見える人間は僅かしかいない」
「そしてお嬢さんしか今は私の言うことが聞こえないんだ、助けて欲しい」
女児「いいよ! 今度は私が助けてあげるの!」
父親「は? え?」
「君のお父さんと話がしたいんだ、私の言うことをゆっくりとでいいから伝えて欲しい」
女児「うん!」
女児「パパ、今から妖精のお兄ちゃんの言うことを伝えるね!」
父親「うむ……」
魔物使い「はじめまして父上殿、私は『ムーンブルク国兵団』遊撃隊の、名は魔物使いと申します」
女児「はじめましてパパ、私はむーんぶるくこくへいだん ゆうげきたいの 、なわ まものつかいともうします」
父親「……」
父親(まずいな聞いたことがない……ネットで調べても出てこないかもしれないが、後で調べるか……)
父親「私はこの子の父親だが、助けてくれてありがとう……助かったよ」
魔物使い「お気になさらず、私は貴方にお願いがあります」
女児「おきにならさず、私はあなたにお願いがあります!」フンス
父親「な、なんですか……?」
魔物使い「共に世界を救うため、手を貸して頂きたい」
272 = 268 :
【アメリカ・ホワイトハウス】
大統領「将軍、ではその日本に居るのかね……」
将軍「情報提供者である『彼等』の話では、連絡を取れる仲間の魔法での探索により一点の方向を指していたそうです」
大統領「それが日本か……ヒーローはまさかサムライではないだろうな」
将軍「そこは何とも言えませんが、『彼等』の話では似ているとのことです」
将軍「日本のテレビゲーム『ドラゴンクエスト』、まさか今の世界に蔓延しつつある化け物どもがゲームの中から出てきているとは思いませんな」
大統領「しかし彼等は異世界として我々のこの世界を認識し、そしてゲームではない場所から確かに来ている」
大統領「将軍、日本政府に等しく情報を」
大統領「そして彼を呼んでくれ」
将軍「ええ……」
将軍「『堀井雄二』ですね」
273 = 268 :
【日本】
部長「辞表、確かに受理しました」
男「今までお世話になりました」
部長「君の事は大学生の時から知っていたが真面目に仕事してくれる良い社員だったよ」
男「そうですか?」
部長「まぁね、主任くんに続いて君もいなくなったら寂しくなるな」
部長「主任くんの所へ君が訪ねて、そして翌日に『マンション殺人』が起きてから君ら二人は会社へ来なくなった」
部長「一体何があったのかな」
男「それは……言えません」
部長「ふむ、そうかね」
男(……人事部、部長…………)
男(アンタ何者だ)
部長「? どうかしたか」
< ォォォォオオオオオオオ……!!
男(……やっぱり、か)
男「いえ、調子が悪いのでこのまま帰ります」
男「お疲れ様でした」
部長「ああ、お疲れさん」
274 :
ふぉぉお乙
276 = 260 :
< 「お疲れ様でした男さん」
< 「お疲れ様ーっ」
< 「今度飲み会行こうなー」
男「……」スタスタ
男(……主任が俺と同じく『見える人間』だと分かった、あの二日間)
男(あの後、警察が来たが軽い質問とホテルに関してだけ聞かれて終わった)
男(ただ……主任が1日以上空けた事で、主任が戦い続けていたあのマンションのヒャドが溶けてしまった)
男(……結果は最悪、日本中を本気で恐怖させる殺人事件の出来上がりだ)
男(マンション内の住民はほぼ全員が惨殺、主任が閉じ込めていた死神系のモンスターも街に解放されていた)
男(それを俺と主任がこの二週間近く倒し続けて、やっとこの地域のモンスターは大体狩り尽くしたわけだ)
男(……んで、ついでに辞表‥)
< 「男くん」
男「……」ピタッ
女「あの、ちょっといい……?」
男「女さん…?」
277 :
< ガチャッ……バタンッ
男(屋上に連れ出されるとは思って無かったなぁ、なんだろ)
女「あのね…? まずちょっと聞きたいんだけど」
男「はい?」
女「男くんってさ、私の事気になってたりするのかな」
男「……んぇぅぇ?」
女「なにいまの」
男「ええ、いやいやいや」
男「異性としてでなら、多少は意識はしますけど特に恋愛感情は……」
女「はぁ? いや、そこまでは聞いてないんだけどね……まいっか」
女「実は今日の夜頼みたい事あるの、いい?」
男「?」
278 :
乙です。
まさかスライムもりもりまで出るとは。
279 :
ブオーンが出ないだけまだましだよな あれ出たらもうゴジラの世界だが
280 :
主任「女さんのボディーガード、ですか?」
男「そうなんすよね、女さんここ二週間近く誰かが仕事帰りに自宅近くの駅からストーカーされてるみたいで」
男「いきなり俺に話をしたのも、時期的に俺が怪しいと思ってたみたいでさ……」
主任「……あはは」
男「はー、仕方ないと言えば仕方ないにしてもここ最近は警察沙汰ばっかで疲れたよ」
主任「そうですね……私が『ここ』にいたせいで余計に迷惑をかけちゃいましたし」
男「ん、それはいいっすよもう」
主任「ありがとう男くん、少し早いけど女さんの退勤に合わせてもう夕食にしちゃう?」
男「お願いします、ええ、お願いします」
男(……この二週間で大きく変わった事はただ一つ)
男(わたくし男めは主任嬢と只今同棲生活をしております)
281 = 277 :
男(今度の週末にお互いに何か適当な昼間の仕事を探すついでに、俺の携帯買いに行くのと映画を観に行く)
男(それはいいけどさ、半分は俺の意図もある)
男(ただ、まさかあれから一緒に住むことになるとはな……)
< 「今夜はパエリアにしますね、サフラン買ってきたので」
男(……『マンション殺人』事件で、ホテルの監視カメラに映っていた俺とマンション内のカメラに手摺から飛び降りた俺が同一だと分かった時)
男(マンション内の住人でもある主任が事件後俺と共に行動して、ましてやあの日から一時的に同棲していた事で何日か聴取された)
男(結果は『それまでの関連性の無さ』と『殺人が起きたのが一ヶ月も前』だったから、他にも理由はありそうだがとりあえず俺は見逃して貰った訳だ)
男(ただ主任はあのマンションに住めなくなった)
男(それが精神的なものからか、それとも警察から何か話をされたのかは知らない)
男(……少なくとも主任が、誰かに何処に住んでいるか知られていない今の方が俺は安全だと思ってる)
男(あの人事部の部長は人間じゃないからだ)
282 :
乙!
名作の予感
283 :
< ジャラッ
男(信仰する神は関係なく、『教会』のメダルやコインなら何でもいいんだったな)
男(主任が俺を人間か魔物かを試すのに使った方法、それが『聖水』だった)
男(聖水の作成方法は簡単だ)
男(水に教会のコインを沈める、もしくは教会の水道から拝借するだけ)
男(笑ってしまう程に簡単だが、効果は今の世界では絶大な意味を持つ)
男(モンスター……例えばスライムやドラキーにかければ、それだけで即死するからだ)
男(当然、その位に弱いモンスターなら即死させる水を飲ませたら、モンスターならばやはり即死、殺せなくとも正体を現す事になる)
男(俺はこの方法を聞いてから、直ぐに会社にいる部長に試した)
男(あの男が飲もうとしていたコーヒーに聖水を少し混ぜた)
男(結果は、奴が一瞬だけ姿を見せただけで終わった)
男(あのシルエット、全身に蟲が這う様な感覚……『モシャスナイト』なのは明らかだった)
284 = 283 :
男(本当に僅かな一瞬とはいえ、姿を現した)
男(そしてその正体を見れたのは本当に幸運だったかもしれない)
男(今の俺では勝てるか分からない、ましてや『いつから部長になっていたのか』分からない以上、これからはもう関わらない方が良い)
男(……もし俺が最初に怪しんだ通りの理由で会社へ潜入し成り済まし続けているなら)
男(『敵』に俺や主任の事を知られる訳にはいかない)
男(あのモシャスナイト、もし『主任が見える人間だと分かったから』部長に成り済ましていたのなら)
男(目的は……主任を孤立させる事だった)
< 「少ししたら出来上がるよ」
男「ありがとうございます」
主任「難しい顔をしていたように見えたけど、大丈夫?」
男「俺は問題ないっす」
主任「そう? 無理しないで下さいね」
285 :
むこうも単独犯ではなくて、奴等との繋がりを警戒して
孤立させてから始末させるつもりだったって事か
286 :
あれ?これわりと人間側が詰んでないか…?
287 :
男「……強いて言えば」
主任「?」
男「よく聖水の事を思い出したな、って思って」ジャラッ
主任「ああ、最初の頃は私……スライムにも勝てなかったから……」
男「女性だもんなぁ」
主任「それもあるし、流石に包丁やバットを振り回してたら危ない人でしょう?」
男「ま、まぁそっすね……」グサッ
主任「かといって人目のつかない所はモンスターの数が多くて、やっぱり危ないし……」
主任「だから私、聖水とかあったらなーって考えてね?」
主任「『ヴァンヘルシング』って映画を知っています?」
男「洋画かな?……パイレーツオブカリビアンとかなら見てるけど」
主任「ヴァンパイアハンターのお話なんですが、その中で教会の水道から出る水を聖水と言ってるのが有ったんです」
男「……もしかして、それで?」
主任「うん、試しに近くの教会でペットボトル一本の水を採らせて貰ったら、それだけでモンスターが寄り付かなくなったの」
主任「勿論、少量を撒いても効果は有ったし、モンスターにかけてもダメージが有ったから本当に助かったの」
288 :
この事件の後、水道施設に教会が併設される事となり
大規模な癒着と教会権力が新たな問題になるのであった
289 :
自然の水をろ過し聖水化させる装置が開発され大ヒット。飲みやすくさらっとした飲みごたえが聖水ブームを巻き起こした
290 :
なんだか動物愛護団体がモンスターを[ピーーー]なと騒ぎそうな気がするなぁ
嫌だなぁ、なぁんか怖いなぁ
291 :
主任「大変だったんだよ、コインをたまたま助けた人に貰って、それをたまたま水に落としたら光ったりしたんですから」
男「光ったんすか…?」
主任「うん、それも驚く事に水面だけでしたからあの時は余計にびっくり」
男「なるほど」
主任「うん」
男「……」
男「この二週間忙しくて言えなかったけど、ありがとうございました主任」
主任「急にどうしたの」
男「死神と戦った時に、俺がピンチだったのを助けてくれたじゃないっすか」
主任「あれは……助けてあげられたのかな」
男「俺にとっては間違いなく助けて貰ったんですよ」
男「それにほら、最後のヒャダルコとかも……まさか客室から出てきた主任がスマホで指示を出すとも思わなかったし」
主任「あはは……」
男「あれはちょっとピンチとはいえ笑いそうになった」
294 :
熱くて読み直したけどまた読んじゃった
295 :
男「スマホが文章ズームとか出来るって知らなかったし、んでもって指示内容が『一瞬だけ時間を稼いで』だもんな」
男「ヒャドでいいから直ぐに助けて欲しかったかも?」
主任「感覚的に、ヒャドを二回……ヒャダルコを一発撃ったらMPが切れる気がしたの」
男「あ、そういえばwikiで調べたらドラクエのMPは『マジックパワー』らしいっすな」
主任「魔力ってことかな、感覚だけで言えば精神力って感じだけれど」
男「メラを何回撃てば実感出来るかな…?」
主任「余り経験はしなくていいと思いますよ? 目眩がして、集中力が無くなって感情的になりやすくなるので」
男「……マジか」
主任「さてと、そろそろパエリア出来上がるので待っててくださいね」スッ
男「うっす」
男(ニュースでも見るか)
男(まだ俺の映像出てんだろうけど、こればっかりはなぁ……)ピッ
< 『次のニュースは、午前に起きた大変可愛らしい珍事件です』
< 『赤ちゃんがベビーカーから落ちたかと思いきや、突然走り寄ってきた大型犬が赤ちゃんを見事背中で……』
男(……どのチャンネルも俺の事、もしくは世界の何処かでモンスターの被害を受けた事か、或いは平和な日常を映してるな)ピッピッ
男(ま、これはこれで気が楽か)ピッ
< 『……頃、アメリカのネバダ州ラスベガスの大型カジノで保管していた…』
< 「男さーん、ちょっと手伝ってくれますか?」
男「ん、りょーかい」
< 『……強奪された金品等から合わせて被害総額は予想されるもので数十億を越えており、現在強奪した犯人達を追跡しているとの事です』
< 『しかし複数の犯人達は全員「緑の装束で全身を隠しており」、監視カメラの全てが凍結されていた事で依然として新たな手掛かりが無く、重傷を負ったカジノの警備員の男性の証言しかない様です』
298 :
~ 【二時間後……】 ~
男「ご馳走さまでしたっと」
主任「そろそろ女さんが退勤する頃だし、先に彼女の自宅近くの駅へ向かいましょうか」
男「まだメールは来てないっすよ」
主任「夜だし、彼女の話では相手がはっきりと人間か見てないのでしょう?」
男「あ……」
主任「そう、ここ二週間といえば遂に私達以外の人にも見えるモンスターが現れた後なの」
主任「だから念の為に私達二人で様子を見ておきたいなって」
男「りょーかい、それなら先に行くので正解っすな」
主任「それじゃ準備しましょっか」
男「んじゃ俺は薬草でも二枚ほど……」
< prrrr……
男「お、家の電話か」スタスタ
男「はい」ガチャッ
主任「さてと、私は私で聖水と例のアイテムをポーチに入れて、と」ゴソゴソ
男「ああ、お袋か! 久しぶりだなぁ、妹や親父は元気にしてんのか?」
主任「…………」ピタッ
299 = 298 :
主任(今……何を言って…?)
男「会社? あー、うん……そうなんだよ、てか何で知ってるんだ」
男「部長が連絡したのか」
男「いや、別に何もないよ」
男「最近物騒だろ? 外に出ない仕事でも見つけようかと思ってさ」
男「はは……妹は相変わらずだなぁ、お袋は調子どうなんだよ」
主任(…………)
主任(きっとこの間のはからかってたって事なんだよね、質が悪いなぁ……)ゴソゴソ
男「そうだな、また今度一緒に海外に行きたいなぁ……もうバミューダ島の沖には行きたくねえけど!」あはは
男「四年前は『事故になる前に親切な人達に助けられた』だけなんだからな!」
300 :
いいね
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