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    元スレ男「……いよいよメラが使える様になるとか末期だな俺は」

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    201 :


    主任「……男さん」

    「ん、はい」

    主任「それから私はどうやって生き残ったと思いますか?」

    「そりゃ、逃げたんじゃ?」

    主任「はい」

    主任「夜明けまで逃げ延びる、それを目指して私はあらゆる障害も通り抜けるモンスター達を相手に生き残りました」

    主任「……でも逃げ切れるものではありませんでした、だからそんな時は…」

    主任「『ヒャド』を後ろの壁に、撃ったんです」

    「壁に?」

    主任「はい、あれ? 魔法がいきなり使える様になったことは驚かないんですか」

    「え、あぁ……そうだった」

    (死神の群れから生き残ってる事に比べたら、そんなに驚かないなぁ、今さら)

    202 = 201 :


    主任「これは逃げている最中に気づいたのだけど、まずエビルマージはいなかったんです」

    主任「もしかしたら『何か』と戦って倒されたか……満足したか、とにかく戻ってくる事はありませんでした」

    主任「それだけでなく、死神は魔法で生み出された氷の塊である壁を通り抜ける事が出来ないんです」

    「あ……! ならあのマンションのほぼ全体が氷に覆われていたのは……」

    主任「私が死神達を閉じ込める為に、何時間もかけて『ヒャド』を撃ったからかな」

    「エビルマージかと……アイツならやれそうな実力はあった」

    主任「そうなんですか?」


    「あとでエビルマージのwikiを見せるけど、かなり強いボスモンスタークラスの脅威はあるっすよ」

    「……次に見ても、もう近づくのも止めた方が良いと思います」


    主任「……」コクン

    主任「それで、私はそれをずっと続けてました」

    主任「昼間は薄暗い所に現れるモンスターを倒して、ヒャドに慣れて……出来るなら襲われてる人も助けてました」

    主任「『見えない人』にとっては、魔法も見えないらしくて街中でも小声で使えるから魔法は便利です」

    主任「せめて、おかしな人だなんて言われないで済むから……」


    203 = 201 :




    「…………」

    主任「これで、全部です」

    主任「私の1ヶ月が今の短い話に籠められてます」

    「そう、ですか」

    主任「敬語は使わなくて良いですよ男さん、落ち着いたら会社を辞めるつもりなんです」

    「えっ」

    主任「……分かるんです、日に日にモンスターが人を襲う数が増えてる中で、私だけ生き地獄みたいな理不尽に苦悩させられてるのは意味があるって」

    主任「誰も信じてくれない、独りの私にはそうやって考えるしか正気を保てなかったんです」

    「主任」

    主任「はい?」

    「主任は俺なんかより……」


    < 「嫌ぁぁああああああああああ!!!!」


    ・主任「「!!」」

    204 = 201 :



    「ひ、ひぃぃ……」ガタガタガタ…ッ


    < ガチャッ!

    「今のは!?」


    「っ、たすけて……たすけてぇぇえ……っ!!」ガシィ!

    「おわっ、落ち着いて! 何がおき……」


    主任「男さん!!」バッ

    < ガッ!!

    「!?」ドサァッ




    ────────── ヒュルンッ…………!!



    主任「っ……!」

    < ズバァッ…ッ

    主任「ぁ……あ…………」ドサッ



    「主任 ──────!! 」

    205 = 201 :


    ……早朝の、様々なビジネスマンや会社員が慌ただしくホテルを後にする中で。

    俺のいた位置に崩れ落ちる主任は、叫び声も出せずに、清潔感のある通路の中心に倒れ伏せたまま動かなかった。

    切り裂かれた背中からは赤黒く染まりつつある白のカーディガンが見える。

    救急車を、呼ばないと………………





    ───── 「貴方達、私を他のモンスターと一緒にしてないかしらぁ?」 ─────




    「……!!」


    嘲笑う様に、そして僅かに怒気を含めた声色で、潰れた女の声が響き渡った。

    俺の脇で震える女性は先程と何も変わらない、なら……。


    「モンスターか……ッ」





    ───── ヴォゥンッ ─────


    俺の絞り出した様な言葉と同時に、黒い煙が突然通路の奥で噴き出した。

    ……否、煙とは全く違う。

    その質感はまるで闇、そこから白い仮面の様な物が這い出していたのだ。



    死神「あははははは!! 馬鹿な人間……あの氷に覆われた建物から私だけ抜け出て幾つかの氷を割ってある時点で雑魚な訳ないでしょぉおおお??」



    早口で叫ぶ、その橙色の衣を纏った……大鎌を構える姿に、俺は目眩と少なくない恐怖心を覚えた。

    『しにがみ』。

    その名の通りの姿を持った、死神のモンスターだった。

    206 = 201 :



    死神が動くよりも先に、俺は脇で震える女性を主任といた客室へ放り込む。


    「アンタは警察を呼んでくれ!! こっちの女性も……出来る限りの止血と、これを傷口に!」


    突然の事に茫然としかける女性に怒鳴り付けると、即座に主任を女性に渡す。

    そして、二枚の大きな新緑の葉を渡した。

    まだ試した事はなかった、『やくそう』だった。


    「……」

    < チャキッ

    (……鋼の剣まで通されたら厄介な事この上ないけど、多分それはない)

    (さっきの女性が主任にやくそうを使ってくれれば、まだ間に合う)

    (落ち着け、昨夜の醜態をまたここで晒せば今度こそ死ぬ)

    (落ち着け……落ち着


    ────────── ビュォッ!!


    「!!?」


    通路を疾走する橙色の残像を見て、俺は咄嗟にその先に向けて鋼の剣を無闇に振り下ろした。

    だが。


    < ガギィンッ!!

    死神【……シィィ………】ニタァ・・・


    「くっ……ッ!? こい、つ……!!」ギリギリギリ…ッ


    鋼の剣という、現実ではかなりの質量を持っている上に切れ味を誇る、ゲームなんかでの序盤では上位の武器。

    それを正面から押し込んでくる死神の膂力に俺は通路に膝を着きながら耐えるしかなかった。

    化け物、明らかに本来の『しにがみ』のスペックではない気がした。

    207 :

    アイテムって一般人に見え……る?

    208 :

    待ちきれん乙

    209 = 200 :

    呪文は見えないけど、アイテムたちは見える?

    210 :

    いや、鋼の剣とか見えてたら一大事じゃないかな
    つーことは薬草も見えてなくて治療もされてない可能性がある

    もしかしたら「意図的に巻き込んだ(傷つける、アイテムを触らせる等)場合その対象は見えるようになる」とかあるかもしれんが分からないね

    212 :

    女性はモンスター見えてるんじゃ無かったのか
    文盲だったわ

    213 :

    手渡したから見えてなくても重さがあればワンチャン

    214 :


    一度だけ、想像した事があった。

    スライムの早さ、強さは人間を一撃で叩き伏せる位の力があった。

    ならば、それ以上の強さを持つ他のモンスターはどれだけ強いのだろう、と。

    その答えの僅か一片を見せてきたのが、一ヶ月前に遭遇したさまようよろいとホイミスライムだ。

    奴等はただのレベル1の人間にとっては化け物といっていい。

    なら。

    ならどうなのだろう、もしもこの先でこの地球上に『もう少し強い魔物』が現れたなら。



    それは生半可な装備や銃弾では倒せない……最悪のモンスターになるのではないのだろうか。



    < ギャリンッ・・・!

    「フゥ……ッ」ズザァッ


    死神の大鎌は両刃ではなく、草刈り鎌でも見られる刈り取るタイプの片刃だ。

    なら剣を滑らせて懐へ入り込めばいい。

    警戒すべきはその早さと純粋な膂力のみ、こいつは魔法は使わない筈だ。

    瞬時に踏み込み、刃を死神の空いた懐に叩き込む……


    死神【ぁあアッははははハハァアハハハハハハハハ!!!!】ケタケタケタケタケタ


    < フワッ……!

    「えっ…………」


    死神の狂笑が響き渡った瞬間、俺の振り抜いた一閃は通路の空を斬っただけで終わってしまった。

    何故なら、死神の体が床へ煙が溶け込むかのように沈んだからだ。

    避けられた。

    そう、あの一瞬で俺の剣速より速く避けられたのだ……。


    215 :

    おもしれぇぇえ
    続きはよ

    219 :

    エタらないよね?

    221 :

    期待してるんやで

    222 :











    ────────── ッ ──────────







    完全。

    その一瞬で起きた動作は、完全に同時だった。


    死神【シィィッ………!!?】


    故に、死神は大鎌を空振りさせるに終わってしまう。

    眼前で回避した男の動きを見て、僅かにその手を止めてしまったのだ。

    それまで彼女が生きてきた『元の世界』では、決してなかった戦術がそこにあったのだから。


    死神【………なんだその動きは】


    <  ヒュパッ


    思わず唖然としながら呟いた死神を、俺は眼で追いながら『跳んだ』。

    跳躍、反転、跳躍、跳躍、跳躍、反転、跳躍、反転、跳躍、跳躍。

    三半規管が狂いそうになるのを必死に抑え、手に握る鋼の剣を最後の跳躍と同時に一閃させた。


    「おぉぉッ!!」


        チッッ………!


    死神【嘗めるなァッ!!】

    「ッ………!」ズサァァッ! ダンッッ


    剣先が死神の橙色の衣を切り裂き、それに激昂した死神の振る大鎌の下を滑り潜った。

    正直、その大鎌の動きは見えていない。

    俺はそれに臆さず、鎌の軌道を読んで最も安全な位置を走り抜けただけだ。


    そして、直後に俺は再び跳躍する。

    狭い通路だからこそ、今の俺に出来る技。

    天井、壁、床の全方向を足場とした、三次元機動。

    全身を猫の様に使い、常に全力での移動速度を維持出来るのだ。



    (……クソ、やっぱり駄目だ……まともにこっちの一振りが当てられない)ダンッッ ダンッッ

    (だがこれならアイツの一撃も当たらない、全力で避けられる……!)

    223 :

    人間やめてるなー

    224 :

    なんだこれクッソ面白いんだけど

    期待して待ってるよ。ペースゆっくりでも完結してくれー

    229 :



    ────────── ギィンッ!!



    剣と鎌が擦れ違い、火花が散る。

    死神【シィィッ!! ちょこまかと……ッ】

    瞬時に壁へ、そして床へ、上下の概念さえ忘れる様な機動に死神が激昂していた。


    恐るべき膂力を振るい、大鎌が薙がれるも……その全てを俺の剣が弾いている。

    純粋な力でさえ負けているのだ。

    速度も、恐らく俺は劣っている。

    覚えたばかりの『メラ』を撃っても、この死神には通用はしないだろう、際どいとはいえ俺でも多分避ける事は出来るのだから。


    (……とはいえ、このままこれを続けていても……っ!!)ダンッ!!……ダンッ!!


    死神が橙の衣を翻して俺の機動を読みながらその先へ鎌を一閃させる。

    徐々に迫って来る切っ先を跳躍で避けるも、決定的な一撃は与えられない。

    そしてこの状態が続けばそう間もないうちに、俺は最悪の状況に陥る可能性があった。





    そう、『三半規管』の酔いだ。




    231 :

    待ってた乙

    232 :

    きたー
    まってたー

    233 :

    待ってたぜ
    続きはよ!

    234 :



    人が乗り物に酔う理由は様々な要因があるにせよ、根本に関わっているのは三半規管という身体の平衡感覚を担う器官だ。

    乗り物に限った事では無い、人によってはその場で十回や二十回と『ゆっくり回る』だけでも酔う事がある。

    俺が大学で一度書いた論文で触れた事があった、脳における『速度の』許容範囲。


    ────────── ダンッ!!


    (ッ!……足、が……っ!?)


    ……人はその三半規管を鍛える事が出来る。

    それも俺はこの日常へ変わってからの一ヶ月間、ずっとパルクール等で体を慣らしていた。

    高い所からの着地、急な高低の変化と一定以上の速度を越えた疾走。

    超人的だと考えていた俺の肉体は、今や凄まじい三次元機動を実現出来るレベルに到達していた。

    だが。

    戦闘が始まり、時間にして約4分。




    全身を使い衝撃を上手く足を通して逃がしていたのが、遂に着地に失敗したのだ。



    (何故……! 『まだ』酔ってるわけじゃ……)

        ゾクッ……!

    「!!」バッ


    死神【シィィイッッ!!】ユラァッ



    瞬間、着地に失敗し足を止めてしまった俺を狙い響き渡る激昂の声。

    衝撃を逃がし切れずに破壊した客室の扉の表面が水面の様に揺らぎ、その向こうから一筋の一閃が薙がれた。




    ────────── バズッッ!!


    236 :

    きたーけどまたこれだけかよ

    237 = 234 :


    ブレる視界。

    右腕に走る激痛。


    「ぐぁあああああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッッ!!!」

    < ドサッ!! ズダンッ……!!


    通路を直線に吹き飛ばされ、何度か床に叩きつけられた俺は遅れて喉から声を弾き出すしかなかった。

    数瞬前、右腕に薙がれた鎌に気づいた俺は……漫画やアニメで見られる『自分から跳ぶ』というのをやってみた。

    しかしその効果はまるで感じられない。

    痛みが、混乱が、俺をそれまで支えていた気力さえ奪っていく。



    「ぉ、げほっゲホッ……ぉぇえッ……!」

    < ビチャァァッ…

    「ぅぐ…ゲホッ……!」

    (なん、だ…? 頭が急に……ッ)


    俺は知らなかった。

    酔いとは、脳の処理が追い付かずそこで更に『嫌な匂い』『唐突な揺れ』『混乱』『痛み』等で引き起こされる事もある。

    それまで抑え込み、死と隣り合わせの機動戦の中で限界に達していた俺の脳は、悲鳴を挙げたのだ。

    反動は未だ止まる事なく視界を揺らし、吐き気を誘発している。


    死神【随分手こずらせてくれたわねぇ、人間】

    死神【実戦経験のある人間は殆どいない、私達を見る事も出来ない奴等だと聞いていたけど……】

    死神【まぁ『依り代』は手に入れた、これで数日あればお前達は私達に支配される事になるわぁ】


    「な……何だそれ……?」

    「っ…」ヨロッ


    黒い煙に包まれて、死神が通路の中央に降り立つ。

    嘲笑い、俺への殺意を滲ませた深紅の眼光を揺らして語りかけてくる。


    死神【こちらの世界の戦士にしてはレベルが低い、つまり奴等と会ったのよねぇ?】

    死神【答えなさい人間、奴等は何処にいるのかしらぁ】


    「…………」

    (奴……等…?)


    238 :


    立ち上がるより速く、死神は俺へ鎌を振り下ろす事が出来る距離。

    俺の眼前へ近づいてきた橙色の衣を纏う化け物が、その白い歪んだ仮面を更に歪ませる。


    「……俺は……何も知らない…本当に、分からないんだ」


    揺れる視界を元に戻そうと歯を食い縛り、立ち上がった。


    「お前達こそ、一体何なんだ……! ゲームの中から出てきたのか!! 何が……何が目的なんだよてめぇら!!」


    < ピクッ

    死神【……ゲーム…だと…?】


    口元に付いていた吐瀉物を拭い、右腕に視線を落とす。

    激痛が吐き気を、そして次第に冷静さを俺に与えてくる。

    今の状況で俺に出来る事を探し出す。

    『ガラケーと違って明るいんだな』等と考えながら、俺は死神の意識を此方へ向けさせる為に言葉を探す。

    余裕は、無い。


    (は、はは…………)

    「実戦経験が無い奴ばっか? そりゃそうだ、こっちゃ平和な現実なんだよ!」

    「魔王が指示してんのかどうか知らねえがふざけんじゃねぇぞ!!」


    死神【……黙りなさい】

    < ガッ!


    「ぅぎぃっ!?」


    死神【何者だ……我等が『王』の存在を知っているとは、ただの戦士ではないな?】

    死神【あの方を何処まで知っている、貴様……】ギロ…


    239 :


    巨大な鎌を振り下ろした死神の気配が殺意とは別の物に変化した。

    不味い……この位置では『見えない』。

    何より再び右腕に突き立てられた刃が肉を抉り、骨に食い込むその痛みに意識さえ手放してしまいそうになった。


    「ぁ"ぁ"ぁ"……っ!! や、やめッ……ろぉおおおお!!!」ガチッ…!


    死神【!】




          カァンッ……!!



    少なくない量の血が右腕を伝い、赤いカーペットの敷かれた通路を更に赤黒く染める中で。

    俺は渾身の力で足元に転がっていた鋼の剣の剣先を踏み込んだ。


    (チャンスは、多分一度だけ……!!)ガバァッ!!

    死神【なっ…これ程のダメージを受けながらまだ動けるのか?】


        ギシッ……!


    死神【ッッ!?】


    俺との間で起き上がった剣を、驚愕の表情で見る死神。

    同時に引き裂こうと動いた鎌を俺の右腕に着けられていた『豪傑の腕輪』で、瞬時に抑えつけたのだ。

    そして、起き上がった剣の柄を逆手に掴んだ俺はそれを突き立てた。

    血と胃酸で痛む喉を無視して、全力で叫んだ。





    「今だ主任 ────────ッッ!! 」





    241 :


    ──────── バッ!!

    主任「『ヒャダルコ』ッ!!」



    死神【~~っ!!?】



    背後の客室から飛び出した主任に、死神の紅い眼光が激しく揺らぐ。

    刹那、主任の視線が俺に向くも……俺はそれに首を振って見せた。

    彼女は俺が巻き込まれる様な呪文を撃つ気だと、何となく考えたからだ。

    だがこのモンスターを仕留めるなら、『鋼の剣でコイツの衣を床に縫い付けている今』しかない。


    俺の仮説に間違いはなかった。

    死神の透過出来る壁とは違い、俺の振るう剣は透過できない。

    奴の透過出来る特性ではこの拘束から抜け出す事は出来ないのだ。



        ヒュォオオオオッッ・・・



    主任の全力で叫んだ呪文と同時、俺と死神の頭上でサッカーボール大の結晶が形作られる。

    橙色の衣を引き裂いてでも抜け出そうと、それまでとはまるで違う焦り様を見せる死神。

    そこへ、更に追い撃ちをかける……!


    「『メラ』……っ」

       ボォンッ!!

    死神【ギ、ギャアアァッ……!! 貴ッ、様ァァア!!】


        パキパキパキパキィィ……!!


    手を翳す必要が無い事は、これで証明された。

    そう俺が思った直後……瞬時に周囲の空気が光の結晶で溢れた。

    俺は主任を






    ━━━━━━━ キィンッ!! バキバキバキバキィィッッッ!!! ━━━━━━━






    242 = 241 :





    ━━━━━━━━ 【何者かの視点】




    < バキバキバキバキィィッッッ!!!


    死神【…………ッ……ッッ……】パキパキ……


    死神【さ、最後の……最期で、『アンタ』に出会すとはねぇ……ッ】パキッ……


    死神【あの方に頂いた……っ、『闇』が薄れるから、なるべく使いたくなかった虎の子の呪文……『ラリホー』……】パキッ……


    死神【『マホトーン』を使われるとは予想外だったわ……く、ヒヒ……】シュォォオ……


    死神【……でも、もう遅い……この戦争は私達の勝利よ…………】シュォォオ……


    死神【…………この世界の人間と手を組めないお前達なんて、もう怖くはない……ヒヒァ……恐怖しろ、絶望しろ……狂え、そして死ね……ッッ】









    死神【我等が『大魔王』はこの世界で復活するのだから……!!】




    ────────── ポワァ・・・ン……ッ








    「…………」

    「……、…………」ボソボソ…


    「……」ジュゥゥ…ッ


    「……」

    「お疲れ様でした、戦士様方」

    < スタスタ……


    243 = 241 :







    ────────── 「……ぁ…れ…?」



    ────────── 「俺……何してたん…だっけ……」



    「……お疲れ様でした…戦士様方」



    ────────── 「……あ?」


    (…………綺麗……な、女の子……?)

    (でも、あの耳って……髪色も……もしかして…………妖せ…)

    < 「男さん! 男さん!!」


        ユサユサッ!


    < 「しっかり……! あぁ、血が……『ヒャダルコ』のダメージが『何故か奇跡的に殆どないけど』……右腕からの出血が……!」


    (……えー…と、誰だっけか…………)


    < 「ごめんなさい、ごめんなさい……! 私、自分に『ホイミ』使って『ヒャダルコ』使ったから、もうMPが……っ」

    < 「ぁぁあ……! ぁぁあぁ、だれか! だれか来て!! お願い誰かぁ!」


    (……あー…………思い出した)

    (この人、あれだ……上司だ…………)



    244 :

    一月の訓練で大金星だな
    死戦とボス級の経験はデカイ

    246 :

    愛してる乙

    247 :



    「……主…任」


    主任「男さん!? 良かった気がつい…」

    「…いや……死にそうだ…やばい…」

    主任「え……」

    「…………」


    (目がやばい……黒いチカチカが走って……耳が……)

    (なんか足とかガクガクしてるし…………はは、本格的に死ぬかも……)


    主任「待って、待って下さい……っ、メラが使えるから、つ、使えるから……っ」

    主任「えと、ぁ……あ……」

    (……せっかく綺麗な顔が、台無しだな……ぐ!?)ビキィッ

    < ガクガクッ……ガクンッ

    主任「!!」

    主任(ショック症状が……っ、このままだと本当に死んでしまう……!)


    主任「ほ、『ホイミ』!」バッ


    「ぁ…ゥア……ッ」ガクガクッ


    主任(だめ……やっぱりMPが足りない、んだと思う……どうしたら、どうしたら……!!)


    < 「……その人に、今みたいにしたら…さっきの……魔法、使えば助かるの…?」


    主任「……!」

    「やり方……こうです……か? 『ホイミ』……って」


    248 :


    < シーン……


    主任(MPが足りてない、のかな…?)

    主任(それとも……!)

    主任「イメージを、この人の傷を温かいタオルで覆うイメージをして下さい……!」

    「え……ぇ…?」

    主任「焦らないで下さい! ゆっくり傷口に当てるつもりで……!」

    「…………」


    「『ホイミ』」

    < ポゥ……


    (……あったか……ぃ……)ジュゥゥ…



    主任「っ! やった!!」

    「傷が…治ってる……本当に魔法使えちゃった……」


    249 :


    主任「聴こえますか男さん……まだ、痛い所はありますか…?」


    「ぅ……く、はは……っ」ググッ…

    「なるほど……体力が回復しないけど『HPは回復する』ってこんな感じ…か」ググッ…

    主任「大丈夫…?」

    「……全身が痛いっす、傷口なんて無いのに……まるで切り開いた傷を指で無理やり閉じている様な…………」


    < ピンコーン♪

    < ガー


    警備員「君達! 大丈夫か!?」

    警備員B「女性と男性が怪我をしています!」

    警備員C「おいまずいぞ!」


    (……ホテルの警備員か、どう言い訳するかな)

    主任「気を付けて! 『見えないアレ』がこの辺りにいます!!」

    「ちょ、主任……?」

    主任「早くエレベーターを開けて戻って下さい!! 早く!!」


    警備員B「見えないアレって、テレビのか!?」

    警備員C「きっと、この間俺を襲ったやつだ……ひぃぃっ」

    警備員「おいバカ野郎! エレベーターを閉じるんじゃねえ!!」


    < 「うわぁあ!!」

    < ガー


    250 = 249 :


    「…………」

    「………」


    主任「今の世の中なら、『見えない存在が分かる位置』から逃げるのは当然ですよ」

    主任「ましてや私達が全員血塗れでは誰でも逃げます」


    「……逞しいな主任」

    主任「この歳であの営業課の主任をやるなら、こうでないと」

    「はぁ」

    主任「しかし妙ですね…? 警備員が来たということは、監視カメラでもあるんでしょうかここ」

    「有り得なくないな、ってかそれだと俺ヤバくね…? 銃刀法違反だろこれ……」

    主任「それなのですが男さん」

    「?」




    主任「……私達がモンスターから得たアイテムは、『見える人』以外には触れても何をしても見えません」



    「!?」

    主任「よくて男さんが通路を縦横無尽に暴れてる映像しか見えません」

    「!?」


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